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UCIロード世界選手権2017 エリート男子ロードレース注目国プレビュー

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いよいよベルゲン世界選手権の最終戦、エリート男子ロードレースが行われる。

コースを振り返ってみると、以下のような形だ。

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ベルゲン市外の40kmのコースの後、上記「サーモンヒル」を含んだ19.1kmの周回コースを12周する。合計276.5kmのコースだ。

 

「サーモンヒル」頂上からも10km近く残っているため、スプリント争いになる可能性は十分ある。しかし「サーモンヒル」も1.5kmと決して短くない登坂を強いられるものであり、同じコースを使用した男女ジュニア、男子U23はすべて逃げ切り勝利。女子エリートに関しても、小集団からの飛び出しで勝負が決まった。

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イメージとしてはミラノ~サンレモや直前のモンレアルのように、最終周回での登りを利用した飛び出し→逃げ切り、ないしは小集団形成からのスプリント勝負、という展開に持ち込まれる可能性が高そうだ。

よって、パンチャーやアタッカーを多く含むチーム、もしくは集団をコントロールし、しっかりと逃げ選手を捕まえられる布陣を用意しているチームが有利となりそうだ。

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終盤のクネクネしたレイアウトも、逃げ切りを狙う選手に向いていると言える。

 

今回は、直前にはなってしまったが、注目度の高い国のメンバーをゼッケンNo.と合わせて紹介。

少しでも参考になれば幸い。

 

 

 

1~ スロバキア

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サガン3連覇に向けた布陣。とくにコラーはティンコフ時代から、これで3年連続の世界選手権出場となる。ユライも今期、クラシックレースの集団前方に常に陣取り、ペテルのための舞台を演出し続けているため、今回もカメラによく映るかもしれない。

サガンは最悪、ラストは1人でなんとでもなる。今期頻発している重要局面でのバイクトラブルへの対応を、チームとしてどれだけ行っていけるかが鍵。

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7~ ベルギー

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まさに銀河系軍団。どの選手でも勝利を狙える布陣だ。

その中でも、サガンと似た脚質を持ち、最大のライバルとなりうるのがファンアフェルマート。独走勝利を狙いやすい今年のコースと相性が良さそうなのがジルベールとウェレンス、ストゥイヴェン。中盤の集団コントロールに際しても、ヴェルモト、ナーゼン、ケウケレールあたりが強力。隙がない。

唯一不安なのがチームワーク。ジルベールは今年、チームメートとの連携も巧みではあるが、ファンアフェルマートとの仲は良くなさそうと勝手なイメージ。

女子のオランダみたいに普通にやっていれば勝てると思うのだけれど、クイックステップでは良くある、「数を揃えているのに突然誰かに飛び出されて、全員集団の中で追いきれなくなる」という失敗を、ベルギーチームでもやってしまわないことを願う。

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16~ イタリア

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ベンナーティ、コルブレッリ、トレンティン、ヴィヴィアーニと、最終局面で勝負できる人材が豊富。・・・豊富すぎ? 誰がいくの? 基本はベンナーティ、トレンティンにアシストされたヴィヴィアーニかなぁ。今年調子がいいし。

後は問題は、最期の勝負に参加させてくれるのか問題。みんなアタッカーで、ルーラーがほぼいないのは大丈夫なのだろうか。

先日のモンレアル勝利したウリッシももちろん、手札の1つ。

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25~ フランス

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ミラノ~サンレモに似たコースレイアウトということで、3位だったアラフィリップに期待がかかる。もちろん、1位のクフャトコフスキ、2位のサガンもいるため、彼らを乗り越える必要はあるのだが。

アタッカー、逃げ切りを狙える選手としてのギャロパン、グジャールも悪くない。グジャールは先日のTTも、最後のメカトラが痛かったが悪くない走りをしていたので、そろそろ期待したいところである・・・。

バルギルは何をしにきた感あり。

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34~ スペイン

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スペインというお国柄上、仕方なくクライマーが多め。スプリントで狙える選手としてはホセホアキンロハスくらいか。ただ逃げ切りとなれば、スペインでは希少なクラシックライダー、エルビーティや、独走力の高いカストロビエホ、ソレルあたりで勝負できるだろう。

いずれにせよ、集団の中で最後まで残っていく、という方法は取れない。必ず、終盤の登りで攻撃を仕掛けてくるだろう。デラクルスやゴルカがここで飛び出すはずなので、そこからの展開が楽しみだ。

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43~ コロンビア

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当然、ガヴィリアで勝負を狙ってくる。というか、彼以外は・・・何、来年のインスブルックと間違えたの?的なメンバー。とっくにキンタナの存在が謎過ぎる。

とはいえ、先日のモンレアルなどでも、セルヒオ・エナオが積極的な動きを見せたりなど、スペイン同様、終盤の登りでの動き方に注目していきたい。

すべてうまくいかなくても最後にガヴィリアで勝負できるだけ、スペインよりも有利なのは間違いない。ウランも混戦であれば強いのでそこにも期待。

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52~ オランダ

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こうしてみると、オランダ人は自前のチームを持っている割には、いろんなチームで活躍しているんだなぁ、ということがわかる。戦い方としては、ファンポッペルのスプリント勝負を軸にしつつ、ボーム、テルプストラ、そしてデュムランといったTTスペシャリスト系の選手たちの逃げ切りを選択肢に揃える。とくにボームは調子がいいので、可能性は十分だろう。

途中の登りではプールス、モレマなどが仕掛けてくるはずだ。

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61~ オーストラリア

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基本的にはマシューズで勝利を狙う。マッカーシーがそのアシストとして活躍するだろう。

逃げ切り系選手としては、昨年ルーベの覇者ヘイマン、サザーランド、そして今年のエネコ・ツアーで活躍したヘイグなどが控えている。ハウッスラーもミラノ~サンレモとの相性はいいため、アシスト以外の活躍も見られるかもしれない。

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70~ イギリス

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カヴェンディッシュがいないのはまあ仕方ないにしても、ゲラント・トーマスもおらず、スタナードはいるもののロウもいない。全体的に若めな選手が揃っており、なんというか・・・イギリス、今回ちょっと手を抜いている?

とはいえ、基本的なスプリントとしてはスウィフトとブライスの2枚看板。クラシックにも強いゲオゲガンハートやスウェイツも控えており、集団コントロールも、登りでのアタックも、選択肢は幅広くある。ただ、いずれも中途半端になって、TOP10には入れても表彰台は逃すイメージしか見えてこない・・・。

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79~ ドイツ

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アルントとツァペル、どっちで勝負しても悪くない。実績的にはアルントか。

スプリント前の牽引役としてのマルティンやズッターリンへの信頼感も高い。とくにマルティンは、どんなに逃げが作られてもしっかりと捕まえてくれそうなイメージがある。

終盤の攪乱役としてゲシュケの動きなどにも期待。

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88~ ノルウェー

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ボアッソンハーゲンとクリストフの2枚看板。ヨーロッパ選手権ではボアッソンハーゲンが先行し、最後にクリストフが制した。一方ボアッソンハーゲンは、ここ数ヶ月、ヨーロッパ選手権も含めて逃げ切り勝利を狙い続けている。

今回のベルゲンのコースは、ボアッソンハーゲン向きと言えるレイアウト。期待したい。

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97~ ポーランド

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ということで、ミラノ~サンレモ覇者クフャトコフスキは今大会優勝候補の1人。スロバキア同様、強豪国ほどの層の厚さはないが、最後はエースの力だけでなんとかなる部分は大きい。

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以上が現実的に勝利を狙える全12か国である。

その他、時間的に作成のできた数か国のスタートリストを以下に載せる。 

 

 

103~ スロベニア

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基本的にスプリントで争うのは難しいと思われるので、ブエルタ勝利したモホリッチ、終盤の積極的なアタックが得意なログリッチェあたりに期待したい。

ただ基本的にかき回し役で、勝利までは難しいだろう・・・。

 

109~ アイルランド

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 強力なメンバーは揃ってはいるが、アルデンヌ・クラシック、というほどの厳しいステージではないので、マーティンなどが活躍するのは難しそう。ダンやミューレンがうまく逃げられればチャンスがあるか。

 

115~ デンマーク

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コルトで勝利を狙うのは可能だが、コース的にはアナスン、ユールイェンセンなどのアタックも十分相性がいいだろう。チーム力は強豪国に敵わないので、タイミングを狙うしかない。

 

121~ スイス

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スプリントで勝負するならアルバジーニ。あとはどれも、タイミングを見て逃げに乗れれば可能性がある、くらい。あまり積極的にアタックする面子、というイメージはない。

 

127~ ロシア

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クズネツォフが昔、ヘント~ウェヴェルヘムでいい走りをしていたのが可能性を見出せる部分か。ザッカリンではさすがに厳しいだろう。

 

133~ チェコ

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クロイツィゲルはアルデンヌ・クラシックには適性あるが、今回のコースでは厳しそう。どちらかというと来年向き。シュティバールなら十分狙える。ただし混戦になれば。

 

139~ アメリカ

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スプリントで勝負は難しいので、ハウズなどがアタックして逃げ切るしか方法はない。ヴァンガーデレンは何しに来たのか。

 

145~ ポルトガル

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クライマーとしては非常に豪華だが、今回のレースに合っているのかというとかなり微妙。来年ならチャンスが・・・

 

とりあえずここまで

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 総括(全チームレビュー)

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振り返ってみれば、実に劇的な3週間であった第72回ブエルタ・ア・エスパーニャ

その戦いを終えた、全22チームの簡単なレビューを書いていく。

 

 

 

今大会最も活躍した4チーム

1.チーム・スカイ

クリス・フルーム総合優勝

クリス・フルームポイント賞

クリス・フルーム複合賞

ワウト・プールス総合6位

ミケル・ニエベ総合16位

クリス・フルーム区間2勝(第9、第16ステージ)

クリス・フルーム、見事、ダブルツールを達成。ツールとブエルタのダブルツールはアンクティル、イノーに続く快挙。ブエルタが秋開催となってからは初の快挙である。

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蓋を開けてみればフルームとチームの圧倒的な強さが印象的だった。ニエベ、プールス、そして意外な形で実力を示したジャンニ・モズコン。彼らに支えられたフルーム自身も、唯一不安を感じさせたのは第17ステージのみで、あとは結局、ツール以上のコンディションを保ち続けた。タイムトライアルがなくとも勝利できたという結果が、全てを物語っている。

あとは、フルームに残された勲章は、ジロ制覇と、そしてツールの5勝目だ。来年はニエベもケノーもスカイを去るが、新たにベルナル、ハルヴォーシュン、ローレスなど若き才能も加入する。スカイ帝国の栄光はまだまだ続きそうだ。

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2.トレック・セガフレード

アルベルト・コンタドール総合5位

アルベルト・コンタドール区間1勝(第20ステージ)

個人的に、コンタドールという男はそこまで好きではなかった。自分がサイクルロードレースを見始めたのは2015年のツールからで、モルティローロ怒りの登坂すらリアルタイムでは見られていなかった。

それでも、2016年パリ~ニースの頃から、あるいはその年のツールの、リタイアすることになるステージでの決死のアタックを見てから、コンタドールのその果敢さ、執念、そういったものにどうしようもなく惹かれていくのを感じた。

コンタドールは間違いなく、伝説を作り続けた男であった。彼は、他のどの選手とも違う、唯一無二の選手だったと、自信をもって言える。

そんな男が、また新たな伝説を作ったのがこのブエルタだった。

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そんな彼の最後のブエルタを支えたのが、トレックというチームだった。もう1人のエースであったデゲンコルブは、残念ながら早期リタイアとなってしまったが、その後も、エドワード・トゥーンスの、2度にわたる献身的なアシスト。そして、アングリルでの、ハルリンソン・パンタノの、全てを出し切る走り。

