りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

DVVトロフェー第4戦「シュヘルデクロス」 スーパープレスティージュ第5戦「ゾンホーヴェン」

1ヶ月近い大型レースの休止期間を挟み、いよいよトップ選手たちも戻ってきての本格的なレースが再開された。

12/15・12/16の土日に開催されたDVVフェルゼクリンゲン・トロフェー第4戦「シュヘルデクロス」およびスーパープレスティージュ第5戦「ゾンホーヴェン」をレビュウしていく。

 

DVV第4戦「シュヘルデクロス」

DVVフェルゼクリンゲン・トロフェーは、他2つのシリーズ戦と違い総合タイム差によって順位がつけられるシリーズだが、前回の第3戦「フランドリアンクロス」にて、4分差あったタイム差を一気に2分差にまで詰めたマチュ―・ファンデルポール。

今回の「シュヘルデクロス」にて、このタイム差をどれだけさらに詰めることができるか、そして総合首位のトーン・アールツは、どれだけこれを守り切ることができるか、という点に注目が集まった。

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DVVフェルゼクリンゲン・トロフェー 第3戦までの総合順位

川沿いの長いサンドセクションが特徴の「シュヘルデクロス」。

 

スタートダッシュで先行したのはいつも通りファンデルポール。しかし今日はそこにアールツがきっちりと喰らいつく。

その後も何度かアタックしようとするファンデルポールに対し、遅れずについていくアールツ。彼が先頭に出た後もペースが上がり、マイケル・ファントーレンハウトやワウト・ヴァンアールトらは遅れを喫してしまう。

アールツの狙いは、2周目に設定された15秒のボーナスタイムであった。これを取られてしまったら、より逆転の可能性が高まってしまう。逆に自分がそれを取ることができれば、首位を守る可能性を広げることができる。

アールツの狙いは成功した。2周目まで彼の積極的な動きは続き、ボーナスタイム15秒を獲得。ファンデルポールは2位でこのポイントを通過し、10秒のボーナスタイムを獲得。アールツとファンデルポールとのタイム差が5秒、開いた。

 

ひとまず目的を達成したアールツはペースダウン。ファンデルポールも同様に足を止め、後方よりヴァンアールト、ファントーレンハウトらが追いついてくる。

だが、その後はいつも通りの、ファンデルポール独走だった。

ファンデルポールのアタックの瞬間、アールツは手も足も出なかった。序盤で力を使い過ぎたのか。ヴァンアールトが焦ってこれに喰らいつこうとするが、しかしすでに勢いのついたファンデルポールを止めることはできなかった。

 

結局、ファンデルポールがヴァンアールト、アールツらに1分以上のタイム差をつけて勝利。

ボーナスタイムによる5秒のリードが焼け石に水のような結果となってしまった。

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DVV第4戦「シュヘルデクロス」リザルト

 www.youtube.com

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DVV第4戦までの総合順位

DVVフェルゼクリンゲン・トロフェーはあと4戦。

このまま大きな問題が発生しない限り、ファンデルポールの逆転勝利はほぼ確実といったところか・・・。

 

 

スーパープレスティージュ第5戦「ゾンホーヴェン」

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泥の激坂が特徴のゾンホーヴェンに、薄い雪が積もった。

 

リエージュ北、オランダ国境にも近いゾンホーヴェン(ゾンホーフェン)。

氷点下近くまで気温が下がり、土の上にはうっすらと積雪が見られる。試走やジュニア、女子レースの末にライン上の雪は解け、ドロドロになった地面が自転車の動きを制限し、落車を多発させた。

ただでさえ名物の泥の壁、落車必至の泥のハイスピードダウンヒルが特徴のこのステージの難易度がさらにぐっと上がった形だ。

 

スタートと共に飛び出したのはコレンドン・サーカスのマチュ―・デイヴィットのファンデルポール兄弟とトム・メーウセン。

弟とチームメートが後続に蓋をしている間に1周目から早くも抜け出したファンデルポールが早くも勝負を決定づけた。

ワウト・ヴァンアールトとラース・ファンデルハール&トーン・アールツのテレネットコンビが追いかけるも、勝負にすらならなかった。

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この日も圧倒的な強さを見せつけたファンデルポール。

 

 

スーパープレスティージュはポイント制で、かつここまでファンデルポールが全勝しており、もはや逆転はあり得ないというような状況。

ファンデルポールも1周目からトリックを見せるなど、余裕を醸し出しており、正直、レースとしては何の面白みもなかったな・・・。

 

気になるのが、今期期待していたトーマス・ピドコックが下りで落車する姿を見せるなど、最近あまり調子の良いところを見れていないこと。

U23カテゴリで出場しているUCIワールドカップでは余裕で勝っているし、単に19歳でエリートに参戦しているだけ凄いという話なんだとは思う。結局この日は14位でゴールしてるし、総合成績も11位だし、実際、悪くはないんだし・・・。

 

逆にヨリス・ニューウィンハイスは安定して10位以内でゴールしており、来期サンウェブでロードを走るときが非常に楽しみである。

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激坂を登るニューウィンハイス。

 

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SP第5戦「ゾンホーヴェン」リザルト

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SP第5戦までの総合リザルト

 

 

来週12/23(日)はUCIワールドカップ第6戦「ナミュール」。

トーン・アールツがギリギリで総合首位を守り切れるか、それとも連戦連勝を重ね、こちらでもファンデルポールが逆転総合優勝を飾ってしまうのか。

今、最もアツいシリーズ戦がこのUCIワールドカップだ。

 

また年末は

と短い間隔でシリーズ戦が次々と開催される。

1/1にはDVVトロフェー第6戦「GPスヴェンネイス」も。

 

年末年始もシクロクロスで堪能し、新たなシーズンの開幕に備えよう!

Team Dimension Data 2019年シーズンチームガイド

読み:チーム・ディメンションデータ

国籍:南アフリカ

略号:DDD

創設年:2007年

GM:ブライアン・スミス(スコットランド

使用機材:BMC(スイス)

2018年UCIチームランキング:18位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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カヴェンディッシュ・ファミリーは無事残留するものの、多くの新加入選手を迎え、小さな生まれ変わりを見せているディメンションデータ。

とくに、ガスパロット、クロイツィゲル、ヴァルグレンの3名はいずれもアルデンヌ・クラシックで大きな成果を挙げている実力者であり、アルデンヌでの上位獲得を目指し、万年UCIランキング最下位からの脱出を狙う強い意志を感じとることができる。また、ニッツォーロの加入は、カヴェンディッシュだけに頼らないスプリンター強化への狙いを感じさせる。バクも元グライペル親衛隊の1人であり、スプリンター強化の一環と言えるだろう。

若手も数名獲得。とくにマーダーは2018年のツール・ド・ラヴニールでも活躍したスイス若手期待の星である。彼とウィスの加入は、やはりバイクサプライヤーがBMCに変わったことによる影響?

退団選手では引退のアントン含め、比較的登れる選手たちが多く去っているのが気になる。スウェイツは落車もあってか自転車業界からの完全引退を発表しており、それ以外の選手は現時点で行先不明。デベセイは期待されていたエリトリア人ライダーだったのだが・・・ランカウイでの骨折が響いたか。同じエリトリア人としてはダニエル・テクレハイマノも行先不明となっており、いくらアフリカ人への支援厚いディメンションデータとはいえ、プロの世界は厳しいということを思い知らされる。

 

 

注目選手

ベンジャミン・キング(アメリカ、30歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

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かつては逃げスペシャリストとして、2016年のツアー・オブ・カリフォルニアにおける鮮やかな逃げ勝利も記憶に新しい。国内選手権ではロード優勝に加えて、個人TT2位の記録ももち、独走力は十分に高い選手だ。

そして、2018年ではブエルタ・ア・エスパーニャの山岳ステージで2度にわたる逃げきり勝利を果たした。これにより、単なる平坦エスケーパーとしてだけでなく、山岳エスケーパーとしての可能性を大きく広げたこととなる。チームとしては、さすがに引退も近づいているであろう、スティーヴン・カミングスの後継者といったところか。

2019年も、ステージレースでの総合争い、というのはさすがに厳しいし、各種クラシックでの成績、というのも望むのは難しいかもしれないが、積極的な逃げで勝利を掴む姿勢を見せ続けてほしいところ。目指すは、ツールでの逃げ切り勝利だ!

