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ツール・ド・フランス2018 コースプレビュー1週目

いよいよ開幕が近づきつつある、2018ツール・ド・フランス

その第1週目のコースをプレビュウしていく。

 

今年は何かと「3年ぶり」なコース設定。

それは第1週目からまさしくそうで、「3年ぶり」のチームTT。「3年ぶり」の「ブルターニュの壁」。「3年ぶり」の「ミニ・パリ~ルーベ」。

そして、2015年のように平坦が多い第1週目でもある。休息日明けに山岳3連戦が待ち構えている、という点でも一緒だ。

 

では、2015年が平凡な1週目だったかと言えばそんなことはない。

平凡なはずのオールフラット第2ステージが、まさかの大雨による集団分裂を巻き起こし、このときの遅れが原因でキンタナは敗北したと言っても過言ではない。

ユイの壁のステージではまさかの集団落車によりマイヨ・ジョーヌを着ていたカンチェラーラがレースを去り、ブルターニュでは同じくマイヨ・ジョーヌを着ていたトニー・マルティンが落車で早々と姿を消した。

 

そういう形でのスペクタルは望まないが、それでも、平坦だからレースは退屈になるとは限らない。

また、近年は若手の台頭も著しく、スプリンターの戦国時代化がより一層進んでいる。

連日、激しいスプリントバトルが展開されそうで、何だかんだ見所の多い第1週目となりそうだ。

↓3週間の注目コースをピックアップしてプレビュウした記事↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

 

 

 

第1ステージ ノワールムティエ・アン・リル~フォントネー・ル・コント 201km(平坦)

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フランス西部、ヴァンデ県からスタートする2018年ツール・ド・フランス。同県でのグランデパールは史上6回目となる。

そして全体としては、同県の西部、大西洋に浮かぶ「ノワールムティエ島」からスタートすることになる。

島と本土とを結ぶ砂洲「パサージュ・デュ・ゴワ」で有名で、2011年大会はこの海の道からのスタートとなった。

しかし、今大会はこの海の中道は使わずに、島の南部の「ノワールムティエ橋」を通って本土に渡るルートを採用したようである。

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島と本土とを結ぶ唯一の橋、ポント・ドゥ・ノワールムティエ(ノワールムティエ橋)。

 

なお、ノワールムティエ島自体をスタート地点として使用したのは2005年大会が最も最近の例。今大会は島の最北端に位置するノワールムティエ・アン・リルというコミューンでスタートする。

 

過去の大会の例に漏れず、初日ステージは非常にフラットなピュアスプリントステージ。4級山岳がゴールまで30kmという微妙な位置にはあるものの、基本的には逃げグループの中で争われることだろう。ジロのラインステージ初日(第2ステージ)ではこの山岳賞を巡る激しいアタック合戦も繰り広げられたが、ツールでは果たしてどうなるか。

 

そして、注目は今大会から採用された「ボーナスタイムポイント」。

今回はゴール前13.5kmの位置に登場するこのポイントでは、先頭通過から3秒、2秒、1秒のボーナスタイムを得ることとなる。

 

この秒数は微妙なところだ。たとえば、この日のフィニッシュラインを先頭で越えた選手には10秒のボーナスタイムが得られ、2位には6秒のボーナスタイムとなる。たとえばボーナスタイムポイントを先頭で通過した選手がゴールで2位となっても、1位でゴールした選手をボーナスタイムで超えてマイヨ・ジョーヌを得ることはできない。

結局は、この日の勝者がそのままマイヨ・ジョーヌ着用者となることは間違いがなさそう。それでも、明日以降のマイヨ・ジョーヌ争いにも影響を及ぼしそうな、面白い試みである。

 

ここ最近のツール・ド・フランスでは、常に、「最初のラインレース」で勝利した選手が、その大会の最多勝利選手となっている。

2013年:マルセル・キッテル(4勝)

2014年:マルセル・キッテル(4勝)

2015年:アンドレ・グライペル(5勝)

2016年:マーク・カヴェンディッシュ(4勝)

2017年:マルセル・キッテル(5勝)

 

この日の勝者は、このジンクスからすると、ただの1勝、マイヨ・ジョーヌ着用権以外のプレゼントがツールの神様から与えられることになるかもしれない。

今大会最強のスプリンターを決める重要なステージ、というと言い過ぎかもしれないが、気合の入った最強スプリンターたちのせめぎあいを、楽しみにしたい。

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昨年のツールで最初のスプリントステージとなった第2ステージ。リエージュの街でキッテルが強さを見せつけた。

 

個人的には、今年、5月に少しずつ調子を上げてきたグライペルが、その勢いのまま勝利を掴んでほしいという思いがある。ほんの少しだけど登り基調なところも彼に向いているはず。

彼は今年、チームとの契約に関する折り合いがつかず、移籍の可能性も出ているとか・・・。複数勝利を掴んで、よりより条件を手に入れてチームに残れるならば、それはとても幸いなことなのかもしれない。

 

 

 

第2ステージ ムイユロン・サン・ジェルマン~ラ・ロッシュ・シュル・ヨン 182.5km(平坦)

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引き続きピュアスプリンターたちの激しいバトルが展開しそうだ。ヴァンデ県の県庁所在地ラ・ロッシュ・シュル・ヨン、ナポレオンによって作られ、かつてはナポレオンの名を冠していた街へと至る182.5km。

ゴール前1kmで直角カーブを曲がって、あとは長い直線。前日も1.5kmの直線ゴールで、いずれも危険も少ない、チームトレインの力が肝になりそうなレイアウトだ。今シーズン、最も最強のスプリントトレインを形成しているのはクイックステップ・フロアーズ。今年ツール初挑戦となるフェルナンド・ガヴィリアが、自らの存在を主張する鮮烈なる勝利を叩き出せるか。

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「ミニ・ツール」とでも言うべき豪華な顔ぶれの揃ったツアー・オブ・カリフォルニアで、他を寄せ付けない圧倒的な力量を見せつけたガヴィリア。

 

昨日に引き続き、ゴール直前に置かれたボーナスタイムポイント。昨日は優勝選手のマイヨ・ジョーヌを奪い取るほどの効果はなかったものの、この2日のポイントの取り方次第では、勝利なしでマイヨ・ジョーヌを手に入れる可能性はある。このあたりの白熱た展開にも期待したいところ。

 

 

 

第3ステージ ショレ~ショレ 35.5km(チームTT)

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今大会の最初の目玉、35.5kmのチームタイムトライアル

35kmという距離は、3年前、同じく起伏の豊かなチームTTを行った2015年よりもさらに7km長い。このときはBMC、スカイ、モビスターの上位3チームは4秒以内に収まるという大接戦を繰り広げ、とくにスカイのニコラ・ロッシュが最後に少し遅れてしまったことが勝敗を分けるという、非常に盛り上がりを見せたチームTTだった。

そのときはブルターニュで開催されたが、今回もまた、ブルターニュ同様に起伏の激しいレイアウト。やはりスカイやモビスターといったチームが上位に来るのは間違いがなさそうだ。

同じ距離で開催された「前哨戦」クリテリウム・ドゥ・ドーフィネのチームTTでは、スカイが圧倒的な記録を叩き出して勝利をしたが、同じ調子の良さが発揮されるとは限らない。BMCも強かったが、3位のロット・スーダル以下は結構な団子状態。チームTTが決して強くないはずのAG2Rラモンディアルもそこまで大きくはタイムを落とさなかったため、各チームがしっかりとチームTTに向けて準備を進めていることがよくわかる。あとは、本番にどれだけの選手を揃えてこれるかである。

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3年前のツールでわずか1秒差でスカイを破ったBMC。ドーフィネでも調子の良さを見せており、今年も優勝候補の最右翼である。スポンサー問題もあり、勝利は絶対である。

 

 

 

第4ステージ ラ・ボル~サルゾー 195km(平坦)

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ツール初登場となるサルゾーは、第1ステージの1km、第2ステージの1.5kmに続き、実に4kmというロングストレートをフィニッシュに用意している。幅も7mと広い、集団スプリントに最適なレイアウトだ。

公式プログラムによると、UCI新会長のダヴィド・ラパルティアン曰く「2018年大会で、最もすばらしいものになる」フィニッシュが見られるという。彼がこの村出身の人物だからという色眼鏡もあるだろうが・・・。

なお、このサルゾーの北側には、ブルターニュの誇る美しき「モルビアン湾」が広がっている。エーゲ海のように小さな島が点在するこの風景は、今大会のベスト空撮ショットの1つになるかもしれない。

 

 

 

第5ステージ ロリアンカンペール 204.5km(丘陵)

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チームTTを除けば、近年稀にみるフラットさで開幕した2018年ツール・ド・フランスも、いよいよ本格的にブルターニュ地方に入ってくるに従って、より「アルデンヌ風味」の丘陵ステージが開始されてくる。

この日も、逃げ切りが容認される、という可能性は少ないながらも、序盤の山岳賞ジャージを独占できる可能性を巡って、激しいアタック合戦が繰り広げられる可能性がある。最後はそこまで厳しくはないが登りゴール。パンチャーたちの激しいせめぎ合いが予想されるだろう。

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2016年・2017年ともに、序盤のパンチャーステージを制しているペテル・サガン。アラフィリップ、マシューズといった過去の敗北者たちはリベンジを果たせるか。

 

今年のツール・ド・フィニステーレは、今回のこの第5ステージと同じフィニッシュを設定していた。このときはディレクトエネルジーのジョナタン・イベールが勝利し、そしてロマン・バルデが2位、ギョーム・マルタンが3位につけていた。

このことが示す意味とは。意外にも、わずかなタイム差が総合争い勢の中でもついてしまうかもしれない。

 

 

 

第6ステージ ブレスト~ミュール・ド・ブルターニュ・ゲルレダン 181km(丘陵)

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ブルターニュの壁」が3年ぶりに登場。2kmの登坂はほぼ直線で、挑む者の精神を挫けさせる。3年前は、山岳賞を着ていたテクレハイマノや、クフャトコフスキが早々に遅れる姿を見せ、最終的にはヴィンツェンツォ・ニバリが餌食となった。今年はこの登りを「2回」こなすことに。また、1回目の登りを終えたあと(残り13km地点)にボーナスタイムポイントが控えているため、1回目は1回目で重要な役割を果たす可能性がある。

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3年前はAG2Rラモンディアルのアレクシー・ヴュイエルモが制する。今年は、たとえば昨年のフレッシュ・ワロンヌ3位のディラン・トゥーンスや、同9位のダヴィ・ゴデュなどに期待したいところ。彼らが出場するかどうかはまだわからないけれど。

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キャリア最大の勝利となったヴュイエルモの3年前の勝利。ダニエル・マーティンも集団から抜け出して追撃したものの、届かなかった。

 

 

 

第7ステージ フジェール~シャルトル 231km(平坦)

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今大会最長の231kmに、小刻みなアップダウンはあるものの、基本的には平坦ステージ。平原の只中ゆえの横風に注意したいくらいか。

今大会は今日を含めて4回目の集団スプリントの機会となるだろう。ここまでで、今大会調子の良いスプリンターが誰なのか、段々と分かってくるはずだ。

キッテル、グライペルカヴェンディッシュサガン、デマールといった最強クラスの選手はもちろん、昨年シャンゼリゼを制したフルーネヴェーヘンや、今年ツール初挑戦となるユワンやガヴィリアなど、近年稀に見る戦国時代の様相を呈している。

場合によっては連日、優勝者が入れ替わるようなこともあるかもしれない。むしろそんな展開を望んでいる。

なお、ラストはわずかに登っている。

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シャルトルと言えば大聖堂。12世紀から13世紀にかけて作られた、「フランスにおける最も美しいゴシック建築」の1つ。

 

 

 

第8ステージ ドルー~アミアン・メトロポール 181.5km(平坦)

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前日に引き続き、細かなアップダウンを含んだ平坦ステージ。基本は、集団スプリントになるだろう。各スプリンターチームも万全の態勢を整えており、ジロやブエルタほどには、簡単に逃げを許すようなことはないだろうから・・・。

とはいえ、この日はフランス革命記念日。一花咲かせたいフランス人エスケーパーたちの、意地の張り合いが見られるかもしれない。グジャールやシャヴァネル、ケムヌール、あるいは、かつて革命記念日に黄色のジャージを着た男、トニー・ギャロパンなど!

