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ベスト・オブ・ヤングライダーズ in ツアー・オブ・カリフォルニア2018【U25限定レビュウ】

ツアー・オブ・カリフォルニアは、これから伸びる若手選手たちの発掘場である。

主戦場のヨーロッパから遠く離れ、グランツールと比較すればそこまで山岳が厳しいわけではないカリフォルニアは、グランツールの総合争いをする一流選手たちを多く連れてくるわけにもいかず、比較的若い選手たちの出場が多くなる。

実際に過去にも、地元アメリカの育成重視チーム「ハーゲンスバーマン・アクセオン*1」の20歳前後の選手たちが活躍したり、一昨年・昨年とジュリアン・アラフィリップ、ジョージ・ベネットといったまさに伸び始めていた選手たちが総合優勝を果たしてもいる。

 

特に今年は、ワールドツアー化2年目ということもあり、特にスプリンターの出場選手は豪華に、コースレイアウトも例年以上に山岳が厳しくTTが長くなるなど、本場グランツールにも負けないようなプロフィールを用意してきている。

そのような今年のカリフォルニアの環境下で活躍した選手たちは間違いなく、今後も台頭してくるであろう実力者であるに違いない。

 

だから、今回はいつもと趣旨を変え、各ステージの「優勝者以外」の活躍した選手たちの中から、25歳以下に限定して注目選手をピックアップしていく。

勝ってはいないけれども、目覚ましい活躍をした若手選手たちに注目することで、数年後彼らがより大きなレースで活躍したときに「やっぱりな」と思えるようになるはずだ。

 

 

 

第1ステージ ヤスペル・フィリップセン

ベルギー/20歳/ハーゲンスバーマン・アクセオン/スプリンター 

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デパンヌ3日間レースでヴィヴィアーニ、アッカーマンに続く3位を記録した驚異の若手スプリンター。

その実力を反映するかの如く、最強スプリンターが集うこのカリフォルニア初日ステージで6位という結果を叩き出した。

だが、彼の「凄さ」はその結果だけではない。この結果を出すために彼がゴール前で繰り出した動きにこそ、彼の底知れなさを感じさせる。

 

ゴール前300m手前。最終発射台のマキシミリアーノ・リチェセにリードアウトされるフェルナンド・ガヴィリアに対し、果敢に肩をぶつけながら最適なポジションを奪おうとするフィリップセン。

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一度、二度と肩をぶつけてくるフィリップセンに対し、ガヴィリアもこれを力で押し返す。

結果としてガヴィリアがその場所を譲ることはなかったが、フィリップセンもバランスを崩すことなく最後のスパートをかけ、サガンやキッテル、クリストフらに追い抜かれはしたものの、ステージ6位でゴールすることはできた。

ゴール後、ガヴィリアに厳しく窘められる姿も。実際、昨年のツールもこういう動きによって落車とリタイアが発生してもいる。「やり過ぎ」はご法度。先輩として、若手の無謀に対する注意は欠かせないことだろう。

 

しかし大先輩たちに対して憶することなく闘志を剥き出しにする20歳の野獣系スプリンター。将来が楽しみな選手であるのは間違いない。

今大会は2回目のピュアスプリントステージとなった第5ステージでDNFと残念な結果。今後、より経験を積み、過酷なワールドツアーレースで更なる実績を積み上げられるよう成長してほしい。

 

 

第2ステージ ダニエルフェリペ・マルティネス

コロンビア/22歳/チームEFエデュケーションファースト/オールラウンダー 

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昨年まではウィリエール・トリエスティーナに所属し、昨年はジロに出場したほか、ツアー・オブ・ターキーでもクイーンステージで区間3位、最終総合成績でも4位に入った。

現在急成長中の若手コロンビア選手の1人だが、今回のカリフォルニアで更に一皮剥けた形に。第2ステージのジブラルタルロード頂上決戦で、優勝者ベルナルから30秒遅れの区間5位となった。

もう1つ注目すべきは、独走力の高さ。今年のコロンビア国内選手権ではベルナルに次ぐ2位。そして、今大会の第4ステージに用意された34.7kmの個人タイムトライアルでは、ベルナルを上回る区間10位であった。

これらの成績を受けて、最終総合成績でも総合3位。今大会、7ステージ中5ステージをコロンビア人が制した形になったが、総合成績においても1位・3位をコロンビア人が独占したことになる。

なお、ステージレースだけでなく、昨年はミラノトリノで7位、トレ・ヴァッレ・ヴァッレジーネで9位など、クライマー向けのワンデーレースでも成績を残している。

今後、チームEFのステージレース及びアルデンヌ系クラシックのエース候補として注目していくべき選手である。

 

しかしチームEF=キャノンデールは本当、ウッズやベヴィンなど「どちら様系」の獲得・育成に定評のあるチームである。そういうところは本当、好き。

 

 

第3ステージ カレブ・ユワン

オーストラリア/23歳/ミッチェルトン・スコット/スプリンター

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もう「若手」とは言えないような印象もあるがまだ23歳。7月に24歳となる。

今大会勝つことができなかったのは残念だが、しかし今シーズン、少しずつ進化を遂げている彼の走りを象徴する結果だったのがこの第3ステージである。

 

カレブ・ユワンと言えば、その名前が大きく取り上げられるきっかけとなったのは2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。登りフィニッシュでサガンとデゲンコルブを下しての勝利であった。

その後、2016年のツアー・ダウンアンダーで2勝。「ポケット・ロケット」の愛称と独特の超低空スプリントで話題を大きく集めた選手となった。

しかし、そのダウンアンダー第2ステージの「スターリング登りフィニッシュ」ではずるずると遅れる姿が映し出され、ブエルタでは登りで勝ったとはいえ、あくまでも基本はピュアなスプリンターなのかな、という印象を感じていた。その後も、ド平坦スプリントでは輝かしい勝利を重ねながらも、ミラノ~サンレモなど多少の登りを踏まえるスプリンター向けレースではそこまでの結果を出せない姿を見て、その思いを強くした。

 

しかし、今年はその走りに変化が現れたように感じる。ダウンアンダーでは、2年前のリベンジとでもいうように、スターリング登りフィニッシュで優勝を飾った。また、ミラノ~サンレモでは勝利こそ逃げ切ったニバリに奪われたものの、集団内で先頭を獲っての2位。昨年、フェルナンド・ガヴィリアがジロ・ディタリアで登れる姿も見せてマリア・チクラミーノを獲得したのに触発されたかのように、今年のガヴィリアは(多少のピュアスプリント力を犠牲にしつつも)「登りを含んだスプリント」での活躍を見せつつある。

 

そして、今回の第3ステージである。小刻みな山岳を越えてラグナ・セカに至るパンチャー向けのレイアウト。

2年前、同じようなレイアウトで登場したときは、登りにも強いペテル・サガンが強豪スプリンターの中で唯一残り、余裕の勝利を獲得した。

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今回もステージ優勝は、過去2回のカリフォルニア勝利を果たしている名パンチャー、トムス・スクウィンシュ。

しかし彼らを追走したメイン集団の先頭を獲ったのはカレブ・ユワン。サガンを退けて、連続する山岳を越えた先のスプリントで「勝利」したのである。ガヴィリアもこの日は4分39秒遅れであった。

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この日の3位もあり、第1・第5ステージも勝てはしなかったが2位に入ったことにより、最終日までポイント賞ジャージを確保することができていたユワン。

しかし最終日、ガヴィリアに優勝され、ユワンが3位となってしまったため、3ポイント差という僅差での敗北を喫してしまった。

 

結果、勝利も特別賞ジャージも持ち帰ることができず、その意味で「失敗」した今回のユワン。

だが、この1週間で得た自信は必ず次につながるものだと思われる。

ツール・ド・フランスでは、その経験が結果に結実されるだろうか。

 

 

第4ステージ① ミケル・ビョーグ

デンマーク/19歳/ハーゲンスバーマン・アクセオン/TTスペシャリスト

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今大会最年少? 昨年の世界選手権U23個人タイムトライアル王者として名を馳せた。当時はジャイアント・カステリ所属だったが今年はチーム自体が消滅し、この「最強育成チーム」への移籍を果たした。まだまだワールドツアーチームへの挑戦は先のこととなるだろう。今はまずは経験を積んでいきたい。

また、第1ステージではフィリップセンの最終リードアウトとして貢献した。名スプリンターには名TTスペシャリストの存在が必要不可欠。ボブ・ユンゲルスしかり、トニー・マルティンしかり。最終発射台こそスプリント力が重要になるが、それ以外では集団先頭での高速牽引、および逃げを捕まえる役割として独走力の高い選手の存在は非常に重要になる。

今後も、フィリップセンとのコンビネーションで、チームに多くの勝利をもたらしてもらいたいものだ。

 

 

第4ステージ② タオ・ゲオゲガンハート

イギリス/23歳/チーム・スカイ/オールラウンダー

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アクセオン所属だった2年前に新人賞2位。翌年にチーム・スカイ入り。昨年はカリフォルニア総合8位。しかし今回、個人タイムトライアル能力を一気に高め、第4ステージ区間3位。結果、総合5位と自身最高位の総合順位を獲得する。

また、第6ステージでベルナルをアシストした走りも印象的。自身も3位に入り、ステージレーサーとして一皮剥けた一週間となった。

 

なお、

とのことなので、みんなもツアー・オブ・ジャパンでJLTコンドールのオリー・ウッドを応援しよう!

 

 

第6ステージ ブランドン・マクナルティ

アメリカ/20歳/ラリー・サイクリング/ルーラー

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2月のドバイ・ツアー、ハッタ・ダムのステージにて残り50mまで逃げ続けた、元ジュニアTT世界チャンピオン。

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驚異的な走りも、1度だけなら偶然かもしれない。しかしこのカリフォルニア第6ステージでトッププロ選手たちに負けない走りを見せた今回、その実力が確かに間違いのないものであることを証明した。

得意なはずの個人タイムトライアルで失敗したのが残念。それでも今後、チームの若きエースとしてさらなる注目が集まることだろう。

ラリー・サイクリング自体も、エースのエヴァン・ハフマンが2年前山岳賞、昨年ステージ2勝とコンチネンタルチーム(当時)とは思えない活躍を見せていた。今年、プロコンチネンタルチームに昇格し、より多くのトップレースへの参戦の機会を得たこのチームの選手たちは、今後ももっともっと活躍を期待できることだろう。  

 

 

第7ステージ マックス・ワルシャイド

ドイツ/24歳/チーム・サンウェブ/スプリンター

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勝った、と彼は確信した。

右手を掲げ、勝利を喜んだ。

しかし、ごく僅かの差で、勝利は「最強スプリンター」の手に渡った。

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適切にバイクを投げていれば、間違いなく勝っていただろう。

ここは経験の差というべきか・・・年齢はワルシャイドの方が上なのだけれども。

それでも、彼の実力は証明された。

ツール・ド・ヨークシャーでコカールやコルトニールスンを打ち破って勝利を遂げたのに続き、今シーズン実質的な「2勝目」だ。

 

ドイツの若手スプリンターは次々と有望な人材が現れている。

チーム・サンウェブに限っても、2016年ジロ最終日に「勝利」したニキアス・アルント。彼が今後のドイツ人スプリンターの新世代を率いていくのだろう、と思っていた。彼が2017年のカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで優勝したとき、その思いはほぼ確信に変わっていた。

しかし、同年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで、今度はフィル・バウハウスというドイツ人が鮮烈な勝利を遂げた。彼は今年のツアー・ダウンアンダーでも健闘し、2月のアブダビ・ツアーでもステージ勝利を果たしている。

 

アルント、バウハウス。彼らの登場だけでも驚きだった中で、さらに登場したのがワルシャイドという男だった。

先に勝利したツール・ド・ヨークシャーではバウハウスがエースとして出場していた。しかしほぼ全てのステージで、バウハウス以上の成績をワルシャイドは叩き出した。

そもそも、4月のシュヘルデプライスにおいても、バウハウスとコンビを組みつつも、最終的にはこのワルシャイドが6位という結果を出したのだ。

 

その他、若手ドイツ人スプリンターとしては、今年のハンザーメ・クラシック、デパンヌ3日間、シュヘルデプライスで次々に表彰台を勝ち取り、かつツール・ド・ロマンディではついにプロ初勝利を手に入れたパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)などもいる。

当然、カチューシャ・アルペシンのリック・ツァベルもまた、これからが楽しみな若手スプリンターである。

 

 

 

いかがだっただろうか。

数年後には、ここに挙げた選手たちの多くが、トップ選手たちに混じってさらなる活躍を見せてくれることだろう。

2020年代の主役となりうる彼らの動向に、これからも注目を続けていきたい。

*1:昨年まではアクセオン・ハーゲンスバーマンという名称。

ツアー・オブ・カリフォルニア2018 プレビュー

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5/13(日)~5/19(土)の7日間で開催される、北米最大のステージレース。

日本時間では大きな時差があるため、14日(月)の早朝から20日(日)の早朝となる。同じ時期にジロもあるためリアルタイム視聴は困難だが、JsportsはDAZNよりも見逃し配信の期間が長いので多少はね?

