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ブエルタ・ア・エスパーニャ2018 コースプレビュー1週目

3年ぶりとなる、スペイン南部、熱風吹き荒れるアンダルシア地方での開幕。

ブエルタにしては珍しく平坦が多めで、割と緩やかに始まる1週目となる。山岳も、ブエルタ特有の厳しさではまだない。

まずはこの1週目で、スプリンター勢の活躍と、総合勢の調子の確認をしていきたい。

 

 

 

 

第1ステージ マラガ~マラガ 8km(個人TT)

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史上3回目のグランデパールを迎えるアンダルシア地方の港町は、9年ぶりとなる開幕個人TTの舞台となった。

距離は8km。数多くの観光地についてはJsportsの情報に委ねるとして、コース的には直線が多くスピードは出るものの、海沿いの道の横風や、残り4.7kmから始まる6%の登りには注意したい。

距離的にはスプリンターもTTスペシャリストも共に優勝を狙えるレベルである。次の日は厳しい山頂フィニッシュで、早くもマイヨ・ロホがクライマーの手に渡ってしまうため、平坦専門家たちはこのステージでなんとしてでも勝利しておきたい。

 

リゾート地コスタ・デル・ソルの、青い空と海、白い壁の家々の美しさも堪能しよう。

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スタート地点のすぐ近くには、ポンピドー・センターのマラガ分館が。写真はフランスの芸術家ダニエル・ビュランの手がけたガラス・キューブ。

 

 

 

第2ステージ マルベーリャ~カミニート・デル・レイ 163.5km(平坦)

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へい・・たん?

3年ぶりのアンダルシアスタートで、3年前と同じく、カミニート・デル・レイ(王の小道)の厳しい登りをいきなりフィニッシュに持ってきた。

3級山岳だが、ラスト3kmで240mを登る厳しい勾配。

3年前は、トム・デュムランとの激戦を制したエステバン・チャベスが見事な勝利を成し遂げた。

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チャベスの強さを世界に知らしめた瞬間であり、また同時に、デュムランがTTスペシャリストからオールラウンダーへと変貌していく瞬間でもあった。

 

今年もまたこの地にて、新たなるヒーローの誕生を見ることができるか。

 

 

 

第3ステージ ミハス~アラウリン・デ・ラ・トレ 178.2km(中級山岳)

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出発地点のミハスからゴール地点のアラウリン・デ・ラ・トレまでは直線距離で15kmでしかない。ともにマラガ県の美しき海岸線コスタ・デル・ソルの一部だが、この日プロトンはこの海岸線を走ることはない。内陸に移動し、実にブエルタらしい標高の高い丘陵地帯を駆け巡ることになる。

スタートから50kmでいきなりの1000m超え1級山岳。この辺りも、2015年に近いプロフィールで、3年前はこの第3ステージの1級山岳を先頭通過したオマール・フライレが山岳賞ジャージを獲得。そのまま最後まで守り切り、飛躍のきっかけとなった。

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当時はプロコンチネンタルチームのカハルラル所属だったフライレ。翌年はディメンションデータに移籍し、2度目のブエルタ山岳賞を獲得した。

 

そんな厳しそうなステージではあるものの、最後はほぼ間違いなく集団スプリントとなるだろう。この程度の山で遅れて最後まで集団復帰できないようなヤワなスプリンターはブエルタには来ていない。

3年前の第3ステージはサガンが勝利した。さて、今年は?

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3年前のブエルタ第3ステージではサガンが勝利。実に2年ぶりのグランツール勝利となった。

 

 

 

第4ステージ ベレス・マラガ~アルファカル 162km(中級山岳)

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コスタ・デル・ソルで開幕した2018年のブエルタ・ア・エスパーニャは、4日目にしていよいよ美しき海岸線を後にする。

海岸から北上したプロトンは、イベリア半島最後のイスラム王朝が座していたグラナダの地を通過し、南スペインの難関山脈シエラネバダの山々に挑む。

 

本日は1級山岳シエラ・デ・ラ・アルファグアラ。

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登坂距離12.4km。平均勾配5.6%。

「まあまあ」な山岳である。まるでツールの山のような。

この程度の山は、ブエルタに挑む強者たちにとっては、前菜にすらならないだろう。

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アルハンブラ宮殿とアンダルシアの山々。

 

 

 

第5ステージ グラナダ~ロケタス・デ・マル 188km(中級山岳)

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シエラネバダ山脈に隣接する歴史都市グラナダより南下し、再び地中海沿岸に向かう。

標高は常に高いものの、ブエルタの基準で考えれば十分に平坦ステージであり、集団スプリントが予想されるステージ。もちろん、逃げ切り向きでもある。

序盤に通過するランハロン(Lanjaron)は「水かけ祭り」で有名な街。祭りは6月だが、プロトンのメンバー的にはぜひ、沿道から水をかけてほしいところだろう。何しろここはアンダルシア。選手たちにとっては、灼熱地獄と呼ぶべき地域だ!

 

ゴール地点は2月のクラシカ・アルメリアのゴール地点。今年はユワン、昨年はマウヌス・コーが優勝している。

残念ながら2名とも今大会には出場しないようだが、代わってヴィヴィアーニやトレンティンなど、強力なスプリンターたちの出場が決定しているため、期待したいところ。

 

 

 

第6ステージ ウエルカル・オベラ~サン・ハビエル 155.7km(平坦)

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ブエルタには珍しいくらいに純粋なスプリントステージ。といっても、ジロやツールのそれのように、完全な平坦ではないのだが。しかも、距離も150kmちょっとと、まるで休息日のような趣である。

一応気を付けるべきところとしては、レースの大半を海沿いで過ごすため、横風には常に注意を払うべきだという点くらいか。

なお、ゴール地点の近くには、マール・メノール(小さな海)と呼ばれる世界的にも有名なラグーン(塩湖)が存在する。

高い塩分濃度で浮力が強く、また透明度が非常に高いため、「世界で最も大きなスイミングプール」という言葉すらある。この地中海との間を隔てるように浮かぶ砂嘴の美しさも含め、空撮が楽しみである。

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第7ステージ プエルト・ルンブレラス~ポソ・アルコン 182km(平坦)

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特に言うべきこともない、ブエルタ基準ではオールフラットと言うべきステージ。

ゴール地点のポソ・アルコンの近くには、スペイン最大の自然保護区である「シエラス・デ・カソルラ、セグラ・イ・ラス・ビージャス」がある。

3年前の第6ステージはこの保護区内にあるカソルラをゴールとしており、このときチャベスが大会2勝目、そして一度は奪われていたマイヨ・ロホをデュムランから奪い返している。

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いかにもアンダルシア地方らしい風景の中での闘いとなりそうだ。

 

 

 

第8ステージ リナレス~アルマデン 195.5km(平坦) 

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リナーレスの街をスタートしたプロトンは、早速シエラ・デ・カルデーニャ・イ・モントロ自然公園に突入し、その中で3級アルト・デ・エスパニャレスを駆け登る。そのまま下りがないままに公園を抜け、やがてコルドバ北の平原地帯を北上していく。

 

ラスト6kmから緩やかに登り始め、最後の200mは7%の勾配。この程度の登りならば、ブエルタに出場するようなスプリンターたちであれば難なくこなせそうだろう。とくに、ここまでの平坦スプリントでたとえばヴィヴィアーニにやられまくってしまったスプリンターたちがいたとすれば、彼らにとっては反撃のチャンスである。

もちろん、常識的に考えればパンチャーの出番となるステージ。現時点での出場予定選手の中では、ベルトヤン・リンデマンやファビオ・フェリーネ、ダヴィド・ゴデュ、ジャイ・マッカーシー、トニー・ギャロパン、ダニエル・モレーノあたりが純粋なパンチャーとして期待できるかもしれない。

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第9ステージ タラベラ・デ・ラ・レイナ~ラ・コヴァティリャ 200.8km(山岳)

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37kmほど走った選手たちは、最初の1級山岳に到達する。15.3kmで851mを登る。平均勾配は5.6%。

これを登りきったあと、短い下りと緩やかな登りの3級山岳を含むアップダウン区間を経て、85km地点から13kmで585mを登る平均勾配4.5%の2級山岳が待ち受ける。

 

いずれも、山岳賞を狙う選手以外にとっては、さほど興味を惹かれるものではないだろう。

総合優勝争いを考える選手たちにとって重要なのは、2級山岳からの長い下りを経て、登り下りが小刻みに刻まれた平坦区間を越えた先に控える、今大会初の超級山岳アルト・デ・ラ・コヴァティリャの登りである。

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10kmの登坂の平均勾配は7.8%。

しかしこの数値は、最初と最後に平坦区間が存在する所為であり、ラスト8kmあたりからは10%近い勾配が連続する厳しい登りとなっている。

 

ラスト2.5kmあたりから再び激坂区間が現れ、最後のアタックがこの地点で繰り出されることになるだろう。

1週目ラストということもあり、仲良く集団でゴール、となる可能性は低いだろう。おそらくはこの日、先頭でゴールした選手が、今大会最初のマイヨ・ロホ候補として注目を集めるはずだ。

 

サイモン・イェーツがジロの勢いをそのままに今大会も強さを見せつけるか。

ブルゴスでも強かったミゲルアンヘル・ロペスが、新世代の可能性を見せてくれるだろうか。

あるいは、ナイロ・キンタナがツールの雪辱を晴らせるだろうか。

 

今大会最初の大注目ステージだ。

 

 

とはいえブエルタにしてはまだまだ甘いステージである。

 

第2週に控える、凶悪な山岳3連戦を考えると、この日マイヨ・ロホを着られた選手が最後までそれを守り続けられる可能性は、決して高い方ではないだろう。だからあくまでも、「最初のマイヨ・ロホ候補」でしかない。

 

 

第2週はさらなる激戦が待ち構えている。 

2018年シーズン 7月主要レース振り返り

ツール・ド・フランスの7月!

