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アムステルゴールドレース2018 プレビュー

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オランダ・リンブルフ州で開催される「アルデンヌ・クラシック」3連戦の1戦目。

激しいアップダウンとコーナーの数の多さが特徴で、「千のカーブ」と形容されることも。

全長1.2km、最大勾配12%の「カウベルフ」が終盤に登場することも特徴ではあったが、昨年はゴール直前にこの名物カウベルフを登らないレイアウトに変更された。

この後に続くフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュと比べると登りの激しさは抑えられており、クライマーよりはパンチャー向きのレースと言える。

1966年初開催。今年で53回目の開催となる。

 

今回はこの「アムステルゴールドレース」を徹底プレビュウしていく。

 

 

 

過去のレースを振り返る

過去3年間のTOP10を振り返ってみよう。

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2015年

カウベルフの頂上から1.8km先にゴールが設定された。

カウベルフの登りで最初に アタックしたのは、前哨戦プラバンツ・ペイユを制しているベン・ヘルマンス。

失速した彼に続いて攻撃を仕掛けたのが昨年覇者フィリップ・ジルベールであったが、これにマイケル・マシューズが喰らいついてラストの平坦を2人で挑んだ。

しかし結局、これは集団に吸収される。最後は18名でのスプリント勝負となり、アルカンシェルジャージを着るミハウ・クフャトコフスキが勝利を掴んだ。

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2016年

カウベルフの頂上からゴールまで2kmに。

残り8kmで飛び出したティム・ウェレンスが独走を開始するが、カウベルフの登りで失速。

ここで名パンチャー、エンリコ・ガスパロットが飛び出し、ミケル・ヴァルグレンが喰らいついた。

ヴァルグレンは若さゆえか前を牽きすぎてしまい、落ち着いていたベテランのガスパロットが、最高のタイミングで飛び出して4年ぶり2度目の勝利を果たした。

3週間前にレース中の事故で亡くなったチームメートに捧げる勝利。ガスパロットは両手を天に掲げた。

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2017年

フィニッシュ直前からカウベルフが取り除かれる。

これにより、いつもの「ラストだけ全力」という展開がなくなり、勝負が動いたのはラスト40km。

ティシュ・ベノートやセルヒオルイス・エナオなどの強力なメンバーが含まれた8名の逃げ。ここに、フィリップ・ジルベールも含まれていた。グレッグ・ファンアフェルマートやアレハンドロ・バルベルデは後方に取り残される。

さらにラスト30kmで今度はミハウ・クフャトコフスキがブリッジを仕掛けてジルベールたちに合流。ファンアフェルマートたちも追走集団を形成するも、結局追い付くことはなかった。

そしてラスト6km手前の「ベメレルベルフ」(全長800m、平均勾配4.7%)でクフャトコフスキとジルベールが抜け出す。

最後はジルベールが先行からの逃げ切り勝利を決めて、自身4度目となるアムステル勝利を手に入れた。

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レースの象徴とも言うべきカウベルフをあえて終盤から取り除くという改革を決断した昨年のアムステル。

結果として、残り30km~40kmから勝負が動き、ハラハラの追走劇が続くという、露インドやルーベに近い展開を生み出すことに成功した。

そもそもアムステルというのは、同じアルデンヌ・クラシックのフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュと同様に、「最後だけ盛り上がる」感の強いレースであったのは確か。

それをこうして変革したことにより、上記2つのレースとはまた違った個性を出すことに成功したと言えるのではないだろうか。

 

今年も昨年と同じレイアウトで開催されるという。

果たして今年は同じように盛り上がる展開を生み出すことができるのだろうか。

 

 

今年のコースのみどころ

アムステルゴールドレースは「北のクラシックとアルデンヌ・クラシックの合いの子」であると言われる。直後のフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュなどの「本格的な」アルデンヌ・クラシックと比べると、スプリンターやパンチャー、あるいは北のクラシックで活躍したスペシャリストたちにもチャンスがあるコースレイアウトだからだ。

とは言え、やはり登りは厳しい。その登りの数は35を数える。ロンド・ファン・フラーンデレンの急坂が18個であったことを考えると、その2倍近い数がプロトンを待ち受けているという点で、やはりアムステルは「登り」のレースなのだ。

 

同じレイアウトだった昨年を参考にすると、注目すべきはラスト40kmを過ぎた地点に現れる「クルイスべルフ」。ここでジルベールを含む強力な8名の逃げが形成された。

さらにラスト30kmを過ぎたところにある「クーテンベルフ」は、最大勾配22%という、今大会最難関の急坂となる。

そして残り20kmを過ぎて、3度目の「カウベルフ」が出現する。

このカウベルフの頂上を過ぎてから3kmで最終周回のベルが鳴り、ラスト16kmの勝負に。

最後は「フールヘンメルベルフ」「ベメレルベルフ」という2つの登りをこなしてゴールに至る。

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アムステルゴールドレース、35の登り。

昨年、勝敗を決めたクルイスベルフでの動きを見るに、まずは集団から抜け出すためのクライマー並の登坂力は必要となるだろう。

そのうえで、ゴールまでの長い距離を逃げ切るだけの独走力も必要。

そういった要素を踏まえ、以下、優勝候補を考えていく。

 

 

今年の優勝候補たち

※過去優勝者を除く

 

1.ジュリアン・アラフィリップ

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コロンビア・オロ・イ・パおよびイツリア・バスクカントリーでの合計3勝から、例年以上に一流クライマーたちに匹敵する登坂力を備えつつあることがわかる。

問題は1週間以上もたせるステージレーサーとしての安定感が不足していることだが、アルデンヌ・クラシックに向けては十分期待のできる仕上がりだ。

本命は、過去2度の2位を経験しているフレッシュ・ワロンヌかもしれないが、今年の走りを見るに、実はアムステルこそが最も可能性のあるレースのようにも感じる。

チームも絶好調で、逃げて良しなユンゲルスやテルプストラ、発射台としても有能なリチェセ(リケーゼ)など隙が無い。

 

 

2.アレハンドロ・バルベルデ

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フレッシュ・ワロンヌを5回、リエージュ~バストーニュ~リエージュを4回制しているバルベルデだが、実はアムステルを勝ったことは一度もない。

2位は2回経験している。2013年はクロイツィゲルに逃げられ、集団内では先頭でゴールした。2015年は集団スプリントでクフャトコフスキに敗れた。

クライマー並の登坂力と爆発力、そして独走力にスプリント力と、アムステルを勝つために必要な要素をたっぷりと詰め込んだ、勝てない方が不思議な選手である。

今年はストラーデビアンケとドワースドール・フラーンデレンでも良い走りを見せており、「北のクラシックとアルデンヌ・クラシックの合いの子」たるアムステルを制する準備は万端といったところだ。

 

 

3.ティム・ウェレンス

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「ベルギーの」リンブルフ州出身。

昨年は「逃げ屋としての」彼に注目し、勝利を期待していたが、今年はアンダルシア総合優勝、パリ~ニース総合5位という「クライマーとしての」彼に期待する。

独走力も十分に高く、唯一難があるとすれば、スプリント力の欠如である。ラストはできれば上記アラフィリップやバルベルデを振り落とした小集団で争いたいところ。

となれば、中盤から終盤にかけての積極的な動きが重要となる。そしてそのためには、ティシュ・ベノートなど優勝候補たりうるチームメートたちの動きもまた、重要になる。

「前哨戦」ブラバンツ・ペイユで見事逃げ切り優勝。ベノートも集団内で好位置につけての3位。これは本当に期待ができるぞ!

 

 

4.ペテル・サガン

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激坂対応力と独走力、フランドルやルーベのような展開に近い――となれば、この人物を忘れてはならない。

実際、彼自身とチームも、昨年のアムステルを見てそのことに気づいたのかもしれない。今年、サガンは実は5年ぶりのアムステル出場を目指す。

なお、2012年には3位に入っており、決して相性が悪いレースではない。そりゃ、マシューズとかが得意なレースなんだし、相性が悪いわけがない。

問題は、ルーベを勝ったことで再び「警戒」されうるということ。

それでも、5本の指に入るような優勝候補とはみなされないだろうし、比較的自由に走る余地は十分にあるだろう。

ということで、残り40km~30kmでの彼の動きには注目だ。

 

 

5.トニー・ギャロパン

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ステージレーサーとは言い難いくらいの微妙な登坂力に関してはアラフィリップに近いところがある。また、今年のエトワール・ドゥ・ベセージュの総合優勝は独走力で勝ち取ったようなものだ。

2014年ツール・ド・フランスでも終盤からの逃げ切り勝利を経験している。そんなことを考えると、意外と今回のアムステルとは相性が良さそう。

優勝、とまではいかなくとも、表彰台くらいは狙えるのではないか。

 

 

番外編.バーレーンメリダ

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ニバリ、ヨン、ゴルカ、ガスパロット、コルブレッリ、ボーレ、ペリゾッティ・・・おそらく、今大会もっとも「ガチ」なメンバーを揃えてきたチームと言えそうだ。

7人中5人が優勝候補。誰が勝っても、どんな勝ち方をしても、おかしくはない。

その中でもやはり、今年はニバリの勢いに期待したいところ。

アムステル出場は3年ぶりで、過去のリザルトを見ても決して良いとは言い切れない。それでも、サンレモを制してしまった彼にとってみれば、不可能なことではまったくない。各種メディアの予想でもきっちり上位に来ている人物だ。

あとはまあ、優勝候補ばかりが並んでいるゆえのチームワークの難が気になるところ。意外と連携が取れていて信頼関係も厚そうなチームなので、そこは大丈夫だとは思うのだけれど・・・。 

 

ワールドツアー全チームレビュー(2018シーズン第1四半期)

2018年シーズンの1月〜3月におけるチーム勝利数をランキングしてみた。

勝利数というのはそのチームの現在の勢いを表すバロメータと言える。2018年シーズンのここまでのロードレースシーンで、盛り上がりを見せるチーム、なかなか結果を出せずにいるチームを客観的な数字で確認し、この後の本格化するシーズンに向けての展望としよう。