 

実は今回のカリフォルニア、例年以上に期待が持てる出場選手のラインナップとなっている。まず、ジロ出場スプリンターが正直そこまでレベルが高くないのに対し、こちらのカリフォルニアには常連のサガンカヴェンディッシュ、クリストフのほか、2年連続出場となるキッテル、そして今年初出場でツール初出場も狙っているガヴィリアとユワンまで揃っている。まさに「ミニ・ツール」と形容するのに相応しい顔ぶれだ。

総合優勝狙いの選手たちはそこまでではないものの、2年前のアラフィリップ、昨年のジョージ・ベネットと、若手の有望株の台頭が目立つ昨今のカリフォルニア。やはり今回の総合優勝争いにも若手に注目していきたいところ。その筆頭がスカイのエガンアルリー・ベルナルだ。また、今年ついにワールドツアー入りを果たした、2年前新人賞のネイルソン・パウレスの走りにも期待したい。

そんな注目の選手たちが走る今年のコースだが、純粋なスプリンター向けの平坦ステージが3つ、いくつかの登りをこなしたうえでの小集団スプリントが予想されるパンチャー向きのステージが1つ、そして本格的な山岳ステージが2つに、例年よりも距離の長い個人TTの合計7つと非常にバランスが良い。

スプリンターも、クライマーも、3週間のグラン・ツアーではまだ実力を発揮しきれないような若き才能も、みんな活躍する可能性をもった魅力的なレースに進化している今年のカリフォルニア。

早朝の眠たい時間ではあるものの、可能な限りチェックしていくようにしよう。

 

今回は全7ステージの概要と、個人的に選んだ注目選手9名をピックアップして紹介していく。

 

 

 

 

コース詳細

第1ステージ ロングビーチ 134.5km(平坦)

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ロサンゼルス南部の太平洋沿いに設定された、11.5kmの周回コースを12周するクリテリウム形式のレース。

最初の3.5kmはパレードランで使用されるため、実際のレース距離は134.5kmとなる。レイアウトは完全なるフラット。

残り1kmを切ってからも直角左カーブが待ち構えており、トレインを使用した位置取りが至極重要となる。

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今期、高いチーム力を見せているクイックステップ・フロアーズが、若きエース、フェルナンド・ガヴィリアを勝たせることができるか。

現状ではエリア・ヴィヴィアーニの8勝(5/7現在)に対して4勝と、怪我があったこともありまだまだ結果を出し切れていない。今年、ツールに初挑戦するガヴィリア。このカリフォルニアでまずは予行演習といきたい。

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昨年も第1ステージを制したクイックステップ・フロアーズ。そのときのエースはもういないが、今年、新たなエースで北米レースに挑む。 

 

 

第2ステージ ベンチュラ~ジブラルタルロード 155km(山岳)

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今年のカリフォルニアは、2日目にしていきなり超級山頂フィニッシュをもってきた。2年前の大会ではこのステージを制したジュリアン・アラフィリップがそのまま総合優勝を自分のものとした。今年も、この日の勝者が大きなチャンスを掴むこととなるだろう。

 

ジブラルタルロードのレイアウトは登坂距離12km、平均勾配8%ツール・ド・フランスの難関ステージで採用されてもおかしくはないくらいの本格的な山頂フィニッシュである。登坂時間は約30分。残り2kmで10~14%の最難関区間が待ち受けている。

 

2年前は残り10km、9%弱の厳しい区間で、出場選手中最年少であったネイルソン・パウレス(アメリカ、アクセオン・ハーゲンスバーマン)が集団から抜け出した。

共に飛び出したスイスチャンピオンのダニーロ・ウィスを引き千切って力強くペダルを踏み続けたパウレスは、残り4kmで追走してきたピーター・ステティナとラクラン・モートンに追い付かれるまで、単独で先頭を走り続けていた。

ステティナは10%以上の勾配が続く残り2km地点でペースアップして抜け出し、独走体勢に入る。ラスト1kmのアーチを通り抜けたタイミングでは、アンドリュー・タランスキーやジョージ・ベネットが控えるメイン集団とは10秒~20秒のタイム差を開いていた。

しかし、ここからのアラフィリップのペースアップが凄まじかった。上記のタイム差を一気に縮め、あっという間にステティナに追い付いたアラフィリップは、残り200~300mで再び加速。ステティナを完全に引き千切り、最後は15秒のタイム差をつけてゴールした。

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このときの勝利でアラフィリップは2016年大会の総合優勝を決定付けるわけだが、6kmの独走をかましていたパウレスもまた、この日のステージを30秒遅れの区間5位で終えている。ローハン・デニスやタランスキーよりも上位でゴールしているのだ。

これにてパウレスはその年の新人賞ジャージ獲得を決定付ける。

今年、再びプロトンの前に立ちはだかるジブラルタルロード山頂フィニッシュに向けて、チーム・ロットNLユンボの(おそらく)エースとして立ち向かうことになるパウレスは密かに心中燃えていることだろう。この山が、彼の栄光の入り口だったのだから。

 

 

第3ステージ キング・シティ~ラグナ・セカ 197km(丘陵)

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ラグナ・セカもまた、2年前のカリフォルニアでも使用されたフィニッシュ地点である。モータースポーツの聖地であり、この3月までは「マツダ・スピードウェイ・ラグナ・セカ」という名称だったこの地も、4月からは新たに自動車用品メーカーが命名権を得て「ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ」へと変更された。

全体的に山がちで、この日の獲得標高は2500mに達する。

ゴール前にも2級・3級山岳が連続しており、特に最後の山岳はゴール前3.6kmから始まり登坂距離1.1km、平均勾配10%の激坂となっている。

これらを乗り越えた末に、サーキット内でのスプリントフィニッシュとなる。最後は名物「コークスクリュー」を下ってのハイスピード・スプリント・バトルとなる。

ピュアスプリンターというよりは、パンチャー向きのコースレイアウトと言えるだろう。

 

2年前はペテル・サガンが勝利。BMCレーシングチームも4名を引き連れて対抗したものの、サガンの圧倒的な力の前にいとも簡単に蹴散らされてしまった。

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今年も、登りの連続を越えてここまで来れるスプリンターは、サガン以外ではアレクサンデル・クリストフくらい・・・いや、ガヴィリアは昨年ジロで山岳も平気で乗り越えていたし、カレブ・ユワンも今年、ピュアスプリント以上に登り勝ちなレイアウトでのスプリントで力を発揮している。

今年は2年前ほどのサガン独壇場には、ならなそうである。

 

 

第4ステージ サンノゼモーガンヒル 34.7km(個人TT)

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サンノゼシリコンバレーと大学の街で、昨年は超級ハミルトン山を越える山岳ステージとなり、ラファウ・マイカが勝利した。

今年はここで個人タイムトライアルが開催される。5年前もサンノゼで個人タイムトライアルが行われたが、そのときは標高287mまで登ってゴールする準山岳TTといった様相であった。

今回はコース中心部の標高はやや高いものの、基本的にはフラット。

直線も多く、トリッキーなカーブも少ないので、純粋にTTスペシャリスト向けのステージと言えるだろう。

 

ツアー・オブ・カリフォルニアの個人タイムトライアルは20km前後のものが多いが、今回は35km弱と長め。

第2ステージの勝利だけでは勝ちを得ることは難しそうだ。マイカやアダム・イェーツにとっては不利と言わざるを得ない。

なお、この日はタグ・ホイヤーがスポンサーのようで、来期のスポンサー問題に苦しむBMCレーシングチームにとっては重要な1日となりそう。

ブレント・ブックウォルターティージェイ・ヴァンガーデレンのように、総合成績も狙えてTTの強い選手、そしてバスク1周の個人TTで実に惜しい区間2位に終わったパトリック・ベヴィンなどに期待。いや、来るよ! 今回はベヴィン来るよ! (ベヴィンには少し長い距離だけれど・・・)

 

 

第5ステージ ストックトン~エルクグローブ 176km(平坦)

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第1ステージ以来、久々の平坦ステージ。今大会多く出場している有力スプリンターたちが再び訪れたチャンスを狙う。

しかし昨年もまさかの逃げ切りが発生しているカリフォルニア。ゆめゆめ油断せぬように・・・とくにクリストフ。

 

下の図を見てわかるように、エルクグローブ近郊に入ってからはひたすら真っ直ぐな道が続く。

残り30kmを過ぎてからの「ツイン・シティーズ・ロード」はおよそ15km、そこから直角に右に曲がってからの「ブルースビル・ロード」もおよそ15kmといった長距離ストレートである。

かといってカリフォルニア都市部のひたすらだだっ広い道というわけではなく、基本的には狭い農道のため、必ずしも逃げにひたすら不利というわけではないが、常に前を走る集団と伴走する車列が見える状態というのは、追う側にとっては精神的に楽になるだろう。だからきっと、逃げ切りは発生しない・・・はず。

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なお、ラスト1kmを切ってから右に直角カーブして入る「シビック・センター・ドライブ」は幅の広い大通りで、複数のトレインによって作られる大迫力の集団スプリントが見られることだろう。

 

 

第6ステージ フォルソム~サウス・レイク・タホ 196.5km(山岳)

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シエラネバダ山脈のタホ湖畔に至る、今大会2つ目のクイーンステージ。

スタート地点から2500mほど登り、そこから一度1000m下ったのちに、再び2200m地点まで登る厳しいレイアウト。総獲得標高は4880mに達する。

勾配は第2ステージのジブラルタルロードほど厳しくはないものの、とにかく常に登っているか下っているかとなるため、総合リーダージャージを着る選手がどれほど耐え切ることができるか、が勝負である。チームの力も重要だ。

展開によっては逃げ切りも狙えるステージだけに、序盤からのアタック合戦も激しいものとなりそう。

 

同じ最高標高地点カーソン・パスを経由し、同じくレイク・タホ湖畔へとゴールするレイアウトだった2年前の第5ステージでは、トムス・スクインシュが2年連続となる逃げ切り勝利を達成。ジブラルタルロードで総合リーダージャージを獲得していたジュリアン・アラフィリップも、危なげなくジャージを守り切った。

スクインシュは昨年も期待されていたが第2ステージの落車でリタイア。脳震盪を起こしている可能性がある中で再びバイクに乗ろうとする執念を見せたが、チームからドクターストップがかかった。命に関わることなので、仕方がない。

悔しい結果に終わった昨年へのリベンジを、今年は果たすことができるのか。チームをトレック・セガフレードに変え、再挑戦だ。

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2年前のレイク・タホで逃げ切り勝利を決めたスクインシュ。一緒に逃げたラリー・サイクリングのアダム・デヴォスは悔しい2位に終わった。

 

 

第7ステージ サクラメント 146km(平坦)

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恒例の、州都サクラメント周辺部の平坦ステージ。中心部からスタートしたプロトンは一度、名物タワーブリッジを通ってサクラメント西部郊外のルートを辿る。

そして最後に再び中心部に戻ってきて、3.3kmの周回コースを3周してフィニッシュとなる。

最後の周回コースのレイアウトは以下の通り。

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サクラメントと言えば、サガンと並ぶキング・オブ・カリフォルニアであるマーク・カヴェンディッシュに注目したい。過去4回、サクラメントを舞台にした集団スプリントにて勝利している。

直近では2016年。長く不調に苦しんでいた彼が、復活の勝利を見せつけた。そしてその後、ツール・ド・フランスにて怒涛の4勝である。

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今年も、いや昨年ツールから、ひたすらツイてないカヴェンディッシュ。今年もこのカリフォルニアの勝利で、勢いを取り戻すことができるか?