・・・だが、逆に言うと、ツール・ド・フランス以外のレースはそこまで多くないシーズンでもある。

いや、小さなレースはいくつかあったりはするのだが、DAZNもお休み期間だったりして、あまりちゃんと見れていない。そもそもツール・ド・フランスを連日見ていて、他のレースを見る余裕などなかった。

 

その中でも、個人的に注目していたオーストリアとワロニーを厚くレビュウしてみる。

とくに今年のワロニーは終盤、実に手に汗握る展開を楽しめたので必見である。国際映像の関係で第4・第5ステージとはいえ、DAZNで英語実況でのみだが見られるので、確認しておこう。

 

・・・ライドロンドン・サリークラシック? 確かにワールドツアーレースだが、JsportsでもDAZNでも放送しておらず、軽く見た感じ特に意外性もなく集団スプリントで終わったようなので、とくに取り上げずに終えておく。

アッカーマンが勝った!ということ自体は凄いこと。けど、それ以外に特に語ることもないと思うので・・・。

 

 

 

 

 

ツアー・オブ・オーストリア(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:オーストリア

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サイクルロードレース界ではマイナーな、しかし近年その実力を示しつつある国、オーストリア

元々国土の6割以上をアルプス山脈が占める「山岳の国」。今年の世界選手権も、このオーストリアの西方、アルプスの只中にあるチロル・インスブルックで行われる。

4月で開催されたツアー・オブ・ジ・アルプスもこのオーストリアとイタリアを舞台にして行われるレースであり、多くの有力選手が出場し、活躍した。

 

このツアー・オブ・オーストリアもまた、ツール・ド・フランスの裏で開催され、マイナーな部類に入るレースではあるものの、毎年非常に豪華な顔ぶれによるワールドツアーさながらの激戦が繰り広げられる。

今年も各ステージ、ワールドツアーの選手たちばかりが目立っている印象。とくにバーレーンメリダとアスタナ・プロチーム。その中でもモホリッチ、ヴィスコンティ、ルツェンコがひたすら連日活躍していた。

逃げですら彼らが目立ってたからなぁ。。。

 

その中でも注目したいのはまず、バーレーンのアントニオ・ニバリの勝利。

プロ初勝利だという。昨年、兄の引き合いによりワールドツアー入りを果たし、カタルーニャ1周で積極的な逃げを見せたほか、ジロ・デッレミリアではヴィスコンティの勝利を導く重要な役割を果たした。

suzutamaki.hatenablog.com

26歳という年齢はもう若手とは言えない年齢ではあるものの、これからも、1クラスやHCクラスを中心に、地味かもしれないが重要なルーラーとしての活躍や逃げに期待したい。

 

また、第5ステージでは超級グロースクロックナーでプロコンのピーター・ウェーニングが勝利したものの、彼はワールドツアーチームでの経験が長いのでそこまで不思議ではない。むしろ、2位につけたアレクサンデル・フォリフォロフ(ガスプロム・ルスヴェロ)に注目したい。2年前ジロの山岳個人TTで勝利し、世界のファンを驚かせた男だが、それ以降の勝利は無し。しかし、今回の活躍で、再び台頭してくる可能性を見出せる。

まだ26歳。ルスヴェロは、先月のジロ・チクリスティコ・ディタリアでも総合優勝を勝ち取った。チームとしても今後期待していきたい。またジロに出ないかなぁ。

 

そして何よりも、超級キッツビューラーホルン超級フィニッシュで勝利し、そのまま総合首位の座を奪われずに最終日までキープし続けたベン・ヘルマンスの活躍が嬉しい。

元BMCで、1週間程度の短いステージレースではかねてより成績を出していた。昨年2月もツアー・オブ・オマーン区間2勝&総合優勝と注目を集めた。

十分にまだまだ成績が出せる中での、イスラエル・サイクリングアカデミーへの移籍。これは「降格」ではなく、ジロ出場を確定させた同チームが「強化」の為に呼び寄せたのだということは明白だった。

しかし、そんな期待に反して、エースとして出場したジロ・ディタリアでは全く活躍することができなかった。エースナンバーを切られなかったプラサの方がよっぽど調子の良いところを見せていた。

 

悔しい思いとプレッシャーに見舞われていたであろうヘルマンスが、このオーストリアの地で栄光を掴めたのは非常に嬉しかった。

1クラスとはいえ、これだけの面子が揃っている中でのこの成績は、チームとしても十分に大きなものである。

なお、バーレーンと同じくらい濃い面子を揃えてきていたディメンションデータは全く活躍せず。こういうところで稼がないと・・・今年はツール・ド・ランカウイでも勝ててないし・・・アスタナもバーレーンもすでに今年21勝を記録している中で、ディメンションデータはまだ5勝である。やばい。(なおチームEFは4勝)

 

 

 

ツール・ド・フランス(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス

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詳細なレビューはこっちの記事でやっているので参考までに。

suzutamaki.hatenablog.com

記事の中でも語っているが、今回のツールはここ数年の中ではとくに面白いものだったと思う。少なくとも総合争いは。(スプリンター対決はアルプスでの大量リタイアの為に終盤、面白くなくなってしまったのは否めない)

その要因はゲラント・トーマスが首位を守り続けたことで、「何が起こるかわからない」というハラハラドキドキな思いを感じられたことか。それはライバルたちにとっても同じようで、フルームが首位のときよりもチャンスがあると感じて繰り返し攻撃的な動きが繰り広げられた。言ってしまえば、「ブエルタのような展開」が巻き起こったのだ。

そして、トーマスの感動的な勝利のガッツポーズ。抑圧してきた感情を爆発させたかのようなこの「タイムトライアルでのガッツポーズ」は今年のガッツポーズ選手権優勝候補の1つだと思われる。

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あとは個人的に感動的だったのはデゲンコルブの勝利。大きな勝利としては3年ぶり。ミラノ~サンレモ&パリ~ルーベを制したあの伝説の年の翌年に大事故に巻き込まれ、以来、最盛期の力を発揮できずにいた彼が、今年、この「ミニ・パリ~ルーベ」ステージとも言える第9ステージで勝利した。そのときのこの、歓喜の表情。 

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フルームも好きなんだけれど、やっぱりこういう、感情の爆発を見られる瞬間こそが、ロードレースを見ていて良かったなと感じる瞬間である。

 

 

 

ツール・ド・ワロニー(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ベルギー 

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その名の通り「ワロン」地方。すなわち、ベルギー南部のフランス語圏、「フレッシュ・ワロンヌ」などのアルデンヌ・クラシックの舞台となる丘陵地帯を舞台とする。

細い道や短くも急勾配な坂が用意され、過去の総合優勝者もファンアフェルマートやディラン・トゥーンスなどのパンチャーが名を連ねる。とはいえ、比較的スプリントで決まるステージも多いため、メールスマンやテルプストラのような(比較的登りもいける)スプリンター・クラシックスペシャリストが勝つことも多い。

 

今大会はどうか。ゴール前3kmに小さな丘が用意された第2ステージで、絞り込まれた集団の中でのスプリントを制したウェレンスがまずは総合首位に立つ。4年ぶりの出場で、過去最高総合順位は8位の彼だが、年々パンチャーとしての力量を増してきている彼であれば、そのまま総合優勝する可能性は十分に高く、ほぼ決まったと言っても良いだろう。そんな風に、思われた。

が、そこはワロニー。甘くはない。第3ステージでエイキングを逃すものの集団の中で先頭を取り2位、そして第4ステージではしっかりと勝利したテレネット・フィデア・ライオンスのクインテン・ヘルマンスがウェレンスを逆転して3秒差で首位に立った。

しかし、ウェレンス、そしてロット・スーダルもまた、簡単に総合優勝を奪われるタマではない。なんと、最終ステージの中間スプリントポイントのボーナスタイム3秒を獲得することに成功。こうして、ヘルマンスとウェレンスが「同タイム首位」に立つこととなった。

 

タイムトライアルの存在しないステージレースにおける同タイム時の順位の付け方は、微妙にレースごとにルールが違う可能性があるが、おそらくは、各ステージの順位を合計してより小さな数字を出した方が上位とされるはずだ。

そうして見てみると、

 

ウェレンス:19位ー1位ー8位ー22位 合計50位

ヘルマンス:78位ー15位ー2位ー1位 合計96位

 

ということで、このまま両名のタイム差がつかない形で最終ステージが終了したときに、ボーナスタイムもなければウェレンスが勝つことになる。

しかし、問題はヘルマンスのスプリントである。第3、4ステージは誰よりも強いスプリントを見せたヘルマンス。なんとしてでもこれを抑えなければならない。

そうして迎えた最終日最終ストレート。集団スプリントに挑むヘルマンス。

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(残り1kmから再生。[黄緑でなく]黄色いジャージがヘルマンス)

 

向かって右側から番手を上げ、前を塞がれながらもなんとか左手に進路を変えて、少しでも順位を上げようとするヘルマンス。

勝てなくてもいい。3位以上に入れば、ボーナスタイムで総合優勝が決まる・・!

と思っていたところで、向かって左から一気にまくりあげてくるロット・スーダルの選手。これは、もちろんウェレンスではない。ウェレンスにそこまでピュアスプリントが得意なわけではない。これは・・・チームメートのデブッシェール! ウェレンスの総合首位を守るべく、そのボーナスタイムを奪うべく、最高の追い上げでそのまま勝利を掴んでしまった!

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今年22歳の若きクイックステップのスプリンター・ホッジも惜しかったが、7歳年上のベテランライダーにはギリギリで敵わなかった。ヘルマンスもさすがの伸びを見せたが、最後の最後で、昨年ジロでも健闘していたアフリカンスプリンター・ギボンズに差されてしまった。

これで4位。ボーナスタイムをあと一歩で得られなかったヘルマンスは、残念ながら総合首位には届かなかった。

しかし、十分過ぎる結果だ。ステージ1勝に総合2位。もちろん新人賞に、ポイント賞も獲得した。

実はこの選手、というかこのテレネットというチーム自体、本業はロードレースではなく、シクロクロスである。ヘルマンス自体も、3年前のシクロクロスヨーロッパ大陸選手権U23部門王者であり、2年前のU23世界選手権銅メダリストではあるが、ロードレース自体はまだまだ経験は多くない。その中で、これだけの成果を出したのだ。

同じような選手として、今年ストラーデ・ビアンケ3位という驚異的な成績を叩き出し、現在進行形のポストノルド・デンマークルントでも大活躍中のワウト・ファンアールト(フェランダース・ウィレムスクレラン)がいる。彼も現シクロクロス世界王者である。

シクロクロス選手がロードレースで活躍するのは昔からだが、このファンアールト、そしてヘルマンスといった選手は、その中でも今、注目すべき選手だと言えるだろう。

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まだまだ若さの残る顔立ちのヘルマンス。だがその中に秘めた可能性は無限大だ。

  

 

ツール・ド・フランス2018 総括

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初日から総合優勝候補たちが落車に巻き込まれ、それが連日のように続いた。第2週のアルプス3連戦では、多くのトップスプリンターたちが大会を去った。日程の3分の2を終えた時点で、リタイア者の数は、「マイヨ・ジョーヌの呪い」に見舞われた3年前の大会に匹敵するものとなった。

そんな、混乱に満ち、批判の声も多く挙がることとなった今年のツール・ド・フランスだったが、それでも、今年のツールは例年に比べて「面白い」と言えるものとなった。

 

その立役者は間違いなくこの男。これまで、グランツールの表彰台はおろか、総合成績で10番以内にすら入ったことのない男だ。

それは彼に実力がなかったからではない。クリス・フルームという、稀代のグランツール王者の存在があったからだ。そして、幾度となく彼の身に降りかかる不運の数々の所為だった。

しかしそんな、様々な状況・困難を乗り越えて、男は頂点を掴んだ。抑え込み続けてきた感情を爆発させて、彼は勝利の味を強く強く噛み締めた。

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そしてまた、倒すべき敵が鉄壁・完璧のクリス・フルームではないという事実が、ライバルたちの動きも活発化させた。

最終第3週のピレネー決戦における、トム・デュムラン、プリモシュ・ログリッチェらの攻撃的な姿勢は近年のツールにはあまり見られなかったものかもしれない。

そういった要素も含めて今大会のツールは実に「面白かっ」た。もちろん、まだまだ解決しなければならない課題はあるだろう。スプリンター対決がほぼ台無しになってしまった事実は揺るぎない痛手でもある。

それでも、今大会には、観る側にとってのスペクタルは数多くあった。成功だったと結論づけることはできるだろう。

 

今回は、そんなツール・ド・フランス第105回大会を、各チームに対する簡単なプレビュウという形で振り返っていきたいと思う。

なお、掲載順は総合順位順(各チームの中で最も総合順位の高い選手で比較)。★の数は「戦前の期待に対しての結果の満足度」である。あくまでも目安であり、また主観的なものであるため、悪しからず。

 

 

 

チーム・スカイ ★★★

ゲラント・トーマス 総合優勝

クリストファー・フルーム 総合3位

エガンアルリー・ベルナル 総合15位 

ゲラント・トーマス 区間2勝(第11・12ステージ)

イギリス人初のマイヨ・ジョーヌ輩出を目指すチームに、初期メンバーの1人として選ばれた。2008年・2012年のオリンピックで、共にトラック競技での金メダルを獲得した。トラック世界選手権でも計3回、頂点に立った。