 

元々は3/31時点での勝利数でランキングする予定だったが、色々と忙しく、本日4月6日までずれ込んでしまった。

中途半端ではあるが、4/6時点での勝利数でのランキングとなること、ご了承願いたい。

 

※勝利数が同じチームは、より上位のクラスの勝利数が多い方を上位にしています。

※年齢は全て、2018/4/1時点のものとなります。 

 

 

 

クイックステップ・フロアーズ(24勝)

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、29歳) 6勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 第3ステージ優勝

→ ドバイ・ツアー(2.HC) 第2・第5ステージ優勝、総合優勝

アブダビツアー(2.WT) 第2ステージ優勝

→ ブルッヘ~デパンヌ3日間(1.HC)優勝

フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、23歳) 4勝

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1) 第1ステージ優勝

コロンビア・オロ・イ・パ(2.1) 第1~第3ステージ優勝

ニキ・テルプストラ(オランダ、33歳) 3勝

→ ル・サミン(1.1) 優勝

→ レコードバンク・E3ハレルベーケ(1.WT) 優勝

ロンド・ファン・フラーンデレン(1.WT) 優勝

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、25歳) 3勝

コロンビア・オロ・イ・パ(2.1) 第4ステージ優勝

→ イツリア・バスク・カントリー(2.WT) 第1・第2ステージ優勝

アルバロホセ・オデーグ(コロンビア、21歳) 2勝

→ ハンザーメ・クラシック(1.HC) 優勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第1ステージ優

ファビオ・ヤコブセン(オランダ、21歳) 2勝

→ ノーケレ・コールス(1.HC) 優勝

→ シュヘルデプライス(1.HC) 優勝

アリエルマキシミリアーノ・リチェセ(アルゼンチン、35歳) 1勝

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1) 第4ステージ優勝 

レミ・カヴァニャ(フランス、22歳) 1勝

→ ドワースドール・ウェストフラーンデレン(1.1) 優勝 

マキシミリアン・シャッハマン(ドイツ、24歳) 1勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第6ステージ優勝

イヴ・ランパールト(ベルギー、26歳) 1勝

→ ドワースドール・フラーンデレン(1.WT) 優勝

 

まさに圧倒的な強さ。昨年、実力者が次々と抜けて弱体化するだろうという予想はどこへやら。個人が強いだけでなく、「チームとして強い」ことを今年証明した。

スプリントではヴィヴィアーニと彼のためのトレイン(サバティーニなど)が活躍。クラシックでは上記勝者以外にもジルベールやスティバール、セネシャルなどが常に集団上位に残りエースをアシスト。出場する全ての選手が主役たりうるのが、クラシックにおけるクイックステップの強さの秘訣だ。登りでもアラフィリップが絶好調だ。

56勝を記録した昨年、3月末までの勝利数は実は今年と同じ「20勝」。キッテル(今年で言えばヴィヴィアーニのポジション)が6勝、ガヴィリアが4勝しているという点まで奇妙な一致を見せている。(シュヘルデプライスまでで比較すると昨年22勝、今年24勝と昨年以上の数字となっている)

ただ、ステージレースでの勝利でそのほとんどを賄っていた昨年と違い、今年のクイックステップはその「お家芸」たるクラシックでの勝利が目立つ。しかも、若手による勝利が。

その意味で、同じ20勝でもその意味合いは大きく異なる。そしてそれは、このチームにとって、非常に良い形での変化なのだと言えるだろう。

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チーム移籍後絶好調のヴィヴィアーニ。それだけにチームに対する感謝の気持ちと責任は強く、ヘント~ウェヴェルヘムでの敗北では涙を流した。

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昨年チームメートを何度も助けたテルプストラが、今年は自ら勝利を掴んだ。3年前のリベンジを、3年前と同じ、クルイスベルフでのアタックで。

 

 

チーム・スカイ(15勝)

ミハウ・クフャトコフスキ(ポーランド、27歳) 4勝

→ ヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2.HC) 第2・第5ステージ優勝、総合優勝

→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 総合優勝

エガンアルリー・ベルナル(コロンビア、21歳) 2勝

→ コロンビア選手権個人タイムトライアル優勝

コロンビア・オロ・イ・パ(2.1) 総合優勝

ワウト・プールス(オランダ、30歳) 2勝

ブエルタ・ア・アンダルシア(2.HC) 第2ステージ優勝

→ パリ~ニース(2.WT) 第4ステージ(個人タイムトライアル)優勝

ダビ・デラクルス(スペイン、28歳) 2勝

ブエルタ・ア・アンダルシア(2.HC) 第5ステージ(個人タイムトライアル)優勝

→ パリ~ニース(2.WT) 第8ステージ優勝

セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、30歳) 1勝

→ コロンビア選手権ロードレース優勝

ゲラント・トーマス(イギリス、31歳) 1勝

ヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2.HC)  第3ステージ(個人タイムトライアル)優勝

クリストファー・ローレス(イギリス、22歳) 1勝

→ セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ(2.1)  第3ステージ優勝

ディエゴ・ローザ(イタリア、29歳) 1勝

→ セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ(2.1) 総合優勝

チームタイムトライアル 1勝

→ セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ(2.1)

 

グランツールだけでなく、小さなステージレースでも、クラシックでも、バランスよく勝利を稼いでいく、本当に「強い」チームだ。

今年の目玉は何と言ってもエガンアルリー・ベルナルのワールドツアーチームデビュー。開幕戦ダウンアンダーでいきなり新人賞を獲得するだけに飽き足らず、エナオ、ウラン、キンタナなどが出場したコロンビア・オロ・イ・パでは総合優勝、さらには最終ステージで落車リタイアにはなってしまったものの、カタルーニャ1周レースでは本気でバルベルデと総合優勝を争う走りすら見せた。

まさに、期待以上。期待しすぎてる感すらあったのに、その予想を遥かに超えてきた。本当に、キンタナ以来の最高の逸材と言えそうだ。

他には、これまでアシストとして目覚ましい活躍を見せ続けていたプールスの調子の良さも光っている。ゲラント・トーマスがもしかすると今年でスカイを離れる可能性もあり、そうなるとスカイのグランツールのエースを担う可能性も出てくるだろう。

本来の絶対エースであるフルームはここまで沈黙。レース自体への出場は例年よりも多いくらいだけれど・・・

まあ、彼の好不調は論じても当たらない可能性の方が高い。とにかくジロでは全力を尽くし、デュムランとの激しい戦いを演じてほしい。

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昨年はクラシックとグランツールでのアシストで大活躍したクフャトコフスキ。今年はステージレースでの総合優勝を2つ。総合エースとしての素質を発揮しつつある。 

 

 

モビスター・チーム(12勝)

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、37歳) 9勝

→ ボルタ・ア・コムニタ・バレンシアナ(2.1) 第2・第4ステージ優勝、総合優勝

アブダビツアー(2.WT) 第5ステージ優勝、総合優勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第2・第4ステージ優勝、総合優勝

→ グラン・プレミオ・ミゲル・インドゥライン(1.1) 優勝

ダイェル・キンタナ(コロンビア、21歳) 1勝

コロンビア・オロ・イ・パ(2.1) 第6ステージ優勝

ミケル・ランダ(スペイン、28歳) 1勝

→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 第4ステージ優勝

マルク・ソレル(スペイン、28歳) 1勝

パリ~ニース(2.WT) 総合優勝

 

とにかくバルベルデの強さが圧倒的。全チーム中3位の勝利数を誇るチームの4分の3の勝利を一人で担っているのだ。当然、単身での勝利数では今シーズン圧倒的に1位。スプリンターに匹敵する勝利数を記録した昨年のバルベルデだったが、今年はこれまでのところスプリンターを凌駕している。

昨年は2月〜4月の出場したステージレースで全て総合優勝している。今年も2月〜3月に出場したステージレース全てで総合優勝しているが、4月のバスク1周に出場しないのが残念。代わりにアルデンヌ3連戦は当然出場する。フレッシュ・ワロンヌまさかの5連勝が楽しみだ。

今年のバルベルデの昨年よりさらに凄いのは、アルデンヌだけでなく北のクラシックへの強さも見せたこと。4位となったストラーデビアンケも凄いが、あれはアルデンヌの要素も含んでおり、クライマーが上位に来ることもしばしばあるためまだ分からなくもないが、凄いのは純粋なフランドルクラシックであるドワースドール・フラーンデレンで上位に来たこと。

この男、本当にどこまで進化するのか。

ついバルベルデの話ばかりしてしまうが、もう1人注目すべき選手はやはりマルク・ソレルである。昨年の同時期にカタルーニャ1周で総合3位に入り十分凄いともてはやしたが、今年はさらにそれを乗り越えてパリ〜ニースの総合優勝である。しかも、最終日にコンタドールばりの積極性を見せて、コンタドール以上の結果を出す形で。

そして、そんな彼をクイーンステージで支えたリチャルド・カラパスなど、若手の台頭著しいこともまた、このチームにとっては朗報と言えるだろう。

ナイロ・キンタナは今期ここまで成果なしだが、レース中の表情はリラックスしており、不安はない。

今年のツールは彼にとっても大きなチャンス。是非頑張ってほしい。

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止まらない男、バルベルデ。今年は果たして全部で何勝するつもりなのか・・・。昨年の個人勝利数の最大は12であり、現在9のバルベルデは・・・。

 

 

ミッチェルトン・スコット(11勝)

ダリル・インピー(南アフリカ、33歳) 3勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 総合優勝

南アフリカ選手権個人タイムトライアル・ロードレース優勝

カレブ・ユワン(オーストラリア、23歳) 2勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 第2ステージ優勝

クラシカ・デ・アルメリア(1.HC) 優勝

ヨハンエステバン・チャベス(コロンビア、28歳) 2勝

→ ヘラルド・サンツアー(2.1) 第3ステージ優勝、総合優勝

サイモン・イェーツ(イギリス、25歳) 2勝

パリ~ニース(2.WT) 総合優勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第7ステージ優勝

アレクサンダー・エドモンドソン(オーストラリア、24歳) 1勝

→ オーストラリア選手権ロードレース優勝

アダム・イェーツ(イギリス、25歳) 1勝

ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 第5ステージ優勝

 

インピーのダウンアンダー総合優勝、イェーツ兄弟の活躍など、注目ポイントは多々あれど個人的に最も印象深いのはカレブ・ユワンの成長。
確かに、ダウンアンダーでは昨年のような圧倒的な走りは見せなかった。しかし、2年前のダウンアンダーではまったく歯が立たなかったスターリング登りフィニッシュで優勝。しかもミラノ〜サンレモでは、正直優勝候補とは思われていなかった中で、集団の中で突出した走りを見せていた。
2015年ブエルタでのワールドツアー初勝利こそ登りフィニッシュだったものの、それ以来はピュアスプリンターらしい走りを見せていたユワン。ライバルというべきガヴィリアは2017年ジロで山岳も軽々越える走りを見せるなど、その差は開きつつあるように思えた。
そんな中、ユワンがその兆候を見せ始めているオールラウンドな走り。まだ20代前半。この後、さらなる進化が期待できる男だ。
チャベスは昨年に続き調子の微妙さを見せている。イェーツ兄弟とクロイツィゲルが調子良いだけに、今年もチャベスは埋もれてしまうのか?