 

 

 

注目選手

ペテル・サガン(スロバキア、28歳)

ボーラ・ハンスグローエ、スプリンター

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プロデビュー当初の8年前から毎年欠かさずに出場しており、16回のステージ優勝と5回のポイント賞、そして2015年には総合優勝も果たしているという、まさにキング・オブ・カリフォルニアである。2016年には山岳ステージで逃げにのったうえで最後の集団スプリントで2位にまで登り詰めるという、余人には想像できない芸当もやってのけるエンターテイナー。アメリカとの相性は非常に良い。

今年も昨年同様、ラファウ・マイカを総合エースに据えての参戦。サガン自身はステージ優勝とポイント賞獲得に集中することだろう。

今年はどんな「サガン節」を見せてくれるのか。

 

 

マルセル・キッテル(ドイツ、30歳)

カチューシャ・アルペシン、スプリンター

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「かつての」最強スプリンター。そんな言い方をしては彼にあまりにも失礼ではあるけれども、今年の彼は本当に苦しい時期を過ごしている。相性の良いドバイ・ツアーでも噛み合わず、3月のティレーノ~アドリアティコにてようやく2勝。だがその後も勝利はなく、引き続き苦しい時期を過ごしている。

今回のカリフォルニアを終えると、いよいよツール本番まであとわずかとなってしまう。チームとの良い関係をそこまでの間に作っていけるか。今、最も緊張感をもってカリフォルニアに臨む選手の1人であろう。

 

 

フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、23歳)

クイックステップ・フロアーズ、スプリンター

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「現」最強スプリンター、というのはまだ言い過ぎかもしれないが、それでも昨年のジロ初出場からの怒涛の4勝、そしてポイント賞の獲得は圧巻であった。昨年活躍したスプリンターの3本の指には確実に入る選手だ。

そんな彼が、今年いよいよツール・ド・フランスに挑戦。そのためにジロをパスし、この初出場となるカリフォルニアにて調整をすることに。かつての先輩、キッテルを超えることができるか。一応、今年唯一の直接対決となったティレーノでは惨敗しているため、このカリフォルニアでは密かに燃えていることだろう。

チームメートも相変わらず豪華。サバティーニと並ぶ最強発射台の1人、マキシミリアーノ・リチェセを軸に、若手期待のスプリンターであるキャスパー・アズグリーンやアルバロホセ・ホッジなど。

エクアドルチャンピオンの21歳、ジョナタン・ナルバエスも連れてきており、全体的に「若手に活躍の機会を」といった印象の面子でもある。そんな若手たちが絶好調の今年のクイックステップなので、これでも全然、やっぱり「豪華」と感じてしまうけれども。

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ジョナタン・ナルバエスは昨年、アクセオン・ハーゲンスバーマンに所属。ツアー・オブ・ジラやコロラド・クラシックで新人賞を獲得するなど、アメリカとの相性が非常に良い。クイックステップ若手注目選手の1人だ。

 

 

カレブ・ユワン(オーストラリア、23歳)

ミッチェルトン・スコット、スプリンター

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ガヴィリアと並んで、今年ツール&カリフォルニア初挑戦のユワン。昨年はその派手さにおいてガヴィリアに差をつけられたような印象はあったものの、堅実に勝利を稼いで十分素晴らしい結果を出していた。

また、今年はミラノ~サンレモの集団内トップを記録したり、ツアー・ダウンアンダーでもスターリングの登りフィニッシュで勝利したことなど、これまでと比べ進化した走りを見せてくれている。

チームメートには頼れる発射台役としてルカ・メスゲッツとロジャー・クルーゲを連れてきている。昨年ではこのどちらかがユワンの相棒として参戦することが多かったが、今回は両方連れてきている辺り、本気度が伺える。ツールもこのスタイルでくるのか?

 

 

エガンアルリー・ベルナル(コロンビア、21歳)

チーム・スカイ、オールラウンダー

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期待されすぎなくらいに期待され、そのうえでその期待以上の成果を出し続けている男。最初、チーム・スカイに移籍と決まったとき、せっかくの才能が潰されてしまう可能性すら想像したが、むしろこの最強チームのエースを自らの力で掴み、チャンスをモノにした。10年に1人の天才と言っても過言ではない。

当然、今大会も文句なしのエースであり、総合優勝候補。ラファウ・マイカやアダム・イェーツなど強力なライバルは数多くいるものの、コロンビアのTTチャンピオンでもあるベルナルにとって、TTの距離が長い今年のレイアウトはよりチャンスと言えるだろう。

今期ここまで、総合優勝したステージレースはまだコロンビア・オロ・イ・パのみ。バスク1周総合2位も十分に凄いが、このあたりでワールドツアーの総合優勝を獲得しておきたい。普通ならネオプロに期待するレベルのものではないのだけれど。

チームメートのタオ・ゲオゲガンハートも、カリフォルニアで強い元アクセオン・ハーゲンスバーマンの選手。昨年総合8位。こちらも期待したい。

 

 

アダム・イェーツ(イギリス、25歳)

ミッチェルトン・スコット、クライマー

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ミッチェルトン・スコットはスプリントでユワン勝利を狙いつつ、総合優勝もこのアダムできっちりと狙ってくるはずだ。ティレーノ~アドリアティコ総合5位など、実力は十分。ジロ・ディタリアでサイモンがマリア・ローザを着用するなど活躍している以上、アダムもきっちりと結果を出さなくては(そしてこの2人は互いに呼応するかの如く結果を出すため、その可能性は十分にありうる)。

唯一の不安点がTTの力。実績だけで言うと、決してTTが得意な部類ではない。

しかし、同じようにTTが苦手と思われていたサイモンがジロ初日の個人TTで上々な結果を叩き出す。昨年のカリフォルニアも、同じくTTが得意ではないと思われていたジョージ・ベネットが意外な結果を出して逆転総合優勝を果たしている。もしかしたらアダムも今年、このカリフォルニアで覚醒するかも、しれない・・・。

 

 

ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、23歳)

トレック・セガフレード、クライマー

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアではアクセオン・ハーゲンスバーマンに所属し、総合13位、新人賞3位となった(新人賞1位はパウレス、2位はゲオゲガンハート)。昨年のトレック移籍後は、実力はありながらも目立った成果を出せてはいない。契約は一応、今年まで。そろそろ結果を出さないと、今後どうなるか・・・

とはいえ、今回のカリフォルニアで、この男は大きく成長する可能性があると踏んでいる。目指すは総合5位以内。新人賞対象ではあるので、その点でも期待したいが、その前にはベルナルという大きな壁が立ちはだかっており・・・。

個人TTが得意でない点も不利な点である。

 

 

ネイルソン・パウレス(アメリカ、21歳)

チーム・ロットNLユンボ、オールラウンダー

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアジブラルタルロード山頂決戦で、ワールドツアー顔負けの走りを見せつけた当時最年少選手。新人賞も堂々と獲得したものの、まだまだ若く、2位のゲオゲガンハートや3位のゲレイロがすぐさまワールドツアーチームに移籍したのに対し、彼はアクセオンに留まり続けた。

そして今年、いよいよワールドツアー入り。加入したのは、昨年カリフォルニアの覇者、ロットNL。しかも、昨年総合優勝者のジョージ・ベネットはジロに出場するため、今回のカリフォルニアのエースは、いきなりこのパウレスに任せられることとなるかもしれない。

ベルナルと比べればまだまだ未知数。しかし、総合TOP10に入る活躍は間違いなく見せてくれるだろう。エリート部門の国内選手権ITT3位の独走力の高さも、注目すべきポイントだ。

 

 

ヤスペル・フィリップセン(ベルギー、20歳)

アクセオン・ハーゲンスバーマン、スプリンター

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアを席巻した「最強育成チーム」アクセオンの、今年の目玉選手である。

とはいえ、まだカリフォルニア出場選手が確定していないため、この選手が出場するかどうかは不明。しかし、今年のアクセオンで最も目立った活躍をしている選手であるため、ぜひ出場に期待したい。

主な実績は3月の「デパンヌ3日間レース」の3位。勝ったヴィヴィアーニ以外は第一線級の選手たち、というわけではなかったものの、それでもワールドツアーの選手たちを押しのけての表彰台獲得は、20歳という若さを考えると驚異的である。ベルギーのU23向けステージレース「ル・トリプティーク・デ・モン・エ・シャトー」も区間2勝と総合優勝、ポイント賞獲得と圧倒的な結果を出している。

出場すれば、豪華な面子の揃う今回のカリフォルニアスプリント対決においても、存在感を放ってくれることだろう。

 

 

その他注目選手

ティージェイ・ヴァンガーデレン(BMCレーシングチーム)

ラファウ・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)

アレクサンデル・クリストフ(UAEチーム・エミレーツ)

ダニエル・マクレー(チームEFエデュケーションファースト)

ニキアス・アルント(チーム・サンウェブ)

イアン・ボスウェル(カチューシャ・アルペシン)

マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)

とくにBMCレーシングチームはスポンサー問題もあるため、ヴァンガーデレンとブレント・ブックウォルターには大きな期待が寄せられていることだろう。ヴァンガーデレンは総合優勝経験者だし、TTも強いし、普通に考えれば総合優勝候補筆頭なんだけどなぁ。。

アルントも十分勝ちを得られそうな選手の1人。バウハウスやワルシャイドなど、最近はさらに若手が活躍しつつあるので、ここら辺で先輩として一発ヤっちゃいましょう。

ボスウェルもカリフォルニアではフィールド効果でステータスUPする選手だ。

 

 

常に予想を裏切るのが自転車ロードレースという競技ではあるが、上記注目選手たちの活躍を願う。

ジロ・デ・イタリア2018 注目選手プレビュー

ジロ・ディタリアも開幕直前。

ここで、今回のジロで個人的に注目している選手たちをピックアップして紹介していきたいと思う。

正直、活躍に期待する選手は大量にいるのだが、その中で、実際に実績を出せそうな選手を、総合系で6名、スプリンターで3名、そして若手で1名の合計10名を選出。

簡単なプレビュウを実施した。

 

以下、少しでも参考になれば幸い。 

※年齢はすべて数え年表記です。

 

 

 

 

クリストファー・フルーム(イギリス、33歳)

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2013年、2015年~2017年の計4回ツール・ド・フランスを総合優勝し、昨年はブエルタ・ア・エスパーニャも総合優勝。史上3人目の、そしてブエルタが現在の秋開催になってからは唯一の、ツール~ブエルタのダブルツール達成者となった。

今年はツール5勝目、すなわち史上5人目の「5勝クラブ入り」がかかる年。てっきりツールに集中するのかと思いきや・・・なんと、ジロ・ディタリアへと乗り込んできた。

今回、総合優勝すれば、史上7人目の「3大グランツール制覇者」となる。また、ツール~ブエルタ~ジロと3連続グランツール制覇というのも、なかなか過去に例を見ないパターンとなるだろう。

そして、おそらくは狙ってくるジロ~ツールのダブルツール。1998年のマルコ・パンターニ以来、20年ぶり、史上8人目の達成者となる。過去、コンタドールも狙って果たせなかったこの偉業を、フルームならば成し遂げてしまうかもしれない、と期待させてくれる。

 

懸念点としては2つ。

1つ目は、ジロ・ディタリアとチーム・スカイとの相性があまり良くないこと。昨年もエースのゲラント・トーマスが1週目にしてリタイア。ランダも総合優勝争いから脱落してしまった。

長らくスカイを苦しめる「ジロの呪い」。フルームもまた、その餌食となってしまうのか。それとも彼ならばそれを跳ね除けられるのか。

 

懸念の2つ目は、昨年秋からサイクルロードレース界を騒がせ続けている「サルブタモール問題」。はっきりと結論の出ないままジロが開幕してしまい、これでフルームが結果を出した後に遡りでの結果剥奪などの措置が起きてしまえば、それこそが最もロードレース界にとっては不運なこととなる。

また、この問題の影響もあるのか、ここまでのレースでのフルームの走りは十分とは言えない。

ただ、4月に入ってからはゾンコランでの練習風景をツイートしたり、ツアー・オブ・ジ・アルプスで積極的な攻撃を仕掛けたりと、ジロに向けて順調に調子を上げている様子も見られる。

また、アルプスではケニー・エリッソンドがアシストとしての素質を開花させ、チームとしても良い状態でジロを迎えることができそうだ。

 

果たして、「現役最強のグランツールライダー」は、ジロでもその実力を見せつけてくれるのか。それとも、結果を出せぬまま潰れてしまうのか。

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ツアー・オブ・ジ・アルプスでは総合4位。これまでの彼の成績と比べるとイマイチだが、シーズン序盤の苦しい状況からは抜け出した感じを受ける。

 

 

 

トム・デュムラン(オランダ、28歳)

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かつてはファビアン・カンチェラーラトニー・マルティンに次ぐ、新世代のTTスペシャリストとして注目を集めていた。しかし、2015年のブエルタで突如覚醒。そのときは最終日前日の山岳ステージで崩れ、表彰台すら逃してしまったものの、一躍オランダ最強のグランツールライダーとして台頭することとなった。

しかしデュムランは焦ることをしなかった。2016年はジロ、ツールと連戦したが、いずれも総合は狙わず、地元オランダでのTT勝利、山岳でのステージ優勝、そしてリオ・オリンピックに向けた調整に徹した。

そして昨年、2017年。満を持して挑んだジロ・ディタリアで、あのナイロ・キンタナやヴィンツェンツォ・ニバリを凌ぐ登坂力を見せつけての、完全勝利。

ゆえに、現在、クリス・フルームに対する最も期待されたライバルとして注目されることに。「フルーム時代」を終わらせるならば彼であると――その直接対決が、まさかこんな形で実現しようとは。ツールではなく、ジロで。

 

形としては、デュムランこそが前回優勝者でありディフェンディング・チャンピオンである。あくまでもフルームは挑戦者であるわけだが、実質的には「最強」フルームとその最大のライバル候補との、初の本気の直接対決の開幕である。

 