ウィギンスやフルームといった、偉大なるツール王者の最も信頼するアシストの1人として、彼らのツール総合優勝を支え続けてきた。2015年には一時総合4位にまで登りつめていたもののの、そのときも終盤の山岳で崩れ落ちていった。チームの最優先はあくまでも、フルームの総合優勝だったのだ。

2016年にはパリ~ニースで総合優勝。2017年には総合エースへの野望を明らかにし、ミケル・ランダとのダブルエース体制でジロ・ディタリアにも挑んだ。しかし、悔しい落車リタイア。続くツールでも初日の個人TTでフルームを打ち倒してのマイヨ・ジョーヌを手に入れるが、同じく落車によって大会を去った。

2017年の彼は間違いなく、彼史上最高のコンディションだった。しかし、運命の女神は2度、彼を絶望に叩き落した・・・それでも、彼は諦めなかった。再びエースとして挑む気持ちをもって戻ってきた。フルーム不在のドーフィネできっちりと結果を出し、そしてツール本戦の難関アルプスで2勝。全世界に、自らが新たなエース候補であることを証明してみせた。

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それでも、最後まで不安は誤魔化せなかったに違いない。何しろ、彼にとっては未知の世界となる、マイヨ・ジョーヌを着てのツール3週目である。ライバルたちもまた、彼がどこかで崩れるに違いないという確信を抱いて、執拗な攻撃を繰り出してきた。

それでも、彼は闘い続けた。冷静に、逸り過ぎず、かつ保守的になり過ぎないように。確実に掴めるチャンスは着実に掴み続けて。その完璧なまでの走りは、11年間チームメートであり続けた王者の存在にも支えられていた。

そうして、不安と重圧と緊張との闘いの果てに、彼は栄光を掴み取った。総合優勝争いの最終日であるタイムトライアルのゴールゲートを潜り抜けた瞬間に、それまで押さえつけていた全ての感情を吐き出した。

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この瞬間まで、彼は自分がいる場所を真実のものとして認識できていなかったかもしれない。しかし、最後まで冷静に積み上げてきたピースがこの瞬間に完成を迎え、彼はようやく、歓喜の中に身をおくことができるようになった。

おめでとう。イギリス人として史上3人目のマイヨ・ジョーヌ。そして、ウェールズ人としては初の。

おめでとう、トーマス。

 

そしてもう1人、今年のツールで大きな飛躍を見せた男がいる。

それが、エガンアルリー・ベルナル。昨年ツール・ド・ラヴニールを総合優勝し、大きな期待をもってスカイ入りを果たした彼は、ツール・ド・ロマンディ総合2位、そしてツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝と、期待以上の成績を叩き出し続けてきた。

そんな中での、まさかのツール・ド・フランス出場。あまりにも早すぎる、ハードなスケジュール過ぎるとの批判もあった。また、フルームにとっての最大のライバルになりうるとか、表彰台の可能性すら囁かれていた。

結果としては、石畳の第9ステージでの、他チームのチームカーとのアクシデントによる大幅なタイムロスもあり、総合優勝争い・新人賞争いからは決定的な脱落を喫した。

そのことが、結果として良かったのかもしれない。初めてのツールで、否応なく期待されてしまう新人賞争いからも逃れられたことで、彼は彼なりのペースで力を発揮することができた。

そして、その結果として、今大会、最も最後まで残ったスカイのアシストとなったのが彼だった。アルプスで、ピレネーで、カストロビエホやクフィアトコフスキが仕事を終えた後に、ダブルエースを背負う重責を担わされ、そしてその任務をきっちりとこなしきった。彼がいなければ、今年のスカイは意外なくらいあっさりと、崩壊していたかもしれない。ベルナルは今年のスカイの勝利の大きな鍵となったのだ。

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彼の実力ははっきりと証明された。次なる活躍に期待しよう。

来年にはどこかのグランツールを、エースで走る彼の姿が見てみたい。

 

 

チーム・サンウェブ ★

トム・デュムラン 総合2位

トム・デュムラン 区間1勝(第20ステージ) 

2015年ブエルタでの覚醒以来、全オランダ人から大きな期待を寄せられ続けてきた。しかし彼は、自らに降りかかる余計なプレッシャーを上手く躱す術に長けていたのかもしれない。翌2016年はオリンピックもあり、ジロとツールに出場はしたものの、いずれも総合優勝は狙わないことを明言した。2017年にはまずジロを制覇。すわツールかと期待された2018年もまた、まずはジロから乗り込んでいった。

そのジロで実力の高さを再度見せつけての総合2位。そして、彼はツールへの挑戦を決めた。総合は狙うけれども、あくまでも未来の挑戦に向けた腕試しのようなもので、エースナンバーもスプリンターのマシューズに譲るよ・・・といった姿勢だった。だからチームも、彼のための万全な体制を整えることはしなかった。

 

しかし、これらもまた、彼なりの、プレッシャーを躱すための方法だったのかもしれない。結果として彼は、ジロからの連戦という同じハンデを背負いながら、万全ではないチームの体制の中で、クリス・フルームという偉大なるグランツールチャンピオンを打ち負かすことができたのだ。しかも、常に積極的な攻撃を仕掛け続けてきた中で。最後は自らの得意分野できっちりと結果を残して。

その意味で、実は今大会最強の男は、この男だったのかもしれない。

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そして、そんな彼を山岳で最も支え続けたのが、シモン・ゲシュケであった。ツール山岳での勝利経験もあるとはいえ、基本的に彼はピュアクライマーというよりも、丘陵などに強いパンチャータイプである。そんな彼が、昨年のジロに続き、献身的にデュムランを支えてくれた。

まだ23歳のセーレンクラーウ・アナスンも、序盤のマイヨ・ブランだけでなく、アルプスでは前待ちからのデュムラン支援、そしてフレンチバスクでの個人TTでの、ユンゲルスすらも破る走りなど・・・これまでのパンチャー/ルーラータイプといった印象から、一気に将来のグランツールライダーとしての可能性を証明して見せた。

 

それでもやはり、チームとしての体制が万全でなかったことが悔やまれる。ここに、ケルデルマンやオーメンが加わった最強の「チーム・デュムラン」が用意できれば、来年こそはツールの頂点を奪い取れるような気がする。マシューズの扱いは難しいところだけれど・・・。

結果としての総合2位は、★5つ分に十分相当するものの、チーム体制の不備とマシューズの早期リタイアから★4に抑えておく。

また、アルントにはもっと、スプリントを頑張ってほしかったところ。最近は後輩の方が良い成績を出している始末である。

 

 

チーム・ロットNLユンボ ★

プリモシュ・ログリッチェ 総合4位

スティーヴン・クラウスヴァイク 総合5位

ディラン・フルーネヴェーヘン 区間2勝(第7・8ステージ) 

プリモシュ・ログリッチェ 区間1勝(第19ステージ)

おそらくは今大会最も「飛躍」したチーム。

まずはフルーネヴェーヘン。昨年もシャンゼリゼで勝利し、トップスプリンターたちの仲間入りを果たした彼だが、今回の2勝により、「世界最強」の一角であることを明確にした。

実際、スプリンターたちが残っていた1週目においては、ライバルの落車やアップダウンなど特殊な状況下で2勝したサガンや、自らの力というよりもアシストの力に支えられた部分も大きいガビリアと比べても、純粋に単独のスプリント力として頭一つ抜けていたのはこのフルーネヴェーヘンだったように思う。

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後半においては勿論、総合4位のログリッチェの活躍が目覚ましいものとなった。彼を支えた「ダブルエース」の一角、総合5位クラウスヴァイクの存在も欠かせない。スカイと並んでダブルエースを見事なまでに機能させていた。

正直、この2人を舐めていた。戦前は、健闘はするものの、どちらかがTOP10に入ればいい方だろう、と考えていた。とくにグランツールでの実績で言えば、ログリッチェはクラウスヴァイクに敵わないだろう、とも。

しかし、ログリッチェは見事にやり遂げた。未知の3週目総合争いを積極的な走りを見せながら乗り切った。もはや、堂々としたグランツールライダーである。ただ、さすがに最後の最後で体力が尽きてしまったか。今まではデュムランに匹敵する高い安定力を見せていた個人TTで、まさかの大崩れ。せっかくの総合表彰台を失ってしまった。

だが、結果以上に魅力的だったのが、その攻撃的な走り。彼のような存在がいることで、レースはずっとぐっと面白くなる。これからも彼のその走りに期待だ。

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AG2Rラモンディアル ★★☆☆

ピエール・ラトゥール 新人賞

ロマン・バルデ 総合6位

ピエール・ラトゥール 総合13位

例年以上に気合を入れた準備を進めてきた。冬からレーススケジュールを変えてまでも重ねてきた石畳対策。ツール直前には、シエラネバダにて、ラトゥール、ヴュイエルモ、ドモンといった重要な山岳アシストを引き連れての合宿をこなした。

なのに、1週目からそのドモンやヴュイエルモが落車で大会を去り、自らも第9ステージでは多くのトラブルに見舞われた。トラブルの割に大きくタイムを失うことがなかったのはもしかしたら対策の成果だったかもしれないが、得意のはずの終盤の山岳ではまったく力を発揮することができずずるずると崩れ落ちていった。

収穫はあった。ラトゥールの新人賞。しかも終盤の山岳では、この新人賞ジャージを着ながらの逃げやバルデのためのアシストなど活躍を続けてきた。

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それだけの献身がありながら、結果を出せなかったバルデ。来年は復活できるか?

 

 

モビスター・チーム ★★☆☆☆

チーム総合優勝

ミケル・ランダ 総合7位

ナイロ・キンタナ 総合10位

アレハンドロ・バルベルデ 総合14位

ナイロ・キンタナ 区間1勝(第17ステージ)

まあ、ある意味では、予想通りの結果だったのだとは思う。

キンタナは、もうダメなのだろうか・・・? 第17ステージでは、久々の強さを見せつけてくれた。直前のツール・ド・スイスでも見せてくれた、ハマったときの他の追随を全く許さない力強いクライム。 勝利を掴み取ったとき、キンタナの表情は安堵そのものであった。

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いや、安堵してる場合ではない。第19ステージでは再び遅れる姿を見せ、結局はもう、3週間を走り切れる力がないのでは? あまりにも早すぎた才能の発露の結果、走り方も30代中盤以降のそれになってしまった感がある。

色々噛み合っていないのは事実だろう。個人的に、彼はスカイにこそ来るべき存在だと思う。エースではないけれど、エースのような走りをできる集団の集まりの中で、アシストや、ときにステージ優勝や、場合によってはエースの代わりに総合優勝を狙える、そんな存在になるべきだし、彼がそういう存在であることを許してくれる場所はもしかしたらスカイのほかにはないのかもしれない。

で、モビスターはもう、ランダとソレルの2枚看板で戦っていくべきだ。

 

 

UAEチーム・エミレーツ ★★★☆☆

ダニエル・マーティン スーパー敢闘賞

ダニエル・マーティン 総合8位

ダニエル・マーティン 区間1勝(第6ステージ)

アレクサンドル・クリストフ 区間1勝(第21ステージ)

マーティンの調子は間違いなく良かったのだと思う。区間勝利だけでなく、山岳でも、常に積極的な姿勢を崩すことがなかった。ここに彼を支えるチームメートがいれば・・・という思いは、まあ彼に常につきまとう問題なので、もはやそこまで気にする必要はないのかもしれない。