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ミラノ~サンレモでは勝てず2位だったが、この2位は彼にとって非常に大きな2位だったと思う。そう遠くない将来に、この表彰台の頂点に立つ可能性は十分にあるだろう。

 

 

チーム・ロットNLユンボ(8勝)

ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、24歳) 5勝

→ ドバイ・ツアー(2.HC) 第1ステージ優勝

→ ヴォルタ・アン・アルガルヴェ(2.HC) 第1・第4ステージ優勝

→ クールネ~ブリュッセル~クールネ(1.HC) 優勝

→ パリ~ニース(2.WT) 第2ステージ優勝

プリモシュ・ログリッチ(スロベニア、28歳) 2勝

→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 第3ステージ優勝

→ イツリア・バスク・カントリー(2.WT) 第4ステージ(個人タイムトライアル)優勝

ダニー・ファンポッペル(オランダ、24歳) 1勝

→ ボルタ・ア・コムニタ・バレンシアナ(2.1) 第1ステージ優勝 

パスカル・エインクホーン(オランダ、21歳) 1勝

→ セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ(2.1) 第1ステージ優勝

 

昨年のシャンゼリゼを制したフルーネヴェーヘンが、今期一気に覚醒中。

そのパワフルなボディから繰り出される「先行逃げ切り型スプリント」の強さについては、サイバナさんの以下の記事で丁寧に解説されている。

ついに覚醒!?ディラン・フルーネウェーヘンのパワースプリントとは? - サイバナ

個人的にはスカイから母国チームへと移籍したダニーがシーズン序盤で早速勝利を掴んでくれたこと。3年前のブエルタで見せた印象深い勝利が忘れられない選手。まだ24歳。これからがぐっと楽しみだ。

フアンホセ・ロバトとの睡眠薬問題でプロデビュー早々に謹慎処分を受けていたエインクホーンも、開幕戦でいきなり落車リタイアしたりと踏んだり蹴ったりだったが、先日のバルタリで早速勝利。

2020年までの契約で、トラブルはあったもののチームとしてもじっくりと育てるつもりはあるようだ。

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安定感抜群のTT力と、トップクライマーにも負けない登坂力を見せる絶好調のログリッチェ。今年はグランツール表彰台を狙いたいところ。 

 

 

ロット・スーダル(8勝)

ティム・ウェレンス(ベルギー、26歳) 3勝

→ トロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナ(1.1) 優勝

ブエルタ・ア・アンダルシア(2.HC) 第4ステージ優勝、総合優勝

アンドレ・グライペル(ドイツ、35歳) 2勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 第1・第6ステージ優勝

イェーレ・ワライス(ベルギー、28歳) 1勝

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1) 第6ステージ優勝

ティシュ・ベノート(ベルギー、24歳) 1勝

→ ストラーデビアン(1.WT) 優勝

トーマス・デヘント(ベルギー、31歳) 1勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第3ステージ優勝

 

グライペルのスプリント勝利、デヘントの大逃げ勝利など、「らしさ」も漂う中、ティム・ウェレンスのステージレース総合優勝、ベノートのプロ初勝利など、良い変化も訪れている。

とくにベノートはステージレースでも良い結果を出した(ティレーノ~アドリアティコ総合4位)。ウェレンスと合わせ、今後のロット・スーダルの新しい方向性に向けた変化が見えつつあると言えるかもしれない。

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ティレーノ~アドリアティコで新人賞を獲得したベノート。ステージレーサーとしての成長も楽しみだ。

 

 

トレック・セガフレード(8勝)

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、29歳) 2勝

→ トロフェオ・カンポス(1.1) 優勝

→ トロフェオ・パルマ(1.1) 優勝

ライアン・ミューレン(アイルランド、23歳) 1勝

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1) 第3ステージ(個人タイムトライアル)優勝

ジャコモ・ニッツォーロ(イタリア、29歳) 1勝

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1) 第7ステージ優勝

トムス・スクウィンシュ(ラトビア、26歳) 1勝

→ トロフェオ・リョセタ(1.1) 優勝

マッヅ・ペダースン(デンマーク、22歳) 1勝

→ ヘラルド・サンツアー(2.1) 第2ステージ優勝

バウケ・モレマ(オランダ、31歳) 1勝

→ セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリ(2.1) 第2ステージ優勝

ハルリンソン・パンタノ(コロンビア、29歳) 1勝

→ ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ(2.WT) 第5ステージ優勝

 

細かく勝利を刻んではいるが、いずれも1クラスが多く、大きなレースでの勝利がないという意味で、勝利数ほどには目立っていない。デゲンコルブも、開幕のマヨルカチャレンジ2勝で復活したと思ったのだが、昨年は調子よかった春のクラシックでイマイチで・・・。

コンタドールが抜けた穴を埋めるべく、モレマとパンタノにはステージレースでの総合上位もしっかりと狙ってほしいのだが、その点でも現状は微妙。

 

 

BMCレーシングチーム(7勝)

ローハン・デニス(オーストラリア、27歳) 3勝

→ オーストラリア選手権個人タイムトライアル優勝

アブダビツアー(2.WT) 第4ステージ(個人タイムトライアル)優勝

→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 第7ステージ(個人タイムトライアル)優勝

リッチー・ポート(オーストラリア、33歳) 1勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 第5ステージ優勝

ユルゲン・ルーラン(ベルギー、32歳) 1勝

→ ボルタ・ア・コムニタ・バレンシアナ(2.1) 第5ステージ優勝

グレッグ・ファンアフェルマー(ベルギー、32歳) 1勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 第3ステージ優勝

チームタイムトライアル 1勝
→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT)

 

昨年と比べるとここまでの結果はイマイチ。ポートはダウンアンダーの総合優勝を逃し、デニスも昨年総合2位だったティレーノ~アドリアティコのクイーンステージで失速。ファンアフェルマートも悪くない走りは見せるもののクラシックでの勝利なし。

それでも、新加入のルーランツの勝利はBMCにとっては吉報。JPドラッカーとベヴィンという、実力はあるが決め手に欠けるスプリンターしかいないBMCにとって、グライペルの発射台として鍛えてきた彼の存在は予想以上に大きいかもしれない。

 

 

アスタナ・プロチーム(7勝)

リカルド・ミナーリ(イタリア、22歳) 2勝

ツール・ド・ランカウイ(2.HC) 第2・第4ステージ優勝

ルイスレオン・サンチェス(スペイン、34歳) 1勝

ブエルタ・ア・ムルシア(1.1) 優勝

マウヌスコルト・ニールスン(デンマーク、25歳) 1勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 第4ステージ優勝

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳) 1勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 第5ステージ優勝

アレクセイ・ルツェンコ(カザフスタン、25歳) 1勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 総合優勝

ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、26歳) 1勝
→ オンループ・ヘット・ニウスブラット(1.WT) 優勝

 

絶対的な強さを誇る少数のエースが勝利を稼ぐ、というよりも、最強ではないけれど実力のある選手たちそれぞれがチーム一丸となって勝利を掴んでいく、という印象。

実際に勝利している6人以外にも、昨年ドーフィネ総合優勝、今年もバレンシア総合3位のヤコブ・フールサン、過去ブエルタで2年連続山岳賞を獲得し、昨年はジロで区間1勝、今年もパリ~ニース最終ステージでも2位となり山岳アシストとしても活躍しているオマール・フライレ、あるいはガットやビルバオなど、本当にいぶし銀の選手たちが揃っている。

そして、昨年ドバイツアーでも何度か上位に入っていた若手実力派スプリンター、ミナーリが、今年ついに勝利を掴んだ。しかも2回。

この初勝利となったランカウイ第2ステージは、コース前半に1000mを越える1級山岳が用意されており、ミナーリにとって最大のライバルであったアンドレア・グアルディーニがっこで遅れ最後の勝負に絡めなかったのに対し、ミナーリも遅れはしたものの、チームメートの助けにより復帰を果たしている。

さらにミナーリの発射台として活躍したエフゲニー・ギディッチも、最終日にはミナーリ以上の4位でゴールし、ベストアジアライダーにも選ばれた。昨年まではアスタナの育成チームに所属していたネオプロ。ミナーリと合わせ、今後に期待大の選手だ。

 

 

AG2Rラ・モンディアル(7勝)

アレクサンドル・ジェニエ(フランス、29歳) 3勝

→ グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイエーズ(1.1) 優勝

→ ツール・ド・ラ・プロヴァンス(2.1) プロローグ優勝、総合優勝

トニー・ギャロパン(フランス、29歳) 2勝

→ エトワール・ドゥ・ベセージュ(2.1) 個人TT優勝、総合優勝

ロマン・バルデ(フランス、27歳) 1勝

→ クラシック・ドゥ・ラルディシュ(1.1) 優勝

シルヴァン・ディリエ(スイス、27歳) 1勝

→ ルートアデリー・ド・ヴィテレ(1.1) 優勝

 