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アミアンも大聖堂で有名だが、「北の小さなヴェネツィア」と呼ばれる水上庭園も見ものである。

 

 

 

第9ステージ アラス城塞~ルーベ 156.5km(丘陵・石畳)

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ツール・ド・フランスに限らず各グランツールの主催者は、最も日数の長い第1週目のラスト(大体が第9、第10ステージ)にその年の大会を象徴する強烈なステージを放り込んでくる。

個人タイムトライアルの長かった2012年は第9ステージにも個人TTを用意し、ブラッドリー・ウィギンスが圧倒的な強さを見せつけた。

2013年は第8ステージのアクス・トロワ・ドメーヌでマイヨ・ジョーヌを得たフルームが、第9ステージにてチームをバラバラにされる危機的な状況に陥った。

2014年はラ・プランシュ・デ・ベルフィーユにてニバリが最強であることを証明した。

2015年はチームTTにおける激戦。

2016年はアンドラ・アルカリス、2017年はモン・デュ・シャを含む超級山岳3つを放り込み、いずれもクイーンステージが用意された。

 

そして迎えた2018年。

今年のツールは、この最重要ステージに、「ルーベ」を当て込んできた。

しかも、モン・サン・ペヴェルからカンフィナン・ペヴェルまで。本場「パリ~ルーベ」でも勝負所となる5つ星パヴェを本場と同じ終盤に持ってきた。今大会の総合優勝争いを左右する大事な一戦となることは間違いない。

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2016年パリ~ルーベのモン・サン・ペヴェルは、最後のルーベとなったカンチェラーラを容赦なく飲み込んだ。

 

距離が短いというのもいいところだ。本場のようにやや退屈な前半戦もなく、かなり早い段階で強力な石畳の連続に襲われることになる。その分、勝負を仕掛けようとする選手たちは、最初からトップギアで駆け抜けていくだろう。そのスピードから、誰が最初に脱落するのか。

2014年ツールの石畳ステージでチームに支えられながらライバルたちに差をつけたヴィンツェンツォ・ニバリ。

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あるいは、今年2月にもこのステージの下見に出て、かつ初出場のストラーデビアンケでも泥に塗れながら2位に入り込んだ走りを見せたロマン・バルデなどに期待。

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彼らにとっては、この日、雨が降ることを期待していることだろう。

そして、ツール5勝目がかかる王者にとっては、雨の石畳ステージというのは、実にトラウマなものに映るに違いない・・・。

 

 

果たしてどんな波乱が、この「北の地獄」ステージに待ち受けているのか。

スタートからゴールまで、全く目が離せそうにない、重要なステージだ。

「ツール前哨戦」クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ2018 コースプレビュー&注目選手・チームプレビュー

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6/3(日)から開催される、8日間のステージレース。

「ツール前哨戦」とも呼ばれるこのアルプスの厳しいレースを、今回は簡単にプレビュウしていく。

 

  

 

スプリンターの出番なし⁉ ツールを意識した全8ステージ

クリテリウム・ドゥ・ドーフィネは「ツール・ド・フランス前哨戦」とも呼ばれる。

その理由は、ツールと同じA.S.O.の主催であるということや、ツール開催1ヶ月前に開催されるということ、そしてツールでも主戦場となるアルプスの山々を舞台にして行われるということ以外にも、その年のツールで目玉となるステージを意識したようなコースレイアウトが用意されていることにもある。

昨年も目玉となる「モン・デュ・シャ」を、2年前も同じく目玉であった山岳TTステージをコースに組み入れるなどしている。

では、今年はどうか。やはり今年も狙ってきたようだ。

 

まずは、今年のツール本戦で3年ぶりに登場となるチームタイムトライアル

3年前はブルターニュ地方の起伏の多いコースレイアウトでの28km。

今年も同じくブルターニュ地方で、距離も35kmと長くなっている。総合成績にも大きな影響を及ぼすことになるだろう。

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そして、今回のドーフィネ第3ステージにも、同じくチームTTが登場する。

しかも、距離は同じく35km。

当然、各チームともに、ツール本戦を意識した「試し走り」をすることになるのは間違いない。

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第3ステージのプロフィール。公式サイトより。

 

また、もう1つ、今年のツールの注目ステージは「短距離山岳ステージ」の存在である。

第11ステージには108kmの、第17ステージに至っては65kmという前代未聞の短さである。しかも、平坦なステージではなくいずれも山頂ゴールの厳しいレイアウト。

過去のグランツールでも「短距離山岳ステージ」が総合優勝に大きな影響を及ぼしたこともあり、今年のツールにおける注目ステージの1つであることは間違いないだろう。

 

さて、今回のドーフィネでもそれを意識したステージが登場する。

最終日前日となる土曜日の第6ステージ。さすがに65kmには匹敵しないものの、110kmという、十分な短さである。

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第6ステージのプロフィール。公式サイトより。

 

さらにこの前日と翌日(最終日)にも、130km前後の短めな山頂フィニッシュステージが。

全体的に見ても第4ステージから4日連続で山頂フィニッシュが続き、非常にハードな1週間。

かろうじてスプリンター向けステージとも言えそうな第1・第2ステージも、アップダウンが激しく一筋縄ではいかないステージのため、スプリンターが活躍できる機会はほぼない、と言うことができそうだ。

 

よって、各チームとも、スプリンターよりもクライマーを多めに連れてきている。

続いて、注目選手&チームをプレビュウしていく。

 

 

数少ないスプリントのチャンスを狙う優勝候補たち

まずは2つしかチャンスのない、しかもそのチャンスも限りなく細いチャンスであるスプリントにおける優勝候補を見ていこう。

 

今大会の出場選手ラインナップの中で、アップダウンコースにおけるスプリントの実績で言えば、エドヴァルド・ボアッソンハーゲン(ディメンションデータ)が頭一つ飛び抜けているだろう。

ドーフィネでも過去にステージ4勝とポイント賞を獲得しており、相性は良い。

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純粋なスプリント力で言えばブライアン・コカール(ヴィタルコンセプト・サイクリングクラブ)も勿論候補となるが、今回のレイアウトでは力を発揮しづらいかも・・・。

ただ、ツール本戦にチームが選出されなかった以上、ここで結果を出さねば先がない。

勝利への渇望は人一倍だろう。

5月もHCクラスで立て続けに2勝しており、調子は悪くないはずだ。

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今年調子が良い選手といえば、ジェイ・マッカーシー(ボーラ・ハンスグローエ)も忘れてはいけない。

今年、いずれもゴール前の登りが肝となったカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースやバスク1周で、一流スプリンター・パンチャーを相手取り勝利している。

これまでオーストラリアでのみ活躍している印象の強かった彼が、今年は一皮むけた様子を見せてくれている。

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若手の台風の目となりそうなのが、ファビオ・ヤコブセン(クイックステップ・フロアーズ)の存在。

21歳のネオプロでありながら、今年すでにノケーレ・コールス、シュヘルデプライス、ツール・デ・フィヨルドとHCクラスレースで3勝している。

ノケーレ・コールスは緩やかな登りスプリントであるため、今大会への適性も悪くないはずだ。

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ただし、クイックステップとしては今大会のスプリントをジュリアン・アラフィリップで狙ってくる可能性も十分にある。

2年前のドーフィネではボアッソンハーゲンに喰らいついてのステージ2位を経験。

今年もバスク1周やフレッシュ・ワロンヌで好調さを見せつけている彼が、ポイント賞(これも2年前、ボアッソンハーゲンに敗れて2位)も含めて狙ってくる可能性は十分にあるだろう。

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たった2つしかないスプリントステージではあるが、十分に盛り上がる要素を秘めている。

 

 

総合成績に大きな影響を及ぼし得るチームTTでの有力チームは?

今大会における最重要ポイントの1つは、第3ステージでの35kmチームTTである。

ここまでの長さのチームTTは、ツール・ド・フランス本戦では2009年大会以来、およそ10年ぶりである。

各チームとも、ツールを意識した絶好のシミュレーションの機会として本気で臨むことになるだろう。

 

今大会の各チームメンバーを眺めていて、最もタイムを稼げそうなチームとしてはチーム・スカイクイックステップ・フロアーズが想定できる。

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スタートリスト(チーム・スカイ)

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スタートリスト(クイックステップ・フロアーズ)

スカイはゲラント・トーマス、ミハウ・クフャトコフスキ、そして世界選手権表彰台経験のあるジョナタン・カストロビエホの3名が強力。いずれも、昨年の世界選手権チームTTにも出場している。
ただし、ここで重要になるゲラント・トーマスについては、初日プロローグにて落車しており、その影響が不安視されるところ。

クイックステップ・フロアーズも同じく昨年世界選手権に出場しているボブ・ユンゲルスとニキ・テルプストラがおり、ジュリアン・アラフィリップもタイムトライアル能力が高いため、期待ができる。

 

普段、チームTTでは無類の強さを誇るBMCレーシングチームだが、今回は一軍メンバーを連れてきていない。

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スタートリスト(BMCレーシングチーム

ブレント・ブックウォルターとパトリック・ベヴィンは十分に個人タイムトライアル能力が高い選手ではあるものの、その他に有力選手がいるわけではない。

ミッチェルトン・スコットも常連強豪チームであり、アレクサンダー・エドモンドソンやダミアン・ハウスン、ダリル・インピーといった昨年世界選手権出場メンバーを揃えてきてはいる。

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スタートリスト(ミッチェルトン・スコット)

しかしTTが苦手なエースのアダム・イェーツがどうなるか次第、というところもある。

サイモン同様に覚醒するか?!

 

上記4チームが今回のチームTTでタイムを稼ぐことにより、これらのチームのエースが総合優勝争いで有利になると言えるだろう。

とはいえ、翌日の第4ステージからは最終日まで、4日間連続の山頂フィニッシュが待ち構えている。

ツール本戦ならばまだしも、このドーフィネに限って言えば、チームTTの遅れは十分に挽回可能であると言えるだろう。

 

よって、最後に今大会出場の有力クライマーたちを見ていく。

 

 

初の栄冠を手に入れることができるか――今大会注目の実力者クライマーたち

今大会、まず注目したいのがロマン・バルデ(AG2Rラモンディアル)である。

5月はチームメートのドモン、ラトゥール、ヴュイエルモといった最強山岳トリオと共にシエラネバダでの高地トレーニングに邁進していたという。

【今日のサイバナ】ダニエル・マーティン、アラフィリップ、バルデの抱負、ベルギー期待の若手の紹介 - サイバナ

今大会に向けたチームとしての意気込みも強く感じられる。

 

バルデ自身もドーフィネでは2年前に総合2位を獲得しており、その年のツール・ド・フランス本戦でも総合2位となっている。

昨年のドーフィネは総合6位と振るわなかったものの、ツールでは総合3位。

今年は初出場となったティレーノ~アドリアティコやバスク1周では総合13位と微妙ではあるものの、ストラーデビアンケやリエージュ~バストーニュ~リエージュなどのワンデーレースではこれまでにない成績を残している。

石畳ステージの試走も2月には行っているようで、今年のツールに向けた準備は万端。

あとは、このドーフィネで山岳ステージに向けた最終調整を行うだけだ。

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ダニエル・マーティン(UAEチーム・エミレーツ)も、ドーフィネ2年連続の総合3位となっており、今大会の優勝候補の1人である。しかし今期ここまで調子はあまり良くない。

元々所属していたクイックステップ・フロアーズはツール本戦ではスプリンターのためのチームを作ることが多く、マーティンの総合優勝争いをサポートしてくれる環境ではなかった。

その意味で移籍という選択肢自体は良かったと思うのだが、その移籍先がUAEという、これまた総合優勝争いにおいては不慣れなチームであることが不安材料。

ジロではファビオ・アルが全く良いところのなかったUAE

今回のドーフィネとツールでは、そのリベンジを果たせるか?

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ボブ・ユンゲルス(クイックステップ・フロアーズ)は、ジロ・ディタリアでの2年連続新人賞を経て、今年いよいよツール・ド・フランスに挑む。

チームのエースナンバーはアラフィリップがつけており、確かに1週間のステージレースであれば、彼の方が適性があるかもしれない。

しかし、グランツールでの実績ではユンゲルスの方が上。今大会で、彼がどれだけの走りを見せることができるのか。楽しみだ。

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新人賞候補としては、今年のパリ~ニースで大逆転マイヨ・ジョーヌを獲得したマルク・ソレル(モビスター・チーム)が最有力候補となるだろう。

それ以外にはティレーノ~アドリアティコ総合4位のティシュ・ベノート(ロット・スーダル)や、2年前ラヴニール覇者ダヴィド・ゴデュ(グルパマFDJ)の覚醒にも期待したいところ。

誰がエースなのかイマイチ分からないスカイの中から、まさかのジャンニ・モズコン総合上位というのも、ありえてしまうかもしれない。

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ほかにもカチューシャ・アルペシンのイルヌール・ザッカリン、ミッチェルトン・スコットのアダム・イェーツ、フォルテュネオ・サムシックのワレン・バルギルなど期待したい選手は数多くいる。

だが、最後にその中でも注目したい「チーム」として、コフィディス・ソリュシオンクレディの名前を挙げておきたい。

 

コフィディスと言えば、絶対エースのナセル・ブアニの存在が大きいだろう。実際に過去のドーフィネでも3勝しており、彼なしのドーフィネ・ツールというのはあまり考えられなかった。

しかし、今年のドーフィネに彼は出場せず。ツール本戦には現状出場予定ではあるが、ここ最近のチーム内の彼の立ち位置はやや不安定なものとなっている。

 

代わって、今回のドーフィネでこのチームに期待したい選手としては、今年新加入となったホセ&ヘススのエラーダ兄弟である。エースナンバーをつけるヘスス・エラーダは2月の2つのステージレースで総合上位につけている。初日プロローグも、26秒遅れとそこまで悪くない結果であった。

また、ディメンションデータを放逐されて行先を失っていた中、2月に突然コフィディス入りが決まったダニエル・テクレハイマノの走りにも注目したい。

2015年のドーフィネで山岳賞を獲得し、翌年も積極的に逃げに乗っていた山岳逃げスペシャリスト。

今年も、自らを拾ってくれたチームへの恩返しのためにも、しっかりとした結果を今大会で残していきたいところである。

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ブアニなしのコフィディスではあるが、色々と期待できてしまいそうなメンバーリスト。

彼らの動きから、目を離さないようにしておこう。

 

 

 

以上、簡単ではあるが、今回のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネの注目どころを確認してみた。

ツールに向けた事前状況の整理としても、あるいは単純に1週間の厳しいステージレースとしても、楽しんでいけそうなレースであることは間違いないだろう。

2018年シーズン 5月主要レース振り返り

華やかなワンデーレースの祭典となった3月~4月が過ぎ去り、いよいよジロ・ディタリアやツアー・オブ・カリフォルニアといった本格的なステージレースのシーズンを迎えつつある5月。

スプリンター向けのステージレースもいくつか行われ、アンドレ・グライペルやナセル・ブアニなど、ツール・ド・フランスに向けた彼らの現在の調子を見ていくことのできる1ヶ月になったとも言えるだろう。先月の注目選手であるクリストフ・ラポートも、今月も引き続き大活躍だ。

そしてサイクルロードレース界の革命児であり問題児、ハンマーシリーズもいよいよ登場。

ジロだけでない。注目レース盛沢山だった5月のレースを振り返ろう。

 

 

 

  