クリストフも、数多くのライバルたちが大会を去り、サガンも怪我をして力を発揮できなかった中とはいえ、人生初のシャンゼリゼを獲得するという大きな成果を残せた。キッテルやガビリア、フルーネヴェーヘンなどがいなければ彼が最強なんだということを示してみせた。

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だから、悪くない結果ではあったものの、イマイチ目立つところの多くないチームでもあった。いや、創設2年目でツール区間2勝は十分凄いんだけれど、もっとチームとしてのまとまりのある強さを見せてほしかった。

アタプマも今年も頑張ったけど結果を出せず。そろそろツール山岳で勝つ彼の姿を見たいところ。

 

 

カチューシャ・アルペシン ★☆☆☆☆

イルヌール・ザッカリン 総合9位

最初の頃は前向きなコメントと共にチームメートとの関係性の良さをアピールし続けてきた大人のキッテルも、いよいよ我慢ならなくなってきたのかバスの中で絶叫。そしてアルプスにてタイムアウト。屈辱。チームからも「エゴイスト」なんて言葉が出てきて、近年稀に見る大崩壊である。

キッテルだけが悪いわけではない。彼を助けるべきツァベルもスプリントに全然絡めず、そもそもアシストが彼だけで、さらに言えば今年のチームの勝利もキッテルの2勝がほぼ唯一と、チーム自体が全く機能できていないシーズンと言える。来年はトニー・マルティンの離脱もほぼ決まっており、キッテルはどうするのだろうか。

最後の希望はザッカリンとそれを支えるポリッツやボズウェルが、終盤でようやく機能する働きを見せたこと。そしてザッカリンが個人TTでそれなりの成績を出したこと。今回のツールは★1個分の評価しかできないけれど、ブエルタでのリベンジは期待している。

 

 

クイックステップ・フロアーズ ★

ジュリアン・アラフィリップ 山岳賞

ボブ・ユンゲルス 総合11位

フェルナンド・ガビリア 区間2勝(第1・4ステージ)

ジュリアン・アラフィリップ 区間2勝(第10・16ステージ)

若手最強スプリンターが下馬評通りの活躍を・・・というわけにはいかなかったのが正直なところ。たしかに1週目は最強スプリンターの一角ではあったものの、どんな困難な山も乗り越え、マリア・チクラミーノを手に入れた昨年ほどの強さは見られずにアルプスで沈んだ。

真っ向からサガンに対抗できる存在と期待していたが、少なくとも今年は良い年ではなかったようだ。ティレーノ~アドリアティコでも勝てなかったこともあり。

 

むしろ、アリエルマクシミリアーノ・リチェセの強すぎるスプリントアシスト力に脱帽。他のエーススプリンターを圧倒する先行スプリントで最高の位置からガビリアを発射する力や、集団の中からガビリアを引き上げるテクニックなど、実に理想的なスプリントアシストであってくれた。
それだけに、ガビリアのリタイア後はエースとして期待していたが、そううまくはいかなかった。やっぱりエースとアシストは全然違うのか。

 

後半戦はアラフィリップの爆発。ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝など、その実力は既にお墨付きではあったものの、まさかあんなにも、アルプスやピレネーの山岳で連日逃げに乗れるほどの純粋な登坂力を持っているとは思ってもみなかった。

彼もまた、今大会で大きく飛躍した選手の1人だ。

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残念だったのは、総合で期待されていたユンゲルスの不調。まあ、まだ若い選手だ。あと2年くらいかけて、じっくりと実力を高めていけばいい。

 

 

アスタナ・プロチーム ★★★☆☆

ヤコブ・フルサング 総合12位

タネル・カンゲルト 総合16位

オマール・フライレ 区間1勝(第14ステージ)

マウヌス・コルトニールスン 区間1勝(第15ステージ)

ステージ2勝は十分な成果であると言える一方、フルサングは正直今年、もっといけるものだと思っていた。直前のツール・ド・スイスも総合2位と、悪くはなかったのに。

しかし、ツール本戦はもう全く良いところなくずるずると遅れ続け・・・このままでは来年、ツールのエースの座はロペスに奪われてしまうかもしれない。

逆にカンゲルトの終盤の積極的な動きは注目に値する。とくに、厳しすぎる第17ステージで長い長い単独逃げを見せたのが凄い。昨年のジロでも途中まで総合TOP10以内を維持し、調子の良かった彼だが、中央分離帯のポールに衝突する不運な落車で残りのシーズンを棒に振ってしまった。

来年以降の契約は現時点では不明だが、アルを失ったアスタナにとって、ロペスと並ぶ総合エース候補として重要な存在であるはずだ。フルサングにとってそれが厳しいのであれば、なおさら。

 

 

フォルテュネオ・サムシック ★★☆☆☆

ワレン・バルギル 総合17位

バルギル、頑張ったは頑張ったけれど、完全にアラフィリップにしてやられる。そしてチームも、完全にバルギル頼みだったために何も為すことはできず。

このまま「ツールに全て照準合わせてるんだよ」と言いながらツールで結果を出さなければ、コフィディスにおけるブアニのような存在になりかねない。貰ってる年俸は決して安くはないんだろうし。いや、ブアニならば小さなレースでの勝利をしっかり取ってくるだけまだマシか?

頑張れバルギル。来年は、プロコンチネンタルチームのエースとして、ツール以外の小さいけれど重要なレースでの勝利に期待している。

 

 

バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム ★☆☆☆☆

ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ 総合18位

ニバリは結局、調子が良かったのかどうかわからないうちに退場となった。本来はエースを担ってもよいはずのヨンや、最近調子を上げていたゴルカも、総合争いからも早々に脱落し、かといって逃げに乗って勝てるわけでもなく・・・。コルブレッリが序盤でサガンに喰らいつく走りを見せ、アルプスでも生き残ったために期待していたものの、終盤では一気に目立たなくなってしまった。

チーム自体は1クラスやHCクラスのレースでの勝利はそれなりに重ねており、チームとしての連携も悪くはない。個人的には好きなチームだ。しかし、昨年に続き2年連続、結果と言えるようなものがないツールを過ごしたとなると、先行きが不安になってくるのは致し方ない。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ ★★★★☆

ペテル・サガン ポイント賞

ラファウ・マイカ 総合19位

ペテル・サガン 区間3勝(第2・5・13ステージ)

ライバルたちの多くがアルプスでツールを去る中、耐え抜ける実力こそがマイヨ・ヴェールに相応しい。第17ステージでは彼にしては珍しい下りでの落車によって、眠れない日も経験し、第19ステージのピレネー難関山脈ステージではタイムアウトの危機にも瀕する。

しかし、痛みを乗り越えて、彼は最後まで走り切った。昨年は悔しい失格処分を受けて連続獲得記録も途絶えてしまって、もはや彼には、グリーンジャージへの執着はなくなってしまっても不思議ではなかったが・・・やはりツール特別賞ジャージというのは、3年連続世界チャンピオンの彼にとっても、大きな価値をもつ栄誉であるようだ。

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ステージ3勝もついてきて、チームとしてはジロ・ディタリアに次ぐ成功と言ってもいい結果ではある。ただ1つ、マイカが総合争いに全く関われなかったこと以外は。

 

 

BMCレーシングチーム ★★☆☆☆

ダミアーノ・カルーゾ 総合20位

チームTT(第3ステージ) 優勝

リッチー・ポートがリタイアしてしまった時点で、チームとしては為すべきことが一気になくなってしまった感がある。それでも、その第9ステージに続き、アルプスの初日でも果敢に逃げに乗って、マイヨ・ジョーヌ維持に成功したファンアフェルマートの努力は讃えられるべきものである。

しかしポートも去り、おそらくはTJも去り、カルーゾも未だ行き先が未定となると、来年のこのチームは誰をエースにやっていくんだろうか。ファンアフェルマートはチームに残ることを既に宣言している。ある意味で来年は、このファンアフェルマートの為のチームとなるかもしれない。

 

 

ワンティ・グループゴベール ★☆☆☆☆ 

パスクアロンは頑張った。昨年は一度もTOP10に入れなかった彼が、今年はそれに何度か入ることができ、トップシーンでも張り合える実力があることをきっちりと示した。また、チーム全体の、逃げに対する積極的な姿勢は、ツールに選ばれたプロコンチネンタルチームとしては適切な動き方だったとは思う。

しかし、肝心のギョーム・マルタンが昨年に引き続きTOP20に入れなかったのは痛い。このチームがワイルドカードで選ばれ続けたのは、このマルタンの存在ゆえである。多分。そのマルタンがこの結果では、来年以降、同じようにツール出場権を得られるかというと、微妙なところではある。

 

 

ミッチェルトン・スコット ★★☆☆☆

カレブ・ユワンのツール初出場を犠牲にして作り上げたアダム・イェーツのための体制・・・だったはずだが、まさかのアダム惨敗。ステージ優勝に切り替えるも、第11ステージのニエベ、第16ステージのアダムともに、惜しい形での敗北となってしまった。チームTTも、前日にインピーとダーブリッジが落車していなければもしかして、と思うところがなくもない。

どんなに過程があっても結果は結果。収穫のない、悔しい3週間となった。

 

 

トレック・セガフレード ★★★☆☆

ジョン・デゲンコルブ 区間1勝(第9ステージ)

チームとしての目的・・・すなわち、バウケ・モレマによる総合上位、という目的はまったく実現できなかった。コンタドールが引退し、晴れて唯一のエースとなったモレマにとって、今年はチャンスだったのだ。2年前はモン・ヴァントゥーでフルームとポートについていけた唯一の男として、途中まではかなり良い調子で走れていたのだ。昨年のジロも悪くなく、今年こそは・・・というなかで、総合26位。惨敗だった。逃げが2年連続の勝利に結びつくこともなかった。

来年はポートが移籍してくるという話。やはりツールのエースの座は奪われることだろう。彼はもう、ツールのエースとして走る可能性はないのかもしれない。

となれば、今度は逆にアルデンヌ系ワンデーに集中してしまうのが良いだろう。昨日のクラシカ・サンセバスチャンも強かった。山岳アタッカーとして、それこそダニエル・マーティンのような役回りで、常にチャンスを狙って積極的に攻撃をしかける伏兵としての活躍を期待している。

モレマの総合成績という第一の目的は失敗に終わったトレックだったが、その失敗による悔しさを全て吹き飛ばしてくれるくらいの結果となったのが、デゲンコルブによる勝利。ピュアスプリントではやはり一歩足りない。しかし、パリ~ルーベ制覇経験者はやはり違った。史上最もパリ~ルーベらしい石畳ステージで、昨年ルーベ覇者を下しての圧倒的な勝利。スプリントの強さも評判高いファンアフェルマートを、つき切れさせるほどの強さだった。

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3年前のパリ~ルーベ、そしてブエルタでの勝利以来の大きな勝利。今大会、トーマス勝利と並んで、ドラマティックな勝利であった。

 

 

チームEFエデュケーションファースト ★☆☆☆☆

クラドックの感動的な走りは話題になったチームEFだが、意地の悪い見方をすれば、それ以外に話題のなかったチーム。ツアー・オブ・カリフォルニア総合3位のダニエルフェリペ・マルティネスには期待していたが、初のツールは目覚ましい結果とは言えなかった。それでも22歳で総合36位はまあ、悪くはないのだが・・・。

ツールにはよく出るが活躍できる機会の少ないファンマルケにとって、今年の石畳はまたとないチャンスだったわけだが、全く目立つ瞬間もなく終了。

 

 