フランスの伝統的な1クラスレースで勝利を量産中。クラスは低いが勝利は勝利。とくに、新加入のギャロパン、ディリエがしっかりとチームに貢献しているのは良いこと。

また、バルデはラルディシュだけでなく、その直後のストラーデビアンケでは勝ちはしなかったものの2位と大健闘。普段出場しているパリ~ニースへの参加を蹴ってまで参戦を決めたこのレースで、ひとまず成功と言える結果を残した。

今年のツール・ド・フランスでは3年ぶりに石畳ステージが復活。1月末には現地の試走もしているというバルデ。このストラーデビアンケの結果も合わせ、気合は十分。

フルームがジロに出場する今年は、バルデにとって表彰台の頂点に立つための最大のチャンスとなるのは間違いないだろう。 

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トスカーナの厳しい未舗装路レースで2位を記録したバルデ。今年は例年以上の活躍を見せてくれそうだ。 

 

 

グルパマFDJ(6勝)

マルク・サロー(フランス、24歳) 4勝

→ エトワール・ドゥ・ベセージュ(2.1) 第1・第3ステージ優勝

→ ラ・ルー・トゥランジェル(1.1) 優勝

→ シルキュイ・サルト・ペイ・ド・ラ・ロワール(2.1) 第2ステージ優勝

ルノー・デマール(フランス、26歳) 1勝

→ パリ~ニース(2.WT) 第1ステージ優勝

リュディ・モラール(フランス、27歳) 1勝

パリ~ニース(2.WT) 第6ステージ優勝

 

今期勝利を稼いでいるサローは、24歳ながらすでにFDJ5年目。ジュニア時代から含め派手な勝利はないものの、今後も着実に稼ぎ頭となってくれそうな選手だ。

そしてデマールが、チームの名称とジャージが一新されて最初の戦いとなったパリ~ニースの開幕戦でいきなりの勝利! 勝利に大切なのはその数や格もそうだけれど、より重要なのは印象的であること。

その意味で、デマールのこの勝利は「新FDJ」にとっての最高の門出となったと言えるだろう。

ここまでピノが存在感を示せていない分、特に。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ(4勝)

ペテル・サガン(スロバキア、28歳) 1勝

ツアー・ダウンアンダー(2.WT) 第4ステージ優勝

→ ヘント~ウェヴェルヘム(1.WT) 優勝

ジェイ・マッカーシー(オーストラリア、25歳) 2勝

→ カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース(1.WT) 優勝

→ イツリア・バスクカントリー(2.WT) 第3ステージ優勝

 

若手も含め満遍なく強く勝利を稼いでいるクイックステップやアスタナとは対照的に、一部の「エース」たちが高ランクのレース勝利を稼いでいるチーム。これは昨年から変わらず。結果、勝利数の割にはUCIランクは高かったりする。

とはいえ、中身を見てみれば新加入のオスやブルグハートが素晴らしいアシストを見せていたり、登りでもフェリックス・グロースシャルトナーなどが今後を期待させる走りを見せている。

そしてマッカーシーも、ついに「オーストラリア以外」での勝利を獲得。昨年のツールでの走りも悪くなく、今年はさらなるリザルトを期待できそうだ。

 

 

チーム・カチューシャ・アルペシン(3勝)

マルセル・キッテル(ドイツ、29歳) 2勝

→ ティレーノ~アドリアティコ(2.WT) 第2・第6ステージ優勝

ネイサン・ハース(オーストラリア、29歳) 1勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 第2ステージ優勝

 

1~2月は苦しい時期を過ごしたキッテル。相性の悪いはずのイタリアで、復活を遂げた。あきさねゆう氏がツイッターで書いていた「チームが彼に合わせるのではなく、彼がチームに合わせた」という言葉に成程、と感じた。最近はまた、うまくかみ合わない状態が続き、得意のスヘルデプライスでも勝ちを得られなかったが、5月以降はまた、大爆発できるタイミングが来ることだろう。

勝利しているのが新加入選手ばかりというのもいくばくか寂しいところ。これもまた、ジロ以降の活躍に期待している。

 

 

バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム(3勝)

ソニー・コルブレッリ(イタリア、27歳) 1勝

→ ドバイ・ツアー(2.HC) 第4ステージ優勝

マチェイ・モホリッチ(スロベニア、23歳) 1勝

→ グラン・プレミオ・インダストリア&アルティジアナート(1.HC) 優勝

ヴィンツェンツォ・ニバリ(イタリア、33歳) 1勝

ミラノ~サンレモ(1.WT) 優勝

 

結果だけ見ればあまり良いとは言えないだろう。それでも、結果に表れない各選手たちの働き――イヴァンガルシア・コルティナのパリ~ニースとフランドルでの走り、移籍してきたばかりのゴルカ・イサギーレの健闘。

だがやはりこのチームの主役はニバリだ。しかも、仲間を助けることも忘れないニバリ。ドバイ・ツアーのコルブレッリの勝利はニバリのサポートのおかげだし、ミラノ~サンレモでもポッジョの山頂までは、ニバリはひたすらコルブレッリのアシストだった。

コンタドールが引退した今、現役で唯一のグランツール制覇者となっているニバリ。彼の強さ、凄さが際立つ今シーズンとなっている。

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UAEチーム・エミレーツ(2勝)

アレクサンデル・クリストフ(ノルウェー、30歳) 2勝

→ ツアー・オブ・オマーン(2.HC) 第6ステージ優勝

アブダビ・ツアー(2.WT) 第1ステージ優勝

 

春の段階で2勝というのは、クリストフにとって決して良いとは言えない数字だ。とはいえ、異様に太り過ぎており、うまく噛み合わない時期が続いてもいた昨年と比べると、今年はそこまで不安を感じてはいない。

それよりは、同じ新加入のダニエル・マーティンやファビオ・アルがイマイチな方が不安。ウリッシ、ポランツ、ルイ・コスタなど実力者は揃っているので、これからのシーズンに期待だ。

 

 

チームEFエデュケーションファースト・ドラパック(2勝)

リゴベルト・ウラン(コロンビア、31歳) 1勝

→ コロンビア・オロ・イ・パ(2.1) 第5ステージ優勝

サッシャ・モドロ(イタリア、30歳) 1勝

ブエルタ・ア・アンダルシア(2.HC) 第3ステージ優勝

  

昨年同時期に勝利数0で苦しんでいたアスタナは今年好調。一方同じく0勝で苦しんでいたこのチーム(当時はキャノンデール)は、今年も苦しい時期を過ごしている。 

北のクラシックももう最終戦。ファンマルケはパリ~ルーベで花を咲かせることができるか。

 

 

チーム・サンウェブ(1勝)

フィル・バウハウス(ドイツ、23歳) 1勝

アブダビ・ツアー(2.WT) 第3ステージ優勝

 

意外なチームがこの位置に。マイク・トゥニッセン(ドワーズドール・フラーンデレン2位)やウィルコ・ケルデルマン(アブダビ・ツアー総合2位)など、勝ててはいないが強い走りをしている選手は沢山いれど・・・。

デュムランやマシューズといったエース格の不調が要因の1つ。デュムランはアブダビ・ツアーで度重なるメカトラで苦しんだからねぇ。1回目のトラブルのときは紳士的にバイクを置いた彼が、2回目のメカトラで「もうやだ!」って感じでバイクを投げたのがとても彼らしく微笑ましかった。フルームみたいな紳士を目指しつつも、紳士になりきれない的な。

 

 

ディメンションデータ(1勝)

マーク・カヴェンディッシュ(イギリス、32歳) 1勝

→ ドバイ・ツアー(2.WT) 第3ステージ優勝

 

UCIランク最下位常連のこのチームは、今年は勝利数でも最下位。昨年この時期に勝利数を稼いでいたツール・ド・ランカウイで昨年総合優勝者ライアン・ギボンズを連れていかなかったりしてうまくいかなかったのも原因だ。

昨年はこの後、ボアッソンハーゲンがノルウェーで勝利数を稼いでいたものの、今年同じことが期待できるとは限らない。カヴェンディッシュも度重なる落車で現在も戦線離脱中だし、ほんと、大丈夫か。

 

 

ロンド・ファン・フラーンデレン2018 プレビュー

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いよいよ開幕する、「クラシックの王様」ことロンド・ファン・フラーンデレン

またの名をツール・デ・フランドル

 

5大クラシックである「モニュメント」の1つであり、1913年に初開催。

今年で102回目を迎える。

 

最大の特徴は東フランドル「黄金のトライアングル」に位置する18の急坂の存在。

伝説の急坂「カペルミュール」が昨年復活し、勝負に影響を与えたほか、最大勾配22%のコッペンベルフや、最大20.3%で3回登り、毎年のように勝負所となっている「パーテルベルフ」などがとくに有名。

 

レース終盤での激しいアタックが繰り広げられ、最後はわずか数名での決着になるのが通例。

本当に実力のある者しか生き残れない、まさに「王」の名に相応しいクラシックレースである。

 

 

今回はこの「クラシックの王」についてプレビュウを行う。

 

 

 

コース詳細

コース全長は265.5km。グランツールではまず使われない超長距離。

ロンドに近いレイアウトとなる「オンループ・ヘット・ニウスブラット」や「E3ハレルベーケ」でも200km程度の距離を使用するため、それら以上に厳しく激しい戦いとなるのは必至。

距離に合わせ、急坂の数も増えている(オンループは13個、E3は15個、ロンドは18個)。

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ベルギー最大の都市アントウェルペンをスタートしたプロトンは、そのままアントウェルペン州を南西に進み、いよいよ決戦の舞台オースト=フランデレン州に。

