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ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 コースプレビュー3週目

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ブエルタ最終決戦の舞台となるのは「魔の山」アングリル。深い霧に覆われることの多いこのステージで、今年も総合優勝者が決まる。このブエルタで引退を決めているコンタドールが、ブエルタで最初の総合優勝を確定させた山でもあり――彼のプロ生活最後に登る山となる。

 

 

↓第1週・第2週のコースプレビューはこちら↓

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第16ステージ シルクイト・デ・ナバラ~ログローニョ 42km(個人TT)

スタート地点は「ナバラ・サーキット」。ゴールのログローニョはピエドラ橋などで有名な、歴史ある町だ。

今大会唯一の個人タイムトライアル。ただし距離は42kmとかなり長い。TTが得意な選手と苦手な選手との間に平気で2分以上のタイム差がつきかねない。その点でやはりフルームが有利。チャベスやバルデがどこまでタイムを落とさずにいられるかが鍵だ。

ステージ勝利でいえばデュムランやトニー・マルティンが今回は出場しなさそうなので、ローハン・デニスが最有力か。ただしデニスは長距離TTはまだ未知数なところがあり、TTというのは意外なスターが生まれやすい種目でもある。

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第17ステージ ビリャディエゴ〜ロス・マチュコス 180km

カンタブリア山脈に突入。早速の超級山岳ロス・マチュコス山頂フィニッシュ。

第3週はアングリルに注目が集まっているが、この日のフィニッシュもかなり強烈。ブエルタ初登場? ちなみに「パシエガ」はアルタミラ洞窟壁画のある洞窟の1つと同じ名前だが、実際に同じところなのだろうか。

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超級山岳ロス・マチュコスの断面図。登り始めに異様な勾配が連続で登場する。

果たしてどんな展開が待ち構えているのか。

 

 

第18ステージ スアンセス~サント・トリビオ・デ・リエバーナ 168.5km

 

(ブエルタとしては)小さ目な山岳が終盤に連続で登場する。難易度自体は(ブエルタとしては)低い方だろう。

ただしラストが2kmで200m登る3級山岳の山頂フィニッシュ。クライマーが勝つか、それともパンチャーが粘って勝利するか。様々な可能性が考えられそうなステージだ。

期待はこの夏以降、大ブレイクを果たしているディラン・トゥーンス。あるいは、そのディランが勝つステージで上位に入ることの多い、FDJのオドクリスティアン・エイキングだ。

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第19ステージ カソ.パルケ・ナトゥラル・デ・レデス~ヒホン 153km

スタート地点は「レデス自然公園」の意味。

この日も見た目的には厳しくなさそう。序盤の1級山岳は7kmの登りの中に8~9%の勾配区間が連続しているが、序盤なので大逃げを生み出す以外の効果は持たないだろう。

むしろ怖いのは終盤の3級山岳。平均勾配10%弱はありそうな登りなので、それなりにセレクションがかかりそうだ。今大会最後の逃げ切りチャンスにもなりそうなので、大量の逃げ集団が生まれるのは必至だろう。

登坂力が高くなくてもチャンスがありそうなのもポイントだ。

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第20ステージ  コルベラ・デ・アストゥリアス〜アルト・デ・アングリル 119.2km

ついに現れたアングリル。ただしアングリルだけでなく、その前の2つの山岳との絡みで非常に厳しいステージである。

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まずは1級コベルトリア。2010年ブエルタ第16ステージで、最後から2番目の山岳として使用され、エウスカルテル時代のミケル・ニエベが逃げ切り勝利。彼にとってのプロ初勝利となった。

中盤の18%激坂区間を越えたあとも9%~10%の厳しい勾配が続く。ここで遅れ始めると、2~3分差で首位を走っている選手だったとしても表彰台を失う可能性すらある。

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次の1級山岳はコルダル峠。2008年のブエルタ第13ステージでもアングリルと一緒に登場。ブエルタ初出場となったコンタドールが前日から連勝を果たし、前年のツール、同年のジロに続き、グランツール完全制覇を決めるきっかけとなったステージだ。

そして、コンタドールにとって最後のブエルタ勝利となる2014年のブエルタにも登場。このときはアングリルではなかったものの、同じようにコンタドール勝利し、同じように「ピストル」を見せてくれた。

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そして最終決戦アングリル。残り4km~2kmにかけて、勾配15%未満の区間がほぼ存在しないという、名実ともに最強の山である。

ブエルタ初登場は1999年と意外と歴史は浅い。以来、ブエルタ登場は全6回。直近3回の優勝はコンタドール(2008)、コーボ(2011)、エリッソンド(2013)と実力者揃い。

もちろん、ファンとしてはコンタドールの雄姿を見たいところだが、一方でエリッソンドのように新たな才能の輝きを見たくもある。

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2013年はホーナーとニバリの激しい総合争いの舞台となった。結果、ニバリはホーナーから逆にタイムを失う結果となり、ホーナーの総合優勝が確定した。

 

ただ、今年のアングリルはコベルトリアとコルダルとセットになることで、過去のアングリル以上に厳しい戦いになるかもしれない。

正真正銘、最終決戦の舞台。表彰台が一気に入れ替わる可能性すらある。

ブエルタらしい熱い戦いが繰り広げられることを期待している。

 

そしてコンタドール。たとえ、先頭でゴールできなかったとしても――その美しい登りの姿を、最後に見せてほしい。

彼にとって、最後で最高の舞台となることを願っている。

 

 

第21ステージ アロヨモリノス~マドリード 117.6km

もちろん最後はマドリードでの周回バトル。だが、ブエルタが他のグランツールと違うのは、最終日までポイント賞の行方がわからなくなることが多いということ。2年前はなかなかに衝撃的だった・・・。

また、なかなかピュアスプリンターが勝利を稼げないブエルタで、最後の栄冠を掴むチャンスでもある。キッテルやサガンなどツール最強のスプリンターも軒並み出場しないようなので、なかなか彼らには勝てないスプリンターたちにチャンスが回ってくる。

個人的な予想をしておくと、ジロでは全然活躍できなかったサッシャ・モドロに期待したい。ツール・ド・ポローニュで久々のWT勝利を決めている彼は、このブエルタで結果を出す可能性が十分にある。まあまだ出場は確定していないけれど。

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第2週・第3週と、厳しい山岳ステージが長いスパンで散りばめられている今年のブエルタ

シーズン終盤ということもあり、コンディションの好不調が決定的な展開を生む可能性が十分にあるコース設定ともなっており、期待は否応にも高まってしまう。

 

果たして、今年のブエルタ勝利は誰の手に渡るのか。

 

来週のブエルタ開幕日の日中に、全チームスタートリストとプレビューを掲載予定。

そこで勝者が誰になりうるか・・・予想してみたいと思う。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 コースプレビュー2週目

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ブエルタ2017の2週目はスペイン南部ムルシア・アンダルシアの2州を走る。

荒涼とした大地と、シエラネバダの厳しい山岳。全6ステージ中3ステージが山頂ゴールということで、総合争いが激化することは間違いない。

 

誰が脱落し、誰が表彰台候補として残りうるのか。

注目の第2週のコースをプレビュウしていく。

 

 

↓第1週のコースプレビューはこちら↓

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第10ステージ カラバカ・フビラル〜エルポソ・アリメンタシオン 171km

第2週はバルベルデやランダなど有力な自転車選手を輩出しているムルシア州でスタートする。ゴツゴツとした山岳や乾燥した気候が特徴、というイメージ。

休息日明けは無理せずゆったりと平坦ステージを・・・なんてことはブエルタでは許されない。いきなりゴール前20km地点を山頂とする3級&1級の山岳コンボ。標高差は1000mを超える。

そしてラスト20kmも平坦ではなく長いダウンヒルが続く。逃げ切りが決まる可能性が高いとは思うが、休息日明けで体調を崩した総合系選手が山岳で脱落する危険性もあるため、気は抜けない。

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最後の1級山岳のプロフィール。突出した激坂ポイントがあるわけではないが、平均して厳しい勾配が長く続くので、体調を崩した選手は容易に置いていかれるだろう。

 

 

第11ステージ ロルカ〜オブセルバトリオ・アストロノミコ・デ・カラル・アルト 188km

ムルシア州の海岸沿いを走り、そこから内陸に入り込み1級山岳山頂ゴール。しかも1級は2つ。大きな総合争いの巻き起こるステージとなるだろう。

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最後の1級山岳は登り始めが非常に厳しく、中盤から後半にかけてはほぼ平坦な区間を挟む。ラスト3kmを切ってから再び厳しい登りをこなしたのちに、ラスト1.5kmはまた平坦となってゴール。

誰か強い選手が単独で勝利を奪う、というよりは、今大会総合上位を狙える選手たちだけが残っての小集団スプリントが見られるかもしれない。

 

 

第12ステージ モトリル〜アンテクエラ 161.4km

スペインの南端、アンダルシア州を走る。前半戦はその海岸線。後半は内陸に入っていき、山岳ポイントも2つ用意されているが、ブエルタとしてはそこまで厳しくはないので、ラストは集団スプリントになる可能性も十分ある。あるいは逃げ切り。

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アンテクエラはグラナダやセビリャと比べると知名度は低いが、写真をみるといつもペナ・デ・イオス・エナモラドスという小さな山が映り込んでいる。この地域の象徴となっていそうな山だ。

山の形を縦にすると人の横顔に見えることから「ムーア人の横顔」とも呼ばれているらしい。映像でも映ってくれるだろう。 

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この地域は葡萄畑も広がっている。これも見所の1つとなるだろう。

 

 

第13ステージ コイン〜トマレス 197km

アンダルシア州の州都セビリャの近郊に位置する街トマレスにゴールする平坦ステージ。ラストは集団スプリントに・・・と思いきや、やや登っているようにも見える。詳細なフィニッシュ地点の断面図を見ようと思ったが、公式HPもスペインクオリティを発揮しているようで、なぜかこの日のステージが超級山岳扱い(!)になっている断面図しかなかったので、詳細は不明。第2週はスプリンターたちの出番にならない可能性も。

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第14ステージ エシハ〜シエラ・デ・ラ・パンデラ 185.5km

第2週のクライマックスは、スペイン南部の山岳地帯で繰り広げられる。1日目は、細かいアップダウンはあるものの平坦基調のコースが大半で、ラスト12kmで880mを登る。

