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オムロープ・ヘット・ニウスブラット2018 プレビュー

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教会(カペル)に向かう急坂を登る選手たち。今年はこの「カペルミュール」が勝敗を分ける重要なポイントとして登場する。

 

 

いよいよ「春のクラシック」シーズンが幕を開ける。

その始まりを告げるレースが、2/24(土)に開催される、ベルギー・オースト=フラーンデレン州を舞台に繰り広げられる200km弱の石畳クラシック「オムロープ・ヘット・ニウスブラット(Omloop Het Nieuwsblad)*1」である。

 

今年はDAZNでの日本語実況・解説もつく予定*2のこのレースだが、今年はゴールレイアウトの大きな変更もあり、 例年以上の盛り上がりが期待できそうだ。

 

今回はこの、注目すべきフランドル開幕戦をプレビューしていく。

 

 

 

コース詳細

オムロープ・ヘット・ニウスブラットは、1945年に初開催されたベルギー伝統のレースである。

すでにベルギーでは歴史のあったロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・デ・フランドル)に対抗し*3カペルミュールなどのロンドでもお馴染みの急坂を多く取り入れた正真正銘の「前哨戦」である。

翌日に開催されるクールネ~ブリュッセル~クールネと合わせ、「セミクラシック」と呼ばれることもある。クールネがよりスプリンター向けのレースであるのに対し、オムロープはより厳しいクラシックスペシャリスト向けのレースとなっている。

 

昨年・一昨年はともに、小集団でのマッチスプリントを制したグレッグ・ファンアフェルマートが優勝している。サガンは2年連続でファンアフェルマートに敗れ、2位に甘んじることに。

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しかし今年はコースレイアウトに大きな変更が加えられた。

例年はヘント(Gent)を発着するレイアウトだったが、今年はゴール地点がヘントではなく、その南東に位置するニノーヴェ(Ninove)=メールベーケ(Meerbeke)となる。

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これは、2011年までロンド・ファン・フラーンデレンでゴールとして採用されていた町である。

 

 

すなわち、今回のオムロープのコースレイアウトとは、2010年ロンドでカンチェラーラが伝説を作り上げた、あのレイアウトの再現なのである。

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2010年のロンドで伝説を作り上げた「スパルタクス」ことカンチェラーラ。伝説の再現なるか。

 

 

もちろん、コースを同じにすれば伝説が再現される、という簡単な話では決してないが、それにしても例年以上に厳しく、スリリングな戦いが演出されるコースであることは間違いない。

もしかしたら今年の「ロンド」本家以上に激しい展開が生み出されるかもしれない。

 

参考:13の「急坂」の詳細

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13の激坂を制し、最初にゴールに飛び込んでくる選手は果たして誰か。

 

 

注目選手

今回のオムロープは、サガンにとって最も向いているコースである、と感じていた。

2016年のロンドで見せた、石畳の急坂での他を寄せ付けない圧倒的な登坂力。そして、その後の平坦における、カンチェラーラすら追い付かせない独走力。

そんな彼の実力をもってすれば、2010年のカンチェラーラの再現すら、彼には可能なのではないか、とも予感させていた。それこそが2年前のロンドで、カンチェラーラから「王位継承」したサガンのなせる業であると、と。

 

しかしサガンは今回のオムロープの不出場を決めた。この時期のレースには出場せず、翌週のストラーデ・ビアンケからようやく春のクラシックへと参入していく、そんなスケジュールを組んでいるようだ。

 

非常に残念ではある。しかし、サガンは例年、この時期にはまだまだ身体が出来上がっておらず、それが敗北を重ねる要因ともなっていたように思う。

それならば無理して出場して本気で優勝を狙って行くのではなく、少しずつペースを上げていきながら3月末からの本格的なシーズンを迎えた方がよい、と思えないことはない。

 

だから、残念ではあるが、サガン抜きでのオンループ優勝候補を考えていきたいと思う。

 

 

キーワードは「激坂対応力」と「独走力」である。

最後の登りから30km近い平坦が続いた昨年までと違い、今年は最後の登坂「ボスベルグ」からゴールまではたったの11km。

しかもボスベルグの5km手前には、平均勾配10%近い石畳の超激坂カペルミュールが控えているのだ。

 

有力勢が確実に分断されるカペルミュールで、単独で抜け出すための「激坂対応力」。

そしてラスト11kmを後続に追い付かれずにハイペースで走り続けられる「独走力」が求められるというわけだ。

 

戦術や小手先ではない、純粋な実力勝負が求められるのが今年のオムロープなのである。 

 

 

グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、32歳)

BMCレーシングチーム所属

2017年パリ~ルーベ覇者にして、昨年・一昨年のオムロープ覇者。とはいえ前述した通り、今年のオムロープは昨年までと全く違う。確かにファンアフェルマートのスプリント力は高く、マッチスプリントになればほぼ負け無しだろうが、単独で抜け出すだけの力が彼にあるかというと微妙だ。

激坂対応力も独走力もそれなりにあるとはいえ、今回のオムロープの最有力優勝候補とは、ちょっと言いづらいように思える。

場合によっては、今年からチームメートになった元ロット・スーダル、ユルゲン・ルーランツが勝機を掴むかもしれない。彼もまたスプリンター寄りではあるが、今シーズンは好調にスタートできている選手だ。

 

フィリップ・ジルベール(ベルギー、35歳)

クイックステップ・フロアーズ所属

2017年ロンド覇者。カペルミュールではチームメートと共に抜け出す力を発揮し、そして何よりもラスト55kmの独走を成し遂げたその実力が、今回のオムロープ勝者に最も相応しい要素であると言えるだろう。

ジルベールの魅力のもう1つは、他チームメートとの協同である。昨年はドワーズ・ドール・フラーンデレンでイヴ・ランパールトを勝たせるための囮アタックを仕掛けた姿が印象的だった。優勝したロンドでも、後続のボーネンたちの存在があったがゆえに、自らが捕まってもいいという思いをもって、無謀とも思えた独走劇に挑めたのだと思う。

勝利への強い渇望を抱きつつ、自らの勝利を犠牲にしてでもチームメートと共に勝利を目指す志向。クイックステップという最強チームと組み合わさって、今回のオンループにおける最有力候補と言えるだろう。

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ニキ・テルプストラ(オランダ、33歳)

クイックステップ・フロアーズ

2014年ルーベ覇者にして、ロンドにおいても2015年2位、2013年と2017年に3位と常に上位を記録している。

テルプストラ自身はそこまでビッグレースでの勝利を量産するタイプではないが、ジルベールと共にチームメートとの連携が非常に巧みである。2017年のロンドでも、同年のパリ~ツールでも、先行したチームメートたちに後方から追い付き、いずれも勝負に関わる重要な動きを担っていた。ヘント~ウェヴェルヘムでは似たような動きでサガンを攪乱して怒られていたが、そのときは共に逃げるチームメートがいなかったこともあり、勝利に貢献することはできなかった。

今回、ジルベールと共に同様のクレバーな動きを見せることができれば、ジルベールかテルプストラのどちらかが勝利を掴むことは十分にありうるだろう。

 

マイケル・マシューズ(オーストラリア、27歳)

チーム・サンウェブ所属

ロンドを中心とする北のクラシックで活躍する、というイメージの少ないマシューズではあるが、昨年のツールは山岳でも積極的に逃げ、ポイント賞を獲得するなど、サガンに最も近い才能の1人となりつつある。

元々はアムステルゴールドレースなどスプリント要素の大きいクラシックでの勝利が目立っていたが、昨年は厳しい登りを最後に控えたリエージュ~バストーニュ~リエージュで4位。アムステルもゴール前に短いが厳しい登りを用意するレイアウトであり、今回のオンループのようなコースには意外な適性がありそうだ。

そして、激坂対応力と、10km程度のTTでの独走力という意味で、今回のオンループの重要な要素を共に満たしている選手でもある。

不安要素があるとすれば、今回のオンループが彼にとっての今シーズンデビュー戦となることか。とはいえ2年前のパリ~ニースなどでも、デビュー戦から絶好調だったので問題ないとも言えるかもしれない。

マシューズと似た脚質で勝利が期待できそうなのがディメンションデータのエドヴァルド・ボアッソンハーゲン。彼もまた、短い距離での独走力が高い選手だ。

 

セップ・ファンマルケ(ベルギー、29歳)

チームEFエデュケーションファースト・ドラパックp/bキャノンデール所属

2012年オムロープ覇者。以来、パリ~ルーベで2位が1回、4位が2回。ロンド・ファン・フラーンデレンで3位が2回。

実力は間違いなくあるのに勝ちきれない。その原因としては、激坂で他を突き放すほどの破壊力はなく、独走で他を寄せ付けない圧倒的なものがないのが・・・ということなのかもしれない。スプリントでも同様。1番になれない要素が集まってしまっている。

ただ、ルーベなどでも見せる、ここぞというときの、好タイミングでの飛び出しを得意とする選手でもある。突き放せなくとも最後まで喰らいつく走りを見せたあと、ラストの11kmのどこかで飛び出すチャンスが得られれば・・・。

 

ティム・ウェレンス(ベルギー、26歳)

ロット・スーダル所属

彼もまたマシューズ同様にアルデンヌ・クラシック寄りの選手であり、北のクラシックという印象の少ない選手ではある。

しかし、直近のブエルタ・ア・アンダルシア第4ステージ、アルカラ・デ・ロス・ガスレスの石畳急勾配登りフィニッシュで、その圧倒的な強さを見せつけた印象が非常に強い。今夜開催される個人TTがどうなるかわからないが、昨年の同レースの12km個人TTでも20秒遅れの区間7位と悪くない走りを見せていた。短距離であれば、独走力も十分に見込める選手なのである。

よって、結構な大穴ではあるが、勢いに乗っている選手ということで、このウェレンスにも注目していきたい。最有力選手たちが最高のコンディションで集うロンド本戦ではさすがに厳しいだろうが、今のタイミングならば、そのコンディションの差で上位につける可能性もあるだろう。

なお、昨年のストラーデ・ビアンケでは3位。これもまた、期待させる要素となるだろう。

チームメートにはほかにティシュ・ベノートもいる。北のクラシックにより向いている選手という意味ではベノートの方も注目すべき選手だ。

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ほかにも、昨年ルーベ4位のトレック・セガフレード所属ジャスパー・ストゥイヴェンや、AG2R所属の現ベルギーチャンピオンのオリバー・ナーゼン。