懸念としては、やはりチーム・スカイと比べると乏しいチーム力。それでも、昨年デュムランを支え続け引退を留まり続けてくれているローレンス・テンダム。若手の期待の星サム・オーメン。チームとしても、可能な限りの戦力は連れてきてくれている。

また、実績だけならスカイに全く敵わなくとも、実際に機能したときのサンウェブのチーム力は恐ろしいものであるということ、昨年一年間を通じて私たちはよく知っている。ジロの総合優勝、ツールのポイント賞&山岳賞、そして世界選手権チームタイムトライアル・・・データだけではわからない不思議な結束力こそが、サンウェブというチームの最大の武器である。

「最強」の一角キンタナを見事打ち倒したデュムランは、今年、もう1人の「最強」を倒し再びピンクジャージを手に入れることができるか。

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今年は正直ここまで調子の良いところは見せられていないデュムラン。今年のジロは是非、最高のコンディションでフルームと戦ってほしいところ。

 

 

 

ファビオ・アル(イタリア、28歳)

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現イタリアチャンピオン。昨年の第100回大会は地元サルデーニャでの開幕とあって本人としても出ないわけにはいかない、という意気込みだっただろうが、直前の怪我によりあえなく不参加。今年こそリベンジだ。

2014年ジロ総合3位。2015年ジロ総合2位。そして2015年はブエルタでの総合優勝も果たしている。

2016年はジロに出場せずツールに集中。しかし、結果は空回り。以来、イマイチ振るわないシーズンを過ごしてきた。

今年、3年ぶりのジロ出場。前2回の良い流れを引き継げるか。なんだかんだ言って、今大会においてフルームとデュムランを倒し得る存在はもう彼しかいないといった感じだ。期待している。

不安要素としてはチーム。これまで総合争いを経験したことが少ないチームだけに、どこまでアルをサポートしていけるか・・・彼がブエルタで総合優勝したときも、当時のアスタナ・チームの助けがあってのものだったので。

UAEの現時点での出場予定選手はアタプマ、コンティ、ラエンゲン、マルカート、モーリ、ポランチ、ウリッシ・・・個々の実力は十分に高くステージ優勝を狙って行くことは十分可能だろうけれど、エースをアシストする、というようなイメージはどうしても、湧かない、なぁ。

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今年はまだそこまで目立った成績は出してはいないが、ジロ前哨戦の「ツアー・オブ・ジ・アルプス」で総合6位。ちょっと上向きになりつつある。

 

 

 

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳)

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元々実力は高く期待されていたが、昨年のブエルタで想像以上の大爆発。

今年はツアー・オブ・オマーン総合2位。アブダビ・ツアー総合3位。ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位と好調。ステージ優勝も2つ。ニバリ、アルの抜けた穴を十分に埋めることができる逸材だ。

少なくとも、マリア・ビアンカは最有力候補であると言えるだろう。

また、アスタナチーム自体が現在絶好調。昨年は4月まで勝利なしだったのに、今年はすでに13勝(4/25現在)。また、圧倒的に強いエースが稼ぐ、ではなく、一人一人がチームの力を借りながら勝利を掴んでいくというスタイルだ。

今回のメンバーもビルバオヒルト、カンゲルト、ルツェンコ、サンチェス、ヴィレッラ、ゼイツと、ステージ優勝でもエースのアシストでも十分に期待ができるメンバーだ。昨年は悔しい/悲しい思いをしていたジロで、今年のアスタナは結果を出すことができる、そう信じることのできるメンバーである。

 

 

ローハン・デニス(オーストラリア、28歳)

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本人はまだ早いと言いつつも、ティレーノ~アドリアティコ総合2位などを叩き出していた昨年、期待を受けて出場したジロで残念な早期リタイアとなった。

今年こそという思いはあるかもしれない。しかも今回、明らかに彼をエースに、と考えられた布陣でチームからの支援も十分に見込める。個人TTの安定感は随一で、今回もとりあえず初日最大の優勝候補である。

あとは、アルプスの厳しい山岳地帯を乗り越えることができるかどうか・・・ツール・ド・ロマンディ総合7位。悪くは、ないはずだ。

目指すは総合5位以内。

 

 

ティボー・ピノ(フランス、28歳)

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おめでとう、アルプス総合優勝!

とはいえ、昨年のツールのごとく、ここまで存在感がほとんどない今シーズン・・・いや、それでいい。彼は期待されればされるほどうまくいかないタイプなので、これくらい影を潜めてさらっと表彰台を取ってしまうくらいが丁度いい。

ライヒェンバッハ、モラビート、プライドラーなど、チームとしても割と本気でピノを支える気でいる模様。

これはもしかして、もしかすると・・・いや、期待はしない。期待はしないぞー。

 

 

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、29歳)

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今年すでに6勝。ワールドツアーチームのスプリンターの中では最多の勝利数を記録している。ピュアスプリントでは最強と言えるのが今シーズン。

ヴィヴィアーニの強さは彼自身の強さもさることながら、チームの強さも要因である。何しろ、昨年全グランツールでスプリント4勝以上をそれぞれ別の選手で成し遂げているチームである。昨年のエースが移籍してもなお、新たなエースを据えて結果を出し続けるだけの実力がこのチームにはある。

今回のジロに臨むクイックステップのメンバーも、昨年はキッテルの、そして今年はヴィヴィアーニの勝利のほとんどに関わってきた最強発射台サバティーニや、自身もまた強力なスプリンターでもあるスティバール、そして昨年までクリストフの発射台として活躍してきたミケル・モルコフなど、完全にヴィヴィアーニのための体制を作り上げてきている。

果たして今年のクイックステップグランツールで何勝するのか。その幸先の良いスタートを、このジロで切ることができるか。

 

 

サム・ベネット(アイルランド、28歳)

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ボーラ叩き上げのスプリンターで、サガン加入の昨年は存在感が減るかと思いきや、しっかりとそれに張り合うだけの成果を出し、年間10勝と絶好調。

しかしジロでは勝てず。2位、3位と悪くはなかったが、今一歩届かなかった。その分、ライバルの少ない今年は大チャンスである。

なお、2歳年上のドイツ人スプリンター、リュディガー・ゼーリッヒが今年もアシストとして参戦。ときにベネット以上の成績を出すライバルでもあり、実質的なダブルエース体制で勝利を狙う。

ゼーリッヒは先日のツール・ド・ロマンディ最終ステージで勝利したアッカーマンの発射台としても活躍。ただ、それ以外ではベネットもゼーリッヒも、今年そこまでまだ結果を出せていないのが不安点。

 

 

ヤクブ・マレチュコ(イタリア、24歳)

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イタリア期待の若手スプリンターの1人。所属チームはウィリエール・トリエスティーナ・セッライタリア。プロコンチネンタルチームである。

それでも、昨年のジロ・ディタリアではステージ2位が2回。アジアのレースでの相性がよく、中国中心に昨年は14勝している。今年もここまで、1クラス~2クラスばかりとはいえ8勝と、ヴィヴィアーニを超える勝利数を記録している。

逃げ切りはともかく、グランツールのガチのスプリントでプロコンチネンタルチームが勝つというのはなかなかない偉業であり、しかし今年、ヴィヴィアーニ以外の超強力スプリンターが少ないジロであれば、そういった事態も十分に考えられることだろう。チームもエースナンバーをマレチュコに託し、本気で勝利を狙う態勢で挑んでくる。

 

 

リチャルド・カラパス(エクアドル、25歳)

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パリ~ニースのクイーンステージで総合優勝者マルク・ソレルを支え、遅れかけた彼を引き上げるという重要な役割を果たす。カラパスがいなければ、ソレルは勝ててなかったかもしれない。彼自身も総合11位。

suzutamaki.hatenablog.com

そして、その後、イタリアで開催された1クラスのステージレース、セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで総合3位、スペインで開催された1クラスのステージレース、ブエルタアストゥリアスで総合優勝。後者は山頂フィニッシュのクイーンステージでも勝利するなど、力を見せつけた。

今回のモビスターは正直、エース不在。その中で、序盤で成績を出せば、彼がエースとしてベタンクールやフェルナンデスといった強力な選手を従える状況を作っていくことは十分に可能だ。目指すは、ロペスとの新人賞ジャージ争い。同じパリ~ニースで活躍したグロースシャルトナ―もライバルとなるかもしれない。珍しい南米エクアドル出身の選手。モビスターの次代を担う選手となれるか。

 

 

 

以上、独断と偏見で10名の選手を選出。

これらの選手が実際に活躍することを願う。

2018年シーズン 4月主要レース振り返り

「春のクラシック」もいよいよクライマックス。連日、ビッグレースが続く4月のレースを振り返っていく。

なお、対象レースを多くし過ぎて苦しんだ先月の反省から、今回はぐっと絞り込んだ。代わりに、1つ1つのレビュー内容を厚めにしたので、結局は文字数ベースでは変わらないという・・・。

「注目選手」は扱わなかったレースから対象選手を選出。今月はエースを喰ってしまう勢いで結果を出しているあの選手。

 

 

 

 

ロンド・ファン・フラーンデレン(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ベルギー

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「クラシックの王様」と形容される、ワンデークラシック最高峰のレースの1つ。5つあるモニュメントのうち、2番目に開催されるレースだ。

舞台はベルギー・フランデレン地域。レース名の「ロンド・ファン・フラーンデレン」とは、「フランデレン1周」、すなわち、ツール・ド・フランスの「ツール」や、ジロ・ディタリアの「ジロ」と同じ意味の言葉が「ロンド」である。

フランス語では「ツール・デ・フランドル」。日本ではこちらの名の方が馴染み深いかもしれない。

 

最大の特徴は全部で18ある石畳の急坂(ミュール)の存在。

オムロープ・ヘット・ニウスブラットから始まる「北のクラシック」で何度も使われてきた地域・急坂を使用し、その集大成として開催される。「北のクラシック」最強を決めるレースと言える。

石畳に強い脚質、急坂で対応できる脚質、そして多くの場合、逃げ切りの形になるため、追走を振り払うだけの独走力が求められる。過去、トム・ボーネンファビアン・カンチェラーラなどが3勝している。

 

今大会で勝利したのはクイックステップ・フロアーズのニキ・テルプストラ。

2014年にパリ~ルーベを制したオランダ人で、今回で2つ目のモニュメント制覇となった。

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実は2015年のロンド・ファン・フラーンデレンでも2位になっている。そのときは、ラスト30kmを切ったところで現れる「クルイスベルフ」という急坂でアレクサンデル・クリストフと共にアタックし、最後までに逃げ切った。

そして最後のスプリント争いで、やはりスプリンターのクリストフには敵わず、敗れている。

 

今回もまた、テルプストラはクルイスベルフでアタックをした。ただし今回は、クリストフという危険な随伴者はいない。

ミラノ~サンレモを制したヴィンツェンツォ・ニバリのアタックに反応する形で飛び出したのだが、まだまだ北のクラシックには慣れていないニバリをあっという間に突き放し、独走体勢に入った。単なるチェックであると考えた集団は彼の動きに反応できず、みすみす逃がすことに。ジルベールやスティバールといった強力なチームメートが集団の中に残っていたこともまた、テルプストラの独走を許す要因となった。

 

今大会、テルプストラが最強というわけではなかったとは思う。

たとえばペテル・サガンは、今シーズン序盤の不調を完全に脱した様子で、最後の坂「パテルベルフ」では強力なアタックで集団から抜け出す姿も見せていた。

ただ、テルプストラは遥か前方におり、もはや捕まえることは敵わなかった。

クイックステップというチームのあまりにも盤石な体制が、今回の勝利を、そして今回の勝利「も」生み出したのである。

これでクイックステップは、北のクラシックと呼ばれるレースで8勝。今シーズンここまでで圧倒的な21勝を記録した。

「北のクラシック最強チーム」の面目躍如、といった結果である。

別に、ボーネンが引退したからこその結果ではない、はず。

 

 

 

イツリア・バスク・カントリー(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スペイン

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スペインで最も自転車熱の高い?西ピレネーバスク地方で開催される6日間のステージレース。

昨年まではスペイン語の「ブエルタ・アル・パイスバスコ」の名前で知られていたが、今年からUCI登録名をバスク語の「イツリア・バスク・カントリー」に変更。

意味合いは変わらず、日本語で言えば「バスク1周」。こちらの名で聞き覚えのある人も多いだろう。

 

厳しい山岳ステージと個人タイムトライアルとがバランスよく配置されており、例年グランツールで活躍する名オールラウンダーたちが活躍する。

昨年はアレハンドロ・バルベルデがシーズン序盤から続く好調ぶりを継続して総合優勝。今年も同じく好調だったが、今年はこのバスク1周には不参加となった。

 

代わって今回、最高のパフォーマンスを発揮して総合優勝を果たしたのは、スロベニアの「遅れてきた新人」プリモシュ・ログリッチェ。

昨年もこのバスク1周で積極的な走りを見せて総合5位に登りつめていた彼が、今年はついに栄光を手に入れた。

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2016年のジロ個人タイムトライアルで圧倒的な強さを見せつけて注目を集めた元スキージャンパー。