エシュボルン・フランクフルト(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ドイツ

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1962年初開催の、ドイツ最古のレース。昨年まではルント・ウム・デン・フィナンツプラッツ・エシュボルン=フランクフルトという名称のレースであった。

長年、HCクラスでの開催が続いていたが、昨年にワールドツアークラスに昇格。その名の通りエシュボルンからフランクフルトへと至るスプリンター向けのワンデーレースだが、コースの途中にある登坂区間を乗り越えることがこのレースを制する鍵となる。

今年は昨年よりもさらに登りの数を増やし、よりサバイバルに。地元ドイツの最強スプリンター、マルセル・キッテルにとっては厳しいレースとなった。昨年強力なリードアウトでクリストフの3連勝目をアシストしたリック・ツァベルも、今年は登りで早々に脱落してしまった。

 

逆に、レースの主役となるのは、4連勝目を狙うクリストフを始め、マイケル・マシューズ、フェルナンド・ガヴィリア、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンなどの「登れるスプリンター」たち。

エマヌエル・ブッフマンやシモン・スピラックなどのクライマーたちも積極的な攻勢でチャンスを狙うも、残り3kmでスプリンターチームに捕まえられて、今年も集団スプリントへ。

残り400mで飛び出したのはガヴィリア。早すぎるようにも感じたが、後続を突き放すほどの勢いでもって先行する。

しかし、最終ストレート直前でミスコース? オーバースピード? 失速し、勝利のチャンスを失う羽目に。

強豪スプリンターたちを相手取っての勝利を狙うベルギーチャンピオン、オリヴァー・ナーゼンが先手を取るが、後方からペースアップしたヨーロッパチャンピオンジャージ、 アレクサンデル・クリストフが大会史上初の4勝目、4連勝を達成した。

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昨年はツァベルの強力な牽引のおかげで勝った感もあったが、今年は彼自身の力で勝利を掴んだ。

マイケル・マシューズの加速も素晴らしかったが、少々位置取りが悪かった。

 

 

ツール・ド・ヨークシャー(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:イギリス

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2014年ツール・ド・フランス開幕の舞台となったヨークシャー地方で、翌2015年から開催された1クラスのステージレース。4回目となる今年、ステージ数も増やして全4ステージ。

ワールドツアーチームも6チーム出場し、カヴェンディッシュやコルトニールスン、コカールなどの実力者の他、地元英国の最強チーム・スカイも、クリストファー・ローレスやクリストフェル・ハルヴォーシュン、イアン・スタナードなどの若手からベテランまで勢揃いの本気の体制を組んできた。1クラスとは思えないほどの豪華な顔ぶれである。

それでもやはり1クラス。ワールドツアーチームであっても最強メンバーを揃えているわけではない中、地元コンチネンタルチームも入り混じり、何が起きるか分からないカオスさがこのレースの魅力である。

 

キーワードは「意外」。第1ステージも、明らかにスプリンター向けのステージであった中で、地元コンチネンタルとプロコンチネンタルが中心となった5名の逃げが最後まで足を残し、最終的には今年のコモンウェルスゲーム個人TT銀メダリストのハリー・タンフィールドが優勝。プロレース(1クラス以上のレース)では本人にとってもチームにとっても初勝利となった。

同じチームに所属する弟のチャーリー・タンフィールドも今年のコモンウェルスゲームとトラック世界選手権で個人追い抜き金メダルを獲得するなど、今、英国若手で最も注目するべき兄弟である。

今後もその名を聞くことも多くなるに違いない。タンフィールド兄弟、要チェックである。

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第2ステージも「意外」であった。ラストに激坂フィニッシュが用意されたパンチャー向けステージ。昨年優勝者のパウェルスや、オリンピック金メダリストのグレッグ・ファンアフェルマートなど、一流のパンチャーたちが勝負を仕掛ける。

そんな中、彼らを後ろから追い抜き、勝利を掴んだのは、まさかのマグヌス・コルトニールスン。ピュアスプリンターという印象のあった彼の、この激坂スプリントの力強さはあまりにも意外であった。

僥倖とも言える勝利で総合リーダージャージを獲得したコルトニールスン。当然、そのリーダージャージを守るためにアスタナはチーム一丸となって彼を支える、はずだった。

しかしここも、今年のアスタナの調子の良さから考えると「意外」にも、最終ステージで完全な崩壊を迎えてしまった。

いや、これは意外ではないのかもしれない。アップダウンの激しいコースレイアウトの中で、アンディ・リース氏を喪い、チームも存続の危機を迎えている彼らが、執念の攻撃を繰り返したからこそ、アスタナはアシストを失い、そしてコルトニールスン自体も厳しい登りで力尽きたのである。最終的にファンアフェルマートは総合優勝。チームが勝ち取った、栄光の勝利である。

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最後の「意外」は、第3ステージで勝利したマックス・ワルシャイドである。彼は第1ステージでも集団先頭でゴールしている。

チーム・サンウェブとしては同じドイツ人スプリンターのフィル・バウハウスの方が実績としては上であり、エースであると考えられていた。しかし、今大会、より調子の良さを見せつけていたのがワルシャイド。思えば、4月のシュヘルデプライスでも、バウハウスより上位の6位でゴールしていた。

彼もまた、「意外」とは言わせない結果を今後も見せていってほしい。また新たなジャーマンスプリンターの注目株が現れてくれた。

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ジロ・ディタリア(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:イタリア

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エルサレムからローマへ。砂漠から活火山、アルプスの雪壁まで。

歴史と自然とを巡る3週間の旅路。戦前から期待されていたクリス・フルームとトム・デュムランの最初の本格的な激突も、フルームの完全なる勝利により幕を閉じた。

昨年のツールからグランツール3連覇を達成。史上7人目の全グランツール制覇者となり、ジロ~ツールの「ダブルツール」達成への王手をかけた。

圧巻の80km独走勝利。「最強」の意味をまざまざと見せつけたフルームに、もはや不可能はないように思える。

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敗北はしたが、まぐれでも偶然でもない実力の高さを見せつけたトム・デュムラン。

初日の個人TTで期待通りの勝利を掴んでマリア・ローザを着用し、第2ステージであえてそれを手放した後、一度たりとも総合2位を奪わせはしなかった。*1

一流クライマーたちに囲まれながら、決して崩れることなく、確実に自分の地位を守り続けた。その安定感の高さは、個人TT能力と並んでフルームを凌駕する能力であり、今後もまた、フルームに対する最大の対抗馬として期待を持ち続けることができる。

チーム力の差は如何ともしがたい。しかし、最終ステージでのサム・オーメンとの「互いが互いの成績を犠牲にしてでもチームメートを助けよう」とするコンビネーションなど、相変わらず、純粋な強さとは違ったチーム力の高さを見せてくれるサンウェブ。

ハンマー・スタヴァンゲルでも常に2位を保ち続けるなど、本当にこのチームは、他チームにはない魅力をもっていると感じる。

 

チーム力で言えば同じくスタヴァンゲルで活躍したミッチェルトン・スコット。

ジロではサイモン・イェーツの突然の覚醒に注目したものの、その最初の爆発と言えるエトナ山でのアタックは、エステバン・チャベスの逃げによって導かれたといっても過言ではない。

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その後も、ジャック・ヘイグとミケル・ニエベといった強力なアシストたちにより、マリア・ローザを着るサイモン・イェーツは守られ続けていた。

イェーツが全てを失った第19ステージでも、ニエベらが最後まで彼を支えようとしており、このチームであれば、今後再び頂点を目指すことも十分に可能だろうと感じさせてくれる。しかし、エースを失ったことがわかると早速ステージ勝利を取ってしまうニエベの強さは、さすが元スカイである・・・。

あとはイェーツが経験を積むこと。そして、チャベスが安定感を手に入れること。

 

スプリンターではエリア・ヴィヴィアーニが期待通りの成績を叩き出し、改めて今期最も勢いのあるスプリンターであることを証明した。とりあえず昨年のガヴィリアに並ぶ結果でよかった。

しかしそこに喰らいつくサム・ベネット。しかも、ヴィヴィアーニが遅れたときだけに勝ったわけではなく、彼の背後をしっかりと取るなど戦略的にも勝ち、最終日ローマでは力で真正面から捻じ伏せた。

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こちらもチーム力ではクイックステップには歯が立たない。そんな中、サガンゆずりと言うべきか? うまく立ち回る強さを見せて、昨年0勝からの飛躍となる3勝を掴み取った。

アイルランド人としても大きな成果を出し、今大会イェーツと並び急成長を遂げた選手だ。

 

というより、他のスプリンターたちが若干、不甲斐ないように感じる・・・。ダニー・ファンポッペルとかも、頑張ってはいたのだけれど・・・。

総合でも6位以下は10分以上離れているなど、総合でもスプリントでも、上位数名とそれ以外との差が大きく離れていた大会だったように感じる。

 

 

ダンケルク4日間レース(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:フランス 

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北フランス、オー=ド=フランス地域圏の北側を主戦場にして開かれるステージレース。北海から吹き付ける強い海風と、パリ~ルーベでも使われる石畳がレースに影響を及ぼす「北のクラシック」の残り香的レースである。

よって、ジロ・ディタリアの裏側ではあるものの、過去の優勝者も非常に豪華。ブライアン・コカールやアルノー・デマール、トマ・ヴォクレールなど。

今年もAG2Rラモンディアル、グルパマFDJ、ロット・スーダルの3つのワールドツアーチームが参加し、名うてのクラシックハンターたちが集結した。

なお、4日間という名で6日間開催なのはお約束。サイクルロードレース七不思議の1つに数えられる。

 

今期ここまで勝利なし、ツール・ド・フランスへの出場も危ぶまれていたナセル・ブアニが歓喜の勝利。また、同じくあまりの勝てなさに苦しんでいたコカールもなんとか今期2勝目を手にした。

苦しんでいたのはこの男も同じ。ロット・スーダルのエースとして出場したのはアンドレ・グライペル。例年のこの時期はジロ・ディタリアで大暴れしているこの男が、今年9年ぶりの出場を決めた。

目的は、怪我などもあり1月のツアー・ダウンアンダー以来遠ざかっていた勝利を再び手にすること。その狙いは的中し、見事2勝を稼ぎ出した。

そのうちの1勝は、彼にしては珍しい「逃げ切り勝利」。石畳の街カッセルの、2か所の急坂を含む周回コースを9周するサバイバルなクイーンステージ(第5ステージ)で、2名のお供を引き連れてゴリラが爆走した。

最終周で2名を突き放したグライペルはそのまま勝利。復活を印象付けた。

しかし、初日ステージでの24秒の遅れが響き、結局第5ステージで2位につけたクライスに、わずか1秒差で総合優勝を奪われてしまった。

それでもこの6日間、純粋な強さからこの逃げ切り勝利、さらにはデブイストのリードアウトをする姿など、様々なグライペルを見ることができた。

今大会でプロ150勝目を遂げた彼が、ツール・ド・フランスでまた圧倒的な強さを見せてくれることを楽しみにしている。

 

 

ツアー・オブ・カリフォルニア(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:アメリカ

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ベルナル、ついにワールドツアークラスで総合優勝。

期待され過ぎるくらい期待され、その期待すらも上回る結果を出し続けるこの男にはもはや脱帽である。

ブエルタ辺りに出場していきなり総合表彰台・・・なんてありえないことを想像してしまうが、それも彼ならばやってのけても不思議ではないだろう。むしろ総合優勝? いや、まさか・・・。まさか・・・。

 

しかし現状、ツールへの出場の可能性が浮上しつつあるようだ。その理由がまたすごくて、「ブエルタに出るとエースになってしまい本人への負担が大きすぎるから」だとかなんとか・・・。まだ21歳、今年ワールドツアー初年度の若造ですよ? ゲラント・トーマスやミハウ・クフャトコフスキなど才能が溢れかえっているチーム・スカイで、ですよ?

もはや基準がおかしい。

また、ツールに出たら出たでフルームとのエース争奪戦が激しくなることなどを期待してしまいそうで、いやはや。

とりあえず前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネには出る予定。ジロに出場したフルームはドーフィネ不参加の為、ゲラント・トーマスがエースナンバーを着けるだろうが・・・ベルナルが実質的なエースとして振舞ってもおかしくはないだろう。

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また、今回のカリフォルニアはトップスプリンターが集結し、「ミニ・ツール」と形容しても良さそうな面子であった。

その中で他を圧倒し3勝したフェルナンド・ガヴィリアはやはり鬼才。これに喰らいついたユワンも、勝てなかったので目立っていないが十分に凄い。

そしてキッテルは相変わらず不調。ツールまでには戻せるか?