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残り5km地点から9%→13%→11%と厳しい区間が続く。このあたりが見所となるだろう。小集団のままラスト1kmを越えた際は、そこからの下りと登り返しで誰がアタックを仕掛けるか注目したい。

 

 

第15ステージ アルカラ・ラ・レアル〜シエラ・ネバダ 127km

昨年に続き、今年も「短距離山岳ステージ」を用意してきたブエルタ。昨年はコンタドールとキンタナの攻撃によりフルームが大きくタイムを落とし、最終的にキンタナにマイヨ・ロホを明け渡す形となってしまった。

今年はこの短さに加えて超級フィニッシュ。しかも途中の1級山岳も厳しいレイアウトであり、これを2週目の休息日前という最も疲労が蓄積しているであろう時期にぶっこんでくるブエルタ運営の意地の悪さはグランツール随一である(誉め言葉)。

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最初の1級山岳は序盤ゆるやかなアップダウンとなっているが、山頂まで残り7kmの地点で最大勾配22%の「壁」が現れてくる。短いステージで全選手全力で走り抜ける可能性のある今ステージ。ここでの遅れが最後まで残る可能性は十分にある。

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最後の1級山岳と超級山岳は、実際にはほぼ繋がっている。よって、実に28kmにも及ぶ登坂となる。

幸いにも、とくにラスト10kmちょっとの平均勾配はそこまで大きくない。個の力よりも、チームの力が有利になりそうなレイアウト。すなわち、チーム・スカイ、そしてフルームにとって得意となりそうなステージだ。

もちろん、距離の短さと2週目のラストという要素が、想像不可能なイレギュラーを生み出す可能性は十分にある。

 

ちなみにシエラネバダとは「積雪のある山脈」という意味で、スペイン本土で最も高いムラセン山を擁する山岳地帯である。

ブエルタで最も最近に登場したのは2011年だろうか? 第4ステージのフィニッシュ地点となり、そのときは当時カチューシャに所属していたダニエル・モレーノがステージ優勝を飾った。

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翌日の第5ステージも同じカチューシャのホアキン・ロドリゲス勝利し、スペイン人の強さを見せつけた。その年の総合優勝者もスペイン人のコーボであった。

一方、昨年のブエルタはスペイン人勝者がデラクルスの1人のみとかなり寂しい結果に終わっている。若手の台頭も少ないスペイン。危機の脱出のためにも、この日はぜひスペイン人に頑張ってもらいたいものだ。

ブエルタ・ア・エスパーニャ2017 コースプレビュー1週目

ツールも終わり、すぐにまたブエルタの季節がやってくる。

今年も激しいコースを用意してくれているブエルタは、事前の予習しがいがある。

今日から3週間にわたって、全3週分のコースをプレビューする・・・予定。

 

 

 

↓2週目・3週目のコースプレビューはこちら↓

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第1ステージ ニームニーム 13.8km(TTT)

水道橋ポン・デュ・ガールや円形劇場など、古代ローマの遺産で有名な南仏の都市ニームが、今年のブエルタのスタート地点となる。

レースの種類自体は、ブエルタ初日伝統のチームタイムトライアル。距離も短く、起伏がほぼないのもいつも通りだ。とはいえ昨年はスカイとモビスターのコンマ差の争い、コンタドール率いるティンコフの大崩れなど、見所の多い戦いとなった。

TTTでタイムを失うのはなかなか切ない。トラブルがないように願う。 

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ニームで有名な大水道橋ポン・デュ・ガール。空撮で映し出されることを期待したい。

 

 

 

第2ステージ ニーム〜グリュイッサン 201km

ゴール地点のグリュイッサンは、ナルボンヌ近郊の小さな港町。映画『ベティ・ブルー』の舞台となった町で、近くの湖ではウナギも取れる。その形状からも、「フランスの浜名湖」なんて栗村さんなら言いそうな地形だ。

今大会最初の平坦ステージ。ツール失格のリベンジを果たせるかサガン。あるいは、ブエルタとの相性がめっぽう強いデゲンコルブが勝利するか。今年6年ぶりの出場となる可能性もあるキッテルが、ツールの勢いをそのままぶつけてくるか。

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第3ステージ プラデス・コンフレント・カニーゴ〜アンドラ・ラ・ベリャ 158.5km

第3ステージから厳しいピレネーの山岳ステージ。とはいえそんなのはブエルタにとっては珍しくない。2015年には初日TTTの翌日がいきなり平均勾配10%の山頂フィニッシュだったのだから。

この日はその意味で、下りゴールという、どこか近年のツールに影響を受けたかのようなレイアウト。実際、近年は下りが勝負を分けることが多いため、スペクタルを生み出す効果はあるだろう。ひどい落車だけはないようにしてほしい。

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2つ目の1級山岳「ラバッサ峠」。登り初めに15%の激坂区間

 

 

 

第4ステージ エスカルデス・エンゴルダニー〜タラゴナ 193km

カタルーニャ地方の港湾都市タラゴナニーム同様に円形劇場や水道橋で有名。

コースとしては3級山岳が1つあるものの基本的には平坦ステージ。平坦ステージで1級山岳があることも珍しくないブエルタにしてみては、真平なステージである。この程度の山で遅れるスプリンターがいればそれはブエルタで走る資格はないと言ってもいいレベルか?

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ラスト500mから登り基調。単純なピュアスプリントとはいかなそうだ。

 

 

 

第5ステージ ベニカシム〜アルコセブレ 173.4km

でこぼこ。そしてラストは3級山岳山頂ゴール。ブエルタの3級はツールのそれとはまったくレベルが違う。この日も、3.8kmと距離は短いが、平均勾配は8.7%。総合争いで差がつく可能性は十分にある。ブエルタ特有の、出入りの激しい白熱のクライミングバトルが見られるはずだ。

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登り2kmを切った直後が最も厳しいポイントのようだ。 

 

 

 

第6ステージ ビラ・レアルサグント 198km

スタート地点のビラ・レアル(Vila-Real)は「王の町」という意味。ラ・リーガ1部のチーム「ビジャレアルCF」の本拠地であり、彼らのホームスタジアム「エル・マドリガル」が映像に映し出される可能性は十分あるだろう(スペインは結構サッカースタジアム映すよね)。

サグントはローマ時代はサグントゥムと呼ばれた町で、ポエニ戦争などに興味がある人なら聞いたことがある地名だ。

いずれもバレンシア州の町であり、州最北のカステリョン県から州中部のバレンシア県へと、南下するステージである。

アップダウンが激しく、総合タイム差で差が生まれるステージの翌日ということもあり、逃げ切り勝利が決まりやすいステージと言える。

最後の2級山岳は登坂距離9km、平均勾配5.5%。山頂からゴールまでは下りも含め30kmある。

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第7ステージ リリア〜クエンカ 205.2km

地中海沿いから内陸部に。目指すは、「歴史的城塞都市クエンカ」として世界遺産に登録されている町であり、「宙づりの家」などが有名。果たして映像には出てくれるか? 

常に標高1000m近くを走る独特なステージだが、基本的には平坦。前日に逃げ切りが決まっていれば、3ステージぶり3回目のスプリント勝負が繰り広げられそうだ。

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第8ステージ エリン〜ソレット・ディ・カティ 184km

ゴール前2km地点を頂上とする1級山岳ソレット・ディ・カティ。たった4kmで、455mを登る。平均勾配は11.3%。平均でこれである。中腹の最大勾配は22%に達するという。

2009年・2010年と連続で登場し、2010年にはダヴィ・モンクティエ勝利。彼の、3年連続となる山岳賞獲得の大きな一手となった。今年もフライレには期待したいところ。

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直近では2016年のバレンシア1周で使われ、このときはワウト・プールスが優勝。そのまま総合優勝も決めた。今年もプールスはツールをパスしブエルタに出場予定。活躍が期待できる。 

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ソレット・ディ・カティの驚異の登り。

 

 

 

第9ステージ オリウエラ〜クンブレ・デル・ソル 176.3km

公式でのカテゴリは平坦ステージ。

確かに見た目は平坦だが・・・最後は平均勾配9%の1級山岳アルト・デ・プイグ・ジョレンガ山頂ゴールとなっている。これで平坦ステージとカテゴライズする公式の頭の中がわからない。ネタを入れないと死んでしまうのか。

登坂距離自体は4kmと短め。休息日前ということもあり、総合勢による白熱のバトルが繰り広げられるのは間違いない。アタックの連続だ!

ちなみにほぼ同じデータの第5ステージ最後の登りが3級でこっちが1級という、その山岳カテゴライズの理由もなかなか不明。

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 終盤まで急勾配が続く。激しい総合争いが繰り広げられるのは必至だ。

 

 

 

集団スプリントが決まりそうな平坦ステージが3つ。逃げ切りが決まりうるステージが1つ。そして総合争いが起きそうなステージが4つだ。

ただし、まだまだ長い登坂が出てくるわけではないので、総合争いにおいてもタイム差は大きくは開かず、総合TOP5にいる選手すべてが総合優勝を狙える状態となるだろう。

 

・・・ところで、なんでどのステージもスプリントポイントが終盤にあるんですかねぇ? そんなにスプリンターにポイント賞取ってほしくないのか?