たった1人の男の栄光のために、チームの全てがその男を支え、そしてまたその男も、チームの栄光のために、その全てを出し切って戦う。

まさに、サイクルロードレースの魅力を体現したチームであった。

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ありがとう、コンタドール

彼の走りが、この後の世代にも、強く影響を与え続けることを願う。

 

 

3.クイックステップ・フロアーズ

マッテオ・トレンティン区間4勝(第4、第10、第13、第21ステージ)

イヴ・ランパールト区間1勝(第2ステージ)

ジュリアン・アラフィリップ区間1勝(第8ステージ)

ジロのガヴィリアの4勝、キッテルのツールの5勝に続き、ブエルタでもこうして、他チームを圧倒する成績を残すことのできたクイックステップ。まさに、現在のサイクルロードレース界における最強のチームであることを証明した。

来年はそのキッテルとトレンティンがチームを去ることになるが、クイックステップの強さのDNAはきっと、継承され続けていくことだろう。

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そしてもう1人の英雄が、エンリク・マス。スペインの若手として、ブエルタ開幕前から注目していた選手だった。もちろん、勝利があったわけでもないし、総合順位が高かったわけでもない。ただ、コンタドール勝利を決めた第20ステージで、彼はチームの垣根を超えてコンタドールを牽引する役目を担った。かつて、コンタドールが運営する育成チームにマスが所属していたことなどが縁となったようだ。そして、そんな縁が帰ってくるような走りをするのが、コンタドールという男の魅力なのだと思う。

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マスは、コンタドールから直々に、「次代のスペインのエースを担う男」として指名されたらしい。

これからが楽しみだ。

 

 

4.ロット・スーダル

サンデル・アルメ総合19位

トーマシュ・マルチンスキー区間2勝(第6、第12ステージ)

サンデル・アルメ間1勝(第18ステージ)

トーマス・デヘント区間1勝(第19ステージ)

ほぼ最強のメンバーで挑んだツールでは大爆死。後がない状態で挑んだこのブエルタで、想像もできなかった結果をもたらした。マルチンスキー、アルメといった、正直言って地味な選手、という印象だった彼らがここまでの成績を出したという意味で、今大会最も衝撃的なチームだったと思う。

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ロット・スーダルといえば、グライペルのスプリントか、あるいはクラシックにおける各種パンチャー、ルーラーたちの活躍、というような印象だった。だが今大会活躍したデヘントもマルチンスキーも、いずれもクライマータイプの選手たちだ。今年はグライペルも振るわない様子で、少しずつチームとしても変化しつつあるのかもしれない。

となると、そろそろ総合エースの存在に期待したいところ。今回のアルメも総合19位と悪くない結果だったのと、デヘントもドーフィネ前半戦でいい走りをしていたので、今後のコンディションの調整次第では総合上位も狙っていけるかもしれない。

あるいは、若手イギリス人のジェームズ・ショーの成長が期待されるところかもしれない。

 

 

今大会ある程度の結果を出せた6チーム

1.バーレーンメリダ

ヴィンツェンツォ・ニーバリ総合2位

ヴィンツェンツォ・ニーバリ区間1勝(第3ステージ)

ニーバリという選手はやはり強い選手だ。もちろん、グランツールは既に全て制覇している。それでも、フルームやキンタナには一段劣る選手、という印象も強かった。しかし、今年33歳になるというのに、ジロ総合3位とブエルタ総合2位という安定感。とくに、3週目に向けてしっかりとコンディションを上げていくという、グランツールの戦い方を最も熟知した走りをできるところが凄い。

本人にとって、この総合2位というのは決して手放しで喜べる結果ではないのかもしれない。それでも、見事だった。

そして、そんなニバリをひたすら支え続けたのが、フランコ・ペリゾッティという男だった。彼はジロでもニバリを献身的に支えていた男だ。

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ニバリの6つ年上になる彼は、かつてリクイガス時代にニバリのチームメートであった。その後、長くプロコンチネンタルチームで燻り続けていたペリゾッティだったが、今年、ニバリを中心とした新チーム立ち上げに伴い、ニバリ周辺が熱烈にプッシュした結果、6年ぶりのワールドツアー復帰となったのである。

そして、長いブランクを感じさせない登りでの圧倒的なアシストによって、ニバリは今年のジロとブエルタで結果を残すことができた。

私個人としては、今大会におけるベストアシスト賞は、このペリゾッティに捧げたいと思っている。

 

 

2.カチューシャ・アルペシン

イルヌール・ザッカリン総合3位

ザッカリン、執念で表彰台に滑り込む。昨年亡くした父に捧げるポディウムだという。ツールとまではいかなくとも、いつかジロかブエルタは制する力がある男だと思っている。その意味で今回の表彰台は不思議ではないし、チームとしてはもっと活躍してほしかった、というのが本音だ。まだまだ総合エースを支える布陣には不安があるか?

ジロの終盤で活躍したホセ・ゴンサルベスが早々にリタイアしたことも痛かったかもしれない。若手の期待、マトヴェイ・マミキンも、今年は活躍するところを見せられず、終盤に絶叫とともにリタイア。

 

 

3.チーム・サンウェブ

ウィルコ・ケルデルマン総合4位

最後の最後で表彰台から滑り落ちてしまったケルデルマン。それでも、総合4位、しかもチームの9分の4がリタイアしている状態でのこの結果は、十分なほどの成果である。とはいえ、ザッカリンとは逆に、ケルデルマンがこれ以上の成果を今後出せるイメージが湧かない。あくまでも、デュムランのアシストとしての活躍を期待してしまう。

逆に個人的に注目したのは、23歳のデンマーク人、セーレンクラーウ・アナスン。今年、ツアー・オブ・カタールの山頂フィニッシュで、ベン・ヘルマンスとルイ・コスタを破って勝利した男で、クライマーかパンチャーに近い脚質をもつ男、という印象があった。しかし、今大会ではスプリントで8位、3位、ときて最終日マドリードでも3位。TTも早いし、実に多才な選手である。

 

 

 

4.キャノンデール・ドラパック

ダヴィデ・ヴィレッラ山岳賞

マイケル・ウッズ総合7位

ヴィレッラの山岳賞、ウッズの総合TOP10入り、そして何よりも、ブエルタ開催中に突如として告知されたチーム解散の危機と、そこからの復活。

解散危機が報じられた直後の、チーム一丸となっての走りは、特に印象的。ヴィレッラの山岳賞を確保するうえでも、チームとしての動きが重要なピースだったようで、ジロのローラン勝利やツールのウラン総合2位と合わせ、地味ながら結果を出すこのスリップストリームの系譜は、やはり現代のサイクルロードレース界においてなくてはならない存在なのかもしれない。

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そんな中、ひっそりとタランスキーが引退を発表したことが、個人的にはとても悲しい。

 

 

5.アスタナ・プロチーム

ミゲルアンヘル・ロペス総合8位

ファビオ・アル総合13位

ミゲルアンヘル・ロペス区間2勝(第11、第15ステージ)

アレクセイ・ルツェンコ区間1勝(第5ステージ)

なんといっても、ロペスの躍進がこのブエルタにおけるアスタナ最大のトピックスである。正直、総合上位までは期待していなかったので、最後に総合8位にまで転落してしまったこと自体はあまり問題だとは思っていない。むしろ勝ち方を知れたので、あとは3週間を戦い続ける感覚を身に着けていけば、今後表彰台も十分狙っていけるようになるだろう。

正真正銘、アスタナの新エースとなる準備が整った。想定よりも早く。

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そして、稀代の逃げ屋ルツェンコも、まずはグランツール1勝目。毎年着実に結果を積み重ねていっている男なので、今後も楽しみだ。

 

 

6.アクアブルー・スポート

シュテファン・デニフル区間1勝(第17ステージ)

今年創設さればかりのチームで、いきなりワイルドカードを獲得して、それでしっかりと勝利まで持ち帰れたのは間違いなく快挙。

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逃げにも積極的だったし、十分アピールできたのではなかろうか。

 

このチーム、来年は既に、ヨーロッパ選手権U23部門ロード優勝者のキャスパー・ペダーセンの獲得も決まっている。さらなる活躍がこれからも期待できそうだ。

 

 

良くもなく、悪くもないといった結果の4チーム

1.チーム・ロットNLユンボ

 スティーヴン・クライスヴァイク総合9位

 ひとまずクライスヴァイクも、早期リタイアとなった昨年の借りを返し、総合争いに十分加わることのできる実力があるんだということを証明はできた。

それでも昨年のジロと比べてしまうと、やはり目立つことのなかった3週間。期待外れとまでは言わないが、このまま埋もれてしまう予感しかしない。

ベネットも中盤でリタイア。クレメントも中途半端で、総合勢はどうしようもない結果となってしまった。

フアンホセ・ロバトが序盤で上位に入ったことは驚きだったが最後まで持たず。ミラノ~サンレモなんかでも上位に入れる選手なので密かに期待しているのだが、なかなかうまくはいかないね。

逃げには相変わらず積極的。実らなければ意味がないのだが・・・。

 

 

2.BMCレーシング

ティージェイ・ヴァンガーデレン総合10位

ニコラ・ロッシュ総合14位

チーム・タイムトライアル優勝

チームTT優勝というノルマは達成しつつ、それ以外は正直期待はしていなかったので、ヴァンガーデレンの総合TOP10滑り込みとロッシュの前半戦の活躍はむしろ良く頑張ったという印象。

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長距離個人TTでの、デニスとフルームの一騎打ちというのは非常に見てみたかったのだが、デニスの直前のリタイアで果たされず。世界選手権ではどうなるか。

 

 

3.UAEチーム・エミレーツ

ルイ・メインチェス総合12位

ホンダルウィン・アタプマ総合20位

マチェイ・モホリッチ区間1勝(第7ステージ)

総合上位を狙える人材は揃っていたのが、いずれも中途半端な結果に。アタプマもメインチェスも、ツールからの連戦に疲れ切っていたのか。サッシャ・モドロも、期待していたのだが結果は出せず。

そんな中、モホリッチが初のワールドツアー勝利を達成。おめでとう。元祖スペースペダリングことモホリッチ乗りもしっかりとアピールできた。

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また、ジロのエトナ覇者ヤン・ポランツが今回もコレット・ディ・カティで2位と悪くない結果に。今後さらなる成長が楽しみだ。

 

 

4.マンサナ・ポストボン

勝利こそないものの、それなりの存在感は示せたか。ジャージの派手さがその要因の一つかもしれないが。。

前半のイェツ・ボルと、中~後半のリカルド・ヴィレッラの積極的な逃げは、さすがこのチームの中での非コロンビア人として、コロンビアの若手を育てる役目を担った選手として相応しいものだった。とくにヴィレッラは、山岳賞のヴィレッラと同じようなタイミングで逃げることも多く、こちらを混乱させてくれた。

コロンビア人若手の中では一応のエースナンバーを着けていた22歳のアルデマール・レイエスが、難関山岳ステージでも比較的終盤まで残る走りを見せていた。期待の選手になれるか。

 

 

期待されていたほどの結果を出せなかった4チーム

1.オリカ・スコット

ヨハンエステバン・チャベス総合11位

チャベス、アダム、サイモン、オリカの誇る総合勢全てを投入し、その全てが沈んでしまった。さらにはコルトニールセンやユールイェンセンなど、ステージ勝利を狙える陣営も、期待されていた結果を出すことができなかった。メンバーが豪華な割の大爆死に言葉もないといった結果。

