りんぐすらいど

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【予告】【ツイキャス】ツール・ド・フランス2018 2週目振り返り放送

先日7月16日(月)の夜に

思いつきで行ったツイキャス「1週目振り返り放送」。

 

個人的に面白かったので、

7月23日(月)に「2週目振り返り放送」を行いたいと思います。

 

今のところは22:00開始で1時間ほどの予定。

ただし、仕事の都合で開始が遅れる可能性や、

場合によっては中止になる可能性もあります。

 

当日、開始のタイミングで以下のTwitterにて告知します。

珠洲 環 (@SuzuTamaki) | Twitter

開始時間の遅れ・中止なども上記Twitterで報告します。

 

当日、その時間とくにやることもなく暇~って方、

もしよろしければ視聴ください。

コメントも頂けると嬉しいです。

ガビリアとフルーネヴェーヘン、真の最強スプリンターはどっち?

今年のツール・ド・フランスも第1週目を終えた。

初日から落車やトラブルが頻発し、総合争いの面々もタイムを失う波乱の展開。

しかし、コース自体は近年稀に見る平坦中心の構成。スプリンターたちにとっては大きなチャンスとなる平坦ステージが全部で5つ。そのうち、大きなトラブルなくある程度の役者がそろった状態で集団スプリントが行われたのが、第1・第4・第7・第8ステージの4つだった。

その4つのステージで勝利を分け合ったのが、今年初出場・昨年ジロ4勝+ポイント賞のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップ・フロアーズ)と、昨年シャンゼリゼ覇者ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、チーム・ロットNLユンボ)。それぞれ2勝ずつを挙げ、「最強スプリンター決定戦」は、現在のところ引き分けの状態で2週目を迎えることとなった。

 

実際に、ガビリアとフルーネヴェーヘン、どちらがより強いのか。

今回は上記4ステージを振り返りながら検証してみる。

 

 

 

過去の戦績

今大会の振り返りを行う前に、2人のこれまでの戦績を見てみたい。

まず、ガビリアは言わずと知れた、急成長中の若手最強スプリンターである。

1994年生まれで今年24歳。元々はトラックレースのオムニアム種目金メダリストでもあり、クイックステップにトレーニーとして参加していた2015年には、ツアー・オブ・ブリテンにてグライペルやボアッソンハーゲンなどの並み居る強豪を抑えての勝利を果たしている。

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クイックステップへの正式加入を決めた翌2016年には、ティレーノ~アドリアティコで同年代のライバルであるカレブ・ユワンを退け、パリ~トゥールではミラノ~サンレモ覇者アルノー・デマールを打ち倒した。WTクラスも含めた年間通算8勝は、プロとは思えない戦績である。

2017年には初めてのグランツールとなるジロ・ディタリアにも出場。同じ南米出身のマクシミリアーノ・リチェセのリードアウトを頼りに、手を付けられない強さを発揮して4勝。ポイント賞「マリア・チクラミーノ」も獲得する。

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今年は怪我にも悩まされ、思うように結果を出せない時期もあったが、5月のツアー・オブ・カリフォルニアではサガン、ユワン、キッテル、クリストフらを相手取ってステージ3勝という圧倒的な戦果を叩き出す。今大会で勝利したスプリンターは彼だけだ。

今年ツール初出場。しかし、初出場ながらも今大会最も勝利数を稼ぎだす可能性も十分にあると噂される、「現役最強」候補に早くも登りつめている。

 

 

一方のフルーネヴェーヘンは、ガビリアほどの派手な経歴は持ち合わせていない。

1993年生まれの25歳。現チームに移籍してきたのは2年前。エネコ・ツアーではブアニやサガンなど一流スプリンターたちを前にして1勝するも、その他の勝利は1クラスレースが中心であり、実力派認められていたものの、そこまで目立つことはなかった。

そんな彼の名を一躍有名なものにしたのが、昨年ツール・ド・フランスの最終ステージ、シャンゼリゼ・フィニッシュであった。誰もが早すぎると感じた、残り300mからの飛び出し。しかしそのスピードを緩めることはなく、猛追するグライペルを振り切っての、見事なパワースプリントであった。

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今年に入ってからも好調は止まらず、出場した6つのステージレース全てで勝利。合計11勝は、ワールドツアーチームのスプリンターの中では、ヴィヴィアーニに次ぐ勝利数であり、今期の勢いだけで言えば、すでにガビリアを凌駕している。

そんな彼が、今回のツール・ド・フランスで活躍しないわけがない。やはり彼も、実績は少なくとも今大会の「最強」候補なのだ。

 

 

それでは実際に、今大会の4つのステージで、ガビリアとフルーネヴェーヘンがどのように勝利していったのかを見ていこう。

 

 

 

第1ステージ

ラスト10kmで大規模な落車が発生し、リッチー・ポートやアダム・イェーツと共に、アルノー・デマールもまた、足止めを喰らってしまった。デマールは集団復帰を諦め、メイン集団はデマール抜きでの最強決定戦を行うことに。

チーム力において最強はクイックステップ。ラスト1kmの時点でアシストを5枚も残していた。

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Jspots公式ハイライト。ラスト1kmとなる4分10秒~から再生。

 

ボブ・ユンゲルス、ジルベール、ベルギーチャンピオンジャージのイヴ・ランパールトなどの強力なサポートの末、最後にアリエルマクシミリアーノ・リチェセの牽引に導かれて、ラスト200m。最高のタイミングでガビリアは放たれた。

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最高速度はサガンやキッテルの方が上だった。しかし、チームメートたちが作り上げた完璧な状態からのスプリントで、ガビリアは人生最初のツール・ド・フランスの1日を、勝利で終えることができた。

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第4ステージ

第1ステージと異なり、集団牽引に力を使い果たしてしまっていたクイックステップの面々は、ラスト1kmの段階になっても千々に乱れており、集団の前方に固まることはできずにいた。

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ラスト1kmの空撮映像。青丸で囲ったのがクイックステップの選手。一番前にいる二人が、ガビリアを引き連れるリチェセ。Jsportsより。

 

しかし、リチェセだけは、常にガビリアの前にいた。そして、ゴールスプリント直前では、集団の中から群衆をかき分け、ガビリアをしっかりと先頭にまで運び上げていった。

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ハイライト映像ではカットされているが、集団の中に埋もれていたガビリアを、リチェセがしっかりとコースを見つけて運んでいっている。

 

まさにリチェセは最強のアシストである。そのまま加速したリチェセは、やはりラスト200mまでガビリアを導き、そして無敵のスプリントが放たれた。

この日はグライペルの伸びもよかった。サガンも含め、写真判定にもつれ込んだ。しかし、それでもガビリアは勝つことができた。リチェセという、最強のアシストがいたから。

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第7ステージ

この日もまた、リチェセの強烈な牽引により発車することのできたガビリア。

ただしこの日は、ややリチェセが外れるのが早かった。ガビリアが最も得意とする「200m」ではなく、「250m」からの発車。

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それでも、サガン、クリストフ、デマールといった強豪を抑えることはできたガビリア。

しかし、「オランダ選手権の疲れ」からの回復ができつつあるというフルーネヴェーヘンが、このラスト250mで実力を発揮して見せた。クリストフを背後からまくり上げ、一気に加速した彼は、ガビリアに対し圧勝とも言える勝利を掴んだ。

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第8ステージ

第8ステージもまた、リチェセがガビリアのために集団から抜け出そうとスパートを仕掛ける。

しかし、ここで、抜け出したリチェセにガビリアがついていけないというアクシデント!

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結果、2人の間にサガンが入り込み、ガビリアはその後ろでグライペルとのやり合いを経て、最終的に降格の憂き目に遭った。

このタイミングでうまくリチェセの背中に乗れていれば、この日もガビリアの勝利だったかもしれない。

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最後、やはり「残り250m」でグライペルの背中から飛び出したフルーネヴェーヘンが、完全復調した最高のスプリントでもってライバルたちを打ち倒した。

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まとめ

ここまで振り返ってみて、結論めいたものを出すとすれば以下のような形だ。

  • リチェセ最強! 運び屋としても優秀で、今大会アシストの中では最もスプリント力の高い選手である。
  • ガビリアも残り200mから放たれたときの強さは圧倒的。今大会、サガングライペルたちよりも強いのは間違いない。ただしリチェセがいないと最適なポジションを取れない。
  • フルーネヴェーヘンも疲れを残していた序盤はともかく、中盤以降は無敵のスプリント力。また、アシストがほぼいない中、単独で好位置をキープできる強みもある。

 

現時点では、純粋な力量としては復調してきたフルーネヴェーヘンが、ガビリアを凌駕ているといっても良さそうだ。

リチェセさえ万全の状態であればガビリアにも勝機は十分あるが、逆にリチェセなしの状態では厳しい。

このままの状態で進めば、残り3つの平坦ステージ、すなわち第13・第18・第21(シャンゼリゼ)においても、フルーネヴェーヘンが最有力となりそうだ。

 

しかし、元々昨年のジロのガビリアは、単独で狭い隙間を縫って強烈なスプリントをする姿も見せていたりした。

今年はシーズン当初より「完璧」という状態ではこれていないガビリア。この3週間の間に調子を取り戻すことができれば、単独でもフルーネヴェーヘンに打ち勝つだけの走りを見せることは十分可能だろう。

 

 

ガビリアとフルーネヴェーヘン。

台頭してきた「新時代のスプリンター」のうち、今大会最強の名を手に入れるのはどちらか。

また、ここまで苦しい戦いを強いられ続けているキッテル、グライペルカヴェンディッシュなどは復活を果たすことができるのか。

 

3週間の戦いはまだまだ続く・・・。

 

 

2018年シーズン 6月主要レース振り返り

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4つの重要なツール前哨戦が繰り広げられた6月のサイクルロードレース

今年のツールの主役とも言うべき選手たちがそれぞれの舞台で活躍していくのを見ると、否が応でも気持ちが盛り上がっていくのがわかる。

また、6月最終週に行われる各国ナショナル選手権もまた熱い!