2017年も個人TTの強さを活かし、アルガルヴェ1周総合優勝、バスク1周総合5位、ティレーノ~アドリアティコ総合4位、ツール・ド・ロマンディ総合3位と各種ステージレースでの総合争いに喰い込む。

さらにはツール・ド・フランスでも一流クライマーに負けない登坂を見せつけてステージ優勝。山岳TTとなった世界選手権ではデュムランに次ぐタイムで銀メダルを獲得した。

まさに、フルーム、デュムランに次ぐ最強格のオールラウンダーとしての才能を見せつけていた中で、今回ついに、ワールドツアークラスのステージレース総合優勝を果たした。しかもバスク、登りの厳しいレースで。

 

今年もまたツール・ド・フランスに照準を絞るようだが、この勢いで成長を続ければ、その総合表彰台も夢ではない、かもしれない。

しかしロットNLはクライスヴァイクといい、ジョージ・ベネットといい、こういった超強い・超可能性を感じさせるステージレーサーを定期的に輩出してくれている。

だがチーム全体がそれを支える体制はまだできておらず、またヘーシンクやテンダムのように結局は表彰台に届かないまま終わっているパターンが多い。

果たしてログリッチェは、その天井を突き破ることができるか・・・。

 

 

 

シュヘルデプライス(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:オランダ~ベルギー

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例年、ロンド・ファン・フラーンデレンとパリ~ルーベに挟まれた水曜日に開催されている、伝統的なクラシックレース。今年で106回目を迎える。歴史の長いレースだ。

昨年は引退するトム・ボーネンの故郷をスタート地点に定めたが、今年はまさかのオランダスタート。オランダからベルギーに渡る、国際的なレースとなった。

 

ロンド・ファン・フラーンデレンやドワースドール・フラーンデレンを主催する「フランダース・クラシック」主催のレースではあるが、北のクラシックというよりは、クールネ~ブリュッセル~クールネやヘント~ウェヴェルヘムのようなスプリンター向けのクラシックである。

去年までの5年間はすべてマルセル・キッテルが勝利しており、今年も当然注目が集まるが、新チームに移籍したばかりのキッテルは目下、不調が続く。

ならばと注目されたのがパリ~ニースで勝利したアルノー・デマールや、今期絶好調なディラン・フルーネヴェーヘン、そして3月のハンザーメ・クラシックとカタルーニャ1周初日ステージと連勝したネオプロ「ガヴィリアの後継者」アルバロホセ・ホッジ。

しかし彼らはレース中盤で起きた「踏切事件」により全員失格の憂き目に。

レースは混沌とした様相を見せ始める。

 

先頭集団で生き残っていたキッテルも残り13kmで2度目のパンクに見舞われ戦線離脱。

優勝候補不在のプロトンの中で、飛び出したのは3月のノケーレ・コールスでも優勝した「17年ラヴニール組」のファビオ・ヤコブセン

母国オランダスタートとなった第106回シュヘルデプライスで見事なプロ2勝目を飾った。

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ホッジが欠けても彼がいる。ほんと、クイックステップの今年の若手は凄い。

いや、真に凄いというべきは「17年ラヴニール組」の実力の高さか。

スカイの「ラヴニール組」クリストファー・ローレスもまた、3位に喰い込んでいた。

イーガンアルリー・ベルナルだけじゃない、「17年ラヴニール組」の今後の活躍に更なる注目を注ぐべきである。

 

 

 

パリ~ルーベ(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス

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「クラシックの女王」、またの名を「北の地獄」。

ロンド・ファン・フラーンデレンと並ぶ「北のクラシック」最高峰のレースであり、モニュメントの一角。

登りはほとんどないものの、握りこぶし大の石礫が転がる荒れた石畳の上を走る250km超のレースは、パンクと落車が連続するまさに「地獄」のレースである。

 

今年の北のクラシックはクイックステップ・フロアーズが席巻していた。

全員が勝利を狙える体制で挑んでくる彼らのチーム力の前には、どんな実力者も歯が立たない、そんな様相であった。

その中で、本来マークすべきはずの存在に対する警戒が緩んでいたのかもしれない。

その一瞬の隙をついてするすると集団から抜け出したのが、3年連続世界チャンピオンであり、過去にも何度もパリ~ルーベ優勝候補となりながら、パンクや集団落車に巻き込まれるなど不運を繰り返し勝機を逃していた男、ペテル・サガンであった。

 

ゴールまで残り54km。5つ星パヴェを2つ残した舗装路の上で、彼は何気ない様子で集団から抜け出した。

ジルベールクイックステップの面々はこのとき、集団の後方にいて手出しができなかった。「彼らが動かないならば」と、集団の先頭にいたファンアフェルマートも動くことを選ばなかった。これが最大の過ちだった。

あとは、もうサガンの独壇場である。2年前ロンドでカンチェラーラとファンマルケ2人がかりの追走すら寄せ付けなかった「覚醒サガン」の独走力を前にして、ファンアフェルマートも、ジルベールも、ロンド覇者テルプストラも、もう為す術はなかった。

 

サガンに追い付かれた逃げ集団の面々も、あっという間に置いていかれた――ただ一人、シルヴァン・ディリエを除いて。

昨年ジロでヤスペル・スタイフェンとの登りフィニッシュ一騎打ちを制した意外な実力者。今年はAG2Rに移籍し、アルデンヌ・北のクラシック双方での活躍を期待された。

しかしまさか、今回のような走りを見せるとは、誰も想像していなかったに違いない。

 

世界チャンピオンに対しても臆することなく、先頭交代にも積極的に参加し、あくまで対等な関係で最後のヴェロドロームにまでついてきた。

サガンも、まさかの展開を予想していたに違いない。結果は圧勝ではあったが、実に慎重に、確実に仕留めるスプリントで、サガンは勝利を掴んだ。

いつも飄々としている彼にしては珍しく、感情を爆発させたガッツポーズであった。そこには、これまで苦しみぬいてきた歴史が刻まれていたのだろう。

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そしてディリエも、自らの健闘を手放しで褒めることなく、「次は勝つ」と野心高く宣言している。

彼もまた、今後が楽しみな選手だ。 

 

 

 

ブラバンツペイル(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ベルギー

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例年パリ~ルーベとアムステルゴールドレースの間で開催されるワンデークラシック。

フランダース・クラシック」主催の最後のレースであり、舞台も一応フランドル地方に属するフラームス=ブラバント州ではあるため、厳密には北のクラシックの部類に入る。

ただし実質的には石畳の急坂の連続というよりもよりアップダウンの豊かなコースレイアウトで、アルデンヌ・クラシックの入り口、アムステルゴールドレースの前哨戦的な立ち位置に置かれている。過去の優勝者もジルベールやヘルマンスなどアルデンヌ系に強い面子が揃っている。

フラームス=ブラバント州自体がワロン地方とも隣接しており、州内にもフランス語を話す人々が多く居住している。

そのためレース名もフランス語の「ラ・フレッシュ・ブラバンソンヌ」で呼ばれることも多く、ここから「フレッシュ・ワロンヌ」の「フレッシュ」と、「ブラバンツペイル」の「ペイル」が同じ意味(「矢」という意味)であることがわかったりする。

 

今大会は、北のクラシックで大活躍中のクイックステップ・フロアーズではなく、もう1つのベルギー籍ワールドツアーチーム、ロット・スーダルが存在感を示した。

中盤からヴァンデルサンドなどを先行させ、レースを自ら作っていったロット・スーダル。

終盤ではマキシム・モンフォール、イェーレ・ヴァネンデール、そしてエースのティム・ウェレンスが次々と攻撃を仕掛け、最後は残り7kmからの「逃げスペシャリスト」ウェレンスの独走が始まった。

 

天を指差してゴールするウェレンス。その左肩には黒い喪章が。

数日前のパリ~ルーベ中に死去したベルギー人若手マイケル・ホーラールツへの祈りを込めた静かなガッツポーズであった。

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ロット・スーダルはもう1人の「エース」ティシュ・ベノートがスプリントで3位につける。

アルデンヌ・クラシックに向けてチームとしても良い状態に仕上げつつあることを見せつけた。 

 

 

 

アムステルゴールドレース(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:オランダ

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オランダ・リンブルフ州で開かれたワンデーレース。

アルデンヌ・クラシックに分類されるものの、この後のフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュなどと比べるとまだまだ登りの厳しさはそこまででもなく、北のクラシックで活躍した選手たちも多く登場している。

 

優勝候補はクイックステップ・フロアーズのフィリップ・ジルベールやジュリアン・アラフィリップ。モビスター・チームのアレハンドロ・バルベルデにロット・スーダルのティシュ・ベノートとティム・ウェレンス。

そして、5年ぶりの出場となるパリ~ルーベ覇者ペテル・サガンである。

 

レースは勝負の残り40km以降、エース級の選手が集まったバーレーンメリダが積極的な動きを見せていく。

終盤でミッチェルトン・スコットのロマン・クロイツィゲルと、バーレーンメリダのエンリコ・ガスパロットという過去優勝経験者2名が抜け出して逃げ集団に合流するも、サガンバルベルデ、アラフィリップ、グレッグ・ファンアフェルマート、そしてウェレンスなどを含んだメイン集団に追い付かれる。

ここで、ここまで順調にレースを展開していたバーレーンメリダが、ガスパロット以外の選手を先頭に送り込めないという致命的な事態が発生する。

 

逆に複数名を入れることに成功したアスタナが攻撃を開始する。

まずはエース格のヤコブ・フールサンがプッシュ。

そして彼の逃げが吸収されたのちに、オムロープ・ヘット・ニウスブラット覇者ミケル・ヴァルグレンがアタック!

オムロープのときのように、一度失敗してもめげずに再度アタック。そして、2度目は鋭かった。

 

オムロープのときは、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティンが喰らいつこうとしてきて、これを引き千切って独走を開始した。

しかし今回は同じミッチェルトン・スコットのクロイツィゲルがしっかりと貼りつく。しかも、さっきまで逃げていたクロイツィゲルはあまり積極的に前を牽こうとしない。

 

ここで、ヴァルグレン、不意に、ものすごく辛そうな表情を見せる。

 

もしかしたら本当に辛かったのかもしれないし、もしかしたらブラフだったのかもしれない。

何にせよこれでクロイツィゲルも前を牽くようになり、追走を仕掛けてきたガスパロットに追い付かれることなくゴール前に到達する。

 

最後の直線でも、ヴァルグレンはギリギリまで、クロイツィゲルに前を牽くようにアピールし続け、最後はクロイツィゲルの後ろから飛び出してスプリントで勝利を果たした。

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2年前、ガスパロットと共にカウベルフの登りで抜け出して逃げ切ったときは、あまりにも焦り過ぎてガスパロットの前を牽き続けてしまい、敗北した。

今回は、しっかりとゴール前の駆け引きを制して、より戦術的な勝利を掴むことに成功した。

2年前の悔しい敗北へのリベンジを達成!