さらにはチーム・スカイに新加入したロンド昨年4位、一昨年6位のディラン・ファンバールレあたりが優勝候補として名を挙げていけるだろう。

 

 

いずれにしても、例年以上に白熱した戦いになりそうな今年の「オムロープ」。

3月末から本格的にスタートする石畳クラシックシーズンに向けて、その調子を占うという意味でも注目をしていきたい。

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今年のオムロープを制し、独特なトロフィーを獲得するのは果たして誰か。

 

 

 

*1:オンループ・ヘットニュースブラッドとも。

*2:別府始・綾野真コンビなので楽しみだ。

*3:かつてこのレースは「オンループ・ヘットフォルク」と呼ばれており、ロンド・ファン・フラーンデレンを主催していたヘットニュースブラッド紙のライバル紙であったヘットフォルク紙が主催するレースであった。しかしこのヘットフォルク紙が休刊し、2009年からはヘットニュースブラッド紙が主催することになったため、レース名称も現在のものとなった。かつて対抗したライバルに乗っ取られるというのはなかなかの皮肉である。

スプリンターたちの激戦 ドバイツアーを振り返る

今年も、トップスプリンター同士の熱い戦いが繰り広げられたドバイツアー(2.HC)。

今回は、そのドバイツアーの各ステージを、レース映像を用いて振り返っていきたいと思う。

 

 

 

第1ステージ ドバイ~パーム・ジュメイラ

 

 ペルシャ湾に浮かぶ人工島「パーム・ジュメイラ」でフィニッシュする第1ステージ。ステージ終了後にカヴェンディッシュが「あんまりにもカオスすぎて勝負する気になれなかった」と述べるほど混沌としたスプリント。

 最もチーム力を発揮し、エースを守ったのは、「最強チーム」クイックステップ・フロアーズだった。

 

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 残り1kmを過ぎてから終始、クイックステップは集団先頭にトレインを置き続けていた。キッテル率いるカチューシャ・アルペシンもトレインを形成して対抗するが、クイックステップがラスト150m付近までヴィヴィアーニを連れていったのに対し、カチューシャは上記地点ですでにトレインが崩壊。

 キッテルは一度、番手を下げてしまうことに。

 

 そして、このタイミングで、最も素晴らしい働きをしたのが、チーム・ロットNLユンボのアシスト、ティモ・ローセン。

 集団中ほどにいたローセンはエースのフルーネヴェーヘンを引き連れて、降りてくるキッテルをかわすようにして先頭に躍り出る。

 

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 そして残り200mを切ったあたりで、ローセン、そしてクイックステップの最終発射台サバティーニが離脱し、それぞれのエースを発射させる。

 このとき、アスタナのマウヌス・コルトニールスンも集団中央から単独でスパートをかけて、降りてくるローセンをかわしてしっかりと勝負のラインに入り込んだ。

 

 落ちていたキッテルも慌ててこのニールスンの背後につく。

 クリストフも最初、キッテルの後ろに貼り付いたのだが、この日のクリストフはまったく力が出せず、ずるずると下がっていってしまった。

 

 ヴィヴィアーニ、フルーネヴェーヘン、コルトニールスン、キッテル。この4人全員が、真っ向勝負を仕掛けられる状況だった。しかし・・・

 

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 最高のポジションからスタートすることのできたヴィヴィアーニだったが、目の前の進路をフルーネヴェーヘンによって塞がれてしまった。

 このもう少し前の段階で進路を左に切ることができていればこの状態は避けられたかもしれないが、ここまできたら後の祭り。どうすることもできず、ヴィヴィアーニは失速した。

 

 逆にコルトニールスンは遮るもののない進路を獲得できたことで、最後、フルーネヴェーヘンに喰らいつく。

 キッテルはメカトラブルもあり、勝負に絡むことができなかった。

 

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 勝ったのはフルーネヴェーヘン。

 だが、この日最も単独での力が強かったのはコルトニールスンであり、最も素晴らしいアシストをしたのはティモ・ローセンであり、最もチーム力が高かったのはクイックステップ・フロアーズである、と言えるだろう。

 

 その中で、コース取りにおいて失敗したのがヴィヴィアーニであり、トレイン形成のタイミングと力量においてクイックステップの後塵を拝してしまったのがカチューシャ、そして単純に力が足りなかったのがクリストフ、という結果だった。

 

 第1ステージから意外な展開を生み出したドバイツアー。波乱を予感させる幕開けだった。 

 

 

第2ステージ ドバイ~ラアス・アル=ハイマ

 

 ドバイツアー2日目はドバイ首長国からペルシャ湾岸沿いに北上し、ラアス・アル=ハイマ首長国へと向かう190km。

 海沿いを走ることから横風分断の恐れもあったものの、大きな影響はなく、予定通りの集団スプリントに向かうこととなった。

 

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 今回のポイントとなったのは、残り300mを切ったあたりの上記画像の地点。

 この日、ヴィヴィアーニは前日の反省を踏まえたのか、アシストのいる集団右側ではなく、あえて集団中央に陣取っていた。

 そして、早めに動き過ぎたクリストフが降りてくるその背中に向けて、開いた空間の中を一気に駆け上がった。

 

 逆に昨日のヴィヴィアーニのように右側から上がっていこうとしたラリー・サイクリングの選手は、ちょうど同じタイミングで飛び出したマレチュコによって進路を阻まれ、このあと失速する。

 集団スプリントにおいて「端」というのは悪手になりつつあるのか?

 中央に陣取ることが勝率を上げるポイントになっているのかもしれない。

 

 ところでこの画像で注目しておきたいのは、カヴェンディッシュの位置。前方・左手ともに選手たちに囲まれ、身動きの取れない危機的な状況に陥っていた。しかし、

 

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 クリストフに迫るヴィヴィアーニ。それを左目に見つつ、わずかに空いた隙間を狙って・・・

 

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 飛び乗った!!!

 

 見事なまでのバイクコントロール。あのわずかな隙間を縫って、最悪のポジションから最高のポジションへと身を移したのだ。

 これが大ベテラン、かつて最強と謳われたスプリンターの実力か。

 

 しかし、今シーズン最高の調子でここまで来ているヴィヴィアーニが、前日と違って十分に戦えるポジションに身を置いた以上、それを阻む者は誰もいなかった。

 あまりにも早く前に出過ぎてしまったクリストフもこの後、マレチュコの背中に入ることで2度目の加速を狙うが結局は足が残っておらず、失速。

 

 200m弱のスプリントであれば今大会最強と言っても過言ではないヴィヴィアーニのラストスパートに、カヴェンディッシュはついていくことができなかった。

 

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 前日の失敗を挽回して、勝てるパターンを作り上げることのできたヴィヴィアーニの順当な勝利。

 一方、カヴェンディッシュもまた、ツールでの落車を乗り越えて調子を取り戻しつつあることを証明する走りであった。 

 

 

第3ステージ ドバイ~フジャイラ

 

 いよいよレースも後半戦に入ろうかという3日目。

 いつものスカイダイブドバイをスタートしたプロトンアラビア半島を東に横断し、インド洋に面したフジャイラ首長国へと向かう。

 途中、若干の登りを含むものの、とくに影響はなくこの日も集団スプリントによって決戦を迎えることとなった。

 

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 この日も、クイックステップ・トレインが集団を支配。

 カヴェンディッシュ・キッテル共に早くも単独になり、カヴェンディッシュコフィディスのアシストの背後についている状態であった。

 

 普通に考えればヴィヴィアーニが完全に優位。しかし、この日もまた、カヴェンディッシュは巧みな動きを見せた。

 

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 すなわち、コフィディスのアシストが離れると同時に、降りてくるクイックステップのアシストをかわしてしっかりとヴィヴィアーニの背後を取る位置に身を滑り込ませたのだ。

 背後のUAEの選手を抑え、絶好のポジションを獲得したカヴェンディッシュ

 第2ステージに引き続き、こういう細かい動きが上手いのがカヴェンディッシュという選手なのかもしれない。

 

 それでも、ヴィヴィアーニ有利なのは間違いがなかった。残り200mを切って、最終発射台のサバティーニが離脱。

 200m。

 ヴィヴィアーニにとって、必勝の距離だった。

 

 しかしこの日は、強い向かい風が吹いていた。それが、ヴィヴィアーニとクイックステップの想定を狂わせた。

 

 伸びきらず、失速するヴィヴィアーニ。

 そして残り150mを切ったタイミングで、カヴェンディッシュが飛び出した。

 

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 後方からはブアニとキッテルも迫るが、カヴェンディッシュの超低空スプリントは風を切り、ライバルたちを寄せ付けることがなかった。

 そして勝ち取った、今シーズン初勝利。

 

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 向かい風でさえなければ、この日もクイックステップが勝利していたのは間違いない。

 逆に今日のこの日のコンディションを踏まえ、あえて早い段階からトレインを利用した戦い方を捨てたカヴェンディッシュやキッテルが、この日は好成績を収めることができたと言えよう。

 

 スプリントと言っても状況は一様ではない。その日その日の状況によって強い弱いは簡単に逆転するのだということを、思い知らされる一日であった。 

 

 

第4ステージ ドバイ~ハッタ・ダム

 

 ドバイツアー名物のハッタ・ダム登りゴール。毎年、ドラマを生み出すこのステージで、今年はさらに新しい衝撃的な結末を迎えることとなる。

 

 今年のドバイツアー最大の盛り上がりを作り上げた立役者が、わずか19歳のブランドン・マクナルティ。今年プロコンチネンタルチームに昇格したばかりのラリー・サイクリング所属の選手である。

 

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 2016年世界選手権ジュニア個人TT優勝者であり、2017年U23個人TT3位の実力者。残り10kmから独走状態に入り、その時点でのタイム差は1分22秒。

 集団は逃がすわけにはいかないだろうが、クイックステップ、アスタナ、バーレーンメリダ、ロットNLと様々なチームが牽引に加わるものの、イマイチそのタイム差が縮まらず。互いに牽制し合っているようにも見える。

 

 そしていよいよ、マクナルティがラスト1kmのアーチをくぐる。タイム差は依然、30秒以上・・・!

