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りんぐすらいど

ロードレース関連の記事が中心。https://twitter.com/SuzuTamaki

パリ~ニース2017 総括

パリ~ニース2017

 昨年に引き続き、最終ステージでなお、激しい総合争いが繰り広げられ、数秒差での決着となった2017年のパリ~ニース。

 総合エースクラスの多くのトップライダーがティレーノ~アドリアティコに流れる中、むしろセカンドエース級の選手が多く揃ったからこその、予想がつかない「面白い」展開を十分に楽しめたと言えるだろう。

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左から順に総合2位のアルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)、総合優勝のセルヒオ・エナオ(チーム・スカイ)、総合3位のダニエル・マーティン(クイックステップ・フロアーズ)

 

 一方、ティレーノよりもずっと豪華なメンバーが揃ったスプリント勝負では、むしろ意外なライダーたちによる勝利が立て続いた。

 すべては前半の気象条件の悪さによるものか。多くの波乱に満ちたカオスな展開が、(選手にとっては厳しいものであったであろうが)視聴者にとっては見所満載のレースを生み出すに至った。

 

 今回はこのパリ~ニース2017で活躍した各選手たちを、各賞やステージ勝利者の紹介の形でレビューしていきたい。

 

 

目次

 

 

 

総合優勝 セルヒオ・エナオ(コロンビア、29歳)

  確かに今大会最大の優勝候補の1人であることは予想していた。それでもまさか、本当に勝つとは。

 ステージレースでの総合優勝は7年前のブエルタ・コロンビア以来。それでも昨年・一昨年のバスク1周では2年連続で総合2位、昨年のパリ~ニースでも、総合優勝のゲラント・トーマスを忠実にアシストし、彼以上に登れるところも見せていた。今年、スカイのエースナンバーをつけてパリ~ニースに出場したことは何の不思議でもなかったし、従弟のセバスティアン・エナオや昨年ジロ山岳賞のミケル・ニエベなどの強力なアシストの助けも十分にあった。

 だが、最後に彼の勝利を決めたのはやはり彼自身の強さであった。

 それが最もよく表れたのが、第6ステージのフェイヨンスの登りであった。ポートのアタックに次いで最大勾配20%の「壁」をよじ登るエナオは、最終的にトップから17秒遅れの区間2位を獲得した。この日、アラフィリップとマーティンたちにもタイム差をつけられたコンタドールは15秒遅れでゴールし、ボーナスタイムも考慮するとこの日だけで21秒ものタイム差コンタドールからつけることに成功したのだ。

 翌日のクイーンステージでは逆に、ボーナスタイムを含めて17秒のタイム差をコンタドールからつけられてしまったエナオ。しかし、最終的な2秒というタイム差のことを考えると、フェイヨンスでの快調な走り、あるいはクイヨール峠での粘りが、エナオを勝利に導いたと言えるだろう。

 セルヒオルイス・エナオグランツールでエースを務めることは難しいかもしれないが、今後も各種ステージレースで、総合上位、あるいはエースの強力なアシストとして活躍していくことだろう。

 まずは彼のキャリア最大の勝利に祝福を。本当に強かった、エナオ

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次はバスク1周。昨年はコンタドールに敗れ総合2位。今年はリベンジを果たせるか?

 

 

総合2位 アルベルト・コンタドール(スペイン、34歳)

 この男は、本当に熱い戦い方をする。もしかしたら昔とは少しタイプが変化したのかもしれない。必ずしもポジティブな評価だけではない男だったのだろうが、まだまだ視聴歴の浅い自分にとっては、コンタドールという男は、「勝利を決して諦めない、戦いを挑み続ける男」というイメージを持っている。常にレースを面白くしてくれる男である。

 昨年の繰り返しのような展開であった。役者だけが少し異なる。昨年のゲラント・トーマスの代わりにセルヒオ・エナオ。ラファウ・マイカの代わりにハリンソン・パンタノ。それでも昨年はエナオコンタドールに負けない登りの力を持っていたように思えたので、まったく同じ展開にはならないだろう、と思っていたが、今年も同じようにエナオが遅れてしまった。それだけパンタノのアシスト力と、コンタドールの登坂力が高かったことが伺える。何しろ第4ステージの登りフィニッシュITTでも、おそらく全選手の中で最も速く山を登ったのがコンタドールだったのだから。

 そして最後のエズ峠の山頂では、コンタドールエナオのタイム差は50秒にまで広がった。

 昨年はこの後の下りで、元トラック選手のゲラント・トーマス必死の追い上げでタイムを詰められて敗北してしまった。しかし今年はクライマーのエナオである。しかも昨年のオリンピックでは下りで落車をしている。これだけのタイム差は、簡単に詰まることはないだろう。そう、思っていた。

 しかし思い返してみれば昨年のエズ峠の下りでも、トーマスだけじゃなく、エナオも積極的にダウンヒルを手伝っていた。そしてエナオの、勝利に対する執念が、下りへの恐怖をかき消したのか。最終的に21秒差でエナオたちはゴールし、総合成績ではわずか2秒というタイム差でエナオが勝利した。

 実にきわどい戦いだった。それでも、コンタドールも、死力を尽くしたのは間違いない。その結果としてのこの敗北。レース後のインタビューでも「勝てなかったけれど、この美しいレースに参加できたことは嬉しい。集団の後ろで競うのではなく、何かを試すこと、リスクを取ること、それが自分のやり方なんだ」と語っていた*1

 今期ブエルタ・アンダルシアに次ぐ総合2位。次は昨年総合2位のカタルーニャ1周と昨年総合優勝したバスク1周。とくにバスクではエナオとのリベンジマッチとなる予定。楽しみである。

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エズ峠の登りで、ハリンソン・パンタノに牽引されるコンタドール。パンタノは実に頼れるアシストであった。グランツールでも同じく活躍してくれるか。

 

 

総合3位 ダニエル・マーティン(アイルランド、30歳)

 長年在籍していたガーミン/キャノンデール系列からクイックステップへと移籍した昨年は、カタルーニャ1勝と総合3位、ドーフィネ総合3位、ツール総合9位と久々にステージレースでよい結果を出すことができた。期待されて迎えた今シーズンは、早速アルガルヴェで1勝を決めるが、ITTで大幅にタイムを失い最終的には総合6位。昨年ほどではないのか?という不安を抱きながらも、フェイヨンスの登りで5位、クイヨール峠の登りでは3位とやはり登りでの好調ぶりをアピールしてくれた。そして総合3位。