ディレクトエネルジー ★☆☆☆☆

カルメジャーヌは山岳での相変わらずの強さを見せてくれてはいたのがイマイチ噛み合わず。今年新加入のタラマエもしっかりと実力を示してくれた。だが、このチームに求められているのは単なるプロコンチネンタルチームのそれではない。昨年も勝ってしまっているので、やはり今年も勝利が求められてしまった。少なくともそれに近い何かは。

その意味で、コカールの存在は大きかったのだと思う。ブダにその代役は務まりきらない。来年はワールドツアークラスへの昇格を目指しているという報道もあったが、現時点の戦力でそれは正直、厳しいのでは? スプリンターの補強が求められる。

 

 

グルパマFDJ ★★☆☆☆

ルノー・デマール 区間1勝(第18ステージ)

昨年と違ってチームのメンバーがしっかりと残ってくれた。デマール自体も山岳を執念で乗り切った。おかげでステージ1勝という成果は残せた。もとよりピノはいないし、当初の目的は達成されたと言っても、言い過ぎではない、だろう。

が、本当にそれでいいのか? 現状、デマールはトップスプリンターたちの中では良く見ても5~6番手という位置。正直、もっと上にいてもらいたい選手である。そんな期待も込めて、★は2つで。

 

 

コフィディス・ソリュシオンクレディ ★☆☆☆☆

ナセル・ブアニは毎年のツールで話題を呼んでくれる。たとえ、出場しないという形であっても。

今回、ブアニに代わるエースとして出場したラポートは、初日で5位、第18ステージでは2位と健闘はしてくれた。が、結局勝てない、という点ではブアニの代わりを見事に勤め上げてくれたといえる。

調子の良かったはずのナバーロも、ヘスス・エラダと共に仲良く勝てない山岳エスケープを敢行する。

すなわち、いつものコフィディスだったというわけである。

 

 

ディメンションデータ ★☆☆☆☆

カヴェンディッシュが勝てないのはまあ、仕方ない。今年は特に調子が良くなかったのだし。しかし彼以外にも結構良いアタッカーの面子は揃っていた中で、1勝もできなかったのは正直、残念。ヴェルモト的にも「俺なんでここにいるの・・・?」という思いは隠し切れなかっただろう。

来年はヴァルグレン獲得と沸き立っている。が、彼もまたアタッカー的な役回りなので、結局は今年とあまり変わらないと思う。カヴェンディッシュの代わりとなる強力なスプリンターを用意するか、あるいは総合エースを育てるか獲得するか。その意味で、クドゥスの急成長には期待したい。

 

 

ロット・スーダル ★☆☆☆☆

存在感0。いや、一瞬だけグライペルがステージ上位に入った瞬間もあったけれど、本当それだけだった。

せめて、ドーフィネで成功したチームTT用のジェルが使えていればもしかして、というのはあったかもしれない。しかし使用が禁止された今回のTTTの結果を鑑みるに、あのジェルは本当、効果があったんだなと感じ入る。

【予告】【ツイキャス】ツール・ド・フランス2018 2週目振り返り放送

先日7月16日(月)の夜に

思いつきで行ったツイキャス「1週目振り返り放送」。

 

個人的に面白かったので、

7月23日(月)に「2週目振り返り放送」を行いたいと思います。

 

今のところは22:00開始で1時間ほどの予定。

ただし、仕事の都合で開始が遅れる可能性や、

場合によっては中止になる可能性もあります。

 

当日、開始のタイミングで以下のTwitterにて告知します。

珠洲 環 (@SuzuTamaki) | Twitter

開始時間の遅れ・中止なども上記Twitterで報告します。

 

当日、その時間とくにやることもなく暇~って方、

もしよろしければ視聴ください。

コメントも頂けると嬉しいです。

ガビリアとフルーネヴェーヘン、真の最強スプリンターはどっち?

今年のツール・ド・フランスも第1週目を終えた。

初日から落車やトラブルが頻発し、総合争いの面々もタイムを失う波乱の展開。

しかし、コース自体は近年稀に見る平坦中心の構成。スプリンターたちにとっては大きなチャンスとなる平坦ステージが全部で5つ。そのうち、大きなトラブルなくある程度の役者がそろった状態で集団スプリントが行われたのが、第1・第4・第7・第8ステージの4つだった。

その4つのステージで勝利を分け合ったのが、今年初出場・昨年ジロ4勝+ポイント賞のフェルナンド・ガビリア(コロンビア、クイックステップ・フロアーズ)と、昨年シャンゼリゼ覇者ディラン・フルーネヴェーヘン(オランダ、チーム・ロットNLユンボ)。それぞれ2勝ずつを挙げ、「最強スプリンター決定戦」は、現在のところ引き分けの状態で2週目を迎えることとなった。

 

実際に、ガビリアとフルーネヴェーヘン、どちらがより強いのか。

今回は上記4ステージを振り返りながら検証してみる。

 

 

 

過去の戦績

今大会の振り返りを行う前に、2人のこれまでの戦績を見てみたい。

まず、ガビリアは言わずと知れた、急成長中の若手最強スプリンターである。

1994年生まれで今年24歳。元々はトラックレースのオムニアム種目金メダリストでもあり、クイックステップにトレーニーとして参加していた2015年には、ツアー・オブ・ブリテンにてグライペルやボアッソンハーゲンなどの並み居る強豪を抑えての勝利を果たしている。

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クイックステップへの正式加入を決めた翌2016年には、ティレーノ~アドリアティコで同年代のライバルであるカレブ・ユワンを退け、パリ~トゥールではミラノ~サンレモ覇者アルノー・デマールを打ち倒した。WTクラスも含めた年間通算8勝は、プロとは思えない戦績である。

2017年には初めてのグランツールとなるジロ・ディタリアにも出場。同じ南米出身のマクシミリアーノ・リチェセのリードアウトを頼りに、手を付けられない強さを発揮して4勝。ポイント賞「マリア・チクラミーノ」も獲得する。

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今年は怪我にも悩まされ、思うように結果を出せない時期もあったが、5月のツアー・オブ・カリフォルニアではサガン、ユワン、キッテル、クリストフらを相手取ってステージ3勝という圧倒的な戦果を叩き出す。今大会で勝利したスプリンターは彼だけだ。

今年ツール初出場。しかし、初出場ながらも今大会最も勝利数を稼ぎだす可能性も十分にあると噂される、「現役最強」候補に早くも登りつめている。

 

 

一方のフルーネヴェーヘンは、ガビリアほどの派手な経歴は持ち合わせていない。

1993年生まれの25歳。現チームに移籍してきたのは2年前。エネコ・ツアーではブアニやサガンなど一流スプリンターたちを前にして1勝するも、その他の勝利は1クラスレースが中心であり、実力派認められていたものの、そこまで目立つことはなかった。

そんな彼の名を一躍有名なものにしたのが、昨年ツール・ド・フランスの最終ステージ、シャンゼリゼ・フィニッシュであった。誰もが早すぎると感じた、残り300mからの飛び出し。しかしそのスピードを緩めることはなく、猛追するグライペルを振り切っての、見事なパワースプリントであった。

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今年に入ってからも好調は止まらず、出場した6つのステージレース全てで勝利。合計11勝は、ワールドツアーチームのスプリンターの中では、ヴィヴィアーニに次ぐ勝利数であり、今期の勢いだけで言えば、すでにガビリアを凌駕している。

そんな彼が、今回のツール・ド・フランスで活躍しないわけがない。やはり彼も、実績は少なくとも今大会の「最強」候補なのだ。

 

 

それでは実際に、今大会の4つのステージで、ガビリアとフルーネヴェーヘンがどのように勝利していったのかを見ていこう。

 

 

 

第1ステージ

ラスト10kmで大規模な落車が発生し、リッチー・ポートやアダム・イェーツと共に、アルノー・デマールもまた、足止めを喰らってしまった。デマールは集団復帰を諦め、メイン集団はデマール抜きでの最強決定戦を行うことに。

チーム力において最強はクイックステップ。ラスト1kmの時点でアシストを5枚も残していた。

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Jspots公式ハイライト。ラスト1kmとなる4分10秒~から再生。

 

ボブ・ユンゲルス、ジルベール、ベルギーチャンピオンジャージのイヴ・ランパールトなどの強力なサポートの末、最後にアリエルマクシミリアーノ・リチェセの牽引に導かれて、ラスト200m。最高のタイミングでガビリアは放たれた。

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最高速度はサガンやキッテルの方が上だった。しかし、チームメートたちが作り上げた完璧な状態からのスプリントで、ガビリアは人生最初のツール・ド・フランスの1日を、勝利で終えることができた。

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第4ステージ

第1ステージと異なり、集団牽引に力を使い果たしてしまっていたクイックステップの面々は、ラスト1kmの段階になっても千々に乱れており、集団の前方に固まることはできずにいた。

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ラスト1kmの空撮映像。青丸で囲ったのがクイックステップの選手。一番前にいる二人が、ガビリアを引き連れるリチェセ。Jsportsより。

 

しかし、リチェセだけは、常にガビリアの前にいた。そして、ゴールスプリント直前では、集団の中から群衆をかき分け、ガビリアをしっかりと先頭にまで運び上げていった。

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ハイライト映像ではカットされているが、集団の中に埋もれていたガビリアを、リチェセがしっかりとコースを見つけて運んでいっている。

 

まさにリチェセは最強のアシストである。そのまま加速したリチェセは、やはりラスト200mまでガビリアを導き、そして無敵のスプリントが放たれた。

この日はグライペルの伸びもよかった。サガンも含め、写真判定にもつれ込んだ。しかし、それでもガビリアは勝つことができた。リチェセという、最強のアシストがいたから。

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第7ステージ

この日もまた、リチェセの強烈な牽引により発車することのできたガビリア。

ただしこの日は、ややリチェセが外れるのが早かった。ガビリアが最も得意とする「200m」ではなく、「250m」からの発車。

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それでも、サガン、クリストフ、デマールといった強豪を抑えることはできたガビリア。

しかし、「オランダ選手権の疲れ」からの回復ができつつあるというフルーネヴェーヘンが、このラスト250mで実力を発揮して見せた。クリストフを背後からまくり上げ、一気に加速した彼は、ガビリアに対し圧勝とも言える勝利を掴んだ。

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第8ステージ

第8ステージもまた、リチェセがガビリアのために集団から抜け出そうとスパートを仕掛ける。

しかし、ここで、抜け出したリチェセにガビリアがついていけないというアクシデント!

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結果、2人の間にサガンが入り込み、ガビリアはその後ろでグライペルとのやり合いを経て、最終的に降格の憂き目に遭った。

このタイミングでうまくリチェセの背中に乗れていれば、この日もガビリアの勝利だったかもしれない。

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最後、やはり「残り250m」でグライペルの背中から飛び出したフルーネヴェーヘンが、完全復調した最高のスプリントでもってライバルたちを打ち倒した。

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まとめ

ここまで振り返ってみて、結論めいたものを出すとすれば以下のような形だ。

  • リチェセ最強! 運び屋としても優秀で、今大会アシストの中では最もスプリント力の高い選手である。
  • ガビリアも残り200mから放たれたときの強さは圧倒的。今大会、サガングライペルたちよりも強いのは間違いない。ただしリチェセがいないと最適なポジションを取れない。
  • フルーネヴェーヘンも疲れを残していた序盤はともかく、中盤以降は無敵のスプリント力。また、アシストがほぼいない中、単独で好位置をキープできる強みもある。

 

現時点では、純粋な力量としては復調してきたフルーネヴェーヘンが、ガビリアを凌駕ているといっても良さそうだ。

リチェセさえ万全の状態であればガビリアにも勝機は十分あるが、逆にリチェセなしの状態では厳しい。

このままの状態で進めば、残り3つの平坦ステージ、すなわち第13・第18・第21(シャンゼリゼ)においても、フルーネヴェーヘンが最有力となりそうだ。

 

しかし、元々昨年のジロのガビリアは、単独で狭い隙間を縫って強烈なスプリントをする姿も見せていたりした。

今年はシーズン当初より「完璧」という状態ではこれていないガビリア。この3週間の間に調子を取り戻すことができれば、単独でもフルーネヴェーヘンに打ち勝つだけの走りを見せることは十分可能だろう。

 

 

ガビリアとフルーネヴェーヘン。

台頭してきた「新時代のスプリンター」のうち、今大会最強の名を手に入れるのはどちらか。

また、ここまで苦しい戦いを強いられ続けているキッテル、グライペルカヴェンディッシュなどは復活を果たすことができるのか。

 

3週間の戦いはまだまだ続く・・・。

 

 

2018年シーズン 6月主要レース振り返り

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4つの重要なツール前哨戦が繰り広げられた6月のサイクルロードレース

今年のツールの主役とも言うべき選手たちがそれぞれの舞台で活躍していくのを見ると、否が応でも気持ちが盛り上がっていくのがわかる。

また、6月最終週に行われる各国ナショナル選手権もまた熱い!