 

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 マクナルティの足はまったく止まっておらず、この後も700mほどの平坦を1分で駆け抜けた。すなわち、時速42kmは出ていたのである。

 

 後ろを振り返り、勝利を確信。意気揚々と、最後の登りに突入するマクナルティ。

 

 しかし、過去幾多ものドラマを生んだハッタ・ダムの最大17%の急勾配は、19歳の若きライダーにとっては想像の域を超えた代物であった。

 

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 ゴールまであと50mで、無情にも集団に飲み込まれていくマクナルティ。

 彼が最後の300mを駆け上がるのに要した時間は1分。平均時速18kmまでそのペースは落ち込んでいた。

 一方の集団は、マクナルティから30秒遅れて最後の1kmに突入し、その後の1分30秒で彼に追い付いた計算となる。

 この激坂を含めた最後の1kmを、平均時速40kmで攻略したというわけだ。

 

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 そして、誰もが苦悶の表情を浮かべて登るこの激坂を制したのは、バーレーンメリダソニー・コルブレッリ。

 チームにシーズン初勝利をもたらした彼のこの栄光は、残り5kmから懸命に牽引し続けたチームの力によるものでもあり、さらに言えば絶対エースであるはずのヴィンツェンツォ・ニバリによる強力な牽引だった。

 

 昨年のツールでは正直、チームからの期待に応えることのできない走りを続けていたコルブレッリ。

 だが、今年、それでも彼を信頼してくれるチームの信頼に報いるために、彼は、本来であれば決して得意な部類ではないはずの激坂フィニッシュを、力強く制したのである。

 

 レース後には熱く抱き合う姿も見せたコルブレッリとニバリ。

 バーレーンメリダというチームの持つ高いチーム力に関しては、昨年のジロ・デッミリアについて書いた記事でも言及しているので参考にしていただきたく。

ジロ・デッレミリア2017 バーレーン・メリダのチームとしての走り - りんぐすらいど

 

 そして本当に惜しい結果となってしまったマクナルティだが、それでも彼はまだ19歳。数年後にワールドツアーチームにおいて存在感を放つ選手になっているに違いない。今から楽しみである。

 

 

第4ステージ ドバイ~ドバイ

 

 ついに最終戦。ドバイ市内を巡る純粋スプリントステージ。

 だが、第1~第3ステージまでは挿入されていた、空撮映像のみのラスト1kmの振り返りが、この日だけ放送されることがなかった。

 そのため、最後のスプリントの詳細な各選手の位置取りを確認することはできないが、限られた場面から状況を推察していきたいと思う。

 

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 少なくとも言えるのはこの日、カチューシャのアシストたちはこれまでのステージと比べても良い走りをしていた。

 ラスト1km近くまで集団の先頭付近をしっかりとキープし、逆にクイックステップはやや番手を下げていた。

 

 ゴール直前のクラッシュの場面である上記画像のとき、ツァペルとハラーは集団の先頭で適切なコースを確保していた。

 だが、キッテルがこのとき、彼らについていくことができずにいた。そしてクイックステップのアシストたちもやや遅れを喫していた。

(上記画像の各選手の判別は推測によるものです)

 

 キッテルが上がり切れない状況を踏まえ、カチューシャはハラーによるスプリントに切り替えることに。

 ブアニやカヴェンディッシュなどの強力なライバルたちが足止めを喰らっている中、1人でもアシストがいる状況というのは、ハラーにとってはまたとないチャンスであった。

 

 しかし、ここで実力を見せつけるのがクイックステップというチームだった。

 

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 この2つの画像の間はわずか1秒。確実に隙間が開いていたマレチュコの背後に、クイックステップの2人が一気に差を詰めて入り込んできたのである。

 

 鼻がチャームポイントのヴィヴィアーニを牽引するのは当然、サバティーニ。別のタイミングでは、彼の必死の形相がよく映り込んでいる。

 空撮映像がないため、このとき彼がどれだけの差をどれだけの勢いで詰めたのかは分からずじまいだが、距離を開けられていた先頭集団に向けて、エースをきっちりと運びきったことだけは確かである。

 

 かつてキッテルを支え続けた最強の発射台役が、この日もばっちりと仕事をこなした。

 そしてエースのヴィヴィアーニは、そんなチームメートの働きに応えるべく、向かうところ敵なしのスプリントでもって、ハラーたちを一蹴した。

 

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 圧倒的に強い。強かった。しかし、そんな彼がその強さを十分に発揮して勝利を得るためには、チームの助けが不可欠であった。

 一方で、第2ステージでの勝利や、ダウンアンダー・カデルレースではむしろ、彼自身の強さが際立っていた。

 キッテルだって同様である。今回のドバイツアーではチームがうまく機能していなかったがゆえに勝てなかった、と思われる場面もあったが、元々昨年のツールでは彼自身の力で勝利する場面も多かった。そして今回のドバイツアー最終日では、チームは仕事を果たす中で、彼自身がうまくいかず勝てなかったと言えそうな状況だった。

 

 スプリンターの戦いというのはシンプルなようでいて、様々な要素や状況が絡み合う複雑な瞬間劇である。

 それゆえに、ゴール前の空撮画像などは非常に貴重で、それを見ることで、チーム全体の戦略や個々人の動きの意味が理解できるようになる。

 ドバイツアーは資金が豊富であるがゆえか、この空撮映像が他の同レベルのレースに比べて多い気がする。その意味で、今回、このドバイツアーではスプリンター同士の激戦を非常に堪能することができた。

 最終ステージだけなぜか空撮映像がなかったのが残念ではあるが・・・ともあれ、今年好調のヴィヴィアーニ、不調のキッテル、さらにはそこそこ好調のカヴェンディッシュなどの状況を丹念に見ることが十分にできた。

 

 キッテルはすでに照準を2週間後のアブダビツアーに向けている。そこでリベンジすることができるか。そしてヴィヴィアーニも、今回の勝利に満足はしていない。「もっと大きなレースでの勝利を目指したい」。彼が狙っているのはジロ、あるいは、もしかして、ツールかもしれない。

 

 

 ダウンアンダーに続きこのドバイツアーでも、例年と違った戦力の拮抗状態が生まれつつあるスプリンター勢力図。今後、本格化するサイクルロードレースシーズンにおいても、彼らの激突からは常に目が離せなさそうだ。

 

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 今シーズン早くも4勝。クイックステップ自体も10勝。主力が抜けて戦力ダウンが危惧されていたこのチームも、まずは幸先の良いスタートを切っている。 

ブエルタ・ア・アンダルシア2018 プレビュー

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 Jsportsが送る2018年シーズンのレース第2弾は、初放送となる「ブエルタ・ア・アンダルシア」。

 ヨーロッパツアーHCクラスのレースでありながら、毎年グランツールの総合優勝争いに絡むトップライダーたちが鎬を削る、大注目のレースである。

 さらに今年は、サルブタモール問題でも騒がれているクリス・フルームが、今シーズンのデビュー戦として選んだレースとしても話題を集めている。

 

 DAZNも本気の放送ラインナップを披露している中、このアンダルシアが、Jsportsにとって反撃のチャンスとなれるか。

 

 今回はそんな、南スペインの「熱い」レースをプレビューしていく。

 

 

 

ブエルタ・ア・アンダルシアとは

 ブエルタ・ア・アンダルシア、別名「ルタ・デル・ソル(太陽の道)」は、今年で64回目を迎えるスペイン伝統のレースである。

 その名の通りスペイン南部・アンダルシア地方を走る。毎年2月中旬に開催し、一昨年前まではヨーロッパツアー1クラスのレースであったが、1クラスとは思えない豪華なメンバーが揃うこともあって、昨年からHCクラスに昇格。

 今年は7つのワールドツアーチームが出場することに。ミケル・ランダ、クリス・フルームヤコブ・フールサンといった、今年のツールの主役となるであろう選手たちも揃っている。

 

 昨年はアレハンドロ・バルベルデアルベルト・コンタドールが激闘を制した。また、その年にジロ初出場・総合4位となるティボー・ピノがステージ優勝と総合3位とこれもまた活躍した。その他、プールス、ローザ、ランダと、当時スカイに所属していた選手が総合4位~6位を独占したというのも面白い状況であった。

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 総合優勝はバルベルデ。わずか1秒差でコンタドールが2位につける、まさに激戦であった。

 

 

 今年も山岳を中心とした難易度の高いコースがぎゅっと詰まった5日間。

 ワールドツアークラスのレースと遜色ない盛り上がりを見せること間違いなしである。

 

 

コース詳細

第1ステージ ミハス~グラナダ 197.6km

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 マラガ県のミハスから、アルハンブラ宮殿で有名なグラナダへ。

 昨年も同じくグラナダにゴールするステージで開幕し、1級山岳で絞り込まれた小集団スプリントを制したバルベルデが勝利。

 今年も初日から山岳が多く、ゴールから20km手前に山岳ポイントがある、というところまで一緒ではあるが、昨年と違って今年はその山岳ポイントが3級でしかない。

 全体的には難易度が低くなっているため、比較的大きな集団でのフィニッシュになる可能性はあるだろう。

 

 一般的には逃げ切りも決まりやすいレイアウト。初日なので可能性は低いが、まさかの大逃げによる意外な形での初日リーダージャージというパターンもあるかもしれない。雨が降っていたらウェレンスに注意。

 

 

第2ステージ オトゥラ~ラ・グアルディア・デ・ハエン 140km 

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 アンダルシアは2日目にして1級山岳山頂フィニッシュのクイーンステージに突入する。

 決戦の舞台となるのは、2015年アンダルシアにも登場したアリャナダス峠。このときはクリス・フルームアルベルト・コンタドールを29秒差で打ち破り、2秒差で総合リーダージャージを獲得している。

 登坂距離は4.5km。平均勾配10.8%。ただし最初の1.5kmは大したことがなく、ラスト3kmの平均勾配は12.8%。最大勾配17%区間も含む。

  距離はそれほど長くはないがかなり厳しい登りで、総合成績に大きな影響を及ぼすことは必至だ。現時点で最強の登坂力を示せる選手は誰だ。

 

 なお、カハルラルのエースであるセルヒオ・パルディリャは、2010年のアンダルシアでこのアリャナダス山頂フィニッシュを制している。

 

 