 

次回は第2週をプレビュー。

ポスト・フルームのグランツールライダーたち

クリス・フルームがツール4勝目を飾った。

 

戦前は様々な不調説も唱えられ、総合争いにおいて大きな波乱が起きるかもと予想されていたが、ライバルの脱落や不調も手伝って、最終的には問題なくこの「最強の男」が勝利を手に入れた。

 

これで、「5勝クラブ」入りまであと一歩。

そして、それは決して不可能なことではないと、誰もが考えていることだろう。

あと1勝。それは来年かもしれないし、あるいはその次の年かもしれない。

 

 

だが、フルームももう既に32歳。来年は33歳である。

近いうちに、彼が第一線を退くことは間違いない。

そうなると期待してしまうのが、「その次の世代」である。

 

 

 

今回は、2020年代以降のグランツール総合争いで活躍しそうな、「未来のグランツールライダーたち」を確認していこうと思う。

 

 

 

「90年世代(ゴールデン・エイジ)」

ここ近年、もっともプレゼンスを発揮しているのがこの、1990年生まれの世代である。

この世代の特徴は、第一線で活躍する選手の数もさることながら、注目される時期が早かった、というのもあるだろう。早い選手であれば5年前からツール・ド・フランスでも話題になり始め、ここ最近では「まだ強いの!?」と思ってしまうくらいの息の長さを誇っている。

 

既にグランツール総合争いで結果を出している「90年世代」は以下のとおり。

 

  • ナイロ・キンタナ(ジロ総合優勝、ブエルタ総合優勝、ツール総合2位×2)
  • ファビオ・アル(ジロ総合2位、ブエルタ総合優勝)
  • ロマン・バルデ(ツール総合2位・総合3位)
  • エステバン・チャベス(ジロ総合2位、ブエルタ総合3位)
  • ティボー・ピノ(ツール総合3位)
  • トム・デュムラン(ジロ総合優勝)

 

さらに、その他ステージレースで活躍したメンバーとしては、ツアー・オブ・ダウンアンダー総合優勝とティレーノ~アドリアティコ総合2位を果たしているローハン・デニスや、今年ツアー・オブ・カリフォルニアを総合優勝しツールでも力強い走りを見せたジョージ・ベネットなどがいる。

 

彼らは来年で28歳。

28歳というと、様々な統計で「もっとステージ勝利を挙げている」年齢であることがわかる。

もちろん、ステージ勝利など、彼らのレベルにとってはそこまで重要ではない。

しかし、ここ10年のツール・ド・フランス総合優勝者の平均年齢を算出すると29.5歳

つまり、フルームがその衰えをどうしても隠し切れなくなるであろう2~3年後に、この「90年世代」はピークを迎える可能性があるのだ。

 

その意味で、やはりこの世代こそが「ポスト・フルーム」時代を創造していく鍵となることがわかる。 

 

 

この世代で、最初に頭角を現したのは、キンタナ、バルデ、ピノといった「クライマー系」の選手たちである。

その中でもキンタナは、最も早く、そして最も多くの成績を上げている。

しかし彼はツール・ド・フランス総合優勝まであと一歩、というところにまで迫りながら、いまだにそれを手にしてはいない。

今年のツールに関して言えば、ジロからの連戦ということもあっただろうが、それにしても散々な結末を迎えることとなってしまった。

辛い3週間を過ごすこととなったキンタナ。来年の復活はあるのか。

 

 

キンタナはかつて、フルームに唯一匹敵できるだけの登坂力をもった男として讃えられた。一方で、フルームに大きな差をつけられてしまうポイントが、個人タイムトライアルに関する能力であった。20kmもあればフルームに対して簡単に1~2分のタイム差をつけられてしまうその独走力における力量差が、キンタナのツール制覇、そして今年のジロ制覇における 大きな壁となって立ちはだかってしまった。

 

また、近年のツールの、登りでは大きな差をつけることができないという傾向もまた、彼にとってマイナスな要因ともなっているだろう。

それは、もう1人のツール制覇有力選手ロマン・バルデに関しても同様だ。今年のツールも、決して得意ではない個人タイムトライアルにバッド・デイが重なったことで、総合2位どころか危うく総合表彰台すら失いかねない事態に発展してしまった。

 

 

だから、「ポスト・フルーム」を考えるうえで重要になってくるのは個人タイムトライアル(個人TT)に関する能力である。

実際、今年、フルームを唯一倒し得る存在として期待されていたのは、キンタナではなく、リッチー・ポートであった。彼が不運な落車に見舞われなければ、フルームを倒していたとしても決して不思議ではない。それは、フルームに匹敵する登坂力もさることながら、直前のドーフィネではフルームを実際に打ち倒した、その個人TT能力があったからである。

 

 

そういった点を考えると、やはり今後、「90年世代」で最も「ポスト・フルーム」に近い選手としては、トム・デュムランの存在が挙げられる。

実際に彼は、今年のジロで、「90年世代」最強と目されていたキンタナを打ち倒し、初めてのグランツール優勝を飾った。登りでもキンタナに喰らいつき、とくにそれを乗り越え、さらには2年前のブエルタで敗因とされていたチーム力も、予想以上の力を発揮した仲間たちの活躍によって補った。歴史的な勝利であった。

グランツール総合争いへの本格参戦を開始したデュムラン。ツールへの挑戦も近いはずだ。

 

 

2015年のように極端に個人TTが短い(あるいはチームTTの比率が大きい)コースでない限りは、デュムランの優位性はツールでも発揮されうることだろう。

場合によっては来年、フルームに挑んでそれを打ち倒すことすら可能ではないか、とも考えている。

 

逆に、個人TTが短ければ、キンタナやバルデにとっても総合優勝のチャンスが大きく広がる。アルはいまだ3週間を安定して過ごすことができずにいるが、基本的にはこの3人とデュムランが、この黄金世代において最もツール総合優勝に近い選手であると言えるだろう。

 

 

そして、デュムランに匹敵する個人TT能力をもつ選手として、ローハン・デニスの存在も注目に値する。

まだグランツール総合争いにおいて大きな実績のない彼ではあるが、今年のティレーノ~アドリアティコの山岳ステージでも悪くない走りを見せており、あと数年、グランツールでの経験を積むことで、デュムランやキンタナに十分に対抗できる存在となるだろう。

今年のティレーノ~アドリアティコは「90年世代」が表彰台を独占。未来への期待溢れる結果となった。

 

 

そしてカリフォルニアで総合優勝を果たしたベネットも、弱点と思われていた個人TTでの大躍進が勝利の鍵であった。

今年のツールでもクイーンステージの第9ステージや激坂のペイラギュードでも大きく遅れることなく上位に入り込み、総合ベスト10を終盤まで維持する走りを見せた。

最後は体調不良でリタイアを余儀なくされたが、彼がただのダークホースではなく、確かな実力をもった選手であることを証明してくれた。

第16ステージで悔しくも途中リタイアとなってしまったベネット。ブエルタでのリベンジは果たせるか?

 

 

 

 

スター選手の揃う「90年世代」。彼らの中で最も早くツール総合優勝に手をかけるのは果たして誰か。

 

そして、直近のブエルタはこの「90年世代」から、チャベス、アル、バルデ、ベネットがまずは参加を表明している。

番狂わせも起きやすいブエルタ。彼らの激突の結果が今から楽しみである。

 

 

 

 

「92年世代」

90年世代に次いで頭角を現しつつある「世代」が、1992年生まれの世代である。

この世代に該当するグランツールライダーとしては以下の選手たちが挙げられる。

 

  • アダム・イェーツ(ツール総合4位・新人賞、ジロ総合9位)
  • サイモン・イェーツ(ツール総合7位・新人賞、ブエルタ総合8位)
  • ボブ・ユンゲルス(ジロ総合6位・総合8位・新人賞×2)
  • ジュリアン・アラフィリップ(カリフォルニア総合優勝)
  • ルイ・メインチェ(ツール総合8位×2)
  • ダヴィデ・フォルモロ(ブエルタ総合9位、ジロ総合10位)
  • エマヌエル・ブッフマン(ドーフィネ新人賞)
  • リリアン・カルメジャーヌ(パリ~ニース山岳賞)

 

 

すでに2年前には輝かしい成績を量産していた 「90年世代」と比べると、この世代はまだ彼らに匹敵するほどの結果は出してはいない。

しかし、各種新人賞を含め、近年のグランツールやステージレースでは大きな存在感を示しているのがこの世代だ。

2~3年後はまだ「90年世代」が幅を利かせているかもしれないが、その先の2020年代においては、この世代がグランツールの主役となることは間違いないだろう。

 

そしてこの世代で最も注目したいのが、やはり個人TT能力に優れたボブ・ユンゲルス。

ジロでは今年、昨年ツール新人賞アダムとの激戦を制し、2年連続の新人賞獲得という偉業を成し遂げた。

チームメートのアラフィリップやダン・マーティンがいる関係で、2015年以降はツールへの出場を回避しているが、彼が今後ツールに本格参戦した場合、勢力図は変わる可能性は十分にある。

もちろん彼も、まだまだ登坂力で課題は残るものの、デュムラン、デニスと並んで、今後のグランツール総合争いにおいては「90年世代」と張り合うだけのポテンシャルを持っているように思える。

 

 

個人TT能力が今後のグランツール総合争いでも重要な要素を持つというのであれば、「92年世代」最大の実力者は、このユンゲルスであることは間違いないだろう。

逆に、イギリス籍という意味でも「ポスト・フルーム」と呼ばれることも多いイェーツ兄弟は、個人TT能力の大幅改善させ見込めれば、兄弟揃ってツールの表彰台に立つことも十分可能であろう。

 

「90年世代」があまりにも強大過ぎて、この「92年世代」がツール総合表彰台に姿を現すのはもうちょっと先になってしまうかもしれない。

それでも、新しい時代を築いていく世代であることは間違いないだろう。

そしてそれは「2020年代のスター」であることを意味する。

かつて、80年代はイノーとレモン、90年代はインドゥラインとパンターニ、00年代はコンタドール、そして10年代のフルームと、各10年代ごとに輩出されてきたスターたちと肩を並べられるだけの存在が、もしかしたらこの世代から輩出されるかもしれないのだ。

 

それは「90年世代」ではなくこの世代。

もしくは、このあとに紹介する、さらに若い世代での戦いとなるだろう。

 

 

 

 

「94年世代」

ここまで来ると、 該当する選手をすぐに思いつくことが難しくなってくるかもしれない。だが実は、この世代もしっかりと存在感を示している。聞いたことがある選手名が並んでいるはずだ。

 

たとえば以下のような選手たちだ。

 

  • ヒュー・カーシー(イギリス、キャノンデール)
  • メルハウィ・クドゥス(エリトリア、ディメンションデータ)
  • ティシュ・ベノート(ベルギー、ロット・スーダル)
  • ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、アスタナ)
  • ジャンニ・モズコン(イタリア、スカイ)
  • マトヴェイ・マミキン(ロシア、カチューシャ)
  • ホナタン・レストレポ(コロンビア、カチューシャ)
  • オドクリスティアン・エイキング(ノルウェー、FDJ)
  • マッヅ・ヴュルツシュミット(デンマーク、カチューシャ)
  • 小林海(日本、ニッポ・ヴィーニ・ファンティーニ)

 

まだ現時点では大きな実績をあげていない選手たちも、あえて入れている。

小林海を入れたのは、日本が今注目する「若手」が、同世代の世界にどれだけの選手がいるのかを確認するためだ。

 

 

「92年世代」は来年から新人賞の対象外となる。となれば、この世代がまずは、ジロ・ツールその他ステージレースにおける新人賞でどれだけ存在感を示していくことができるか。それが課題となる。