 あとは総合優勝経験のあるカタルーニャでどれだけの走りを見せられるか。今年もツール・ド・フランスでは総合エースを担えそうなので、しっかりと調子を上げていきたいところだ。

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最後のチーム表彰で胴上げされるマーティン。このチーム雰囲気の良さがクイックステップの魅力でもある。マーティン、アラフィリップ、デラクルスの総合3傑のチームワークもばっちりであった。

 

 

ポイント賞&新人賞 ジュリアン・アラフィリップ(フランス、24歳)

 アラフィリップの覚醒が見られた1週間であった。前半の好調は疑問を呈するまでもないが、第4ステージのITTで大差をつけて勝利できたのはあまりにも驚きだった。今までITTではそこまで実績のなかったアラフィリップの、新たな才能が発掘された瞬間であった。

 フェイヨンスの登りでも、ポートのアタックに反応しいい動きを見せた。しかし最終的にはエナオに突き放され、ポートにも抜かれて4位に終わり、彼の限界を見たような気がした。次ぐクイーンステージのクイヨール峠の登りで大失速。やはりまだ厳しい山岳で一流クライマーたちと張り合うのは難しいのか。

 アラフィリップを見ていると、クフャトコフスキとイメージが重なる。若いころから真の意味でのオールラウンダーとして期待されてきた男。しかし、いずれも中途半端な結果に終わり、ただのワンデースペシャリストとして終わるのではないか、と危惧されていた。アラフィリップもそんな雰囲気がある。

 しかし今年、クフャトコフスキは登りでもいい走りを見せている。昨年は散々に終わった彼に復活の兆しが見えている。彼が今年本当に成功を果たすことができれば、アラフィリップにも期待していけるだろう。

 まずはアルデンヌクラシックやカリフォルニアなど、彼が得意とするレースで結果を出したい。そして昨年新人賞のドーフィネからツールに向けてどれだけ存在感を発揮できるか。だが個人的に最も期待しているのは――世界選手権である。昨年オリンピック4位、ヨーロッパ選手権2位の彼であれば十分に狙えるはずだ。もしそれが実現すれば――フランス人としては実に20年ぶりの世界チャンピオンである。

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新人賞と共に、わずか1ポイントの差でポイント賞も獲得したアラフィリップ。スプリントでも上位に入れる脚質は確かにポイント賞にも向いている。

 

 

山岳賞 リリアン・カルメジャーヌ(フランス、24歳)

 アラフィリップと同様の24歳フランス人が表彰台に立った。フランス開催のレースとしては実に望ましい結果であり、未来への希望となった。

 カルメジャーヌという男は今まさに注目に値する新星である。昨年プロ入り初グランツールとしてのブエルタ・ア・エスパーニャ区間勝利。そして今年に入ってからはエトワール・ド・ベセージュ区間勝利と総合優勝、さらにはこのパリ~ニースでの山岳賞。これだけの短期間でこれだけ存在感をアピールできる選手というのはそうそういない。これだけでトップレーサーの仲間入りを果たしたと言える。

 ローランが移籍し、ヴォクレールの引退も間近に迫っている中で、ディレクトエネルジーにおける総合エースの座は間違いないだろう。そのためにはもっと経験を積んでいく必要があるだろう。まずはツール・ド・フランス出場だ。

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Stage1優勝 アルノー・デマール(フランス、25歳)

パリ~ニース2017 第1ステージ アルノー・デマール、その勝利の秘訣 - りんぐすらいど

 正直、この男にあまりいい印象は持っていなかった。同じ若手フランス人スプリンターとしてはブアニの方が勝利を掴み取っているイメージがあったし、昨年のミラノ~サンレモは凄かったものの、その直後に浮上した魔法の絨毯疑惑がどうしても頭にちらついて、その勝利を100%評価することができずにいた。

 だが、今回のこの第1ステージの勝利は、そんな彼に対する印象を180度転回させるほどのインパクトがあった。何しろあの、アルデンヌ名手アラフィリップのアタックに喰らいつき、ラストも前を牽き続けていた中でしっかりとスプリンターとしての足を見せて勝利を掴み取った。実に強い1勝であった。

 彼ならば今後も多くの勝利を見せてくれるだろう。今後はミラノ~サンレモはもちろん、昨年5位のヘント~ウェヴェルヘムなどにも注目したい。

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Stage2勝利 ソンニ・コルブレッリ(イタリア、26歳)

パリ~ニース2017 第2ステージ - りんぐすらいど

 悪天候の中、キッテルなどトップスプリンターが全力を出し切れない中で、パワーと気迫と執念で勝利をもぎ取った。昨年ワールドツアー個人ランキング14位。今年初めてのワールドツアーチーム加入。気合は十分だった。それでも、ニッコロ・ボニファツィオにエーススプリンターとしての地位は奪われてしまうかもしれない・・・そんな不安もあった中で、先に勝利を掴んだのは大きかった。その後も第5ステージ9位、さらにはエズ峠を越えた先の第8ステージを後続集団の先頭を取る4位ゴール。

 やはりこういった、山岳含みのコースでこそ彼は輝くのかもしれない。ミラノ~サンレモも上位入賞が多いため、期待したい。  

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Stage3勝利 サム・ベネット(アイルランド、27歳)

パリ~ニース2017 第3ステージ - りんぐすらいど

 こちらも昨年までプロコンチネンタルチームだった男の勝利である。しかも、後方にキッテル、デゲンコルブ、クリストフといった最強スプリンターたちを従えての、力づくの勝利。まさしくこの日、最も強かった。

 同時期のティレーノ~アドリアティコでもサガンが2勝。そしてこのベネットの1勝と、ボーラのスプリント陣営の強さは今年のツール・ド・フランスでは大注目である。何しろこの日は本当に、ツール最強メンバーに勝ったのだから。

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Stage5勝利 アンドレ・グライペル(ドイツ、34歳)

ティレーノ第2ステージ&パリ~ニース第5ステージ - りんぐすらいど

 パリ~ニースここまであまりよいリザルトを出せていなかったグライペルが執念の勝利。これで今期3勝目。宿敵キッテルとの勝利数差が1に迫った。

 ロット・ソウダルといえば強力なトレインからのスプリントというイメージが強かったが、グライペルは単独で集団の中を上がっていく力も非常に強い。この日もグルーネウェーヘンやデマールといった強力なスプリンターたちの背後を巧みに取り、最後にそこから力強く飛び出していった。

 一方のキッテルはトレインが機能しなかったことで勝負に出ることができず。カオスな環境の中では、グライペルの方が一枚上手と言えるだろうか。

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Stage6勝利 サイモン・イェーツ(イギリス、24歳)