第3ステージ マンチャ・レアル~エレラ 166.1km

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 初日から山岳色の濃かったアンダルシアで、3日目にしてようやく訪れたスプリントステージ。昨年も1ステージだけだったスプリントステージで、勝ったのはブライアン・コカールだった。

 今年出場予定の選手の中で、目ぼしいスプリンターといえばダニエーレ・ベンナーティ(モビスター)、サッシャ・モドロ(EFキャノンデール)、アドリアン・プティ(ディレクトエネルジー)、クリスティアン・ズバラーリ(イスラエル)くらいか。

 そんな状況だからこそ、新たな才能の発掘を見ることもできるかもしれない。ワンティ・グループゴベールのアンドレア・パスカロンなんかに期待。

 

 

第4ステージ セビリャ~アルカラ・デ・ロス・ガスレス 194.7km

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 中盤に1級山岳プエトロ・デ・ラ・パルマス(標高1200m、登坂距離15.7km、平均勾配5.4%)。直後に2級山岳も連続するが、こちらは登坂距離も短く、またその山頂を越えてからゴールまでは長い下りも含めて逃げ切るには厳しそうな距離。

 それでも、逆転を狙った挑戦的な攻撃が見られるかもしれない。

 

 もう1つの見所は、ラスト1km手前から始まる最大勾配18%の激坂フィニッシュ。総合勢以外で期待できそうなパンチャーとしては、ジロで勝ったシルヴァン・ディリエやアスタナのモレノ・モゼール、ロットNLのエンリコ・バッタリンなどか。ワンティのギョーム・マルタンも比較的激坂に強いイメージだ。

 また、レース日程としては終盤であり、かつ中央に厳しい山岳があるレイアウトから、ティム・ウェレンスやルーベン・プラサなどの山岳逃げスペシャリストが黙っていないようにも思える。

 特に雨が降った場合は・・・。

 

 

第5ステージ バルバテ~バルバテ(個人TT) 14.2km

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 今年のアンダルシアは、14.2kmの個人TTの結果でもって決着する。全体的にはフラットだが、約1.5km地点から6km地点にわたり、獲得標高100mのゆるやかな登りが存在する。14.2kmというのも微妙な距離で、スプリンターに有利な短距離TTというわけではなく、だからといってTTスペシャリストが得意とする距離とも言えない。

 今回の面子の総合勢で言えば、クリス・フルームが最もTTが強いイメージがあるが、このあたりの距離のTTだとあまり良い結果を出してはいない。クライスヴァイクももっと山がちな方が強く、逆にミケル・ランダは未知数。彼はTTで調子が良いときと悪いときの差が激しいので、たとえばランダとフルームとがわずかなタイム差で接戦を繰り広げていたとき、この日は非常に見所のあるレースとなるだろう。

 

 ステージ優勝に関して言うと、これといった優勝候補を挙げるのは難しい。ウェレンスプールスは、似たような距離だった昨年のTTで上位に来ている。ほかにはプラサ、ステフ・クレメント(ロットNL)、あるいは昨年の世界選手権ITTで13位、先日のエトワール・ドゥ・ベセージュのTTでも7位だったアレクシー・グジャール(AG2R)なんかの走りに注目だ。

 

 

 とにかく第2ステージの山頂フィニッシュが、総合争いにおける最重要地点となるのは間違いない。しかし、この山頂フィニッシュの登坂距離も決して長いわけではなく、勝負が最終日にまでもつれ込む可能性も十分にありうる。

 スプリンターが活躍できるステージが少ないが、それだけに有力選手の数も少なく、大金星を挙げる選手の登場なんかにも期待が持てそうである。

 

 

 

注目選手

クリス・フルーム(チーム・スカイ)

 現役最強のグランツールレーサー。昨年はツールとブエルタを同年で制覇する「ダブルツール」も達成。今年はツール「5勝クラブ」入りを目指すと共に、ジロへの挑戦も予定しているという。

 ここ2年はオーストラリアでのシーズン入りが恒例となっていたフルームだが、3年ぶりにこのアンダルシアでの開幕戦を迎えることに。当時はコンタドールと殴っては殴り返すかのような激戦を繰り広げ、最終的に2秒差で総合優勝。前年のブエルタの借りを返すかのような勝利だった。

 今年は、昨年ツールで自身を強力にサポートしてくれたミケル・ランダが最大のライバル。チームメートもプールス(昨年総合4位)、デラクルス(昨年ブルゴス総合3位)と強力なメンバーが揃えており、調整ではなくしっかりと総合優勝を狙ってくるはずだ。

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 3年前はクイーンステージのアリャナダス峠山頂フィニッシュで勝利。今年もこの峠が登場するため、期待は否が応でも高まる。

 

 

ミケル・ランダ(モビスター・チーム)

 2015年ジロ総合3位に始まって、昨年はツール・ド・フランス総合4位、ブエルタ・ア・ブルゴス総合優勝などしっかりと活躍。だが、エースで走れる環境を求め、アスタナ、スカイに続きこのモビスターへと移籍した。

 モビスターこそ、エースで走れるチャンスが少ないチームなのではないか・・・と思ってしまうが、それでも昨年総合優勝者で先日のバレンシアナでも絶好調だったバルベルデをあえて出場させず、ランダ単独エースとしてこのアンダルシアを走ることが決まった。アシストもアマドールやベンナーティなど豪華なメンバーを揃えてもらっている。この期待に応える必要がある。

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 昨年は初日から果敢に攻める姿勢を見せたが、最終的には総合6位とイマイチな結果に終わってしまった。

 

 また、チームとしては、昨年のカタルーニャ1周で総合3位に輝いた若き才能マルク・ソレルの動向にも注目したい。昨年はそれ以来さほど目立った活躍ができていなかったが、今年こそ更なる爆発の機会が到来しそうである。

 

 

ヤコブ・フールサン(アスタナ・プロチーム)

 長きに渡りトップ選手たちのアシストを務め続けてきたベテラン。昨年はアスタナのエースの一角としてクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合優勝。しかし直後のツールでは悔しい落車リタイアを経験してしまった。

 今年、チーム内ライバルだったアルが移籍したことにより、正真正銘のエースとしてツールに臨むことができそうである。気合は十分。先日のバレンシアナでも、第2ステージでの飛躍のチャンスを作ったのは彼のアタックからだった。最後のスプリントはルイスレオン・サンチェスに譲ったことで自身は総合3位に留まったが、状態が良いことはしっかりと見せつけてくれた。

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 バレンシアナで、バルベルデと共に逃げ、難しいと思われていた第2ステージでの逃げ切りを成功させた。サンチェスとのコンビネーションもばっちりであった。

 

 バレンシアナではチームとしての強さも印象的だったアスタナ。クフャトコフスキらの逃げを捕まえることができたのは、モビスターではなくアスタナの力によるものだったと言ってもいいかもしれない。そのときに活躍したビルバオは今回出場していないが、代わりにミカル・ヴァルグレンなどが出場しており、チーム力は十分だと言えるだろう。

 

  

ギョーム・マルタン(ワンティ・グループゴベール)

 フランス期待の星。24歳。昨年初出場のツール・ド・フランスでは総合23位と、目標としていた総合20位以内に入ることは敵わなかった。しかし今年もチームはツール出場権を獲得。今度こそ・・・という思いとともに、このアンダルシアでは総合TOP10入り目指したい。

 先日のグランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユでは5位を獲得。激坂や起伏の激しいアルデンヌ風味のレースにも強いという印象はあるので、総合だけでなく、たとえば第4ステージでの勝利などにも期待したい。

 チームメートには、昨年のツールで名前でよくネタにされたトーマス・デハント。彼も実際、逃げ力のある選手なので頑張ってほしい。また、アンドレア・パスカロンは1~HCクラスのレースでスプリント上位に入ること多数な逸材。第3ステージでのまさかの勝利もありうるはずだ。

 

アマーロマヌエル・アントゥネス(CCCスプランディ・ポルコウィチャ)

 コンチネンタルチームに所属していた昨年のヴォルタ・アン・アルガルヴェ最終ステージで優勝。今年からCCCに昇格。27歳。

 そして先日のバレンシアナでは、第4ステージの終盤で力強い走りを披露し、総合10位に喰い込んだ。ヤン・ヒルトを失ったチームにとって、今年の総合エース候補の1人であることは間違いない。

 バレンシアナの勢いを維持し、今回のアンダルシアでも大暴れしてほしい。

 

マトヴェイ・マミキン(ブルゴスBH)

 ブエルタの山岳ステージで積極的な逃げに乗っていた印象の強い、若きロシア人クライマー。23歳。今年はプロコンチネンタルチームへと移籍。代わりにエースの座を獲得した。

 先日のバレンシアナにも出場したがここでは力を発揮できないまま早期リタイア。調子を整え、今回のアンダルシアでは結果を出すことができるか。

 

 

その他注目選手

 2年前のジロで一躍実力を発揮したスティーヴン・クライスヴァイク。TTも得意な方ではあるので、十分に勝機はあるとは思うが、あのときのジロ以来はそこまでパッとしない印象。ロット・スーダルのエース、マキシム・モンフォールは、35歳のベテランではあるが、かつてはブエルタ総合6位やジロ総合11位などの成績を出していた選手。ギャロパンも移籍して、総合エースを任せられる選手が少なくなりつつある赤ロットでは、その走りに期待がかけられている。

 他にもディレクトエネルジーのレイン・タラマエだったり、イスラエル・サイクリングアカデミーのベン・ヘルマンスだったりと、元ワールドツアーチームの選手でありながらプロコンチネンタルチームに移籍し、ただしエースの座をしっかりと手に入れることのできた選手たちが、その実力を見せてくれるかどうか。

 カハルラルのエース、パルディリャの走りにも注目だ。

 

 

レース日程(時間は日本時間)

2/14(水)  第1ステージ 23:30~

2/15(木)  第2ステージ 23:30~  ※クイーンステージ

2/16(金)  第3ステージ 23:30~

2/17(土)  第4ステージ 23:30~

2/18(日)  第5ステージ 23:30~  ※個人TT

 

ドバイツアー2018 プレビュー

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今年で5回目を迎えるドバイツアー。もうすっかり、2月のお馴染みのレースとなった印象だ。