これからもさらなる活躍に期待がもてる、デンマーク人新星の1人である。

 

 

 

ツアー・オブ・ジ・アルプス(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア~オーストリア

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かつて、「ジロ・デル・トレンティーノ」と呼ばれていたレースで、昨年から名前を変更。イタリアだけでなくオーストリアも加えたコース設定で、厳しい山岳地帯のレースとなっている。

以前からジロ・ディタリアの前哨戦レースとして注目を集めており、今年もクリス・フルームやファビオ・アル、ティボー・ピノなどのジロを狙うオールラウンダーたちが集結した。HCクラスとは思えない豪華さだ。

 

注目の選手はやはりフルーム。

今年、初めて本気で総合優勝を狙って走るジロへの挑戦に向けて、このレースに初挑戦となった。結果として総合4位。他のグランツールの結果と合わせてみれば良い、とは言えない結果だが、それでも今年これまで出場してきたレースと比べれば、結果も、実際のレース中の動きも、格段に良くなってきている。

リッチー・ポートもミハウ・クフャトコフスキもいない中、ケニー・エリッソンドという新たな彼の「右腕」の覚醒もあり、ジロ本戦が実に楽しみになる。

 

そしてもう1つ楽しみに感じるのが、アスタナの調子の良さである。

5ステージ中3勝。昨年、このレースでのスカルポーニの勝利が、シーズン初勝利であった昨年とは大違いである。

今年のアスタナは本当に雰囲気が良い。

だれか突出した選手が強いわけではない。

気が付けば終盤に複数名が残っており、それぞれがそれぞれの役割を果たした結果、そのうちの誰かが勝利を掴むというパターンが多い。

スカイのエースを守るチーム力とも、全員が最強クラスのクイックステップのチーム力ともまた違う。準エースクラスが集まって最強に牙を剥く、そんな感じの走り方をチームとして行っているのだ。

ジロでも当然、今回とほぼ同じメンバーで挑む。

スカルポーニの悲しい死から1年。今年、アスタナの大爆発に期待したい。

 

当然、ピノの総合優勝も喜ばしい。

ただ、実はここ数年のこのレースの総合優勝者とジロの結果を考えると、あまり手放しでは喜べないのである・・・。

 

2014年:カデル・エヴァンス

2015年:リッチー・ポート

2016年:ミケル・ランダ

2017年:ゲラント・トーマス

 

・・・ピノはその、期待し過ぎない方が結果を出す感はあるので、あまり騒がず、静かに見守っていようと思う。

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ツアー・オブ・クロアチア(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:クロアチア

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ユーゴスラビアの悲痛な紛争の記憶と、ダルマチア海岸など美しき自然の姿とが同居する東欧クロアチアを舞台にした6日間のステージレース。

 今年で4回目となる今回、HCクラスへの昇格が決まり、より注目度の高いレースとなった。

 

昨年総合優勝のバーレーンメリダは今年も参戦。

昨年、優勝したニバリを献身的にサポートしていたカンスタンティン・シウツォウが、今年は自ら総合優勝。

隣国スロベニアの選手も多く抱える中東チームが今年もやる気満々といったところで、期待されていた若きスプリンター、ニッコロ・ボニファツィオが移籍後初勝利も嬉しいし、いつもは逃げやスプリント前の牽引で地味ながら活躍しているマヌエーレ・ボアーロの3年ぶりの勝利も嬉しい。

最近バーレーンメリダがひたすら好きな自分にとっては昨年に続き大満足な大会である。

 

もう1人、注目すべき選手がいる。

アスタナのネオプロ21歳カザフスタン人エフゲニー・ギディッチである。

彼は先月のツール・ド・ランカウイから注目していた。その大会特有のベストアジアンライダー賞も獲得している。そのときも今回も、彼の役目はチームの若きエーススプリンター、リカルド・ミナーリの発射台のはずだった。

今大会も第2ステージで、ミナーリに次ぐステージ4位でゴールしている。

紛れも泣くスプリンターである、と思っていた。

しかし、今大会の第3ステージ、シウツォウが勝利した「登坂距離25km、獲得標高1760m」の驚異的な山頂フィニッシュで、彼は何とステージ3位につける。

クライマー、と称しても全く問題のない脚質だ。

 

また1人、今後注目すべき選手が増えた。

 

 

 

フレッシュ・ワロンヌ(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ベルギー

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全長1.3km、平均勾配9.6%、最大勾配26%。「激坂」と呼ぶに相応しい「ユイの壁」を3回巡り、最後はその頂上で決着をつけることとなる伝統のレース。

アムステルゴールドレース」「リエージュ~バストーニュ~リエージュ」という2つのアルデンヌ・クラシックに挟まれた水曜日に開催されるため、「水曜日のクラシック」という名でも知られている。

 

過去4年間はアレハンドロ・バルベルデが勝ち続けてきた。その中で、2位を2回経験していたジュリアン・アラフィリップが、ついにバルベルデという「壁」を打ち破った。

しかも、バルベルデが特別不調だったとか、不運だったとかではなく、存分に力を発揮した状態で、真っ向勝負でこれを打ち倒したのだ。

アラフィリップも(ゴールの瞬間は自分が勝ったことに気が付かなかったらしいが)ゴールの直後に歓喜の雄叫びをあげてしまうほどに、これは偉大なる勝利だった。

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バルベルデの敗因は、モビスターが昨年までと比べて苦しい戦いを強いられていたことにある。

昨年は中盤のアタックの1つ1つを、カルロス・ベタンクールが潰し、終盤のコート・ド・シュラーヴでも多くのアシストを残すことに成功していたモビスターだったが、今年は最初のユイの壁登坂直後から、ライバルチームの度重なるアタックを止めることができず、カオスな展開へと持ち込まれてしまった。

そして終盤ではもはや、バルベルデを守るべきアシストはミケル・ランダのみとなり、彼もまた、ニバリらを含む強力な逃げ集団を捕まえるべく先頭を牽かされ続けた。

結果、最後の壁の登坂にて、バルベルデはもはや、適切なポジションを確保することができずにいた。そこで力を使ってしまったことで、最後の最後、アラフィリップを捕まえるための伸びが、出し切れなかったのだ。後方から飛び出したことで勝てなかったが、これがいつもの適切なポジションから発射できていれば、結果は違っていたかもしれない。

そして、それを成し遂げたのが、まさにクイックステップのチーム力であった。

序盤からメイン集団の先頭はモビスターとUAEチーム・エミレーツ、もしくはミッチェルトン・スコットといったチームが支配していたが、終盤にかけてクイックステップっがっ静かに存在感を現し始めた。

そして逃げに乗ったマキシミリアン・シャフマン。彼が最後まで逃げることによって、最終局面へのお膳立てができたと言えるだろう。

シャフマンもまた、プロ2年目の若手であり、先日のカタルーニャ1周では逃げ切り勝利を演出した男だ。

本当に今年のクイックステップの若手は活きがいい。

 

 

 

リエージュ~バストーニュ~リエージュ(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ベルギー

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モニュメントの1つにして最も古いクラスのレースであることから「ラ・ドワイエンヌ(最古参)」の名でも知られる伝統レース。

アルデンヌ・クラシック3連戦の最終幕にして「春のクラシック」最終戦でもあるこのレースは、アムステルゴールドレース以上の激しいアップダウンにより、グランツールでも活躍する名クライマーたちが過去、勝利を掴んでいる。

 

今年、レースに大きな動きが巻き起こったのは、残り21kmから始まる「ラ・ロッシュ・オー・フォーコン(全長1.3km、平均勾配11%)。

山頂まで1kmを切って2011年大会覇者フィリップ・ジルベールがアタック。これにマイケル・ウッズやセルヒオ・エナオらが反応し、集団は一気に活性化する。

集団に引き戻されたジルベールに代わってペースを上げたボブ・ユンゲルスが、先頭のエナオに追い付き、山頂を越えたのちの下りで独り抜け出す格好に。

エース格の選手しか残らない追走集団は完全にお見合い状態。一気に数十秒のタイム差がついてしまった。

 

結局のところこの日も、ゲームを支配したのはクイックステップであった。

ジルベールのアタックをきっかけにペースアップした集団はアシスト選手たちを引きはがし、そんな中でアラフィリップとユンゲルスという強力な手札を残していたクイックステップが、自分たちに有利な形の展開を作り出すことに成功したというわけだ。

 

北のクラシックが終わってもなお、その強さを発揮し続けるクイックステップ。このまま、春のクラシックだけでその勢いが止まるようには感じられない。

今年はまさか、60勝に達してしまうのか?

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ツール・ド・ロマンディ(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スイス

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厳しい山岳が豊富なスイス地方で行われる6日間のステージレース。

日程的にジロ・ディタリアが近いことから、ジロを狙う選手の出場は多くなく、ツール・ド・フランスに向けての前哨戦の1つとして位置づけられている。

よって、リッチー・ポートやヤコブ・フールサン、ダニエル・マーティンなどのツールを狙うオールラウンダーたちが集結。激しいバトルを繰り広げた。

 

勝ったのは、バスク1周に続き今期WTステージレース2勝目となるプリモシュ・ログリッチェ。TTスペシャリストとして台頭した2016年、ステージレーサーとしての力量を少しずつ見せていった2017年に引き続き、今年さらなる躍進を決定的なものとしてくれた。

ただし、あくまでもまだ、短いステージレースでの総合優勝。果たして、難関山岳ステージの連続するグランツールにおいて、彼の力がどこまで通用するのか。そこは、ローハン・デニス(総合7位)についても同様に言える部分である。

そして、今大会もう1人の注目選手は何と言ってもエガンアルリー・ベルナル。この男は、今年、期待され過ぎるほどに期待されていたものの、その過度な期待すら凌駕する結果を出し続けている男だ。ダウンアンダー新人賞に始まり、コロンビア・オロ・イ・パ総合優勝、カタルーニャ1周は最終日の落車リタイアさえなければ総合2位は固かった。そしてそのリベンジであるかのように、今回総合2位を獲得。しかも、山岳TTでポートやログリッチェを打ち破っての圧巻の結果だ。

今年はジロもツールも出る予定はないらしいベルナル。チームとしても慎重に、しかし好機を逃さないように、じっくりと育てていきたい逸材だ。果たしてこの男、どこまで伸びるのか。

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今月の注目選手

クリストフ・ラポート(フランス、25歳)

4月中旬、フランスのブルターニュ地域圏で行われたトロ・ブロ・レオン(1.1)で優勝。未舗装路が特徴のワンデーレースで、プティ・パリ~ルーベとも呼ばれているレースだ。

今年すでに4勝。2014年にコフィディスでプロデビューして以来、昨年までで2勝しかなかった彼が、今年の4か月で一気に勝利を積み上げていった。

しかも、本来が彼が得意なはずのピュアスプリントだけでなく、エトワール・ドゥ・ベセージュやツーラ・ラ・プロヴァンスでは個人TTで上位に入ったほか、今回の「北のクラシック」レースで勝利したことは大きい。ヘント~ウェヴェルヘムでも4位と、トップレーサーたちと互角に渡り合っている。

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パリ~ニース第1ステージ。厳しい登りと石畳を経たうえでの横一線スプリントで3位(写真一番左)。純粋なスプリント力だけでない総合力を発揮している。なお、この日ブアニは全選手中最下位でゴールしている。 

 

元々はコフィディスのエース、ブアニの発射台という役目であった。

しかしブアニが早々にリタイアした2015年、開幕直前にリタイアした2016年は彼に代わるエースとして挑み、上位にも数回入っている。

今年はまだ勝ち星のないブアニ。今までは無条件に許されていたツール・ド・フランスのエースの座も、今回ばかりはさすがに危ないかもしれない。

代わってこのラポートがエースになりうるのか。まだまだ1クラスのレースでしか勝ててはいないので、今後、ビッグレースでの勝利に期待が集まる。

 

 

次回、5月は「エシュボルン・フランクフルト」「ジロ・ディタリア」「ツアー・オブ・カリフォルニア」などを扱う予定。ハンマーシリーズも。。。扱うかも?

ジロ・デ・イタリア2018 コースプレビュー 第3週

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急勾配・未舗装路・2000mを超える標高に低気温。あらゆる障害が優勝候補たちを蝕む。第19ステージ、「チマ・コッピ」フィネストーレ峠が今大会最大の山場となる。

 

 

いよいよ、 第101回ジロ・デ・イタリアも最終週を迎える。

ここまで来たら、文句なしの力と力のぶつかり合いである。終盤の第18~20ステージはアルプスの山頂フィニッシュ3連戦。ただの登りの厳しさだけでなく、雪の残る低温の地、未舗装路など、選手たちを苦しめる要素に満ち溢れている。

まさに、最も厳しいグランツールと呼ばれる所以である。

 

これらの困難を乗り越え、最終日ローマのフォロ・ロマーノにて、栄光のマリア・ローザを着用できるのは果たして誰か。

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第16ステージ トレント~ロヴェレート 34.2km(個人TT)

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今大会の鍵を握る中距離個人TT

フルームもデュムランも、普段のレースではライバルに圧倒的な差をつけるチャンスとなるこの個人TTだが、今回はその最大のライバルが同じくらいにTTが強いため、その差をつけることができない。だからこそ、絶対に失敗のできない一日である。

なお、個人TTといえば、とくにこの日のように真っ平なレイアウトの場合は、街中で行われることが多い。その方が観客たちも選手のことをよく見られるからだ。

だが、この日は珍しく、トレントの山間部、レーノ川に沿ったラガリーナ谷にて繰り広げられる。

スタートとゴールとが、そのまま30km離れているという事態が何を意味するのか。

たとえば、スカイが得意としている「チームカーに乗って実際に走っているチームメートの姿を見ながら戦略を組み立てる」という手法が、もしかしたら難しくなるかもしれない。

 

晴れたらものすごく美しい風景をゆっくりと見ることのできそうなステージでもある。

ロヴェレート城、トレント・ロヴェレート現代美術館などの、各種建造物の空撮も楽しみだ。

 

 

 

第17ステージ リーヴァ・デル・ガルダ~イゼーオ 155km(中級山岳)

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アルプスの美しい風景の1つは、山間部に点在する大き目な湖たちである。

このステージは、まさにそんな湖の1つである「ガルダ湖」から「イゼーオ湖」に至る、美しきステージとなる。

 

総合優勝を狙うエースを抱えるチームにとっては、この日は、美しい風景の中でのゆったりとしたサイクリングに興じたいところだろう。

何しろ翌日からは、激動のアルプス山頂フィニッシュ3連戦・・・いかにスプリンターたちにとって残り数少ないチャンスとはいえ、この日は最初の登りで形成された逃げ集団がそのまま大きなタイム差をつけて逃げ切ってしまいそうな気がする。