2012年から新たなゴール地点として採用されたオウデナールデの街はすっかりおなじみに。

残り150kmを切って全長2km超えの終盤の勝負所でもある「オウデクワレモント」が最初の急坂としても登場し、いよいよレースが本格的に開始される。

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残り100kmを切った段階で、伝説の坂「カペルミュール」が登場する。

昨年、およそ6年ぶりの復活となったこの急坂は、ゴールまであまりにも距離があるために、勝負所になることはないだろう、と予想された。

 

しかしその予想に反し昨年、この急坂でトム・ボーネンがペースアップ。

クイックステップ3名を含む11名の逃げが出来上がり、結果として数の利を活かしたジルベールが勝利を掴んだ。

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残り60kmを切って、いよいよレースは終盤戦に突入する。

2週目のオウデクワレモント、最大勾配20.3%のパーテルベルフ、そして最大勾配22%のコッペンベルフが立て続けに登場する。

昨年はここで、ジルベールが独走を開始した。

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そして残り30kmを切って、2.5kmのクルイスベルフ、3回目のオウデクワレモント、そして2回目のパーテルベルフを越えて、最後は10kmの平坦での勝負となる。

 

2015年は、このクルイスベルフでアタックして抜け出したテルプストラとクリストフの一騎打ちとなった。

2016年はクルイスベルフ手前でサガン、ファンマルケ、クファトコフスキがメイン集団から抜け出してカンチェラーラが置き去りに。

3週目オウデクワレモントでカンチェラーラが追走集団から抜け出すものの、サガン、ファンマルケには追い付けず、最後のパーテルベルフでファンマルケを切り離したサガンがそのまま独走勝利を決めた。

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残り100kmのカペルミュール

残り60kmのオウデクワレモント、パーテルベルフ、コッペンベルフ3連戦。

そして残り30kmのクルイスベルフ、オウデクワレモント、パーテルベルフ3連戦。

 

この辺りが今年も、注目すべき勝負所となるだろう。

 

 

注目選手

参考までに、過去3年間のTOP10を確認しておく。

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こうやって見てみると、やはり実力者は残るべくして残るといった感じである。

ただし、実際には上記表の中の上位数名だけが終盤に抜け出して勝利しているため、勝負所で他を圧倒して抜け出す爆発力と、その後逃げ続けるだけの独走力が勝利の絶対条件となる。

 

また、最後はほぼエース同士での睨み合いとなるため、遅れたときに追走を仕掛けて復帰するためにも、アシストがどれだけ終盤に残っていられるかも勝負の鍵となる。

絶対的なエースの強さがモノを言いそうなクラシックではあるが、想像以上にチーム力が重要となる。

先日のE3ハレルベーケも、クイックステップがチーム力を活かし切ったがゆえの勝利であったのだ。

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逃げ、追走、メイン集団全てに選手を送り込んだクイックステップ

特に終盤、ファンアフェルマートとベノートが抜け出したとき、飛びついてかき回し役に徹したジルベールの動きはまさに職人技であった。

 

 

急坂対応力と独走力、そしてエースを支えるチーム力を総合的に判断し、注目選手を確認していく。

 

 

フィリップ・ジルベール(ベルギー、35歳)

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昨年優勝者。今年もここまで絶好調。

彼自身の勝利はないが、ル・サミンおよび先日のE3それぞれでテルプストラと共にワンツーを獲っている。

とくにE3での、ファンアフェルマートやベノートの動きに即座に反応する動きが絶妙であった。昨年のドワーズドール・フラーンデレンなどと同様に、とにかくチームのための走りができるのが強い。

ということで、ジルベールによってジルベール自身の勝利ではなく、テルプストラ、ランパールト、スティバールといったチームメートたちの勝利を導きうるという意味で、いずれにせよ勝利に大きな役割を果たしそうな人物である。

 

 

ペテル・サガン(スロバキア、28歳)

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2年前、強烈な走りと独走力を見せつけてカンチェラーラを圧倒し、世代交代を印象付けて100人目のロンド覇者となった男。昨年は終盤に落車して勝利を流す。

今年はここまでクラシックで良いところなし・・・と思っていたところで、先日のヘント~ウェヴェルヘムでついに勝利。

実は2016年のロンドも、直前にヘントで勝利している。これはもしかして?

また、ヘントでは、マーカス・ブルグハートが終盤まで残ってくれていたことが大きな役割を果たしていたように思う。

ブルグハートはミラノ~サンレモでも最後のポッジョ・ディ・サンレモで先頭に出る積極的な動きを見せていた。そういう動きこそが、サガンを救うのである。

また、E3ハレルベーケでは常に先頭を牽き、何度遅れても復活してサガンをアシストし続けていたダニエル・オス。

このオスとブルグハートが共に揃う今回のロンド。サガンが再び王位を獲得する可能性は、十分に存在する。

 

 

 

グレッグ・ファンアフェルマート(ベルギー、32歳) f:id:SuzuTamaki:20180323160629j:plain

今期クラシックではイマイチな状況だったファンアフェルマートだったが、今回のE3では3位と悪くない結果に。

とくに終盤、勇気をもって自ら飛び出したのが功を奏した。逆にサガンはここについていけなかったがゆえに勝機を逃した。

しかし、クイックステップの数の利には敵わず。

BMCレーシングとしても、ステファン・クーンやユルゲン・ルーランツなどのルーラーたちの活躍が光っており、ロンド本戦に向けたチーム力に関しても期待はできる。

クイックステップの次に可能性をもったチームであることは間違いない。あとは最後の最後で、勝ちきるだけの独走力をファンアフェルマート自身が持てるかどうか。スプリント勝負になれば可能性は高いのだけれど。。。

 

 

ティシュ・ベノート(ベルギー、24歳)

3年前、プロデビュー初年度にまさかのロンド5位を記録した天才。しかしそれゆえに過剰な期待を抱かれ続けてきた。

本人としてはステージレースでの総合成績も追い求められるタイプであるだけに、迷いもあったようだが、今年ストラーデビアンケで優勝。さらに先日のE3でも終盤まで粘る走りを見せて5位。改めてロンドに再挑戦できる準備が整った。

クファトコフスキに似た、真の意味でのオールラウンダーとなれる素質を持つ男。今年はまず、クラシックで獲れるだけの成績を獲っていきたいところ。

 

 

セップ・ファンマルケ(ベルギー、29歳)

クラシックの勝負所で残る力は十分にある。あとは、他を圧倒するほどの爆発力がないため、勝ちきれないことが続いている。今回もヘントもそう。

とはいえ、スプリント争いになっても勝てる見込みが薄いので、厳しくても終盤でアタックするしかないのだけれど・・・その意気込みだけは非常に男らしいのだけれど・・・。

とにかく、絶妙なタイミングを突く奇襲をしないと、勝つのは難しそう。

そんな奇襲をするためにも、チーム力が非常に大事。

昨年6位のサッシャ・モドロなんかがうまく最後まで残ってファンマルケと共に珍しい「チーム力」を見せてほしいところ。

 

 

ミハウ・クフャトコフスキ(ポーランド、28歳)

アルガルヴェ1周&ティレーノ~アドリアティコ両方で総合優勝と、ステージレーサーとしての実績を着実に積み重ねつつある今年のクファトコフスキ。しかし2年前サガンが勝ったときのロンドでも勝負所でしっかりと喰らいつく走りを見せたりと、北のクラシックでも十分期待ができそう。

そしてチームとしても楽しみな選手が多い。ディラン・ファンバールレ、イアン・スタナード、大怪我から復活したルーク・ロウ、そして、先のE3でも終盤まで残りアタックする姿も見せていたジャンニ・モズコン。とくにモズコンが、今回も何かやってくれるんじゃないかと期待してしまう。

 

 

ワウト・ファンアールト(ベルギー、23歳)

3年連続、シクロクロス世界チャンピオンに輝く。昨年から少しずつロードレースにも参加しているが、今年から本格的にクラシックレースに挑戦。

3月頭のストラーデビアンケではいきなりの3位と、才能を見せつけた。

直前のヘント~ウェヴェルヘムでも終盤まで常に先頭集団に残り、ワールドツアーチームの大ベテランに負けない走り。

目指すはベスト5。

 

 

 

 

今年もまた、ロンドは伝説を生み出すのか。

新たな「王」になるのは誰か。

レコードバンク・E3ハレルベーケ2018 プレビュー

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いよいよ始まる、「フランドルの1週間(Flemish Cycling Week)」。その名の通り、ベルギーの北西部、フランドル地方を舞台に全部で5つのクラシックレースが立て続けに開催される1週間である。

その端緒となるのが昨日開催された「デパンヌ~コクサイデ3日間」。

そして、第2幕となるのが、明日、3/23(金)に開催される「レコードバンク・E3(エードリ)ハレルベーケ」である。

 

エスト=フラーンデレン州のハレルベーケを発着する206km。

途中、15の急坂が登場し、「パテルベルグ(Paterberg)」や「オウデクワレモント(Oude Kwaremont)」など、ロンド・ファン・フラーンデレンでもお馴染みの石畳急坂も含まれる。

「ミニ・ロンド」の異名を持つ、この時期最注目のレースである。

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15の石畳のプロフィール。パテルベルグは本家ロンドでも度々勝負を決定付ける重要なポイントとなっている。全長は700mと短めだが、平均勾配12%、最大勾配20%と非常に強烈。

 

 

レイアウトは昨年と同じ。

昨年はラスト72.7kmの「タイエンベルグ」でトム・ボーネンがペースアップを図り、集団が絞られる。

その後の平坦区間フィリップ・ジルベールがアタックを繰り返し、ついに集団から抜け出す。これについていけたのはグレッグ・ファンアフェルマートとオリヴァー・ナーゼン、ルーカス・ペストルベルガーのみ。

優勝候補のペテル・サガンは後方に取り残され、その後は集団落車に巻き込まれるなどして戦線から離脱した。

 

先行していた逃げ集団を吸収したジルベールらのグループは、ラスト41.6kmのパテルベルグとオウデクワレモントを経てジルベール、ファンアフェルマート、ナーゼンの3名のみが残る形に。

当時のベルギーチャンピオンと、現ベルギーチャンピオンと、そしてオリンピック金メダリストという超強力な3名によるスプリント争いの結果、31歳の東フランドル人が初の勝利を掴んだ。

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今年もパテルベルグ辺りからの攻防戦に注目。

以下、今大会の注目チームをプレビュウしていく。

 

 

 

注目チーム

※年齢はすべて数え年表記。スタートリストは暫定のものであり、直前の変更の可能性があります。

※3/23に最新のスタートリストをもとに追記しております。

 

1~.BMCレーシングチーム(BMC)

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昨年優勝者ファンアフェルマート。ただし、今年はここまでのクラシックで存在感を示せていない。果たしてこのE3から挽回ができるか?