とくにイタリア選手権なんかもリアルタイムで見ていて非常に面白い展開(ヴィヴィアーニが!激坂を!登って喰らいついて勝った!)だったものの、泣く泣く割愛。全日本選手権のみ扱うことにしました。

 

また、今月の注目選手はまたコフィディスから。書いた当時はまだ出場が決まっていなかったけれど、しっかりと評価されて見事参加が決まったあの人。

ぜひ、勝利を掴んでほしいね。

 

 

 

 

 

ツール・ド・ルクセンブルク(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ルクセンブルク

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シュレク兄弟、ボブ・ユンゲルスを始め、小国ながらも才能ある選手をコンスタントに輩出し続けているルクセンブルクで行われるステージレース。昨年はルクセンブルク人ジャンピエール・ドラッカーとグレッグ・ファンアフェルマートのBMCレーシングチームが席巻したものの、今年はワールドツアーチームの出場はなし。

よって、ここ最近非常に調子がよく、スプリントも石畳もTTもこなせるコフィディスのラポートが他を圧倒してしまうのではないか、と思っていたのだが・・・細かなアップダウンと登りゴールが多く配置された今年のレイアウトは、ラポートにとってはやや厳しかったのかもしれない。

結果としてステージ2勝、総合優勝を成し遂げたのはワンティのパスカロン

スプリンターにしては軽量級のこの選手は、過去にも登りゴールでウリッシやコルブレッリ、ヴュイエルモなどを下して勝利を掴んでいる。

今までは1クラスの勝利ばかりだった彼だが、今回HCクラスでの勝利を複数獲得。今年のツール出場の候補となっており、今後の活躍にも期待である。

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昨年のコッパ・サバティーニで表彰台に立つパスカロン。 

 

 

 

ハンマー・リンブルフ(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:オランダ

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3度目の開催、そしてリンブルフとしても2度目の開催ということで、各チームとも、こなれてきたというか、ハンマーシリーズの戦い方を心得てきた、という印象。序盤から安易に逃げを許さず、毎周回スリリングなアタック合戦が見られるパターンも多くなってきた。

ロード以上にチームのタレント層の厚さが鍵となりそうなレースなので、今後もっと注目が集まり、各チームとも本気のメンバーを揃えてこれるようになってほしい。今回は層の厚かったクイックステップが、安定して上位に入り優勝を果たした。

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独走力の高いルーラー系が活躍しやすい競技だとも思うので、裏開催のドーフィネなどには出場しない、クラシックスペシャリストたちが軒並み出場するようになると面白いところ。 

 

 

 

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス

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言わずと知れた、ツール・ド・フランス前哨戦。今年も、ツール本戦と同じ距離を走らせるチームTTや、短距離山岳ステージを用意するなど、本戦を意識したコースレイアウトとなった。

ツール本戦が例年より1週間、開催が後ろ倒しになったことにより、裏開催のツール・ド・スイスに出場するトップレーサーたちも非常に多く、それ故に見所は例年よりも少ないという意見もあったようだ。

しかし、そういうときこそ、寧ろ面白いレースが見られたりするものなのだ。

 

たとえば、今年ずっと不調だったダニエル・マーティンの、完全復活を宣言するような勝利。

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前日の2位で「復調してきたけれどやっぱりマーティンだな」という印象を覆すかのようなこの勝利は見ていてとても気持ちが良かった。

 

また、たとえばゲラント・トーマスの、今年契約最終年度であることを意識したかのような飛ぶようなアタック。今までの彼とはまた違ったスタイルのようにも感じられた。

そんなトーマスを黙々と牽引し続けた、タオ・ゲオゲガンハート。まだ若手、という印象が拭えなかった彼の、ツアー・オブ・カリフォルニアに続く「スカイ最強トレイン」としての覚醒の兆しを、我々はこのレースで目に焼き付けることができたのだ。

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そしてたとえば、ペリョ・ビルバオの、ジロ総合6位から引き続きとなる活躍に、アスタナの新エースとしての可能性を見出したりなど・・・

 

個人的にはロマン・バルデとAG2Rの走りの状態の良さに満足している。

相変わらずライバルを突き放す決定的なアタック力には欠けているものの、チームでしっかりとチャンスを作り、下りで後続を突き放す攻撃的な走りは健在。結局はその後の平坦で捕まえられてしまったものの、まだ今は調整段階。今年のツールは下りフィニッシュも多いため、バルデとしても狙ってくることだろう。

あとはラトゥールやドモン、ヴュイエルモといった山岳アシストたちの活躍と、今大会で言えばギャロパンやナーゼンやディリエといった平坦アシストたちの働きとが噛み合えば、今年のツールは非常に大きな可能性を持っていると言えるだろう。

 

 

 

ジロ・チクリスティコ・ディタリア(2.2U)

U23レース 開催国:イタリア

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ベイビー・ジロとも。しばらく開催がなかったが2017年に復活。

詳細は以下のリンクを参照のこと。

ジロ・デ・イタリアU23(ベビージロ2018)レースレポートまとめ - サイバナ

昨今、キンタナから始まりチャベス、ガビリア、そして昨年のベルナルなど、ひたすら若手のコロンビア人選手が活躍しているが、今回のベイビージロでもコロンビア人選手が大活躍!

台頭したのはやはり山岳。第4ステージ、登坂距離10km、平均勾配8%の難関山岳フィニッシュで、コロンビアナショナルチームとして出場したアレハンドロ・オソリオとダニエル・ムニョスが並んで手を繋ぎながらワンツーフィニッシュ。圧倒的な強さを見せつけた。

翌日の難関山岳ステージでも同じくコロンビア人のエイネル・ルビオが勝利。

しかし、このコロンビア人の活躍に待ったをかけるのが、この時点ですでに今期10勝をあげているオランダのコンチネンタルチーム「SEGレーシングアカデミー」。

クーン・ボウマンやファビオ・ヤコブセンなどを輩出するこの若手強豪チームのエース、スティーヴン・ウィリアムズが第5ステージで2位に入る走りを見せてマリア・ローザを獲得。すると翌第6ステージでオソリオが大胆にも逃げに乗り、マリア・ローザを奪還。続く第7ステージの1級山岳山頂ゴールでは逆にオソリオが遅れ、ウィリアムズが独走のまま勝利を飾った。

連日のようにマリア・ローザの持ち主が変わる波乱の展開。

この波乱を象徴するのが、午前午後のラインステージとTTステージの二部構成となった最終日。その午前ステージで集団落車が巻き起こり、マリア・ローザのオソリオも大きくタイムを失ってしまった。

そして迎えた最終決戦、22.4kmの個人タイムトライアルは、なんと総合成績の上位15名がそのタイム差ごとに順にスタートし、最初にゴールラインに入った選手が総合優勝となる独特のルールを採用。

個人タイムトライアルでありながらも、熾烈な抜きつ抜かれつが演じられる白熱のバトルとなった。

 

その中で、最強の走りを見せたのが、ミッチェルトン・バイクエクスチェンジに所属するロバート・スタナード。総合首位ウラソフから2分5秒遅れの総合7位だった彼は、一気に4名の選手を抜き去り、総合3位に浮上。ウラソフとのタイム差も1分以上縮める快走で、ステージ勝利をも手に入れた。

「ミッチェルトン・バイクエクスチェンジ」はミッチェルトン・スコットの育成チーム*1。今大会で実力を見せつけたスタナードは、晴れて来期からのミッチェルトン・スコット入りを決定付けた。登りも登れてTTも速い彼は、将来有望なオールラウンダーとして2020年代注目の選手の1人となるだろう。

 

さらに、最終的には総合5位に沈んでしまうものの、強さを見せつけたスティーヴン・ウィリアムズも、8/1付でバーレーンメリダにトレーニー加入。

来期から2年契約でのバーレーン入りも確定しており、こちらも活躍が楽しみな選手だ。

 

 

 

ツール・ド・スイス(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スイス

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かつては「4番目のグランツール」と呼ばれ、その名に相応しい厳しい山岳ステージを用意するツール前哨戦の1つ。今年はキンタナ・ランダコンビなど、例年以上に豪華なメンバーが集結した。

リッチー・ポート、ナイロ・キンタナ、ヤコブ・フールサンの好調。そして、ガビリアやサガン一強ではなく、コルブレッリやデマールが対抗してくるなど、今年のツールの混戦を予感させる結果となった。

個人的にはやはり、若手の活躍が気になる。

まずはサンウェブのアナスン。獲得標高3500mのクイーンステージで、迫りくるポートらの追撃をかわし、激坂フィニッシュを独走で制した。

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24歳のデンマーク人。昨年のツアー・オブ・オマーンでもヘルマンスやコスタを差して登りフィニッシュを制しており、タイプとしてはパンチャーに近い。しかし北のクラシックにも強く独走力も高くスプリントもできるオールラウンダーとしての才能も開花させつつある。今回初のワールドツアー勝利。

 

また、最終日個人TTを制したのがBMCレーシングのステファン・キュン。25歳のスイス人で、昨年のツールでも初日のTTで好成績を出し、本格的な山岳ステージが始まるまで新人賞ジャージを着用し続けていた。

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つい先日、2年連続となるスイス個人TT王者のタイトルも獲得し、その安定感の高さは飛び抜けている。

今年のツールは終盤まで個人TTはないものの、チームTTなどではポートにとってもなくてはならない存在となるだろう。今回のスイスも、ほぼチームTTの成績によって彼の総合優勝が決定付けられたと言っても過言ではない!