パリ~ニース2017 第6ステージ - りんぐすらいど

 彼もまた24歳であり、着実に成績を積み上げている。今大会ではクイヨール峠では4分以上も遅れるなど、昨年ブエルタほどの調子の良さは見られなかったものの、それでもこの第6ステージの判断力はさすがである。最後のフェイヨンスの登りではエナオに30秒も詰められてしまったけれども、それまでのアドバンテージの結果、見事勝利を掴むことができた。

 最終結果は総合9位。ティレーノでは新人賞でいい成績を出していたアダムが途中リタイアとなってしまったが、今年のジロに挑もうとする双子は十分にいい状況であると言えるだろう。

 あとはジロまでにどんなレースを出るのか楽しみだ。アダムの体調が早く復帰すればいいのだが・・・。

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Stage7勝利 リッチー・ポート(オーストラリア、32歳)

 昨年ツールでフルームの次に登れていた男が、今年もよい状態でシーズンを迎えつつある。まずはツアー・ダウンアンダーで2つのクイーンステージを制しての総合優勝。そしてこのパリ~ニースでも、序盤で大きく遅れてしまったものの、もしそれがなければ総合優勝も狙えていたのではないか、という走りを見せてくれた。とにかく登りでの爆発力がすごい!

 多くのトップライダーがジロから出場を考えている今年、ツール・ド・フランスにおける総合表彰台を今年こそ手に入れたい。あわよくばその頂点を――そんなことも、十分に考えられるだけの選手だ。

 残る課題はアシスト陣。その意味で、新加入のロッシュの走りはなかなか期待できる。

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Stage8勝利 ダヴィ・デラクルス(スペイン、27歳)

 Jspotsの放送上では、その複雑な動きにより一躍注目を集めたスペイン人。しかし昨年ブエルタでも区間勝利をもぎとりマイヨ・ロホの着用も。最終的には総合7位という結果を叩き出す。また、今大会中もアラフィリップを献身的に牽く場面が見られるなど、今後クイックステップにおけるマーティン、アラフィリップに次ぐ総合エースとしての活躍、あるいは彼らのアシストとしての活躍が十分に期待できる選手である。

 また、共に逃げていたモヴィスターのマルク・ソレルも昨年ラヴニール総合優勝の注目株である。今日のこの日は経験の差でデラクルスにしてやられたが、これからの成長に期待したい。

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総括

 様々なトラブルもあり、結果として最強が最強を見せつけて勝利を飾る、という形にならなかったパリ~ニース。だからこそ見応えがあったといえる。まるでブエルタ・ア・エスパーニャのように。

 ここで活躍した新たな才能の今後の姿に期待すると共に、また来年、どんな熱い戦いが見られるのか楽しみである。

 

 このあとはカタルーニャ1周、バスク1周とまだまだ楽しみなステージレースが控えている。今回活躍した選手のほか、アレハンドロ・バルベルデクリス・フルームなど、さらに楽しみな選手が合流してくる。

 いよいよ本格的なロードレースシーンの開幕。目を離すことはできない。

ティレーノ~アドリアティコ2017 第5ステージ&第6ステージ

 ラスト50kmに20%超えの激坂区間が連続するというハードな丘陵ステージ。アルデンヌクラシックイル・ロンバルディアに匹敵するこの難関ステージを制したのは世界王者ペーター・サガン

 彼以外にはキンタナやウラン、モレマといった総合ライダーたちが肩を並べる中での勝利である。

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ピノとのスプリントを制したサガン。ピノもこのメンバーの中で、区間2位と健闘した。

 

 とくに残り3km地点に位置する最大22%の超激坂「レプトロ通り」を超えて、総合ライダーばかりの小集団になってから追い付いてくるのだから、この日のサガンは本当にスペシャルであった。f:id:SuzuTamaki:20170212115450j:plain

ラスト5kmのレイアウト。ラスト3km地点に最大勾配22%の区間が。

 

  この日の勝利は、彼が将来的にリエージュ~バストーニュ~リエージュイル・ロンバルディアの勝利を狙ううえでの、大いなる布石となったように思う。

 彼にはもはや不可能はない。

 史上4人目の、そしてベルギー人以外では初となる、モニュメント制覇者となることも、決してありえない話ではないだろう。

 

 

 そしてもう1人、この日の走りに期待を持てたのはティボー・ピノである。

 サガンを除く小集団中のスプリントで先頭を取ったのがこの男であった。

 

 思い起こせばブエルタ・ア・アンダルシア第2ステージも、コンタドールとともに最終盤の山頂に辿り着いたピノが、最後のスプリントマッチを制して今期初勝利を飾った。そのときの最高時速は勾配2%の緩い登りにも関わらず48km近く出ていたとシクロワイアードの記事では語られている。

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アンダルシア第2ステージ。最後の直線でコンタドールを追い抜き、勝利を飾ったピノ。

 

 2014年のツール総合2位以来、大きな勝利をあまり出せていないピノであるが、昨年あたりから少しずつ変化が表れ始めている。昨年のドーフィネやツールでも、最終的にはうまくいかなかったものの、ステージ勝利や山岳賞獲得への積極的な動きを見せていた。そのときの彼は実に強かった。

 そして今年に入ってから目立つのがこの、スプリント力の向上である。もしかしたら彼は、3週間のステージレースを戦い抜いて総合上位を目指すよりも、こういった起伏を多く含んだワンデーレースで終盤まで残り、スプリントで勝負する方が向いているのかもしれない。実際、彼はイル・ロンバルディアではそれなりの上位でフィニッシュすることが多く、昨年のロンバルディアは同じくスプリント力の高いエステバン・チャベスが優勝している。

 今年のイル・ロンバルディアは本気で狙いに行くべきではないだろうか。

 あるいはアルデンヌクラシックへ――ワンデーレースへの注力こそが、ピノにとって大きな結果を得る方法なのかもしれない、とも思う。

 

 ただ、今年はステージレースにおいても期待できる走りを見せてくれている。先のアンダルシアでは結果的に総合3位。また、昨年からのTT能力の向上も間違いなく、今回のティレーノ~アドリアティコも最終ステージのTTが非常に楽しみである。総合首位キンタナとのタイム差は50秒。かなり厳しいとは思うが・・・それでも、もしかしたら、ということもあるかもしれない。

 

 

 なお、このステージでもう1人、注目に値する走りを見せたのがアンドローニ=ジョカットリ・シデルメクイーガンアルリー・ベルナル(Egan Arley Bernal)。