 

各ステージ優勝者以外の「若手」活躍選手たちについては以下の記事を参照とのこと。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

ツアー・オブ・ノルウェー(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ノルウェー

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ヴィヴィアーニやガヴィリアほどの派手さはないものの、勝つべきレースで着実に勝っていく印象のあるフルーネヴェーヘン。今回は3勝も成し遂げ、いよいよ「今期最強スプリンター」の一角であることは間違いない。

だが、残念ながら今年の「ノルウェー1周」は、昨年のようにスプリンターが総合優勝できるタイプのレイアウトではなかった。ゴール20km手前に登坂距離2.5km、平均勾配9.3%の激坂1級山岳が用意された最終ステージ。

フルーネヴェーヘン、ソンドレホルスト・エンゲル、エドヴァルド・ボアッソンハーゲンといった総合上位に鎮座していたスプリンターたちは軒並み崩れ落ち、唯一昨年総合優勝者のボアッソンハーゲンだけがなんとか喰らいついていったものの、抜け出したデンマークのコンチネンタルチームの選手が逃げ切り優勝を果たした。

9秒遅れの3位にはノルウェーの「チームジョーカー・イコパル」所属のカールフレデリック・ハーゲン。ノルウェーデンマークはコンチネンタルチームの選手が普通にHCクラスで優勝したり上位に入ってくるので、やはり勢いが違う。才能の宝庫である。

そんな中、この日もアレクサンデルと同タイムで2位に入り、総合優勝を果たしたのはスペインの新プロコンチネンタルチーム「エウスカディ・ムリアス」のプラデス。

2014年にはマトリックス・パワータグに所属し、Jプロツアー南魚沼ステージでも1勝している彼は、その後スペインのカハルラルに4年間在籍し、今回このバスクチームへの移籍を決めた。なお、彼はタラゴサ出身であり、バスク人ではない。

エウスカディ・ムリアスというチームにとっても、初のHCクラスレースでの勝利となった。往年の名門チームの復活を夢見て、チーム創設4年目となる今年。プロコンチネンタルチームへの昇格と共に、着実に成績を伸ばしている。

今年はミケル・ランダがプレジデントを務める「エウスカディ財団」がコンチネンタルチームとして発足。チームランクの差はあれど、同じレースに出ることも多く、象徴的なオレンジカラーを使用するこのチームには負けたくないという思いも強いだろう。

 

 

ツアー・オブ・ジャパン(2.1)

アジアツアー 1クラス 開催国:日本

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日本最大のステージレース。1996年から開催され、今年で21回目となる。

今年は引退イヤーとなったダミアーノ・クネゴ(ニッポ・ヴィーニファンティーニ)や、2年ぶり出場となった新城幸也(バーレーンメリダ)など、豪華メンバーが揃う。

その中で、昨年のジャパンカップでも活躍した若手の星、雨澤が京都ステージでいきなり勝利。日本のファンを沸かせた。

さらに、このとき2位だったグレガ・ボーレが翌日のいなべステージでリベンジ。その勝利の裏には、落車し、血を流しながらも前を牽き続けた新城の執念の走りがあった。彼はこの翌日にDNS。伊豆ステージも含めて2勝したボーレはそのまま今大会のポイント賞を最後までキープし、見事な結果を残した。

落車負傷した新城幸也の猛アシストを起点に、グレガ・ボーレを勝利に導いたチーム戦術とは? - サイバナ

山岳賞は伊豆ステージで逃げに乗った鈴木譲(宇都宮ブリッツェン)が逆転獲得した。日本人選手によるワンツーだ。最終日の表彰式では駆けつけたブリッツェンファンたちの歓声が印象的だった。

総合優勝は山本元喜選手も所属するキナン・サイクリングチーム。総合3位もトマ・ルバが獲得し絶好調。5/31から開催される地元レース「ツール・ド・熊野」での活躍にも期待したい。

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個人的に最大の注目選手は新人賞のクリス・ハーパー(ベネロング・スイスウェルネス)。今年のオセアニア大陸選手権ロードチャンピオンだ。

富士山ステージを3位、伊豆ステージを2位と、難関ステージで上位に入る強い走りで総合でも4位に喰い込んだ。今年24歳。

今後も、アジアツアーのレースでの活躍が見込める選手で、名前を覚えておいて損はないだろう。

 

 

ツール・デ・フィヨルド(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ノルウェー

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ツール・ド・ノルウェーの舞台となったオスロ周辺から南西に進み、半島のノルウェー部分の南端、北海沿岸を走る。さらに西に進めばハンマーシリーズの舞台、スタヴァンゲルに至る(さらに北へ進めばベルゲンだ)。ノルウェーフィヨルド→スタヴァンゲルと連戦するのが今後も基本スタイルとなるのだろうか。

その名の通りフィヨルド地形の美しいランドスケープを楽しめる。細かいアップダウンが連続するものの基本的にはフラットで、例年通りスプリンターに有利なステージレース。期待のネオプロ勢の1人で今年既に2勝している実力者ヤコブセンが3勝目を決め、最終日には同じくネオプロのランブレヒトが今季初勝利。昨年ツール・ド・ラヴニール総合2位で高い注目を集めていたが、トラブルにより年初のダウンアンダーに出られないなど不運に見舞われつつも、ようやく初勝利。

そして総合優勝者は名パンチャー・アルバジーニ。毎年のように勝利を挙げていたロマンディで今年は勝利なし。悔しい思いをしていた中で、ようやく勝ち星が巡ってきた。

直後のハンマー・スタヴァンゲルでも大活躍するなど、今年のアルバジーニは「北」向きなのか?

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ベルギー・ツアー(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ベルギー

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1908年から続く伝統的なステージレース。フラマン語ではロンド・ファン・ベルヒエとも。過去にもトニー・マルティンフィリップ・ジルベール、グレッグ・ファンアフェルマートなどの実力者たちが優勝者に名を連ねている。

グライペル、そしてコカールがダンケルク4日間に続いて勝ち星を挙げ、調子を上げてきていることを証明した。またダンケルクで活躍したブアニの代わりに、今年コフィディスで最も勢いのある男ラポートが更なる勝利を重ねた。

今年すでに5勝目だが、自身初のHCクラスレースでの勝利である。スプリント、激坂、石畳だけでなく、個人タイムトライアルでも安定して成績を出しており、まさに進化の途上にある男と言える。

だがそんな彼も、ユイの壁を含んだクイーンステージの第4ステージではついていけなかった。代わって総合優勝を決定づけた走りを見せたのは、昨年総合優勝者のクークレール。チーム移籍後、待望の初勝利となった。

 

 

ハンマー・スタヴァンゲル(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:ノルウェー

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第1回となった昨年のハンマー・リンブルフは、実にカオスな展開でもって大興奮の結末を迎えた。それが主催者の意図していたものであったかは別として。

第2回となった今回は、それと比べて比較的落ち着いた「まともなレース」となった分、面白さが伝わりづらい微妙な展開になってしまったのは否めない。

ロードレースは確かに、平坦ステージではとくに単調で冗長な場面も多いものの、その分、最後の集団スプリントは一瞬の熱量が凄まじく、観て分かる面白さがある。

一方、より分かりやすく、よりエンタテインメント性を、と考えて作られたこのハンマーシリーズが、むしろ複雑なルールの上で分かりづらい印象を与えているのは成程、皮肉なものである。

先頭でゴールラインを切った選手もポイント首位チームもいずれもガッツポーズを見せなかった場面もあったりと、選手たちもまだまだ戸惑いを隠せない様子。

おそらく、このルール自体はとても面白い。よくよく理解して楽しみ方を覚えれば、従来のロードレースにはない魅力がたくさん詰まっていることに気が付くだろう。本来このシリーズが目指していたものと一致するかはわからないが。

また、とくにハンマースプリントが面白かったな、という印象で、あれだけ毎周回本気のスプリントが繰り広げられることで、実績では随一であったはずのクリストフが、最後はネオプロのハルヴォーシュンに敗れるという意外な展開があったりと、見ごたえがあった。

これも普通のロードレースにはない展開だ。

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とにかく、まだまだ面白さに安定感がないのが否めないが、それでも、ついつい見続けてしまう新鮮さがあるのは事実だ。

裏で開催されていたジロ・ディタリアが、毎ステージドラマティックなジェットコースターのような展開の連続で、見ていて心労が溜まっていくようなものだったのに対し、そこまで緊張感なく、選手も「スポーツ」として純粋に楽しんでいる感のあるハンマーシリーズはなんか見ていて癒されもする。

 

なんだかんだでハンマーリンブルフも楽しみ。出場選手も豪華だしね。

 

 

*1:※間違っていました。第9ステージで一度だけチャベスに総合で抜かれて3位になっていました。それ以外では常に総合2位です。

「王者」と「最強チーム」の実力の証明【クリス・フルーム80km独走勝利――ジロ・デ・イタリア2018 第19ステージ】

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ジロ・デ・イタリア第19ステージ コースレイアウト

今大会最大の山場となる「チマコッピ・フィネストーレ峠」を含む185km*1

前日までの総合順位は以下の通り。

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第18ステージ終了時点の総合順位 白地は新人賞対象

ここまで絶好調だったサイモン・イェーツは、前日の第18ステージの終盤でフルームやデュムランに置いていかれたことにより、28秒を失っている。

3週間の戦いの中でいよいよ疲れが見えてきたか。デュムランにとって、この第19・第20ステージは非常に重要な戦いとなる。

 

一方、デュムランと並んで総合優勝候補に挙げられていたクリス・フルーム

第14ステージ「ゾンコラン」にて実力を発揮してステージ優勝を飾ったものの、その他の山岳ステージでは常に遅れる姿を見せ続けており、第16ステージの個人タイムトライアルで盛り返したものの、現時点で総合首位イェーツとのタイム差は3分超。

総合表彰台はまだしも、マリア・ローザ獲得はほぼ不可能と目されていた。

 

ジロ初制覇を目指したフルームとチーム・スカイの試みは失敗に終わった。多くの関係者、視聴者、ファンがそう感じていたに違いない。

第17ステージでのプールスらの積極的な動きが、何よりも彼ら自身が「諦めた」のではないか、そういう風にも感じさせていた。

 

 

しかし、フルームもチーム・スカイも、諦めてなどいなかった。

この日、「フィネストーレ」決戦。

若き同国人にその座を奪われかけたように思われた「王者」と彼に仕える「最強チーム」は、その実力を遺憾なく発揮し、新たな「伝説」を作った。

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ミッチェルトン・スコットの戦略

逃げ切りが狙える山岳ステージは今日も含めてあと2日。

今大会まだ勝利を掴めていないチームを中心に、アクチュアルスタート直後から激しいアタック合戦が繰り広げられた。

スタートから1時間半が経過した段階で平均時速は41km/h。2級山岳を挟んでこれなので、非常に速いペースだ。

逃げ集団は15名。しかし、メイン集団とのタイム差は1分を切っており、集団からブリッジしてくる選手がまだ数名いるほどである。

メイン集団をコントロールしてハイペースで追い上げているのはミッチェルトン・スコット。

なぜ彼らが、そこまでして逃げ集団を追走するのか?

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理由の1つは、彼らが逃げ集団に選手を送り込めなかったことにあるだろう。

サンウェブはローレンス・テンダムを送り込み、バーレーンメリダジョヴァンニ・ヴィスコンティ、スカイに至ってはダビ・デラクルスとセルヒオルイス・エナオの2名を先頭に入り込ませていた。

いずれもエースを担えるほどの実力者揃い。彼らの逃げを許していては、勝負所での「前待ち」が恐ろしすぎる。

これが、ミッチェルトン・スコットが必死に逃げを潰そうとする狙いの1つであろう。

 

もう1つ理由があるとすれば、サイモン・イェーツの調子が前日に引き続き良い状態ではなかった、ということがあるかもしれない。

このままフィネストーレ峠に突入し、スカイやサンウェブに万全の状態で集団コントロールの主導権を奪われてしまった場合、イェーツが集団からずるずると落ちていく可能性が非常に高い――そう考えたミッチェルトン・スコットは、フィネストーレに到達するまでの平坦路にてハイ・ペースで集団を牽引することで、ライバルチームの足をできる限り削ってしまおうと考えたのかもしれない。

サム・ビューリーやユールイェンセン、スヴェン・タフトといった平坦牽引を得意とする名ルーラーが揃っているミッチェルトンだからこそ取れる作戦。

そして、そうでもしなければこの日、大きな損失を被ってしまうことが十分に予想されるコンディションにサイモン・イェーツが陥っていたことに、チームは気づいていたのだろう。

 

しかし、ミッチェルトンのその狙いは、十分に果たされることがなかった。

残り90kmから始まるフィネストーレ峠への登り。

その登坂が開始されたと同時に、「最強チーム」が反撃を開始する。

ミッチェルトンにとっては十分予想され、そして防ぎようのなかった「悪夢」であった。

 

 

チーム・スカイの実力

過去のグランツールで幾度となく「王者」を護り、そしてライバルチームたちを粉砕してきた現代最強のトレイン、チーム・スカイ。

フィネストーレ峠に登り始めた瞬間から先頭を奪ったその隊列は、先頭サルヴァトーレ・プッチョから順にダビ・デラクルス、セルヒオルイス・エナオ、ケニー・エリッソンド、クリス・フルーム、そして最後尾はワウト・プールスという並びであった。

登り始めからおよそ4kmに渡って、まずはサルヴァトーレ・プッチョが全力で牽引を続けた。

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1989年8月にシチリアで生まれ、今年で29歳になるイタリア人。22歳のときにU23ロンド・ファン・フラーンデレンで優勝し、スカイにトレーニーとして加入。翌年から正式加入を果たし、現在に至るまでスカイ一筋で走り続けてきた。

2013年に初のグランツールとしてジロ・デ・イタリアに出場。以後、2016年大会以外のジロに出場。ツール・ド・フランスの出場経験はなく、プロでの勝利経験もない。華々しい選手たちが数を揃えるチーム・スカイの中では地味な立ち位置にはあるものの、昨年のミケル・ランダの山岳賞やステージ優勝を支えるなど、母国イタリアにおける活躍は毎年選ばれるだけの理由があった。

 

プッチョの単身での牽引により、ついに残り86km地点。サイモン・イェーツが遅れ始めた。

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ミケル・ニエベら強力なアシストはまだ残っていた。彼らはイェーツを救い上げるべく、自らのペースを落としながら彼の傍に仕え続けていた。

しかし、イェーツ自身がもはや、足を動かすことができずにいた。

ギリギリのところで耐え続けていた彼も、ついにこの平均9%の長い長い登りを前にして、糸が切れたように崩れ落ちてしまった。

 

 

これを見て、チーム・スカイは更なるペースアップを目論んだ。

4kmに渡り先頭牽引を続けていたプッチョはこの瞬間に仕事を終え、続いてフレッシュさを保ち続けていたダビ・デラクルスが集団をリードアウトする。 

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2016年ブエルタ総合7位、昨年のブエルタも途中リタイアにはなるもののクイックステップのエースとして力強い走りを見せていた彼が、今年、スカイのフルーム親衛隊として新たに加入。

その実力を遺憾なく発揮し、このフィネストーレの登りにて、遅れ始めたサイモン・イェーツとのタイム差を2分にまで開いた。

 