 

 

ミケル・ヴァルグレン(デンマーク、27歳)

脚質:パンチャー

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2018年の主な戦績

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オムロープにおける再三・再四のアタックはついに実り、「最強」でない男が勝利を掴んだ。

しかし、まさかその後も、次々と成果を出すとは思わなかった。アムステルでは、2016年にゴール直前で焦り過ぎてしまったがゆえの敗北への、リベンジを果たした。カナダ2連戦や世界選手権ロードレースでも上位に入り込み、基本的にはパンチャータイプの脚質をもってはいるが、先のオムロープやロンド・ファン・フラーンデレンでも成績を出しており、フランドルからアルデンヌまで、クラシック全体を得意とするスペシャリストである。その意味で、ジルベールやヴァンアーヴェルマートに近いタイプの選手と言えるだろう。

アルデンヌに関してはクロイツィゲルやガスパロットもいるため、唯一のエースというわけにはいかないだろうが、北のクラシックでは他に匹敵する選手がいないため、必然的にエースを任される可能性は高い。

 

 

ロマン・クロイツィゲルチェコ、33歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

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アムステルゴールドレースではヴァルグレンの後塵を拝した。しかし、アルデンヌ・クラシック全体における安定感はより高く、世界選手権ロードレースでもヴァルグレンの上をいった。基本的に登りはクロイツィゲルに分があり、石畳などが加わるとヴァレグレンが上を行くといったところか。

だがいずれにしても、2019年のディメンションデータにおけるアルデンヌ・クラシック(およびイル・ロンバルディアなどクライマー向けワンデーレース)は、この2名にガスパロットを加えた3名のいずれかが勝利を狙う体制でいくことになるだろう。いわばトリプルエース。果たしてうまくいくかどうか。

またクロイツィゲルは、ディメンションデータが不得意とするステージレース総合上位を担うことも期待されているかもしれない。古くより、コンタドールやイェーツ兄弟など、その時代のトップスターたちを支え続けてきた名アシスト。自らも10年前にはツール・ド・スイスツール・ド・ロマンディでの総合優勝を成し遂げている。

まだ33歳。隠居するには早すぎる。新たな舞台で、久方ぶりに主役としての活躍を見せられるか。

 

 

その他注目選手

アマヌエル・ゲブレイグザブハイアー(エリトリア、25歳)

脚質:クライマー

その独特な名前でブエルタ中継において注目を集めた、声に出して読みたいゲブレイグザブハイアー。

ただ、単純に走っているだけではそこまで注目されなかっただろう。実際彼は強かった。マイケル・ウッズが執念の激坂登坂を見せた第17ステージ「バルコン・デ・ビスカヤ」では逃げに乗り、最終的にも48秒遅れの7位でゴールしている。最初、26名いた逃げ集団の中で吸収されずに残ったのは13名のみ。デマルキやザッカリン、ヘスス・エララダの前後でゴールし、ニバリやクドゥスよりも前でゴールした。

そもそも、2018年シーズンが彼のプロ1年目であった。1年目でありながらクリテリウム・ドゥ・ドーフィネやブエルタに出場を許されるほど、彼は期待されている人物であると言うこともできる。まだまだ覚醒しきれていないところもあるだろうが、これから注目すべき選手の1人である。

なお、2018年はアフリカ大陸選手権においてロード・ITTともに制している。

 

ベン・オコナー(オーストラリア、24歳)

脚質:クライマー

プロデューを果たした2017年は、ツアー・ダウンアンダーの顔見せクリテリウムにて果敢に逃げに乗り、単独になってからも粘り強い走りを見せてくれたのが印象的だった。そのときはオーストラリア人によくいるようなルーラータイプなのかな、と思っていたが、2018年に彼は一気に登りに対する適性を見せてくれた。

まずはボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ。クイーンステージとなった第4ステージ、激坂モンジュイックの丘を8回登る難ステージである第7ステージそれぞれで好走を見せた彼は、最終的に総合11位でフィニッシュする。

そして4月のツアー・オブ・ジ・アルプスでは山岳ステージでプロ2勝目も挙げ、新人賞を獲得。総合成績でも7位と健闘した。

そして、初のグランツールとなったジロ・デ・イタリア。終盤の山岳ステージでも総合上位勢と並んでゴールすることを繰り返し、総合12位という好成績のまま、ローマに到達しようとしていた。第19ステージのフィネストーレの下りで、激しい落車に見舞われさえしなければ・・・。

リッチー・ポートの次に来るオージーオールラウンダーは果たして誰? ヘイグ? ハウスン? その次くらいの候補としては、このオコナーが来るはずだ。2019年も彼から目を離すべきではない。

 

ジノ・マーダー(スイス、22歳)

脚質:クライマー

2018年のツール・ド・ラヴニールで2勝。いずれも厳しい山岳ステージであった。第8ステージは逃げ切りで、第10ステージは6名に絞られた小集団スプリントを制した。

同じスイスの若手としては、パトリック・ミュラー、そしてマルク・ヒルシという選手もいる。インスブルック世界選手権U23ロードレースでは、彼らとコンビネーションを組んだうえで、優勝こそヒルシに譲るものの自らも4位、さらにミュラーも9位と、スイス連合の圧倒的な強さを見せつけた。

ヒルシは2019年はサンウェブ、ミュラーは2018年同様ヴィタルコンセプトで走ることが決まっており、2020年代の山岳ステージでは彼らスイスの若手たちの存在感が光ることだろう。

 

 

総評

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強化したアルデンヌ・クラシックでしっかりと結果を出せるか。そしてその先に、UCIランキング最下位からの脱出は果たせるか。北のクラシックでも、ヴァルグレンの頑張り次第である。

あとはカヴェンディッシュ、ボアッソンハーゲン、そして新加入のニッツォーロを中心に、スプリント勝利をどれだけ稼げるか。ステージ勝利という観点だけなら、キングやスラフテルの実績があるほか、ガスパロットもアタッカーとしては頼りになる存在なので、それなりに稼げる可能性はある。

グランツールはメインチェス次第。かつてはアフリカ勢初のツール特別賞ジャージの可能性を感じさせた男だっただけに、2018年の失速は残念。復活なるか。

Movistar Team 2019年シーズンチームガイド

読み:モビスター・チーム

国籍:スペイン

略号:MOV

創設年:1980年

GMエウゼビオ・ウンスエ(スペイン)

使用機材:Canyon(ドイツ)

2018年UCIチームランキング:8位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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話題を呼んだトリプルエース体制は(予想されていた通り)失敗に終わり、むしろソレルやカラパスといった若手の台頭が目立った2018年シーズンだった。

彼らは自身の成績だけでなくグランツールでのアシストとしての働きも目を瞠るものがあり、モビスターの将来を期待させてくれる存在であった。

いや、将来だけでなく、すでにして戦力である彼らの存在を考えると、モビスターはもはやトリプルエースではなくクインタブルエースと言ってもいい。それほどの布陣である。

とはいえ、ヨンが移籍したように、彼らもまた、チームのエースとして育ちきる前にチームを去る可能性もあるため、その辺りはきっちりとケアしておかなければならないだろう。

 

2019年のグランツールではトリプルエースという無茶な体制はとらない予定。

とりあえずジロにランダとバルベルデ、ツールにランダとキンタナ、そしてブエルタにキンタナとバルベルデが出場する、という予定らしい。

ジロにはカラパスの出場も予定されており、かなり強力。うまくいけば、全グランツールで表彰台にモビスターの選手が登る可能性も。

やはりモビスターが強くなくてはグランツールは面白くない。最強格チームの、大いなる復活を期待している!