ただ、コルトニールセンがスプリントだけでなく、山岳でも積極的に逃げに乗っていたのは印象的だった。まるでホセホアキンロハスのような動き方だった。これは極めれば総合エースにとってとても嬉しい前待ち作戦要因ともなるため、その点での可能性が残る走りを見れたのは良かったか。

ただしコルトニールセンは来期からはアスタナ行き。

 

 

2.カハルラル・セグロスRGA

セルヒオ・パルディラ総合15位

カハルラルというチームは、スペインの新鋭を発掘していくという意味で非常に意義のあるチームだと思っている。2年連続山岳賞を獲ったオマール・フライレもこのチーム出身だし、今回出場したメンバーの中でも、第10ステージで区間3位を獲るなどしているハイメ・ロソンは来期モビスター入りが決まっている。

しかし、ロソン以外のメンバーは、正直期待していたほどの活躍は見せられなかった。ステージ勝利までは求めないが、逃げの終盤まで残る姿が、例年よりも少なかったように感じる。

かろうじて活躍していた気がするのはセルヒオ・パルディリャとダビ・アロヨだが、いずれもモビスター在籍経験もあるベテランで、どちらかというと教育役なので求めているものとは違う。あとはリュイスギジェルモ・マスもちょくちょくと逃げに乗っていた気はする。彼はもうブエルタの常連だが、ワールドツアーからのお声はかからないのだろうか。いまだに来年度の行く先は決まっておらず。

 

 

3.モビスター・チーム

ダニエル・モレーノ総合18位

総合エースがいないとはいえ、モレーノ、ベタンクール、ロハス、フェルナンデス、オリヴェイラ、そしてマルク・ソレルといった、それなりの実力者が揃っている中で、最高がモレーノの総合18位、そしてステージ勝利もなしとなると、やはり厳しい結果と言わざるをえない。

もちろんロハスやソレルも積極的に逃げに乗り続けており、それなりの存在感を示しはしたが、そこで勝利に繋げられなければこのチームとしては十分ではない。ソレルが初のグランツールで、何かを掴んでくれていればいいのだが。

 

 

4.ボーラ・ハンスグローエ

ラファウ・マイカ区間1勝(第14ステージ)

マイカが1勝してなんとか結果は残したものの、やはりかつて総合3位を獲った男のこの結果は切ない。ブッフマンやコンラートも力のある選手だが存在感を示せず。

来年はケーニッヒが復活して、大暴れしてくれることを期待している。

 

 

まったく目立てなかった4チーム

1.AG2Rラモンディアル

ロマン・バルデ総合17位

結局バルデはツールでしか輝けない男なのか・・・? ブエルタで結果を出しているジェニエもグジャールも、手も足も出せなかった。今年調子のよかったポッツォヴィーヴォも、早々にリタイアしてしまっていた。

それなりに豪華なメンバーを連れてきた割に、散々な結果に終わった。また来年!

 

 

2.コフィディス・ソリュシオンクレディ

コフィディスにとってブエルタはある意味地元である。ディレクトエネルジーが今回出場していない中で、プロコンチネンタルチーム最強チームとして挑んだはずなのに、この結果はひどい。昨年1勝しているヴァンヘネヒテンが早々に帰ってしまったのも痛い。マテやナバーロが逃げで頑張るのはもう予定調和なので、彼らはそろそろ勝ってもらわないといけない。26歳のフランス人アントニー・ぺレスがやや頑張った。

 

 

3.ディメンションデータ

アフリカ勢若手期待の星クドゥス、今大会最初の頂上ゴールで2位と結果を出した2日後に帰宅。今シーズン、ワールドツアークラスのレースでもスプリントで良い成績を出し続けているアルジェリア人、ユーセフ・レグイグイも、第4ステージで9位に入った翌日にリタイア。ほかにもパウェルス、フライレと実力者が次々とブエルタを去り、最後に残ったのはツールのFDJよろしく3名のみ。昨年に引き続きワールドツアーチーム残留の危機がありながら、最後のグランツールでこの結果は非常に痛い・・・本来総合で頑張るべきアントンも、いいところなく総合35位。

 

 

4.FDJ

本来ブエルタはFDJが活躍できる場ではないとわかっているが、それにしても目立てなかった。個人TTでルドヴィクソンが一時注目されたのと、マンザンが最終日にまさかの2位に食い込んだくらいか。このメンバーにしては上出来?

個人的に注目していたオドクリスティアン・エイキングは、まったく存在感を示せなかった末に、最終日にひっそりと未出走で終わる。

特集・オーストリア ドロミテの子どもたち

「地獄」「痛みの山」などと形容された、超級山岳ロス・マチュコス。

ジュリアン・アラフィリップやダニエル・モレーノといった実力者たちを突き放し、鬼気迫る勢いで追い上げを見せたアルベルト・コンタドールを振り切って、29歳のオーストリア人、ステファン・デニフルが逃げ切り勝利を決めた。

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彼が所属するアクアブルー・スポートは、今年創設されたばかりのプロコンチネンタルチーム。ワイルドカード枠で選出された彼らにとって、今回の勝利は大きな価値を持つものであった。

もちろん、デニフル自身にとっても、キャリア最大の勝利だ。

 

とはいえデニフルは、昨年までIAMサイクリングに在籍しており、29歳にしてプロ11年目というベテランでもある。今年もツアー・オブ・オーストリアで総合優勝を果たしており、しかもクイーンステージのキッツビューエラー・ホルン山頂ゴールでは、ミゲルアンヘル・ロペスに喰らいついての2位ゴールを獲っている。

実力は確かにある選手だったのだ。

 

 

そう、彼はオーストリア人である。

オーストリア人による劇的な勝利といえば、今年のジロ第1ステージにおける。ルーカス・ポストルベルガーの勝利が記憶に新しい。

彼はまだ25歳。若手の選手である。

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オーストリアという国は、ロードレース界においては決して大きな存在ではない。それでも、古くから多くの実力者を輩出し、また近年においては若手の台頭も、少しずつ見られてきている。

 

今回は、そんなオーストリアという国の選手たちに注目していきたい。

 

 

 

オーストリアについて

オーストリアは、ドイツの南東、スロベニアやスイス、イタリアといった自転車の盛んな国に隣接する形で存在している。首都はウィーン。「音楽の都」である。

 

15世紀から16世紀にかけて、オーストリアはドイツ語圏における中心的な役割を果たしていた。しかし17世紀以降、ドイツ国内の宗教対立をきっかけにして次第にその権威を失墜。19世紀にはベルリンを中心とした北ドイツのプロイセンが、オーストリアを排除した形でのドイツ統一を果たしてしまう。

ナチス・ドイツ時代にはドイツの州の1つになってしまうなど、近年ではドイツに従属するような立場に置かれることが多かった。

 

ロードレース界においても、常にドイツの影にいるような存在であった。ドイツには強力なスプリンターがおり、グランツールライダーにおいても有名な選手を輩出している。ドイツは経済的な強さを背景にして、今年はワールドツアーチームを2つも持っている。

一方、オーストリアはプロコンチネンタルチームすら持っていない。オーストリア人が最も多く所属するワールドツアーチームは、ドイツ籍のボーラ・ハンスグローエである。

レースの格においても差があり、オーストリアのレースで最も格が高いのが、前述したツアー・オブ・オーストリアと、今年初開催のプロ・エッツタール5500の2つ。これも、HCクラスですらなく、1クラスのレースである。

一方のドイツは、今年からとはいえ、ワールドツアークラスのレースを2つも持っている。今年のツールはドイツからスタート。トニー・マルティンなど、世界チャンピオンも輩出している。オーストリアは、同じ言葉を話すドイツに対し、ロードレースの実績という面では、大きく水を開けられてしまっているのだ。

 

 

しかし、こと地形に関して言えば、ドイツよりもオーストリアの方が、良きクライマーを輩出できる要素に恵まれている。

なにせ、「山岳の国(Land der Berge)」である。上記の地図を見てもわかるように、国土の6割以上をアルプス山脈が占めている。とくに西部チロル州は、イタリアの南チロル、トレンティーノと合わせて「チロル地方」を形成しており、ジロで有名なドロミテ山塊もこの地域に存在している。

 

そして今回、ブエルタで優勝を果たしたデニフルもまた、このチロル州の生まれである。ドロミテの激坂で鍛えられた足だからこそ、今回の勝利を掴めたのである。

 

 

オーストリアの注目選手たち

現在、ワールドツアーチームに所属しているオーストリア人選手は以下の8名である。

 

  • ベルンハルト・アイゼル(ディメンションデータ、36歳)
  • パトリック・コンラッド(ボーラ・ハンスグローエ、26歳)
  • グレゴール・ミュールベルガー(ボーラ・ハンスグローエ、23歳)
  • ルーカス・ポストルベルガー(ボーラ・ハンスグローエ、25歳)
  • オルグ・プライドラー(サンウェブ、27歳)
  • マルコ・ハラー(カチューシャ・アルペシン、26歳)
  • マティアス・ブランドル(トレック・セガフレード、27歳)
  • ミカエル・ゴグル(トレック・セガフレード、24歳)

 

こうして見てみると、比較的若い選手が多いことがわかる。

その中でも、個人的に注目しているのは次の選手たちだ。

 

オルグ・プライドラー(サンウェブ、27歳)

2013年からずっと、このチームに所属し続けている。2015年・2017年国内選手権ITT王者。とはいえTTスペシャリスト、というわけではなく、山岳ではエースを守る頼れる名アシストでもある。

2016年のジロにおいては、デュムランがリタイアした後にチームの実質的なエースを務める。そして第14ステージ、ドロミテのクイーンステージではチャベス、クライスヴァイクと同タイムでのゴールを果たした。最終的にも総合26位と、チーム最高位であり、本人としてもグランツールで最高の結果となった。

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来年はルーラーのラモン・シンケルダムと共にFDJに移籍。ティボー・ピノを支える山岳アシストの一員として活躍が期待される。

 

パトリック・コンラッド(ボーラ、26歳)

2014年から現チームに所属。同じチームのミュールベルガー、ポストルベルガーと共に生え抜きのメンバーである。2016年にはジロ・デル・トレンティーノ(現アルプス・ツアー)総合5位。同年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでは15位。今年はバスク1周のアップダウン激しいコースで上位に入り、最終的に総合7位で着地した。

アルデンヌ風のコースとの相性が良い、クライマーでありパンチャー。今年はジロ・ブエルタの両方でメンバー入りを果たし、来年も山岳アシストとして重宝されるだろう。

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だが、個人的には、来年こそ彼自身の勝利を、と思っている。アルデンヌ・クラシックでの勝利、というのは難しいだろうが、ステージレースでの1勝などは、期待してもいいだろう。

 

フェリックス・ガール(サンウェブ育成チーム、19歳)

2015年世界選手権ジュニア王者に輝いた。オーストリア人としては、全カテゴリを通して史上初のアルカンシェルジャージとなった。 

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彼もまた、チロルの生まれである。すなわち「ドロミテの子ども」だ。

現在はチーム・サンウェブの育成チームにあたる「ディベロップメント・チーム・サンウェブ」に所属。過去の名選手も、ラヴニールなどの大きなレースで活躍をし始めるのは大体20歳くらいからなので、来年の彼の動向は注目に値する。

 

そして、来年、すなわち2018年は、世界選手権がチロル州のインスブルックで開催される。

www.innsbruck-tirol2018.com

 