 

 

 

ツアー・オブ・スロベニア(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:スロベニア

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ドーフィネやスイスと比べるとランクは落ちるものの、例年ニバリやマイカなども出場し、厳しすぎない前哨戦として人気を博している。スロベニア自体が、近年はモホリッチやログリッチェなど、強力な選手たちを輩出している。

スイスでポートやキンタナが調子を上げていく裏で、こちらではログリッチェやウランと言った、これまたツールを混戦に導きうる存在が力を示していった。

特筆すべきは、昨年から続く「ひたすら積極的な攻撃」を仕掛けるログリッチェの姿。第3ステージは惜しくもゴール直前で捕まえられてしまったが、翌第4ステージでは実に15km以上を独走して勝利。最終日のTTも安定した走りで勝利を獲得し、2度目の母国最大のレース制覇となった。

登りも下りも独走もイケる、稀代のアタッカーとしての実力を見せつけた。あとは今年、ツールの総合争いでどこまでの走りを見せることができるか。

 

 

 

ルート・ドクシタニー(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:フランス

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昨年まではルート・ドゥ・スッド(南の道)という名称で知られていた小さなツール前哨戦。今年はピレネー山麓地帯を指す「オクシタニー」の名を取って、この名称へと変更された。

4日間と短いものの、ピレネーの名峰も毎年登場する厳しいステージレース。今年は当初、エガン・ベルナルの出場も噂されていたものの変更となり、代わりにスイスには出場しなかったバルベルデが参加することに。となれば、もはや彼の独壇場であることは間違いない。総合優勝候補のくせに逃げたり、必要ないくらい果敢なアタックを決めたりと、本人的には完全にトレーニング感覚での出場と総合優勝。まあ、昔キンタナとかもそんな感じだったしね!

いずれにせよバルベルデの調子が良くて幸い。今年のツールではしっかりと活躍してほしい!

 

 

 

全日本選手権ロードレース(NC)

ナショナル選手権 開催国:日本

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まるで4年前の焼き直しだった。30人を超える大量の逃げが生まれ、シマノレーシングブリヂストンサイクリングが牽引するメイン集団は追走に失敗した。勝負はメイン集団から抜け出した山本と小石祐馬(チーム右京)、そしてこれを追走する佐野や新城などの小集団に絞られた。

終盤、最も力を残していたのは、2014年覇者の佐野と2014年3位の山本。山本にとっては、4年前の雪辱を晴らす一戦となった。

そして、山本にとっては、小石を振り切って山本・佐野に追いついてきた新城の存在は大きかったことだろう。彼がいることで、山本は失うものはない心境で、最後の登りで思い切り踏むことができた。

調子は完璧だった。山本のペースアップに、佐野はついていけない。みるみるうちにタイム差は開き、やがて、かつて取り損ねた栄光を掴み取った。

佐野も、最後まで踏み切った。悔しい思いを全身で表した彼に対し、生中継を見ていた視聴者たちは山本に対するのと同じくらいの拍手を送った。

最後に、新城がしっかりと3位でゴールに飛び込んできた。すぐさまが山本がこれを迎え、抱擁する。

 

4位集団は、一時は9分差をつけられたメイン集団から這い上がってきた入部が先頭を取る。

1月からローラー台でのトレーニングを続け、例年以上に万全の状態で臨んだという入部。まさかの序盤の大量エスケープにより優勝争いから脱落してしまった彼は、誰よりも辛く苦しい思いと共にゴールに飛び込んできたに違いない。

 

 

 

今月の注目選手

ダニエル・ナバーロ(フランス、34歳)

かつてはアルベルト・コンタドールのアシストとして活躍し、5年前にエースとして走ることを望みコフィディス入り。以来、今年で6年目。ツール・ド・フランスには毎年出場し、2013年には総合9位にまで登りつめた。

そんな彼が、約束されていたエースの座を奪われつつある。モビスター・チームから移籍してきた、ホセとヘススのエラーダ兄弟の存在だ。確かに、ここ最近のツールの総合順位は決して良くはなかった。勝利も2014年以来、遠ざかっている。

6/23現在、2018年ツール・ド・フランスの出場候補選手のリストの中に、彼の名前はまだない。

 

だが、彼には意地があった。コフィディスの山岳エースとして、プロコンチネンタルチーム最強クラスのこのチームの頂点に立つ存在として、長年やってきた男としての意地が。ただ単に山岳逃げで少し目立って、でも勝利に届かない存在としてではなく、ステージレースの総合上位を狙える男としてその名前を売ることに執念を燃やした。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージ、超級山岳ヴァルモレル山頂フィニッシュ。ダニエル・マーティンが集団を抜け出して見事逃げ切り勝利を決めたこの日、5番目にゴールゲートを潜ったコフィディスジャージの男は、エースのヘスス・エラダではなく、ナバーロであった。

さらに最終ステージでは、最初の1級山岳の登りからアタックを仕掛け、小規模なエスケープグループを形成した。その後の100km以上にわたる道のりの中、少しずつ削られていく逃げ集団に最後まで残り、ラストの1級山岳サン=ジェルヴェ・モン=ブランの登りで、ついに彼はライバルたちを突き放し、単独で山頂に向かうこととなった。

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残り1kmを切って、タイム差は20秒弱。もはや、逃げ切りは濃厚だった。

しかし、メイン集団から、まるで殻を破ったかのような勢いで飛び出したアダム・イェーツが、あっという間に距離を縮めていき、残り50m、あとわずかといったところで、ナバーロは敗北を喫してしまった。

4年ぶりの勝利、栄光の瞬間を、彼は目の前で奪い取られてしまったのである。

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しかしこの日の走りにより、彼はこのクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合9位に入り込む。さらに、続くルート・ドクシタニー(旧ルート・ドゥ・スッド)で総合2位。

ツール・ド・フランスに向けて、十分過ぎる状態の良さを見せつけてくれている。

 

果たして、今年6年連続のツール出場は達成されるのか。

そしてそのツールで、彼は大いなる栄光を掴むことができるのか。

温かく、見守っていきたい。

 

 

 

*1:両チームの昔の名前とかは調べてはいけない。ひたすらややこしくなるから。

ツール・ド・フランス2018 全チームスタートリスト&プレビュー

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第105回ツールに出場する全チームのスタートリストと簡単なプレビューを掲載。

今年はスカイだけでなく、AG2Rもモビスターもほぼフルメンバー。頂点を目指し、どのチームも本気のラインナップで挑んできている。

一方、出場選手数の上限が1人減ったことで、とくに総合狙いとスプリント狙いとを両立させようとするチームは大変苦悩することになった。その余波を受け、衝撃的なカレブ・ユワン不参加。それ以外にも、この人数減は様々な影響を及ぼしかねない。

スタートリストを眺めることで、各チームの狙いもわかってくるかもしれない。

少しでも役に立てれば幸い。

※選手の年齢は全て数え年表記となっております。

 

↓コースプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

  

 

 

1~.チーム・スカイ(SKY)

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クリストファー・フルーム。「5勝クラブ」入りまであと1勝。達成すれば同時に、1998年のマルコ・パンターニ以来となるジロ&ツールの「ダブルツール」を達成することに。コンタドールですら達成できなかった偉業だが、この男には不可能などないように思える。

不可能などないように思えるのはこの男も同じだ。エガンアルリー・ベルナル。わずか21歳にして、今年、ツール・ド・ロマンディ総合2位と、ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝。あっという間に、銀河系軍団スカイのエース候補となった。

このツールで、総合表彰台に登るという予想は、あまりにも荒唐無稽だろうか。いや、そんな予想も、一笑に付すことができない。ここまで幾度となく、この男は我々の想像を超え続けてきたのだから。

最強と最強とが交わる頂点のチーム。今年のツールもまた、彼らによって支配される運命にあるのだろうか。

 

 

11~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパック・p/bキャノンデール(EFD)

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昨年誰よりも安定した走りを見せて総合2位に登りつめたリゴベルト・ウラン。今年も直前のツール・ド・スロベニアでステージ1勝&総合2位と好調で、期待が持てる。

それ以上に注目しておきたいのがこの男。22歳のコロンビア人、ダニエルフェリペ・マルティネス。実は、ベルナルと同じく、19歳でプロデビューを果たしている逸材である。これまではそこまで目立った活躍は見せていなかったものの、今年、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで総合7位、ツアー・オブ・カリフォルニアで総合3位と急成長を遂げている。

この夏、覚醒を遂げる選手の1人となるかもしれない。

 

 

21~.AG2R・ラ・モンディアル(ALM)

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今年のバルデは本気だ。「ミニ・パリ~ルーベ」ステージに向けて、2月からコースの下見に出た。3月には、毎年出場していたパリ~ニースを蹴って、ストラーデ・ビアンケに初出場。そして2位。

コース設定も彼向きだ。昨年はモン・デュ・シャでフルームを凌駕するダウンヒルを見せていたにも関わらず、そのあとの平坦路で勝機を逃した。今年は、下りのままゴールするステージが複数。また、昨年大失速した個人TTも、今年は1つだけ。しかも、アップダウンの激しいレイアウトで、昨年ほどの大ブレーキには至らないだろう。

メンバーリストも、完全にバルデの総合優勝にのみ照準を当ててきている。シエラネバダキャンプに随伴したドモン&ラトゥール&ヴュイエルモの山岳最強トリオに、ナーセン&ギャロパン&ディリエの平坦最強トリオ。そして、直前まで出場リストに名を連ねていたアタッカーのジェニエも、直前でマティアス・フランクに交代。

やっぱり今年のAG2Rは本気だ。

 

 

31~.チーム・サンウェブ(SUN)

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トム・デュムランは本気で総合を狙いに来ているようだ。それは、彼があえてのエースナンバーを着けないところからも想像できる。「いや、本気じゃないよ」そういうことを言うときの方が強い男だということを、我々はもう知っている。フルームvsデュムラン。現代の頂上決戦の第2ラウンドのゴングが今まさに鳴り響かんとしている。

メンバーの1人1人を見ると、突出した成績を出している選手は決して多くはない。その点で、スカイとは実に対照的なチームであるが、それでいてスカイに匹敵する成績を叩き出すチームである。今回のメンバーの中でも、たとえばアナスンなんかは、現在急成長中のパンチャー/ルーラーである。先日のツール・ド・スイスでも一勝。このツールでも、何かしでかしてくれるんじゃないかと、期待してしまう。

 

 

41~.チーム・フォルテュネオ・サムシック(FST)

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ワレン・バルギルは今年、絶不調。

とはいえ、彼史上最大級の実績を叩き出した昨年も、この時期は不調の只中にあった。むしろ、ツールが始まってからも不調は続き、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでは早々に遅れる姿を見せていた。

ただし、そのとき、彼の表情は明るい笑顔だった。彼は最初から、山岳賞を狙っていたのかもしれない。

今年も、あくまでもステージ優勝と山岳賞を狙っての参戦であると宣言している。期待はしない。あくまでも自然体に、その実に魅力的な笑顔を絶やさずに走る彼の姿を静かに見守ることにしよう。期待しないときの方が、きっと結果を出してくれる。

昨年最年少での出場となったジェスベールにも注目をしておくべきだ。何しろ、あらゆる選手が疲れを見せ始める終盤でも、果敢に逃げに乗る姿を見せた将来有望な男なのだから!