 

 

 

 

第18ステージ アッピアテグラッソ~プラート・ネヴォソ 196km(山岳)

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ミラノ近郊の街アッピアテグラッソを出発してポー平原を南西に進み、イタリア-フランス国境にほど近いスキーリゾート、プラート・ネヴォソに至る。

アルプス3連戦初日にして、まずは軽い足試しといったステージだ。

 

プラート・ネヴォソの登りは登坂距離13.9km、平均勾配6.9%、最大勾配10%。

決して楽ではないが、ジロの厳しい山岳たちのことを思えば、そこまででもない、といった印象。

急激に厳しくなる区間があるわけでもなく、全体的に6~8%に勾配がだらだらと続いていく。

過去にはジロで2回、直近では2008年にツール・ド・フランスで使われており、そのときはサイモン・ゲランスが勝利している。生粋のクライマーでも勝利を狙える山、というわけだ。

よって、この日はまだ、総合争いにおける大きな動きは起きない可能性が高い。

マリア・ローザを擁するチームが、エースをしっかりと護りきるトレインが作れてさえいれば。

 

 

 

第19ステージ ヴェナーリア・レアーレ~バルドネッキア 184km(山岳)

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トリノ郊外、美しきサヴォイア王家の宮殿群のある街ヴェナーリア・レアーレを出発したプロトンは、イタリア最西端の町、バルドネッキアへ。

人の手が作り出した最高の美と、アルプスの山々が奏でる自然の美とを共に楽しめる至高のステージであり・・・同時に、今大会最難関(クイーン)ステージである。

 

目玉となるのは当然、残り92kmから登り始めるフィネストーレ峠。

登坂距離18.5kmの間、延々と9%以上の勾配が続くというその登りの厳しさもさることながら、その道程の後半が全て、石の浮いた未舗装路であるというのがまた恐ろしい。

加えて頂上の標高が2178mで文句なしのチマ・コッピ(最高標高地点)。

道の脇には当たり前のように雪が残り、場合によっては雪の壁ができている事態となるだろう。

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延々と続く一定の急勾配。

ハンドルを取られそうになる未舗装路。

そして、一気に標高を駆け上がったことによる気圧差・気温差で選手たちはダメージを負い続け、視聴者側が想像する以上に苦しい状況に選手たちは陥ることになるだろう。

まさに「ジロ」らしい難関峠である。

 

 

だが、このステージにおけるフィネストーレ峠は、あくまでも通過点に過ぎない。

ここが一番厳しい登りであるのは間違いないだろうが、ここで足を削られ続けた選手たちは、このステージの最後に、もう1つの凶悪な登りを経験することとなる。

 

バルドネッキアのモンテ・ジェッフェラウ。

登坂距離は7.25kmとそこまででもないが、登り口に最大14%の急勾配、そしてその後も9%~10%の厳しい勾配が続いていく。

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これまでどんなに好調な走りを見せてきた選手であっても、この日だけで一気に総合タイムを失ってしまう危険性があるステージだ。

とくに、フィネストーレ峠で遅れてしまった場合は、挽回の目途をほぼ失うことになりかねない。

 

今大会のクイーンステージにして、最も「何が起こるかわからない」ステージである。

 

 

 

第20ステージ スーザ~チェルヴィニア 214km(山岳)

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3週間にわたる長く厳しいレースのクライマックスは、北西イタリアのアルプス山中で開催される。

激動のフィネストーレ決戦と比較するとやや穏やかに感じてしまかもしれないが、この日も十分過ぎるほどに厳しい。

残り85kmから始まる1級山岳3連続登坂。その最終章は、チェルヴィーノ、ドイツ語名マッターホルンでも知られる、スイス-イタリア国境の名峰である。

そんな厳しい山岳区間を含んだ最終ステージが、214kmという長距離であることもまた、ジロのジロらしいところである。ここをクイーンステージと見る向きもあるだろう。

 

この日は比較的、集団も大規模な逃げを容認することになりそうだ。

マリア・ローザを擁するチームはひたすら、エースの無事を守り続ける走りを。

そして、それを奪い取らんとする挑戦者たちは、逃げ集団に数名の仲間を載せて、そして残り85kmからの「ジェットコースター」に全てを賭けるはずだ。

 

正真正銘の最終決戦が、始まる。

 

 

 

第21ステージ ローマ 115km(平坦)

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エルサレムから始まった3週間の旅路は、ここ「永遠の都」ローマにて終わりを迎える。

蛇行するティベリス河畔の7つの丘を巡る11.5kmの周回コースを10周。

最後は集団スプリントにて、第101回ジロ・ディタリアの最後の勝者と、そして総合優勝者が決定する。 

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スタート/ゴール地点は古代ローマの中心地「フォロ・ロマーノ」の前。

そこから『ローマの休日』で有名なコロンナ宮殿(美術館)の前を通り、トリトーネの泉があるバルベルリーニ広場、メディチ邸、そして北上してポポロ広場のオベリスクの周りを(まるでシャンゼリゼ凱旋門のように!)ぐるっと回って進路を南にとる。

直線が続いてスタート地点の近くにあるヴェネツィア広場とフォロ・ロマーノを再び横目にしつつ、「真実の口」「カラカラ浴場」などを経て一行はついにコロッセウムの横を通過する。

 

古代ローマの遺産、近世ローマの貴族たちの遺したもの、そして現代ローマ市民の憩いの場、その全て、歴史と生活の全てを巡る、情緒たっぷりの11.5kmである。

 

最終日スプリントステージは2年ぶり。

2年前はポイント賞ジャージを着るジャコモ・ニッツォーロがその年のジロの初勝利を遂げた・・・と思いきや、斜行判定を受けて降格し、代わってステージ2着だったニキアス・アルントが、キャリア最大の勝利を挙げることとなる。

ポイント賞ジャージの表彰でステージに立つニッツォーロの憮然とした表情が忘れられない。

 

今回も勿論、イタリア人のヴィヴィアーニが永遠の都での勝利を狙ってくるだろう。

しかし負けられないのは、同じイタリア人スプリンターであるサッシャ・モドロやズバラーリ、勿論ニッツォーロも。

バルディアーニのアンドレア・グアルディーニも今年好調で、昨年ジロで2位を2度経験しているウィリエール・トリエスティーナヤコブ・マレツコなんかも、十分期待はできるだろう。

 

ゴール地点の目の前に建つ「ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂」の上部に飾られた2体の「勝利の女神」ウィクトリア像。

彼女たちが微笑むその視線の先にいるのは、果たして誰か。

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次回は注目選手をプレビュー予定。

ジロ・デ・イタリア2018 コースプレビュー 第2週

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2014年ジロ最終決戦の舞台に選ばれたモンテ・ゾンコラン。その山肌を埋め尽くすかのごとく観客が集まった。今年もこの地で、大きな動きが巻き起こりそうだ。

 

前回の第1週に続き、第101回ジロ第2週のコースプレビューを行う。

第1週からエトナやグラン・サッソなどの頂上フィニッシュが複数登場したものの、本格的な山岳バトルはこの2週で待ち受けるモンテ・ゾンコランでこそ巻き起こるだろう。

それ以外にも激坂フィニッシュがあったり、平坦基調でもゴール前に厳しいコーナーが連続していたり、小さな丘が待ち構えていたりと一筋縄ではいかない。

また、ポイント賞を巡る争いも佳境を迎える。不調の選手は3週目を前にしてリタイアする可能性もあり、本気の集団スプリントを見られるのもこの週が最後かもしれない。

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第10ステージ ペンネ~グアルド・タディーノ 239km(中級山岳)

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今大会最長コース。

かといって平坦というわけでもなく、スタート直後に2級山岳、その後も小さなアップダウンが連続し、逃げ切りを狙えるステージとなるだろう。

総合勢も休息日明けでコンディションを整える必要があることから、無理に追いかけはしないはずだ。

逆に絶好調な総合争いの選手は、休息日明けでライバルが崩れる可能性を狙って攻撃を仕掛けてくるかもしれない。

 

もしも集団スプリントになるのであれば、気を付けなければならないのはゴール前1kmを切ってからの急カーブの連続。

致命的なクラッシュなど、ないようにしてほしい・・・。

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第11ステージ アッシジ~オージモ 156km(中級山岳)

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スタート地点となるアッシジは、フランシスコ会の創設者聖フランチェスコの生誕地として有名。世界遺産アッシジ、フランチェスコ聖堂と関連修道施設群」も存在する。

そして、ゴールまで残り30kmを残した地点で迎えるのは、今年のティレーノ~アドリアティコ第5ステージのゴール地点としても採用された「スカルポーニの街」フィロットラーノである。

最大勾配16%の激坂区間。ティレーノ~アドリアティコでは集団からアタックしたアダム・イェーツがそのまま逃げ切り勝利を果たした。今回も勝負所になる可能性がある。

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ただしゴール地点のオージモもまた、残り5kmを切ってから最大勾配16%の激坂区間が「2回」登場する。

総合勢の中でも多少のタイム差のつく争いが繰り広げられそうだ。

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第12ステージ オージモ~イーモラ 214km(平坦)

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コース前半はアドリア海沿岸を駆け抜ける真っ平なコースレイアウト。

しかし残り30kmを切ってからは内陸に入り、「イモラ・サーキット」で有名な街イーモラにゴールする。

近世ヨーロッパ史好きの自分にとっては、チェーザレ・ボルジアとカテリーナ・スフォルツァの街としての印象の方が強いけれども。

 

2015年ジロ第11ステージも同じイーモラにフィニッシュするコースであった。

そのときはイーモラ・サーキットと、それに隣接する4級山岳トレ・モンティを巡る周回コースを3周したが、今回は1周のみ。

また、3年前は全体的にアップダウンの激しいコースレイアウトだったこともあり少人数の逃げ集団の中から、当時頭角を現したばかりのイルヌール・ザッカリンが抜け出して逃げ切り勝利を果たした。

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今回のレイアウトは、全体的にフラットな中で、最後のトレ・モンティがスパイスを効かせる形となっている。

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スプリンターチームがしっかりとエースを最後まで守れるか、それともアタッカーたちがこれを出し抜いて逃げ切りを図れるか。

ミラノ~サンレモにも似た熾烈な攻防戦が楽しみである。

 

 

 

第13ステージ フェラーラ~ネルヴェーザ・デラ・バッタリーア 180km(平坦)

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嵐の前の静けさといったところか。

翌日に控える「モンテ・ゾンコラン」を前にして、ジロ主催者は今大会の2週目で最も平坦なステージであり、ローマに至るまでの間では最後のピュアスプリントステージを用意した。

ゴール手前20km地点には4級山岳が置かれてはいるものの、山とは言えないような規模であり、スプリンターチームの足を止める役割を果たすことはないだろう。

この日を最後のしてジロを去るスプリンターも何名かいるかもしれない。

 

4回目か5回目の集団スプリントがこのステージで演じられることだろう。

昨年、クイックステップ・フロアーズは3大グランツール全てでスプリント4勝以上を成し遂げる快挙を果たしている。

このジロで、エリア・ヴィヴィアーニが再びこれを達成できるか。

そして、イタリア人スプリンターとしては最高の名誉であるマリア・チクラミーノを決定付けることができるか。

 

 

 

第14ステージ サン・ヴィート・アル・タリアメント~モンテ・ゾンコラン 186km(山岳)

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いよいよプロトンは、東アルプス・ドロミーティの地に。

その最初の舞台となるのは、悪名高きモンテ・ゾンコラン

 

今回その登りのルートとして採用されたのは、過去のレースでも多く採用されている「オヴァーロ起点」。

その厳しさは全ルート中随一であり、ブエルタのアングリルと双璧を成す超激坂である。

その異様なまでの厳しさは、以下のプロフィール画像を見ていただければ一目瞭然であろう。もはや、言葉はいらない。

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4年前のジロでは、最終決戦の舞台として選ばれた。

逃げ集団の中から生き残ったマイケル・ロジャースとフランチェスコ・ボンジョルノの一騎打ちが繰り広げられたが、観客に後ろから背中を押されたことが原因でボンジョルノが失速。

結局はロジャースが逃げ切り勝利を果たした。

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そしてメイン集団では、マリア・ローザを着るナイロ・キンタナが危なげなくステージを終え、その年の総合優勝に王手をかけることに。

 

今年は第14ステージでの登場ではあるが、今大会の結末を決定付ける重要なステージになることは間違いないだろう。昨年もオローパにフィニッシュする第14ステージで、トム・デュムランがその才能を発揮してみせた。

3大グランツール制覇を目指すクリス・フルームも、この4月にゾンコランで練習する様子をツイッターで報告している。

昨年のツールではペイラギュードの激坂フィニッシュでライバルたちに後れを取ったフルームが、今大会、このゾンコランにこそ注目していることは間違いない。

 

果たしてこの「ゾンコラン」決戦を終えてなお、ピンクジャージを身に纏っているのは誰か。クリス・フルームは、自身の33歳の誕生日を、マリア・ローザを着用しながら迎えることができるのか。