コースなどがどうなるか、詳細は不明だが、U23部門でのガールの活躍や、ITTでのプライドラーの活躍、もしくはロードレースでのコンラッドやミュールベルガーの活躍に期待したいところ。

 

前回、オーストリアで世界選手権が開かれた2006年ザルツブルク大会では、オーストリア人のロードレースでの最高位はアイゼルの11位であった。

しかしそのときと比べても、最近のオーストリア人若手の台頭は著しい。

2018年、あるいはそれ以降、ロードレース界における「オーストリアの時代」が到来する可能性は十分にある。

 

 

オーストリアの台頭を楽しみにしていよう。きっと彼らは大きな存在となる。

UCIロード世界選手権2017 プレビュー

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ブエルタもいよいよ終盤戦。しかし今回は、開幕が近づきつつある、2017年世界選手権をプレビューしていく。

 

今年の開催地はノルウェーのベルゲン。同国での開催は1993年のオスロ大会以来24年ぶり。9月でも40度近くまで気温が上がる昨年のドーハとは逆に、平均最低気温が10度以下になる北の大地での開催となる。

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ノルウェー第2の都市ベルゲン。波止場や倉庫街(ブリッゲン)が世界遺産にも指定されている。

 

今回のこの世界選手権のコースと注目選手をプレビューしていく。

出場選手はまだまったく決まっていないため、以下に挙げた選手が結局出場しない、という場合もありうるので注意。

 

 

 

エリート男子個人タイムトライアル

今回の男子個人タイムトライアルはかなり特殊なコースとなっている。

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まず、31kmと短い。かつ、最後の3.4kmが平均9%以上の本格的な登りとなっている。

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ほぼ間違いなく、登りの手前で自転車交換が行われそうだ。

こうなってくると、いつもの優勝候補が優勝候補でなくなってくる。言っても28kmは通常のTTと同じなので、やはり大前提として独走力は必須となる。

 

ということで、TTスペシャリストというよりも、TTが圧倒的に強いうえで登りもイケるオールラウンダーが有利となり、大方の予想は今年のジロを制したトム・デュムラン(オランダ)となっている。

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リオオリンピックでは銀メダルを獲得したデュムラン。しかも、直前のツールで指を怪我したうえで、である。

 

今まで国内選手権を3度制しているデュムランだが、意外にも世界選手権での優勝はない。どころか、エリート初出場の2013年以降、14位→3位→5位→7位とイマイチな結果と言ってしまってもいいくらいである。2011年以来4回優勝しているトニー・マルティンとは対照的だ。

 

だからこそ、今年の世界選手権は最大のチャンスである。来年以降もグランツール総合に向けた体作りをしていくだろうから、今年は本当にチャンスと言える。

 

 

そして、同じようにオールラウンダー系のTTスペシャリストとして注目したいのがローハン・デニス(オーストラリア)。同じく2013年以降は12位→5位→6位→6位。

ちなみにデュムラン、デニスがともに最も良い順位を記録した2014年ポンフェラーダの個人TTは、後半にアップダウンが豊富で獲得標高458mのコースだった。そしてこの年の優勝者はマルティンでもヴァシル・キリエンカでもなく、やはりオールラウンダーのブラッドリー・ウィギンスであった。

それ以上の標高差を持つ今年のTTで、デュムラン、およびデニスが優勝する可能性は十分にある。

 

もちろん、マルティン、そして2015年覇者のキリエンカもまた、山岳が弱いわけでは決してない選手である。2014年だってそれぞれ2位、4位である。

その他の優勝候補としては、今年ジロの最終日を制したヨス・ファンエムデン。あるいはツール第20ステージを制し、ヨーロッパ選手権ITTでも2位だったマチェイ・ボドナール。あるいは2014年世界選手権ITTで7位だったネルソン・オリヴェイラ、同10位で来年はスカイ行きが決まっているヨナタンカストロビエホなどであろう。

 

 

エリート男子ロードレース

ロードレースの方もなかなか味のあるステージだ。エリート男子の場合は、まずは平坦の40kmを経たうえで、19.1kmの周回コースを19周する。

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途中出現する「サーモン・ヒル」は登坂距離1.5km、平均勾配6.4%と、決して物凄く厳しい、という登りではないものの、これを19回こなすことになるので、確実にライダーたちの足を削っていくことだろう。

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これに加え、主催者はコースに石畳も含めたとのことで、純粋なスプリンターというよりは各種クラシックに強い脚質をもった選手が有利になるだろう。

 

世界選手権2連覇を遂げているペテル・サガンの3連覇も十分に狙えるコースであると同時に、やはり地元ノルウェーの2大選手――アレクサンダー・クリストフ、そしてエドヴァルド・ボアッソンハーゲンにとっても相性のいいコースと言えるだろう。とくにクリストフはロンド・ファン・フラーンデレンも制しており、クラシック系のコースはお手の物である。

 

だが、フランスの諺にある「船長が2人いると船は転覆する」ではないが、この2人のエースを抱えているにも関わらず(抱えているがゆえ?)、ノルウェーチームは今までの世界選手権で勝利を得ることができずにいた。

昨年も6位・7位と仲良く撃沈。

 

 

だが、今年は違う。それを見せつけたのが、8月に行われたヨーロッパ大陸選手権だった。

ここで、まずは逃げ切りを狙って残り10kmから飛び出したのがボアッソンハーゲン。今年のツール第19ステージで見せつけた、終盤のアタックからの逃げ切りという彼の得意パターンへと持ち込んだ形だ。

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ツールではクレバーな走りで逃げ切り勝利を決めたボアッソンハーゲン。ヨーロッパ選手権では成功しなかったが、世界選手権では果たしてどうか。

 

残り4kmを切って共に逃げていたクークレールとニコライ・トゥルソフが脱落したあとも独走。残り1kmを切っても先頭を逃げ続けたが、ラスト300mでついに捕まえられてしまった。

 

だが、たとえばミラノ~サンレモで見せるような、捕まえられたら終わり、のアタックではない。このアタックをすることで集団にカオスを作り、集団に残ったもう1人のエース、クリストフにチャンスを与えるという意味を持っていたのだ。

そして、見事クリストフが勝利。昨年のサガンに続く、2人目のヨーロッパ大陸ロードチャンピオンに輝いた。クリストフ自身にとっても、大きなレースでの勝利がなかなか無かった不調続きの今シーズン、最大の勝利となった。

 

 

ともにスプリントで勝利を狙う、という方法ではなく、アタックと集団内スプリントという、それぞれの得意分野を活かして補完し合う戦い方を、意図して2人が行っていたのであれば、これは凄いコンビネーションである。

たまたまかもしれないし、その可能性も高いだろうか、同じようなコンビネーションが世界選手権でも見られれば幸いだ。

 

そして個人的には、今度こそボアッソンハーゲンに勝ってほしい。思えば彼も、なかなかに不遇な人である。かつては過剰に期待され、しかし思うように結果を出せずにいた彼。だが今年は、5月のツアー・オブ・ノルウェー区間2位&総合優勝&ポイント賞に輝き、同じノルウェーのツール・ド・フィヨルドでは区間3位&総合優勝&ポイント賞と、自国レースで大活躍を果たしている。

そしてツールでの勝利。結構なベテランなのに、このときの喜びようは凄まじかった。それだけ、辛い時期を過ごしてきたのだと思う。

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ツールでの勝利のあと、歓喜するボアッソンハーゲン。

 

そんなボアッソンハーゲンに勝ってほしい。地元での世界選手権での勝利。これほど嬉しいことはないだろう。

実際に、今回のコースの特徴である「鋭角カーブの連続」が、逃げ切りを目指す選手にとっては有利に働く。

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ゴール前約3kmの地点で180度鋭角カーブ。さらにゴール前1kmを過ぎてからゴール直前に2度の直角カーブ。集団スプリントよりも逃げが生まれた中での単独もしくは小集団スプリントによる決着を予想しているかのようなコースレイアウトだ。

 

ツールのときのようにタイミングよく、クレバーなアタックを仕掛けることができれば、ボアッソンハーゲンが栄光を掴む可能性はぐっと高まることだろう。

  

 

U23男子ロードレース

実は今回の記事で最も書きたかったのはこの項目だったりする。

今年のブエルタ区間勝利を果たしたルツェンコとモホリッチも、それぞれ2012年・2013年のU23ロード覇者である。ほかにもアルノー・デマール(2011年優勝者)、ブライアン・コカール(2012年2位)、ルイ・メインチェス(2013年2位)、カレブ・ユワン(2014年2位)など、まさに未来のスターを生み出す場であることは間違いない。この世界選手権をきっかけにワールドツアーチームでプロ入りする選手も少なくない。

今後、活躍する若手を予想していくにあたって、ツール・ド・ラヴニールと並んで注目に値するレースである。

 

コースはエリート男子ロードと同じ周回コースを使用し、周回数だけが10回と少なくなっている。

総距離が短いだけに、このアップダウンの激しい厳しいコースを活用した、激しい激しい戦いが繰り広げられることだろう。

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今大会、その活躍が期待されるのは以下の選手たちだ。 

※年齢はすべて数え年表記。

 

クリストフェル・ハルヴォーシュン(ノルウェー、21歳)

昨年のU23世界チャンピオン。今年もコンチネンタルチームのチーム・ジョーカーに所属しているため、U23カテゴリでの参加が可能。

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今年のツール・ド・ラヴニールで、厳しい山岳ステージに突入するまでの6ステージ全てで4位以上。しかも今年のラヴニールは、アップダウンに富んだ「自転車の聖地」ブルターニュで始まっている。世界選手権に向けてベルギーのレースで調整をするとも言っており*1、クラシック風味の世界選手権に向けて準備万端といった姿勢だ。

母国開催というのも大きい。U23世界選手権ロードにおける2年連続の優勝は(それどころか1人の人物による複数回の優勝は)現在の枠組みでスタートした1996年以来初となる出来事だ。

来期はチーム・スカイへの移籍が決まっている。

 

クリストファー・ローレス(イギリス、22歳)

チーム・ウィギンス、JLTコンドールときて今年はアクセオン・ハーゲンバーマンに所属。昨年はU23国内選手権において当時アクセオン所属だったタオ・ゲオゲガンハートに敗れたものの、今年は逆に自らがアクセオンに所属し、スカイへと移籍したゲオゲガンハートを打ち破ってついに国内U23チャンピオンとなった。

さらにいえばエリート部門でもカミングスに次ぐ2位。それだけでなく4月のツール・ド・ヨークシャーではフルーネヴェーヘンに次ぐ区間5位を獲るなど、ワールドツアーのベテランたちに引けを取らない活躍を見せている。

ちなみにこの選手も来年からはスカイ入り。どんだけー。

 

キャスパー・ペダーセン(デンマーク、21歳)

元トラック選手で、ヨーロッパ選手権チームパーシュートで銅メダルを獲得している。今年はロードのヨーロッパ選手権U23カテゴリで見事優勝。U23版エシュボルン・フランクフルトでも2位と好成績を残した(1位はオランダのファビオ・ヤコブセンで、彼もまたU23ロードの優勝候補と言えるだろう)。

ちなみにこの後紹介するU23カテゴリ個人タイムトライアルの優勝候補もデンマーク人。ノルウェー開催の世界選手権ではあるが、デンマーク人での金メダル独占というのも、面白いかもしれない。

現所属チームはジャイアント・カステリ。その名の通りジャイアントと、スカイのジャージ製作を担当しているカステリがスポンサーについているため、そのジャージはなんとなくどこか見たことあるようなものとなっている。