このレースを一言で言い表せば、「スプリンターのためのステージレース」。

昨年から全5ステージとなったが、そのほとんどが平坦ステージで、スプリントによるボーナスタイムを稼ぐことで総合優勝もスプリンターの手に渡ることになる。

過去の総合優勝者も、マーク・カヴェンディッシュマルセル・キッテルとなっており、ピュアスプリンターが総合優勝を飾れる数少ないステージレースとなっている。

 

今年も、数多くのトップスプリンターが出場を決めている。

マルセル・キッテル、ナセル・ブアニ、エリア・ヴィヴィアーニ、マーク・カヴェンディッシュ、ジョン・デゲンコルブ、ジャコモ・ニッツォーロ、ディラン・フルーネヴェーヘン、そしてアレクサンダー・クリストフ。

そこにアダム・ブライスやマグヌス・コルトニールスン、リカルド・ミナーリ、ソニー・コルブレッリ、ジャンピエール・ドラッカー、そしてヤコブ・マレツコなどの「挑戦者」たちが挑みかかる。

 

HCクラスとは思えないほどの、最強スプリンター同士の本気の競演。

そんなドバイツアーを、今年も昨年に続きDAZNでライブ放送。しかも昨年と違って日本語実況・解説付である。

 

今回はその、大注目レースのプレビューを行っていく。

 

 

 

ステージ詳細

第1ステージ ドバイ~パーム・ジュメイラ 167km

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毎年恒例の開幕ステージは、ペルシャ湾に浮かぶ人工島「パーム・ジュメイラ」を目指す。世界一高いビルである「ブルジュ・ハリファ」にも注目。

 

第2ステージ ドバイ~ラアス・アル=ハイマ 190km

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ドバイと同じ、UAE(アラブ首長国連邦)を構成する首長国の1つ、ラアス・アル=ハイマにゴールするステージ。第1ステージ同様にフラットなレイアウトだが、コース後半は海岸線を走るため横風に注意。

 

第3ステージ ドバイ~フジャイラ 183km

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第2ステージ同様にパーム・ジュメイラを横目にスタートし、北上した第2ステージと違って東の砂漠地帯に向かい、半島を横切ってUAE東海岸フジャイラ首長国に向かう。例年とは違ったレイアウトであり、ステージ後半に350m近い標高にまで登る。

とはいえ、登りは決して厳しくはなさそうなので、結局は集団スプリントでの争いにはなるだろう。下りでアタックする選手が出るかどうか。

 

第4ステージ ドバイ~ハッタ・ダム 172km

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こちらも毎年恒例、ハッタ・ダム登りゴール。ラスト100mが17%の激坂ゾーン。

2年前のドバイ・ツアーなんかでは、この登りでの攻防によって、一時ニッツォーロが総合リーダージャージを獲得。しかしキッテルも喰らいついており、最終ステージのスプリントで勝利したことで逆転した。

そんな、手に汗握る展開を生み出す鍵となるのがこのハッタ・ダム登りゴールなのだが、昨年は砂嵐によってステージキャンセルとなり、デゲンコルブも非常に残念そうな表情をしていた。

今年はちゃんと開催されるのか。

 

第5ステージ ドバイ~ドバイ 129km

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最終ステージはこれも毎年恒例。距離の短い、ドバイ市内を使ったピュアスプリントステージ。前日までの状況によっては、総合優勝を巡る熾烈なボーナスタイム争いが繰り広げられるだろう。

 

 

基本的な構成は例年同様だが、今年の新要素としては、第3ステージの、コース後半の若干の登り。とはいえ、決して厳しい登りではないため、大勢に影響を与えることはないだろう・・・。

ステージよりも、今年の選手たちの状況の方が気になるところ。デゲンコルブも調子は良いし、ヴィヴィアーニはこれまでにない力を発揮している。キッテルが頭一つ抜けている、というような状況には、ならなそうである。

 

 

注目チームプレビュー&スタートリスト

※ゼッケンNo. については暫定のものであり、今後変更の可能性はあります。

1~.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)

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いよいよ、「赤キッテル」がデビューを果たす。引き連れるアシストも、昨年クリストフを支えたハラーやツァベルなど、一流発射台を揃えている。新加入のダウセットも強力なTTスペシャリストとして、残り10kmからのチーム牽引を担ってくれるだろう。

2年前、クイックステップ・フロアーズに加入して初となるドバイ・ツアー初日ステージでも、きっちりと勝利を掴んでいるキッテル。最近は1人でも勝てる強さも身に着けているので、開幕勝利の可能性は非常に高いだろう。

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昨年ツール5勝。その圧倒的な強さを、新チームでも見せることができるか。

 

21~.アスタナ・プロチーム(AST)

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元オリカ・スコットの新加入コルトニールスンは、ドバイツアーは初参戦となる。2年前のブエルタで2勝し、飛躍が期待された彼も、昨年は調子があがらずにHCクラス以上の勝利はなし。

スプリンター不足にあえぐアスタナへの移籍によって活躍の場は広がるだろうが、チームメートには昨年ドバイツアー第5ステージで3位に入り込む強さを見せつけたリカルド・ミナーリがいる。直近のダウンアンダーでは強さを見せることができなかったミナーリだが、コルトニールスンとどちらがエースになるかは、簡単には言い切ることができなさそうだ。

 

31~.BMCレーシングチーム(BMC)

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スプリントではドラッカーが勝負することになるだろう。だがそれ以上に個人的に注目したいのは、ディラン・トゥーンスのハッタ・ダム勝利。勝てる要素は十分にある、はず。

 

71~.クイックステップ・フロアーズ(QST)

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新チームに移籍し、いきなりの絶好調ぶりを見せ続けているヴィヴィアーニ。ランパルト、サバティーニ、テルプストラといった最強発射台を揃えて、旧エースたるキッテルに宣戦布告を行う。完全にヴィヴィアーニの為であり、ヴィヴィアーニを勝たせることしか考えていない布陣。時代を塗り替えられるか。

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オーストラリアで圧倒的な強さを見せ続けていたヴィヴィアーニ。この勢いを、真のトップスプリンターたちが集うドバイで、どれだけ再現できるか。

 

91~.ディメンションデータ(DDD)

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カヴェンディッシュと、彼の最強のアシストたるレンショー&アイゼルが集う。さらに、昨年ツールでキッテルの為に平坦を牽引し続けた職人ヴェルモトも加わり、こちらも本気中の本気の布陣。

カヴェンディッシュは昨年、辛いシーズンを過ごした。今年は復活の年にしたいところ。

 

101~.チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

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昨年シャンゼリゼを制したフルーネヴェーヘンは、このドバイにおいてトップスプリンター同士の戦いの中に堂々と割って入る資格を持つ男である。むしろ、ここでどれだけの実力を見せられるのか・・・。最低でも各スプリントステージで、上位数名の中に入り続けるだけの走りは見せてほしいところ。

チームとしてはクイックステップやカチューシャ、ディメンションデータといった一流のスプリンター向け布陣と比べると一歩劣るか。リンデマンやマルテンスなどのパンチャーにハッタ・ダムを頑張ってほしい気持ちはあるが・・・フアンホセ・ロバトを失ったのは結構痛い。

 

121~.トレック・セガフレード(TFS)

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ブエルタ・ア・サンフアンで1勝をかましたニッツォーロ、そしてチャレンジ・マヨルカで2勝をかましたジョン・デゲンコルブ。同じくチャレンジ・マヨルカで1勝をかましたトムス・スクウィンシュも加わり、今最も勢いに乗っているトレックの、その勢いを生み出している面子が勢ぞろい。そして、マヨルカでデゲンコルブを支えたラストとファンポッペル、サンフアンでニッツォーロを支えたアラファーチも連れてきている。

今回、キッテル-カヴェンディッシュの2強体制に風穴を開けるとしたら、ヴィヴィアーニかこのトレックの二頭が最大の候補となりそうなところである。

なお、このチームはもう1つ、ハッタ・ダムにおけるスクウィンシュ勝利というカードもあるのが強み。ディラン・トゥーンスと並ぶ優勝候補だ。そして実績ならばスクウィンシュが一枚上手。

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昨年もドバイツアーで1勝を飾っているデゲンコルブ。昨年はステージキャンセルになってしまったハッタ・ダムが今年はしっかりと開催されれば、総合優勝へのアドバンテージもしっかり持っている選手である。

 

141~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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キッテル、ヴィヴィアーニと並んで、チーム移籍を果たしたトップスプリンター、クリストフ。ヨーロッパチャンピオンジャージを着ての参戦となる。

例年この時期はツアー・オブ・カタールとツアー・オブ・オマーンで勝利を荒稼ぎしている頃なので、実はドバイツアーの参戦は初。近年、トップスプリンター同士の戦いではなかなか勝てていないクリストフだが、心機一転、勝利の芽を掴むことができるか。

ただし個人的には、ダウンアンダーでも調子の良さを見せつけたコンソーニの活躍に期待している。どうしたってクリストフの発射台役となるのだろうが、何かしらの形でチャンスが・・・巡って、こない、かなぁ。

また、ワールドツアーチームでは唯一の地元選手、ミルザさんの活躍にも期待。確か昨年も逃げに乗ってくれていた気がする。

 

151~.ウィリエール・トリエスティーナ(WIL)

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直前に同じUAEで開かれたシャルージャ・ツアーにて、ブライアン・コカールを下しての勝利を2度も達成したヤクブ・マレチュコがエースを張るはずだ。メンバーもそのシャルージャ・ツアーのメンバーとほとんど変わっていない。そもそもマレチュコもウィリエール自体もアジアでめっぽう強い。昨年のアジアツアー個人ランキング3位がマレツコで、5位はモスカだったりする。また、パショーニも1月のアミッサ・ボンゴで1勝している。

もちろん、あくまでも彼らの戦績は1クラスとか、せいぜいHCクラスでのものであり、ワールドツアーの、その中でもトップスプリンターたちが集うこのドバイで同じように達成されるとは限らない。しかしマレチュコは昨年のジロでも区間2位を2度獲っていたりもするので、もしかしたらもしかして・・・というのは十分ありうるだろう。

同年代のイタリア人スプリンター若手の成長株ミナーリとコンソーニは、それぞれ自チームのエースのアシストで忙しい。このドバイでは、彼らの中でこのマレチュコが最も目立てる可能性はありそうだ。