 

 

 

第15ステージ トルメッツォ~サッパーダ 176km(中級山岳)

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激戦の翌日だけに、この日は総合勢も少し大人しいかもしれない。

3~4ステージぶりの大逃げのチャンスとなりそうだ。

 

もちろん、舞台はすでにドロミーティ。厳しい山岳が連続するステージであることは間違いない。

平坦区間はほぼなく、常に登っているか下っているかのジェットコースターのようなレイアウト。特に残り40kmを切ってからは激戦となりそう。

たとえ最初に20人規模の逃げグループができていたとしても、最終的にゴール前まで残れるのはごく僅かとなるだろう。

 

このサッパーダの街をゴールに定めていた1987年ジロ第15ステージでは、ステファン・ロッシュによる有名な「叛逆劇」が演じられた。

当時マリア・ローザを着用していたのはロッシュのチームメートであり前年ジロの覇者ロベルト・ヴィセンティーニ。

しかしロッシュはこのステージで、他のチームメートの力を借りながらヴィセンティーニを突き放し、そのジャージを奪い取ったのである。

この年、ジロを総合優勝したロッシュは、そのままツールも制し、さらには世界選手権でも勝利した。

史上2度目の(そして現在に至るまで最後の)トリプルクラウン達成者となった。

 

 

 

第3週に続く。

ジロ・デ・イタリア2018 コースプレビュー 第1週

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エルサレム旧市街の空撮。この写真の右側に位置する「アルルーブ・マミーラ・アベニュー」の辺りが第1ステージのスタート/ゴール地点となる。

 

いよいよ開幕が目前に迫った第101回ジロ・デ・イタリア

今回はその第1週のコース概要を確認していく。

 

なお、開催期間は5/4(金)~5/27(日)の24日間。

エルサレムからローマへ。砂漠、活火山、残雪のアルプスまで。

全長3,546.2km、獲得標高差44,000m。

歴史と自然を巡る3週間の旅路である。

※各ステージのカテゴライズは主観によるものです。

suzutamaki.hatenablog.com

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第1ステージ イェルサレム 9.7km(個人TT)

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2016年以来、2年ぶりとなる個人TTによる開幕。

オランダでの開催となった2年前は、地元の英雄トム・デュムランが、台頭し始める前のプリモシュ・ログリッチェに0.02秒差で勝利してマリア・ローザを手に入れた。

このログリッチェ、後に第9ステージの個人TTで勝利し、その名を一気に轟かすことに。

 

2018年の開幕個人TTステージは、2年前とほぼ同じ9.8kmの短距離個人TT

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テクニカルなカーブが選手たちを苦しめ、最後の400mは緩やかに登っている。

デュムラン、ローハン・デニス、トニー・マルティンといった最強クラスのTTスペシャリストたちが集まっている今回のジロ。

ただしマルティンはこのくらいの距離では安定した力を出せず、逆にデニスはほぼ無敵の様相。

それ以外の優勝候補としては昨年のジロでデュムランを打ち破ったヨス・ファンエムデンや、今年のTTで調子の良いダビ・デラクルス&ワウト・プールス辺りか。もちろん、初日からフルームvsデュムランで火花が散る様も見てみたい。

 

スタート&ゴール地点のすぐ近くには、世界遺産にも登録されているエルサレム旧市街とそれを囲む壁が広がっている。その中にはユダヤ教徒の「嘆きの壁」、キリスト教徒の「聖墳墓教会」、そしてイスラム教徒の「岩のドーム」など、各宗教の聖地が点在し、それらの映像はレース中にも多く紹介されることだろう。

 

今もなお、宗教と民族と歴史による不安定を抱えるエルサレム

何のトラブルもなく、無事に運営されることを切に願う。

 

 

 

第2ステージ ハイファ~テルアビブ 167km(平坦)

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イスラエル北部の街ハイファから地中海沿いに南下し、イスラエル第2の都市テルアビブにゴールするピュア平坦ステージ。

残り91km地点にある4級山岳は、全長2.65mと短いものの、後半の平均勾配は7.1%、最大勾配は13%とそれなりにきつい。おそらくはプロコンチネンタルチームが中心となって形成される逃げ集団の中から、初日の山岳賞ジャージを巡る争いも白熱しそうだ。

ここはやはり、地元イスラエル・サイクリングアカデミーの、イスラエル人選手に頑張ってもらいたいところ。

 

そして、フィニッシュはほぼ間違いなく集団スプリントで決するはずだ(昨年のようなアクシデントが起こる可能性ももちろんあるけれども・・・)。

ラストはやや下り基調となっており、ハイスピードでの展開が予想される。

 

 

 

第3ステージ ベエルシェバ~エイラート 229km(平坦)

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イスラエル南部のネゲヴ砂漠を縦断する、長く、熱い、過酷な一日。

ゴール地点は同国最南端、紅海に面するリゾート地エイラートである。

 

この日もまた、スプリンターたちによる激戦が繰り広げられることだろう。遮るものののない砂漠の中だけに、横風分断には注意が必要だ。

今期絶好調のエリア・ヴィヴィアーニと、横風大好きなクイックステップ・フロアーズのコンビが、前日からの開幕2連勝という可能性も十分ありうるだろう。

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砂漠といっても真っ平というわけでもなく、この地域特有のすり鉢型地形が豊富な起伏を作ってもいる。上記写真はその一つマクテシュ・ラモン(ラモン・クレーター)であり、今ステージの前半でもこの辺りを通るようだ。中継映像に映ってくれるか、少し不安な位置ではあるけれども・・・。

 

 

 

第4ステージ カターニア~カルタジローネ 191km(中級山岳)

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イスラエルでの3日間を終え、休息日を1日挟んだプロトンは、いよいよイタリアに足を踏み入れることに。

とはいえ半島への上陸ではなく、まずはシチリア島で3日間を過ごす。

 

その初日はシチリアの南東カターニアからスタート。

海岸沿いではなく、内陸部へと向かうルートのため、上記画像の通り非常にアップダウンが激しい。

ジロ・デ・イタリアは本国に入った瞬間に厳しくなるのが特徴だが、今年もまさにその典型といったところか。

 

当然、こんなコースレイアウトであれば逃げ切りを狙うスペシャリストたちが黙ってはいない。

アクチュアルスタート直後に登り、その後はスピードの出やすい下りが連続するということで非常に激しいアタック合戦が繰り広げられそうだ。序盤の平均速度やばそう。

今大会最初の逃げ切り勝利の栄誉を手に入れるのは果たして誰か。

 

そしてラストは最大勾配13%区間を含む激坂フィニッシュ。総合勢でも多少の動きが起こる可能性はありそうだ。

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カルタジローネは陶器の生産地としても非常に有名で、サンタ・マリア・デル・モンテ教会に至る上記の階段も特産の陶器で飾られている。 

 

 

 

第5ステージ アグリジェント~サンタ・ニンファ 152km(中級山岳)

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前日に引き続きアップダウンの豊富なステージ。

前日ほど小刻みではないが、その分1つ1つの山の難易度は前日以上だ。

このステージもラストは少々登っている。

序盤の逃げが吸収されたとしても、ラスト数キロからの飛び出しによる逃げ切り勝利が起こりそうなレイアウトだ。

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アグリジェントはサイクルロードレース界においては少し不名誉な評判を持つ街でもある。

2008年のジロ第2ステージでゴールとなったこの街に最初に飛び込んできた選手はリカルド・リッコ。また、1994年にこの街で開催された世界選手権で優勝したのはリュク・ルブランである。

 

もちろん、今年この街をスタートする全ての選手たちがクリーンであることを信じてはいる。

私たちができることはただ、彼らを信じることだけである。 

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アグリジェントの世界遺産「神殿の谷」。谷という名称だが実際には尾根に存在している。ここもスタート地点の街にある世界遺産なので、映像に映ってくれるかはわからない。

 

 

 

第6ステージ カルカニッセッタ~エトナ 163km(山岳)

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凶悪なる活火山が2年連続の登場となる。

昨年は第4ステージで登場。早めの攻撃を仕掛けたヤン・ポランツが勝利と共に山岳賞ジャージを獲得。

メイン集団からはザッカリンが抜け出してステージ2位となった。

 

さて、今回も同じエトナの山を登るわけだが、実は登坂ルートが昨年と異なる。

昨年は火山南部から登り、標高差1892mの「リフージョ・サピエンツァ」に至る道程であり、過去4度の登坂はすべてこのリフージョ・サピエンツァの近くにフィニッシュ地点が置かれている。

今年のエトナ登坂は、ラガルナの街からスタートし、全長14.1kmで平均勾配は6.5%。これは昨年の登坂よりも4kmほど短く、平均勾配は同じくらいである。

ただし、ラスト5km地点に14%の激坂区間があり、そこからフラム・ルージュ手前までの区間に関しては、昨年の最難関区間よりも厳しい平均8%エリアとなっている。このラスト5kmでの攻防が、今年の大きな目玉となるだろう。

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4kmほど、そこそこの厳しさがだらだらと続くという意味で、クリス・フルームには最適なコースレイアウト。

彼がまず順当にマリア・ローザを着用するのか、それともデュムランがこれを抑え込むのか。

 

 

 

第7ステージ ピッツォ~プラーイア・ア・マーレ 159km(平坦)

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2016年ジロ第4ステージも、同じプライア・ア・マーレがゴール地点となっていた。

そのときはラスト9kmから飛び出したディエゴ・ウリッシが逃げ切り勝利を果たしたほか、アップダウンの激しいコースレイアウトを前にマリア・ローザを着ていたマルセル・キッテルが遅れを喫し、トム・デュムランがピンクジャージを奪還した。

今年のコースレイアウトは2年前と違って完全にスプリンター向き。ゴール前には少し登る区間があるものの、よほどピュアなスプリンターでない限り十分にこなすことができるだろう。

今大会3度目となる集団スプリントが展開されるだろう。ヴィヴィアーニとクイックステップ・フロアーズの独壇場か、それとも対抗馬が現れているのか。

 

 

 

第8ステージ プライア・ア・マーレ~モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノ 208km(山岳)

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エトナに続く今大会2度目の本格山頂ゴールは、カンパニア州の名峰モンテヴェルジネ(聖母の山)。著名な赤ワイン、ピアーノ・ディ・モンテヴェルジネの由来である。

 

前回登場は2011年。実は、イタリア統一150年を記念したこの2011年大会では、エトナ、ゾンコラン、フィネストーレと、今年も登場する難関山岳たちが同じように登場していた年であった。

そしてこのモンテヴェルジネもその中の一つとして、2011年にも登場していたわけだ。

当時はバート・デクレルクが優勝。2位にスカルポーニ、3位にクロイツィゲル、5位にニバリ、そして9位にコンタドールと、現在もその名を知られている名選手たちが実力を発揮していた。

 

17kmと長い登りではあるが、平均勾配は5%ほどでそこまで厳しくはない。

だらだらと一定の勾配が続き、アタックも仕掛けづらい。

『ジロ・ディ・イタリア 峠と歴史』でも「力量検査の山」と銘打たれており、ここで総合争いに関わる決定的な動きが起こる可能性は少ないだろう。

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そんな山だからこそ、少し総合優勝争い大本命からは外れる選手たちのアタックが決まりやすくなる。

サイモン・イェーツやフォルモロ、ウッズなど、最強ではないが実力のあるクライマーたちの積極的な走りにも注目したい。

 

なお、コースの道中には世界遺産「チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園」も。

パドゥーラ修道院などが有名とのことで、映像に映るのを楽しみにしていよう。

 

 

 

第9ステージ ペスコ・サンニータ~グランサッソ・ディタリア(カンポ・インペラトーレ) 224km(山岳)

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第101回ジロ第1週のフィナーレを飾るのは、「イタリアの背骨」アペニン山脈の最高峰グラン・サッソ。

その中でも最も有名なカンポ・インペラトーレ(皇帝の野原)に至る224kmのロングステージである。

 

ゴール地点、グランサッソの標高は2135m。大抵のジロであればチマ・コッピ(最高標高地点)に選ばれてもおかしくない標高ではあるが、今年は第19ステージにフィネストーレ峠があるため、ここはまだチマ・コッピではない。

山岳自体の登坂距離は長いが、勝負所は平均勾配8%のラスト4.5km。

最大勾配13%はゴール前1.5km地点に存在する。

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この実質4.5kmという長さを考えると、決定的なタイム差がこのステージでつく、というのは考えづらいだろう。

だが、このステージの勝者が、そのまま第1週を終えた時点でのマリア・ローザ着用者となっている、ということは十分ありそうな話である。

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グラン・サッソは「大きな石」を意味する。1999年にはパンターニが優勝している。第二次世界大戦中の「グラン・サッソ襲撃」でも有名で、そのときの舞台もカンポ・インペラトーレである。

 

 

 

第2週につづく。