※参考:http://teamgiantcastelli.dk/

来年の所属チームは不明。まだ若いので、すぐのワールドツアー入りはしないかもしれない。

 

 

U23個人タイムトライアル

U23男子の個人タイムトライアルは、エリートのそれとは結構異なっている。ロングラップコース⇒ショートラップコースの順番でそれぞれ1周する合計37.2km。結果的にエリートよりも長くなっている。

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 しかも長くなっているにも関わらず、U23に関しても途中のアップダウンが激しい。とくに8km~10km区間に控えている「バイクランダースバッケン」は1.4kmと短いものの平均勾配7.2%(ラスト400mは9%)と結構厳しい登りだ。

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 純粋な独走力だけでない力が求められるのはエリートもU23も同じだ。

 

そんな中、注目したい選手は以下の通り。

 

キャスパー・アズグリーン(デンマーク、22歳)

ティンコフの元監督ビャルヌ・リースが運営するコンチネンタルチーム、チーム・ヴェロコンセプトに所属する。U23国内選手権ITTで優勝はもちろん、ヨーロッパ大陸選手権U23カテゴリでも優勝。さらには国内選手権ITTのエリート部門でも2位と大活躍を果たしている。さらにはツール・ド・ラヴニール初日では、得意の独走力を活かしての逃げ切り勝利を見せつけた。このとき集団先頭を獲ったのが昨年世界選手権ロード優勝のハルヴォーシュンであった。

今大会はまずITTでの優勝を狙ってくるだろう。ロードでペダーセンが優勝すれば、ロード、ITTをデンマークで制覇することも可能だ。さらには、ラヴニールの成功を踏まえ、もしかしたらロードでの優勝も狙えるかもしれない。エリート部門のクリストフ&ボアッソンハーゲンのように、集団スプリントならペダーセン、飛び出してからの逃げ切りを狙うのがアズグリーン、というようにコンビネーションを発揮して勝利を狙うことも可能かもしれない。

来年の所属チームは現状不明。昨年も同チームからマッヅ・ヴュルツシュミットがカチューシャ入りしており、アズグリーンもラヴニールでの活躍などもあるため、ワールドツアーへの昇格は十分考えられる。

 

ニールソン・パウレス(アメリカ、21歳)

彼の名前が最初に轟いたのは昨年のツアー・オブ・カリフォルニア。弱冠20歳で新人賞を獲得した。ちなみにこのとき新人賞ランキング上位3名を独占したのがアクセオン・ハーゲンバーマン。2位と3位のゲオゲガンハート、ルーベン・ゲレイロはそれぞれワールドツアーチームに移籍。パウレスは今年もアクセオンに残っているが、来年はまだ未定。そろそろありうるかもしれない。

さらに昨年はツール・ド・ラヴニール最終ステージでも優勝しており、クライマー、オールラウンダーとしての活躍が期待される逸材だ。

 

そんな彼だが、実はITTも強い。今年国内選手権U23カテゴリで優勝しているだけでなく、昨年の世界選手権U23カテゴリでも6位。前述のアズグリーンは5位だった。

より良い移籍先を確保するためにも、今回のITTでは最低でも表彰台を狙っていきたい。

 

 

その他

ここまで紹介していないレースでの優勝候補も確認していきたい。

チームTTに関しては、いつものメンバーであるBMCレーシングクイックステップ・フロアーズオリカ・スコットが優勝候補なのは間違いない。

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 チームTTのコースは全長42.5kmで今大会のTT系コースの中では最長。しかもU23カテゴリにも登場した「バイクランダースバッケン」も含まれており、単純な平坦レイアウトではない。

 

そういった点も踏まえて考えると、ハンマーシリーズとブエルタチームTTで実力を発揮しつつあるチーム・サンウェブも、いい走りを見せてくれるかもしれない。あるいは、登りを含んだチームTTで強さを発揮するチーム・スカイモビスター・チームも見逃せないだろう。モビスターに関しては長すぎるTTTでは未知数ではあるが。

 

 

女子レースに関しては正直、知識がまったくない。

それでも、以下の2選手は注目に値するだろう。

 

アンネミーク・ファンフリューデン(オランダ、35歳)

オリカ・スコット所属。昨年リオ・オリンピックの「魔の坂」で落車し、動かなくなる様子が全世界に中継されてしまった。そこからしっかりと復帰し、今年もタイムトライアルとワンデーレース中心に好成績を収めている。

今年は「イゾアール頂上ゴール」となった女子版ツール・ド・フランス「ラ・クルス」で優勝。「ラ・クルス」の第2ステージは、第1ステージでのタイム差をもって順にスタートを切る特殊ルールで行われたが、第1ステージで稼いだタイム差を失うことなく逃げ切り勝利を決めた。

女子個人TTは下記ロングラップを1周するレイアウト。登りも強く、独走力も高いファンフリューデンは女子ITT最大の優勝候補となりうるだろう。

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イゾアールを制したファンフリューデン。昨年リオの借りを返した

 

コリン・リヴェラ(アメリカ、25歳)

チーム・サンウェブ所属。今年のロンド・ファン・フラーンデレンを優勝しており、女子ロードレース界最注目の若手、といった印象。小柄な体格が非常に印象的だが、そのスプリントは力強い。 

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最近では7月末のライドロンドン・クラシックで優勝。女子版ツアー・オブ・カリフォルニアでも区間1勝を果たしている。国内選手権では3年連続2位という「無冠の帝王」ではあるが、世界選手権の優勝で真の王者となりたいところ。

笑顔も印象的な選手。これからも注目していきたい。

 

 

レース日程

最後に、世界選手権の日程を確認。(ジュニアカテゴリは省略)

 

9/17(日) 男女チームタイムトライアル

9/18(月) U23男子個人タイムトライアル

9/19(火) 女子個人タイムトライアル

9/20(水) エリート男子個人タイムトライアル

9/22(金) U23男子ロードレース

9/23(土) 女子ロードレース

9/24(日) エリート男子ロードレース

 

Jsportsで放送するわけでもないため、視聴方法は限られてくるとは思うが、なんとかできる限りライブで視聴していきたいと思う。

オススメの視聴方法などあればご教示願いたいところ。

ジャンニ・モズコン、イタリアの若きジェニオ

2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ第5ステージ。20%を超える激坂区間を含んだ、平均勾配10%の山岳山頂フィニッシュ。

このとき、マイヨ・ロホを着るクリス・フルームを最後まで支えたのは、山岳最強アシストのプールスでもニエベでもなかった。

プロデビュー2年目、グランツール出場もこのブエルタが初という男、ジャンニ・モズコンであった。

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ラスト1kmを超えてなお、フルームを牽引するモズコン。Jsportsより。

 

アークティックレース・オブ・ノルウェーで総合優勝し、パリ~ルーベで5位に入り、イタリア選手権個人TTチャンピオンになった男、モズコン。

あらゆる可能性に満ち溢れたこの男について、今回は書くことにする。

 

 

ジャンニ・モズコンという男

モズコンは1994年4月20日、ドロミテ山塊にもほど近い北イタリアのトレントで生まれた。今年で23歳。リンゴ農家で育った彼は、「トラクター」という渾名で呼ばれていたらしい*1

マチュア時代の2014年には、U23イル・ロンバルディアで、ラトゥールやディラン・トゥーンスを打ち破って優勝。

さらに2015年にはU23イタリア国内選手権ロードでも優勝し、名実ともに若手イタリア人最強のライダーとなった。

 

同年のU23世界選手権ロードでは惜しくも表彰台を逃すが、この活躍に目をつけたのが、スカイにバイクを提供しているピナレロ社の代表ファウスト氏。

彼の推薦を受けて、スカイのスポーツディレクターであるダリオ・チオーニはモズコンのスカイ入りを決めた*2

 

すでに実力を証明済みのモズコンは、プロデビュー初年度から大ブレイクを果たす。

彼の名を有名にしたのが、その年のアークティックレース・オブ・ノルウェーでの総合優勝だ。

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ではモズコンは総合系ライダーとしての素質を持った選手なのだろうか。

私はそういう風に感じなかった。

アークティックレース・オブ・ノルウェーは、確かにスティーヴン・クライスヴァイクやレイン・タラマエといった総合系の選手たちも輩出しているが、総合上位入賞者たちの顔ぶれを見てみると、むしろ登れるスプリンターやクラシックスペシャリストたちの名前が多く並んでいる。

今年の総合優勝者も、クライマーというよりもパンチャー寄りの脚質をもったディラン・トゥーンスである。

 

私が個人的にモズコンに注目し始めたのは、その後の9月、カナダで行われた2大レース――すなわち、「グランプリ・シクリスト・ドゥ・ケベック」と、「グランプリ・シクリスト・ドゥ・モントリオール」である。

アップダウンの激しい、アルデンヌ風味のこの2大レースで、モズコンは積極的な動きを見せていた。

モントリオールでは実際に6位に入ったし、とある激坂ポイントではアラフィリップすら退ける走りを見せていた。

 

だから自分の中では、このモズコンという男は、たとえばユイの壁で活きてくるような、典型的なアルデンヌ系パンチャーなのではないか――そんな風に思っていた。

 

 

一方、チーム・スカイの首脳陣はそうは見ていなかったようだ。

プロデビュー初年度から、チームは彼に、数多くの「北のクラシック/石畳系クラシック」への参加を命じた。2月のオンループ・ヘット・ニウスブラッドから始まり、クールネ~ブリュッセル~クールネ、ストラーデ・ビアンケ、ロンド・ファン・フラーンデレン、そしてパリ~ルーベ・・・2年目もそれは変わらず、いくつかの1クラスレースを外したうえで、ティレーノ~アドリアティコを挟みつつ、E3やヘント~ウェヴェルヘムなどを加えていった。

モズコン自身も、「登りも好きだけど、一番はクラシックレース*3」と答えている。

 

そしてチームの期待に応えるようにして、「北のクラシック」最終幕であるパリ~ルーベで、なんとモズコンは最後の集団に入り込み、スプリントでは敗れてしまったものの5位でフィニッシュすることとなった。

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このとき彼の名は、クラシックスペシャリストとして多くのファンの脳裏に刻まれたのではないか。

そのあとのイタリア国内選手権ITTでも優勝し、ルーラーとしての成長が期待されるようになっていった。

 

 

登りアシストとしての開花

しかしこの後、チームは彼にまた、異なった役割を与えることてなる。

 

8月。モズコンは初のグランツール出場に向けて、前哨戦としてのブエルタ・ア・ブルゴスに出場した。

役割は、エースであるミケル・ランダのアシスト。これまでのモズコンの戦歴を見れば、その役割は平坦区間での牽引が主な役割となったであろう。

クラシックに強く独走力のある選手であればそうなる。ロウやスタナード、クネースのように。

登りアシストがエリッソンド、ダビ・ロペス、ダイグナン、ケノーと揃っていたことも、そういう風に感じさせる要因となっていた。

 

そして第3ステージ。

超級山岳アルト・ピコン・ブランコの頂上ゴールとなるこのクイーンステージで、いつものようにスカイは強力無比なトレインを形作り、他チームの選手たちは次々に崩れ落ちていく展開となった。

 

だが、このとき、 トレインの最終牽引役となったのはエリッソンドではなかった。エリッソンドが仕事を終えた残り5kmの地点。エースのランダを守護する役目を担ったのは、意外にもモズコンであったのだ。

 