そして、5kmに及ぶデラクルスの強力な牽引の後、フィネストーレ登坂はついに「未舗装路」に突入する。

そしてスカイ・トレインは最後の銃弾、ケニー・エリッソンドを装填する。

 

 

エリッソンドの1km、フルームの7km

エリッソンドが先頭を牽引した距離は1kmのみだった。

それまで4kmを牽引したプッチョ、5kmを牽引したデラクルスに比べれば、非常に短い。

しかし、その分彼は、全てを出し切る勢いでフルームを牽引した。

チェーンが激しく暴れ回るような状態の悪い未舗装路の上を、上体を前後左右に揺らしながら、彼はひたすら王者を先導した。 

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21歳のデビュー当初からFDJに在籍し続けてきたフランス人クライマー。2年前のブエルタで、オマール・フライレとの熾烈な山岳賞争いを演じた。

その翌年、スカイに移籍。山岳におけるフルームの右腕候補として期待されつつも、他の多くのスカイ有力移籍選手がそうであるように、1年目はイマイチぱっとしない走りに終始してしまった。

だが、4月の「ジロ前哨戦」ツアー・オブ・ジ・アルプスにて、フルームをアシストするその働きに注目が集まる。いよいよ、求められていた実力が発揮されつつあるのか。ジロ前半戦ではプールスの方が目立ってはいたものの、今回のこのフィネストーレ決戦にて、ついにその才能が発揮された。

野獣のような強力な先頭牽引によって、総合3位にポッツォヴィーヴォを始め実力者たちを次々と引き千切っていき、集団を一気にぐっと小さくしてしまった。

 

 

そして、残り80km。フィネストーレ頂上まで7km。

ここで、「王者」がついに解き放たれる。 

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アシストを全て使い切っての、反撃不可能な強力な一撃であった。

確かに、この発車の仕方であれば、ライバルたちが反応することはできず、確実に独走を勝ち取ることができる。

しかし、あくまでもまだゴールまで残り80km。

フィネストーレで登りが終わりなのではなく、残り2つ、強力なセストリエーレとバルドネッキアが残っている。

 

あまりにも無謀。

だが、フルームには勝算があり、そしてデュムランには敗因があった。

 

 

クリス・フルームの勝算

フィネストーレ頂上に向けたフルームの単独走7kmで開いたタイム差は40秒。

フルームの奇襲と、最も彼を追うべき理由を持っていたデュムランがほぼ単独で追走を仕掛けなければならなかったがゆえに、そのタイム差はじわじわと開いていった。

それでも、まだ40秒。

このあとの長い距離の存在を考えれば、デュムランにとっては、「まだ追いつける」と考えるのに十分なタイム差であった。

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しかし、フルームはこの無謀とも言えるアタックを成功させるだけの確信があった。

それは、フィネストーレ頂上から11kmに渡って750mを下る、急勾配で危険極まりないダウンヒルの存在である。

 

独走力ではデュムランに敵わず、登坂力でも彼はフルームに匹敵すると言ってもよい。チーム力の差はあれど、ここまでの2週間によってできたタイム差は3分。決して小さなものではない。

しかし、フルームが彼を乗り越えることのできる要素はもう1つ。

それが、この「宇宙的」なダウンヒル能力であった。

60kmを超えるハイスピードで、ガードレールのない狭い山道を、ギリギリのライン取りで駆け降りていくフルーム。フィネストーレは十分に試走したとコメントしていたフルームだが、このダウンヒルもやはり試走済だったのだろうか。

 

フィネストーレ頂上から11kmを経て、40秒だったタイム差は一気に1分30秒超にまで開いた。

「まだ追いつける」から、「追いつくことはできないかもしれない」とデュムランに思わせるには、十分なタイム差となった。

 

 

また、フルームは下り切ったあとの短い平坦路で、ひたすら補給を繰り返していた。

2013年のツールでは、ハンガーノックによって危機的な状況に陥った経験のあるフルーム。また、2016年のジロでは、当時総合首位だったクライスヴァイクがハンガーノックに見舞われていた様子でもあった。

ハンガーノックという、ここまでの走りの全てを無駄にしてしまうアクシデントを避けるべく補給を取り続ける――総合大逆転がかかる大一番のこのときに、フルームが非常に冷静な精神状態にあったことがよくわかる。

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一方で、後方のデュムランとそのグループは、冷静さを欠き続けていた。

 

 

トム・デュムランの敗因

当たり前だが、デュムランは決して弱い選手ではなかった。

昨年のジロ・デ・イタリアの「オローパ」でも、アタックしたナイロ・キンタナを冷静に追い続け、自ら集団の先頭で淡々と踏み続けたことでやがて彼に追い付き、最後にはこれを下した。

のちにクイーンステージでのトラブルにより大きくタイムを失い、第20ステージではマリア・ローザを奪われもしたものの、最終ステージの個人TTで冷静にベストコンディションを発揮し、危なげなく総合優勝を勝ち取っただけの実力が、彼にはあった。

 

だが、そんな彼がこのフィネストーレでは、フルームに完全に打ち負かされてしまった。

コンディションが悪かったわけではない。それは本人もレース後のコメントで語っている。フィネストーレの登りでも、タイム差は最小限に留めることができた。十分に挽回可能なタイム差で、頂上を超えることができた。メカトラで遅れ慌てる素振りを見せたピノに対しても抑えるサインを出せるくらいには、落ち着いていたはずだった。

 

しかし、ダウンヒルにてあまりにも差をつけられすぎた。このあたりから、冷静さを失っていたのかもしれない。

グルパマFDJのアシスト、ライヒェンバッハを待つという選択肢は果たして正しかったのか。

ピノライヒェンバッハに先導を任せることの損失は想像以上に大きかったのではないか。

「追いつける」から「追いつけないかもしれない」――だから、そのタイム差を最小限に抑えよう、とか、せめて総合表彰台は守ろう、というような消極的な思いに切り替わってしまったとき、本来デュムランが持っている強さが、失われてしまったのかもしれない。

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もちろん、そんな状態を作ったのはチーム・スカイの戦略であった。

 

今日のような展開はクラシック・レースでもよく見られる展開であった。

同じような実力をもった選手同士が争っている中、一人が抜け出し、残された集団がエースばかりだったとき、1vs多数という、自転車ロードレースの常識に照らし合わせれば後者が圧倒的に優位な状況下でも、なぜか前者が有利な展開へと変わってしまうということはよくあることだった。

 

それは多分に精神的な理由である。1人で抜け出した選手はもう誰に構うこともなくひたすら全力で踏み続けられるのに対し、エース同士が牽制し合う追走集団の方では、それぞれがそれぞれの全力を出すこともできず、ローテーションもうまく回せず、数の優位を活かせずに終わる。

今大会のエトナや第15ステージにおけるイェーツの独走なんかも、似たような状況に陥った結果であった。

 

だから、いかに最初に一人で抜け出すことができるか。それさえ実現すれば、あとは逃げ切ることは比較的容易になるのだが、そのための「飛び出し」を最高にお膳立てしてくれたのがチーム・スカイのチームとしての実力であった。

あのとき完全にしてやられたデュムランは、さらにその後のダウンヒルでも大きく差をつけられたことで、一気に不利な状況に立たされてしまったのだ。

 

そこから勝利を手に入れるためには、消極的な姿勢を捨てて、フルームと同じように「もはや失うものはない」という精神状態に入り込む必要があった。

周りがどれだけデュムランを出し抜こうとしてもお構いなしで、自らの力だけでフルームとのタイム差を縮めるべく尽力すること――それが、このときのデュムランに必要なやり方だったのかもしれない。

1年前のオローパのときと同じように。

 

とはいえ、オローパのときと比べても距離がずっと長く、その距離をあのペースで踏み続けられたフルームがあまりにも強すぎたのは確かだ。

 

それでも、まだタイム差は40秒でしかない。

逆に、ようやく「頂上決戦」の舞台が整った、と考えるべきであろう。

大会前から期待していたこの「最強」の二人の激突。

デュムランも自らが今、後ろ向きな気持ちになっていることは自覚しており、この精神状態を正常なものに戻したうえで、最終決戦に挑むことになるだろう。

 

ついに王者への挑戦が始まる。

今こそ、トム・デュムランの本当の強さを見せるべきときだ。

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本日「チェルヴィニア」最終決戦。

ローマにて栄光のマリア・ローザを着るものが誰になるか、まだまだ予想はつかない。

*1:元々の184kmから1km延長した。

ベスト・オブ・ヤングライダーズ in ツアー・オブ・カリフォルニア2018【U25限定レビュウ】

ツアー・オブ・カリフォルニアは、これから伸びる若手選手たちの発掘場である。

主戦場のヨーロッパから遠く離れ、グランツールと比較すればそこまで山岳が厳しいわけではないカリフォルニアは、グランツールの総合争いをする一流選手たちを多く連れてくるわけにもいかず、比較的若い選手たちの出場が多くなる。

実際に過去にも、地元アメリカの育成重視チーム「ハーゲンスバーマン・アクセオン*1」の20歳前後の選手たちが活躍したり、一昨年・昨年とジュリアン・アラフィリップ、ジョージ・ベネットといったまさに伸び始めていた選手たちが総合優勝を果たしてもいる。

 

特に今年は、ワールドツアー化2年目ということもあり、特にスプリンターの出場選手は豪華に、コースレイアウトも例年以上に山岳が厳しくTTが長くなるなど、本場グランツールにも負けないようなプロフィールを用意してきている。

そのような今年のカリフォルニアの環境下で活躍した選手たちは間違いなく、今後も台頭してくるであろう実力者であるに違いない。

 

だから、今回はいつもと趣旨を変え、各ステージの「優勝者以外」の活躍した選手たちの中から、25歳以下に限定して注目選手をピックアップしていく。

勝ってはいないけれども、目覚ましい活躍をした若手選手たちに注目することで、数年後彼らがより大きなレースで活躍したときに「やっぱりな」と思えるようになるはずだ。

 

 

 

第1ステージ ヤスペル・フィリップセン

ベルギー/20歳/ハーゲンスバーマン・アクセオン/スプリンター 

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デパンヌ3日間レースでヴィヴィアーニ、アッカーマンに続く3位を記録した驚異の若手スプリンター。

その実力を反映するかの如く、最強スプリンターが集うこのカリフォルニア初日ステージで6位という結果を叩き出した。

だが、彼の「凄さ」はその結果だけではない。この結果を出すために彼がゴール前で繰り出した動きにこそ、彼の底知れなさを感じさせる。

 

ゴール前300m手前。最終発射台のマキシミリアーノ・リチェセにリードアウトされるフェルナンド・ガヴィリアに対し、果敢に肩をぶつけながら最適なポジションを奪おうとするフィリップセン。

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一度、二度と肩をぶつけてくるフィリップセンに対し、ガヴィリアもこれを力で押し返す。

結果としてガヴィリアがその場所を譲ることはなかったが、フィリップセンもバランスを崩すことなく最後のスパートをかけ、サガンやキッテル、クリストフらに追い抜かれはしたものの、ステージ6位でゴールすることはできた。

ゴール後、ガヴィリアに厳しく窘められる姿も。実際、昨年のツールもこういう動きによって落車とリタイアが発生してもいる。「やり過ぎ」はご法度。先輩として、若手の無謀に対する注意は欠かせないことだろう。

 

しかし大先輩たちに対して憶することなく闘志を剥き出しにする20歳の野獣系スプリンター。将来が楽しみな選手であるのは間違いない。

今大会は2回目のピュアスプリントステージとなった第5ステージでDNFと残念な結果。今後、より経験を積み、過酷なワールドツアーレースで更なる実績を積み上げられるよう成長してほしい。

 

 

第2ステージ ダニエルフェリペ・マルティネス

コロンビア/22歳/チームEFエデュケーションファースト/オールラウンダー 

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昨年まではウィリエール・トリエスティーナに所属し、昨年はジロに出場したほか、ツアー・オブ・ターキーでもクイーンステージで区間3位、最終総合成績でも4位に入った。

現在急成長中の若手コロンビア選手の1人だが、今回のカリフォルニアで更に一皮剥けた形に。第2ステージのジブラルタルロード頂上決戦で、優勝者ベルナルから30秒遅れの区間5位となった。

もう1つ注目すべきは、独走力の高さ。今年のコロンビア国内選手権ではベルナルに次ぐ2位。そして、今大会の第4ステージに用意された34.7kmの個人タイムトライアルでは、ベルナルを上回る区間10位であった。

これらの成績を受けて、最終総合成績でも総合3位。今大会、7ステージ中5ステージをコロンビア人が制した形になったが、総合成績においても1位・3位をコロンビア人が独占したことになる。

なお、ステージレースだけでなく、昨年はミラノトリノで7位、トレ・ヴァッレ・ヴァッレジーネで9位など、クライマー向けのワンデーレースでも成績を残している。

今後、チームEFのステージレース及びアルデンヌ系クラシックのエース候補として注目していくべき選手である。

 

しかしチームEF=キャノンデールは本当、ウッズやベヴィンなど「どちら様系」の獲得・育成に定評のあるチームである。そういうところは本当、好き。

 

 

第3ステージ カレブ・ユワン

オーストラリア/23歳/ミッチェルトン・スコット/スプリンター

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もう「若手」とは言えないような印象もあるがまだ23歳。7月に24歳となる。

今大会勝つことができなかったのは残念だが、しかし今シーズン、少しずつ進化を遂げている彼の走りを象徴する結果だったのがこの第3ステージである。

 

カレブ・ユワンと言えば、その名前が大きく取り上げられるきっかけとなったのは2015年ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。登りフィニッシュでサガンとデゲンコルブを下しての勝利であった。