 まだ20歳という驚異的な若さでチームのエースを務め、最強しか生き残れなかったはずの今日のステージをたった6秒遅れの11位でゴールしている。そもそも昨日のテルミニッロも13位でゴールしており、この2つの難関ステージを上位でゴールしたことにより、新人賞ジャージをボブ・ユンゲルスから奪うことに成功した。

 昨年ツール・ド・ラヴニールでは総合4位。彼もまたコロンビア人である。また1人、将来有望な若者が出現した。

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大胆不敵な笑みを浮かべるベルナル。数年後には彼の名がプロトンの中心で輝くときが来るかもしれない。

 

 

 

第6ステージ

 今大会唯一といっていい平坦ゴールステージ。当然、集団スプリントによる決着が期待されたものの、ゴール前7~8km地点には最大勾配8%の区間を含む登りが待っているレイアウト。

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  まさに「ミラノ~サンレモ前哨戦」に相応しいこのステージで、やはり劇的な展開が待っていた。

 

 まずは登りでヴィンツェンツォ・ニバリがアタック。彼は昨年のミラノ~サンレモでも積極的な走りを見せていたはずだ。だがこれはニキ・テルプストラファビオ・フェリーネによって捕まえられる。サガンもその直後にアタックを仕掛けるがやはり捕まえられる。

 結局のところ集団のまま最後の平坦3kmを走ることになり、その先頭をクイックステップ・フロアーズロット・ソウダルといったベルギースピードチームが隊列を組んで走り抜ける。

 最終的に勝利を捕まえられたのは、マッテオ・トレンティンのアシストを全面に受けたフェルナンド・ガヴィリア

 最後まで並走しあとわずかというところでサガンは敗れ、ガヴィリアがいつもの勝利ポーズを決めた。

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わずかの差でサガンに競り勝ったガヴィリア。その勝利を完璧にアシストしたトレンティンも背後でガッツポーズ。

 

 この日の勝利は、1週間後に迫ったミラノ~サンレモ本戦とどれだけ相関性があるだろうか。少なくとも今日、活躍したトレンティンは昨年ミラノ~サンレモでもガヴィリアをアシストしつつ10位入賞している。今年もガヴィリアと共に終盤まで残り、今日のように彼をサポートすることも十分可能なはずだ。

 

 ガヴィリアが昨年の借りを返すミラノ~サンレモ勝利を飾るのか、サガンが世界王者としての意地を見せて2つ目のモニュメント勝利を奪い取るのか。はたまたそれ以外の選手が活躍するのか。

 実に楽しみな週末である。

 

 

 また、クイックステップ・フロアーズは、パリ~ニース最終日におけるデラクルスの勝利と合わせ、今期早くも15勝目をマークした。

 相変わらずクラシックではいいところまでいって・・・なパターンも見せてはいるが、その強さは今年も健在なようである。

 

 

最終ステージに向けて

 さて、ティレーノ~アドリアティコもいよいよ最終日を迎える。

 最終ステージは例年通り全長10km程度の短い個人タイムトライアル。

 起伏の一切ない、ド平坦ステージである。

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 しかし総合タイム差は、総合首位のキンタナに対してティボー・ピノが50秒差で2位、ローハン・デニスが1分6秒差、プリモシュ・ログリッチェが1分15秒差、トム・デュムランが1分19秒差である。

 特に世界最強レベルのTTスペシャリストであるローハン・デニスが1分6秒差である、というのはキンタナにとってはかなりの不安材料であるだろう。

 参考までに、2015年のティレーノ最終ステージ、同じレイアウトのTTでは、優勝したファビアン・カンチェラーラに対しキンタナは55秒差をつけられている。

 また、同年のツール・ド・フランス初日のITTでは、13kmと少し長いが同様にド平坦であり、優勝のローハン・デニスとキンタナとのタイム差は1分1秒差であった。

 

 そう考えると、1分5秒というタイム差は、キンタナが勝利を掴むにあたって持つべきタイム差をギリギリでなんとか持っている、という状態であると言えるだろう。2年前よりも確実にTTが改善してるであろうキンタナ、総合優勝の可能性は十分以上に高いが、それでも最終ステージ、最後のキンタナがゴールするその瞬間まで、見逃すことのできない熱い戦いとなるだろう。

 

 そして単純にステージ優勝も気になる。デニスか、デュムランか、はたまたカストロヴィエホか、ログリッチェか、もしかしてピノかも? 個人的に一番注目したいのはとビアス・ルドヴィクソンである。

 キャノンデールのパトリック・ベヴィンにも期待したいところだったのだが、テルミニッロでリタイアしてしまっている。うーん、以前もそんなことがあったような・・・厳しい山岳を含んだステージレースでは活躍できないのかしら。

 

ティレーノ~アドリアティコ第4ステージ テルミニッロに見るグランツールライダーたちの足の調子

ティレーノ~アドリアティコ2017

ティレーノ~アドリアティコのクイーンステージである、「テルミニッロ山頂ゴール」。

全長16.1km、平均勾配7%、最大勾配12%という、グランツール相当の難関山岳。

実際、シクロワイアードの記事によると、ティレーノ~アドリアティコが難関山岳を取り入れた2012年以降、それを勝利したのは常に、グランツール総合優勝者であるという。

このテルミニッロも一昨年、ナイロ・キンタナが勝利したステージ。

多くのチームがグランツール総合を狙う重要なクライマーたちを参戦させており、ジロやツールに向けた各選手の足の具合を確かめるには最適なステージとなった。

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今回はこのテルミニッロの山岳で見せた、各グランツールライダーの足の具合をレビューしていきたい。

 

 

優勝 ナイロ・キンタナ(コロンビア、27歳)

 圧倒的な登りの力を見せ、事前の評判通りの優勝となった。敗れたゲラント・トーマスも、その強さを認めるほかなかった。今年、3年ぶりにジロに出場するとのことだが、総合優勝候補No.1であることは間違いない。

 キンタナの強さは本人だけでなく、それをサポートするアシストにこそある。クリス・フルームの強さが彼だけでなく彼のアシストにもある、というのと同様に。

 まず、このテルミニッロ中腹からアタックを仕掛けたのがヨナタンカストロヴィエホヨーロッパ選手権個人TT王者である彼は平坦の機関車役として活躍するだけでなく、この山岳ステージでもこのように先行し、そして前待ちアシストとしての仕事をしっかりと果たし切った。そして昨年ジロ総合8位のアンドレイ・アマドール、同じくブエルタ総合8位のダニエル・モレーノといった実力派オールラウンダーが終盤までキンタナを守り切るなど、モヴィスターのチームとしての強さを印象付けた。そもそもこの重要な局面で3人ものアシストが機能するチームは決して多くない。