 

退団選手のうち、ハイメ・ロソンに関しては、ティレーノ~アドリアティコ総合8位など、ソレルらと並ぶ将来有望なステージレーサーとして期待されていたが、6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ出場直後に生体パスポート分析違反により暫定的サスペンドが報道されて以降、情報なし。

www.cyclingnews.com

 

 

注目選手

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)

脚質:オールラウンダー

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2018年の主な戦績

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プロ18年目にして最高の成績を叩き出した。

12回の挑戦、6回の表彰台を経て、ようやく掴み取った世界王者の座。

しかしそれだけではない。ワールドツアー7勝を含む年間14勝は、2004年の15勝以来の記録で、しかも勝ったレースの格は当時よりも断然高いものが多い。

この人は衰えというものを知らないのか。

 

また、ストラーデ・ビアンケ4位というのも驚きの結果であった。

確かにこのレースはアムステルゴールドレースと似て、フランドルとアルデンヌクラシックの中間のような存在ではあり、バルデやデュムランも高い成績を出せるレースではあるが、それでもあの未舗装路レースでよくも、という印象である。さらにはもっとフランドル寄りのドワースドール・フラーンデレンでも悪くなかったのだから本当に凄い。

2019年もストラーデ・ビアンケには出場予定。また3年ぶりにミラノ~サンレモにも出場予定。このレースでも十分勝てる可能性はあるので、期待しておきたい。

 

グランツールに関しては、これまた3年ぶり2回目のジロ出場を予定。カラパス、ランダと共に。

アシストとしては最強なランダとの協調がうまくいけば、総合優勝候補筆頭に躍り出る。もしこれを果たせば、当然ジロでは史上最年長での総合優勝となり、3大ツールにおいても、ブエルタのクリス・ホーナーに次ぐ記録となる。

さすがに無理?? いや、無理を可能にするのがこの男である。

 

 

ナイロ・キンタナ(コロンビア、29歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

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何をしてもうまくいかない、そんな状態が続いている。2017年はそれでも、ティレーノ~アドリアティコ総合優勝などはあったものの、2018年は総合優勝なし。勝利自体も2つだけと、2012年モビスター加入以来、最も実績の薄い年になったと言えるかもしれない。

もちろん、スイスやツールでのステージ優勝時のアタックのキレは、彼の復活を予感させるようなものだったし、ブエルタも第17ステージで崩れたものの、その後は逆にバルベルデを支える側に回ってからの調子の良さを見せていた。しかし、うまくいかない。噛み合わない感じがあった。

2019年も2018年と同様にツール集中型のスケジュール。また、ランダも出場予定ではあるものの、彼は先にジロを走ってからの参戦。一応、キンタナの単独エースと見ることもできるような体制である。

とはいえそれも、ツールまでの成績次第と考えることができる。現時点では1月のサンフアン、2月のコロンビアに出場予定とのことなので、まずはこのあたりの小さなレースでしっかりと結果を出したいところ。

 

 

ミケル・ランダ(スペイン、30歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

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決して調子の悪いシーズンではなかったはずだった。バスクとツールではキンタナ以上の成績を出していた。

しかしツール第9ステージでの落車があったり、何よりも、クラシカ・サンセバスティアンでの大規模落車によって、その後のシーズンを棒に振るなど、実力を発揮しきれずに終わったシーズンだった。

それゆえに、2019年シーズンに関しては、実はキンタナ以上に期待をしている。今回はトリプルエースという不安の残る体制ではなく、まずはまっすぐジロを目指して走ることになる。相棒はバルベルデで、彼なら競合することはあまりないだろう。不運さえなければ、十分に総合優勝を狙えるはずだ。

問題は、個人TTの不安定さ。決して常に弱いというわけではなく、思いのほか強さを見せるときもある。しかし、悪いときは滅法悪いのだ。

2018年のツール・ド・スイスでも、最終日の個人TTで優勝者キュンから3分以上遅れ、総合7位から16位に一気に転落した。キンタナも総合2位から3位へと転落したものの、それ以上のインパクトであった。

2019年ジロは個人TTの総距離が長いので、その点が不安である。やっぱり、バルベルデの方が可能性があるかも?

 

 

その他注目選手

マルク・ソレル(スペイン、26歳)

脚質:オールラウンダー

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2015年ラヴニール覇者にして、2018年パリ~ニース総合優勝者。そしてツール・ド・フランスではトリプルエースをきっちりとアシストしきった。順調な成長を見せており、すでにして他チームであればエースを任されてもおかしくないほどの逸材だ。

何より、個人TTの能力の高さが、キンタナやランダにはない魅力だ。ツール第20ステージ9位、パリ~ニース第4ステージ2位。安定しているというのも重要なポイントだ。

2019年出場レースは現時点ではまだ決まっていないが、ジロにカラパスが出る予定なので2019年ももしかしたらツールに出場することになるかも。アシストとしての活躍がメインになるとは思うが、その中で彼自身の総合成績をどこまで伸ばせるのかに注目していきたい。

 

リチャル・カラパス(エクアドル、26歳)

脚質:クライマー

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ジロはエースとして出場し、総合4位。ブエルタではキンタナとバルベルデを支えつつ、自らも総合18位。またパリ~ニースではマルク・ソレルの総合優勝を支える決定的なアシストをしながら、自らも総合11位に入り込んだ。

2019年はランダ、バルベルデと共にジロ出場予定。ダブルエースに加えて前年総合4位に全面的にアシストを任せることができるモビスターが、2019年ジロ最強チーム候補なのは疑いようがないだろう。

地元エクアドルの英雄にもなったことだろう。しかし、間違っても調子に乗ってハイウェイを逆走したりしないように。

 

エドゥアルド・プラデス(スペイン、32歳)

脚質:パンチャー

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現チームUKYO所属のベンジャミン・プラデスの弟。彼自身も2014年に1年だけ、マトリックス・パワータグに所属しており、南魚沼ステージで勝つなどの足跡を残している。

その後はカハルラルに移籍し、2018年はエウスカディ・ムリアスに所属。そして大ブレイクした。

ブエルタ・ア・エスパーニャではバルベルデサガンと並んで登りスプリントで争う姿を見せる。ツール・ド・ヨークシャー総合2位、ツアー・オブ・ノルウェー総合優勝など、正統派パンチャーとしての実績を挙げていく。

そしてツアー・オブ・ターキーでの総合優勝。そのスプリント力を活かし、ステージ上位を連発。ボーナスタイムと着順総計により、同タイムでアレクセイ・ルツェンコを破った。まるでアラフィリップやバルベルデのような勝ち方である。

2019年もグランツールというよりは、パンチャー向けステージレースやあるいはアルデンヌ・クラシックでの活躍を期待したい。2018年のモビスターが一部の選手に集中していたステージ優勝を稼ぐ役割を担ってもらいたい。

 

 

総評

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思い切りが良いくらいにグランツール/ステージレース集中型。スプリントを含むステージ優勝およびアルデンヌ・クラシックの実績もほとんどがバルベルデ頼りなので・・・そのあたり、新加入のプラデスあたりがうまくカバーしてくれるといいのだが。

まあ、このチームに関しては多少偏っても良い。とにかく、圧倒的に豪華な面子でまずは2019年のグランツールを席巻してしまおう! チーム・スカイの今後が不透明?それでロードレースが面白くなくなるかも、と思われるんだったら、このモビスターやアスタナが2019年のうちにスカイを倒してしまえば良いのである。

北のクラシックは・・・あれ、2018年最も良い成績を出しているのがこれもバルベルデだぞ・・・?

Mitchelton-Scott 2019年シーズンチームガイド

読み:ミッチェルトン・スコット

国籍:オーストラリア

略号:MTS

創設年:2011年

GM:シェイン・バナン(オーストラリア)

使用機材:Scott (スイス)

2018年UCIチームランキング:5位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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ユワン、クルーゲを放出し、より一層、総合系に集中する体制を目指す2019年のミッチェルトン・スコット。とはいえ、アルバジーニ、インピー、メスゲッツ、トレンティンと、十分に勝利を掴めるスプリンター/パンチャーの数は揃っており、とくにピュアスプリントとはいかない難しいレイアウトのスプリントでは他チームと比べても高い勝率を誇ることができるだろう。

逃げ切りを狙えるルーラータイプについても、バウアー、ビューリー、マイヤー、ユールイェンセンなど豊富。確かに強くなったとはいえ、ガチガチの総合系しか狙わないお堅いチームというわけではなく、観るものを沸き立たせる大逃げ勝利への期待も十分に孕んだチーム構成と言えるだろう。

ベイビー・ジロのプロローグ勝利のアッフィーニや、3年連続国内U23ITT王者のスコットソンなど、新加入の若手もミッチェルトンらしいTTスペシャリスト。なお、ロバート・スタナードもほぼネオプロだが、厳密には2018年の途中から「正式加入」扱いのため、新加入選手とはみなさず。U23ロンバルディアの覇者で、将来的にはチームのグランツールエース候補として育成が進められることだろう。