この時点で残っている選手は、スカイの2名のほかにはクイックステップのエンリク・マスとダビ・デラクルス、アスタナのミゲルアンヘル・ロペスなど実力者たちばかり。

残り4kmを切ってまずマスがアタックを仕掛けるも、総合首位のランダは慌てることなく、モズコンの牽引を信じた。

そしてモズコンもまた、エースの信頼に応える走りを見せつけた。彼のスパートに合わせて発射したランダはマスを捕まえ、カウンターでアタックしたデラクルスにもしっかりとついていき、最後には彼を突き放して見事ステージ優勝を果たした。

 

そしてこの日、モズコンはランダから1分27秒遅れの8位でゴールした。しかしもしランダのアシストという仕事がなければ、もっと上位でこの超級山岳ステージを終えていたかもしれない。

単なるパンチャーでもルーラーでもないモズコンの新たな可能性が花開いた瞬間であった。

 

 

そして、冒頭の ブエルタ第5ステージに繋がる。

いや、すでにアンドラの山岳を駆け抜ける第3ステージで、その片鱗を見せつけてもいた。最後の山コメリャの10%勾配区間で、モズコンはニエベに次ぐ最後から2番目の牽引役として、フルームのライバルたちを次々と蹴落としていった。

 

そして第5ステージ。この日は今大会最初の頂上フィニッシュ。3級山岳エルミタ・デ・サンタルチアを登ってゴールであった。

3級とはいえ、登り初めと終盤に20%前後の激坂区間を含み、プロ選手でも足を止めそうになる難易度の高い登りだ。全体の平均勾配もぴったり10%。バルデ、ニバリ、ザッカリン、そしてアルといった優勝候補たちが次々と脱落していく。

 

その中で、マイヨ・ロホを着たフルームを最後まで支えたのが、モズコンであった。ラスト1kmのゲートを潜り、ラスト600m区間まで、最強のアシストとして振舞った。

そのときの彼の様子はまさに鬼気迫る、といった感じだった。

バイクを横に大きく振って、全身全霊で走る彼の姿は決してスマートなものではなかった。それでも、その働きはプールスや、かつてのリッチー・ポートのように、フルームを支える重要なものであった。

最終的に出し尽くしてしまったのか、モズコンは結局、フルームたちから1分近く遅れてゴールすることとなる。

 

 

もちろん、今回は短い距離というのもあっただろう。あくまでもニエベやプールスを休ませるために、この日はモズコンが力を使うというオーダーだったのかもしれない。

これから訪れるシエラネバダカンタブリアの山脈で、同じような登りアシストの役割を演じられるかどうかはわからない。そもそも初めてのグランツールでここまでの走りを見せたのだ。完走できるかどうかも怪しい。

 

それでも彼は、チームから与えられた役割をしっかりと果たしてみせてくれた。そんな彼に対し、エースもまた、最大限の賛辞を送った*4

これは彼にとって、新たな可能性を生み出す契機となったに違いない。

それこそ本当に、グランツール総合争いに加わっていくような――そんな可能性すら、感じさせるような。

 

 

モズコンの未来

前述のブエルタ・ア・ブルゴスの第4ステージでは、古代遺跡ペニャルバ・デ・カストロの丘を駆け上がる登りスプリントフィニッシュが用意されていた。

モズコンはここで、今度は自らの優勝争いを演じ、勝利こそ逃したものの、アラフィリップを退けての2位ゴールとなった。

昨年見せたパンチャーとしての才能が、いまだに衰えていないことを示してくれた。

 

本当にこの男は多才である。

ルーラーであり、TTスペシャリストであり、パンチャーであり、そして登りアシストとしての仕事もしっかりこなす。

今後、チーム・スカイがツール以外でもその存在感を示していくにあたって、クフャトコフスキと共に大きな存在になるのは間違いないだろう。

 

 

なのに、彼の来年以降の契約がまだ、公にされていない。

彼が2018年シーズンをどこのチームで走るのか、まだわからないのだ。

 

成績だけで言えば、スカイが更新を渋る理由など何もないように感じる。クラシックで勝利を狙えるだけでなく、登りアシストとしての力もあるのだから、ケノーやニエベ、ランダなどを失う来年のスカイにとっては、育てがいのある選手であるのは疑いようがない。

 

それでももし、スカイが契約を渋っているのであれば、5月の人種差別発言が尾を引いているのかもしれない。

あのときチームはモズコンを最大限守ったが、影響がないとは言い切れないかもしれない。

 

 

あるいは、モズコン自身が迷いを見せているのだろうか。

しかし、彼がスカイを離れる理由もまた、ないように思える。

将来的にはともかく、今はまだグランツールのエースを狙う必要はないし、むしろ最強アシストが揃うスカイで修業をしていくことは彼にとってプラスになる部分が大きいはずだ。

さらに言えばクフャトコフスキはアルデンヌにより強く、「北のクラシック」ではモズコンがしっかりとエースを張れるはずだ。とくに5位でゴールしたルーベに関しては。

 

 

なのに、更新がまだ発表されない。

果たしてそこには、どんな問題が横たわっているのだろうか。

 

 

まあ、どんな結果に終わったとしても、その道がモズコンにとって可能性を広げられる道であるならば問題ない。

その可能性が摘まれるような、そんな事態になることだけは避けてほしい。

 

ジャンニ・モズコン。

イタリアの未来を形作る貴重なGenio。その将来が楽しみで仕方ない。

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普段は穏やかな表情を多く見せるモズコン(手前)。だが、本気で走るときのその力強さは比類ないものとなる。人種差別発言の件だけはしっかりと反省し、口は災いの元とならないようにしてほしい。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 表彰台予想&2週目までのステージ勝利予想

前回のツールの予想は散々な結果に終わったが、性懲りもなく今回も予想をしたいと思う。

ただし、ステージ勝利予想に関しては、1週分ずつ行うことにする。

 

 

表彰台予想

総合優勝:クリス・フルーム(スカイ)

フルームのダブルツール達成を予想している人は多い。ツールにおける登りでの不調がやや不安ではあるが、終盤の長距離タイムトライアルで彼に匹敵する選手はやはりいないのではないか、というのが強い。

ブルツールを見てみたくもあり――意外な選手が彼を越える姿もまた、見てみたくもある。

 

総合2位:イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)

ここ数年、「実力はあるが前年まではグランツール表彰台に立つことはなく、ツール表彰台に立つほどの実力はまだない選手」が表彰台に立つパターンが多い気がする。2年前のマイカ、昨年のチャベスのような。今年のロシアTTチャンピオンであることもふまえた。同じ条件に当てはまる選手としてクライスヴァイクにも期待したいところ。

 

総合3位:ダビ・デラクルス(クイックステップ)

ブエルタではスペイン人がいつも以上の力を発揮する。これは間違いない。デラクルス以外の候補としてはフェルナンデス、モレーノあたりも力を発揮しそうだ。いずれにしてもスペイン人の中で誰かが表彰台に立つ気はしている。また、ここ数年の「前年にいいところまでいきながら表彰台に立てなかった選手が、翌年にリベンジを果たす」というパターンを踏まえた。2年前のアル、昨年のチャベスなど。

 

総合4位:ヴィンツェンツォ・ニバリ(バーレーン)

総合5位:マルク・ソレル(モビスター)

総合6位:ミケル・ニエベ(スカイ)

総合7位:ファビオ・アル(アスタナ)

総合8位:スティーヴン・クライスヴァイク(ロットNL)

総合9位:ラファウ・マイカ(ボーラ)

総合10位:ボブ・ユンゲルス(クイックステップ)

実力者はわずかに表彰台を落とす、若手で今後伸びる可能性のある選手が総合5位あたりに入る、スペインやっぱり強い。などなど。

また、チャベスをあえて外した。ツールのときの不調からの復活が実はできなかった、と想定して。

 

ポイント賞:ジュリアン・アラフィリップ

ブエルタのポイント賞に最も相応しい男はバルベルデだと思っているのだが、今回は欠場。ならばバルベルデに脚質が近い男、としてこの人物の名前がやはり挙げられる。

 

山岳賞:オマール・フライレ

ぜひ3連覇を成し遂げてほしい。ライバルはデヘント、バルギルかと思うが、バルギルはツールの疲れが残っていて、デヘントはブエルタとは相性があまり良くないと予想してみる。

 

複合賞:イルヌール・ザッカリン

総合表彰台の選手が獲ることは間違いないだろうが、その中で積極的な走りを見せてくれそうな彼を選出。

 

 

ステージ優勝予想(第1週目)

第1ステージ:BMCレーシング

既に終わってしまったが、元々BMCを予想はしていた。まあここは順当といったところだろう。

 

第2ステージ:サッシャ・モドロ(UAE)

今大会最初のピュア平坦ステージを制するのはこの人物。ジロでは散々だったが、シーズン後半に向けて調子が上がってきているはずだ。

 

第3ステージ:ジュリアン・アラフィリップ(クイックステップ)

厳しいステージではあるが、序盤だけに総合勢もある程度固まってゴールするはずだ。その中で、春以降苦しい時期を過ごしてきたアラフィリップが復活の勝利を成し遂げてくれるはず。

 

第4ステージ:ジョン・デゲンコルブ(トレック)

この日は若干の登りゴール。登りスプリント最強の彼が勝利を掴むだろう。

 

第5ステージ:ルーベン・フェルナンデス(モビスター)

本格的な総合争いが起こりそうなステージ。2年前ならチャベス勝利していたステージ。昨年で言えば第3ステージで、そのときはジェニエが勝利し、2位にこのフェルナンデスが入った。マイヨ・ロホも着用。今年はいよいよステージ優勝も飾りそうだ。

 

第6ステージ:マチェイ・モホリッチ(UAE)

初の逃げ切りステージとなりそう。ゴール直前に石畳区間があるとか? プロコンの選手が勝利しそうな気もするが、プロコンの選手のことはほとんどわからないので、自由度の高いチームでクラシック風味の逃げが得意そうな選手ということでこの選手を挙げる。

 

第7ステージ:マッテオ・トレンティン(クイックステップ)

スプリント勝負になりそう。その中で、混戦を制して勝利するのがこの人物。もちろんデゲンコルブも優勝候補にはなりそうだ。

 

第8ステージ:ジョー・ドンブロウスキー(キャノンデール)

2016年のブエルタではプールスが勝利したステージ。下りゴールだが、しっかりと登れる選手が飛び出してそのまま抜け出すイメージ。

ニバリやアルを予想したい気持ちもあるが、ここでドンブロウスキーが苦しい時期を乗り越える衝撃的な勝利を!  