 

 

51~.バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

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ヴィンツェンツォ・ニバリのここ数ヶ月の調子はイマイチだが、それはいつものことである。総合優勝を果たした2014年も危機的な状況の中からの飛躍だった。

チームのもう1人のエース、コルブレッリは昨年、散々な状態だった。しかし、今年はドバイ・ツアーの登りゴールでの力強い勝利に始まり、ツール・ド・スイスではガビリア、サガンを抑えての勝利を果たした。確実に成長し、トップスプリンターの仲間入りを果たしつつある。

何より、このチームの魅力は、そのチームワークの良さ。ときにエース自らが仲間をアシストし、またアシストたちも全身全霊をエースに尽くす。ニバリというカリスマを中心にして、このツールでも奇跡を起こしてくれるかもしれない。

 

 

61~.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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まさかのユワン不出場。それだけ、イェーツの総合上位に照準を合わせてきたか。平坦ライダーはさすがのラインナップ。あとは、ジロでサイモンを支え続けたニエベと、2016年のチャベスの右腕として活躍したハウスンの走りに期待したい。

前待ちなどで活躍したゲランスがチームを去ったのは痛手だったが、その代役はインピーが担ってくれることだろう。サンウェブ同様、個々の力量以上のチームワークからのブレイクに期待したい。

 

 

71~.モビスター・チーム(MOV)

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こちらもスカイに負けず劣らずのオールスター軍団を揃えてきた。今年はパリ〜ニース総合優勝のソレルに、ジロ総合4位を経験しているアマドール。そしてスプリンターでありながら山岳も軽々と登り、平坦牽引から山岳での前待ちまでこなしてくれるベテランのベンナーティ&ロハス。スペイン人としては天然記念物な石畳職人エルビーティも当然、今年は第9ステージ対策に連れてきている。

もちろん極め付けは、トリプルエース体制。とはいえ、やはりエースはキンタナであるべきだ。バルベルデもランダも、とくにランダは、アシストとして働くときの方がより輝いている。幸いにも直前のツール・ド・スイスではキンタナの調子が良く総合3位。エースの座はひとまず無事に保てそうだ。

とにかく今大会においては例年以上に遥かに全力の体制を整えてきたモビスター。キンタナにとっては実に最大のチャンス。今年こそ、勝ってくれ。

  

 

81~.BMCレーシングチーム(BMC)

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昨年の悔しい落車リタイアから1年。完全に調子を取り戻し、前哨戦のツール・ド・スイスも総合優勝を果たして、再び万全の体制で乗り込めるようになったリッチー・ポート。登りとTTの総合力においては間違いなくフルームに匹敵する実力の持ち主だ。

メンバーも良い。カルーゾは昨年総合11位の実力者だし、ゲランスも山岳前待ちなどで力を発揮する。クンのTT能力は言わずもがなで、ファンアフェルマートも、昨年の第3ステージで自らの勝利の芽を薄くしてでもポートのために牽引していた姿が印象的だった。山も登れる選手なので、アタッカーとしてだけでなく、山岳アシストとしても期待できるだろう。ヴァンガーデレンも、カリフォルニアで久々に調子の良い姿を見せてくれた。

個人的に期待したいのはベヴィン。安定した独走力の高さと、時折見せるスプリントの実力。今大会、誰も予想しなかった形で覚醒しうる選手だと思っている。

 

 

91~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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いまいち振るわないシーズンを過ごしていた今年だったが、直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで見事復活を果たしたマーティン。相変わらずエーススプリンターとの二頭体制だし、山岳アシストが充実しているわけではないしで正直、移籍した意味はあるのか疑問だが、まあ最強ばかりが揃いすぎて肩身が狭そうだったクイックステップ時代よりは気楽に戦えるのかもしれない。

クリストフはクリストフで、ツァベルやモルコフなど頼れる相棒が揃っていた昨年までと比べるとやや不安の残る体制。というか、なんでコンソーニ連れてきてないの?

アタプマは昨年も惜しいところまでいきながら勝てなかった。今年こそは。

 

 

101~.クイックステップ・フロアーズ(QST)

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昨年ジロ4勝とポイント賞を勝ち取った若手最強スプリンターが満を持してツール・ド・フランス初出場。相棒は、そのジロ4勝を支えた最も信頼する発射台、リチェセ。昨年ブエルタでトレンティンの4勝を支え、自らもリードアウトからの勝利を取ってしまったランパールトも、今年はベルギーチャンピオンジャージを身に纏って参戦する。職人ヴェルモトがチームを去ったのは痛いが、デクレルクがその代わりを務めることができるか?

総合争いでは、2016年・2017年ジロ新人賞のユンゲルスに期待。彼もまた、本格的な総合争いを目指してツールに参戦するのは初めてだ。単なるTTスペシャリストで終わってほしくはない。

  

 

111~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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イカも盟友ポリャンスキを引き連れて本気で総合を狙うつもりはあるのだろうけれど、カリフォルニアもスロベニアも微妙で、それほど期待はできなさそう。やはりサガンの活躍に頼ることになりそうだ。というか、これは北のクラシックなのか?と思わせるような、完全サガンシフトなメンバーだ。彼の場合、発射台を揃えるよりも、ゴールまで無事に彼を送り届ける平坦要員が重要になるので、今回のこのメンバーはほぼオールスターである。

マイヨ・ヴェールの奪回は叶うか。

 

 

121~.アスタナ・プロチーム(AST)

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このチームも、個々の実力以上にチームの力を感じさせてくれる。フグルサンも直前のツール・ド・スイスで調子の良さを見せつけており、今年こそ単独エースとして、万全の体制で臨める。LLサンチェスもフライレも、実に頼りになる山岳アシストだ。

コルトニールスンは純粋なスプリント力ではツール優勝を狙えるほどではまだない。しかし、登りを含んだスプリントでは、ツール・ド・ヨークシャーでファンアフェルマートを下すなど実力の高さを見せつけている。ドバイ・ツアーでは誰よりも勢いのあるスプリントも見せつけた。カオスな展開の中でのスプリントであれば、十分に勝てる力を持った選手だと言えるだろう。アシストはほぼいないけど。

 

 

131~.チーム・ディメンションデータ(DDD)

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さいたまクリテリウムの呪いか、今年ひたすらツイてないカヴェンディッシュ。それでもやはり、ツールでは彼が活躍しないことには始まらない。今年はクイックステップから最強ルーラーのヴェルモトも連れてきて、例年以上のカヴェンディッシュ体制で臨むことに。何しろ、ジロに出たとはいえ、メインチェスがメンバー入りしないほどなのだから。

そんな中、スラフテルやボアッソンハーゲンなどのアタッカーの活躍や、パウェルスの山岳逃げなどでの勝利にも期待が持てそうではある。

 

 

141~.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)

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昨年までクリストフを支えていたメンバーが今年はキッテルのために働く。強力だが、問題はあとはキッテル自身の調子。昨年5勝の最強スプリンターが、今年は沈んだまま終わってしまうのか?

ザッカリンはここまで決して調子が良くはないが、彼の調子の好悪はあまり当てにならない。誰も期待していないときにこそ突然爆発する可能性も。最大の材料は、栗村氏の勝利予想に一切名前が出てこなかったこと!

 

 

151~.グルパマFDJ(FDJ)

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ツール・ド・スイスではガビリアたちを下して勝利も掴み、調子の良さを見せつけているデマール。チモライは残念ながらメンバー入りしなかったが、代わりに今年新加入で今シーズンも常にデマールを支えてくれているシンケルダムがメンバー入り。石畳にも強い選手で、多方面での活躍が期待できる。チャンピオンジャージを失い紛らわしくなくなったのも良かった??