その後、2016年のツアー・ダウンアンダーで2勝。「ポケット・ロケット」の愛称と独特の超低空スプリントで話題を大きく集めた選手となった。

しかし、そのダウンアンダー第2ステージの「スターリング登りフィニッシュ」ではずるずると遅れる姿が映し出され、ブエルタでは登りで勝ったとはいえ、あくまでも基本はピュアなスプリンターなのかな、という印象を感じていた。その後も、ド平坦スプリントでは輝かしい勝利を重ねながらも、ミラノ~サンレモなど多少の登りを踏まえるスプリンター向けレースではそこまでの結果を出せない姿を見て、その思いを強くした。

 

しかし、今年はその走りに変化が現れたように感じる。ダウンアンダーでは、2年前のリベンジとでもいうように、スターリング登りフィニッシュで優勝を飾った。また、ミラノ~サンレモでは勝利こそ逃げ切ったニバリに奪われたものの、集団内で先頭を獲っての2位。昨年、フェルナンド・ガヴィリアがジロ・ディタリアで登れる姿も見せてマリア・チクラミーノを獲得したのに触発されたかのように、今年のガヴィリアは(多少のピュアスプリント力を犠牲にしつつも)「登りを含んだスプリント」での活躍を見せつつある。

 

そして、今回の第3ステージである。小刻みな山岳を越えてラグナ・セカに至るパンチャー向けのレイアウト。

2年前、同じようなレイアウトで登場したときは、登りにも強いペテル・サガンが強豪スプリンターの中で唯一残り、余裕の勝利を獲得した。

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今回もステージ優勝は、過去2回のカリフォルニア勝利を果たしている名パンチャー、トムス・スクウィンシュ。

しかし彼らを追走したメイン集団の先頭を獲ったのはカレブ・ユワン。サガンを退けて、連続する山岳を越えた先のスプリントで「勝利」したのである。ガヴィリアもこの日は4分39秒遅れであった。

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この日の3位もあり、第1・第5ステージも勝てはしなかったが2位に入ったことにより、最終日までポイント賞ジャージを確保することができていたユワン。

しかし最終日、ガヴィリアに優勝され、ユワンが3位となってしまったため、3ポイント差という僅差での敗北を喫してしまった。

 

結果、勝利も特別賞ジャージも持ち帰ることができず、その意味で「失敗」した今回のユワン。

だが、この1週間で得た自信は必ず次につながるものだと思われる。

ツール・ド・フランスでは、その経験が結果に結実されるだろうか。

 

 

第4ステージ① ミケル・ビョーグ

デンマーク/19歳/ハーゲンスバーマン・アクセオン/TTスペシャリスト

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今大会最年少? 昨年の世界選手権U23個人タイムトライアル王者として名を馳せた。当時はジャイアント・カステリ所属だったが今年はチーム自体が消滅し、この「最強育成チーム」への移籍を果たした。まだまだワールドツアーチームへの挑戦は先のこととなるだろう。今はまずは経験を積んでいきたい。

また、第1ステージではフィリップセンの最終リードアウトとして貢献した。名スプリンターには名TTスペシャリストの存在が必要不可欠。ボブ・ユンゲルスしかり、トニー・マルティンしかり。最終発射台こそスプリント力が重要になるが、それ以外では集団先頭での高速牽引、および逃げを捕まえる役割として独走力の高い選手の存在は非常に重要になる。

今後も、フィリップセンとのコンビネーションで、チームに多くの勝利をもたらしてもらいたいものだ。

 

 

第4ステージ② タオ・ゲオゲガンハート

イギリス/23歳/チーム・スカイ/オールラウンダー

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アクセオン所属だった2年前に新人賞2位。翌年にチーム・スカイ入り。昨年はカリフォルニア総合8位。しかし今回、個人タイムトライアル能力を一気に高め、第4ステージ区間3位。結果、総合5位と自身最高位の総合順位を獲得する。

また、第6ステージでベルナルをアシストした走りも印象的。自身も3位に入り、ステージレーサーとして一皮剥けた一週間となった。

 

なお、

とのことなので、みんなもツアー・オブ・ジャパンでJLTコンドールのオリー・ウッドを応援しよう!

 

 

第6ステージ ブランドン・マクナルティ

アメリカ/20歳/ラリー・サイクリング/ルーラー

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2月のドバイ・ツアー、ハッタ・ダムのステージにて残り50mまで逃げ続けた、元ジュニアTT世界チャンピオン。

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驚異的な走りも、1度だけなら偶然かもしれない。しかしこのカリフォルニア第6ステージでトッププロ選手たちに負けない走りを見せた今回、その実力が確かに間違いのないものであることを証明した。

得意なはずの個人タイムトライアルで失敗したのが残念。それでも今後、チームの若きエースとしてさらなる注目が集まることだろう。

ラリー・サイクリング自体も、エースのエヴァン・ハフマンが2年前山岳賞、昨年ステージ2勝とコンチネンタルチーム(当時)とは思えない活躍を見せていた。今年、プロコンチネンタルチームに昇格し、より多くのトップレースへの参戦の機会を得たこのチームの選手たちは、今後ももっともっと活躍を期待できることだろう。  

 

 

第7ステージ マックス・ワルシャイド

ドイツ/24歳/チーム・サンウェブ/スプリンター

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勝った、と彼は確信した。

右手を掲げ、勝利を喜んだ。

しかし、ごく僅かの差で、勝利は「最強スプリンター」の手に渡った。

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適切にバイクを投げていれば、間違いなく勝っていただろう。

ここは経験の差というべきか・・・年齢はワルシャイドの方が上なのだけれども。

それでも、彼の実力は証明された。

ツール・ド・ヨークシャーでコカールやコルトニールスンを打ち破って勝利を遂げたのに続き、今シーズン実質的な「2勝目」だ。

 

ドイツの若手スプリンターは次々と有望な人材が現れている。

チーム・サンウェブに限っても、2016年ジロ最終日に「勝利」したニキアス・アルント。彼が今後のドイツ人スプリンターの新世代を率いていくのだろう、と思っていた。彼が2017年のカデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレースで優勝したとき、その思いはほぼ確信に変わっていた。

しかし、同年のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネで、今度はフィル・バウハウスというドイツ人が鮮烈な勝利を遂げた。彼は今年のツアー・ダウンアンダーでも健闘し、2月のアブダビ・ツアーでもステージ勝利を果たしている。

 

アルント、バウハウス。彼らの登場だけでも驚きだった中で、さらに登場したのがワルシャイドという男だった。

先に勝利したツール・ド・ヨークシャーではバウハウスがエースとして出場していた。しかしほぼ全てのステージで、バウハウス以上の成績をワルシャイドは叩き出した。

そもそも、4月のシュヘルデプライスにおいても、バウハウスとコンビを組みつつも、最終的にはこのワルシャイドが6位という結果を出したのだ。

 

その他、若手ドイツ人スプリンターとしては、今年のハンザーメ・クラシック、デパンヌ3日間、シュヘルデプライスで次々に表彰台を勝ち取り、かつツール・ド・ロマンディではついにプロ初勝利を手に入れたパスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)などもいる。

当然、カチューシャ・アルペシンのリック・ツァベルもまた、これからが楽しみな若手スプリンターである。

 

 

 

いかがだっただろうか。

数年後には、ここに挙げた選手たちの多くが、トップ選手たちに混じってさらなる活躍を見せてくれることだろう。

2020年代の主役となりうる彼らの動向に、これからも注目を続けていきたい。

*1:昨年まではアクセオン・ハーゲンスバーマンという名称。

ツアー・オブ・カリフォルニア2018 プレビュー

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5/13(日)~5/19(土)の7日間で開催される、北米最大のステージレース。

日本時間では大きな時差があるため、14日(月)の早朝から20日(日)の早朝となる。同じ時期にジロもあるためリアルタイム視聴は困難だが、JsportsはDAZNよりも見逃し配信の期間が長いので多少はね?

 

実は今回のカリフォルニア、例年以上に期待が持てる出場選手のラインナップとなっている。まず、ジロ出場スプリンターが正直そこまでレベルが高くないのに対し、こちらのカリフォルニアには常連のサガンカヴェンディッシュ、クリストフのほか、2年連続出場となるキッテル、そして今年初出場でツール初出場も狙っているガヴィリアとユワンまで揃っている。まさに「ミニ・ツール」と形容するのに相応しい顔ぶれだ。

総合優勝狙いの選手たちはそこまでではないものの、2年前のアラフィリップ、昨年のジョージ・ベネットと、若手の有望株の台頭が目立つ昨今のカリフォルニア。やはり今回の総合優勝争いにも若手に注目していきたいところ。その筆頭がスカイのエガンアルリー・ベルナルだ。また、今年ついにワールドツアー入りを果たした、2年前新人賞のネイルソン・パウレスの走りにも期待したい。

そんな注目の選手たちが走る今年のコースだが、純粋なスプリンター向けの平坦ステージが3つ、いくつかの登りをこなしたうえでの小集団スプリントが予想されるパンチャー向きのステージが1つ、そして本格的な山岳ステージが2つに、例年よりも距離の長い個人TTの合計7つと非常にバランスが良い。

スプリンターも、クライマーも、3週間のグラン・ツアーではまだ実力を発揮しきれないような若き才能も、みんな活躍する可能性をもった魅力的なレースに進化している今年のカリフォルニア。

早朝の眠たい時間ではあるものの、可能な限りチェックしていくようにしよう。

 

今回は全7ステージの概要と、個人的に選んだ注目選手9名をピックアップして紹介していく。

 

 

 

 

コース詳細

第1ステージ ロングビーチ 134.5km(平坦)

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ロサンゼルス南部の太平洋沿いに設定された、11.5kmの周回コースを12周するクリテリウム形式のレース。

最初の3.5kmはパレードランで使用されるため、実際のレース距離は134.5kmとなる。レイアウトは完全なるフラット。

残り1kmを切ってからも直角左カーブが待ち構えており、トレインを使用した位置取りが至極重要となる。

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今期、高いチーム力を見せているクイックステップ・フロアーズが、若きエース、フェルナンド・ガヴィリアを勝たせることができるか。

現状ではエリア・ヴィヴィアーニの8勝(5/7現在)に対して4勝と、怪我があったこともありまだまだ結果を出し切れていない。今年、ツールに初挑戦するガヴィリア。このカリフォルニアでまずは予行演習といきたい。

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昨年も第1ステージを制したクイックステップ・フロアーズ。そのときのエースはもういないが、今年、新たなエースで北米レースに挑む。 

 

 

第2ステージ ベンチュラ~ジブラルタルロード 155km(山岳)

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今年のカリフォルニアは、2日目にしていきなり超級山頂フィニッシュをもってきた。2年前の大会ではこのステージを制したジュリアン・アラフィリップがそのまま総合優勝を自分のものとした。今年も、この日の勝者が大きなチャンスを掴むこととなるだろう。

 

ジブラルタルロードのレイアウトは登坂距離12km、平均勾配8%ツール・ド・フランスの難関ステージで採用されてもおかしくはないくらいの本格的な山頂フィニッシュである。登坂時間は約30分。残り2kmで10~14%の最難関区間が待ち受けている。

 

2年前は残り10km、9%弱の厳しい区間で、出場選手中最年少であったネイルソン・パウレス(アメリカ、アクセオン・ハーゲンスバーマン)が集団から抜け出した。

共に飛び出したスイスチャンピオンのダニーロ・ウィスを引き千切って力強くペダルを踏み続けたパウレスは、残り4kmで追走してきたピーター・ステティナとラクラン・モートンに追い付かれるまで、単独で先頭を走り続けていた。

ステティナは10%以上の勾配が続く残り2km地点でペースアップして抜け出し、独走体勢に入る。ラスト1kmのアーチを通り抜けたタイミングでは、アンドリュー・タランスキーやジョージ・ベネットが控えるメイン集団とは10秒~20秒のタイム差を開いていた。

しかし、ここからのアラフィリップのペースアップが凄まじかった。上記のタイム差を一気に縮め、あっという間にステティナに追い付いたアラフィリップは、残り200~300mで再び加速。ステティナを完全に引き千切り、最後は15秒のタイム差をつけてゴールした。

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このときの勝利でアラフィリップは2016年大会の総合優勝を決定付けるわけだが、6kmの独走をかましていたパウレスもまた、この日のステージを30秒遅れの区間5位で終えている。ローハン・デニスやタランスキーよりも上位でゴールしているのだ。

これにてパウレスはその年の新人賞ジャージ獲得を決定付ける。

今年、再びプロトンの前に立ちはだかるジブラルタルロード山頂フィニッシュに向けて、チーム・ロットNLユンボの(おそらく)エースとして立ち向かうことになるパウレスは密かに心中燃えていることだろう。この山が、彼の栄光の入り口だったのだから。

 

 

第3ステージ キング・シティ~ラグナ・セカ 197km(丘陵)

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ラグナ・セカもまた、2年前のカリフォルニアでも使用されたフィニッシュ地点である。モータースポーツの聖地であり、この3月までは「マツダ・スピードウェイ・ラグナ・セカ」という名称だったこの地も、4月からは新たに自動車用品メーカーが命名権を得て「ウェザーテック・レースウェイ・ラグナ・セカ」へと変更された。

全体的に山がちで、この日の獲得標高は2500mに達する。

ゴール前にも2級・3級山岳が連続しており、特に最後の山岳はゴール前3.6kmから始まり登坂距離1.1km、平均勾配10%の激坂となっている。

これらを乗り越えた末に、サーキット内でのスプリントフィニッシュとなる。最後は名物「コークスクリュー」を下ってのハイスピード・スプリント・バトルとなる。

ピュアスプリンターというよりは、パンチャー向きのコースレイアウトと言えるだろう。

 

2年前はペテル・サガンが勝利。BMCレーシングチームも4名を引き連れて対抗したものの、サガンの圧倒的な力の前にいとも簡単に蹴散らされてしまった。

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今年も、登りの連続を越えてここまで来れるスプリンターは、サガン以外ではアレクサンデル・クリストフくらい・・・いや、ガヴィリアは昨年ジロで山岳も平気で乗り越えていたし、カレブ・ユワンも今年、ピュアスプリント以上に登り勝ちなレイアウトでのスプリントで力を発揮している。