 

第9ステージ:クリス・フルーム(スカイ)

2年前、デュムランがフルームとホアキン・ロドリゲスを下して勝利したステージらしい。今年はフルームがきっちり決めてくると予想。

ただし、ツールの時のような不調が続くのであれば、それは変わってくるのかもしれない。アル、バルデなど、激坂にも強い総合系が有利になるか。

 

 

ステージ優勝予想(第2週目)

第10ステージ:ボブ・ユンゲルス(クイックステップ)

ここも逃げ切りになりそう。しかも、それなりの規模の集団に。ユンゲルスが総合に色気を出さなければ、マルティンばりの逃げ切り勝利を見せると予想。

 

第11ステージ:エステバン・チャベス(オリカ)

総合争いが巻き起こるステージになるのは間違いない。調子のいいチャベスが、ここで一歩先んじることができるかもしれない。とはいえフルームと差をつけるのは難しいだろう。

 

第12ステージ:エドワード・トゥーンス(トレック)

結構厳しい山岳があるが、こういうステージでもスプリンターが勝つのがブエルタだと思っている。元々はデゲンコルブを予想していたが、悔しくもリタイアしてしまったので、その意志をつぐ形でこの人物を予想。実際、ここまで実質的なスプリント勝負が繰り広げられた2つのステージでともに4位。十分優勝争いに食い込めている。

 

 

第13ステージ:フアンホセ・ロバト(NLユンボ)

断面図を見る限り、登りフィニッシュになってそうなスプリントステージ。同じように登り基調のゴールだったはずの第4ステージで2位となっているロバトを勝利と予想。実際、今大会のロバトは結構調子が良い。

あるいは、来年の去就が気になるキャノンデールのトム・ファンアスブロックが執念の勝利の可能性も。

 

 

第14ステージ:イルヌール・ザッカリン(カチューシャ)

厳しい山岳の末に、下りと登り返しが用意されている。総合系と張り合えるクライマーの中でも、攻撃的な走りができる選手が予想できる。ということで、ジロでも攻撃的な走りを見せていたザッカリンをここで予想。

 

第15ステージ:マイケル・ウッズ(キャノンデール)

短くて厳しい山岳ステージ。しかも頂上ゴール。大きな総合争いが起きる可能性あり。6年前にはダニエル・モレーノが勝利している。

総合勢が分裂したとして、前集団で混戦の中抜け出した選手が勝つと予想。ウッズがここで念願の勝利を得られるか。総合順位も上を目指したいところ。

 

 

来週末に3週目の予想を掲載予定。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 全チームスタートリスト&プレビュー

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いよいよ本日開幕となるブエルタ・ア・エスパーニャ

その全チームのスタートリストと、簡単なプレビューを載せる。

 

年齢はすべて数え年表記。

脚質についてはあくまでも参考までに。何か異論あればお願いします。

 

 

↓コースプレビューはこちら↓

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

1~ トレック・セガフレード(TFS)

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この10年、間違いなくスペインの、いやサイクルロードレース界の英雄であり続けてきたアルベルト・コンタドール

今回のブエルタは、そんな彼にとって、最後のレースとなることが決定した。

ブエルタの主催者はそんな彼に敬意を表し、本来であれば昨年総合2位のクリス・フルームが着用するはずのゼッケン1番を、コンタドールに捧げることにした。総合リーダージャージへの敬意を常に忘れないフルームも、運営のこの計らいに不満を述べることはないだろう。

 

正直な話、彼がこのブエルタで最高の結果を出せるとは思っていない。それでも、ただ一つ願うとすれば、彼がこの3週間を走り切ってくれること、ただそれだけだ。最後のアングリルを登り切る彼の姿を、あるいは最後のマドリードのゴールアーチをくぐる彼の姿をこの目にしたい。ただ、それだけだ。

グランツールには常に悪魔が潜んでいる。それでもこのブエルタだけは、そんな悪魔がコンタドールに舞い降りることのないことを祈る。

 

チームとしても、コンタドールだけに全てを捧げるつもりはないようだ。むしろ、ブエルタと最も相性のいいスプリンター、デゲンコルブに最高のメンバーを用意しない理由がない。さすがにかつてのような5勝は難しいかもしれないが、2年前、ツールからずっと勝利のなかった彼に勝利をもたらしたのが、このブエルタマドリードだった。サガンもいない、キッテルもいない、ガヴィリアもカヴェンディッシュグライペルもいないこのブエルタで、最強のスプリンターは間違いなくデゲンコルブである。デゲンコルブお気に入りのアシストであるデコルトと、自身も勝利を狙う力が十分にあるトゥーンスを従えて、今年のブエルタで彼の本当の復活が見られるかもしれない。

 

ということで、コンタドール班とデゲンコルブ班がくっきり綺麗に分かれたトレック・セガフレード。やや不安になるのは、平坦牽引役の少なさか。平地でのトラブルも起こりがちなコンタドールにとって、この体制が裏目に出なければいいのだが。

 

 

11~ クイックステップ・フロアーズ(QST)

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昨年ブエルタ区間1勝・総合7位のデラクルスがエースナンバーを着ける。今年もバレンシアナ総合7位、バスク総合4位、ブルゴス総合3位と、スペインのステージレースで軒並み良い結果を叩き出している。今年目指すは表彰台か。

ちなみにこのデラクルス、チーム・スカイとの2年契約が発表された。もちろん本人は、このブエルタを100%クイックステップの為に頑張ると宣言しているが、やはり来年以降の自分の立場のためにも、このブエルタで結果を出したいという思いはあるだろう。スカイとしてもランダ、ニエベが抜ける穴を埋める逸材として、彼には期待しているはずだ。

 

アラフィリップは膝の怪我からようやく復帰。直前のブルゴスでは振るわない結果ではあったが、無理に総合を狙うことなく、激坂ステージなどで区間勝利を狙いたいところ。テルプストラ、トレンティンもステージ狙いで走るだろう。

 

そして、期待したいのが若手のマース。昨年チェコのコンチネンタルチームで、2クラスのステージレース2個で総合優勝、1個で総合2位という結果を叩き出していた新鋭クライマー。今年から2階級特進でクイックステップ入りしたわけだが、先日のブルゴスでデラクルスを超える総合2位という成績を残す。

デラクルス、マーティンといった総合系の逸材を失うことになるクイックステップにとって、アラフィリップ、ユンゲルスと並ぶ新時代の期待の星となれるか。今年のブエルタは新人賞も(ジャージはないが)あるらしいので、まずはそれを確実に射止めたい。もちろん初のグランツールに「慣れる」というのも重要な課題だ。

しかしチェコは本当に良い選手が多いなぁ。(勘違いしていた。マスはスペイン人でしたね)

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マースはイケメン枠としても非常に有望。

 

 

21~ チーム・スカイ(SKY)

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2011年のブエルタ初出場以来、リタイアとなった2015年以外は常に総合4位以上をキープし続けているフルーム。総合2位も2回。そのうちの1回である昨年は、キンタナ・コンタドールの奇襲によって大幅にタイムを失った第15ステージがなければ、総合優勝を十分に狙える走りを見せていた。

だから、今年は、キンタナも不在のため、ダブルツール達成が十分に狙える状態にある。ドーフィネ・ツールでの不調はブエルタのための調整という見解もあり、本人もこれまで以上の本気でダブルツールを狙っているのかもしれない。

メンバーも、ツールでも素晴らしい走りを見せてくれたクネースやニエベ、復活とともにポローニュで区間1勝&総合3位となったプールス。そしてジロで献身的な走りを見せていたローザと、十分に期待ができるだろう。

個人的に期待したいのはモズコンの走り。激坂にも石畳にも対応できる足をもち、この夏はイタリアのITTチャンピオンにも輝いた。可能性が様々見られる若手で、今後の伸びが期待できる。ただし、いまだ来年以降の動向が確定していない。このブエルタ期間に判明する可能性は十分あるだろう。

口は災いの元タイプなので、そこは気を付けてほしいけれど(笑)

 

 

31~ BMCレーシング・チーム(BMC)

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ツール・ド・スイス総合2位、ツール・ド・フランスでもポートがリタイアした後のエースを担い、最終的に総合11位に達したカルーゾがエースナンバー。3年前のブエルタでは総合9位となっているので、今年はそれ以上の成績を目指したい。

総合エースを担える存在としてはほかにヴァンガーデレンもいるが、個人的にはやはり彼はステージ狙いで自由に走ってほしい。ローハン・デニスも未来のグランツールライダーであることは間違いないが、この3週間でどれだけの可能性を見せられるか。

昨年ブエルタで総合6~7位をキープしながら、終盤のタイムトライアルでの落車によってリタイアを余儀なくされてしまったサミュエル・サンチェスにも期待していたのだが、直前にドーピング検査に引っかかり欠場に。

全体的に実力者の多くいるチームとなったが、それだけに中途半端な結果に終わらないことを願いたい。とりあえず初日TTTの有力候補であるのは間違いないだろう。

 

 

41~ オリカ・スコット(ORS)

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怪我からの復活が遅れながらも、ツールは無理をせずに走り、このブエルタに全てをもってきたチャベス。思えば彼の大ブレイクの始まりは2年前のブエルタだった。昨年は総合3位。今年は総合優勝以外狙うものはないだろう。

連れてきているルーラーも、登りでも活躍できる選手たちばかりだ。特にヘイグは直前のツール・ド・ポローニュで、一度は失敗した逃げ切り勝利を、再度挑戦して今度こそ獲得という執念の走りを見せてくれた。昨年はハウスンやゲランスの前待ち作戦が功を奏し結果を出したオリカ。メンバーは変われど、今年も同じような作戦を狙っていく可能性が十分にあるラインナップだ。

そして、2015年ツール以来となる、イェーツ兄弟の揃い踏み。当時はチームとしても序盤にリタイアが続出するなど散々な状況だったし、2人の成績もまったく目立たずに終わってしまったが、それ以来、アダム・サイモンがともにツール新人賞を獲得するなど急成長。昨年のブエルタもサイモンが区間1勝&総合6位となるなど、チャベスだけでない活躍をチームとして期待しているのは間違いないだろう。

今年のブエルタは新人賞もある。アダムとサイモンがこれを取り合う姿も見てみたい。

 

 

51~ モビスター・チーム(MOV)

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本来エースを担う予定だったバルベルデがツール初日に大怪我を負ったことで、エース不在での参加となったモビスター。ゼッケンNOも、アルファベット順で設定しているようだ。

ただ、ハンマーシリーズの活躍に続いて、ツールでもキンタナにとって最も頼れる山岳アシスト役として機能したベタンクール。昨年総合8位のダニエル・モレーノ。そして2015年ラヴニール覇者のマルク・ソレルなど、期待できる選手は多くいる。とくにソレルはカタルーニャ総合3位、スイス総合8位と良い走りを見せている。今回のブエルタで総合TOP10に入れれば今後が非常に楽しみになる。

ちなみに今大会は、2011年~2015年のラヴニール覇者が勢揃いしている(フェルナンデスもその1人)。その中での争いというのも期待したいところだ。

 

 

61~ チーム・サンウェブ(SUN)

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ツールで区間2勝と山岳賞という大活躍を見せたバルギル。そもそも彼がプロで頭角を現したのはこのブエルタであり、今年も区間優勝を狙って走ると宣言している。総合はあまり狙っていない様子だが、来年からはフランスのプロコンチネンタルチーム。ブエルタにはしばらく出られそうにない気がするので、活躍を期待したい。

代わってエースナンバーをつけるのが、ジロでは悔しい途中リタイアとなっていたケルデルマン。ポローニュも総合4位と悪くなかったので、総合TOP10は狙いたいところ。

若手では昨年オーストラリアロードチャンピオンのハミルトンと、ポローニュ総合7位のオーメンに期待。

 

 

71~ ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

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昨年強い走りを見せ、エース候補だったケーニッヒが、膝の怪我からの復調ができずにブエルタまで欠場することに。よって、ツールを悔しい形で去ったマイカが単独エースでリベンジ。2年前のブエルタで総合3位。今年の優勝候補の1人だ。

ブッフマンもまた、リベンジのチャンスである。ドーフィネでメインチェスやイェーツを打ち破っての新人賞獲得。しかし3週間の戦いでは差をつけられてしまった。今回どこまでその差を縮めることができうか。イェーツ兄弟、ユンゲルス、アラフィリップと、そのライバルは多い。

アシスト陣に関して言えば、ベネデッティとコンラッドはいずれもジロに出場し、アルデンヌ・クラシックも走れる独走力の高いメンバー。山岳における良き牽引役となってくれそうだ。とくにコンラッドはジロ第15ステージで総合勢に混じっての6位ゴールを果たしており、最終的にも総合16位と健闘している。