 

 

もちろん、「93年世代」も新人賞の対象となる。こちらにも、2015年ラヴニールの覇者であるマルク・ソレル(スペイン、モビスター)や、今年のオーストラリアロードチャンピオンであるアレクサンダー・エドモンドソン(オーストラリア、オリカ)、そしてジロで力強い走りを見せていたヴァレリオ・コンティ(イタリア、UAE)、タオ・ゲオゲガンハート(イギリス、スカイ)などが該当している。ただこの世代は、「92年世代」や「94年世代」と比較すると、総じて層は薄い。

 

「94年世代」にとって、来年はもう「24歳」になる年である。

24歳といえば、すでにキンタナがジロを制しており、バルデもツール新人賞、ピノもツール総合3位と結果を出し始めている年である。

 

そんな時期に、この世代の選手たちがどれだけ結果を出せるのか。

来年のグランツールではそんな点を、期待して見ていくことができるだろう。

 

 

 

 

さらに若い世代たち

さらに若い世代として、「95年以降の世代」も見ていこう。

実はこの世代にも、すでに名前を売り始めている選手たちがいる。

 

たとえば新人賞候補として常に注目を浴びているチーム・サンウェブのオランダ人サム・オーメンは95年世代である。

今年のアジア選手権U23部門で優勝した小野寺玲(宇都宮ブリッツェン)と岡本隼(愛三レーシングチーム)もこの世代である。

世界に羽ばたく日本人選手に対する期待が、この世代にはかけられている。

 

 

昨年ラヴニール覇者であり、フレッシュ・ワロンヌでも力強い走りを見せたダヴィ・ゴデュ(フランス、FDJ)と、昨年カリフォルニア新人賞を獲得したネイルソン・パウェル(アメリカ、アクセオン)は96年世代。

ティレーノ~アドリアティコでユンゲルスと熾烈な新人賞争いを演じ、来年はスカイ入りを噂されているイーガンアルリー・ベルナルは97年世代である。

ベルナルは来年もまだ21歳。まさに「ポスト・フルーム」時代を担いうる才能であることは間違いない。スカイ入りが本当であれば、そこでの修行が楽しみである。

弱冠20歳のコロンビア人ベルナル。来年はどんな実績を出してくれるのか。

 

 

確実に到来する「ポスト・フルーム」時代。あるいは「2020年代」。

その戦国時代を制し、頂点を極めるのはどの世代か。

 

 

 

 

おまけ・各世代のスプリンターについて

スプリンターにおいても、若手が次々と台頭してきている。サガンやマシューズは「90年世代」の一員であり、今年のジロで大ブレイクしたガヴィリアは「94年世代」である。

カヴェンディッシュグライペルもさすがにそろそろ年齢的に厳しくなっており、キッテルも絶好調ではあるが、4~5年後に第一線を維持するのは厳しくなっていくだろう。

この分野においても、2020年代を代表することになるだろう、新たな世代のラインアップを挙げていく。

 

 

「90年世代」(来年28歳)

  • ペテル・サガン(通算96勝、ブエルタ4勝、ツール8勝)
  • マイケル・マシューズ(通算25勝、ジロ2勝、ツール3勝、ブエルタ1勝)
  • ナセル・ブアニ(通算56勝、ジロ3勝、ブエルタ2勝)

 

「91年世代」(来年27歳)

  • ルノー・デマール(通算46勝、ツール1勝)
  • ニキアス・アルント(通算5勝、ジロ1勝)
  • エドワード・トゥーンス(通算5勝)

 

「92年世代」(来年26歳)

  • ブライアン・コカール(通算33勝)
  • ダニエル・マクレー(通算4勝)

 

「93年世代」(来年25歳)

  • マグヌスコルト・ニールセン(通算9勝、ブエルタ2勝)
  • ディラン・フルーネヴェーヘン(通算19勝、ツール1勝)
  • リック・ツァペル(通算1勝)

 

「94年世代」(来年24歳)

  • カレブ・ユワン(通算24勝、ジロ1勝、ブエルタ1勝)
  • フェルナンド・ガヴィリア(通算19勝、ジロ4勝)
  • フィル・バウハウス(通算5勝、ドーフィネ1勝)
  • ライアン・ギボンス(通算2勝)
  • パスカル・アッカーマン

 

 

注目すべきは、「93年世代」「94年世代」に結果を出しつつある選手が入っていること。

ニールセンは昨年ブエルタで2勝を挙げる活躍を果たし、フルーネヴェーヘンも昨年オランダチャンピオンに輝き、今年はついにシャンゼリゼを獲得した。

そして2年前ブエルタ勝利を挙げたユワンと、今年ジロでグランツール初挑戦ながら一気に4勝を叩き出した、サガンの後継者とも言うべき活躍を見せたガヴィリア。

 

このあたりの世代にギボンスやバウハウスなどがどれだけ対抗していけるか。

 

スプリントにおいても新世代の活躍が十分に期待できそうだ。

グランツール初出場にしてステージ4勝とポイント賞を奪い取っていったガヴィリア。今後どこまで勝利数を伸ばしていけるか楽しみだ。

 

 

 

 

最後に、国籍についても少し触れる。

ここまで見てきた若手注目選手たちの国籍を確認すると、コロンビア、イタリア、イギリス、フランスあたりが多く見受けられる。

 

とくにコロンビア人は若手も強力な選手が揃っており、「90年世代」のキンタナ、チャベスに続く、新たなスター選手たちの供給はまだまだ止まりそうにない。

長らく不調であったフランスはここ最近若手の台頭著しく、ワールドツアーチームから消滅して久しいイタリアも、意外と若手が育ってきている印象だ。アメリカに関しても、同様のことが言えるかもしれない。

 

一方、危機的な状況にあるのが、やはりスペイン。

その要因は簡単に断定することはできないが、ここ20年以上サイクルロードレース界に多くのトップライダーたちを輩出してきたスペインが、今後10年、そのプレゼンスを発揮できないかもしれないという危機に瀕している。

 

 

果たしてスペインの復活はあるのか。

コンタドールも育成チームを立ち上げる(立ち上げている?)という話を聞いたりしているが、そういったところから芽を生やし、新たな時代を築くことを期待している。

ツール・ド・フランス2017 総括(全チームレビュー)

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3週間の戦いを終え、出場した全22チームすべてに簡単なレビューを書いていく。

★の数はそのチームに大会前抱いていた期待と比べてどうだったのか、という観点で決めている。あくまでも独断と偏見によるもののため悪しからず。

順番は、総合上位順となっています。

 

 

 

チーム・スカイ ★★★★★

クリス・フルーム 総合優勝

ミケル・ランダ 総合4位

ミケル・ニエベ 総合14位

蓋を開けてみれば、何の問題もなく3年連続4回目の総合優勝を果たしたフルーム。しかし、そのタイム差は54秒と、近年稀に見る接戦。しかも、ポートがリタイアしていなければどうなっていたのかわからない。それくらい、盤石とは言えない結果であった。

今年のフルームの、例年との大きな違いは、登りにおいて他のライバルたちと差をつけることがまったくできなかった、という点である。ペイラギュードではむしろタイムを落とし、昨年注目を浴びた下りでも、バルデに後れをとっていた。

これが今年だけの問題だったのか、それとも年齢などによる、恒久的な問題として残るのか。もし後者であれば、万全の状態で復活したポートや・・・もしかしたら、デュムランの存在が、フルームにとって大きな壁として立ちはだかるかもしれない。

一部出ている噂では、ダブルツール達成のために、あえてブエルタにピークを持ってきている、という説もある。また、登りでフルームが弱い、という話ではなく、登りでのトップライダーたち全員の差がつきにくいというのは昨年から続く傾向であるとも言える。それにしても今年の差のつかなさ具合は目立っていた気はする。

それがゆえに、アシストたちの力量が大きくモノを言った。最高のコンディションを発揮していたクフャトコフスキ。そして、ジロからの連戦にも関わらず誰よりも強い走りを見せつけたミケル・ランダ。チーム・スカイのここ数年の偉業は、フルームだけでなく、チーム全体の力によるものである、ということを改めて思い知らされた大会であった。

 

 

キャノンデール・ドラパック ★★★★☆

リゴベルト・ウラン 総合2位

リゴベルト・ウラン 区間1勝(第9ステージ)

ウラン、大復活の総合2位。もちろん、彼が突出した走りをできていたわけではない。しかし、常に遅れずに位置をキープし続け、タイムトライアルでも失敗しなかったことにより、この位置となった。この総合2位の取り方は、差をつけづらい展開が続いた今年の大会を象徴するようなものだった。

ウランの成績はもちろん、チームにとっては僥倖そのものではあったが、ローラン、タランスキーといった才能がいる中で、これ以外に目立った結果を出せなかったこと自体は反省材料でもある。とくにタランスキー・・・昨年ブエルタで復活の兆しを見せていただけに、今回の総合49位は非常に残念だ。

 

 

AG2Rラモンディアル ★★★★☆

ロマン・バルデ 総合3位

アレクシー・ヴュイエルモ 総合13位

今年のAG2Rを見て、成績以上の評価をつけたくなるのは、彼らのチームとしての動き方の大きな変化だ。例年であれば、強力な山岳アタッカーたちが独自の動きを見せながら逃げ切り勝利を狙うところだったが、今年は、ゴチエが、ドモンが、ヴュイエルモが、そしてラトゥールが、逃げには乗らずにトレインを作ってバルデを守る働きを見せていた。もちろんスカイの層の厚さには大きな差をつけられてしまってはいるが、今後、バルデの総合優勝を狙ううえで、十分に期待ができる姿であった。AG2Rのアタッカーたちが好きだっただけに、少し寂しさを覚えもするが・・・。

あとはバルデのTTの改善が早急に求められるところ・・・。下りの強さは素晴らしいのだけれど。(第9ステージも独走力さえあれば・・・)

それでもバルデは今年は絶不調と思っていたのを、きっちりツールに合わせてきたこの安定感は、ここ近年のフランス総合系にはない強みであると言えるだろう。

 

 

アスタナ・プロチーム ★★★★☆

ファビオ・アル 総合5位

ファビオ・アル 区間1勝(第5ステージ)