とくにイタリア選手権なんかもリアルタイムで見ていて非常に面白い展開(ヴィヴィアーニが!激坂を!登って喰らいついて勝った!)だったものの、泣く泣く割愛。全日本選手権のみ扱うことにしました。

 

また、今月の注目選手はまたコフィディスから。書いた当時はまだ出場が決まっていなかったけれど、しっかりと評価されて見事参加が決まったあの人。

ぜひ、勝利を掴んでほしいね。

 

 

 

 

 

ツール・ド・ルクセンブルク(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ルクセンブルク

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シュレク兄弟、ボブ・ユンゲルスを始め、小国ながらも才能ある選手をコンスタントに輩出し続けているルクセンブルクで行われるステージレース。昨年はルクセンブルク人ジャンピエール・ドラッカーとグレッグ・ファンアフェルマートのBMCレーシングチームが席巻したものの、今年はワールドツアーチームの出場はなし。

よって、ここ最近非常に調子がよく、スプリントも石畳もTTもこなせるコフィディスのラポートが他を圧倒してしまうのではないか、と思っていたのだが・・・細かなアップダウンと登りゴールが多く配置された今年のレイアウトは、ラポートにとってはやや厳しかったのかもしれない。

結果としてステージ2勝、総合優勝を成し遂げたのはワンティのパスカロン

スプリンターにしては軽量級のこの選手は、過去にも登りゴールでウリッシやコルブレッリ、ヴュイエルモなどを下して勝利を掴んでいる。

今までは1クラスの勝利ばかりだった彼だが、今回HCクラスでの勝利を複数獲得。今年のツール出場の候補となっており、今後の活躍にも期待である。

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昨年のコッパ・サバティーニで表彰台に立つパスカロン。 

 

 

 

ハンマー・リンブルフ(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:オランダ

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3度目の開催、そしてリンブルフとしても2度目の開催ということで、各チームとも、こなれてきたというか、ハンマーシリーズの戦い方を心得てきた、という印象。序盤から安易に逃げを許さず、毎周回スリリングなアタック合戦が見られるパターンも多くなってきた。

ロード以上にチームのタレント層の厚さが鍵となりそうなレースなので、今後もっと注目が集まり、各チームとも本気のメンバーを揃えてこれるようになってほしい。今回は層の厚かったクイックステップが、安定して上位に入り優勝を果たした。

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独走力の高いルーラー系が活躍しやすい競技だとも思うので、裏開催のドーフィネなどには出場しない、クラシックスペシャリストたちが軒並み出場するようになると面白いところ。 

 

 

 

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:フランス

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言わずと知れた、ツール・ド・フランス前哨戦。今年も、ツール本戦と同じ距離を走らせるチームTTや、短距離山岳ステージを用意するなど、本戦を意識したコースレイアウトとなった。

ツール本戦が例年より1週間、開催が後ろ倒しになったことにより、裏開催のツール・ド・スイスに出場するトップレーサーたちも非常に多く、それ故に見所は例年よりも少ないという意見もあったようだ。

しかし、そういうときこそ、寧ろ面白いレースが見られたりするものなのだ。

 

たとえば、今年ずっと不調だったダニエル・マーティンの、完全復活を宣言するような勝利。

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前日の2位で「復調してきたけれどやっぱりマーティンだな」という印象を覆すかのようなこの勝利は見ていてとても気持ちが良かった。

 

また、たとえばゲラント・トーマスの、今年契約最終年度であることを意識したかのような飛ぶようなアタック。今までの彼とはまた違ったスタイルのようにも感じられた。

そんなトーマスを黙々と牽引し続けた、タオ・ゲオゲガンハート。まだ若手、という印象が拭えなかった彼の、ツアー・オブ・カリフォルニアに続く「スカイ最強トレイン」としての覚醒の兆しを、我々はこのレースで目に焼き付けることができたのだ。

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そしてたとえば、ペリョ・ビルバオの、ジロ総合6位から引き続きとなる活躍に、アスタナの新エースとしての可能性を見出したりなど・・・

 

個人的にはロマン・バルデとAG2Rの走りの状態の良さに満足している。

相変わらずライバルを突き放す決定的なアタック力には欠けているものの、チームでしっかりとチャンスを作り、下りで後続を突き放す攻撃的な走りは健在。結局はその後の平坦で捕まえられてしまったものの、まだ今は調整段階。今年のツールは下りフィニッシュも多いため、バルデとしても狙ってくることだろう。

あとはラトゥールやドモン、ヴュイエルモといった山岳アシストたちの活躍と、今大会で言えばギャロパンやナーゼンやディリエといった平坦アシストたちの働きとが噛み合えば、今年のツールは非常に大きな可能性を持っていると言えるだろう。

 

 

 

ジロ・チクリスティコ・ディタリア(2.2U)

U23レース 開催国:イタリア

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ベイビー・ジロとも。しばらく開催がなかったが2017年に復活。

詳細は以下のリンクを参照のこと。

ジロ・デ・イタリアU23(ベビージロ2018)レースレポートまとめ - サイバナ

昨今、キンタナから始まりチャベス、ガビリア、そして昨年のベルナルなど、ひたすら若手のコロンビア人選手が活躍しているが、今回のベイビージロでもコロンビア人選手が大活躍!

台頭したのはやはり山岳。第4ステージ、登坂距離10km、平均勾配8%の難関山岳フィニッシュで、コロンビアナショナルチームとして出場したアレハンドロ・オソリオとダニエル・ムニョスが並んで手を繋ぎながらワンツーフィニッシュ。圧倒的な強さを見せつけた。

翌日の難関山岳ステージでも同じくコロンビア人のエイネル・ルビオが勝利。

しかし、このコロンビア人の活躍に待ったをかけるのが、この時点ですでに今期10勝をあげているオランダのコンチネンタルチーム「SEGレーシングアカデミー」。

クーン・ボウマンやファビオ・ヤコブセンなどを輩出するこの若手強豪チームのエース、スティーヴン・ウィリアムズが第5ステージで2位に入る走りを見せてマリア・ローザを獲得。すると翌第6ステージでオソリオが大胆にも逃げに乗り、マリア・ローザを奪還。続く第7ステージの1級山岳山頂ゴールでは逆にオソリオが遅れ、ウィリアムズが独走のまま勝利を飾った。

連日のようにマリア・ローザの持ち主が変わる波乱の展開。

この波乱を象徴するのが、午前午後のラインステージとTTステージの二部構成となった最終日。その午前ステージで集団落車が巻き起こり、マリア・ローザのオソリオも大きくタイムを失ってしまった。

そして迎えた最終決戦、22.4kmの個人タイムトライアルは、なんと総合成績の上位15名がそのタイム差ごとに順にスタートし、最初にゴールラインに入った選手が総合優勝となる独特のルールを採用。

個人タイムトライアルでありながらも、熾烈な抜きつ抜かれつが演じられる白熱のバトルとなった。

 

その中で、最強の走りを見せたのが、ミッチェルトン・バイクエクスチェンジに所属するロバート・スタナード。総合首位ウラソフから2分5秒遅れの総合7位だった彼は、一気に4名の選手を抜き去り、総合3位に浮上。ウラソフとのタイム差も1分以上縮める快走で、ステージ勝利をも手に入れた。

「ミッチェルトン・バイクエクスチェンジ」はミッチェルトン・スコットの育成チーム*1。今大会で実力を見せつけたスタナードは、晴れて来期からのミッチェルトン・スコット入りを決定付けた。登りも登れてTTも速い彼は、将来有望なオールラウンダーとして2020年代注目の選手の1人となるだろう。

 

さらに、最終的には総合5位に沈んでしまうものの、強さを見せつけたスティーヴン・ウィリアムズも、8/1付でバーレーンメリダにトレーニー加入。

来期から2年契約でのバーレーン入りも確定しており、こちらも活躍が楽しみな選手だ。

 

 

 

ツール・ド・スイス(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スイス

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かつては「4番目のグランツール」と呼ばれ、その名に相応しい厳しい山岳ステージを用意するツール前哨戦の1つ。今年はキンタナ・ランダコンビなど、例年以上に豪華なメンバーが集結した。

リッチー・ポート、ナイロ・キンタナ、ヤコブ・フールサンの好調。そして、ガビリアやサガン一強ではなく、コルブレッリやデマールが対抗してくるなど、今年のツールの混戦を予感させる結果となった。

個人的にはやはり、若手の活躍が気になる。

まずはサンウェブのアナスン。獲得標高3500mのクイーンステージで、迫りくるポートらの追撃をかわし、激坂フィニッシュを独走で制した。

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24歳のデンマーク人。昨年のツアー・オブ・オマーンでもヘルマンスやコスタを差して登りフィニッシュを制しており、タイプとしてはパンチャーに近い。しかし北のクラシックにも強く独走力も高くスプリントもできるオールラウンダーとしての才能も開花させつつある。今回初のワールドツアー勝利。

 

また、最終日個人TTを制したのがBMCレーシングのステファン・キュン。25歳のスイス人で、昨年のツールでも初日のTTで好成績を出し、本格的な山岳ステージが始まるまで新人賞ジャージを着用し続けていた。

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つい先日、2年連続となるスイス個人TT王者のタイトルも獲得し、その安定感の高さは飛び抜けている。

今年のツールは終盤まで個人TTはないものの、チームTTなどではポートにとってもなくてはならない存在となるだろう。今回のスイスも、ほぼチームTTの成績によって彼の総合優勝が決定付けられたと言っても過言ではない!

 

 

 

ツアー・オブ・スロベニア(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:スロベニア

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ドーフィネやスイスと比べるとランクは落ちるものの、例年ニバリやマイカなども出場し、厳しすぎない前哨戦として人気を博している。スロベニア自体が、近年はモホリッチやログリッチェなど、強力な選手たちを輩出している。

スイスでポートやキンタナが調子を上げていく裏で、こちらではログリッチェやウランと言った、これまたツールを混戦に導きうる存在が力を示していった。

特筆すべきは、昨年から続く「ひたすら積極的な攻撃」を仕掛けるログリッチェの姿。第3ステージは惜しくもゴール直前で捕まえられてしまったが、翌第4ステージでは実に15km以上を独走して勝利。最終日のTTも安定した走りで勝利を獲得し、2度目の母国最大のレース制覇となった。

登りも下りも独走もイケる、稀代のアタッカーとしての実力を見せつけた。あとは今年、ツールの総合争いでどこまでの走りを見せることができるか。

 

 

 

ルート・ドクシタニー(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:フランス

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昨年まではルート・ドゥ・スッド(南の道)という名称で知られていた小さなツール前哨戦。今年はピレネー山麓地帯を指す「オクシタニー」の名を取って、この名称へと変更された。

4日間と短いものの、ピレネーの名峰も毎年登場する厳しいステージレース。今年は当初、エガン・ベルナルの出場も噂されていたものの変更となり、代わりにスイスには出場しなかったバルベルデが参加することに。となれば、もはや彼の独壇場であることは間違いない。総合優勝候補のくせに逃げたり、必要ないくらい果敢なアタックを決めたりと、本人的には完全にトレーニング感覚での出場と総合優勝。まあ、昔キンタナとかもそんな感じだったしね!