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ガヴィリアの躍進の裏で・・・そのガヴィリアの番手を取る形で2度のジロ区間2位を果たしているマレチュコ。プロコンチネンタルチームながら、イタリア人若手スプリンターの中で最も期待できる逸材だ。なお、昨年の10月だけで区間10勝している。

 

 

 

ここで紹介している以外にも、冒頭で挙げたように強力なスプリンターが大挙して押し寄せる。今シーズン最初の「スプリンター頂上決戦」となることは間違いない。

スタートは2/6(火)、日本時間の18:30から! 残業の関係でリアルタイムでは見られそうにないが、見逃し配信でも日付が変わる前には観終わることができそうな、良心的な時間設定だ。

初日は木下さん&別府さんの黄金コンビ。楽しみである。 

2018年シーズン 1月主要レース振り返り

いよいよ開幕した2018年シーズン。

その最初の月となる1月に開催された各種レースのうち注目のレースをピックアップして簡単にレビューしていく。

※記事中の年齢表記はすべて、2018年段階での数え年表記となります。

 

 

 

ツアー・ダウンアンダー(2.WT)

↓詳細は下記の記事を参照のこと↓

suzutamaki.hatenablog.com

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昨年・一昨年との一番の違いは、「スプリンター戦国時代」といった様相を呈したこと

カレブ・ユワンの調子が悪かったというのもあるが、それでも4年ぶりの出場となったグライペルの2勝を皮切りに、昨年シーズン前半は悔しい思いをし続けたヴィヴィアーニのコンディションの高さ、昨年は勝てなかったサガンの強い勝ち方、勝てはしなかったがバウハウスやコンソーニなどの若手の台頭、そしてボーナスタイムを稼ぎ続け、ウィランガ・ヒルでも喰らいついた、ダリル・インピーの劇的な総合優勝。

Jsportsによるライブ中継が実現したことと合わせて、例年以上に見ごたえのある1週間となった。

 

新たな試みとして、1級ノートンサミットの導入。

ダウンアンダーにしては長い距離を登らせるこの山岳の効果は、今年こそスプリント争いという結果には終わったものの、来年以降再登場したときにはまた別の結末を演出しそうな可能性を多く含んだコースだと感じている。

来年もまた、新たな挑戦や新たな注目選手が多く生まれることを期待している。

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2年前のダウンアンダーではサイモン・ジェランの総合優勝をアシストし続けた男が、同じ走りを見せて今度は自ら栄冠を手に入れた。ユワンの勝利もしっかりとアシストしたうえで。 

 

 

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1)

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昨年も2勝しているフェルナンド・ガヴィリアが、開幕ステージから早速勝利。今年もやはりガヴィリアの1強となるのか・・・と思いきや、そのガヴィリアが第2ステージで落車。そして直ちに病院に運ばれることとなった。

スプリントゴールが予想されていた第2、第6ステージも逃げ切りが決まるなど、全体的に混沌とした展開となった今年のサンフアン。そんな中、昨年2勝したリチェセ(リケーゼ)を抑えて、ジャコモ・ニッツォーロがおよそ2年ぶりとなる勝利を飾った。

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終盤、常にトレック・トレインの先頭を牽引し続け、最後までニッツォーロを守り続けたマレン(ミューレン)と抱き合う。

 

2016年ジロ最終ステージでは斜行降格の憂き目に遭い、無勝利ポイント賞の表彰台では無表情で賞を受け取る姿を披露した。翌年のジロでも不調から勝利なくしてリタイア。病気と怪我に苦しんだこの2年を清算するかのような勝利。オーストラリアのヴィヴィアーニと共に、「2位」続きの彼らイタリアンスプリンターが反撃の狼煙を上げつつある。

そして総合優勝を果たしたのは、アルゼンチンのコンチネンタルチーム所属のゴンサロ・ナハル。

体調不良で不出場となったニバリなど、ワールドツアーチームのトップクライマーたちはまだまだ本調子ではない様子を見せてとくに目立つことはなかった。(ラファル・マイカが第2ステージで好走を見せたのと、個人TTで3位と彼にしてはなかなかの走りだったことくらいか)

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総合優勝を果たしたゴンサロ・ナハルは、今回のサンフアンがプロ初勝利となる。現アルゼンチンロードチャンピオンであり、まだ今年で25歳と若いので、今後が楽しみな選手である。 

 

 

チャレンジ・ブエルタ・ア・マヨルカ(1.1×4)

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多くのトップチームが冬季合宿の舞台として選ぶマヨルカ島で、4つのワンデーレースを連日開催するという独特な開催形式をもつ、ヨーロッパツアー伝統の開幕レース(たち)。「チャレンジ・マヨルカ」とも呼ばれる。

今年は第1日目から順に「トロフェオ・ポレラス」「トロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナ」「トロフェオ・リュセタ」「トロフェオ・パルマ」の4レースである。初日の最終日はスプリント、2日目と3日目は逃げ切りが見込まれる山岳レースで、スプリンターと山岳逃げスペシャリストが共に活躍の機会が与えられるという、例年通りのプロフィールとなった。

昨年はロット・スーダル祭りだったが、今年はトレック・セガフレード祭り。その中心となったのが、先のニッツォーロ同様、苦しい2年間を過ごしてきていたジョン・デゲンコルブだった。

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ボーラ・ハンスグローエのエリック・バシュカを振り切って、今大会2勝目を飾ったデゲンコルブ。第3ステージのスクインシュ、サンフアンのマレンとニッツォーロに続き、トレック・セガフレードが今シーズン早くも5勝目を記録した。

 

また、スクインシュも、昨年カリフォルニアでの悔しいリタイアを晴らすかのような勝利を見せた。新チームでの活躍に期待したい。

ウェレンスは昨年に続き今年も勝利。昨年はうまくいかなかったアルデンヌ・クラシックでの勝利を、今年こそ果たすことができるか。

また、このレースでシーズン入りを果たしたアレハンドロ・バルベルデも、第2ステージで3位、第3ステージで4位など悪くない走りを見せる。そして、2月のバレンシアナで・・・。

 

 

カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース(1.WT)

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今年で4回目の開催となる、昨年からワールドツアークラスのレースとなったワンデーレース。ダウンアンダーは南オーストラリア州アデレードを舞台としているが、この通称「カデルレース」はアデレードの南東、ビクトリア州ジーロングを舞台とする。2010年世界選手権のコースを利用してもいて、ジャパンカップと似たような経緯を持つと言えるだろう。

 

このレースを初めてライブで見たのは昨年、Jsportsオンデマンドでの英語実況によるものだった。もしかしたらライブでもなかったかもしれない。昨年は集団スプリントでの決着となり、そんなに面白いレースという印象はなかった。

しかし今年はDAZNで日本語実況・解説が加わり、更にラスト10km地点にある最大勾配20%のチャランブラ・クレセントでのアタックが劇的な展開を呼び出し、最後の最後までハラハラが止まらない、非常に見ごたえのあるレースとなった。

この、基本はスプリントになりつつも、終盤の登りでのアタックにより展開に変化がもたらされるという構成は、ミラノ~サンレモやアムステルゴールドレースに近いところがあるかもしれない。誰が勝つかわからない、という点で、実によく作られたコース設計なのかもしれない。

来年も楽しみにしたい。

 

なお、今年の見所としては、マッカーシーの勝利を導いたダニエル・オスの巧みな走り、そして最後の最後で追走集団から飛び出してきて2位に喰い込んだエリア・ヴィヴィアーニの圧倒的な強さである。

さらに、それ以外の選手たちの見事な走りっぷり、絡み合う戦略に関しては、「サイバナ」の以下の記事を参照するとよい。

クラシックを彷彿とさせる、カデルレースで見えた集団駆け引きの妙とは? - サイバナ

 

オスだけでなく、ケニャック(ケノー)、カペッキ、デフェナインスなど、アシストたちの見事な走りの妙について丁寧に解説されている。

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国内選手権のときから好調っぷりを見せていたマッカーシーサガンたちのアシストとしての活躍が中心となる彼ではあるが、今年は彼自身の勝利ももっと狙っていけるかもしれない。

 

 

グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユ(1.1)

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チャレンジ・マヨルカと並んでヨーロッパの自転車ロードレースシーズンの開幕を告げるフランスのワンデーレース。ティボー・ピノやトニー・ギャロパンなども上位に入ることが多い、アップダウンの激しいアルデンヌ風味のレースである。

今回の優勝者は昨年のトレヴァッリ・ヴァッレジーネで優勝したアレクサンドル・ジェニエ。ブエルタでもペイラギュード山頂ゴールなど2勝している山岳逃げ職人であり、昨年のヴァッレジーネに引き続き、クライマー同士のスプリントでの強さを見せつけた。こういう、総合では活躍できないけれど山岳ステージで地味に勝利を重ねていくタイプの選手は大好物である。そしてそういう選手の多いAG2Rは大好きである。

 

ただ、個人的に注目したのは2位のエイキング。彼は、昨年も、ディラン・トゥーンスが勝利するようなパンチャー向きレースで上位に喰い込むことが多かった。彼もまた、近い将来大成するに違いない・・・と考えていたのだが、今年はまさかのプロコンチネンタルチーム移籍。

とはいえ、ワールドツアークラスのレースで埋もれてしまうよりは、ワンティという、プロコンチネンタルチームでもトップクラスに位置するチームのエース候補として走る方が、本人のためになるような気はしている。

ワンティであればアルデンヌ・クラシックにも出場する機会は多そうだし、今年の活躍は変わらず期待している! がんばれエイキング!