今年は2年前ほどのサガン独壇場には、ならなそうである。

 

 

第4ステージ サンノゼモーガンヒル 34.7km(個人TT)

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サンノゼシリコンバレーと大学の街で、昨年は超級ハミルトン山を越える山岳ステージとなり、ラファウ・マイカが勝利した。

今年はここで個人タイムトライアルが開催される。5年前もサンノゼで個人タイムトライアルが行われたが、そのときは標高287mまで登ってゴールする準山岳TTといった様相であった。

今回はコース中心部の標高はやや高いものの、基本的にはフラット。

直線も多く、トリッキーなカーブも少ないので、純粋にTTスペシャリスト向けのステージと言えるだろう。

 

ツアー・オブ・カリフォルニアの個人タイムトライアルは20km前後のものが多いが、今回は35km弱と長め。

第2ステージの勝利だけでは勝ちを得ることは難しそうだ。マイカやアダム・イェーツにとっては不利と言わざるを得ない。

なお、この日はタグ・ホイヤーがスポンサーのようで、来期のスポンサー問題に苦しむBMCレーシングチームにとっては重要な1日となりそう。

ブレント・ブックウォルターティージェイ・ヴァンガーデレンのように、総合成績も狙えてTTの強い選手、そしてバスク1周の個人TTで実に惜しい区間2位に終わったパトリック・ベヴィンなどに期待。いや、来るよ! 今回はベヴィン来るよ! (ベヴィンには少し長い距離だけれど・・・)

 

 

第5ステージ ストックトン~エルクグローブ 176km(平坦)

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第1ステージ以来、久々の平坦ステージ。今大会多く出場している有力スプリンターたちが再び訪れたチャンスを狙う。

しかし昨年もまさかの逃げ切りが発生しているカリフォルニア。ゆめゆめ油断せぬように・・・とくにクリストフ。

 

下の図を見てわかるように、エルクグローブ近郊に入ってからはひたすら真っ直ぐな道が続く。

残り30kmを過ぎてからの「ツイン・シティーズ・ロード」はおよそ15km、そこから直角に右に曲がってからの「ブルースビル・ロード」もおよそ15kmといった長距離ストレートである。

かといってカリフォルニア都市部のひたすらだだっ広い道というわけではなく、基本的には狭い農道のため、必ずしも逃げにひたすら不利というわけではないが、常に前を走る集団と伴走する車列が見える状態というのは、追う側にとっては精神的に楽になるだろう。だからきっと、逃げ切りは発生しない・・・はず。

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なお、ラスト1kmを切ってから右に直角カーブして入る「シビック・センター・ドライブ」は幅の広い大通りで、複数のトレインによって作られる大迫力の集団スプリントが見られることだろう。

 

 

第6ステージ フォルソム~サウス・レイク・タホ 196.5km(山岳)

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シエラネバダ山脈のタホ湖畔に至る、今大会2つ目のクイーンステージ。

スタート地点から2500mほど登り、そこから一度1000m下ったのちに、再び2200m地点まで登る厳しいレイアウト。総獲得標高は4880mに達する。

勾配は第2ステージのジブラルタルロードほど厳しくはないものの、とにかく常に登っているか下っているかとなるため、総合リーダージャージを着る選手がどれほど耐え切ることができるか、が勝負である。チームの力も重要だ。

展開によっては逃げ切りも狙えるステージだけに、序盤からのアタック合戦も激しいものとなりそう。

 

同じ最高標高地点カーソン・パスを経由し、同じくレイク・タホ湖畔へとゴールするレイアウトだった2年前の第5ステージでは、トムス・スクインシュが2年連続となる逃げ切り勝利を達成。ジブラルタルロードで総合リーダージャージを獲得していたジュリアン・アラフィリップも、危なげなくジャージを守り切った。

スクインシュは昨年も期待されていたが第2ステージの落車でリタイア。脳震盪を起こしている可能性がある中で再びバイクに乗ろうとする執念を見せたが、チームからドクターストップがかかった。命に関わることなので、仕方がない。

悔しい結果に終わった昨年へのリベンジを、今年は果たすことができるのか。チームをトレック・セガフレードに変え、再挑戦だ。

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2年前のレイク・タホで逃げ切り勝利を決めたスクインシュ。一緒に逃げたラリー・サイクリングのアダム・デヴォスは悔しい2位に終わった。

 

 

第7ステージ サクラメント 146km(平坦)

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恒例の、州都サクラメント周辺部の平坦ステージ。中心部からスタートしたプロトンは一度、名物タワーブリッジを通ってサクラメント西部郊外のルートを辿る。

そして最後に再び中心部に戻ってきて、3.3kmの周回コースを3周してフィニッシュとなる。

最後の周回コースのレイアウトは以下の通り。

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サクラメントと言えば、サガンと並ぶキング・オブ・カリフォルニアであるマーク・カヴェンディッシュに注目したい。過去4回、サクラメントを舞台にした集団スプリントにて勝利している。

直近では2016年。長く不調に苦しんでいた彼が、復活の勝利を見せつけた。そしてその後、ツール・ド・フランスにて怒涛の4勝である。

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今年も、いや昨年ツールから、ひたすらツイてないカヴェンディッシュ。今年もこのカリフォルニアの勝利で、勢いを取り戻すことができるか?

 

 

 

注目選手

ペテル・サガン(スロバキア、28歳)

ボーラ・ハンスグローエ、スプリンター

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プロデビュー当初の8年前から毎年欠かさずに出場しており、16回のステージ優勝と5回のポイント賞、そして2015年には総合優勝も果たしているという、まさにキング・オブ・カリフォルニアである。2016年には山岳ステージで逃げにのったうえで最後の集団スプリントで2位にまで登り詰めるという、余人には想像できない芸当もやってのけるエンターテイナー。アメリカとの相性は非常に良い。

今年も昨年同様、ラファウ・マイカを総合エースに据えての参戦。サガン自身はステージ優勝とポイント賞獲得に集中することだろう。

今年はどんな「サガン節」を見せてくれるのか。

 

 

マルセル・キッテル(ドイツ、30歳)

カチューシャ・アルペシン、スプリンター

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「かつての」最強スプリンター。そんな言い方をしては彼にあまりにも失礼ではあるけれども、今年の彼は本当に苦しい時期を過ごしている。相性の良いドバイ・ツアーでも噛み合わず、3月のティレーノ~アドリアティコにてようやく2勝。だがその後も勝利はなく、引き続き苦しい時期を過ごしている。

今回のカリフォルニアを終えると、いよいよツール本番まであとわずかとなってしまう。チームとの良い関係をそこまでの間に作っていけるか。今、最も緊張感をもってカリフォルニアに臨む選手の1人であろう。

 

 

フェルナンド・ガヴィリア(コロンビア、23歳)

クイックステップ・フロアーズ、スプリンター

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「現」最強スプリンター、というのはまだ言い過ぎかもしれないが、それでも昨年のジロ初出場からの怒涛の4勝、そしてポイント賞の獲得は圧巻であった。昨年活躍したスプリンターの3本の指には確実に入る選手だ。

そんな彼が、今年いよいよツール・ド・フランスに挑戦。そのためにジロをパスし、この初出場となるカリフォルニアにて調整をすることに。かつての先輩、キッテルを超えることができるか。一応、今年唯一の直接対決となったティレーノでは惨敗しているため、このカリフォルニアでは密かに燃えていることだろう。

チームメートも相変わらず豪華。サバティーニと並ぶ最強発射台の1人、マキシミリアーノ・リチェセを軸に、若手期待のスプリンターであるキャスパー・アズグリーンやアルバロホセ・ホッジなど。

エクアドルチャンピオンの21歳、ジョナタン・ナルバエスも連れてきており、全体的に「若手に活躍の機会を」といった印象の面子でもある。そんな若手たちが絶好調の今年のクイックステップなので、これでも全然、やっぱり「豪華」と感じてしまうけれども。

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ジョナタン・ナルバエスは昨年、アクセオン・ハーゲンスバーマンに所属。ツアー・オブ・ジラやコロラド・クラシックで新人賞を獲得するなど、アメリカとの相性が非常に良い。クイックステップ若手注目選手の1人だ。

 

 

カレブ・ユワン(オーストラリア、23歳)

ミッチェルトン・スコット、スプリンター

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ガヴィリアと並んで、今年ツール&カリフォルニア初挑戦のユワン。昨年はその派手さにおいてガヴィリアに差をつけられたような印象はあったものの、堅実に勝利を稼いで十分素晴らしい結果を出していた。

また、今年はミラノ~サンレモの集団内トップを記録したり、ツアー・ダウンアンダーでもスターリングの登りフィニッシュで勝利したことなど、これまでと比べ進化した走りを見せてくれている。

チームメートには頼れる発射台役としてルカ・メスゲッツとロジャー・クルーゲを連れてきている。昨年ではこのどちらかがユワンの相棒として参戦することが多かったが、今回は両方連れてきている辺り、本気度が伺える。ツールもこのスタイルでくるのか?

 

 

エガンアルリー・ベルナル(コロンビア、21歳)

チーム・スカイ、オールラウンダー

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期待されすぎなくらいに期待され、そのうえでその期待以上の成果を出し続けている男。最初、チーム・スカイに移籍と決まったとき、せっかくの才能が潰されてしまう可能性すら想像したが、むしろこの最強チームのエースを自らの力で掴み、チャンスをモノにした。10年に1人の天才と言っても過言ではない。

当然、今大会も文句なしのエースであり、総合優勝候補。ラファウ・マイカやアダム・イェーツなど強力なライバルは数多くいるものの、コロンビアのTTチャンピオンでもあるベルナルにとって、TTの距離が長い今年のレイアウトはよりチャンスと言えるだろう。

今期ここまで、総合優勝したステージレースはまだコロンビア・オロ・イ・パのみ。バスク1周総合2位も十分に凄いが、このあたりでワールドツアーの総合優勝を獲得しておきたい。普通ならネオプロに期待するレベルのものではないのだけれど。

チームメートのタオ・ゲオゲガンハートも、カリフォルニアで強い元アクセオン・ハーゲンスバーマンの選手。昨年総合8位。こちらも期待したい。

 

 

アダム・イェーツ(イギリス、25歳)

ミッチェルトン・スコット、クライマー

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ミッチェルトン・スコットはスプリントでユワン勝利を狙いつつ、総合優勝もこのアダムできっちりと狙ってくるはずだ。ティレーノ~アドリアティコ総合5位など、実力は十分。ジロ・ディタリアでサイモンがマリア・ローザを着用するなど活躍している以上、アダムもきっちりと結果を出さなくては(そしてこの2人は互いに呼応するかの如く結果を出すため、その可能性は十分にありうる)。

唯一の不安点がTTの力。実績だけで言うと、決してTTが得意な部類ではない。

しかし、同じようにTTが苦手と思われていたサイモンがジロ初日の個人TTで上々な結果を叩き出す。昨年のカリフォルニアも、同じくTTが得意ではないと思われていたジョージ・ベネットが意外な結果を出して逆転総合優勝を果たしている。もしかしたらアダムも今年、このカリフォルニアで覚醒するかも、しれない・・・。

 

 

ルーベン・ゲレイロ(ポルトガル、23歳)

トレック・セガフレード、クライマー

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアではアクセオン・ハーゲンスバーマンに所属し、総合13位、新人賞3位となった(新人賞1位はパウレス、2位はゲオゲガンハート)。昨年のトレック移籍後は、実力はありながらも目立った成果を出せてはいない。契約は一応、今年まで。そろそろ結果を出さないと、今後どうなるか・・・

とはいえ、今回のカリフォルニアで、この男は大きく成長する可能性があると踏んでいる。目指すは総合5位以内。新人賞対象ではあるので、その点でも期待したいが、その前にはベルナルという大きな壁が立ちはだかっており・・・。

個人TTが得意でない点も不利な点である。

 

 

ネイルソン・パウレス(アメリカ、21歳)

チーム・ロットNLユンボ、オールラウンダー

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアジブラルタルロード山頂決戦で、ワールドツアー顔負けの走りを見せつけた当時最年少選手。新人賞も堂々と獲得したものの、まだまだ若く、2位のゲオゲガンハートや3位のゲレイロがすぐさまワールドツアーチームに移籍したのに対し、彼はアクセオンに留まり続けた。

そして今年、いよいよワールドツアー入り。加入したのは、昨年カリフォルニアの覇者、ロットNL。しかも、昨年総合優勝者のジョージ・ベネットはジロに出場するため、今回のカリフォルニアのエースは、いきなりこのパウレスに任せられることとなるかもしれない。

ベルナルと比べればまだまだ未知数。しかし、総合TOP10に入る活躍は間違いなく見せてくれるだろう。エリート部門の国内選手権ITT3位の独走力の高さも、注目すべきポイントだ。

 

 

ヤスペル・フィリップセン(ベルギー、20歳)

アクセオン・ハーゲンスバーマン、スプリンター

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2年前のツアー・オブ・カリフォルニアを席巻した「最強育成チーム」アクセオンの、今年の目玉選手である。

とはいえ、まだカリフォルニア出場選手が確定していないため、この選手が出場するかどうかは不明。しかし、今年のアクセオンで最も目立った活躍をしている選手であるため、ぜひ出場に期待したい。

主な実績は3月の「デパンヌ3日間レース」の3位。勝ったヴィヴィアーニ以外は第一線級の選手たち、というわけではなかったものの、それでもワールドツアーの選手たちを押しのけての表彰台獲得は、20歳という若さを考えると驚異的である。ベルギーのU23向けステージレース「ル・トリプティーク・デ・モン・エ・シャトー」も区間2勝と総合優勝、ポイント賞獲得と圧倒的な結果を出している。

出場すれば、豪華な面子の揃う今回のカリフォルニアスプリント対決においても、存在感を放ってくれることだろう。

 

 

その他注目選手

ティージェイ・ヴァンガーデレン(BMCレーシングチーム)