 

 

注目選手

サイモン・イェーツ(イギリス、27歳)

脚質:クライマー 

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2018年の主な戦績

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アグレッシブな走り、というのが今年のサイモンの特徴を一言で表した言葉だ。そもそもアダムともども、過去の彼らの勝利は常に、混戦の中で鋭い一撃を繰り出してチャンスを掴む、アタッカーのような走り方の末に手に入れたものだった。

そのスタイルは、グランツールでも変わらず。ジロ・デ・イタリア第6ステージのエトナ火山ではチームメートでエースのチャベスが前にいるにも関わらず、残り1.5kmから飛び出して、そのままチャベスに追い付いてのワンツーフィニッシュ。その後もマリア・ローザを着ながらの積極的な攻撃で、ハットトリックを達成した。

ツール・ド・ポローニュでは、39秒遅れの総合9位で迎えた最終ステージで、残り10kmから単独でアタックを敢行。最終的に総合首位のミカル・クヴィアトコウスキーを抜くことはできなかったものの、一気に総合2位に登りつめた。

 

だが、ジロのリベンジを狙うブエルタ・ア・エスパーニャでは、そのアグレッシブさを幾分か抑えることとなった。

サイモンが勝利出した第14ステージ「レス・プラエレス」では、残り4kmからアタックしたクラウスヴァイクらを、集団先頭で追いかけつつも、適切に力をセーブする様子を見せた。その後もキンタナやロペスがアタックを行うが、すぐさま反応することはなく、ラスト1.2kmでブリッジ。そして残り750mで決定的な攻撃を仕掛けた。ジロのときのように鋭い一撃でライバルたちを突き放すのではなく、可能な限りを力を使わずにおきながら勝負を制するタイミングを狙った攻撃の仕方を身に着けていた。
suzutamaki.hatenablog.com

それはチームも同様だった。第2週まではそこまで存在感を示さなかったアシストたちが、3週目になって最も重要な局面でその実力を示し始めた。チーム一丸となってジロの失敗の繰り返しを避け、確実に勝利を掴むための戦略を練っていたことがわかる。

 

この意味で、サイモンとミッチェルトン・スコットは、わずか1年にしてグランツール優勝候補チームの筆頭に躍り出た。もはやまぐれではなく、2019年もまた、彼らが大きな成果を上げることが必然のように思える。

まずはジロ。ライバルも決して少なくなく厳しい戦いになることは間違いないが、これをサイモンが制することは十分に期待できるだろう。

 

 

アダム・イェーツ(イギリス、27歳)

脚質:クライマー 

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2018年の主な戦績

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双子の兄弟がジロで実力を示した後、大きなプレッシャーをもってツールに臨むこととなった。前哨戦のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネでは総合2位と好調で、ツール第1週も、総合10位以内で終えることができており、ここまではよかった。

が、アルプス3連戦で大幅にタイムを失う。

ステージ優勝に切り替えるも、勝利に最も近づいた第16ステージの下りで落車してしまうという大失態。一切の結果を持ち帰ることなくツールを終えてしまった。

だが、このままで終わる彼ではなかった。当初の予定を変更し、兄弟のためにブエルタ・ア・エスパーニャに出場することに決めた彼は、最初の2週間は大人しくプロトンの中に存在を沈め、そして3週目、モビスターやアスタナといったライバルたちの総攻撃を受けたエースを守るべく、プロトンの先頭をたった一人で牽き続けた。間違いなく、ブエルタにおけるサイモンの勝利の裏には、アダムの存在があったのだ。

そして、2019年に向けて、アダムもまた、グランツール制覇に向けての夢を語ってもいる。また、彼ら兄弟のアグレッシブさは、2019年に母国で開催される世界選手権にも向いているようにも思う。

いずれにせよ、まだ「サイモンがアダムより強い」というようなことが決まったわけではない。2019年、アダムがサイモンに代わって才能を見せつける年になるか、あるいはその方向性において別々の強さを見せるようになるか。楽しみだ。

 

 

マッテオ・トレンティン(イタリア、30歳)

脚質:スプリンター 

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2018年の主な戦績

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2017年はブエルタ4勝、2度目のパリ~ツール制覇など、好調なシーズンを過ごしてきていたトレンティン。しかし、新たなチームで迎えた2018年は、ひどくフラストレーションの溜まる始まり方を経験した。

まずは、シーズン開幕前のトレーニングでの怪我。そして、4月のパリ~ルーベでの落車で負った、背骨の骨折。これにより、その後の2か月間をふいにしてしまった。

しかし、そこで彼は焦ることなく、しっかりと休養に努めた。そして、徐々に復活を遂げていく中で、見事ヨーロッパ王者の座を掴み取ったのだ。

「結局のところ、不運も、挫折も、ハードワークも、全てこの勝利を手に入れるために必要なことだったんだ」とインタビューで語るトレンティン。そして彼は、同じく挫折を味わった若きエースのためにブエルタを走り、そして初めてグランツールチャンピオンを抱えるチームのメンバーとして3週間を走りぬいた。

振り返ってみれば、たったの2勝しか挙げられなかった2018年シーズン。しかし、その結果以上のものを手に入れ、変化することのできたシーズンだったとも言える。そして2019年は、ユワンが去ったことで、彼にとっては初めての、チームのスプリントエースとしての役割を担うこととなる。

更なる進化を見せてくれることを期待している。

 

 

その他注目選手

ダリル・インピー(南アフリカ、35歳)

脚質:クライマー

かつては、サイモン・ゲランスの良きアシスト、という印象だった。加速力も独走力も高く、ゴールや中間スプリントのある程度手前から長めに牽引し、他のライバルを圧倒するリードアウトを見せる理想の脚質だった。登りスプリントの能力もあるものの、そこもアルバジーニがより上位という印象で、エースとしての彼、というイメージは正直、持てずにいた。

が、2018年はそのゲランスが移籍し、彼自らが先頭に立ってダウンアンダーに臨むことに。そして、そこで、2位が3回。パラコーム、ウライドラ、そしてウィランガ・ヒル。いずれも、ピュアスプリンターを引き離し、総合争いに大きな影響を及ぼすパンチャー向けレイアウトにて、彼は常に上位をキープし、ボーナスタイムでもってまさかの総合優勝を手に入れた。

だが、彼の勢いはここで留まらなかった。直後のカデルレースで3位。国内選手権では6年連続となる7回目となるITT王者に輝いたほか、これまでは2位が多かったロード部門でもついに王者の座を手に入れる。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも1勝したほか、ポイント賞を獲得するなど、プロ12年目にして過去最高の実績を挙げることとなった。

2019年も、トレンティン、アルバジーニとはまた違ったアプローチでのエースとしての活躍が期待できそう。何分、TTの強さや山での適性も考えると、他2人よりも応用が利くのが強みである。もちろん、元々のアシストとしての強さを再び発揮し、トレンティンらの勝利を導く走りにも期待したい。

 

ジャック・ヘイグ(オーストラリア、26歳)

脚質:スプリンター

今年のサイモンの成功の陰にはこの男あり。ダミアン・ハウスンと並び、チーム叩き上げの名クライマー・アシストである。ブエルタ・ア・エスパーニャでは自身も総合19位と、チームではサイモンに次ぐ順位を記録しており、将来のエース候補と考えることもできる。

自らの成績だけを単純に考えるならば2017年の方が好成績だった。ツール・ド・ポローニュでは区間1勝&総合8位。ジロ・デッレミリアでも9位と、本格的な山岳というよりは、中規模程度の登りを含むアルデンヌ系クラシックや丘陵系ステージレースに向いている。

たとえば2018年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでは14位で、チーム内ではアルデンヌ巧者ロマン・クロイツィゲルに次ぐ順位である。そして2019年はクロイツィゲルが移籍する。となれば、アルデンヌ系クラシックにおける、ヘイグの躍進に期待しても、悪くはなさそうだ。

 

エドアルド・アッフィーニ(イタリア、23歳)

脚質:TTスペシャリスト

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オランダの有力な若手育成チームであるSEGレーシングアカデミーからの移籍。基本的にミッチェルトンは下部育成チームであるバイクエクスチェンジからの昇格が多い印象だが、わざわざ外から持ってくるあたり、この選手に期待しているところは大きそうだ。

実際、2018年は国内選手権U23部門のロード&ITT、ヨーロッパ選手権U23個人タイムトライアル、「地中海大会」個人タイムトライアルそれぞれを制している。同時期にはU23ジロ・デ・イタリア通称「ベイビー・ジロ」の初日プロローグステージでも優勝しており、6月から7月にかけては「1位」が並ぶ、2018年ブレイクした若手選手の1人だ。世界選手権U23個人タイムトライアルでは惜しくも4位で表彰台は逃してしまう。

今のところはTTに特化しており、山岳ではどうしても遅れる姿が目立つ。今後はよりTTを強化して将来的にはオリンピックや世界選手権を狙える選手に育て上げていくのか、ロードでの重要な役割を任せられるように山岳も含めて経験を積ませていくのか。来期その動向にはしっかりと注目していきたい。

 

 

総評

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今年のブエルタでの戦略性の高さと、徹底したグランツール総合への意識的なシフトの仕方から、2019年も大きな存在感を示すと予想。少なくとも、モビスターよりは期待ができる?