 そしてこれだけのメンバーを揃えていたがゆえに、初日のチームタイムトライアルでBMCから22秒遅れの4位を記録することができたのだ。登り、TT、チーム力全てにおいて万全の態勢を整えた今期のモヴィスターは、アスタナのそれが心もとなくなった今、チーム・スカイに対抗できる唯一のチームとなったように思える。

 なお、上記3名のうちジロに出場を予定しているのはアマドールのみで、モレーノとカストロヴィエホはツールから参戦する。その意味で、ジロのキンタナには若干ではあるが付け入る隙があるのかもしれない。

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テルミニッロでアタックを仕掛けるキンタナ。トーマスもまったく追い付くことができなかった。

 

 

区間2位(+18秒) ゲラント・トーマス(イギリス、30歳)

 確かにキンタナに敗れはしたものの、第2ステージの勝利と合わせ、この日も最後まで力強い登りを見せ続けていた。昨年のパリ~ニースでコンタドールたちに競り負けてしまったときとは違う、クライマーとしての強さを発揮し、真にグランツールで戦える状態となっていることを見事証明した。

 今回のティレーノ~アドリアティコでは、第1ステージのチームタイムトライアルでのタイムロスがあるため、総合を狙うのは難しいかもしれない。あとは最終ステージの個人TTでどれだけの走りを見せられるかが鍵となる。

 また、クフャトコフスキの調子も良さそうで、カストロヴィエホとともに終盤のアタックに参加をしていた。元々エースナンバーをつけていたミケル・ランダはこのステージでは完全にトーマスのアシストに回っており、ダブルエース体制で臨むことになるジロでもチームワークには問題がなさそうに見える。

 さて、トーマスはジロまでにあとどのようなステージレースに臨むつもりなのだろう。ツアー・オブ・ジ・アルプス(旧ジロ・デル・トレンティーノ)はおそらく出るだろうが、それ以外にはバスク1周あたりか。とりあえずその辺りでの調子にも注目していきたい。

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第2ステージに続き活躍を見せたゲラント・トーマス。ポートなき今、スカイ第2のエースとしての地位を確立できるか。

 

 

区間3位(+24秒) アダム・イェーツ(イギリス、24歳)

 この2人には、一方が活躍するともう一方も奮起するような、そういう特性でもあるのだろうか。昨年ツールでアダムが活躍するのに合わせ、ブエルタではサイモンが存在感を示したように、先日のパリ~ニース第6ステージでサイモンが結果を出したことで、この日のテルミニッロはアダムが区間3位という偉業を成し遂げた。

 今年はジロ・ブエルタに出場することが決まっているイェーツ兄弟。たとえ総合表彰台の頂点には立てなくとも、その両脇にこの兄弟が立つ姿というのは十分想像ができそうだ。かつて活躍したあの兄弟のように。

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区間3位だがトーマスがTTTで沈んでいるため、総合2位、そして新人賞を獲得したアダム。グランツールでも新人賞候補の最右翼であり、最大のライバルはサイモンといった状態である。

 

 

区間4位(+24秒) リゴベルト・ウラン(コロンビア、30歳)

 正直、この日のリザルトで最も意外だったのがこの男である。キング・オブ・ジロ、しかし未だ、総合表彰台の頂点には立ったことのない男。ここ数年はさらに状況が振るわず、わずかに期待されながらも「やはり・・・」という結果が見られた。ただ、調子のいいときの走りは確かに強い。昨年も第20ステージでチャベスを牽引するような動きまで見せていたウランが非常に状態がよかった。あとはそれを3週間しっかりと続けられるかどうか、である。

 だから今回の調子の良さだけでは何とも言えない。個人的には、また総合表彰台に立ってほしい、という思いはある。本来得意であるはずのTTの状態、すなわち最終ステージの状態に注目だ。

 

 

区間5位(+29秒) シモン・スピラック(スロヴェニア、30歳)

 この人も驚きの走りを見せた選手であった。テルミニッロの登りに差し掛かった際に、クフャトコフスキやカストロヴィエホらと共に逃げた選手。しかし最終的に、クフャトコフスキを含むすべての伴走者を切り捨てて、単独で先頭を走り続けた脚力の持ち主だ。さすがに本気を出したキンタナには敵わなかったが、まさか、を思わせてくれた走りを見せてくれた。

 ツール・ド・ロマンディとの相性が異様に良い。今年の今後のレーススケジュールは不明だが、総合表彰台を狙うことになるであろう、イルヌール・ザッカリンにとっての、最高のアシストとしての活躍を期待したい。

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カストロヴィエホ、クフャトコフスキ、クロイツィゲルを振り払う走りを見せたスピラック。グランツールにはあまり出場していないようだが、今年はどうなるか。

 

 

区間6位(+41秒) トム・デュムラン(オランダ、26歳)

 この人も調子が良かった。デビュー戦となったアブダビ・ツアーのクイーンステージでも、今回のティレーノの第2ステージでも、そして今回の第4ステージでも、終盤でアタックして決めにかかろうとする、「2年前ブエルタでの必勝法」を踏襲していた。今年はグランツールを本気で狙いに行く、ということの表明なのかもしれない。

 だが、今のところ、それが十分に功を奏していない。アブダビでは区間3位、ティレーノ第2ステージでは区間2位とまずまずだったが今回は区間6位。早すぎたか? それでもニバリやピノ、アルといったトップクライマーたちを退けての区間6位なので、元TTスペシャリストとしては十分な走り。果たして今年、グランツール総合表彰台は獲得できるか。 

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デュムラン最大の懸念はアシストが揃っていないことである。ソレン・アンデルセンの成長が待たれるが彼もクライマーって感じではない、か? ゲシェケとかくらいかな・・・

 

 

区間7位(+41秒) ドメニコ・ポッツォヴィーヴォ(イタリア、34歳)

 昨年は第2ステージのポマランチェで遅れ、得意のクイーンステージもキャンセルされたことで振るわなかった。今年はポマランチェでもしっかりと残り、そしてこのテルミニッロでも結果を残した。

 ここ最近結果を出せずにいるジロで、どこまで走れるか。総合表彰台は難しいかもしれない。それでも、フランスチームで戦うイタリア人として、まだエースでジロを走れるそのチャンスを、しっかりと活かしていきたいところだ。まだ後方に退くには早すぎる。

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区間8位(+41秒) ミケル・ランダ(スペイン、27歳)