いずれにせよバルベルデの調子が良くて幸い。今年のツールではしっかりと活躍してほしい!

 

 

 

全日本選手権ロードレース(NC)

ナショナル選手権 開催国:日本

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まるで4年前の焼き直しだった。30人を超える大量の逃げが生まれ、シマノレーシングブリヂストンサイクリングが牽引するメイン集団は追走に失敗した。勝負はメイン集団から抜け出した山本と小石祐馬(チーム右京)、そしてこれを追走する佐野や新城などの小集団に絞られた。

終盤、最も力を残していたのは、2014年覇者の佐野と2014年3位の山本。山本にとっては、4年前の雪辱を晴らす一戦となった。

そして、山本にとっては、小石を振り切って山本・佐野に追いついてきた新城の存在は大きかったことだろう。彼がいることで、山本は失うものはない心境で、最後の登りで思い切り踏むことができた。

調子は完璧だった。山本のペースアップに、佐野はついていけない。みるみるうちにタイム差は開き、やがて、かつて取り損ねた栄光を掴み取った。

佐野も、最後まで踏み切った。悔しい思いを全身で表した彼に対し、生中継を見ていた視聴者たちは山本に対するのと同じくらいの拍手を送った。

最後に、新城がしっかりと3位でゴールに飛び込んできた。すぐさまが山本がこれを迎え、抱擁する。

 

4位集団は、一時は9分差をつけられたメイン集団から這い上がってきた入部が先頭を取る。

1月からローラー台でのトレーニングを続け、例年以上に万全の状態で臨んだという入部。まさかの序盤の大量エスケープにより優勝争いから脱落してしまった彼は、誰よりも辛く苦しい思いと共にゴールに飛び込んできたに違いない。

 

 

 

今月の注目選手

ダニエル・ナバーロ(フランス、34歳)

かつてはアルベルト・コンタドールのアシストとして活躍し、5年前にエースとして走ることを望みコフィディス入り。以来、今年で6年目。ツール・ド・フランスには毎年出場し、2013年には総合9位にまで登りつめた。

そんな彼が、約束されていたエースの座を奪われつつある。モビスター・チームから移籍してきた、ホセとヘススのエラーダ兄弟の存在だ。確かに、ここ最近のツールの総合順位は決して良くはなかった。勝利も2014年以来、遠ざかっている。

6/23現在、2018年ツール・ド・フランスの出場候補選手のリストの中に、彼の名前はまだない。

 

だが、彼には意地があった。コフィディスの山岳エースとして、プロコンチネンタルチーム最強クラスのこのチームの頂点に立つ存在として、長年やってきた男としての意地が。ただ単に山岳逃げで少し目立って、でも勝利に届かない存在としてではなく、ステージレースの総合上位を狙える男としてその名前を売ることに執念を燃やした。

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ第5ステージ、超級山岳ヴァルモレル山頂フィニッシュ。ダニエル・マーティンが集団を抜け出して見事逃げ切り勝利を決めたこの日、5番目にゴールゲートを潜ったコフィディスジャージの男は、エースのヘスス・エラダではなく、ナバーロであった。

さらに最終ステージでは、最初の1級山岳の登りからアタックを仕掛け、小規模なエスケープグループを形成した。その後の100km以上にわたる道のりの中、少しずつ削られていく逃げ集団に最後まで残り、ラストの1級山岳サン=ジェルヴェ・モン=ブランの登りで、ついに彼はライバルたちを突き放し、単独で山頂に向かうこととなった。

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残り1kmを切って、タイム差は20秒弱。もはや、逃げ切りは濃厚だった。

しかし、メイン集団から、まるで殻を破ったかのような勢いで飛び出したアダム・イェーツが、あっという間に距離を縮めていき、残り50m、あとわずかといったところで、ナバーロは敗北を喫してしまった。

4年ぶりの勝利、栄光の瞬間を、彼は目の前で奪い取られてしまったのである。

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しかしこの日の走りにより、彼はこのクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで総合9位に入り込む。さらに、続くルート・ドクシタニー(旧ルート・ドゥ・スッド)で総合2位。

ツール・ド・フランスに向けて、十分過ぎる状態の良さを見せつけてくれている。

 

果たして、今年6年連続のツール出場は達成されるのか。

そしてそのツールで、彼は大いなる栄光を掴むことができるのか。

温かく、見守っていきたい。

 

 

 

*1:両チームの昔の名前とかは調べてはいけない。ひたすらややこしくなるから。

ツール・ド・フランス2018 全チームスタートリスト&プレビュー

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第105回ツールに出場する全チームのスタートリストと簡単なプレビューを掲載。

今年はスカイだけでなく、AG2Rもモビスターもほぼフルメンバー。頂点を目指し、どのチームも本気のラインナップで挑んできている。

一方、出場選手数の上限が1人減ったことで、とくに総合狙いとスプリント狙いとを両立させようとするチームは大変苦悩することになった。その余波を受け、衝撃的なカレブ・ユワン不参加。それ以外にも、この人数減は様々な影響を及ぼしかねない。

スタートリストを眺めることで、各チームの狙いもわかってくるかもしれない。

少しでも役に立てれば幸い。

※選手の年齢は全て数え年表記となっております。

 

↓コースプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

  

 

 

1~.チーム・スカイ(SKY)

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クリストファー・フルーム。「5勝クラブ」入りまであと1勝。達成すれば同時に、1998年のマルコ・パンターニ以来となるジロ&ツールの「ダブルツール」を達成することに。コンタドールですら達成できなかった偉業だが、この男には不可能などないように思える。

不可能などないように思えるのはこの男も同じだ。エガンアルリー・ベルナル。わずか21歳にして、今年、ツール・ド・ロマンディ総合2位と、ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝。あっという間に、銀河系軍団スカイのエース候補となった。

このツールで、総合表彰台に登るという予想は、あまりにも荒唐無稽だろうか。いや、そんな予想も、一笑に付すことができない。ここまで幾度となく、この男は我々の想像を超え続けてきたのだから。

最強と最強とが交わる頂点のチーム。今年のツールもまた、彼らによって支配される運命にあるのだろうか。

 

 

11~.チームEFエデュケーションファースト・ドラパック・p/bキャノンデール(EFD)

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昨年誰よりも安定した走りを見せて総合2位に登りつめたリゴベルト・ウラン。今年も直前のツール・ド・スロベニアでステージ1勝&総合2位と好調で、期待が持てる。

それ以上に注目しておきたいのがこの男。22歳のコロンビア人、ダニエルフェリペ・マルティネス。実は、ベルナルと同じく、19歳でプロデビューを果たしている逸材である。これまではそこまで目立った活躍は見せていなかったものの、今年、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャで総合7位、ツアー・オブ・カリフォルニアで総合3位と急成長を遂げている。

この夏、覚醒を遂げる選手の1人となるかもしれない。

 

 

21~.AG2R・ラ・モンディアル(ALM)

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今年のバルデは本気だ。「ミニ・パリ~ルーベ」ステージに向けて、2月からコースの下見に出た。3月には、毎年出場していたパリ~ニースを蹴って、ストラーデ・ビアンケに初出場。そして2位。

コース設定も彼向きだ。昨年はモン・デュ・シャでフルームを凌駕するダウンヒルを見せていたにも関わらず、そのあとの平坦路で勝機を逃した。今年は、下りのままゴールするステージが複数。また、昨年大失速した個人TTも、今年は1つだけ。しかも、アップダウンの激しいレイアウトで、昨年ほどの大ブレーキには至らないだろう。

メンバーリストも、完全にバルデの総合優勝にのみ照準を当ててきている。シエラネバダキャンプに随伴したドモン&ラトゥール&ヴュイエルモの山岳最強トリオに、ナーセン&ギャロパン&ディリエの平坦最強トリオ。そして、直前まで出場リストに名を連ねていたアタッカーのジェニエも、直前でマティアス・フランクに交代。

やっぱり今年のAG2Rは本気だ。

 

 

31~.チーム・サンウェブ(SUN)

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トム・デュムランは本気で総合を狙いに来ているようだ。それは、彼があえてのエースナンバーを着けないところからも想像できる。「いや、本気じゃないよ」そういうことを言うときの方が強い男だということを、我々はもう知っている。フルームvsデュムラン。現代の頂上決戦の第2ラウンドのゴングが今まさに鳴り響かんとしている。

メンバーの1人1人を見ると、突出した成績を出している選手は決して多くはない。その点で、スカイとは実に対照的なチームであるが、それでいてスカイに匹敵する成績を叩き出すチームである。今回のメンバーの中でも、たとえばアナスンなんかは、現在急成長中のパンチャー/ルーラーである。先日のツール・ド・スイスでも一勝。このツールでも、何かしでかしてくれるんじゃないかと、期待してしまう。

 

 

41~.チーム・フォルテュネオ・サムシック(FST)

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ワレン・バルギルは今年、絶不調。

とはいえ、彼史上最大級の実績を叩き出した昨年も、この時期は不調の只中にあった。むしろ、ツールが始まってからも不調は続き、ラ・プランシュ・デ・ベル・フィーユでは早々に遅れる姿を見せていた。

ただし、そのとき、彼の表情は明るい笑顔だった。彼は最初から、山岳賞を狙っていたのかもしれない。

今年も、あくまでもステージ優勝と山岳賞を狙っての参戦であると宣言している。期待はしない。あくまでも自然体に、その実に魅力的な笑顔を絶やさずに走る彼の姿を静かに見守ることにしよう。期待しないときの方が、きっと結果を出してくれる。

昨年最年少での出場となったジェスベールにも注目をしておくべきだ。何しろ、あらゆる選手が疲れを見せ始める終盤でも、果敢に逃げに乗る姿を見せた将来有望な男なのだから!