スカイやモビスターと違って明らかに強力なアシストが少ないというのが不安の種ではあるが、結局は最終的に、叩き上げの選手を中心に不思議と強いアシストとしての働きをこなしてみせるのがこのチームである。そこらへんはサンウェブにも近い。この傾向は、ハンマーシリーズの完勝という結果にも結び付いているのかもしれない。

2018年はアルデンヌ・クラシックでも好成績を収めていたが、その原動力となっていたクロイツィゲルの移籍は非常に痛い。アルバジーニやヘイグがどこまで頑張れるか。

北のクラシックは勝利を期待できる選手が正直、いない状況。ユールイェンセンがなんとか、可能性があるくらいか。

Lotto Soudal 2019年シーズンチームガイド

読み:ロット・スーダル

国籍:ベルギー

略号:LTS

創設年:1985年

GM:マルク・セルジェント*1(ベルギー) 

使用機材:Ridley (ベルギー)

2018年UCIチームランキング:14位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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最大の目玉はグライペルに代わって加入したカレブ・ユワン。右腕とも言うべき長身の発射台ロジャー・クルーゲも引き連れ、本気でスプリント勝利を狙って行く体制だ。

ただし、グライペル親衛隊のうち、強力なバク、デビュッシェール、ジ―ベルグはチームを去ることに。残ったハンセン、ヴァンデルサンド、デブイストあたりと、新加入のアダム・ブライスがどうユワンと噛み合っていくか、未知数なところはある。クークレールは元チームメートなので、そこはなんとか大丈夫か。

2018年に引き続き、U23チームからの昇格が2019年も2名。ただし、2018年の昇格組であるランプレヒトとヴァンフックはともに、良いシーズンを過ごせた、とは言い切れないところに不安が残る。同じく叩き上げのジェイムス・ショウが2019年の行先不明なのがまた、不安を募らせる・・・。

 

 

注目選手

カレブ・ユワン(オーストラリア、25歳)

脚質:スプリンター

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2018年の主な戦績

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2018年は彼にとって、大きな変化の年だった。

 

2015年のブエルタの登りスプリントステージで、サガンとデゲンコルプを鮮やかに追い抜いて勝利した瞬間が、彼の名が大きく世界に轟いた瞬間だった。その後、ツアー・ダウンアンダーにおける超低空スプリントの衝撃。誰もが彼を、次代最強のスプリンターであると疑わなかった。

しかし、同世代にもう1人の怪物がいた。それは、フェルナンド・ガビリア。2016年はそこまで大きくは目立たなかった彼も、2017年のジロで4勝+ポイント賞という圧倒的な成果を叩き出したことで、あっという間に世界最強スプリンターの一員になり上がった。

一方、ユワンはこのジロで1勝に留まり、2人の間に大きな差がついてしまったかのように印象付けられた。

 

だが、2018年の彼は、ガビリアに真正面から対抗するのとは違ったアプローチで、個性を生み出しつつあった。

まずはツアー・ダウンアンダー。前年に(クリテリウム含め)5勝を記録したことと比較すると寂しい結果に終わったようにも思えるが、しかし2年前に歯が立たなかったパラコームの登りフィニッシュで堂々たる勝利。

さらに、ツアー・オブ・カリフォルニアでは、かつてサガンが勝利した「ラグナ・セカ」の厳しいアップダウンを経てのゴールで、逃げ切りを許してはしまうものの、メイン集団の先頭を取っての3位となった。この日のこのコースは、このカリフォルニアで3勝するガビリアすらも脱落するほどのコースであった。

少しずつ、ユワンの走りに変化が見られるようになったのでは、とこれらのレースの結果を見ていて感じてはいた。ミラノ~サンレモでの2位(これも逃げ切りを許したうえでのメイン集団先頭だった)も、この変化の結果の1つではないだろうか、と。

 

そしてユワンは、もう1つの大きな変化を望んだ。すなわち、自らを大切に育ててきてくれたチームからの離脱。そして、唯一無二のエースとして新チームでの責任を背負うことである。

もはや彼は神童ではない。カレブ・ユワンの、新たな歴史が始まる。

 

 

ヴィクトール・カンペナールツ(ベルギー、28歳)

脚質:TTスペシャリスト

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2018年の主な戦績

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2018年は2年連続となるヨーロッパ選手権個人TT王者に輝くと共に、トム・デュムランと1秒以下の差で世界選手権3位という栄冠を手に入れた。

これらの成績をもって、2018年ベルギー最優秀選手に選ばれたカンペナールツ。その壇上で、現アワーレコード保持者であるブラッドリー・ウィギンスより、自身の記録を打ち破ることを期待している旨のメッセージを受け取った。

事実、カンペナールツは4月にアワーレコード挑戦を表明している。ウィギンスの現在の記録は54.526km。スイスのベロドロームで30分間を54.8km/hで走るという結果を叩き出してもいる(もちろん、30分と1時間とでは大きく違うわけだが)。2019年の最初の2か月間をナミビアで過ごし、このためのトレーニングに全力を尽くす可能性についても話している。

とはいえ、このアワーレコードのために春のクラシックを完全に犠牲にするのはリスクもある。まだワールドツアークラスのステージレースでの個人TT勝利がないのも気がかりだ。2018年のブエルタでは逃げに乗って5位に入った記録もある。そういった大逃げによる勝利もまた、彼の目標でもある。何を最優先とするかについては、まだ完全に決まったわけではない。

そしてもちろん、最終的な目標は世界選手権と、2020年オリンピックである。デニス、デュムラン(あるいはログリッチェ?)に次ぐ、真の金メダル候補になれるかどうかは2019年の走りにかかっているだろう。

 

 

ティム・ウェレンス(ベルギー、28歳)

脚質:パンチャー

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2018年の主な戦績

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かつては逃げスペシャリストとしての活躍が目立った彼も、昨年秋のツアー・オブ・グアンシー総合優勝の辺りから、少しずつクライマー寄りのパンチャーとして、登れる力、総合的な力の高さを示しつつある。

2月のブエルタ・ア・アンダルシアでは、最大勾配19%の厳しい石畳激坂でミケル・ランダを突き放す快走を見せて総合優勝。3月のパリ~ニースでもより本格的なクライマーたちに混じっての総合5位で、しかもTTでも上位に入れる実力を発揮した。

また、イル・ロンバルディアでの5位も見事。まだまだグランツールでの総合上位争いは難しいだろうが、1週間程度のステージレースの総合争い、およびクライマー向けワンデーレースについては、チームの最大のエースとしての働きを期待できるだろう。

 

 

その他注目選手

イエール・ヴァネンデル(ベルギー、34歳)

2018年のフレッシュ・ワロンヌで、エースのはずだったウェレンスの為に集団先頭を力強く牽引。しかしウェレンスが思ったよりもついてこれなかったため、結果としてアラフィリップを助けるような格好になってしまった。このときバルベルデはすでに番手を下げており、アラフィリップにとっては最大のチャンスであった。ある意味、ヴァネンデルがいなければ、アラフィリップの栄冠はなかったかもしれない。

この勢いでもって臨んだリエージュ~バストーニュ~リエージュでは、最後の激坂「コート・ド・サンニコラ」でアタックし、アラフィリップらを突き放す。目標は前方で独走するユンゲルス。そのタイム差を20秒まで詰めて単独追走するヴァネンデルの姿に、もしかして、という思いを抱いた視聴者も多かったのではないだろうか。

しかし、結局はそれが、最後までもつことはなかった。下りと平坦で再びタイム差が開き始め、最後には集団にも飲み込まれてしまった。

だがこのいぶし銀、サイレンス・ロット時代から数えて11年目となるこのベテランが、再び脚光を浴びるチャンスが訪れつつある。過去には、アムステルゴールドレースでも2度、2位になっている。2019年のアルデンヌエースは、もはやウェレンスだけではない!