むしろその他の選手が今年、調子がいいところを見せている。ルーランツはバレンシアで1勝しているほか、ミラノ~サンレモでも5位。ドラッカーもクールネ~ブリュッセル~クールネで6位、ミラノ~サンレモでもポッジョ・ディ・サンレモで強力なアタックを見せていた。かき回し役として期待。

もちろん、クラシックにおいて最も重要なのは、最終局面までエースを連れていき、トラブル対応を可能とするルーラーの存在。ミヒャエル・シャーと、そして現在最も成長中のTTスペシャリスト、クーンが縁の下の力持ちとして活躍できるか。

ベッティオールも昨年10位で優勝候補の1人ではある。

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11~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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昨年は早々と戦線離脱せざるを得なかったサガンだが、2014年に優勝しているほか、2度の2位を経験している。

一昨年のロンドでも見せた「パテルベルグ」での強烈なアタックが決まれば最大の優勝候補ではある。だが今年はここまで2位が多く、今回も不安・・・。

(3/23追記)カデルレースやミラノ~サンレモでも重要な役割を果たしていたダニエル・オスが参戦決定。やはり今年のボーラのクラシックでは、彼がいなければ・・・!

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21~.AG2Rラモンディアル(ALM)

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昨年は勝負所でしっかりと喰らいつき、しかし最後は逸り過ぎてしまいベテラン2人に置いていかれてしまったベルギーチャンピオン。実力はあるがなかなか勝てない。今年のここまでのクラシックもイマイチ。

チームとして期待したいのはグジャールの逃げ。ブエルタ優勝経験もあるこの逃げスペシャリストは昨年のE3でもしっかりと逃げている。

ほか、ル・サミンの終盤戦に残り8位となったデンツの走りにも注目。この先のパリ~ルーベなどでも楽しみなドイツ人ルーラーだ。

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31~.クイックステップ・フロアーズ(QST)

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今期(も)絶好調のクイックステップ。3月のクラシックはル・サミン、ドワースドール・ウェストフラーンデレン、ノケレ・コールス、ハンザーメ・クラシック、デパンヌ3日間と次々勝利。今期すでに17勝。主力が抜けて弱体化したという話は何だったのか。

クイックステップの強みは、良い意味での複数エースの存在だ。昨年ロンド覇者、E3でも2位のジルベールはもちろん、今年ル・サミンで勝利しているテルプストラ、昨年ドワースドール・フラーンデレン勝者ランパールト、そしてチェコチャンピオンジャージを着たクラシックスペシャリストのスティバールなど、誰が勝ってもおかしくない面子が、その強みを活かして次々にアタック。常に先頭に複数名を入れてきてその他のチームを圧倒する走りを得意としている。

今回もうまくその状態を作れれば勝利は固いだろう。逆にうまくいかないときは徹底してうまくいかないので、最後まで不安がつきまとうチームである。

(3/23追記)ドワースドール・ウェストフラーンデレンでレミ・カヴァニャと共にワンツーをとったセネシャルが参戦決定。今後に向けた経験を重ねるうえで重要。

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41~.ロット・スーダル(LTS)

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ロンド5位の経験をもち、今年のストラーデビアンケで優勝したベノートがエース。彼自身はステージレースでの総合上位も狙えるタイプであり、クラシック「スペシャリスト」のつもりはないようだが、とはいえやはりベルギー人として、この「フレミッシュ・サイクリング・ウィーク」の活躍も捨てがたい。

チームとしては他にも元オリカのクラシックスペシャリスト、ケウケレールも優勝候補となりうる。今年はここまでイマイチだが、昨年まではヘント~ウェヴェルヘム2位やドワースドール・フラーンデレン5位など。

(3/23追記)ケウケレールは残念ながら不参加。代わりにホフランドやジーベルクなどスプリンター寄りの選手が・・・それは適切なのか?

なお、ローレンス・ナーゼンはAG2Rのオリバー・ナーゼンの弟である。プロコンチネンタルチーム所属の昨年から昇格。今年はノケレ・コールスでチーム最上位でゴールしている。

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51~.アスタナ・プロチーム(AST)

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エースナンバーを着けるデフリーズ自体は優勝候補として名前が挙がるタイプの選手ではないものの、先日のオンループ・ヘット・ニウスブラットでの活躍から期待したいチームではある。実際、そのとき最終局面で活躍した3名(ヴァルグレン、ガット、ルツェンコ)全員が出場している。

そしてそのときの勝者ヴァルグレンは昨年のE3でも6位。ロンドでも11位。

これは・・・今期2つ目のビッグレース勝利も期待できる??

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81~.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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一昨年のパリ~ルーベ覇者ヘイマンがエースナンバーを着るが、最大の優勝候補は昨年4位のルーク・ダーブリッジ。あるいはミラノ~サンレモでも終盤に積極的なアタックを見せたトレンティン辺りか。

 

 

111~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパック(EFD)

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永遠のシルバーコレクター、ファンマルケ。今年こそ・・・。

ブレシェルやランゲフェルトなど、クラシック巧者は揃ってはいるのだが、なぜかうまくチーム力を活かせない印象がこのチームにはある。

逆にアスタナやバーレーンのようにこのあたりのチーム力がうまく発揮できれば、ファンマルケに勝機は出てくるだろう。ドッカーやフィニーなどの独走力の高いルーラーたちの活躍にも期待。

 

 

141~.チーム・スカイ(SKY)

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クラシック巧者スタナードにはもちろん注目だが、今年に関して言うと、先日のオンループで終盤で先頭にブリッジをかけ、最後は飛び出して2位に入り込んだヴィシオウスキや、クラシック要員としてスカイに新加入したファンバールレなどにも注目をしていきたいところ。

(3/23追記)スタナードが不参加となり、代わりに、先日のハンザーメ・クラシック2位のハルヴォーシュンが参戦。やはり優勝候補としてはファンバールレやヴィシオウスキとなりそう。

そして、どんな走りを見せるのかまったく予想のつかないモズコンにも、密かな期待を寄せてしまうところである・・・。最近はパンチャー的な走りが多いが、昨年のパリ~ルーベは5位など、石畳適性も非常に高い。

 

 

161~.トレック・セガフレード(TFS)

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デゲンコルブはどちらかというと週末のヘント~ウェヴェルヘム向き。今大会のエースとなるのは、2年前のE3で5位。今年のオンループでも4位のスタイフェンであろう。

ラスト、ペダースンなどのクラシックスペシャリストや、独走力のひたすら高いミューレンなど、何気にアシストたちのバランスが良いのもこのチームの特徴だ。

(3/23追記)やっぱりスタイフェンがエースに。そりゃそうだよね。

 

 

 

その他にもバーレーンのコルブレッリや、FDJのデマール、ディメンションデータのスウェイツやボアッソンハーゲン、UAEのクリストフなど・・・

プロコンチネンタルチームでもワンティのヴァンケイスブルクやフランダースウィレムスクレランのデヴォルデル、ディレクトエネルジーのシャヴァネルなど注目選手が多数出場。

 

とにかく、今大会の勝利だけでなく、「1週間後のロンドの優勝を狙える選手は?」という観点で注目していきたい。

 

それがこのE3の見所であると言えるだろう。

ミラノ~サンレモ2018

2011年ミラノ~サンレモ。

当時リクイガスに所属し、26歳だったヴィンツェンツォ・ニバリは、4度目の参加となったこのミラノ~サンレモの最後の勝負所「ポッジョ・ディ・サンレモ」でアタックを繰り出した。

このアタックでライバルたちから抜け出せたわけではなかった。それでも、集団のペースを上げ、8名の小集団が形成されるきっかけにはなった。

そして、独り先行していたグレッグ・ファンアフェルマートを抜き去り、小集団はそのままスプリント勝負を開始する。

勝ったのはオーストラリア人のマシュー・ゴス。ニバリは、この小集団の最後尾で、3秒差8位という結果に終わった。

 

 

翌年のミラノ~サンレモで、再びニバリはポッジョ・ディ・サンレモでアタックした。

今度は、多くのライバルたちを置き去りにして先頭に立つことができた。

ただし、サイモン・ジェランとファビアン・カンチェラーラという、2人の強力なライバルがついてきてしまったため、結局のところ、勝利を手に入れることはできなかった。

それでも、3位。クライマーであり、本来であればこの大会で優勝候補に上がることすらないはずの彼が、表彰台に立つことができたのだ。

この時点で、イタリア人によるミラノ~サンレモ優勝は2006年のフィリッポ・ポッツァート以来、6年間遠ざかっていることになる。

ニバリにかけられた期待は大きいものであっただろう。

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2012年ミラノ~サンレモ。ポッジョ・ディ・サンレモでの勇気あるアタックの末、集団スプリントではない形でラストを迎えるという最大のチャンスを手に入れたニバリだったが、ジェラン、カンチェラーラという2人のスプリント力の高い強力なライバルを前に完全に打ちのめされてしまった。

 

 

しかしその翌年。

2013年のミラノ~サンレモは大雪に見舞われ、アスタナに移籍したばかりのニバリは途中リタイアという悔しい結果に陥る。

また、2014年のミラノ~サンレモではポッジョ・ディ・サンレモではなくチプレッサでアタックするという新しい動きを見せたものの、結局は集団に飲み込まれ、勝負できずに終わった。