 

 

 

 

今月の注目選手

1/15~1/21の日程で開催された、中央アフリカガボンのステージレース、ラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ(2.1)。

ワールドツアーチームは出場していないものの、毎年ディレクトエネルジーの参加などがある。

ツアー・ダウンアンダー南アフリカ人のダリル・インピーが総合優勝を、同じ南アフリカ人のニコラス・ドラミニが山岳賞を決めたその日に、このアミッサ・ボンゴでも、ルワンダ人のジョセフ・アレルヤが総合優勝を決めた。

ルワンダ人としては初となる、UCI・1クラスレースの総合優勝であった。

ルワンダ人はもちろん、この快挙にエリトリアなど、他のアフリカの自転車関係者からも祝辞が集められた。

 

ジョセフ・アレルヤは1月1日生まれでまだ22歳の若手。ディメンションデータの下部育成チームである「ディメンションデータ forクベカ」に昨年加入。

昨年はツール・ド・ルワンダで総合優勝したほか、U23版ジロでも1勝しており、着実に力をつけている。今回のアミッサ・ボンゴ総合優勝はその流れにのって注目を集めており、さらには1/31から開催されている「ツール・ド・レスポワール」というアフリカで開催されているU23レースでも注目選手として出場。

この大会で結果を残せればツール・ド・ラヴニールへの出場権も手に入れることができる。ラヴニールでさらなる結果を出し、近い将来ワールドツアークラスで活躍する彼の姿をぜひ、見てみたいものだ。

Israel Cycling Academy 2018年シーズンチームガイド

読み:イスラエル・サイクリングアカデミー

国籍:イスラエル

略号:ICA

創設年:2015年

使用機材:De Rosa (イタリア)

2017年ヨーロッパツアーランキング:25位

(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります) 

 

 

 

2018年ロースター

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創設にはサガンも関わっているらしいイスラエル籍のチーム。今年、プロコンチネンタルチームに昇格したと共にジロ誘致と出場権獲得を果たした、イスラエル財政の豊かさを象徴するチームだ。

その財力を使って、ワールドツアーチームから多くの有力選手を獲得。実力では一気にプロコンチネンタルチームの上位にのし上がっていった。あとはどれだけの実績を出せるか。

目下、目標となるのはジロ・ディタリア。ベン・ヘルマンスとルーベン・プラサの2大クライマーが中心となるだろう。その他、ティレーノ~アドリアティコや(おそらくは)イル・ロンバルディアなど、その他の有力なワールドツアーレースでの実績獲得を目指す。RCSとの蜜月が、来年も続くとは限らないので・・・。

 

 

 

注目選手

ベン・ヘルマンス(ベルギー、32歳)

脚質:クライマー

トップスポート・フランデレンでデビューし、レディオシャックを経て昨年までBMCに所属。元々短いステージレースでは実力を発揮していたクライマーだったが、昨年はツアー・オブ・オマーンにて区間2勝と総合優勝。実は2016年ブエルタでも総合14位と、グランツールでも十分に戦える実力をもっていた。

2018年イスラエルサイクリングアカデミーはティレーノ~アドリアティコ及びジロ・ディタリアへの出場権を得ている。ヘルマンスが昨年14位と健闘したイル・ロンバルディアの出場権を得られる可能性も高そうだ。チームとしては絶対に失敗できない今年のジロ・ディタリアにおける、総合エースとしての大きな期待を寄せられていることだろう。

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ルーベン・プラサ(スペイン、38歳)

脚質:クライマー

スペインのベテランクライマー。独走力も高く、山岳逃げスペシャリスト。2015年はツールとブエルタの両方で山岳逃げ切り勝利を果たした。とくにブエルタでは単独で115km。確か、アウターで走り切ったとか? 誰もが無理だろ、と思ったその独走勝利をやりきった彼は、デヘントとはまた違ったタイプのスペシャリストであった。

そんな彼にとって、総合狙いに変化しつつあったチームは若干、居心地が悪かったのかもしれない。ジロ出場の決まったこのイスラエル・サイクリングアカデミーにおいて羽を伸ばし、ジロ勝利を果たすことで「全グランツールで勝った男」の1人として名を残すことが、残りの自転車人生における最大の目標と言えるかもしれない。

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オーギュスト・イェンセン(ノルウェー、27歳)

脚質:パンチャー

ノルウェーのコンチネンタルチーム「チーム・コープ」に所属していた昨年、アークティックレース・オブ・ノルウェーにて区間1勝と総合2位を獲得。

クリストフやディラン・トゥーンスなどワールドツアーチームの選手たちも参加するこのHCクラスのレースでのこの実績はなかなかのもの。プロコンチネンタルチームへの昇格を果たした今年、更なる活躍が期待される。

 

クリスティアン・ズバラーリ(イタリア、28歳)

脚質:スプリンター

元ディメンションデータ。MTNクベカ時代からずっと所属しており、2015年ブエルタではステージ勝利も果たした。

彼もまた、ワールドツアーチームの人数削減の憂き目に遭った一人なのか。実力はあるはずなので、1クラスやHCクラスでの勝利を重ね、復活を目指したい。

 

ネイサン・アール(オーストラリア、30歳)

脚質:クライマー

かつてはチーム・スカイなどに所属。昨年はチーム右京に在籍し、ツアー・オブ・ジャパン総合2位などの結果をもたらし、チームのアジアツアー首位に貢献した。

 

ソンドレホルスト・エンゲル(ノルウェー、25歳)

脚質:スプリンター

「壇上ダンス」で有名になったスプリンター。IAM解散後はAG2Rに移籍するも結果を出せず、今年はイスラエルに。

先日のマヨルカ・チャレンジ初日トロフェオ・カンポスで2位と勝ちきれなかったが力は示せた。 このまま沈んでいってほしくはない男。復活の年になれるか。

 

 

 

2018年シーズン主要出場予定レース(1/28時点)

1/31~ ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシア(ヨーロッパツアー2.1)

出場予定選手

1.ルーベン・プラサ

2.ベン・ヘルマンス

3.ガイ・ニヴ

4.ガイ・サギフ

5.ダニエル・テュレック

6.デニス・ファンウィンデン

 

プラサ、ヘルマンスといったチームを代表する一流クライマーを引き連れ、ジロに向けたウォーミングアップを図ると共に、二ヴやサギフといったイスラエル人選手の経験を積ませる目的もしっかり持つ。

スプリント、チームTTではどうしようもないとは思うので、第4ステージでのクライマー2名の活躍と、あとは積極的な逃げに期待したい。プラサは第2ステージでのロングエスケープとかにも期待できそう。

ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ2018 プレビュー

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別名「バレンシア1周」。その名の通り、スペイン・バレンシア州を舞台にして開かれる5日間のステージレースである。

「ボルタ・ア・ラ・コムニタ・バレンシアナ」はバレンシア語による表記であり、スペイン語では「ブエルタ・ア・ラ・コムニダード・バレンシアナ」となる。

 

UCIヨーロッパツアー1クラスにカテゴライズされているレースではあるが、歴史は古く1929年から開催されていた。

しかし2009年~2015年の間は休止しており、2016年より復活を果たした経緯を持つ。

 

プロチームの多くが冬季合宿地として選ぶマヨルカ島に近いこともあり、例年多くのトップ選手が出場し、シーズン入りを果たしている。昨年はナイロ・キンタナが総合優勝を果たしたほか、トニー・マルティンやブライアン・コカールなどのお馴染みの選手が勝利しており、はっきり言って1クラスのレースとは思えない様相を呈している。

 

事実、UCIワールドツアー18チーム中、11チームが出場を決めており、その中身に関してもフレッヒ・ファンアフェルマート、ヤコブ・フールサン、イェーツ兄弟、デラクルス&クフャトコフスキ、プリモシュ・ログリッチなど、名だたるライダーたちがこのバレンシア1周を2018シーズンのデビュー戦に位置付けている。

また、昨年ツール初日の大クラッシュ以降、公式戦の出場を控えていたアレハンドロ・バルベルデが、デビュー戦となったマヨルカ・チャレンジに引き続き出場することも、注目の要素である。

 

 

そんな、ヨーロッパ自転車シーズンの本格的な幕開けを告げるレースが、今年はDAZNにて1/31(水)よりライブ放送が行われる。

いつでも見逃し視聴もできるということで、今年から多くの日本人視聴者がしっかりと見ることができるようになった。

 

今回は、このバレンシア1周レースのプレビューを行う。

 

 

 

ステージ詳細

第1ステージ オロペサ・デル・マール~ペニスコラ 191.5km

ゴール地点となるペニスコラは、ペニスコラ城(冒頭の写真)で有名なバレンシア州の主要観光地の1つである。ゴール地点も、ペニスコラ城を臨む海岸線でのゴールとなる。

バレンシア州北東部のカスティリョン県の、海岸部と内陸の山岳を越えて1周するコース。スタートゴールは海抜0mで、86km地点の2級山岳は781mまで登る。

とはいえ、基本的には平坦ステージとなるだろう。海岸部の横風に注意。

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バレンシア1周はどちらかというとクライマーの出場が多く、同時期にドバイ・ツアーが開かれることもありトップスプリンターはあまり出場していない。

昨年・一昨年の数少ないスプリントステージでの勝利者も、ディラン・フルーネヴェーヘン、スティン・ヴァンデンベルフ、マグヌスコルト・ニールスン、ブライアン・コカールなど、「最強」ではないけれど確実に実力のある選手たちである。

そういった点を考え、今大会の有力スプリンターを概観すると、実力・実績で抜きんでているのはディメンションデータのエドヴァルド・ボアッソンハーゲンと、ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティン。EFエデュケーションファーストはサッシャ・モドロとダニエル・マクレーのダブルエース体制である。どちらかというとモドロの方が経験は豊富かもしれないが、昨年同時期のマヨルカ・チャレンジで1勝しているマクレーも十分に可能性がある。

ほかにもツアー・オブ・ジャパンジャパンカップで活躍したマルコ・カノーラなども気になるが、個人的に一番注目しているのはチーム・ロットNLユンボのダニー・ファンポッペルである。3年前のブエルタ・ア・エスパーニャ勝利に次ぐ大ブレイクの年となるべく、幸先の良いスタートを切っておきたいところ。

 

ちなみにバレンシア1周のゴール地点のボーナスタイムは、通常のレースとは違って6,4,2秒となっている。純粋な登り勝負では勝ちきれない選手がスプリントのボーナスタイムで稼ぐにはやや少ないボーナスタイムであると言えるだろう。

 

 

第2ステージ ベテラ~アルブイシェク 191.5km

第1ステージの舞台となったカスティリョン県から南下し、バレンシア州の中心地、バレンシア県に突入する。

バレンシア1周らしく、第2ステージから本格的な山岳ステージ。序盤から3つの3級山岳と、後半には1級山岳が2つ。

ただし最後の1級山岳ガルビ峠(登坂距離9.3km、平均勾配5.2%)山頂からゴールまでは緩やかな下り基調で30kmも残っているため、クライマーたちによる総合争いが巻き起こるか、粘り切ったスプリンターたちによる集団スプリント勝負になるか、微妙なところではある。