 

スタン・デヴュルフ(ベルギー、22歳)

脚質:ルーラー

元々はアマチュアチームの「ロット・スーダル U23」に所属。ジュニア時代には欧州選手権で銀メダルを獲得している。

2018年はU23リエージュ~バストーニュ~リエージュ6位、U23版パリ~ルーベ優勝など順調にクラシックで成果を出しており、マルク・ヒルシやスティーヴン・ウィリアムズ、ジャスパー・フィリップセンなど、ツール・ド・ラヴニールや各種ワールドツアーでも名を売っている注目の若手選手たちと十分に張り合えるだけの実力があることを示している。

まだまだ未知数のこの若人に、早くも今から注目していこう。

 

ヘルベン・ディッセン(ベルギー、21歳)

脚質:スプリンター

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もう1人、若手の注目選手を紹介しておこう。デヴュルフ同様にロット・スーダルU23からトレーニーを経て昇格したこの男は、トラック選手としてその名を既に売りつつある。2015年のジュニア世界選手権ではポイントレースで銅メダル、16-17トラック・ワールドカップ(アペルドールン)ではチームパーシュートで銀メダルを獲得している。そして2017年、トラック欧州選手権において、エリミネート種目のエリートカテゴリで見事、優勝。

ロードにおいてはこのトラック競技で培ったスプリント力で頭角を表していくことだろう。すでに、2018年ベルギー国内選手権U23部門ではロード王者に輝いている。

失敗もある。U23ジロ・デ・イタリアとも称される「ベイビー・ジロ(ジロ・チクリスティコ・ディタリア)」の第2ステージ。集団スプリントで勝利を確信したディッセンは、早くも両手を挙げてしまった。が、それは、「やっちまった」だった・・・。

 

早くも、酸いも甘いも嚙み分けたこの男は、きっと大物に大成する。

(なお、PCSに2019年は7月から加入とあるが何か事情を知っている人はおられますか? おそらくは、そこまではトラックに集中する、ということなんだろうけれど・・・)

 

 

総評

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グランツールの総合上位争いに関しては、デヘントやウェレンスが覚醒しない限りは難しいだろう。最も期待できるのは、ウェレンスを筆頭にヴァネンデル、ランプレヒトなど、とりあえず誰かしら成果を出すことは可能だろう。

もう一つの軸はステージ優勝。スプリントではユワンと彼のアシストたちがどううまく噛み合っていくかが鍵であり、成功と失敗のどちらの可能性もあるだろうが、スプリントだけでなく逃げ切り、個人TTなどを含めれば稼ぎ出すことは問題ないはず。

北のクラシックも、ベノートが2018年ストラーデ・ビアンケの勢いをしっかり継承してくれれば。あとはクークレールや若手選手たち次第。

*1:英語版wikipediaではチームマネージャー。オランダ版・フランス版wikipediaではゼネラルマネージャーの表記。

Groupama - FDJ 2019年シーズンチームガイド

読み:グルパマ・エフデジ

国籍:フランス

略号:FDJ

創設年:1997年

GM:マルク・マディオ(フランス)

使用機材:Lapierre(フランス)

2018年UCIチームランキング:14位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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新加入選手3名はすべてBMCレーシングチームから。とくにキュングは次代を代表するTTスペシャリストであり、2017年加入のルドヴィクソン同様、TT能力の改善を目指そうとするチームの意図を感じる。2019年のツールにもチームTTは存在するし、そこを狙った補強なのか。
チームは明確にピノ・グループとデマール・グループに分けられており、モラールやプライドラーがアシストとして少しずつ成長を続けている。

一方のデマール・グループからは自ら勝利も狙えるイタリア人スプリンター、チモライが抜けることに。しかし2018年活躍したグアルニエーリは健在なので、まだまだ期待はしていけるだろう。若手のサローも2018年ブエルタで2度5位につける大健闘。2019年はグランツール初勝利を期待したい。

トマ、ルガック、シンケルダムと、北のクラシック要員も地味に良い選手は揃っているので、覚醒した彼らの姿を見てみたいものだが・・・。 

 

 

注目選手

ティボー・ピノ(フランス、29歳)

脚質:クライマー 

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2018年の主な戦績

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2016年にはTTの急激な改善が見られたかと思えば、2017年には突如としてスプリント力が高まるなど、毎年のようにその脚質が激変することで知られるピノやん。今年はワンデーレーサーに早変わり。多分、ピノは11人いる。

2018年に今度こそジロは最後だよ、と宣言しており、2019年は再びツールに集中することになるだろうと予想されている。個人的には、彼にはジロやブエルタの方が向いている気がする。そちらでなら、表彰台も問題なく獲れるだろう、と。

とはいえ、やはりフランス人としてツールにこだわる気持ちは分からなくはない。そして、彼には自由に、気の向くままに走ってほしいという気持ちもある。勝ちにこだわらなくてもいいから、なんとなく調子のいいときに飛び出した結果としての、山岳勝利やその勢いのままの山岳賞獲得なんかをツールで見れたら最高である。

 

 

ルノー・デマール(フランス、28歳)

脚質:スプリンター

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2018年の主な戦績

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ピノ不在がゆえに自らのためのチームを編成してもらい、さらに2017年と違って8人全員がシャンゼリゼまで生き残るという万全な状態であった2018年のツール。にも関わらず、ガビリアやフルーネヴェーヘンが去り、サガンが負傷した段階でようやく1勝を手にすることができた、という事実に、彼が決して「最強」を巡る争いには参加できない位置にいるのだということをまざまざと思い知らされた。

だが、彼の特長はピュアスプリントにあらず。

たとえば2年連続で勝利を掴んでいるパリ~ニースでは、2017年はアラフィリップに登りで喰らいつき、2018年は登りスプリントでゴルカ・イサギーレやティム・ウェレンスといったパンチャーたちと張り合う姿を見せつけた。

そも、2016年のミラノ~サンレモ勝利も、そういった特性があったがゆえだろう。彼は平坦スプリントよりも、登りや石畳の混ざる荒れた環境でこそ勝利を掴めるタイプのスプリンターなのだと思う。

 

 

ダヴィ・ゴデュ(フランス、23歳)

脚質:クライマー

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2016年ラヴニール覇者。キンタナやチャベス、ベルナルほどには目立ってはいないが、着実にその実力を示しつつある。

2017年のフレッシュ・ワロンヌで、残り200mから果敢に先頭飛び出した。このときの動きはバルベルデたちに難なく捉えられ、最終的には9位に終わるが、それでもその積極的な姿勢は実に印象的だった。同年のミラノ~トリノでは5位。プロ1年目の成績としては十分なものだった。

2018年のツールは、本来のエースであるピノが欠場となってしまい、急遽エース扱いでの出場となった。さすがに総合成績を争う走りは難しかったものの、アルプス山脈では、アラフィリップに喰らいつこうとする挑戦的な走りが魅力的だった。そして、ロンバルディア前哨戦としてのミラノ~トリノでは、エースのピノを勝たせるための強力な牽引を終盤まで続け、第一線でまともに戦えるだけの力量を証明した。

2019年ツールも、まずはピノのアシストとして、チームNo.2であると堂々と宣言できるだけの働きを見せてほしい。そうすれば、きっと2020年ツールで、マリア・ビアンカに袖を通す彼の姿を見ることができるだろう。

 

 

その他注目選手

シュテファン・キュング(スイス、26歳)

脚質:TTスぺシャリスト

スイスの誇る次世代最強クロノマンが、BMC撤退によるスイスの影響力低下を受け、モラビートやライヒェンバッハなどの先輩がいるFDJに。冒頭でも触れたが、2019年ツールのチームTT(29km)に向けての補強だろうか?