 エースで走ることを確約されスカイに移籍。待望のジロに臨んだはいいが、結果を出せずにリタイアしてしまったことの悔しさは想像すらできない。シーズン後半もイマイチに終わり、新たなシーズンをどのような気持ちで迎えているのか。

 もちろん、腐ってはいないはずだ。このティレーノもエースナンバーをつけることを許されたのはチームからの信頼ゆえであろう。残念ながら今回はトーマスの方が調子がいいようで、この日も彼のアシストに徹することになったものの、チームとしても本人としても、ジロをダブルエースで臨むことに不満はないように思える。

 ジロでもトーマスが調子がいいのであれば最高のアシストとして、そうでなければ彼がチームを勝利に導くエースとして、観る者を沸かせる走りに期待したい。

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エースクラスのメンバーが揃うチームの中でも臆することなく、チーム2番目の成績でこの日を終えることができたランダ。その調子は決して悪くはないはずだ。

 

 

区間9位(+46秒) ティボー・ピノ(フランス、27歳)

 絶好調の走りとは言えなかったかもしれない。それでも、ずるずると下がってしまったニバリやアルと比べてもしっかりとこの位置に踏みとどまることはできたし、そもそも初日のチームタイムトライアルであらゆる視聴者を驚かせたその走りの結果、このステージを終えた今、総合3位という順位をキープできている。

 とりあえずツアー・オブ・ジ・アルプス(旧ジロ・デル・トレンティーノ)の出場は決まっているようで、同じく出場を予定しているミケル・ランダなどに対しどれくらいの走りを見せられるかが課題だ。あとは最終ステージの個人TTにも注目だ。

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正直、無理に総合を狙わずにステージ優勝や山岳賞を狙ってほしいという気持ちもあった。だが今年はここまで調子が悪くなく、初出場となるジロにおいては少しばかり期待もある。

 

 

区間10位(+51秒) プリモシュ・ログリッチェ(スロヴェニア、27歳)

 ワールドツアーチーム入りした昨年から、驚異的なスピードで成長を続けている。昨年のジロでの活躍などからはTTスペシャリストという印象も強かったが、コンチネンタルチーム時代も様々なステージレースで総合優勝を飾っており、歴とした総合ライダーとしての素質があるようだ。そして今年はアルガルヴェ総合優勝。

 ヘーシンクが総合から手を引く動きを見せるのであれば、クライスヴァイクに次ぐチームの総合リーダーの座は少しずつログリッチェに移っていくのかもしれない。その意味で今日のこの成績は十分に説得力を持てるはずだ。また、エースとしての活躍ができなくとも、重要なアシストとしてクライスヴァイクなどを支える側に回れるのであれば、チームとしては大きな価値を持つことになるだろう。

 難関山岳の重要な局面でエースをしっかりと支えることのできるアシスト、としての成長が、ログリッチェには求められている。

 というか、本当に凄い! 好きな選手だけに嬉しいものだ。この難関山岳で、この順位というのは。

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同タイムでモレマ、カストロヴィエホがゴールしており、その集団の先頭を取ったことで区間10位、総合7位となったログリッチェ。モレマも決して調子は悪くないはずで、それと同じタイムでゴールできたというのは本当にログリッチェが凄いことを示している。

 

 

その他、総合ライダーたちの行方

区間17位(+1分22秒) ルイ・コスタ

区間19位(+1分39秒) ラファウ・マイカ

区間24位(+1分43秒) ヴィンツェンツォ・ニバリ

区間29位(+2分19秒) ティージェイ・ヴァンガーデレン

区間37位(+4分6秒)  ファビオ・アル

 

このあたりは残念な走りに終わってしまった総合ライダーたち。

コスタは今年調子よくここまで来ていただけにびっくりである。

そしてヴァンガーデレンやアルは今年もダメなのか・・・?

アルに至ってはゼイツやルイス・レオン・サンチェス、ミケーレ・スカルポーニなどにも見捨てられてのゴールと、昨年の不調を思い起こされる走り。

 

ジロまでに復活できるか? 信頼に報いられるか?? 注目である。

パリ~ニース2017 第7ステージ

パリ~ニース2017

フランス北部の最初の2ステージで、大きくタイムを失ったリッチー・ポート。

もはや、どう足掻いても総合争いには絡めないほどのタイム差を得ることとなった彼は、しかし、リタイアすることもなく、ただ走り続けることを選んだ。

 

そして彼は、第5ステージ、ラスト1.2km、平均勾配10%の激坂フィニッシュにて、勝利を目指す鋭いアタックを仕掛けた。

この攻撃はリーダージャージを着るジュリアン・アラフィリップ、次いで好調ぶりを見せるセルヒオ・エナオによって封じられ、結果、ステージ優勝はサイモン・イェーツに、そしてステージ2位の座もエナオによって奪われてしまったものの、追随するアラフィリップを置き去りにしてステージ3位を手に入れるなど、ポート自身の足が決して悪い状態ではないことを証明した。

 

そして第7ステージ。今大会最難関の山岳ステージ。

この1級山岳クイヨール峠の山頂フィニッシュにて、ポートは、再び攻撃を仕掛けた。

対するライバルはアルベルト・コンタドール、そしてセルヒオ・エナオ

しかし彼らも、ポートの度重なる執拗な、そして強力なアタックの連続に、やがて追走することを諦めた。

 

すでにタイム差を持っている、総合争いには関わらないポートのアタックだったから、というのもあるだろう。

だがそれ以上に、今期ツアー・ダウンアンダーも圧勝したオージークライマー、昨年ツールにて、実質的にフルームの次に登れていた男であるこのリッチー・ポートが、このステージにて最も強い男であったことが、この勝利の大きな要因であったことは間違いないだろう。

 

リッチー・ポート。

実力で這い上がり続けてきたこの男が、いよいよグランツールの表彰台に立つときが来たのかもしれない。

今日この日の勝利は、その栄光に向けた大いなる序章である。

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1級クイヨール峠の山頂を誰よりも早く登りつめたポート。ダウンアンダーから続くこの強さが、今年こそ彼をツール総合表彰台へと導いてくれることだろう。

 

 

山岳賞を巡る攻防

2級、1級、1級と登って最後は1級クイヨール峠(登坂距離15.7km、平均勾配7.1%)を登る今大会最難関山岳ステージ。

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この日、最初に逃げに乗ったのは5人。

UAEチーム・エミレーツヤン・ポランチ、ディメンションデータのオマール・フライレディレクトエネルジーのリリアン・カルメジャーヌ、デルコ・マルセイユデリオ・フェルナンデス、そして山岳賞ジャージを着るアクセル・ドモン(AG2R・ラモンディアル)である(のちにフォルテュネオ・ヴィタルコンセプトのピエールリュック・ペリションが合流する)。f:id:SuzuTamaki:20170311140219j:plain