 

 

51~.バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

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ヴィンツェンツォ・ニバリのここ数ヶ月の調子はイマイチだが、それはいつものことである。総合優勝を果たした2014年も危機的な状況の中からの飛躍だった。

チームのもう1人のエース、コルブレッリは昨年、散々な状態だった。しかし、今年はドバイ・ツアーの登りゴールでの力強い勝利に始まり、ツール・ド・スイスではガビリア、サガンを抑えての勝利を果たした。確実に成長し、トップスプリンターの仲間入りを果たしつつある。

何より、このチームの魅力は、そのチームワークの良さ。ときにエース自らが仲間をアシストし、またアシストたちも全身全霊をエースに尽くす。ニバリというカリスマを中心にして、このツールでも奇跡を起こしてくれるかもしれない。

 

 

61~.ミッチェルトン・スコット(MTS)

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まさかのユワン不出場。それだけ、イェーツの総合上位に照準を合わせてきたか。平坦ライダーはさすがのラインナップ。あとは、ジロでサイモンを支え続けたニエベと、2016年のチャベスの右腕として活躍したハウスンの走りに期待したい。

前待ちなどで活躍したゲランスがチームを去ったのは痛手だったが、その代役はインピーが担ってくれることだろう。サンウェブ同様、個々の力量以上のチームワークからのブレイクに期待したい。

 

 

71~.モビスター・チーム(MOV)

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こちらもスカイに負けず劣らずのオールスター軍団を揃えてきた。今年はパリ〜ニース総合優勝のソレルに、ジロ総合4位を経験しているアマドール。そしてスプリンターでありながら山岳も軽々と登り、平坦牽引から山岳での前待ちまでこなしてくれるベテランのベンナーティ&ロハス。スペイン人としては天然記念物な石畳職人エルビーティも当然、今年は第9ステージ対策に連れてきている。

もちろん極め付けは、トリプルエース体制。とはいえ、やはりエースはキンタナであるべきだ。バルベルデもランダも、とくにランダは、アシストとして働くときの方がより輝いている。幸いにも直前のツール・ド・スイスではキンタナの調子が良く総合3位。エースの座はひとまず無事に保てそうだ。

とにかく今大会においては例年以上に遥かに全力の体制を整えてきたモビスター。キンタナにとっては実に最大のチャンス。今年こそ、勝ってくれ。

  

 

81~.BMCレーシングチーム(BMC)

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昨年の悔しい落車リタイアから1年。完全に調子を取り戻し、前哨戦のツール・ド・スイスも総合優勝を果たして、再び万全の体制で乗り込めるようになったリッチー・ポート。登りとTTの総合力においては間違いなくフルームに匹敵する実力の持ち主だ。

メンバーも良い。カルーゾは昨年総合11位の実力者だし、ゲランスも山岳前待ちなどで力を発揮する。クンのTT能力は言わずもがなで、ファンアフェルマートも、昨年の第3ステージで自らの勝利の芽を薄くしてでもポートのために牽引していた姿が印象的だった。山も登れる選手なので、アタッカーとしてだけでなく、山岳アシストとしても期待できるだろう。ヴァンガーデレンも、カリフォルニアで久々に調子の良い姿を見せてくれた。

個人的に期待したいのはベヴィン。安定した独走力の高さと、時折見せるスプリントの実力。今大会、誰も予想しなかった形で覚醒しうる選手だと思っている。

 

 

91~.UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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いまいち振るわないシーズンを過ごしていた今年だったが、直前のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで見事復活を果たしたマーティン。相変わらずエーススプリンターとの二頭体制だし、山岳アシストが充実しているわけではないしで正直、移籍した意味はあるのか疑問だが、まあ最強ばかりが揃いすぎて肩身が狭そうだったクイックステップ時代よりは気楽に戦えるのかもしれない。

クリストフはクリストフで、ツァベルやモルコフなど頼れる相棒が揃っていた昨年までと比べるとやや不安の残る体制。というか、なんでコンソーニ連れてきてないの?

アタプマは昨年も惜しいところまでいきながら勝てなかった。今年こそは。

 

 

101~.クイックステップ・フロアーズ(QST)

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昨年ジロ4勝とポイント賞を勝ち取った若手最強スプリンターが満を持してツール・ド・フランス初出場。相棒は、そのジロ4勝を支えた最も信頼する発射台、リチェセ。昨年ブエルタでトレンティンの4勝を支え、自らもリードアウトからの勝利を取ってしまったランパールトも、今年はベルギーチャンピオンジャージを身に纏って参戦する。職人ヴェルモトがチームを去ったのは痛いが、デクレルクがその代わりを務めることができるか?

総合争いでは、2016年・2017年ジロ新人賞のユンゲルスに期待。彼もまた、本格的な総合争いを目指してツールに参戦するのは初めてだ。単なるTTスペシャリストで終わってほしくはない。

  

 

111~.ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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イカも盟友ポリャンスキを引き連れて本気で総合を狙うつもりはあるのだろうけれど、カリフォルニアもスロベニアも微妙で、それほど期待はできなさそう。やはりサガンの活躍に頼ることになりそうだ。というか、これは北のクラシックなのか?と思わせるような、完全サガンシフトなメンバーだ。彼の場合、発射台を揃えるよりも、ゴールまで無事に彼を送り届ける平坦要員が重要になるので、今回のこのメンバーはほぼオールスターである。

マイヨ・ヴェールの奪回は叶うか。

 

 

121~.アスタナ・プロチーム(AST)

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このチームも、個々の実力以上にチームの力を感じさせてくれる。フグルサンも直前のツール・ド・スイスで調子の良さを見せつけており、今年こそ単独エースとして、万全の体制で臨める。LLサンチェスもフライレも、実に頼りになる山岳アシストだ。

コルトニールスンは純粋なスプリント力ではツール優勝を狙えるほどではまだない。しかし、登りを含んだスプリントでは、ツール・ド・ヨークシャーでファンアフェルマートを下すなど実力の高さを見せつけている。ドバイ・ツアーでは誰よりも勢いのあるスプリントも見せつけた。カオスな展開の中でのスプリントであれば、十分に勝てる力を持った選手だと言えるだろう。アシストはほぼいないけど。

 

 

131~.チーム・ディメンションデータ(DDD)

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さいたまクリテリウムの呪いか、今年ひたすらツイてないカヴェンディッシュ。それでもやはり、ツールでは彼が活躍しないことには始まらない。今年はクイックステップから最強ルーラーのヴェルモトも連れてきて、例年以上のカヴェンディッシュ体制で臨むことに。何しろ、ジロに出たとはいえ、メインチェスがメンバー入りしないほどなのだから。

そんな中、スラフテルやボアッソンハーゲンなどのアタッカーの活躍や、パウェルスの山岳逃げなどでの勝利にも期待が持てそうではある。

 

 

141~.チーム・カチューシャ・アルペシン(TKA)

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昨年までクリストフを支えていたメンバーが今年はキッテルのために働く。強力だが、問題はあとはキッテル自身の調子。昨年5勝の最強スプリンターが、今年は沈んだまま終わってしまうのか?

ザッカリンはここまで決して調子が良くはないが、彼の調子の好悪はあまり当てにならない。誰も期待していないときにこそ突然爆発する可能性も。最大の材料は、栗村氏の勝利予想に一切名前が出てこなかったこと!

 

 

151~.グルパマFDJ(FDJ)

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ツール・ド・スイスではガビリアたちを下して勝利も掴み、調子の良さを見せつけているデマール。チモライは残念ながらメンバー入りしなかったが、代わりに今年新加入で今シーズンも常にデマールを支えてくれているシンケルダムがメンバー入り。石畳にも強い選手で、多方面での活躍が期待できる。チャンピオンジャージを失い紛らわしくなくなったのも良かった??

ルドヴィクソンはいつかグランツールのTTで勝利できる選手だと確信している。昨年ブエルタのTTでは6位。そりゃ簡単な話ではないけれども、昨年のボドナールの勝利を予想できていた人はほとんどいないはず。僕は信じている。

ピノがいない分、総合ではゴデュに注目が集まることだろう。しかし彼にはあまりプレッシャーを感じて欲しくはない。今はまだ、経験を積むべき時期だ。

 

 

161~.チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

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4月以降に出場した3つのステージレースで総合優勝を果たした今最も勢いのあるログリッチェと、2年前のジロでマリア・ローザ獲得目前までいったクラウスヴァイク、そしてツール総合6位の経験があるヘーシンクと、ここもある意味トリプルエースである。

とはいえ、いずれも決定打に欠ける。それよりは、フルーネヴェーヘンのスプリント勝利に期待したい。今年もワールドツアーチームに所属するスプリンターの中では、ヴィヴィアーニに次ぐ勝利数を記録している。相方のローゼンは純粋なリードアウトだけでなく、巧みなバイクコントロールでエースをゴール前まで運んでくれるほか、自らも登りフィニッシュなど、フルーネヴェーヘンでは対応しきれないレイアウトを得意とする。

若手トルークの覚醒にも期待したい。

 

 

171~.ロット・スーダル(LTS)

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現チームに移籍した2011年から6年連続で達成していたツールでの勝利が、昨年はついに途絶えてしまった。今年いっぱいでチームを去るという噂もあり、常に存在感を示し続けてきたベテランスプリンターが、いよいよ斜陽を迎えつつある。

それでもやっぱり、ゴリラが活躍する姿が見たい!  デブイスト、ジーベルグ、ファネンデルトといった、長きにわたり彼を支えてきてくれた選手たちも揃い、オリカからは名ルーラー、クークレールが駆けつけてきてくれた。エースナンバーも着け、万全のグライペル体制。もう、このチームで見られる彼の勇姿も最後かもしれない。目に焼き付けよう。

もちろん、デヘントの逃げや、ベノートのステージレーサーとしての成長にも注目。デヘントは2年前のモンヴァントゥ勝利のような走りをまた見たい。やっぱり、どんなに逃げが凄くても、勝利がなければ総合敢闘賞は厳しいよ。

 

 

181~.ディレクトエネルジー(TDE)

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ヴォクレールシャヴァネルの後継者」カルメジャーヌが、今年も魅せてくれるだろうか。まだまだステージレースの総合上位を狙うといった感じではないが、果たして。

ダミアン・ゴダンの活躍にも期待したい。かつてはブイゴテレコム時代からユーロップカー時代まで現チームに所属し、その後AG2Rに移籍。しかしなかなか勝利に結びつかないまま、昨年はコンチネンタルチームのエキップ・シクリスト・アルメ・デ・テッレ(フランス陸軍チーム)に降格。しかしここで5勝を記録し、チームの大躍進の立役者となった。勝利の大半がプロローグによるもので、その独走力の高さを生かした逃げ切りに期待。

カチューシャ時代にジロで山岳逃げ切りを決めた実力者タラマエも稼ぎ頭だったとなるだろう。

 

 

191~.トレック・セガフレード(TFS)

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2年前の怪我以降、なかなか復調せずにいるデゲンコルブ。全然ダメというわけではなく、今年のチャレンジマヨルカでも2勝していたり、先日の国内選手権でも2位だったりと、それなりの成績ではある。しかし、勝ちきれない。

総合エースは一応モレマか。しかし絶対的な存在はいない。よって、逃げや混戦からのステージ勝利を狙いたい。ベルナールやゴーグルなどの若手の走りにも注目。

 

 

201~.コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)

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ついにブアニが本気で降ろされた。一応最近は頑張って勝ってたんだけど、チームオーダーに従わなかったりで逆効果だった様子。

代わりにエースを務めるのが、今年絶好調のラポート。スプリントだけでなく、激坂や石畳への適性もあり、独走力も高い。パリ〜ニースではデマールやゴルカ・イサギレと張り合う姿も見せており、今回まさかの勝利もなくはない。

クライマーも良い選手が揃っている。シーズン序盤はモビスターからやってきたヘスス・エラダの状態が良く、直近ではダニエル・ナバーロがドーフィネ総合9位とオクシタニー総合2位と絶好調。過去にはツール・ド・フランス総合9位の経験もあるナバーロ。外からやってきた奴にエースの座は奪われたくないのが本音だろう。この、チーム内競争も見所だ。

 

 

211~.ワンティ・グループゴベール(WGG)

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「哲学者」ギョーム・マルタン。昨年は最終総合順位が20位を下回ってしまい、目標達成とはいかなかったものの、トップクライマーたちに食らいつく走りはしっかりと見せられた。今年はどんな成長を見せてくれるか。

地味にパスカロンが強かったりする。ツール・ド・ルクセンブルクではステージ2勝と総合優勝。多少のアップダウンもこなせる脚質だ。

昨年はステージ10位以内に入ることはできなかったが、今年はベスト10リザルトに何度か名前を残したいところ。