ルドヴィクソンはいつかグランツールのTTで勝利できる選手だと確信している。昨年ブエルタのTTでは6位。そりゃ簡単な話ではないけれども、昨年のボドナールの勝利を予想できていた人はほとんどいないはず。僕は信じている。

ピノがいない分、総合ではゴデュに注目が集まることだろう。しかし彼にはあまりプレッシャーを感じて欲しくはない。今はまだ、経験を積むべき時期だ。

 

 

161~.チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

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4月以降に出場した3つのステージレースで総合優勝を果たした今最も勢いのあるログリッチェと、2年前のジロでマリア・ローザ獲得目前までいったクラウスヴァイク、そしてツール総合6位の経験があるヘーシンクと、ここもある意味トリプルエースである。

とはいえ、いずれも決定打に欠ける。それよりは、フルーネヴェーヘンのスプリント勝利に期待したい。今年もワールドツアーチームに所属するスプリンターの中では、ヴィヴィアーニに次ぐ勝利数を記録している。相方のローゼンは純粋なリードアウトだけでなく、巧みなバイクコントロールでエースをゴール前まで運んでくれるほか、自らも登りフィニッシュなど、フルーネヴェーヘンでは対応しきれないレイアウトを得意とする。

若手トルークの覚醒にも期待したい。

 

 

171~.ロット・スーダル(LTS)

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現チームに移籍した2011年から6年連続で達成していたツールでの勝利が、昨年はついに途絶えてしまった。今年いっぱいでチームを去るという噂もあり、常に存在感を示し続けてきたベテランスプリンターが、いよいよ斜陽を迎えつつある。

それでもやっぱり、ゴリラが活躍する姿が見たい!  デブイスト、ジーベルグ、ファネンデルトといった、長きにわたり彼を支えてきてくれた選手たちも揃い、オリカからは名ルーラー、クークレールが駆けつけてきてくれた。エースナンバーも着け、万全のグライペル体制。もう、このチームで見られる彼の勇姿も最後かもしれない。目に焼き付けよう。

もちろん、デヘントの逃げや、ベノートのステージレーサーとしての成長にも注目。デヘントは2年前のモンヴァントゥ勝利のような走りをまた見たい。やっぱり、どんなに逃げが凄くても、勝利がなければ総合敢闘賞は厳しいよ。

 

 

181~.ディレクトエネルジー(TDE)

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ヴォクレールシャヴァネルの後継者」カルメジャーヌが、今年も魅せてくれるだろうか。まだまだステージレースの総合上位を狙うといった感じではないが、果たして。

ダミアン・ゴダンの活躍にも期待したい。かつてはブイゴテレコム時代からユーロップカー時代まで現チームに所属し、その後AG2Rに移籍。しかしなかなか勝利に結びつかないまま、昨年はコンチネンタルチームのエキップ・シクリスト・アルメ・デ・テッレ(フランス陸軍チーム)に降格。しかしここで5勝を記録し、チームの大躍進の立役者となった。勝利の大半がプロローグによるもので、その独走力の高さを生かした逃げ切りに期待。

カチューシャ時代にジロで山岳逃げ切りを決めた実力者タラマエも稼ぎ頭だったとなるだろう。

 

 

191~.トレック・セガフレード(TFS)

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2年前の怪我以降、なかなか復調せずにいるデゲンコルブ。全然ダメというわけではなく、今年のチャレンジマヨルカでも2勝していたり、先日の国内選手権でも2位だったりと、それなりの成績ではある。しかし、勝ちきれない。

総合エースは一応モレマか。しかし絶対的な存在はいない。よって、逃げや混戦からのステージ勝利を狙いたい。ベルナールやゴーグルなどの若手の走りにも注目。

 

 

201~.コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)

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ついにブアニが本気で降ろされた。一応最近は頑張って勝ってたんだけど、チームオーダーに従わなかったりで逆効果だった様子。

代わりにエースを務めるのが、今年絶好調のラポート。スプリントだけでなく、激坂や石畳への適性もあり、独走力も高い。パリ〜ニースではデマールやゴルカ・イサギレと張り合う姿も見せており、今回まさかの勝利もなくはない。

クライマーも良い選手が揃っている。シーズン序盤はモビスターからやってきたヘスス・エラダの状態が良く、直近ではダニエル・ナバーロがドーフィネ総合9位とオクシタニー総合2位と絶好調。過去にはツール・ド・フランス総合9位の経験もあるナバーロ。外からやってきた奴にエースの座は奪われたくないのが本音だろう。この、チーム内競争も見所だ。

 

 

211~.ワンティ・グループゴベール(WGG)

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「哲学者」ギョーム・マルタン。昨年は最終総合順位が20位を下回ってしまい、目標達成とはいかなかったものの、トップクライマーたちに食らいつく走りはしっかりと見せられた。今年はどんな成長を見せてくれるか。

地味にパスカロンが強かったりする。ツール・ド・ルクセンブルクではステージ2勝と総合優勝。多少のアップダウンもこなせる脚質だ。

昨年はステージ10位以内に入ることはできなかったが、今年はベスト10リザルトに何度か名前を残したいところ。

 

ツール・ド・フランス2018 コースプレビュー3週目

いよいよ今年のツールも最終週を迎える。

ピレネーで巻き起こる、厳しい山岳ステージの数々。

その中でも注目の的となるのは、第17ステージ。60km超短距離山岳ステージだろう。

何が起きるかわからない。これまでにない新しいツールの姿を、私たちは見ることができるかもしれない。

近年「つまらない」と言われることも多いツール・ド・フランスが、今年は大きな変革を迎えることになるのか。どうか。

suzutamaki.hatenablog.com

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

 

 

 

第16ステージ カルカッソンヌ~バニエール・ド・リュション 218km(山岳)

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最後の休息日を終え、プロトンはいよいよ決戦の地・ピレネーへと向かう。カルカッソンヌからバニエール・ド・リュションというコース設定は4年前の大会の第16ステージと全く一緒。最後の休息日後というシチュエーションまで一緒だ。

最初にポルテ・ダスペ峠を越えるというところまで一緒だ。だが、その先の展開が少し違う。

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ポルテ・ダスペを越えた一行は、今度は昨年のツール第12ステージに登場したモンテ峠を登る。平均勾配8%。延々と厳しい登りが続く難所である。

4年前も昨年も、このあとバレ峠という超級山岳を登るレイアウトを用意していたが、今年は違う。4年前ツールの別ステージの途中に用意されていたポルティヨン峠に挑む。ここも厳しい勾配が続く、それなりの山岳だ。

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しかし、この日のステージの肝となるのは、登りではない。下り、ダウンヒルだ。

 

たとえば1つ目の1級モンテ峠の下りは9kmで800mを下る。8~9%の勾配の下りということで、非常に急勾配であることがわかる。

昨年のツール第12ステージでは全く同じ下りを使用したが、道幅は2車線あって比較的広いものの、小刻みなカーブが連続し、単独で山頂通過を果たした先頭のマイケル・マシューズは時速80kmを超える速さで駆け下りていった。

危険な下りというわけではないが、テクニックが反映されやすい下りと言え、単独で抜け出すことでライバルたちに差をつけることが可能そうだ。逃げ集団においても、総合勢においても。

 

とはいえ下ってからの平坦部分も長いため、あまりこのモンテの下りで勝負を仕掛ける選手は多くないだろう。

問題は、最後の1級ポルティヨン山頂を通過してからの10kmの下りだ。

フラム・ルージュに到達するまで下りが続く純粋なダウンヒルフィニッシュで、重大な動きが巻き起こりそうな臭いがぷんぷんする。

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総合勢でやはり気になるのはロマン・バルデ。

昨年の第9ステージ、モン・デュ・シャの下りでは、フルームすら引き離す強烈なダウンヒルを見せてくれた。

しかしそのあとの10kmに及ぶ平坦区間で捕まえられてしまったバルデ。今年は、この日のように純粋なダウンヒルでフィニッシュに到達するステージがいくつか用意されている。

そういった点でもバルデにとってはチャンスの大きい年なのだ。

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昨年の第9ステージのダウンヒルでフルームらを引き離したバルデ。今年も下りで勝負を仕掛けるか。

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ルートは違うが、2年前のツール第8ステージでも、バニエール・ド・リュションに至るダウンヒルフィニッシュが用意された。このときは「宇宙的ダウンヒル」を見せたフルームが圧勝した。

 

 

そしていよいよ、問題の第17ステージに到達する。

 

 

 

第17ステージ バニエール・ド・リュション~ポルテ峠 65km(山岳)

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もはや改めて説明する必要もないだろう。「短距離山岳ステージ」の極みとなるこのステージ。しかも、単なる3つの山が盛り込まれています、というだけでなく、そのいずれもが凶悪な難易度を誇る厳しい峠道なのである。

 

まずは1つ目。ペイラギュード。

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ペイラギュードと言えば、やはり思い出すのは昨年、フルームを苦しめ、バルデに勝利をもたらしたあの激坂フィニッシュ。

しかし、飛行場の滑走路を利用した昨年のあの激坂を今年も使うわけではない。ペイラギュードと必ずセットになるペイラスルドの峠を越えたあと、プロトンは進路を左手にとって飛行場を通り過ぎる。そして、昨年の激坂に比べれば緩い登りを登って山頂に到達するのである。

昨年ほどの厳しさではない。それでも、全長15kmの長い登りが、スタートダッシュを決めた総合勢たちの足を確実に奪っていく。激坂ではない分、ペースは激しいはずだ。ここでの足の使い方が、のちのちに大きく関わってきそうな予感がする・・。

 

2つ目はヴァル・ルーロン・アゼ峠

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他2つと比べると距離は短いが、その分厳しい勾配がぎゅっと詰まっている。9~10%近い勾配が続く黒い区間で早くも脱落していく選手は多いことだろう。

 

そして最後に待ち構える、超級ポルテ峠。

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まず、長い。16km。

それでいて勾配がキツい。

60km超短距離山岳ステージを越えてきた選手たちにとってはあまりにも厳しい登り。短いからといって序盤から飛ばしまくっていた選手たちをなぎ倒していくかのようなレイアウトだ。

しかも、この山の頂上が標高2215mと、今大会の最高標高地点(アンリ・デグランジュ賞対象地点)。気圧の低さなどが選手に及ぼす影響も無視できないだろう。

ここまで脱落者を出しながら先頭が少数に絞られていたとしても、この登りでまたリセットがかかりかねない。

本当にこれまで経験したことのないような戦いが繰り広げられそうな予感がある。

 

なお、この登り、元々は15kmにわたる未舗装路となっていたようだ。

しかし、さすがに今回のツールに合わせて舗装されるという。さすがにこの日の最後の15kmを未舗装路で戦わせるというのはあまりにもひどいとは分かっているが、少し残念な気持ちがないわけではない。

↓参考リンク↓
bikenewsmag.com

 

いずれにせよ、ヒートアップ間違いなしの今大会最大注目ステージ。

しかもこの日は、ツール初の「グリッドスタート方式」が取られるとの噂。

正確なルールがどうなるかはまだわからないが、いずれにせよこれも、スカイのチーム戦略を無効化し、キンタナやコンタドールがかつてブエルタでやってのけたような展開を生み出す可能性が十分にある。

この日が原因で、フルームのツール4連勝が失われるかもしれない。

やはり最大の注目ステージだ。

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2016年ブエルタ第15ステージ。118.5kmの短距離山岳ステージで、スタートと同時にコンタドールとキンタナが飛び出した。フルームは後続集団に取り残され、アシストも失い、バルベルデにも翻弄され、ボーナスタイムを含め2分43秒を失った。このタイム差はタイムトライアルでも挽回することはできず、初めてキンタナに敗北を喫したグランツールとなった。

 

 

 

第18ステージ トリ・シュル・ベーズ~ポー 171km(平坦)

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ピレネーの超級山岳に挟まれた、平穏なるステージ。今年は例年以上にスプリンターの戦国時代といった様相だが、今年、ここまでで4勝を挙げられるスプリンターはいるのだろうか。そして、ポイント賞は誰の手に?