山岳賞ジャージを着るドモンを先頭に、黙々と集団とのタイム差を広げていく逃げ5人。

 

スタート直後に訪れる2級山岳と1級山岳は、ともにカルメジャーヌが先頭通過。ドモンはその背後にぴったりとついてポイントを回収した。

これにより、カルメジャーヌは合計32ポイント。ドモンと並ぶ形となった。

 

そして本日2個目の1級山岳「サン・マルタン峠」(残り37km)への登りの手前で、カルメジャーヌが単独でアタック。

ドモンとフェルナンデス、そしてプロトンからブリッジを仕掛けて合流したヤコブ・フールサン(アスタナ)が懸命に追走を仕掛けるも届かず、やがて集団に吸収されてしまう。

そしてカルメジャーヌが単独でサン・マルタン峠山頂を通過。

 

合計42ポイントとなり、文句なしの山岳賞ジャージ獲得となった。

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リリアン・カルメジャーヌ。

24歳フランス人。

プロ入り2年目とまだまだ若いが、初グランツールとなった昨年ブエルタにていきなりのステージ優勝。

今年に入ってからもエトワール・ドゥ・ベセージュで区間1勝と総合優勝を果たすなど、ディレクトエネルジーの新たな総合エースとして急激に成長を遂げている将来有望なフランス人の1人である。

 

今回のパリ~ニースではポートと同様に最初の2ステージで大きくタイムを失ったものの、こうして、得意の山岳逃げを展開し、山岳賞ジャージ確定まであと一歩というところまでたどり着いた。

 

明日もカテゴリ山岳は多く、油断はできない。

しかし彼ならばきっとやってくれるだろう。ブエルタの勝利、小さなステージレースでの総合優勝、そしてワールドツアーでの山岳賞。

確実なステップアップを登りつつある若き才能が、今年さらに羽ばたくことを期待している。

とりあえず、今期初出場予定のツール・ド・フランスにおける活躍が望まれる。

 

 

大きく動いた総合順位

カルメジャーヌがサン・マルタン峠山頂を越えたころ、集団からもカンタン・パシェ(デルコ・マルセイユプロヴァンスKTM)、ディエゴ・ウリッシ(バーレーンメリダ)、シリル・ゴチエ(AG2R・ラモンディアル)の3人が飛び出し、カルメジャーヌを捕まえた。

その後もウリッシが単独で逃げに乗るが、集団もスカイのバスティアン・エナオを中心にハイペースでの牽引を続け、このペースアップに耐え切れなくなった総合2位トニー・ギャロパンおよび昨日の優勝者サイモン・イェーツが遅れ始める。

さらにトレック・セガフレードの新加入ハリンソン・パンタノが先頭に出てさらなるペースアップを仕掛けると、山頂までまだ10kmも残っている地点で、総合首位ジュリアン・アラフィリップが崩れ始める。

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コンタドールの頼れるアシストとなったパンタノの、超強力な牽引によって、次々と有力選手が遅れていく。Jsportsより。

 

山頂まで残り5kmの時点でパンタノが仕事を終え脱落。

このとき、先頭に残っているメンバーはわずか6人。

セルヒオ・エナオ(スカイ)、ヤコブ・フールサン(アスタナ)、リッチー・ポート(BMC)、ヨン・イサギレ(バーレーンメリダ)、アルベルト・コンタドール(トレック・セガフレード)、そして総合5位でアラフィリップの援護ではなく先頭に残ることを決めたダニエル・マーティン(クイックステップ・フロアーズ)である。

 

さらに残り3.5kmの地点で、コンタドールがアタック。これについていけなくなったのがフールサンとヨン・イサギレ。

次いでポートがカウンターアタック。総合において脅威とはならないポートのこの攻撃は見逃され、やがて残り1.5kmの地点で再びコンタドールがアタックを仕掛けた。

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終始攻撃的な走りを見せたコンタドール。アシストのパンタノも良い働きをしており、今大会での総合優勝はもちろんまだ狙っていくだろうが、今後に向けた好材料を得られた一戦ともなった。

 

 

コンタドールはポートの勝利の21秒後に山頂に到達した。

マーティンはその11秒後にゴールし、コンタドールとはわずか1秒差で総合2位の座を守った。

そしてセルヒオ・エナオは4位ゴール。

大きく遅れたアラフィリップから総合ジャージを受け継ぎ、総合2位のマーティンとは30秒差に抑えた。

 

確かな強さを見せつけ、堂々たるイエロージャージ姿を披露したセルヒオ・エナオ

最終ステージは登りゴールではない分、大きなタイム差はつきづらいステージだとは言える。

 

しかし相手はダン・マーティン、そして何よりもアルベルト・コンタドールである。

最終日の最後のその瞬間まで、どうなるかは決してわからない。

パリ~ニースは最終日まで見逃すことのできない展開が待ち構えている。

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総合首位の証たるマイヨ・ジョーヌを手に入れたセルヒオ・エナオ。最終日最後のゴールを迎えるその瞬間まで、その着用の権利を守り切ることが果たしてできるのか。

 

 

そして、ワールドツアー総合優勝の高い壁に阻まれたアラフィリップ。

だが彼はもちろん、ここで挫けるような男ではないだろう。

さらなる鍛錬と研鑽を積み、再び総合優勝争いの場に戻ってきてくれることを、我々は楽しみに待ち続けていくことだろう。

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遅れたアラフィリップを献身的に支え続けたダビ・デラクルス。昨年ブエルタ総合7位の実力者であり、今後もクイックステップの重要な山岳アシスト、あるいはエースとして活躍してくれることだろう。

 


Paris-Nice 2017 Stage 7 Final Kilometers

パリ~ニース2017 第6ステージ

パリ~ニース2017

パリ~ニースもいよいよ終盤。

山岳ステージ3連戦の初日となった今日は、3つの1級山岳を含んだ厳しいコースで、ラスト1.2kmの登りは最大20%の激坂区間を含む2級山岳山頂フィニッシュである。

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スタート直後に待ち構える1級山岳レスピグリエ(l'Espigoulier)峠に向けて、最初に飛び出したのはベンジャミン・キング(ディメンションデータ)とシリル・ゴチエ(AG2R・ラモンディアル)の2人。