結果的に、アルは素晴らしい走りを見せてくれた。終盤の遅れも含め、いろんな意味でニバリの後継者ではある(笑) 今後も、ツールでの総合優勝は、様々な要素が絡まないと難しいかもしれないが——ジロでのリベンジはぜひ狙っていただきたい。ただし、アルは来年、UAEに移るとかいう噂も出てきてはいる。UAEの来年の補強次第だとは思うが、彼らがグランツールで総合優勝を狙えるイメージはあまりない・・・。

チームとしては、フールサン、カタルドを失うなど不運が続いた。それは他チームも同様ではあったが。それでも、地味ながら活躍するゼイツも残ってはいたのだが、うまく機能していなかった感がある。ルツェンコの積極的な走りは印象に残った。まだ今年で25歳。来年こそはグランツールでの勝利がほしいところ。

 

 

クイックステップ・フロアーズ ★★★★☆

ダニエル・マーティン 総合6位

マルセル・キッテル 区間5勝(第2・6・7・10・11ステージ)

文句なき「最強スプリンター」としての力量を見せつけたキッテル。ピュア平坦ステージでは敵なし。さらに山でもこれまでにないくらい登れる姿を見せつけた。ジロでのガヴィリアの活躍に対し、先輩としての意地を見せつけた格好だ。

一方で、キッテル以外に勝利がなかったのは残念。ジルベールも途中リタイア。マーティンも、実力は申し分ないが、運の悪さと、アシストの欠如と、そして本人のいつも通りのアタックのタイミングの悪さ・・・一度、イェーツと共にタイムを稼いだときは良かったが。ブランビッラもジロを蹴って出場したにも関わらずまったく存在感を示せず、オールスター軍団だっただけに、キッテルの5勝にも関わらず★も3つにしてしまおうか悩むくらい。

一方、オールスターぶりと比べると少し不思議だったヴェルモトの、活躍。さらにはバウアーが、TTも含めた活躍。このあたりの「縁の下の力持ち」の存在も、やはりツールという最高峰の舞台では重要になることを実感できた。

来年はアラフィリップの復活が見られるか。マーティンにもっとアシストをつけて(あるいはマーティンがアシスト役となって)総合でも活躍できるクイックステップが見たい。

 

 

オリカ・スコット  ★★★★☆

サイモン・イェーツ 総合7位

サイモン・イェーツ 新人賞

メンバー自体は豪華なれど、直前のドーフィネを見る限り、大爆死も可能性があっただけに、しっかりとイェーツが新人賞を確保したことは喜ばしい出来事。後半完全に存在を忘れられたチャベスブエルタで大暴れし、万全の状態で来年ツールで挽回することに期待する。

クロイツィゲルまで空気だったのは少し残念・・・。

 

 

UAEチーム・エミレーツ ★★★☆☆

ルイ・メインチェス 総合8位

昨年に続き、イェーツ家に新人賞を奪われてしまった悲運の人。こうして彼の、新人賞期間は終了を告げてしまった。パリでアフリカ系選手が表彰台に立つ歴史的な瞬間を見たかったが・・・TTが強ければなぁ。

インチェスは新人賞を狙う力は十分にあるが、総合上位5名に入る力があるかと問われるとかなり微妙なところ。そして来年はアルが入ってくる可能性もあるという(メインチェス自体も移籍する可能性もあるけれど)。新人賞期間が終わってしまったのちに、彼が大きく名を轟かすチャンスが果たしてくるかどうか。

終盤のアタプマの活躍も、期待していただけに嬉しい。だが、昨年ブエルタに続き、フランス人に敗れ2位。来年こそは・・・。

そして、ジロを蹴ってまでこちらに参戦したウリッシの、イマイチ目立たない感。

 

 

トレック・セガフレード ★★★★☆

アルベルト・コンタドール 総合9位

バウケ・モレマ 総合17位

バウケ・モレマ 区間1勝(第15ステージ)

コンタドール、執念の走りで総合TOP10は死守。さらにモレマが自身初のツール勝利を果たすなど、なんだかんだでそれなりの結果を出すことはできた。パンタノが不調だった中でよくやった。

デゲンコルブも勝てはしなかったがかなりいい勝負をしていたのは間違いない。ブエルタに期待したいのだけれどどうだろうか。

来年は誰がエースになるだろうか。

 

 

チーム・サンウェブ ★★★★★

ワレン・バルギル 総合10位

マイケル・マシューズ ポイント賞

ワレン・バルギル 山岳賞

ワレン・バルギル 総合敢闘賞

マイケル・マシューズ 区間2勝(第14・16ステージ)

ワレン・バルギル 区間2勝(第13・18ステージ)

チーム・スカイが順当な成績だったとすれば、最も意外で最も衝撃的な成績を叩き出したのがこのサンウェブであった。しかも、ジロに続けて。しかも、(期待されていなかったはずの)そのチーム力の結果で。最も勝利数を稼いだチームはクイックステップであったが、このチームの2勝+2勝という結果は、「今大会最も強いチーム」という称号を授けても文句ない結果であったと言える。

まず注目すべきは、バルギルの「復活」。復活というと語弊がある気はするが。彼はまだ25歳。むしろこれからであり、今大会の活躍はその布石とも言えるはずだ。とくにイゾアール山頂での勝利は大きな価値をもつ。あれだけ誰よりも強い走りをしながら表情は涼やかなバルギル。これまでの彼とは明らかに異質であった。

そしてマシューズは、いわば「サガン流」の走り方をしてポイントを稼いだ。最終的にキッテルリタイアという結果を受けたわけだが、もしもキッテルがリタイアしていなかったとしても、もしかしたらギリギリで勝っていたかもしれない。そして、やはりその意味で、サガンとの一騎打ちも見てみたかった。

そして何よりも印象的だったのは、この2人が互いをアシストしていたこと。バルギルの山岳賞を守るべくマシューズが山頂一番乗りをしたり、バルギルがその逆をしたり・・・さらに、この2人を支えるために、テンダム・ゲシュケのジロからの連戦組が強烈な牽引を見せ、アルントも、スプリンターにも関わらず山岳の牽引で働いていた。

今大会最強チーム。そして今後が最も期待できるチーム。来年は、デュムランでマイヨ・ジョーヌを狙ってほしい。

 

 

BMCレーシング ★★☆☆☆

ダミアーノ・カルーゾ 総合11位

ポートは今年、十分に総合優勝を狙える位置にいた。しかしながら、不運にも落車リタイア。とはいえ、不運だけとも言えない部分はあるだろう。安全性を確保したうえで速い、というのがダウンヒルの実力であり、ポートはその点、バルデやフルームに対して差をつけられてしまっていたのだ。来年はこの点の改善が求められる。今回の落車の恐怖が、その改善を阻むものとならなければよいが・・・。

一方、直前のツール・ド・スイス総合2位という成績を残したカルーゾが、このツールでも大活躍を見せた。ポート脱落前は、ロッシュ以上のアシストとして重要な場面でも残り続け、ポート脱落後は総合エースとして申し分ない走りを見せつけた。今年30歳。決して若くはないが、今年同じく調子の良いヘルマンスと共に、BMCのサブ総合エースとしての活躍を今後も期待したい選手である。

とはいえチーム全体としては、勝利も得られず期待値に満たない結果となってしまったのは否めない。

 

 

モビスター・チーム ★☆☆☆☆

ナイロ・キンタナ 総合12位

カルロス・ベタンクール 総合18位

不運もあり、不調もあり。もはや言葉はない。キンタナの状態の悪さばかりがクローズアップされるも、本来であればバルベルデに次ぐエースアシストとしての活躍が期待されていたアマドールに関しても期待外れの結果となってしまった。ジロからの連戦とはいえ、テンダムやランダがあれだけの活躍をしていたのを考えると・・・。登りではベタンクールの方が残っていたくらいである。

苦しい結果に終わりそうなチームに勝利をもたらすべく、ベンナーティも意地を見せてはいたが実らず。最終日タイムトライアルではズッターリンが上位に来るなど、チームの将来に向けての希望をわずかに残しはした。

 

 

ボーラ・ハンスグローエ ★★★☆☆

エマヌエル・ブッフマン 総合15位

ペーター・サガン 区間1勝(第3ステージ)

マチェイ・ボドナール 区間1勝(第20ステージ)

ドーフィネで新人賞をGETしたブッフマンも、さすがに3週間のレースで上位を維持することは難しかった。だが彼もこれから。焦る必要はない。

サガンは期待通りの勝利を掴み、翌日のステージで意外な形でレースを去った。ツールにおける初の総合エースとして期待をされていたマイカも、2週目が始まる前にリタイアを決めた。今年からワールドツアーに昇格したばかりのチームとしては驚くほどの成果を見せてきた今シーズンだったが、実力とは異なる部分で、結果を出せない危機に瀕していた。

その中で、最後の執念を見せたのがボドナールだった。一度は逃げ切りすらも狙えそうな走りを見せつつも失敗。だが諦めず、第20ステージのタイムトライアルで、トニー・マルティンやフルームを退けてのステージ優勝を果たした。確かに独走力の高い選手ではあったが、この勝利はまさに執念であった。

来年はリベンジを期待したい。ステージ勝利を量産し、また総合上位も狙えるだけの走りを。

 

 

フォルテュネオ・オスカロ ★★★☆☆

ブリース・フェイユ 総合16位

フェイユ、2014年以来の総合16位。それはまあ、凄いのだけれど、やっぱりそろそろステージ勝利も欲しい。逃げは十分積極的だったが。

そんな中、チームとしては、今大会最年少であり当然初出場となったエーリ・ジェスベールの好走が光った。今年22歳の選手だ。

上記は第10ステージで敢闘賞を獲得したときの写真。さらに3週目も逃げに乗り、第19ステージは7位と大健闘。序盤はまだしも中盤~終盤とまんべんな元気な走りは今後が楽しみになるというものだ。

あとは、昨年良いスプリントを見せていたマクレーが、今年はてんでダメだったのが残念。シーズン全体を通して、序盤以外は不調という印象なので、来年仕切り直しをしたいところ。

 

 

ディメンションデータ ★★★☆☆

セルジュ・パウエルス 総合18位

エドヴァルド・ボアッソンハーゲン 区間1勝(第19ステージ)

ボアッソンハーゲン絶好調。ステージ1勝しただけでなく、2位が2回、3位も2回。キッテルとごくわずかの差にまで迫るほどのスプリントを見せた。さらに1勝に関しては、冷静な判断力と、そして彼の武器の1つである独走力を活かした勝利であった。登れる力もあるので、これは今年の世界選手権も楽しみになる、というものだ。