逃げ名手たちにとっても残された数少ないチャンス。昨年は似たような状況の第19ステージで、勝ちきれなかったボアッソンハーゲンが逃げに乗ってなんとか勝利を掴んだ。そのときよりも山岳の難易度は低いものの、今回もまた、劇的な勝利を見てみたいものだ。

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昨年のスプリントではほんのわずかの差でキッテルに敗れていたボアッソンハーゲン。最後の最後で、勇気ある逃げの末に勝利を掴んだ。

 

 

 

第19ステージ ルルド~ラランス 200.5km(山岳) 

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アスパン! トゥールマレー! そしてオービスク!!

ピレネーの誇る美しくも険しい名峰たちが勢ぞろいする豪華絢爛たる一戦。

総合勢たちによる争いはもちろん、山岳賞を望む勇士たちによる最後の決戦の舞台ともなりそうだ。過去にもヴォクレールやマイカヴィランクなど、山岳賞職人たちが山頂の先頭通過を果たしている。

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広々とした景観と、美しき稜線。ドロミテの峻厳な風景とはまた違った、穏やかで雄大なるトゥールマレー。

 

全ての決戦は最後のオービスクで演じられることとなるだろう。だが、大逆転劇が演じられるほどには、厳しすぎる登りではない。

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ポイントとなるのは、このオービスク山頂から20kmにわたって続くダウンヒル

たとえばフルームがマイヨ・ジョーヌを失っていた場合、この下り坂ではほぼ確実に勝負を仕掛けてくるだろう。ジロ第19ステージのように。

あるいは、バルデがわずかの差でフルームを追いかけている場合は、チーム一丸となってこの登りと下りに挑むはずだ。いや、もしも彼がマイヨ・ジョーヌを着ていた場合でも、翌日に控える個人タイムトライアルを見据えて、戦いを放棄するわけにはいかないはずだ。

期待したいのは、パリ~ニースでよく見られる、最後のダウンヒルでの手に汗握る追走劇。単発の破壊力ではそこまででもないステージではあるものの、歴史に残る名勝負が生まれる可能性は十分にある。

 

 

 

第20ステージ サン・ペ・シュル・ニヴェル~エスプレット 31km(個人TT)

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昨年に続き、総合優勝争いの最後の舞台は個人タイムトライアルに委ねられた。今大会唯一の個人TT。ただし距離は31kmとやや長め。昨年は第20ステージの個人TTで総合2位と3位とが入れ替わった。しかも、総合3位に転落したバルデは、わずか1秒の差で総合表彰台すら失いかねなかった!

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苦手な個人TTにバッドデイが重なり、フルームとのタイム差を一気に2分近く広げてしまったバルデ。ゴール後、憔悴しきった表情で壁にもたれかかる。

 

だが、今年は距離は長くなったとはいえ、昨年ほどの悲劇には見舞われないはずだ。

何しろ、舞台はフレンチ・バスク。山岳TTと見まがうばかりに激しいアップダウンに加え、終盤には勾配10%の激坂区間が。

さすがにノーマルバイクの使用を推奨されるほどではないものの、昨年よりはクライマーにもまだチャンスはあるレイアウトとなっているはずだ。

バルデが総合優勝を飾るためには、この日、マイヨ・ジョーヌを着用していることが絶対条件なのは変わらない。そのうえで、最低でも、総合2位の選手に1分以上はタイム差をつけておきたいところ。

あとは、バルデの執念次第だ。

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エスプレットの名産品はトウガラシ。毎年秋になると、トウガラシ祭りとして、各々の家にトウガラシが飾りつけられる。ツール開催期間中はさすがにこういう風景は見られないだろうが、映像くらいは流してくれそうだ。

 

 

 

第21ステージ ウイユ~パリ・シャンゼリゼ 116km(平坦)

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ついに第105回目のツール・ド・フランスが幕を閉じる。

この日、黄色のジャージを身に纏い、シャンパンのグラスを傾けるのは誰か。

もちろん、「王者」クリス・フルームの5回目の勝利を祝いたい気持ちもある。

一方で、毎年代わり映えのしない風景からの脱却を図りたい気持ちもある。

フランスの誇る貴公子がこの日、栄光のジャージを身に着けているのであれば、シャンゼリゼの観衆は暴れ回らんばかりに熱狂に包まれることだろう。

コロンビアの若き天才、あるいはベテランの苦労人が、それぞれのチームメートと共に凱旋するのであれば、それもまた新たな時代の幕開けを感じることだろう。

かつて王者の相棒であった小さなオーストラリア人が、2011年以来の快挙を母国にもたらしてくれるかもしれない。

いずれにせよこの日は、3週間の全てが詰まった感極まる時間を過ごすことができるだろう。

 

そしてもちろん、最後の石畳の登りを舞台とした最強スプリンター決定戦も、見逃すことはできない。

2009年~2012年はマーク・カヴェンディッシュが4連勝を成し遂げた。

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2013年・2014年はマルセル・キッテルが2連勝を果たし、新たな時代を感じさせた。

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2015年・2016年はアンドレ・グライペルが2連勝し、稀代の重量級スプリンターの底力を見せつけた。

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しかし時代は変わる。

かつての最強は、新たに台頭してくる若者に、少しずつ座を奪われていく。

 

2017年は、そんな新時代のスプリンターの代表格、オランダのディラン・フルーネヴェーヘンが力強い「先行逃げ切り型スプリント」で初勝利を飾った。

彼は今年もヴィヴィアーニに次ぐ勝利数を誇るスプリンターとして、注目を集めている。

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ジンクスで言えば今年もフルーネヴェーヘンが連勝をするか?

しかし、昨年は悔しい途中リタイアで終わったアルノー・デマールや、ヨーロッパチャンピオンジャージを身に纏うアレクサンドル・クリストフ、そして、今年ツール初挑戦、どんな成績を残してくれるか予想のつかない男、フェルナンド・ガビリアもいる。

シャンゼリゼの表彰台」という栄光を掴み取るのは誰か。

個人的にはここに、カレブ・ユワンやブライアン・コカールがいないことが非常に悔やまれる。

 

 

ツール・ド・フランス2018 コースプレビュー2週目

近年の傾向とは逆行するように平坦中心だった第1週目。

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休息日を挟んで突入する2週目は、いきなりのアルプス3連戦。しかも、いずれも今大会随一の難関ステージばかり。

休息日明けの体調を崩しやすいこのタイミングでの3連戦で、総合優勝争いは大きな動きが巻き起こることだろう。昨年のような接戦には、今年はなりそうにない。

 

激動の第2週をプレビュウ。

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第10ステージ アヌシール・グラン・ボルナン 158.5km(山岳)

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ついにアルプス3連戦が始まる。3年前の2015年大会のように、第1週は平坦基調が中心となり、休息日明けに一気に激しい山岳バトルが始まる展開。休息日明けには「魔」が潜むことが多いため、思いがけぬ脱落者が出るかもしれない・・・

 

今大会最初の超級山岳として現れるのは、ツール初登場の「プラトー・デ・グリエール(グリエール高原)」。6kmの登坂の平均勾配は11.2%。プロトンは確実に引き裂かれることだろう。この山に差し掛かるのはスタートから2時間後。日本時間で言えば夜10時を過ぎた頃になるはずだ。

 

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この山岳は今大会の目玉の1つでもある。

それは単に厳しい登りというだけではない。その先に待ち構えている、1800mの「グラベルセクション」すなわち未舗装路である。今年のジロのフィネストーレ峠でも登場し、フルームの衝撃的なアタックを生み出した未舗装路が、ツールにもおよそ30年ぶりに登場する。

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このグリエール高原がフィニッシュに設定された5年前のツール・ド・ラヴニールでは、ジュリアン・アラフィリップが集団を抜け出して優勝を飾っている。モホリッチが2位、アダム・イェーツが3位であった。 

 

とはいえ、このグリエールの頂上からゴールまでは残り90kmもある。もちろんフルームはジロで残り80kmから飛び出したわけだが、あのときと違ってこの日はまだ第10ステージであり、アルプス3連戦の入り口でしかない。崩れ落ちる選手はいても、抜け出そうと画策する選手はいないだろう。

 

それにこの日の最終盤にはロム峠とコロンビエール峠の連続登坂が待ち構えている。こちらも悪名高いル・コロンビエール。そこから14kmの下りを経てゴールとなり、この日、フルームやバルデのダウンヒルアタックなんかも見られるかもしれない・・・。

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プラトー・デ・グリエールの高台に設置された、第2次世界大戦中のレジスタンス運動のモニュメント。74年前、この地で命を落とした121人の愛国者たちへの慰霊と敬意を表現する。

 

 

 

第11ステージ アルベールヴィル~ラ・ロジエール 108.5km(山岳)

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アルプス3連戦の2日目。そして今大会最初の「短距離山岳ステージ」。