総じて、ジロのときのようにボーラ生え抜きのメンバーが目立つラインナップだが、それでいてツール以上の活躍を見せてくれそうなのがボーラというチームである。

 

 

81~ AG2Rラモンディアル(ALM)

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意外にもバルデにとって初めてのブエルタ。というよりバルデはこれまで、ツール以外のグランツールに出場したことがない。昨年に続きツール表彰台を獲得することのできた彼にとって、ブエルタでの総合上位は十分狙うべき目標となるだろう。ツールでの山岳アシストとして活躍したドモンの存在も心強い。

また、ポッツォヴィーヴォも総合上位を狙える存在である。ブエルタでは4年前に総合6位を記録している。今年もジロ総合6位に続きスイス総合4位、ポローニュ総合6位と調子よく来ている。他を圧倒する走り、というのはなかなか見せられないものの、安定した走りをできるのが彼の持ち味だ。

そして個人的に期待しているのがアレクシー・グジャール。2年前ブエルタで、驚きの逃げ切り勝利を見せた彼は、しかしその後、なかなか勝利に恵まれないままここまで来ている。先日のノルマンディーで久々の勝利だ。

常に積極的な逃げを見せるその姿勢は健在。このブエルタで、再び栄光を手にしてほしい。

 

 

91~ キャノンデールドラパック・プロサイクリングチーム(CDT)

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いよいよウッズがエースナンバーを着る。今年のジロも含め、勝利にまではなかなか繋がらないものの、山岳ステージで常によい走りを見せている男。今年のブエルタでどこまで活躍できるか。

キャノンデールは今年、ジロでローランが1勝、フォルモロが総合10位。そしてツールでウランが総合2位と、期待以上の結果を叩き出し続けてきたキャノンデール。それらのメンバーや昨年5位のタランスキーのいない今回のキャノンデールも、結果があまり出せそうにないように見えるのに、蓋を開けてみればなかなかの成績、ということもありうるかもしれない。

期待したいのは、カリフォルニアで3年連続の勝利を期待されながら――落車によってリタイアせざるをえなかったスクインシュ。その積極的な走りをこのブエルタでも楽しみにしたい。

 

 

101~ カチューシャ・アルペシン(KAT)

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今年ジロ総合5位のザッカリンが、ツール出場を回避し、初のブエルタに挑む。もちろん狙いは総合表彰台。ジロの山岳で良い走りをしたゴンサルベスも連れてきている。

総合上位を狙える選手はほかにタラマエがいる。ディレクトエネルジーへの移籍が決まっている彼にしてみても、総合エースの座を確定させるためのお土産は欲しいところ。

個人的に期待しているのは若手のマミキン。昨年ブエルタの山岳逃げでもその存在感を表していた。

 

 

111~ チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

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カリフォルニア総合優勝、ツールでも好走を見せていたベネットだが、ツールの際に罹った病気の状況が長引き、今回のブエルタには出場するものの、ベストコンディションとは言えないようだ。よって、エースナンバーを着けるのは昨年ジロで驚きの走りを見せたクライスヴァイク。昨年ブエルタは序盤でリタイア、今年のジロもイマイチだった彼が、今回のブエルタでリベンジを果たせるか。

ステージに関しては、今年のオランダ選手権2位のクレメント、5位のボウマンの個人TTでの走りに注目したい。今年ジロ最終ステージのファンエムデンのように、意外な勝利を狙っていけるとしたらこのチームだ。

 

 

121~ UAEチーム・エミレーツ(UAD)

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ルイ・コスタがエース。今年のアブダビで総合優勝、スイスでも総合5位と、悪くない走りをしているのは確か。

ただ個人的に期待したいのはやはりアタプマ。昨年のブエルタでは4日間マイヨ・ロホを着用。今年に入ってからは目立った活躍がなかったようだが、ツールでは終盤の山岳ステージで連日逃げ、勝利には繋がらなかったもののその実力を見せつけた。今年こそは勝利に繋げたいところ。

ほかにもツール総合8位のメインチェス、ジロ・エトナ山ステージで勝利したポランツ、そしてジロでは勝利を得られなかったもののポローニュではなんとか1勝を挙げることのできたサッシャ・モドロも、ライバルの少ない今ブエルタで活躍する可能性は十分にある。

意外とメンバーの良いUAE。2勝はしたい。

 

 

131~ アスタナ・プロチーム(AST)

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春先の怪我で地元スタートのジロ出場を叶えられなかったアル。代わりにツールでは区間1勝&総合5位と悪くない結果に。マイヨ・ジョーヌ着用も果たした。

この秋、再びブエルタに挑む。2年前の総合優勝者ではあるが、過剰なプレッシャーを感じることなく伸び伸びに走ってもらいたいところ。実力はあるのに浮き沈みが激しい彼には、1回1回のグランツールで成長することによって、2~3年後、本気でツール総合優勝を狙えるようになってほしいところ。

もう1人のエース候補がミゲルアンヘル・ロペス。20歳でラヴニールを制したコロンビア人ということで、まさにキンタナの後輩とも言うべき存在。昨年はツール・ド・スイス総合優勝で期待されながら初のグランツールとしてブエルタに臨んだが、初日のTTTでの落車が響いて序盤にリタイアをしてしまった。

さらに不運は続く。11月にトレーニング中の事故で左頸椎を骨折。復帰に夏までかかったうえ、復帰2戦目となるツール・ド・スイスで大規模な落車に巻き込まれてしまった。

それでも、先日のブエルタ・ア・ブルゴスでは区間1勝と総合4位となり、復活の兆しは見えている。今回のブエルタはアルもいるので総合上位を狙う必要はないので、まずはグランツール慣れと、そして区間勝利を目指してほしいところだ。まずは経験を積んで、24歳――「先輩」が最初のグランツール総合優勝を果たした年齢――となる来年のシーズンに備えてほしい。

 

 

141~ ロット・スーダル(LTS)

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ここもアルファベット順か? アルメは今年ダンケルク4日間レースで総合2位だったりはするが、かといって総合エースを担うような選手ではない。総合を狙うとしたらモンフォールの方が可能性があるだろう。ハンセンが9番なのは参加が急に決まったからだろうか。

ステージ勝利を狙える選手としてはデヘントはもちろん、デブシェールもスプリントで勝利を狙える可能性は十分にある。デヘントはまた今回も山岳賞を狙っていくのだろうか。とにかく、ツールの時のように、まったく結果がもたらせない、ということがないようにしたいところ。

 

 

151~ バーレーンメリダ・プロサイクリングチーム(TBM)

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ツアー・オブ・ジャパンにも来たガルシアコルティナやノヴァク、今回ついにグランツール初挑戦となるニバリの弟・アントニオなど、若手が多く参加する一方で、ジロでニバリを支えたペリゾッティとヴィスコンティ、そしてハビエル・モレーノなど、ニバリを勝たせる布陣も本気で用意している。

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ツールではまったくといっていいほど目立てなかった、その挽回ができるか。

 

 

161~ FDJ(FDJ)

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ここもほぼアルファベット順か。全体的に非常に若く、9人中3人がグランツール初挑戦である。

個人的にはもちろんエイキングに大きな期待を寄せている。今年はディラン・トゥーンスが激坂で大活躍を果たしていたが、彼が勝利するステージで、エイキングもまた、上位に入っていることが多かったのだ。実績は少ないが、新たな時代の激坂ハンター候補として、彼が育ってくれることを期待している。

 

 

171~ ディメンションデータ(DDD)

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このチームの課題はとにかく総合上位に入り、ワールドツアーチームとしての資格を喪失しないようにすること。現状、今年も再び降格の危機が迫ってきている。頼みの綱となるエースナンバーを着る選手はイゴール・アントン・・・ベテランで、過去、ブエルタでは総合9位の経験があるものの、ここ最近は期待外れの結果に終わることの多い印象。パウェルスも似たような感じで、やはり中途半端な結果に終わる可能性は大。

とはいえ、山岳賞ではやはりフライレに期待したい。3年連続での受賞となれば、2010年のモンクティエに続く偉業となる。とはいえ、今回はバルギルやデヘントなどライバルも多い。

また、個人的にはクドゥスに期待。今年はオマーン総合4位、ブルゴス総合9位。メインチェスが果たせなかった、アフリカ勢として初となるツール新人賞を獲得する選手として成長してくれることを期待したい。

モートンツアー・オブ・カリフォルニアで、タオ・ゲオゲガンハートとの激闘を制して新人賞を獲得した選手。彼にとって初のグランツールとなる今回のブエルタで、どんな活躍をしてくれるのアk楽しみだ。

 

 

181~ コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)

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このチームの目標の1つ目は逃げ。とはいえコフィディスほどになると、いくらプロコンとはいえ勝利に繋がらないと物足りない。とくにブエルタはプロコンでの勝利も十分に狙えるレース。ライバルのディレクトエネルジーもいないし、今年こそマテやナバーロがしっかりと逃げ「切り」を果たしてほしい。

また、ヴァンヘネヒテンをエースとしたスプリンター班の勝利も狙ってはいきたいところ。IAMに在籍していた昨年は、第7ステージでベンナーティバルベルデジルベールという伝説級の強豪たちを打ち破った。来年はコカールと共に新チーム「ヴィタル・コンセプト」への移籍が決まっている。できるだけ良い待遇を望むためにも、活躍は必要不可欠。

 

 

191~ カハルラル・セグロスRGA(CJR)

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エースのパルディリャはモビスターに在籍したこともあるベテラン。昨年のブルゴスでは1勝もしている。

アロヨもかつてケース・デパーニュ(現モビスター)に在籍していた頃に、ジロでヴィンツェンツォ・ニバリを打ち破っての総合2位という成績を叩き出している。カハルラル移籍後も、ブエルタで毎年総合10位台に乗るなど、総合力ではチーム随一。

2年連続山岳賞、今年のジロでも活躍したオマール・フライレも元はカハルラル。今、期待の若手が全くいないと嘆かれているスペインを救うのは、このチームであることは間違いない。上記2名のベテランに導かれながら、新鋭のロソン、サエスなどの活躍に期待したい。

 

 

201~ アクアブルー・スポート(ABS)

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今年発足のアイルランドチーム。とはいえ、チーム内のアイルランド人は3名だけ。一番の注目選手は昨年英国王者のアダム・ブライス。スプリントで存在感を示すことは間違いない。

また、今年のアメリカ王者であるワーバスは、このチームに最初の勝利(しかもワールドツアーの!)をもたらした男。元々BMC、そしてIAMとワールドツアーチームを経験してきた選手であり、今大会でも活躍してくれることだろう。

ツアー・オブ・オーストリア総合優勝を果たした元IAMのデニフルも、勝てる選手だ。

 

 

211~ マンサナ・ポストボン(MZN)

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2015年発足。翌年にプロコンチネンタルチーム昇格。そして今年ワールドツアーに。80年代から90年代にかけても存在していたらしいが、その後に一度解散しているとのこと。

どうしてもまだ経験の浅いコロンビア人選手が多いが、元カハルラルのヴィレラや、ベルキン(現ロットNL)所属経験のあるボルなど、ベテラン選手に指導されながらの贅沢な経験となるだろう。

コロンビアのチームといえば、2015年まで存続していたチーム・コロンビアのことを想起させる。アタプマ、チャベス、パンタノなど、現在活躍する多くの有力コロンビア人が在籍していた。このポストボンが、同じような存在になってくれることを期待する。もしかしたら今大会でも、未来の強豪コロンビア人の活躍が見られるかもしれない。