 

 

ロット・スーダル ★☆☆☆☆

ティシュ・ベノート 総合20位

ベノート、デヘント、ティム・ウェレンス、そしてギャロパン。グライペルのスプリント以外でも勝利を狙っていける黄金メンバー。ロット・スーダルの最強のアタッカーたちを揃えたにも関わらず、勝利なし。この結果は、重く受け止めねばならない。デヘントも、確かに逃げの総距離は凄かったかもしれないが、モン・ヴァントゥー制覇すら成し遂げた昨年と比べると寂しく感じてしまう。

そして何よりもグライペル。「わずかに届かなかった」という言葉さえつかえないほどに、惨敗だったと言わざるをえない。ジロに続いて、得意のチーム力が活かせない格好になってしまったのがいけなかったのか。それとも単純に力不足だったのか。シャンゼリゼは位置取りの問題だった気はするが、位置取りがよかったステージでも伸びきらなかった。

今年で35歳。厳しい年齢なのはわかっているが、やはり来年以降も期待していきたい選手ではある。

 

 

ワンティ・グループゴベール ★★☆☆☆

期待されていた総合エース、ギョーム・マルタンが総合23位と、目標としていた総合20位に届かず。しかしまあ、逃げは積極的だったし、初出場チームとしては悪くない結果だったとは思う。果たして来年もまた出られるか・・・。少なくともコフィディスよりは目立っていたかな。

 

 

ディレクトエネルジー ★★★☆☆

リリアン・カルメジャーヌ 区間1勝(第8ステージ)

カルメジャーヌの見事な勝利。第20ステージのTTでも11位となかなか速く、今後は総合エースとしての成長が期待される。まあ、中途半端に総合系ライダーとなるよりは、ステージ勝利や山岳賞を狙う選手を目指した方がいい気はするが・・・。

ヴォクレールはうまくチャンスを掴めず。それでも、最後まで気持ちのいい走りを見せてくれる選手だった。ありがとうヴォクレール

 

 

コフィディス・ソリュシオンクレディ ★☆☆☆☆

ツールに参加するだけで喜ばれるブアニ。本当に参加するだけに終わる。ナバーロも総合20位以内にも入れず、大爆死。

 

 

カチューシャ・アルペシン ★☆☆☆☆

大爆死2。トニマルも勝てずまったくイイトコ無し。相変わらず、ラスト10kmからのトニマルの牽引は凄まじいのだが、勝利に結びつかなければまったく意味がない。クリストフは来年どうなることやら。ちなみにジロから連戦のキセロウスキーは、ジロ同様に地味に頑張っており、新チームでの相性は悪くなさそう。来年エースになるか??

 

 

FDJ ★★★☆☆

最後は3名だけになるという衝撃の展開。それでも1勝は大きい。そしてピノさんは、彼史上最も存在感が薄く、まさに何しにきた状態のままいなくなってしまった。来年はあえてのツールパスとかもありじゃないスか?

 

 

チーム・ロットNLユンボ ★★★★☆

プリモシュ・ログリッチェ  区間1勝(第17ステージ)

ディラン・フルーネヴェーヘン  区間1勝(第21ステージ)

ヘーシンクはリタイア、途中まで総合上位にいれたベネットも、あえなく途中離脱となってしまった。それでも、最後の最後できっちり2勝。ツールで2勝できればチームとしては十分だ。ログリッチェはもともと総合も期待されており、フルーネヴェーヘンもスプリントで十分活躍できると目されていただけに、3週目まで結果が出せずにいたことは本人たちはとても悔しかっただろうが、最終的にログリッチェは、ツールという大舞台でも見せつけられる実力があることを示し、フルーネヴェーヘンも、シャンゼリゼという夢の舞台を手中に収めた。これはもう上出来である。

しかもここ近年、シャンゼリゼ優勝者は最低でも2年連続で獲得している。そのジンクスがフルーネヴェーヘンにも適用されるならば、来年もきっと・・・。そうでなくとも、あの300mからの「ずっと先頭」は凄まじかった。グライペルもきっちり合わせてきたが、あれはもう、フルーネヴェーヘンが強すぎた。

 

 

バーレーンメリダ ★☆☆☆☆

大爆死3。ロット・スーダルとBMCも含め、赤いチームみんな爆死してるなぁ。トレックはまあ、それでもモレマが1勝してくれたけど。このチームはもう、新城がいるから日本では何となくそれでも存在感あったかもしれないが、彼がいなかったら本当何をしていたのかというレベルである。エースは一度も映らずに退場するし。ジロが想像以上に活躍していたし、しゃーない。

ディラン・トゥーンス、新生「激坂ハンター」?

ツール・ド・フランスの興奮冷めやらぬ中、アルデンヌ・クラシックの本場ベルギー・ワロン地方にて開催されている5日間のステージレース「ツール・ド・ワロニー」。

HCクラスに分類されているレースで、過去にはヴァンアヴェルマートやテルプストラなど、どちらかというと北のクラシックで活躍しがちなスプリンター系の選手が総合優勝を果たしている。

(上記2名以外にもボジッチ、ニッツォーロ、メールスマンなど)

 

しかし今年はクイーンステージとされた第3ステージにおいて、全長1km、平均勾配11%・・・おそらく、見た感じでは最大勾配も20%近くに達してそうな、そんな激坂「ウッファリーズ」頂上ゴールとなった。「ユイの壁」に匹敵する登りである。

今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでも通過した、ウッファリーズの激坂。上記の写真を見るだけでも、この異様な傾斜を推し量ることができるはずだ。

 

 

まさに、アルデンヌ色たっぷりのステージとなったこの日、見事を勝利を掴んだ人物が、ディラン・トゥーンスである。

今年のフレッシュ・ワロンヌ、「ユイの壁」にて、バルベルデ、マーティンに次いで3位となった男だ。

 

 

 

ディラン・トゥーンスの経歴

1992年3月1日。フランドル地方の南東部、ワロン地方との境目近くの町ディーストで生まれたトゥーンス。アラフィリップやイェーツ兄弟、ユンゲルスといった若きスターたちと同じ「92年世代」である。

 

18歳のときにジュニア版オンループ・ヘット・ニウスブラットで優勝した彼は、2014年にBMCの育成チームに加入。そしてBMC本体にもトレーニーとして参加することになるが、この年に彼はツール・ド・ラブニールで1勝。さらにツアー・オブ・ユタでも新人賞を獲得するなど才能の片鱗を見せつけていた。

 

2015年にBMCに正式加入した後、2016年には初のグランツールとしてブエルタに参戦。同世代のスターたちと比べ、決して早いとは言えないペースではあるものの、着実にキャリアを積み重ねつつあった。

 

 

そんな彼の名が世に轟くことになったのが、今年のフレッシュ・ワロンヌである。単独逃げを敢行していたボブ・ユンゲルスが登りの途中で捕まえられたあと、ネオプロのダヴィ・ゴデュやバルギルなどの若手が積極的に飛び出す混戦状態に。

そんな中、圧倒的な力を見せつけたのが、今年で4連覇&5勝を記録することになるアレハンドロ・バルベルデ。そして3年ぶり2度目の2位となったのがダニエル・マーティン

 

ディラン・トゥーンスは、その2人に続く3位。表彰台に立つこととなった。

 

 

そして、このときの激坂対応力がただの偶然ではなかったことを、今回のツール・ド・ワロニー「ウッファリーズ」の勝利で見せつけたトゥーンス。 

彼は第1ステージでも3位となっており、第2ステージを終えた段階でリーダージャージを着用している。現在、総合2位のトッシュ・ヴァンデルサンドとのタイム差は32秒。残る2ステージも、細かなアップダウンはあああるおのお、総合タイムを大きく落とすようなステージでもないため、このままトゥーンスが総合優勝を果たす可能性も十分にある。(変な逃げ切りが決まらなければ・・・)

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そもそも今回の勝利がプロ入り後初の勝利であったトゥーンス。当然ステージレースでの総合優勝も初めてとなる。しかもHCクラス。

今後、BMCにおいて、存在感を発揮するパンチャーとなることは間違いない。とくに、ヴァンアーヴェルマートが対応できないアルデンヌ2戦、すなわちフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュでは、サミュエル・サンチェスと並んでエース格での出場も可能となるだろう。

リエージュは2016年には17位。まずはTOP10に入ることが目標だ。

 

もちろん、やがてはグランツールでの勝利も期待したい。

もう1人の「トゥーンス」であるエドワードと、どっちが先に達成するか・・・。

 

 

 

「激坂ハンター」という称号(?)がある。かつてはホアキン・ロドリゲスなんかがよくその名で呼ばれていたような気もする。近年ではアレクシー・ヴュイエルモが2015年ツールの2つの「ミュール」で好成績を出したことでそう呼ばれるようにもなったが、今年のフレッシュ・ワロンヌでは結果を出せなかった。

(代わってツールでは山岳でバルデをよく助け、自身も総合13位に入るなど、新たな才能を発揮しつつあるのは喜ばしいことだ)

 

このディラン・トゥーンスが、新たな世代の「激坂ハンター」となれるか。

同世代に強力なアラフィリップもいるので、来年の「ユイ」では、この両者の直接対決を見るのが楽しみである。

 

 

  

フランスの若き才能たち in ツール・ド・ワロニー

ちなみに今回のワロニー第3ステージでは、もう1人、若手の注目選手であったアレクシー・グジャールが終盤に単独逃げを見せていた。一時は1分近いタイム差をつけたグジャールであったが、やはり最後の「ウッファリーズ」で力尽きる。

衝撃のブエルタ勝利を果たした2015年以来、2年ぶりの勝利まであと一歩というところまで迫ったものの、その夢は実現することはなかった。

だが彼はトゥーンスよりさらに1つ下の24歳。注目を浴びたのが早すぎただけで、彼もまた必ず、数年以来に再度浮上してくるだろう。逃げはいつも積極的なので、応援し続けていきたい。

 

 

一方、今年でまだ22歳という驚異的な若さで、このワロニー第1ステージとダンケルク4日間レースとで、今年すでにHCクラス2勝を果たしているのがベンジャミン・トマ。

彼が所属する「フランス陸軍チーム」こと「エキップシクリズム・アルメ・ド・テール」も、コンチネンタルチームでありながら今年すでに驚異の17勝目。昨年3勝しかしていないチームとしては恐ろしいほどのブレイクぶりである。 