スタート直後から超級2連続。その後も平坦のない、ひたすら登るか下るかを繰り返す厳しいレイアウト。今大会、60kmの超・超短距離山岳ステージがあるので目立たない気もするが、過去にドラマを生み出したジロやブエルタの短距離山岳ステージは、このステージより長かったのだ。この日、何かが起きないはずはない。

 

前日のグリエール峠に続き、この日のラ・ロジエールも、過去のツール・ド・ラヴニールでフィニッシュ地点として使用されている。しかも、2年連続で。

2014年はミゲルアンヘル・ロペスが、2015年はグレゴール・ミュールベルガーが・・・直前でコースミスをして、ギョーム・マルタンが勝利を飾った。

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ラ・ロジエールはひたすら長い登り坂。しかしその半分は緩斜面であり、最も重要になるのは残り10km台から残り4km台までの約6km。

2つある9%勾配区間で動きがあるか。それともそれまでの短くも厳しい道程で、既に動きが起きているか・・・。

 

 

 

第12ステージ ブール・サン・モリス~ラルプ・デュエズ 175.5km(山岳)

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怒涛のアルプス3連戦最終日。ついに現れる、伝説の山ラルプ・デュエズ

しかも、厳しいのはラルプ・デュエズだけではない。2015年のツール第20ステージで一緒になってキンタナたちの攻撃を生んだ「クロワ・ドゥ・フェール(鉄の十字架)峠」と、さらにもう1つの超級山岳マドレーヌ峠が待ち構えている。

累計獲得標高5000m超。今大会のクイーンステージと目される。

しかも、地味にこちらも3年前に初登場し、バルデに勝利をもたらした「ラセ・ド・モンヴェルニエ」も再登場。本当に今年は「3年ぶり」が多い。

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「崖に梯子をかけたような(辻啓氏)」美しき「モンヴェルニエのつづら折り」。今年は勝負所にはならないだろうが、この空撮は楽しみだ。

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2015年ツール第20ステージ。大観衆のラルプ・デュエズで、逃げ集団から降りてきたアナコナがキンタナを先導する。 

 

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ラルプ・デュエズは実力がはっきりと示される難峠。

この日、今大会の方向性が決定付けられることになるのか。

そして、2011年から3大会連続で続く「ラルプ・デュエズのフランス人勝利」は、今年も実現されるのか。

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2015年大会はティボー・ピノが制した。この年、あまりにも苦しいツールを過ごしていた彼が、最後の最後で掴み取った歓喜の勝利。このときのガッツポーズは自分の中でも上位にくる。

 

 

 

第13ステージ ブール・ドワザン~ヴァランス 169.5km(平坦)

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アルプスから中央山塊へと至る移動ステージ。

1週目とは打って変わって、スプリンターにチャンスがほとんどもたらされなくなる第2週・3週。今日は第2週唯一のスプリントチャンスステージとなる。

とはいえ、純粋な平坦というわけではない。ゴール前50kmを切ってから、カテゴリのないアップダウンが続く。逃げ切りを狙う選手たちにとっても、数少ないチャンスを狙おうと本気を出してくるはずだ。

キッテルやカヴェンディッシュのようなピュアスプリンターよりは、マシューズやクリストフ、サガンといったようなパンチャー的な素質を持つスプリンターたちが勝利を手に入れられそうだ。ガビリアももちろん、その中の一人と言えるだろう。

 

 

 

第14ステージ サン・ポール・トロワ・シャトー~マンド 188km(丘陵)

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マンドもまた「3年ぶり」の登場だ。3年前は、バルデとピノの牽制合戦を尻目にカミングスが勝利を掴み取った衝撃的な日だ。

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ラストのマンドの峠は3km・10%と、パンチャーとクライマーが鎬を削るにはちょうどいい勾配。パンチャー勢が頂上まで辿り着ければ最後のゴールは圧倒的優位だが、そこに至るまでの厳しい勾配でクライマー勢がこれを引き千切ることができるか・・・。

割と今年、サガンが活躍できるステージが少なかったので、この辺りで期待したいところ。

 

 

 

第15ステージ ミヨー~カルカッソンヌ 181.5km(丘陵)

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激動の第2週は比較的大人しい終結を迎える。

もちろん、1級山岳の長い登坂を超える必要はあるが、ダウンヒルの先に20km近い平坦も残っており、この下りで攻撃を仕掛けても旨味は少ないだろう。

むしろ、大逃げからの逃げ切り勝利が(今大会少ないチャンスをつかんで)見られるかもしれない。

そのときには1級程度の登りをこなせる足と、そのあとのダウンヒルで後続を突き放せる足とを持っている選手に女神は微笑むだろう。たとえばカルメジャーヌや、ボアッソンハーゲン、パンタノなど・・・あるいは、総合優勝争いから脱落している場合、アラフィリップやユンゲルスにも期待したいところ。

 

 

ツール・ド・フランス2018 コースプレビュー1週目

いよいよ開幕が近づきつつある、2018ツール・ド・フランス

その第1週目のコースをプレビュウしていく。

 

今年は何かと「3年ぶり」なコース設定。

それは第1週目からまさしくそうで、「3年ぶり」のチームTT。「3年ぶり」の「ブルターニュの壁」。「3年ぶり」の「ミニ・パリ~ルーベ」。

そして、2015年のように平坦が多い第1週目でもある。休息日明けに山岳3連戦が待ち構えている、という点でも一緒だ。

 

では、2015年が平凡な1週目だったかと言えばそんなことはない。

平凡なはずのオールフラット第2ステージが、まさかの大雨による集団分裂を巻き起こし、このときの遅れが原因でキンタナは敗北したと言っても過言ではない。

ユイの壁のステージではまさかの集団落車によりマイヨ・ジョーヌを着ていたカンチェラーラがレースを去り、ブルターニュでは同じくマイヨ・ジョーヌを着ていたトニー・マルティンが落車で早々と姿を消した。

 

そういう形でのスペクタルは望まないが、それでも、平坦だからレースは退屈になるとは限らない。

また、近年は若手の台頭も著しく、スプリンターの戦国時代化がより一層進んでいる。

連日、激しいスプリントバトルが展開されそうで、何だかんだ見所の多い第1週目となりそうだ。

↓3週間の注目コースをピックアップしてプレビュウした記事↓

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↓2週目のプレビュウはこちら↓

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第1ステージ ノワールムティエ・アン・リル~フォントネー・ル・コント 201km(平坦)

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フランス西部、ヴァンデ県からスタートする2018年ツール・ド・フランス。同県でのグランデパールは史上6回目となる。

そして全体としては、同県の西部、大西洋に浮かぶ「ノワールムティエ島」からスタートすることになる。

島と本土とを結ぶ砂洲「パサージュ・デュ・ゴワ」で有名で、2011年大会はこの海の道からのスタートとなった。

しかし、今大会はこの海の中道は使わずに、島の南部の「ノワールムティエ橋」を通って本土に渡るルートを採用したようである。

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島と本土とを結ぶ唯一の橋、ポント・ドゥ・ノワールムティエ(ノワールムティエ橋)。

 

なお、ノワールムティエ島自体をスタート地点として使用したのは2005年大会が最も最近の例。今大会は島の最北端に位置するノワールムティエ・アン・リルというコミューンでスタートする。

 

過去の大会の例に漏れず、初日ステージは非常にフラットなピュアスプリントステージ。4級山岳がゴールまで30kmという微妙な位置にはあるものの、基本的には逃げグループの中で争われることだろう。ジロのラインステージ初日(第2ステージ)ではこの山岳賞を巡る激しいアタック合戦も繰り広げられたが、ツールでは果たしてどうなるか。

 

そして、注目は今大会から採用された「ボーナスタイムポイント」。

今回はゴール前13.5kmの位置に登場するこのポイントでは、先頭通過から3秒、2秒、1秒のボーナスタイムを得ることとなる。

 

この秒数は微妙なところだ。たとえば、この日のフィニッシュラインを先頭で越えた選手には10秒のボーナスタイムが得られ、2位には6秒のボーナスタイムとなる。たとえばボーナスタイムポイントを先頭で通過した選手がゴールで2位となっても、1位でゴールした選手をボーナスタイムで超えてマイヨ・ジョーヌを得ることはできない。

結局は、この日の勝者がそのままマイヨ・ジョーヌ着用者となることは間違いがなさそう。それでも、明日以降のマイヨ・ジョーヌ争いにも影響を及ぼしそうな、面白い試みである。

 

ここ最近のツール・ド・フランスでは、常に、「最初のラインレース」で勝利した選手が、その大会の最多勝利選手となっている。

2013年:マルセル・キッテル(4勝)

2014年:マルセル・キッテル(4勝)

2015年:アンドレ・グライペル(5勝)

2016年:マーク・カヴェンディッシュ(4勝)

2017年:マルセル・キッテル(5勝)

 

この日の勝者は、このジンクスからすると、ただの1勝、マイヨ・ジョーヌ着用権以外のプレゼントがツールの神様から与えられることになるかもしれない。

今大会最強のスプリンターを決める重要なステージ、というと言い過ぎかもしれないが、気合の入った最強スプリンターたちのせめぎあいを、楽しみにしたい。

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昨年のツールで最初のスプリントステージとなった第2ステージ。リエージュの街でキッテルが強さを見せつけた。

 

個人的には、今年、5月に少しずつ調子を上げてきたグライペルが、その勢いのまま勝利を掴んでほしいという思いがある。ほんの少しだけど登り基調なところも彼に向いているはず。

彼は今年、チームとの契約に関する折り合いがつかず、移籍の可能性も出ているとか・・・。複数勝利を掴んで、よりより条件を手に入れてチームに残れるならば、それはとても幸いなことなのかもしれない。

 

 

 

第2ステージ ムイユロン・サン・ジェルマン~ラ・ロッシュ・シュル・ヨン 182.5km(平坦)