 

やはり、ミラノ~サンレモはスプリンターのためのクラシックなのか。

クライマーであり、イル・ロンバルディアで2勝しているニバリには、向いていないレースだったのか。

 

ニバリもそのことはよく分かっていたに違いない。

それでも、彼はほぼ毎年、このミラノ~サンレモに挑むこととなる。

彼はイタリアを愛しており、このミラノ~サンレモも強く愛していた。

 

そして今年、イタリアの神様は彼に微笑むこととなる。

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とは言え、ニバリは決して、最初から優勝を狙っていたわけではなかった。

実際、ラスト12kmを過ぎた辺り、ポッジョ・ディ・サンレモ突入まで残り3kmを切った重要な場面で、彼はチームのエーススプリンター、ソニー・コルブレッリのアシストとしての走りを見せていた。 

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先日のGPインダストリア&アルティジアナートでは得意の下りからの独走で勝利を果たした名ルーラー、モホリッチが先頭を牽引。

その背後でニバリが、過去最高6位を記録しているチームのエース、ソニー・コルブレッリを牽引する。

 

ニバリによるコルブレッリのアシストは、すでにドバイ・ツアー第4ステージ(ハッタ・ア・ダム頂上ゴール)でも披露している。

このとき、コルブレッリはニバリたちの献身に応え、見事ステージ優勝を果たしている。

ポッジョ・ディ・サンレモの短くも厳しい地点を含む登りにおいて、コルブレッリに最高の位置をキープするためにも、ニバリの存在は非常に重要であった。

 

 

事実、こんな場面もあった。ラスト10.6km。

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FDJトレインの先頭を牽引し続けていたリトアニアチャンピオン、コノヴァロヴァスが仕事を終えて落ちていくとき、彼はモホリッチとニバリの間に入り込むような形になっていた。

そのとき、ニバリが右肩で彼の動きを抑え、しっかりと進路を確保。

この動きは自らを集団の先頭にキープすると共に、当然、背後のコルブレッリのポジションを守るための動きにもなっていた。

 

しかし、このときのニバリの冷静な動き、そして的確な力加減など、さすがベテラン、といったところである。

 

 

そしてニバリが動きを見せたのが、ラスト7.1km。

ポッジョ・ディ・サンレモの山頂付近、イスラエル・サイクリングアカデミーのラトビアチャンピオン、クリスツ・ネイランズのアタックに反応する形で飛び出した。

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ただしこれも、ニバリが自らの勝利のために飛び出したのか、というと恐らく、そうではなかったと思われる。

この時、バーレーンメリダで先頭に残っていたのは3名。ニバリと、コルブレッリと、モホリッチの3名だ。

このうち、モホリッチは既に、ラスト12kmからほぼずっと、先頭を牽引し続けていた。登りに入ってからも、ボーラ・ハンスグローエのマーカス・ブルグハートやBMCのジャンピエール・ドラッカーのアタックに対し、集団の先頭牽引をひたすらこなし続けていた。

 

ここにきて、ネイランズのアタックに反応し追走を続ける力がモホリッチに残っているとは思えない。

かと言って、スプリンターでもルーラーでもないニバリが、登りが終わろうとしているこのタイミングで、ただ単に集団先頭を牽引する役割を担うことも、適切とは言えない。

 

寧ろ、自らのアタックによって、コルブレッリが集団の中で最適なポジションを確保することを許し、チームとして有利な状況をもたらせるのではないか。

一瞬のうちのそんな判断が、ニバリの行動をもたらしたのである。

 

「ラスト15kmは本当に良い調子だった。ポッジョではコルブレッリのために働いていたし、最後の5kmまではネイランズを追いかけることだけを考えていたつもりだった。でも監督が無線で集団とのタイム差を教えてくれたとき、僕は思ったんだ。『フルガスだ』と*1

 

ネイランズが脱落し、単独でポッジョの下りを走ることになったとき、ニバリは10回目の挑戦にして初めて、ただ一人でミラノ~サンレモの先頭を走ることとなった。

 

 

これはニバリにとって、最大のチャンスであった。

そして彼にとって、最も得意とするパターンでもある。

海に向かって曲がりくねった下りが続き、昨年のジロやイル・ロンバルディアでも見せつけた巧みなダウンヒル・テクニックを披露する。

強い向かい風が吹いていて、単独エスケープにとっては不利な状況であったはずだ。

 

「最後の1kmは永遠に続くかと思った。ただひたすら苦しかった*2

 

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ニバリの勝利の立役者はもう1人いる。

ライバルチームのエースであり、今大会最大の優勝候補の1人でもあった男、すなわちペテル・サガンである。

 

ニバリのアタックの後、集団内ではミハウ・クフャトコフスキやマイケル・マシューズなどが追走を仕掛けようとする動きを見せるが、強い向かい風もあって一気に抜け出すこともできず、つい他のライバルの動きを警戒し、牽制し合ってしまう。

 

この時点でアシストを残しているのはサガン率いるボーラ・ハンスグローエくらいだった。今年新加入の名アシスト、ダニエル・オスが先頭を牽引して集団は本格的な追走を開始するが、それでもオス単独での追走となったため、ニバリとのタイム差は開く一方であった。

 

ラスト3km。ミッチェルトン・スコットのマッテオ・トレンティンが集団から抜け出す。

これを見て、サガンたちは追走を仕掛ける必要があったが、サガン以外の選手は先頭に出ようとしない。

 

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ちらちらと後ろを振り返るサガン

クファトコフスキは前に出ることなく、それを知ったサガンも、これ以上ペースを上げることはなかった。

 

「もし僕が単独で追走していれば、ヴィンツェンツォを捕まえることはできていただろう。だけど問題は、誰もそれに反応しなかったことなんだ。みんな僕の動きに期待していた。だから僕は自分自身に言ったんだ。『ヴィンツェンツォが勝つか、僕らが彼を捕まえるか。僕たちは捕まえなかった。それでオーケイだ』*3

 

似たような状況は、4年前のツール・ド・フランス、イギリスのシェフィールドにフィニッシュする第2ステージでも展開されていた。

 

あのときと同じようにサガンは、ライバルであり、元チームメートであり、今もなお親友である6歳年上のイタリア人を祝福する。

 

「おめでとうヴィンツェンツォ。この勝利はイタリアに、そしてスポーツ全体にとって良い勝利となった。僕はとても幸せだ。ヴィンツェンツォが最高の勝利をしてくれて」

 

 

 

かくしてニバリは勝利する。

6年前、同じポッジョでアタックし、悔しい結果となったあのときのリベンジを、あのときのジェランの年齢を越える年となって果たすことができた。

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この日、もう1人の勝者は、カレブ・ユワンであった。

ラスト150mから開始した先行型スプリントに誰もついていけず、飛び抜けた状態で2位に入り込んだ。

 

勝てはしなかった。けれど、スプリンターの最高峰のレースで強さを見せつけた彼は、きっとまた最高の状態で来年戻ってくるだろう。

ゴス、ジェランに続く3人目のオーストラリア人ミラノ~サンレモ覇者として。 

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パリ~ニース2018 第7ステージ 山岳アシストたちが彩った今シーズン初の本格山岳ステージ

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 2018年パリ~ニースもいよいよクイーンステージに突入。標高1500mの「ヴァルドゥブロール」に至る16kmの本格的な山頂フィニッシュである。 

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 パリ~ニースは「ミニ・ツール」とも呼ばれ、並行開催のティレーノ~アドリアティコと並び、グランツールに向けての調整を開始していく重要なステージレースでもある。

 出場する選手たちの顔ぶれもトップクラスで、コンディションも完璧な状態に仕上げてきている選手が多い。

 そんなレースでのクイーンステージ山頂フィニッシュは、今年のグランツールでの様子を占ううえで、非常に重要となる。

 

 そして、山頂フィニッシュでの登坂バトルでは、エース単独の力では十分ではない。

 そこには常に、強力な山岳アシストの存在が不可欠となる。

 エースと山岳アシストの双方が輝いてこそ、チームとしての勝利に繋がるのである。

 

 

 今年のエースクライマーたちの調子は勿論、山岳アシストたちの調子とエースとの相性を見るという点で、この日のレースは注目に値するものであった。

 

 

 

 今最も、調子が上がっているチームといえばアスタナ。

 ツアー・オブ・オマーンではアレクセイ・ルツェンコとミゲルアンヘル・ロペスが総合ワンツーを飾り、今大会に出場しているルイスレオン・サンチェスヤコブ・フールサンもバレンシア1周レースで総合2位・3位を獲得した。

 そして今大会においても、サンチェスが第3ステージで抜け出して区間2位、さらには個人TTでも好走を見せたことで、総合首位をキープしていた。今大会での総合優勝もかなり現実的なところまで近づいてきていた。

 

 そんなアスタナを支える山岳アシストとして、予想以上の働きを見せたのが26歳のミケル・ヴァルグレン

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 先日のオムロープ・ヘット・ニウスブラットでルツェンコやガットとのコンビネーションを見せて勝利を掴んだ男だ。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 残り9km地点から先頭に出て、ジャスト2kmにわたって牽引し続けたヴァルグレン。パンチャー/ルーラー的な脚質から、本来であれば平坦での牽引が主役割となりそうな彼のこの賢明なアシストは驚きであった。

 

 このヴァルグレンが残り7kmで離脱した後、新たな牽引役としてバトンタッチしたのは、過去2回のブエルタ山岳賞を記録している実力派クライマー、オマール・フライレ。

 その背後にはヤコブ・フールサンも構えており、アスタナの山岳アシスト体制はどのチームよりも盤石であった。

 

 

 しかしフライレはそこまでペースを上げることができず、ミッチェルトン・スコットが先頭牽引の主導権を握ってしまう。

 どうしたフライレ?と思ったが、問題はフライレにあったわけではなかった。

 