相変わらずフランスは若き才能が生まれ続けている。

彼もその1人として、これからもしっかりと注目していきたい。

ワレン・バルギル、その実力と戦略

ツール・ド・フランス2週目も終わり、いよいよ勝負の3週目へと突入する。

しかし、ここまで全15ステージを終えて、総合上位4名が30秒以内に、総合9位までが5分台に収まっているという、稀に見る接戦となっている。その要因は、既に何度か言われているように、頂上ゴールや超級山岳自体の少なさなどを原因とした、低難易度化にあると言えるだろう。3週目もまた、山岳コース自体は2回しかなく、TTもそこまで長いわけでもないため、最後までこの接戦は続くかもしれない。

一方で、多くの有力ライダーたちが早々にツールを去ったことも、今大会の特徴と言えるかもしれない。この原因の限定は容易ではないが、今回の経験がより、今後の選手の安全確保、ルール運用の適切さを向上させ、自転車ロードレースという競技自体をより高いレベルに仕上げていく礎になればと思う。

アメリカを中心に、アシスト選手を評価する新たなテクノロジーの情報も出ているようで、サッカー等にも負けない、自転車ロードレースの競技としての価値の向上を期待している。

 

 

そんな、良いことも悪いことも溢れている今大会だが、2週目を終えた段階で、個人的に注目したい選手が1人いる。

 

それは、ワレン・バルギルという選手だ。2012年ツール・ド・ラヴニールで総合優勝し、キンタナ、チャベスに続く新たな才能として大きな期待をかけられながら、イマイチ結果を出し切れずにここまで来ていたこの選手。

 

今年はステージ優勝にシフトすると宣言しつつも、クリテリウム・ドゥ・ドーフィネではやはり山岳で失速する姿を見せ、いつも通り大した存在感も示せぬまま終わってしまうのではないかと、そんな風に思っていた。

 

だが、第8ステージ以降、山岳ステージで積極的な走りを見せ始め、第9ステージ終了後には山岳賞ジャージを着用。さらには第13ステージ、フランス革命記念日にて、13年ぶりのフランス人勝利を成し遂げる大快挙。

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なぜ、彼がこれだけの成果を突然に出すことができたのか。

その理由を、第8ステージ以降の彼の走りを振り返りながら、自分なりの結論を出してみたいと思う。

 

 

 

バルギルの経歴

ワレン・バルギルは、1991年10月28日に、フランスでも特に自転車が盛んな地域であるブルターニュの、エンヌボンという町で生まれた。

現在は25歳だが、今年で26歳なので新人賞の候補ではない。キンタナやチャベスサガンなど、多くの才能を生み出した「90年世代」からわずかに外れ、ボズウェルやウェレンス、ケルデルマンといった選手と同世代にあたる。

 

バルギルのプロ自転車選手としてのキャリアは、2011年に始まる。地元ブルターニュのチーム、「ブルターニュ・シュラー(現フォルテュネオ・オスカロ)」にトレーニーとして加入した彼は、その年のツール・ド・ラヴニールにて区間1勝・総合5位という結果を叩き出す。

更に翌年には現チームの前身となるアルゴスシマノにトレーニーとして加入。そしてラヴニール総合優勝という、彼の名を轟かすことになる成果を出したのである。

 

ツール・ド・ラヴニールは「若手の登竜門」と呼ばれる。とくにバルギル勝利の2年前、2010年にはナイロ・キンタナが、そしてその翌年にはエステバン・チャベスが総合優勝を果たしている。2人は現在なお各グランツールにおいて総合優勝を狙える実力をもった選手たちである。当然バルギルに対しても、同じような期待を抱かせる結果となった。

 

実際に、その可能性は十分にあった。たとえばチーム・ジャイアント・シマノの正式なメンバーとして迎え入れられた2013年シーズンは、ブエルタ区間2勝。さらに翌年の2014年シーズンではブエルタで総合8位となるなど、23歳という若さを考えれば十分すぎる結果を叩き出していた。

同じころ、同じラヴニール覇者であるキンタナが、ツールで総合2位、そしてジロで総合優勝を果たすなど大活躍。当然、バルギルに対する期待も高まる。キッテルとデゲンコルブという2大トップスプリンターを抱えるドイツチームであったこのチームでは、ツールはあくまでもステージ優勝を優先する、という方針ではあったものの、将来的に総合狙いへとシフトしていく際に、その一番槍として活躍するであろう選手として、大切に育てられていったようである。

 

そして2015年シーズン。いよいよ、ツール・ド・フランスへと乗り込むことが決まる。目指すは総合TOP10。その実力は十分にあるように思われた。ピノ、バルデと並ぶ「フランス人期待の星」として、彼は意気揚々とツールに乗り込んだのである。その年、24歳になる彼。すでにバルデが新人賞を獲得し、ピノが総合3位となった年齢である。

 

 

 

結果は、30分遅れの総合14位。

決して、悪くはない。ラ・ピエール・サン・マルタンでも3分遅れの15位。ラルプ・デュエズでも5分遅れの34位に抑えた。第18ステージまでは、総合10位前後をかろうじてキープすることもできていた。

 

しかし、この年のツールで彼は、総合順位とは別に、ネガティヴな評価を下されかねない失態を犯してしまう。すなわち、第16ステージ、ギャップへと向かうステージにおける、悪名高き下り「マンス峠」で起きた、ゲラント・トーマスに対する接触・落車誘発事故。

先輩であるナイロ・キンタナにも「戦う理由が何もないのに、総合争いをしている選手の中に入ってかき乱し、クラッシュを起こす選手がいる*1」と厳しめに批判されている。

翌2016年シーズンはツール・ド・スイスでこそ総合3位と健闘したものの、肝心のツール・ド・フランスでは総合23位。ブエルタに至っては第3ステージでいきなりリタイアとなってしまうなど、その勢いが徐々に失われていくことに。年初の交通事故も、その大きな要因であったのは間違いないだろう。

さらには、2015年のブエルタでトム・デュムランが総合系ライダーとしての才能を開花させたことも、バルギルのチーム内での立ち位置を危うくさせる状況にも繋がっていった。

 

果たして、バルギルは復活できるのか。それともこのまま、埋もれていってしまうのか。

ほぼ同じタイミングで総合系ライダーとしての実力が萎み始めていたティージェイ・ヴァンガーデレンと並んで、応援はしたいものの、期待を抱くことの難しい選手というイメージが強まっていった。

 

 

 

2017年、バルギルの再躍進

2017年シーズンに入って、バルギルは変わったのか。そんなことはないように思えた。パリ~ニースでは総合8位に入るが、これはポートやバルデなどの有力選手が序盤で遅れたり失格になったりしたことも要因として挙げられるだろう。バスク1周でも振るわず、ドーフィネでは山岳での大失速も経験した。やはり今年も、バルギルは期待できないのではないか。そんな風に思っていた。

 

だが、今年の彼は、例年とは違った目標も持っていた。それはすなわち、総合を狙うのではなく、ステージ勝利に焦点を当てる、というものである。

実際、それが許される環境に彼はいたように思う。すでにチームはジロで総合優勝を果たし、デュムランのおかげでバルギルに対するプレッシャーが小さくなっていたのは確かだ。

さらにステージ優勝に関しても、何がなんでも、というわけではなかった。キッテルやデゲンコルブが去ったものの、新たな実力者マシューズを迎え入れ、彼にエースナンバーを着せたことで、バルギルの立場は比較的軽いものとなった。

何よりも彼はまだ若い。

そして、サンウェブというチームは、彼に自由に走らせるだけの雰囲気を、チームの中で作ることができる、そんなチームであったことも間違いないだろう。

 

 

 

そしてバルギルは、動き出す。

最初の舞台は第8ステージ。アップダウンの激しい、ジュラ山脈のステージだ。

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今大会、最初の逃げ切り勝利を狙えるステージとして、序盤から積極的なアタック合戦が繰り広げられた。

そんな中、一度はヴァンアーヴェルマートやシャヴァネルら3名の逃げが形成されたものの、38歳ベテランルーラーのロイ・クルフェルスや、ジロでも活躍したシモン・ゲシュケなどのサンウェブの面々が中心となって、なんとかこの逃げを捕まえようと積極的な動きを見せていた。

 

彼らの第一の目標は、もちろんマシューズのポイント賞に向けたアシストである。逃げ3名を捕まえた状態で、45km地点の中間スプリントポイントに到達すること。その思惑通り、最初の逃げはスプリントポイント直前に捕まえられることとなった。

 

このあとも、マティアス・フランクなど4名が逃げを形成するが、これも最大で20秒ちょっとしかタイム差は開かず、やがて70km地点で再度吸収。

この直後に形成された50名近い大規模逃げ集団の中に、マシューズ、テンダム、そしてバルギルが入り込んだ。

 

50名の中からさらに16名に分裂した逃げ集団。テンダムと共にそこに入り込んでいたバルギルは、3級山岳ラ・ジュ峠の登りにて、パウェルスと共に飛び出した。

そしてパウェルスとの山岳スプリントを制し、先頭通過を果たしたバルギルは、下りの後に捕まえられた後も、続く2級山岳でも先頭で山頂を越えた。

 

 

合計で7ポイントを獲得したバルギル。しかし、この日はあまりに絶好調「すぎた」。それゆえに、「ちょっと攻撃的に走り回りすぎて、最後までもたなかった*2」。実際に彼は、最後の1級山岳の登りの途中で力尽きてしまう。

逆に後続集団から飛び出してきたリリアン・カルメジャーヌに追い抜かれ、彼に1級山頂の先頭通過を許してしまった。

 

そのままカルメジャーヌは逃げ切り優勝を果たし、さらには山岳賞ジャージも手に入れた。

 

 

つまり、バルギルは「タレ」てしまったのだ。

だがそれは、決して悪い結果ではなかった。

彼自身も、自分の足がここまで絶好調であることに、驚いていたに違いない。だからこそ、調子に乗って「バカみたいに」走ってしまったのである。

 

しかし、この好調が、なおも続きうることも同時に理解した彼は、翌日の第9ステージで、今度は少しばかりの「賢明さ」を加えて走ることに決めたのである。

 

 

 

第9ステージは今大会最難関(クイーン)ステージと言われた日。今大会、決して多くない超級山岳が3つも詰め込まれ、さらに2つの超級グラン・コロンビエは「最も厳しい登り」と言われたルート。最後の超級モン・デュ・シャも、全長9km、平均勾配10%超えという恐ろしいステージである。