彼自身はこのチームで経験を重ね、まずは2020年の東京オリンピックにおける表彰台を目指したいところ。カンチェラーラトニー・マルティン、そしてデュムランやデニスと、およそ4~5年ごとにその時代を代表するTTスペシャリストたちが現れている。しかし、実はキュングたちの世代周辺には、まだまだ明確に抜け出たTTスペシャリストたちというのはいない。2018年の世界選手権個人TTの上位の顔ぶれを見てみても、90年以前の中堅~ベテランの名前ばかりが連なっている。

キュングはまだ、世界選手権のTOP10に入ることはできていないが、確実に新世代の代表としての実力は示しつつある。2019年の目標はまず、ヨークシャー世界選手権での上位入賞である。 

 

オルグ・プライドラー(オーストリア、29歳)

脚質:オールラウンダー

サンウェブ時代はトム・デュムランのジロ制覇を支え、2018年は新たなチームでピノの側近として活躍。ツール・ド・ポローニュではそのピノの助けもあって、個人TT以外では初となるプロ勝利を果たした。翌日はいつも通りピノのための登りの最終牽引を担い、ピノの表彰台獲得に寄与した。

2019年は、そろそろ自らの総合成績の上位を目指したいところ。

 

マルク・サロー(フランス、26歳)

脚質:スプリンター

2018年に飛躍した選手の1人。2017年までは2勝だったか、この1年で7勝まで伸ばした。とくに、フランス人若手スプリンターの登竜門とも言えるエトワール・ドゥ・ベセージュでの2勝&ポイント賞と、そしてブエルタ・ア・エスパーニャで、マドリードを含む2つのステージで5位に入ったことは大きい。

2019年はワールドツアーでの初勝利を期待したい。いや、むしろ、2019年はブエルタで1勝をもぎとるような気がする・・・! 

 

ヴァランタン・マデュア(フランス、23歳)

脚質:パンチャー

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また面白い奴が出てきた。

フランスはブルターニュ地方生まれ。19歳の頃にブルターニュ・セシェ(現フォルテュネオ・サムシック)にトレーニーとして参加していた時期もあるが、その後は非UCIのクラブチームであるUCナント・アトランティークに所属。2017年にはFDJのトレーニーとなり、そのまま2018年に正式加入。プロデビューを果たした。

2018年最大の戦績は、10月のパリ~ブールジュ勝利。ブライアン・コカールや、クリストフ・ラポルテといったフレンチスプリンターの一線級を抑えての勝利であった。

ではスプリンターなのかと思えば、6月のルート・ド・オクシタニーの山頂フィニッシュステージで8位となっている。ツール・ド・フランス前哨戦の1つであるこのレースは、ピレネー山脈を舞台にした本格的な山岳ステージレースで、この日も標高1500mの1級山岳ル・モン・ドルメに至る登りであった。優勝者はバルベルデ。その他上位にはダニエル・ナバーロ、ケニー・エリッソンド、ルイスレオン・サンチェスセバスティアンライヒェンバッハなど本格的なクライマーが多数占めている。その中で8位。チームメートのゲオルグ・プライドラーよりも上位でゴールしていた。

最終的にも総合8位、新人賞も獲得したオクシタニーでの彼の立ち位置は間違いなくクライマーであった。

さらにパリ~カマンベール2位、ダンケルク4日間レース4位など、小刻みなアップダウンが待ち受けるクラシックスペシャリスト向けのステージでも上位に入っており、とにかく多才な脚質の持ち主。2019年には、どんなタイプの選手になっていてもおかしくはない、新たな時代の才能の1人である。

 

 

総評

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グランツールに関しては難しいところで、ピノがジロやブエルタに出るならまだしも、ツールに集中するとなると、どこまでいけるかは彼の調子次第なところがあり、不安も残る。そして、ピノ以外の総合ライダー(ライヒェンバッハやモラール)がどこまでいけるかというと、確実にTOP10に入るとは言い切れないところ。ステージ優勝は全然取れそうな気がするんだけどね。

一番結果を出せそうなのはアルデンヌ・クラシック。ピノはもちろんだが、現フランスチャンピオンで2018年クラシカ・サンセバスティアン3位のアントニー・ルーにも期待したいところ。

チームTTについては、期待も込めて。

Deceuninck - Quick Step 2019年シーズンチームガイド

読み:ドゥクーニンク・クイックステップ

国籍:ベルギー

略号:QST?

創設年:2003年

GMパトリック・ルフェーヴル(ベルギー)

使用機材:Specialized (アメリカ)

2017年UCIチームランキング:1位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

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年間73勝、驚異の勝利数で圧倒的ランキング1位を獲得したクイックステップも、スポンサー問題に苦しんだ。

最強スプリンターの一角フェルナンド・ガビリアも、ロンド&ルーベ覇者のニキ・テルプストラもチームを去った。一方、それを補強するような新たなベテラン選手の加入はなく、新加入もジュニアカテゴリからの飛び級であるイヴェネプールとトレーニーだったフローリッヒのみ。

では、2019年のクイックステップは弱体化を避けられないのか?というと、まったくそんなことはないだろう、というのが大方の予想かと思われる。そもそも、2018年も、キッテルやトレンティンやボーネンが去って一気に弱体化、と考えられていた中でのまさかの大ブレイクだったのだから。

2019年の弱体化を予想させない理由の一つは、若手の急成長である。ネオプロのホッジとヤコブセンが競うようにして勝利数を積み上げた。コンタドールを継ぐもの、と言われたエンリク・マスが誰も予想していなかったグランツール表彰台を獲得した。ちょっと前までは新人賞対象だったユンゲルスやアラフィリップはすでにチームの中心、大黒柱的な位置に座している。

そんな、若者が活躍するチームを支えているのはベテランの面々である。リケーゼ、モルコフ、サバティーニといった最強発射台たちがいなければこのチームはこんなにも勝てなかったのは間違いない。ティム・デクレルクはチームを去ったジュリアン・ヴェルモトに代わってこの最強チームの平坦をひたすら牽引し続けるという重責を担い、そしてそれを見事に成し遂げた。

きらびやかに輝くエースと、それを支えるアシストたち。その全員が主人公になりうるチーム、それがこの「ウルフパック」クイックステップである。

 

 

注目選手

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、30歳)

脚質:スプリンター

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2018年の主な戦績

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かつては、なかなか勝てずにいた。2017年のジロには、チームから出場を許してもらえなかった。辛く、苦しい時期を過ごした。

それでも、その2017年の後半から少しずつ、勝利を手にし始めた。そして2018年。新たに、最強チームに迎え入れられ、そのチームの最強トレインを手に入れた。

あとはもう、破竹の勢いだった。

 

しかし、改めて振り返ってみると、彼が2018年最強のスプリンターだったかというと、そうとは言い切れないのも事実である。彼はあくまでも、最強スプリンターたちが集うツールではなく、ジロとブエルタで勝利を重ねたのである。とくに、2018年ツールで最強のピュアスプリンターだったと言えそうなフルーネヴェーヘンとの直接対決の機会は、そう多くはなかった。

だからこそ、2019年にはツールに出てほしい。フルーネヴェーヘンともう1人、ピュアスプリントで勝利を分け合ったガビリアとも、いよいよ激突の機会が訪れる。2018年は苦しい時期を過ごしたキッテルやユワンも、きっと復活してくるだろう。そんな最強スプリンターたちが集うツール・ド・フランスで勝ち抜いてこそ、真に最強の称号を得られる瞬間となるだろう。

 

なお、2018年である意味最も驚くべき走りを見せたのはイタリア国内選手権ロードレースであった。2位ヴィスコンティ、3位ポッツォヴィーヴォという顔ぶれを見ればわかるように、決してピュアスプリンター向きのコースレイアウトではなかった。ゴール直前の登りではヴィスコンティが猛プッシュを仕掛けて集団を抜け出したが、これにしっかりと喰らいついて離れなかったのがただ一人、ヴィヴィアーニだった。

そんな彼の走りを見ていると、やはり2019年はこのレースに期待したい――そう、ミラノ~サンレモ。

ここで勝つこともまた、「最強」の称号を手に入れる条件の1つとなるだろう。

 