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参考までに、ほぼ同じコースレイアウトを使用した昨年ブエルタだの第6ステージを見てみると、このガルビ峠で逃げ集団から3名が抜け出して、最後にマッチスプリントの末、トーマス・マルチンスキーが勝利を決めた。

またメイン集団に関してもコンタドールが積極的な攻撃を仕掛け、最終的には20名程度の小集団での勝負となった。

同じような激しい展開が巻き起これば、スプリンターが勝負をするのは難しいかもしれない。とはいえ、ボアッソンハーゲンなど山にも強いスプリンターもいるため、本当にどうなるかわからない。

バルベルデや、フレッヒ・ファンアフェルマートなども優勝候補に挙げられるだろう。あるいは、ミッチェルトン・スコットのミヒャエル・アルバジーニ、同じチームで、下りでの勇気あるアタックを得意とするイェーツ兄弟や、ロットNLのログリッチェなども・・・。

 

 

第3ステージ ポーブル・ノウ・デ・ベニタチェイ~カルペ 23.2km

バレンシア県からさらに南下。バレンシア州で最も南に位置するアリカンテ県にて20km超の重要なチームTTが開催される。当初は30km以上のコースが発表されていたようだが、現時点の公式HPには下記のような短縮されたコースが掲載されている。

コースのほとんどが海岸線の直線路で、トリッキーさはないものの横風による影響がありうるかもしれない。2年前のブエルタ第19ステージではカルペでの37km個人TTが開催され、クリス・フルームが優勝を果たした。

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キューンやブックウォルターなどを抱えるBMCが最大の優勝候補。昨年の開幕チームTTでもBMCが勝利している。総合優勝候補のモビスター・チームも、TTスペシャリストこそ連れてきてはいないものの、バルベルデもアマドールもTTは速いので、上位をキープできる可能性は十分あるだろう。

逆に元世界チャンピオンのヴァシル・キリエンカを連れてきているチーム・スカイとしては、ここで出来る限り、モビスターに差をつけておきたいところである。

 

 

第4ステージ オリウエラ~コセンタイナ 184.2km

アリカンテ県のオリウエラは、バルベルデの故郷であるムルシアからもほど近い。また、チームメートのラファエル・バルスは、ゴール地点のコセンタイナが生まれ故郷である。

そんな、モビスターにとっては絶対に負けられないこのステージで、今大会の総合優勝争いに決着がつく。

7つの山岳ポイント。その4番目の1級山岳カラスケタ峠は、今大会最高標高となる1021m。そこを下ったのちに、3級山岳を2つ越えて、最後は1級アルト・デ・ラス・カンテラス頂上ゴールとなる。登坂距離は5kmと比較的短いが、平均勾配は7.8%、最大勾配12.3%と、十分に破壊力がある登りだ。

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もはや小手先は何もいらない。ただ純粋に、このとき最も調子の良いクライマーがこの日を制することになる。バルベルデか、デラクルスか、クフャトコフスキか、フールサンか、はたまたイェーツ兄弟か。アントン、プラサ、クネゴ、ログリッチェといった選手も、勝利を狙って攻撃を仕掛けることだろう。

そして最後は、もしかしたらチームTTでのタイム差が勝敗を分けるかもしれない。いずれにせよ、この日のゴール後の総合表彰台に登った選手が、今年のバレンシアナの勝者となる可能性は高いだろう。

 

 

第5ステージ パテルナ~バレンシア 135.2km

バレンシア1周の最終ステージは、毎年恒例となる州都バレンシアにゴールするフラットステージ。100km地点に3級山岳が控えているが、これが勝敗に影響する可能性はほぼなく、スプリンター同士のガチンコバトルとなるだろう。総合優勝争いも、山岳賞争いも、前日までで決着がついているはずだ。

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第2ステージに引き続き、ボアッソンハーゲン、トレンティン、モドロ、マクレー、そしてカノーラとファンポッペル辺りに期待を寄せる。初日ステージはエースのアシストに集中していた総合系チームのスプリンターたちも、最終日ということで全力を賭して勝負に挑んでくる可能性もあるだろう。 

 

 

 

 

注目選手

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、37歳)

昨年、2月~4月に開催されたスペインの3つのステージレース全てで総合優勝を果たす。ツール・ド・フランス初日ステージで大クラッシュに見舞われ、残りのシーズンを棒に振ってしまったものの、復帰戦となった先日のマヨルカ・チャレンジでは、2日目のトロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナで3位、3日目のトロフェオ・リュセタで4位とまずまずのコンディションを披露している。

既に準備は万端。昨年はキンタナが総合優勝を果たしたこのバレンシア1周で、今年はバルベルデが景気づけの総合優勝を果たしていけるか。チームメートも、2年前のジロ総合3位を支えてくれたアンドレイ・アマドールやホセホアキンロハスなど、最強クラスのアシストを揃えており、本気具合が見て取れる。スプリントでも上位に食い込む力を持つバルベルデこそが、今大会の総合優勝候補なのは間違いないだろう。 

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ダビ・デラクルス(スペイン、28歳)

2016年ブエルタ・ア・エスパーニャ総合7位、2017年バスク1周総合4位と、ステージレーサーとしての実力を伸ばしつつあるスペイン中堅期待の星が、チーム・スカイ移籍後のデビュー戦としてこのバレンシア1周を選んだ。昨年も総合7位と、相性は悪くない。

さらに、アシストとして、昨年フルームのツール総合優勝を支えたミハウ・クフャトコフスキを連れてきている。状況によっては彼がエースとなる可能性もありそうだが、これだけ心強いアシストはいないだろう。

当然、プールスやローザ、モズコン、スタナードと、あらゆる局面で頼りになるスカイ最強クラスのアシストたちも控えている。チーム力で言えば今大会最強は間違いなさそうだ。

そして、平坦でも山岳でも頼りになり、今大会の勝敗を分ける重要なポイントになりそうなチームTTでも真価を発揮するヴァシル・キリエンカの存在。

この、最強のチームメートたちに支えられ、デラクルスは自身初のステージレース総合優勝を飾ることができるか。

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メルハウィ・クドゥス(エリトリア、24歳)

ディメンションデータでじっくりと育てられつつある、アフリカ勢期待の若手ステージレーサー。昨年はツアー・オブ・オマーンで新人賞を獲得したほか、バレンシア1周でも新人賞2位。しかも、そのとき1位だったセンニは今年は出場せず(そもそも新人賞対象から外れている)。クドゥスにとって、今回はバレンシア新人賞を獲得する最大のチャンスである。

そんな彼にとって、最大のライバルとなりうるのがチーム・ロットNLユンボのクーン・ボウマン。昨年ドーフィネ山岳賞の彼は、まだステージレースの総合争いでは頭角を現してはいないものの、爆発する可能性は十分に秘めている。

ロットNLはTTに強いメンバーも揃えており、チームTTで差を付けられる可能性もある。第4ステージでクドゥスがどこまでの走りを見せられるか。

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マッテオ・トレンティン(イタリア、28歳)

勢いだけで言えば、今大会最も期待できるスプリンターかもしれない。昨年ブエルタ・ア・エスパーニャ区間4勝。パリ~トゥールでも2回目となる優勝を果たした。マッチスプリントでも、アタックからの逃げ切りでも、どちらでも勝負できる万能タイプ。山も十分こなせるだろう。

ミッチェルトン・スコットとしては、よりパンチャーに近いタイプであるミヒャエル・アルバジーニもいるため、状況によってどちらが勝利を狙うかは変わってくるだろう。また、総合狙いのイェーツ兄弟もいるため、彼らのアシストとして働く可能性もありうる。

大きな期待を寄せられて、最強チームから引き抜かれたトレンティン。その移籍が成功であったことを示すためにも、今大会のスプリントステージ2つとも、奪い取ってしまいたいくらいだ。

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ダニー・ファンポッペル(オランダ、24歳)

トレック時代の2015年、22歳の頃にブエルタ・ア・エスパーニャでステージ優勝を果たした。直前にパンクして遅れながら、そこから復帰してからの劇的な勝利だった。

翌年から2年間チーム・スカイに在籍し、ブエルタ・ア・ブルゴスやアークティックレース・オブ・ノルウェー、ツール・ド・ポローニュなどで勝利を獲得。しかし、ヴィヴィアーニも所属し、ステージレースでは総合が優先されてしまうチームでは、十分な活躍を果たせずにいた。

今年、母国オランダのチームに移籍を果たす。フルーネヴェーヘンがエーススプリンターではあるものの、ファンポッペル自身も、将来のオランダ人エースとして嘱望間違いない。選んでくれたチームに捧げる開幕戦勝利を、なんとしてでも獲得しておきたいところ。スペインのレースとの相性も、悪くないはずだ。 

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その他注目選手

アルがチームを去ったことで、今度こそ単独エースとしてツールに臨むこともできそうなヤコブ・フールサンが、今年こそ、の思いを込めて開幕戦を勝利で飾れるか。イェーツ兄弟は総合はもちろん、挑戦的なアタックからの逃げ切り勝利にも期待。イスラエル・サイクリングアカデミーのプラサは10年前のバレンシア総合優勝者であり、今年はヘルマンスと共に、プロコンチネンタルチームとしてジロに殴り込みにかかる。一方、ジロ出場を逃した引退シーズンのクネゴは、その悔しさを結果にして返したいところ。

短いステージレースであり、勝負どころが限られているだけに、誰が勝つかわからない。普段はアシストで活躍するような選手でも勝ちを獲れるチャンスもあるレースなので、バーレーンメリダヴィスコンティやペリゾッティにも期待ができるかもしれない。想像もしていないドラマを楽しみにしたい。

そして、今年からプロコンチネンタルチームに昇格して早速出場となったラリー・サイクリング。2016年ツアー・オブ・カリフォルニアで山岳賞を獲得し、昨年の同レースで区間2勝を飾ったエヴァン・ハフマンが、ヨーロッパでもその強さを見せつけるシーズンになるかどうか。

ほかにもエウスカディ・バスクカントリーやブルゴスBHなど、新プロコンチネンタルチームの活躍にも注目していきたい。 

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昨年のツアー・オブ・カリフォルニアでワールドツアーチームの選手たちを手玉にとって2勝を挙げたハフマン。今大会でも、かき回し役になってほしい。