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この日も序盤から激しい動きが巻き起こり、40名近い逃げ集団が形成される。サンウェブも、アルント、ゲシュケ、テンダム、マシューズ、そしてバルギルと、昨日よりもさらに多くのメンバーを逃げに入り込ませていた。とくにピュアスプリンターのはずのアルントさえも入れることで、マシューズの中間スプリントポイントを本気で狙う姿勢を見せたようだ。

とくにテンダムは、最初の超級山岳の麓からラスト1kmまで、集団の先頭を黙々と牽引する働きを見せる。

最初の超級山岳ラ・ビシェ峠は、ラスト1kmから飛び出したプリモシュ・ログリッチェが先着するが、バルギルはここで、「決して本気で踏むことなく」、3位通過で12ポイントを獲得した。

そもそも、最初の2級山岳も、やはり山岳スプリントには参加せず、ギリギリでポイントがもらえる4位に甘んじていた。「今日は賢く走った。昨日みたいに馬鹿な動きは繰り返さなかった。それに3級、4級の小さな峠では動かなかった。ただ大きな峠だけに、ひたすら集中したんだ*3」とゴール後に語っていたバルギル。その言葉通り、彼はじっくりと逃げ集団の中で機会を窺い、そして2つ目の超級山岳グラン・コロンビエでいよいよ、パンタノやログリッチェを引き千切っての先頭通過を果たした。

 

さらに最後の超級モン・デュ・シャ。先行していたギャロパン、バークランツの2人を、モレマと共に追走し、最後には抜き去ったバルギルはそのまま独走。ダウンヒルで独り抜け出したロマン・バルデに追い抜かれるも、それを追走するフルームら総合上位勢と合流したバルギルは、なんとか彼らに喰らいつくことに成功した。

 

そして彼は、ここでもまた「賢明さ」を発揮した。

すなわち、フルーム、アル、ウラン、フールサンといったメンバーと共にバルデを追走する中で、一切ローテーションに加わらない、すなわち「ツキイチ」を敢行したのである。

先頭を牽いていた選手が降りてきたとき、まるで疲れて遅れているかのような素振りを見せて、自分の前に選手を入れる、という手法。

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とはいえ、これは仕方ない。

何しろここまで、バルギルは独走態勢だったわけである。

さらに言えば、今彼がバルデを本気で追いかける必要性はそこまで高くない。

総合争いはしているわけではないし、山岳賞も確定した今、ステージにこだわる必要は少ないのである。そこで自ら進んで総合勢を助ける必要性は薄い。

 

そんな中、しっかりと足を貯めることができたバルギルは、最後のスプリント争いで、見事ほかの選手を差し切って優勝を決めた。

・・・と思ったが、ギリギリでウランに差されてしまったようだ。

それでも、ツキイチの結果とはいえ、勝利まであと一歩、というところまでいける走りを見せてくれた。あの山岳での独走の末に。

 

バルギルは明らかに、これまでの彼にはないレベルのコンディションに達していた。

 

 

 

このコンディションは、休息日が明けた第2週になっても続いた。

第13ステージ。今大会の目玉の1つでもあった、「101km超短距離山岳ステージ」である。超級山岳こそないものの1級山岳が3つ。しかも最後の1級山岳は後半、13%を超える激坂区間が連続する「ミュール」である。

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この日、バルギルはヴォクレールと共にファーストアタックを決めた。これはあえなく吸収されるものの、続いて逃げにのったメンバーの中からアレッサンドロ・デマルキが最初の1級山岳を先頭通過したとき、後続のプロトンから飛び出したバルギルが、そのまま2位通過を果たすこととなる。

 

この動きに呼応して飛び出したコンタドール、ランダ、そしてキンタナがバルギルと合流する。2つ目の1級山岳はそこから更に飛び出したコンタドールとランダが先着するも、追走を仕掛ける集団の中でバルギルが先頭を獲り3位通過を果たす。

 

そして最後の1級山岳「ミュール・ド・ペゲール」。その登りの大半をキンタナに牽かせつつ、最後の2kmでバルギルが前に出て、先頭のコンタドールたちを追い抜き、そして最後の1級山頂も獲得することとなった。

 

ラスト2kmは、13%の勾配が延々と続く激坂区間。本来であれば、キンタナやコンタドール、そしてペイラギュードの登りで力を見せつけたランダが、得意とするはずの勾配であった。しかし、この日、この激坂で最も強かったのがバルギルだった。彼は、トップクライマーたちと張り合うだけの走りを、この日見せたことになる。

 

 

そして、プロトンに追い付かれる可能性もなくなった4名による、ステージ優勝を巡る戦い。

ここで見事、勝利を掴んだのがバルギルだった。

13年ぶりの、フランス革命記念日におけるフランス人勝利

彼にとっても、当然初となる、ツール勝利であった。

 

もちろん、この日もややツキイチ気味だったのは否めない。3番目の位置にいながら、先頭交代して降りてきたランダの後ろに入り込むなど、やや露骨な場面も目立った。

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独走の末、総合勢に混じっての逃げであった第9ステージと比べると、この日のツキイチはやや、擁護しづらいものではある。

もちろん、暗黙の了解が全て正しいとも思わない。勝つためにクレバーに動くことが正しいときもある。

しかしまあ、とりあえず1勝はしたので、次の勝利はもう少しスマートにやってほしいものだ、と思わなくもない。

(この点、反論・異論あればぜひコメント等で!)

 

 

逆にこの日のランダは、登りでひたすらコンタドールの前を牽いたり、最後のスプリントでも残り500m、コンタドールが飛び出すまで黙々と先頭を牽いたりと、献身的な態度が目立った。最後にスプリントする足など、残っているはずがない。

逆にエースとして走る性格じゃなさそうだなぁ、という痛感する次第である。

 

 

 

まとめると、バルギルという選手が、今大会において山岳賞とステージ1勝を手に入れることのできた秘訣は何か、というと、アタックすべきところでアタックする、という選択の賢明さがまず第一に挙げられる。第15ステージでも、最後から2番目の1級山岳の先頭通過を終えたあとは、それ以上欲張ることをせず、後続が追い付いてくるのを待つ姿勢を見せた。山岳賞のキープのために必要な努力だけをして、それ以上をしない姿勢。1勝したことで、その徹底ぶりが際立ったようだ。

そして勝つために身を潜め、チャンスを窺う「賢明さ」も持ち合わせている。いずれにせよ、自らの力の限界を知り、それを最大限に活かせる方法を模索する姿勢は、もはや若いとは言えないだけのモノがある。

 

もちろん、第13ステージで見せたように、厳しい山岳地帯を誰よりも巧みに登るだけの足、体力、そしてそれだけの走りのあとにスプリントで他を圧倒する力、すべてがトップレベルであったことも間違いない。

 

 

 

バルギルの今後

さて、バルギルは今大会、山岳賞ジャージをパリに持ち帰ることができるのだろうか。

現状の山岳賞ポイントを確認すると以下の通りである。

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バルギルが圧倒していることがわかる。

 

ちなみに今後の山岳賞ポイントは以下のようになっている。

 

第16ステージ・・・3級&4級:合計3ポイント

第17ステージ・・・2級&超級&1級&超級:合計55ポイント

第18ステージ・・・3級&1級&超級(2倍):合計52ポイント

第19ステージ・・・3級×3:合計6ポイント

 

となっている。

グリッチェとデヘントが、バルギルとは80ポイント差なので、バルギルがまったく逃げに乗れなかったと仮定しても、第17・第18でともにポイント収集に必死にならなくてはならないことがわかる。

しかも、総合系が獲る可能性の高い第18ステージの超級山頂も、少なくとも上位で取る必要があるため——正直、バルギルが山岳賞を失う可能性は、彼が体調不良などでシャンゼリゼに辿り着けない、というパターンしか考えられなさそうだ。

 

 

どうやら、バルギルはしっかりと、結果を残して今年のツールを終えられそうだ。

 

 

 

では、ツールの後の彼は何を目指すべきだろうか。

彼は今年、ステージを狙う、という言葉と共に、「アルデンヌを狙いたい」という言葉を残していた。

実際、今年のフレッシュ・ワロンヌでは6位。昨年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでは6位と悪くない結果を出している。来年もアルデンヌを狙う、という方針は変わらないだろう。

しかし、アルデンヌに関して言うと、チームメートにマシューズがいるため、バルギルだけが単独エースというのは難しいだろう。狙えるとしたらフレッシュ・ワロンヌくらいか。

一方、この秋の目標という意味でも、イル・ロンバルディアは十分に可能性がある。昨年も8位。イル・ロンバルディアのような、そこそこに難易度の高い山が複数回出現するレイアウトは、山岳賞を取れる選手が得意とするものである。最後が小集団スプリントになる可能性が高いのも、今大会で勝利相当の走りを2回見せたバルギルには向いていると言えるだろう。

今大会の調子を維持することができれば、今年のロンバルディアには大きな期待を抱くことができるだろう(たださすがにツキイチはダメだよ!)。ケベックモントリオールもアルデンヌ風のレースなので期待できそう。

 

なお、2014年にはストラーデ・ビアンケでも8位を獲っている。デュムランもいるので難しいが、こちらで勝利を狙う可能性も、来年はあるかもしれない。

 

 

 

総合、そして山岳賞についてはどうだろう。

今大会の走りを見て、連日の山岳ステージを逃げ続けるスタミナがあることはよくわかったので、今後も山岳賞狙いで走るというのは十分可能そうだ。

スタミナがあるならば総合も、と考えたいところだが——出し抜くよりも落とさないことを重視する総合的な走りは、プレッシャーに弱くあり続けてきたバルギルには向いていないような気はする。むしろデュムラン等のアシストとしての活躍に期待したいところ。

ただ、デュムランが出場しないジロかブエルタあたりで総合を狙う走りは見てみたい気がする。ジロは未経験のようだが、割と相性が良い気はする。

 

 

ワレン・バルギル。

かつて期待され、失望された、やや古くなってしまった「フランス期待の星」。

だが、このツールで、再び輝く走りを見せてくれたことは、1人のファンとしては嬉しい限りだった。

そして彼を支えてくれた、テンダムやマシューズを始めとしたチーム・サンウェブの強さにもまた驚かせてもらった。

 

チームとしても今後が実に楽しみである。