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引き続きピュアスプリンターたちの激しいバトルが展開しそうだ。ヴァンデ県の県庁所在地ラ・ロッシュ・シュル・ヨン、ナポレオンによって作られ、かつてはナポレオンの名を冠していた街へと至る182.5km。

ゴール前1kmで直角カーブを曲がって、あとは長い直線。前日も1.5kmの直線ゴールで、いずれも危険も少ない、チームトレインの力が肝になりそうなレイアウトだ。今シーズン、最も最強のスプリントトレインを形成しているのはクイックステップ・フロアーズ。今年ツール初挑戦となるフェルナンド・ガヴィリアが、自らの存在を主張する鮮烈なる勝利を叩き出せるか。

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「ミニ・ツール」とでも言うべき豪華な顔ぶれの揃ったツアー・オブ・カリフォルニアで、他を寄せ付けない圧倒的な力量を見せつけたガヴィリア。

 

昨日に引き続き、ゴール直前に置かれたボーナスタイムポイント。昨日は優勝選手のマイヨ・ジョーヌを奪い取るほどの効果はなかったものの、この2日のポイントの取り方次第では、勝利なしでマイヨ・ジョーヌを手に入れる可能性はある。このあたりの白熱た展開にも期待したいところ。

 

 

 

第3ステージ ショレ~ショレ 35.5km(チームTT)

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今大会の最初の目玉、35.5kmのチームタイムトライアル

35kmという距離は、3年前、同じく起伏の豊かなチームTTを行った2015年よりもさらに7km長い。このときはBMC、スカイ、モビスターの上位3チームは4秒以内に収まるという大接戦を繰り広げ、とくにスカイのニコラ・ロッシュが最後に少し遅れてしまったことが勝敗を分けるという、非常に盛り上がりを見せたチームTTだった。

そのときはブルターニュで開催されたが、今回もまた、ブルターニュ同様に起伏の激しいレイアウト。やはりスカイやモビスターといったチームが上位に来るのは間違いがなさそうだ。

同じ距離で開催された「前哨戦」クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのチームTTでは、スカイが圧倒的な記録を叩き出して勝利をしたが、同じ調子の良さが発揮されるとは限らない。BMCも強かったが、3位のロット・スーダル以下は結構な団子状態。チームTTが決して強くないはずのAG2Rラモンディアルもそこまで大きくはタイムを落とさなかったため、各チームがしっかりとチームTTに向けて準備を進めていることがよくわかる。あとは、本番にどれだけの選手を揃えてこれるかである。

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3年前のツールでわずか1秒差でスカイを破ったBMC。ドーフィネでも調子の良さを見せており、今年も優勝候補の最右翼である。スポンサー問題もあり、勝利は絶対である。

 

 

 

第4ステージ ラ・ボル~サルゾー 195km(平坦)

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ツール初登場となるサルゾーは、第1ステージの1km、第2ステージの1.5kmに続き、実に4kmというロングストレートをフィニッシュに用意している。幅も7mと広い、集団スプリントに最適なレイアウトだ。

公式プログラムによると、UCI新会長のダヴィド・ラパルティアン曰く「2018年大会で、最もすばらしいものになる」フィニッシュが見られるという。彼がこの村出身の人物だからという色眼鏡もあるだろうが・・・。

なお、このサルゾーの北側には、ブルターニュの誇る美しき「モルビアン湾」が広がっている。エーゲ海のように小さな島が点在するこの風景は、今大会のベスト空撮ショットの1つになるかもしれない。

 

 

 

第5ステージ ロリアンカンペール 204.5km(丘陵)

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チームTTを除けば、近年稀にみるフラットさで開幕した2018年ツール・ド・フランスも、いよいよ本格的にブルターニュ地方に入ってくるに従って、より「アルデンヌ風味」の丘陵ステージが開始されてくる。

この日も、逃げ切りが容認される、という可能性は少ないながらも、序盤の山岳賞ジャージを独占できる可能性を巡って、激しいアタック合戦が繰り広げられる可能性がある。最後はそこまで厳しくはないが登りゴール。パンチャーたちの激しいせめぎ合いが予想されるだろう。

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2016年・2017年ともに、序盤のパンチャーステージを制しているペテル・サガン。アラフィリップ、マシューズといった過去の敗北者たちはリベンジを果たせるか。

 

今年のツール・ド・フィニステーレは、今回のこの第5ステージと同じフィニッシュを設定していた。このときはディレクトエネルジーのジョナタン・イベールが勝利し、そしてロマン・バルデが2位、ギョーム・マルタンが3位につけていた。

このことが示す意味とは。意外にも、わずかなタイム差が総合争い勢の中でもついてしまうかもしれない。

 

 

 

第6ステージ ブレスト~ミュール・ド・ブルターニュ・ゲルレダン 181km(丘陵)

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ブルターニュの壁」が3年ぶりに登場。2kmの登坂はほぼ直線で、挑む者の精神を挫けさせる。3年前は、山岳賞を着ていたテクレハイマノや、クフャトコフスキが早々に遅れる姿を見せ、最終的にはヴィンツェンツォ・ニバリが餌食となった。今年はこの登りを「2回」こなすことに。また、1回目の登りを終えたあと(残り13km地点)にボーナスタイムポイントが控えているため、1回目は1回目で重要な役割を果たす可能性がある。

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3年前はAG2Rラモンディアルのアレクシー・ヴュイエルモが制する。今年は、たとえば昨年のフレッシュ・ワロンヌ3位のディラン・トゥーンスや、同9位のダヴィ・ゴデュなどに期待したいところ。彼らが出場するかどうかはまだわからないけれど。

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キャリア最大の勝利となったヴュイエルモの3年前の勝利。ダニエル・マーティンも集団から抜け出して追撃したものの、届かなかった。

 

 

 

第7ステージ フジェール~シャルトル 231km(平坦)

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今大会最長の231kmに、小刻みなアップダウンはあるものの、基本的には平坦ステージ。平原の只中ゆえの横風に注意したいくらいか。

今大会は今日を含めて4回目の集団スプリントの機会となるだろう。ここまでで、今大会調子の良いスプリンターが誰なのか、段々と分かってくるはずだ。

キッテル、グライペルカヴェンディッシュサガン、デマールといった最強クラスの選手はもちろん、昨年シャンゼリゼを制したフルーネヴェーヘンや、今年ツール初挑戦となるユワンやガヴィリアなど、近年稀に見る戦国時代の様相を呈している。

場合によっては連日、優勝者が入れ替わるようなこともあるかもしれない。むしろそんな展開を望んでいる。

なお、ラストはわずかに登っている。

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シャルトルと言えば大聖堂。12世紀から13世紀にかけて作られた、「フランスにおける最も美しいゴシック建築」の1つ。

 

 

 

第8ステージ ドルー~アミアン・メトロポール 181.5km(平坦)

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前日に引き続き、細かなアップダウンを含んだ平坦ステージ。基本は、集団スプリントになるだろう。各スプリンターチームも万全の態勢を整えており、ジロやブエルタほどには、簡単に逃げを許すようなことはないだろうから・・・。

とはいえ、この日はフランス革命記念日。一花咲かせたいフランス人エスケーパーたちの、意地の張り合いが見られるかもしれない。グジャールやシャヴァネル、ケムヌール、あるいは、かつて革命記念日に黄色のジャージを着た男、トニー・ギャロパンなど!

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アミアンも大聖堂で有名だが、「北の小さなヴェネツィア」と呼ばれる水上庭園も見ものである。

 

 

 

第9ステージ アラス城塞~ルーベ 156.5km(丘陵・石畳)

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ツール・ド・フランスに限らず各グランツールの主催者は、最も日数の長い第1週目のラスト(大体が第9、第10ステージ)にその年の大会を象徴する強烈なステージを放り込んでくる。

個人タイムトライアルの長かった2012年は第9ステージにも個人TTを用意し、ブラッドリー・ウィギンスが圧倒的な強さを見せつけた。

2013年は第8ステージのアクス・トロワ・ドメーヌでマイヨ・ジョーヌを得たフルームが、第9ステージにてチームをバラバラにされる危機的な状況に陥った。

2014年はラ・プランシュ・デ・ベルフィーユにてニバリが最強であることを証明した。

2015年はチームTTにおける激戦。

2016年はアンドラ・アルカリス、2017年はモン・デュ・シャを含む超級山岳3つを放り込み、いずれもクイーンステージが用意された。

 

そして迎えた2018年。

今年のツールは、この最重要ステージに、「ルーベ」を当て込んできた。

しかも、モン・サン・ペヴェルからカンフィナン・ペヴェルまで。本場「パリ~ルーベ」でも勝負所となる5つ星パヴェを本場と同じ終盤に持ってきた。今大会の総合優勝争いを左右する大事な一戦となることは間違いない。

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2016年パリ~ルーベのモン・サン・ペヴェルは、最後のルーベとなったカンチェラーラを容赦なく飲み込んだ。

 

距離が短いというのもいいところだ。本場のようにやや退屈な前半戦もなく、かなり早い段階で強力な石畳の連続に襲われることになる。その分、勝負を仕掛けようとする選手たちは、最初からトップギアで駆け抜けていくだろう。そのスピードから、誰が最初に脱落するのか。

2014年ツールの石畳ステージでチームに支えられながらライバルたちに差をつけたヴィンツェンツォ・ニバリ。

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あるいは、今年2月にもこのステージの下見に出て、かつ初出場のストラーデビアンケでも泥に塗れながら2位に入り込んだ走りを見せたロマン・バルデなどに期待。

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彼らにとっては、この日、雨が降ることを期待していることだろう。

そして、ツール5勝目がかかる王者にとっては、雨の石畳ステージというのは、実にトラウマなものに映るに違いない・・・。

 

 

果たしてどんな波乱が、この「北の地獄」ステージに待ち受けているのか。

スタートからゴールまで、全く目が離せそうにない、重要なステージだ。