 直後、遅れ始めるマイヨ・ジョーヌのサンチェス。フライレは彼のもとに降り立ち、そのアシストに努める。

 

 サンチェス不調。

 このチャンスをものにしたのがミッチェルトン・スコットの最強アシスト、ロマン・クロイツィゲルであった。

 

 

 ロマン・クロイツィゲル。31歳チェコ人。かつて、コンタドールのアシストとしても活躍した男は、昨年から現チームへと移籍し、グランツール総合争いに本格的に参入するチャベスやイェーツ兄弟のアシストとして期待された。

 昨年は、チャベス自身の不調もあり、クロイツィゲルは期待されていたほどの活躍はできていなかったように感じた。

 だが今回、サンチェスが遅れるという千載一遇のチャンスに、最高の働きを見せたのがこのクロイツィゲルだった。

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 クロイツィゲルの猛牽引により、集団とサンチェス・フライレとの差が開いていく。

 フールサンも集団から降りてサンチェスのアシストに赴くが、最終的にはフールサン単独で山頂に戻ることとなったようだ。

 

 アシスト陣の状態は最高に良かった。しかし、そこでエースのバッド・デイが重なってしまうこともまた、ロードレースという競技の妙なのである。

 アシストとエースの状態が最高に揃ってこその勝利。

 

 しかし、アスタナは悲嘆にくれる必要はない。

 アシストの状態が良いことがわかっただけでも、今回のアスタナは今後に繋がる可能性を十分に見せることができたのだから。

 

 

 

 さて、クロイツィゲルの猛牽引により、集団は絞り込まれていく。

 ピエール・ローラン、ワレン・バルギル、ミカエル・シェレルといった実力者たちが次々と脱落し、新人賞ジャージを着るマルク・ソレルも度々遅れかける様子を見せていた。

 そんな中、若手の中で力を見せたのが、ボーラ・ハンスグローエに所属する24歳オーストリアフェリックス・グロースシャルトナー。

 残り4.3kmで飛び出したサイモン・イェーツとヨン・イサギレを追いかけるべく、集団の先頭に出て牽引を始める!

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 本来の第1アシストであるはずのパヴェル・ポリャンスキが早々に脱落する中、総合10位のパトリック・コンラッドをアシストするべく、精鋭揃いの先頭集団に残り続けたシャルトナー。

 状況によっては、ソレルやオーメンと新人賞ジャージを巡って対等に渡り合うことも十分に可能だった。しかし今回彼は、コンラッドのアシストのためにここで全力を尽くすことを選んだ。

(それでも彼は最終的に、1分4秒遅れの13位でゴールしている。クロイツィゲルよりも30秒以上早く、そしてソレルやオーメンよりも10~20秒程度しか遅れずにゴールしたのである)

 

 このパリ~ニースでは個人TTでも4位と独走力の高さも見せつけたオールラウンダーであり、ジロではフォルモロをアシストすることが決まっている。

 今年最も躍進が期待できる男、それがこのグロースシャルトナーである。

 覚えておいて損はない。

 

 

 もう1人、同年代で目覚ましい活躍を見せたのが、モビスターに所属するエクアドル人、リチャルド・カラパス

 残り2.5km地点でサム・オーメンが集団から千切れた際に、その後ろについていたマルク・ソレルを牽引し、集団に復帰させたのがこの男であった。

 その後も集団から遅れるソレルを支え続ける。この男がいなければ、もしかしたらソレルは今の総合順位すら維持できていなかったかもしれない。

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 カラパスはこの2月のコロンビア・オロ・イ・パでも、キンタナに次ぐ登坂力を見せていた有望株である。昨年のGPインダストリア&アルティジアナートでも2位を獲得するなど、十分な実力をもっている。

 グロースシャルトナーと並び、今年このあとの更なる爆発が期待できる。

 

 

 ヴァルグレン、クロイツィゲル、グロースシャルトナー、そしてカラパス。

 それぞれのチームのエースを支える貴重なアシストたちの力が垣間見えたステージであった。

 そしてそのうちの3名が「若手」と言って差し支えないメンバーであることも、今後を期待させる要素である。

 

 

 さらにもう1人、ディラン・トゥーンスの躍進について触れざるをえない。

 今年まだ26歳。昨年「激坂ハンター」としての台頭があったばかりの、まだまだ経歴的には「若手」というべき存在。

 あくまでもパンチャーであり、総合上位争いなど想像していなかったこの男が、まさかのこのクイーンステージでBMC最高の走りを見せたばかりか、ラスト2kmの地点からの強烈なアタックでライバルたちを振り払った。

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 そしてウェレンスと並んで、ステージ2位でゴールする快挙。

 BMCは今年、ベン・ヘルマンスを失ったことは痛手であったが、もしかしたらこのトゥーンスが今後、彼に代わる短めのステージレースでのエースを担える存在となるかもしれない。

 

 

 その他にも、同じくパンチャーと思われていたアレクシー・ヴュイエルモが、この最終集団の中で残り続ける走りを見せたことで、移籍してしまったポッツォヴィーヴォに代わるチームのセカンドエースとしての可能性を見せつけてくれた。

 さらに同じくパンチャーであったティム・ウェレンスの、引き続きとなる好走も眩しい。

 

 

 もちろんこの日の勝者はサイモン・イェーツであり、兄弟で総合2位・3位を占めたイサギーレたちの走りも非常に強かった。

 だが、そんな日の当たるエースたち以上に注目してしまいたくなるのが、本日紹介したようなアシストや元アシストの有望株たちなのである。

 

 

 ヴァルグレン、クロイツィゲル、グロースシャルトナー、カラパス。

 そしてディラン・トゥーンス、ヴュイエルモ、ウェレンス・・・今年、この後のレースでもぜひ注目してもらいたいサブエースたち。

 これからもそんな陰の実力者たちを紹介していきたいと思う。 

 

 

パリ~ニース2018 第1ステージ イヴァン・ガルシアコルティナの勝負を決定付けた走り、他。

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 パンチャー、クライマー、スプリンターが入り混じる混沌としたゴールライン写真判定の結果、勝利を掴んだのは26歳のフランスチャンピオンだった。

 

 2年連続となる開幕ステージ勝利。さらに言えば、2年前のパリ~ニースでも、初日プロローグの翌日、すなわちラインレース開幕ステージでも勝利している。

 3年連続のステージ勝利。

 そして、チームが新たなスポンサーを手に入れ、新たなユニフォームを手に入れたその最初のレースで掴んだ勝利でもあった。

 

 

 しかし、この激戦は、1人の男のアタックによって、もしかしたら実現せずに終わっていたかもしれなかった。

 アレクシー・ヴュイエルモ。

 2年前、「ミュール・ド・ブルターニュ」を制した男。

 激坂フィニッシュのラスト1.5kmで飛び出したヴュイエルモは、そのまま勢いよくリードを奪い、10秒以上のタイム差をメイン集団につけた。

 集団はグルパマFDJが牽引するも、デマールを置いていくわけにはいかない彼らはいまいちペースが上がらない。

 かと言ってFDJが下がれば、今度は集団内でお見合いが発生し、リードを維持したままヴュイエルモはラスト500mの石畳区間へと突入した。

 

 

 このままでは、ヴュイエルモの逃げ切り勝利は確実だった。

 そんな状況を変えたのが、バーレーンメリダの若き22歳スペイン人、イヴァン・ガルシアコルティナ。

 石畳区間に入る直前の狭い隙間を縫って先頭に出たコルティナは、そのまま先頭を全力牽引!

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 牽制合戦を繰り広げていた集団先頭がこれで1つになり、ペースが一気に上がる。

 結果、ヴュイエルモがゴール直前で捕まえられ、冒頭の接戦スプリントが展開された。

 

 コルティナが勝たせるつもりだったゴルカはわずかに届かず、勝つことはできなかったものの、彼のこの勇気ある走りは、チームの2人のエース、ゴルカとヨンをいずれもTOP10に入れることに成功した。

 

 ネオプロとしてバーレーン入りを果たした昨年、ツアー・オブ・ジャパンのエースを担ったほか、ブエルタ・ア・エスパーニャでは終盤の山岳ステージで積極的な逃げを展開していたタフな若手。

 これからの更なる活躍が楽しみである。

 

 

 なお、上記コルティナの動きとその価値については、以下のツイートを参考にした。

 「石畳区間の直前のカーブ前、狭い隙間をすり抜けるイヴァンの動きには注目すべきだ! 彼はその後、ゴルカのために「フルガス」で働いた」

 

 「もしイヴァンがいなければ、ヴュイエルモが勝っていたかもしれない。彼の働きはチームにTOP10入りという結果をもたらした。ゴルカが勝利を逃したのは少しだけ残念だけど」

 

「本当に彼の動きは素晴らしかったよ。最初、彼がイヴァンだということに、最初は気づかなかったけれども。彼の走りは勝利に値する走りだった(別の場面、別のレースであれば・・・)」

 

 

 しかしヴュイエルモも惜しかった。

 実はラスト1.5kmの飛び出しというのは、2年前の「ミュール・ド・ブルターニュ」のときと同じタイミング、必勝のタイミングであった。

 ただし2年前はその後、フルームらに追い付かれたことで小休止を挟むことができた。

 しかし今回は彼一人。しかも、最後の500mは石畳で、典型的なアルデンヌライダーであるヴュイエルモにとって、フランドル風の石畳は体力を失わせるには十分すぎる仕掛けだった。

 

 それでも、その強さは本物。この先も、第6ステージなんかではゴール前に激坂が登場する。そして今年のツール・ド・フランス本戦では、「ミュール・ド・ブルターニュ」が再登場、しかも「2回登坂」する。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 ブルターニュ制覇以来、期待されながらもアルデンヌで結果も出せずにいたヴュイエルモ、今年は再び脚光を浴びる年になるか?

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 2015年「ブルターニュの壁」制覇者ヴュイエルモ。今年のツールで再び栄光を手に入れられるか?

 

 

 

 最後に。

 戒めとしてのツイッターポストを1つ。

 

 嗚呼・・・。