 

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、27歳)

脚質:オールラウンダー

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2018年の主な戦績

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2017年のフレッシュ・ワロンヌを終え、ダニエル・マーティンは「フレッシュ・ワロンヌで勝とうとするなら、バルベルデの引退を待たなければならない」的なことを言ったとか。その矢先ともいえる2018年に、ついにその「バルベルデ倒し」を成し遂げてしまった。2位が2回、悔しい瞬間を重ねてきたアラフィリップが、その力でもって、真正面から「キング・オブ・ユイ」を打ち倒した。

だが、そこで終わらないのが2018年のアラフィリップだった。ツール・ド・フランスのアルプスで念願のツール初勝利。かと思えばピレネーでもおかわりの勝利。そして山岳賞ジャージまでも持ち帰ってしまった。休む間もなく出場したクラシカ・サンセバスティアンでも優勝し、普通ならば2~3年かけてかき集めても賞賛されるようなタイトルの数々を、たった1年で積み重ねてしまった。これを躍進と言わずして何という。

しかし、いくらなんでもフルスロットル過ぎたのか。我々も期待し過ぎていた。あまりにもピュアクライマー向けのインスブルック世界選手権ロードでの最有力優勝候補というには、さすがに無理があったようだ。まあ、それでも8位って、全然すごいのだけれど・・・。

その分、2019年のヨークシャー世界選手権ロードは間違いなく彼向きのコースレイアウトとなりそうだ。唯一取り損ねてしまった栄光を、今度こそ取り戻す。

 

 

エンリク・マス(スペイン、24歳)

脚質:クライマー

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2018年の主な戦績

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彼は決して、ぽっと出の存在ではなかった。実際、2018年のステージレースでは、バスク総合6位、スイス総合4位と、十分にトップレーサーとしての走りを見せていた。

それでもやはり、完全なるヴィヴィアーニシフトで、山岳で最後まで残るアシストなど存在しなかったクイックステップで、総合表彰台に登りつめるのはいくらなんでも驚きだった。その秘訣は、不必要なところで力を使わず、集団内で脚を溜め、そしてここぞというときにきっちりと抜け出して上位集団に入り込むという、若さに似合わない冷静さと勝負強さであった。ブエルタ第20ステージのゴール直前の牽制や位置取りなんかも、実に堂々としていた。

2019年はチームもより、本気で彼をエースとして扱うことだろう。いきなりツールというのはさすがに難しいだろうから、まずはジロだろうか。

2018年のブレイクがたまたまの偶然で終わるか、それともここから未来のグランツール王者の伝説が始まるのか、その鍵を握るのは2019年での走りなのだ。

 

 

その他注目選手

ボブ・ユンゲルス(ルクセンブルク、27歳)

脚質:オールラウンダー

2018年はリエージュ~バストーニュ~リエージュ優勝という、とてつもなく大きな成果を叩き出した。しかし、なぜか自分の中ではそんなに強い印象を残していない。それは、クイックステップ自体が大量に勝利を重ねる中、彼自身は4勝に留まってしまったこと。そして、個人的に彼に、ダニエル・マーティンなきクイックステップにおける新たな総合エースとしての覚醒を期待し過ぎていた部分があった。

だから、ツールでなかなか上位集団に入り込めない彼の走りはもどかしくもあった。初のツールでの結果としての総合11位は、全然悪くない。にも関わらず、自分はちょっと不当な評価を彼にしてしまっているのかな、と思う。

だが、彼自身の勝利には繋がらなかったとしても、2018年のクイックステップの栄光に対する働きは間違いなく素晴らしいものだった。ツールではガビリアのために、そしてブリテンではよりはっきりした形で、ジュリアン・アラフィリップのための牽引を、彼は引き受けていた。というか、ブリテンのときの彼のゴール前の牽引は本気で凄まじかった。ああ、これが本気のTTスペシャリストによるゴール前牽引なんだな・・・と心が震えた。

そして、リエージュ~バストーニュ~リエージュでの勝利も、そうしたアシスト的な動きから結びついた勝利だった。One for All, All for One の精神こそが、クイックステップの栄冠の秘訣であり、2017年のジルベールのロンドからずっと、この良い流れは継承され続けている。

2019年は、総合エースの期待はマスの方にも向けられそうな気がするし、少しは冷静な目でユンゲルスの走りを見ていくことができそうだ。その中で、どんな働きを見せてくれるか。チームとともに、期待して注目していきたい。

 

アルバロホセ・ホッジ(コロンビア、23歳)

ファビオ・ヤコブセン(オランダ、23歳)

脚質:スプリンター

共に2018年にプロデビューを果たしたばかりのネオプロであり、共に2017年のツール・ド・ラヴニールで1勝ずつを分け合った若手最強スプリンターたちである。

そんな彼らはチームメートでありながらライバルでもあった。3/14にノケーレ・コールスでヤコブセンが勝ったかと思えば、その2日後にハンザーメ・クラシックでホッジが勝利。しかもホッジは3日後のカタルーニャ1周レース初日で勝利し、一足先にワールドツアークラスでの初勝利も手に入れた。

4月に入ってヤコブセンは負けじとシュヘルデプライスでの勝利を掴み、さらにはツール・デ・フィヨルドでも勝利。8月にホッジがツール・ド・ポローニュで再びワールドツアー勝利を手に入れると、その1週間後にビンクバンクツアーでヤコブセンもワールドツアー初勝利を飾った。10月に開かれた2つのワールドツアー・ステージレースでも、それぞれがそれぞれのレースで勝利するとか、本当にどれだけ互いに意識し合っているんだ、と見ているこっちが微笑ましくなるほどである。

彼らがいるからこそ、ガビリアが去る2019年のクイックステップにも全く不安を感じない。

なお、ヴィヴィアーニがもしもツールに集中する、となった場合、ジロにおけるエーススプリンターの座はこの2人のうちのどちらかに託されることになるだろう。

その誉れ高き地位につけるのはどちらか。1月~3月における彼らのチーム内抗争の行方も実に楽しみである。

 

レムコ・イヴェネプール(ベルギー、19歳)

脚質:オールラウンダー

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言わずと知れたジュニア最強選手。ロード参入から2年目にしてジュニアカテゴリの各種レースを総なめにし、2018年の成績は23勝。国内選手権、ヨーロッパ選手権、世界選手権全てでタイトルを獲得した。

その規格外すぎる成績により、2019年はU23カテゴリを飛び越えていきなりとエリートカテゴリ、それも最強チームと名高いクイックステップ入りが決まった。2000年生まれの選手がワールドツアーを走るというのはなかなかクラクラする事態だ。

さて、そんなイヴェネプールの2019年出場レースカレンダーの前半部が早くも発表されている。ブエルタ・ア・サンフアン、ヴォルタ・アン・アルガルヴェ、ボルタ・シクリスタ・ア・カタルーニャ、そしてツアー・オブ・ターキー。1ヶ月に1レースずつ、ステージレースばかりを出場させる。比較的小さいレースが多めではあるが、カタルーニャは2018年にはバルベルデとベルナルが鎬を削り、ホッジが初のワールドツアーで勝利を掴んだレースだ。イヴェネプールにも、つい期待をしてしまう。

いずれにせよ、このカレンダーから見られるルフェーブルGMの狙いは明らかだ。明確に未来のオールラウンダーを目指させ、厳しすぎるスケジュールではないものの、しっかりと強度の高いレースには出場させ、1年目からきっちりと経験を積ませる。そこに妥協や甘えはない。果たして、イヴェネプールはその期待に応え、存在感をある走りを見せることができるか。

いくら彼でも、エリートクラスのプロトンが山岳を登る中にまじって走ることは簡単ではないはずだ。いやあ、楽しみだ。

 

 

総評

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2019年はどれだけの勝利を重ねてくれるのか。スプリント、北のクラシックの勝利に関しては他の追随を許さないであろう。アルデンヌもアラフィリップ、ジルベール、ユンゲルスの3人だけでも十分に強い。

グランツールに関しては、もちろんマスやユンゲルスには期待したいが、やはりチームとしてそれを全力で狙って行く、という態勢は作りづらい。それでも、マスのさらなる覚醒には期待したいところ。もちろん、気が早いかもしれないが、イヴェネプールの走りにも。