ラファウ・マイカ(ボーラ・ハンスグローエ)

アレクサンデル・クリストフ(UAEチーム・エミレーツ)

ダニエル・マクレー(チームEFエデュケーションファースト)

ニキアス・アルント(チーム・サンウェブ)

イアン・ボスウェル(カチューシャ・アルペシン)

マーク・カヴェンディッシュ(ディメンションデータ)

とくにBMCレーシングチームはスポンサー問題もあるため、ヴァンガーデレンとブレント・ブックウォルターには大きな期待が寄せられていることだろう。ヴァンガーデレンは総合優勝経験者だし、TTも強いし、普通に考えれば総合優勝候補筆頭なんだけどなぁ。。

アルントも十分勝ちを得られそうな選手の1人。バウハウスやワルシャイドなど、最近はさらに若手が活躍しつつあるので、ここら辺で先輩として一発ヤっちゃいましょう。

ボスウェルもカリフォルニアではフィールド効果でステータスUPする選手だ。

 

 

常に予想を裏切るのが自転車ロードレースという競技ではあるが、上記注目選手たちの活躍を願う。

ジロ・デ・イタリア2018 注目選手プレビュー

ジロ・ディタリアも開幕直前。

ここで、今回のジロで個人的に注目している選手たちをピックアップして紹介していきたいと思う。

正直、活躍に期待する選手は大量にいるのだが、その中で、実際に実績を出せそうな選手を、総合系で6名、スプリンターで3名、そして若手で1名の合計10名を選出。

簡単なプレビュウを実施した。

 

以下、少しでも参考になれば幸い。 

※年齢はすべて数え年表記です。

 

 

 

 

クリストファー・フルーム(イギリス、33歳)

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2013年、2015年~2017年の計4回ツール・ド・フランスを総合優勝し、昨年はブエルタ・ア・エスパーニャも総合優勝。史上3人目の、そしてブエルタが現在の秋開催になってからは唯一の、ツール~ブエルタのダブルツール達成者となった。

今年はツール5勝目、すなわち史上5人目の「5勝クラブ入り」がかかる年。てっきりツールに集中するのかと思いきや・・・なんと、ジロ・ディタリアへと乗り込んできた。

今回、総合優勝すれば、史上7人目の「3大グランツール制覇者」となる。また、ツール~ブエルタ~ジロと3連続グランツール制覇というのも、なかなか過去に例を見ないパターンとなるだろう。

そして、おそらくは狙ってくるジロ~ツールのダブルツール。1998年のマルコ・パンターニ以来、20年ぶり、史上8人目の達成者となる。過去、コンタドールも狙って果たせなかったこの偉業を、フルームならば成し遂げてしまうかもしれない、と期待させてくれる。

 

懸念点としては2つ。

1つ目は、ジロ・ディタリアとチーム・スカイとの相性があまり良くないこと。昨年もエースのゲラント・トーマスが1週目にしてリタイア。ランダも総合優勝争いから脱落してしまった。

長らくスカイを苦しめる「ジロの呪い」。フルームもまた、その餌食となってしまうのか。それとも彼ならばそれを跳ね除けられるのか。

 

懸念の2つ目は、昨年秋からサイクルロードレース界を騒がせ続けている「サルブタモール問題」。はっきりと結論の出ないままジロが開幕してしまい、これでフルームが結果を出した後に遡りでの結果剥奪などの措置が起きてしまえば、それこそが最もロードレース界にとっては不運なこととなる。

また、この問題の影響もあるのか、ここまでのレースでのフルームの走りは十分とは言えない。

ただ、4月に入ってからはゾンコランでの練習風景をツイートしたり、ツアー・オブ・ジ・アルプスで積極的な攻撃を仕掛けたりと、ジロに向けて順調に調子を上げている様子も見られる。

また、アルプスではケニー・エリッソンドがアシストとしての素質を開花させ、チームとしても良い状態でジロを迎えることができそうだ。

 

果たして、「現役最強のグランツールライダー」は、ジロでもその実力を見せつけてくれるのか。それとも、結果を出せぬまま潰れてしまうのか。

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ツアー・オブ・ジ・アルプスでは総合4位。これまでの彼の成績と比べるとイマイチだが、シーズン序盤の苦しい状況からは抜け出した感じを受ける。

 

 

 

トム・デュムラン(オランダ、28歳)

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かつてはファビアン・カンチェラーラトニー・マルティンに次ぐ、新世代のTTスペシャリストとして注目を集めていた。しかし、2015年のブエルタで突如覚醒。そのときは最終日前日の山岳ステージで崩れ、表彰台すら逃してしまったものの、一躍オランダ最強のグランツールライダーとして台頭することとなった。

しかしデュムランは焦ることをしなかった。2016年はジロ、ツールと連戦したが、いずれも総合は狙わず、地元オランダでのTT勝利、山岳でのステージ優勝、そしてリオ・オリンピックに向けた調整に徹した。

そして昨年、2017年。満を持して挑んだジロ・ディタリアで、あのナイロ・キンタナやヴィンツェンツォ・ニバリを凌ぐ登坂力を見せつけての、完全勝利。

ゆえに、現在、クリス・フルームに対する最も期待されたライバルとして注目されることに。「フルーム時代」を終わらせるならば彼であると――その直接対決が、まさかこんな形で実現しようとは。ツールではなく、ジロで。

 

形としては、デュムランこそが前回優勝者でありディフェンディング・チャンピオンである。あくまでもフルームは挑戦者であるわけだが、実質的には「最強」フルームとその最大のライバル候補との、初の本気の直接対決の開幕である。

 

懸念としては、やはりチーム・スカイと比べると乏しいチーム力。それでも、昨年デュムランを支え続け引退を留まり続けてくれているローレンス・テンダム。若手の期待の星サム・オーメン。チームとしても、可能な限りの戦力は連れてきてくれている。

また、実績だけならスカイに全く敵わなくとも、実際に機能したときのサンウェブのチーム力は恐ろしいものであるということ、昨年一年間を通じて私たちはよく知っている。ジロの総合優勝、ツールのポイント賞&山岳賞、そして世界選手権チームタイムトライアル・・・データだけではわからない不思議な結束力こそが、サンウェブというチームの最大の武器である。

「最強」の一角キンタナを見事打ち倒したデュムランは、今年、もう1人の「最強」を倒し再びピンクジャージを手に入れることができるか。

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今年は正直ここまで調子の良いところは見せられていないデュムラン。今年のジロは是非、最高のコンディションでフルームと戦ってほしいところ。

 

 

 

ファビオ・アル(イタリア、28歳)

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現イタリアチャンピオン。昨年の第100回大会は地元サルデーニャでの開幕とあって本人としても出ないわけにはいかない、という意気込みだっただろうが、直前の怪我によりあえなく不参加。今年こそリベンジだ。

2014年ジロ総合3位。2015年ジロ総合2位。そして2015年はブエルタでの総合優勝も果たしている。

2016年はジロに出場せずツールに集中。しかし、結果は空回り。以来、イマイチ振るわないシーズンを過ごしてきた。

今年、3年ぶりのジロ出場。前2回の良い流れを引き継げるか。なんだかんだ言って、今大会においてフルームとデュムランを倒し得る存在はもう彼しかいないといった感じだ。期待している。

不安要素としてはチーム。これまで総合争いを経験したことが少ないチームだけに、どこまでアルをサポートしていけるか・・・彼がブエルタで総合優勝したときも、当時のアスタナ・チームの助けがあってのものだったので。

UAEの現時点での出場予定選手はアタプマ、コンティ、ラエンゲン、マルカート、モーリ、ポランチ、ウリッシ・・・個々の実力は十分に高くステージ優勝を狙って行くことは十分可能だろうけれど、エースをアシストする、というようなイメージはどうしても、湧かない、なぁ。

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今年はまだそこまで目立った成績は出してはいないが、ジロ前哨戦の「ツアー・オブ・ジ・アルプス」で総合6位。ちょっと上向きになりつつある。

 

 

 

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳)

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元々実力は高く期待されていたが、昨年のブエルタで想像以上の大爆発。

今年はツアー・オブ・オマーン総合2位。アブダビ・ツアー総合3位。ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位と好調。ステージ優勝も2つ。ニバリ、アルの抜けた穴を十分に埋めることができる逸材だ。

少なくとも、マリア・ビアンカは最有力候補であると言えるだろう。

また、アスタナチーム自体が現在絶好調。昨年は4月まで勝利なしだったのに、今年はすでに13勝(4/25現在)。また、圧倒的に強いエースが稼ぐ、ではなく、一人一人がチームの力を借りながら勝利を掴んでいくというスタイルだ。

今回のメンバーもビルバオヒルト、カンゲルト、ルツェンコ、サンチェス、ヴィレッラ、ゼイツと、ステージ優勝でもエースのアシストでも十分に期待ができるメンバーだ。昨年は悔しい/悲しい思いをしていたジロで、今年のアスタナは結果を出すことができる、そう信じることのできるメンバーである。

 

 

ローハン・デニス(オーストラリア、28歳)

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本人はまだ早いと言いつつも、ティレーノ~アドリアティコ総合2位などを叩き出していた昨年、期待を受けて出場したジロで残念な早期リタイアとなった。

今年こそという思いはあるかもしれない。しかも今回、明らかに彼をエースに、と考えられた布陣でチームからの支援も十分に見込める。個人TTの安定感は随一で、今回もとりあえず初日最大の優勝候補である。

あとは、アルプスの厳しい山岳地帯を乗り越えることができるかどうか・・・ツール・ド・ロマンディ総合7位。悪くは、ないはずだ。

目指すは総合5位以内。

 

 

ティボー・ピノ(フランス、28歳)

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おめでとう、アルプス総合優勝!

とはいえ、昨年のツールのごとく、ここまで存在感がほとんどない今シーズン・・・いや、それでいい。彼は期待されればされるほどうまくいかないタイプなので、これくらい影を潜めてさらっと表彰台を取ってしまうくらいが丁度いい。

ライヒェンバッハ、モラビート、プライドラーなど、チームとしても割と本気でピノを支える気でいる模様。

これはもしかして、もしかすると・・・いや、期待はしない。期待はしないぞー。

 

 

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、29歳)

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今年すでに6勝。ワールドツアーチームのスプリンターの中では最多の勝利数を記録している。ピュアスプリントでは最強と言えるのが今シーズン。

ヴィヴィアーニの強さは彼自身の強さもさることながら、チームの強さも要因である。何しろ、昨年全グランツールでスプリント4勝以上をそれぞれ別の選手で成し遂げているチームである。昨年のエースが移籍してもなお、新たなエースを据えて結果を出し続けるだけの実力がこのチームにはある。

今回のジロに臨むクイックステップのメンバーも、昨年はキッテルの、そして今年はヴィヴィアーニの勝利のほとんどに関わってきた最強発射台サバティーニや、自身もまた強力なスプリンターでもあるスティバール、そして昨年までクリストフの発射台として活躍してきたミケル・モルコフなど、完全にヴィヴィアーニのための体制を作り上げてきている。

果たして今年のクイックステップグランツールで何勝するのか。その幸先の良いスタートを、このジロで切ることができるか。

 

 

サム・ベネット(アイルランド、28歳)

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ボーラ叩き上げのスプリンターで、サガン加入の昨年は存在感が減るかと思いきや、しっかりとそれに張り合うだけの成果を出し、年間10勝と絶好調。

しかしジロでは勝てず。2位、3位と悪くはなかったが、今一歩届かなかった。その分、ライバルの少ない今年は大チャンスである。

なお、2歳年上のドイツ人スプリンター、リュディガー・ゼーリッヒが今年もアシストとして参戦。ときにベネット以上の成績を出すライバルでもあり、実質的なダブルエース体制で勝利を狙う。

ゼーリッヒは先日のツール・ド・ロマンディ最終ステージで勝利したアッカーマンの発射台としても活躍。ただ、それ以外ではベネットもゼーリッヒも、今年そこまでまだ結果を出せていないのが不安点。

 

 

ヤクブ・マレチュコ(イタリア、24歳)

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イタリア期待の若手スプリンターの1人。所属チームはウィリエール・トリエスティーナ・セッライタリア。プロコンチネンタルチームである。

それでも、昨年のジロ・ディタリアではステージ2位が2回。アジアのレースでの相性がよく、中国中心に昨年は14勝している。今年もここまで、1クラス~2クラスばかりとはいえ8勝と、ヴィヴィアーニを超える勝利数を記録している。

逃げ切りはともかく、グランツールのガチのスプリントでプロコンチネンタルチームが勝つというのはなかなかない偉業であり、しかし今年、ヴィヴィアーニ以外の超強力スプリンターが少ないジロであれば、そういった事態も十分に考えられることだろう。チームもエースナンバーをマレチュコに託し、本気で勝利を狙う態勢で挑んでくる。

 

 

リチャルド・カラパス(エクアドル、25歳)

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パリ~ニースのクイーンステージで総合優勝者マルク・ソレルを支え、遅れかけた彼を引き上げるという重要な役割を果たす。カラパスがいなければ、ソレルは勝ててなかったかもしれない。彼自身も総合11位。

suzutamaki.hatenablog.com

そして、その後、イタリアで開催された1クラスのステージレース、セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで総合3位、スペインで開催された1クラスのステージレース、ブエルタアストゥリアスで総合優勝。後者は山頂フィニッシュのクイーンステージでも勝利するなど、力を見せつけた。

今回のモビスターは正直、エース不在。その中で、序盤で成績を出せば、彼がエースとしてベタンクールやフェルナンデスといった強力な選手を従える状況を作っていくことは十分に可能だ。目指すは、ロペスとの新人賞ジャージ争い。同じパリ~ニースで活躍したグロースシャルトナ―もライバルとなるかもしれない。珍しい南米エクアドル出身の選手。モビスターの次代を担う選手となれるか。

 

 

 

以上、独断と偏見で10名の選手を選出。

これらの選手が実際に活躍することを願う。