次いでウィナー・アナコナ(モヴィスター)、デリオ・フェルナンデス・クルス(デルコ・マルセイユプロヴァンス)、ハリンソン・パンタノ(トレック・セガフレード)がこれに合流するが、山頂に到達するより先に、プロトンによって捕まえられてしまう。

このときの激しいペースに耐えかねて、総合16位につけていたダヴィデ・フォルモロ(キャノンデールドラパック)とローソン・クラドック(キャノンデールドラパック)がリタイアしてしまう。

 

山の上の平坦地点の終端に位置する中間スプリントポイント(24km地点)は集団の中でのスプリント争いによって、サム・ベネットマイケル・マシューズフィリップ・ジルベールの3人が順に通過。それぞれ3ポイント、2ポイント、1ポイントのスプリントポイントを獲得する。

 

そして下りの後、再び集団から飛び出す選手たちが。

アナコナとベン・キングは再びこの集団に。ほか、アレッサンドロ・デマルキ(BMC)、アクセル・ドモン(AG2R・ラモンディアル)、ホセ・エラーダ(モヴィスター)、ミカエル・ヴァルグレン(アスタナ)、ベン・スウィフト(UAEチーム・エミレーツ)、シルヴァン・シャヴァネル(ディレクトエネルジー)、エドゥアルド・セプルヴェダ(フォルテュネオ・ヴィタルコンセプト)、そしてシリル・ルモワーヌ(コフィディス)の合計10人である。

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シャヴァネルは今大会何度目かわからない逃げ。そしてベン・スウィフトはスプリンターにも関わらず、昨年のパリ~ニースに続きチームが変わった今大会でも山岳ステージで活躍をするというのか。

 

 

しかしこの逃げ集団も、本日2つ目の1級山岳ブリゲイル(Bourigaille)峠に差し掛かると分解され、デマルキとセプルヴェダの2人が先頭に飛び出す。

後続のメイン集団では、アルベルト・コンタドールが「お試し」のアタックを仕掛けるが、これは総合リーダー・アラフィリップのチームメートであるダニエル・マーティンと、総合4位のセルヒオ・エナオによって食い止められる。

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ブリゲイル山頂へと向かう道でアタックを仕掛けたコンタドール。しかし、その背後からはコロンビアチャンピオンジャージに身を包んだセルヒオ・エナオの追走が。

 

 

この日、総合争いと並んで熱い攻防が繰り広げられたのが山岳賞争いである。

逃げ10人の中に含まれていたアクセル・ドモンが道中の2級山岳と3級山岳をそれぞれ先頭通過。

そしてエドゥアルド・セプルヴェダがそれぞれ2位通過を果たした。

 

しかし、1級ブリゲイルに向けて、セプルヴェダがデマルキと共に飛び出したのである。

そして、ブリゲイル山頂をセプルヴェダが獲得。

ドモンも追走集団の先頭を獲りポイントを追加するものの、そのポイント差はわずか2ポイント

続く「2回目のブリゲイル」を、セプルヴェダが6位以上でゴールすれば、今日の山岳賞はセプルヴェダのものとなったのである。

 

 

エドゥアルド・セプルヴェダ。

25歳のアルゼンチン人。

長くプロコンチネンタルチームで走り続けている実力派クライマーであり、地元アルゼンチンのステージレース、ツール・ド・サンルイスでは昨年、既に山岳賞を獲得している。

しかし、そんな彼にとって初めての、ワールドツアーレースにおける山岳賞の獲得。

それは悲願であった。

 

 

だからセプルヴェダは必死で坂を上った。

逃げ巧者のデマルキとの協力関係は彼にとって非常に心強かった。

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しかし、その願いは叶わなかった。

 

ステージ優勝を狙っていたセルヒオ・エナオのために、チーム・スカイが強力な牽引を開始し、みるみるうちにそのタイム差は縮まっていった。

 

そして、「2回目のブリゲイル」山頂まで残り2kmとなったところで、2人はあえなく集団に吸収されてしまった。

これにより、セプルヴェダは追加の山岳賞ポイント獲得ならず。

山岳賞はAG2Rの山岳逃げ巧者アクセル・ドモンが手にすることとなった。

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アクセル・ドモンもよく山岳で逃げを打つものの、いつも成功せずに終わる苦労人であり、つい応援したくなるキャラである。それだけに今回の山岳賞獲得は個人的にとても嬉しいものであるし、この後のステージでもぜひ守り切ってほしい。

 

 

さて、デマルキとセプルヴェダを捕まえた直後、プロトンから飛び出しのがオリカ・スコットのエース、サイモン・イェーツであった。

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ゴールまでは残り20kmもあり、ゴール直前には20%区間を含む激坂が待ち構えている。

サイモンはすでに総合タイム差でも2分16秒ものビハインドを抱えているため、リーダージャージを切るアラフィリップとクイックステップ・フロアーズはこのアタックを容認

たちまちサイモン・イェーツは集団から12秒ものタイム差をつけた状態で「2回目のブリゲイル」山頂を通過。

そして、見事な独走劇を展開する。

 

 

ゴールまで残り1.2km。

ついにラストの2級山岳フェイヨンスに差し掛かる。

このとき、サイモン・イェーツが集団からつけたタイム差は46秒

十分に逃げ切りが考えられるタイム差であった。

 

集団でも動きがあった。

すでに大きくタイムを失い、総合争いは完全に望みが経たれたリッチー・ポートが、ステージ優勝に向けて鋭いアタックを仕掛けたのだ。

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ニコラス・ロッシュの献身的なアシストの後、放たれたリッチー・ポート。しかし、リーダージャージを着るアラフィリップが即座にこれに反応した。

 

アラフィリップはこれに反応するべきではなかったかもしれない。

何しろ、ポートは総合ではもはや相手にならないのだから。

ステージ優勝を狙うのであれば、好きに狙わせておけばよかったのだから。

 

それよりも警戒しなければならないのはこの男だった。

セルヒオルイス・エナオモントーヤ

チーム・スカイのエースを務め、ポートやコンタドールが本調子でない今大会において、おそらく最強の登坂力を持つ男。

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彼の登坂力は驚異的であった。

 

何しろ、この坂を上り始める前は46秒あったサイモンとのタイム差を、ゴールまでに17秒にまで縮めたのだから。

つまり、1kmで30秒ものタイムを縮めるほどの登坂力。

 

ジュリアン・アラフィリップは結局、セルヒオ・エナオから12秒遅れてのゴールとなった。

しかも、エナオは6秒のボーナスタイムを獲得し、ポートに先行されたアラフィリップはボーナスタイムをまったく獲得できなかった。

よって、このステージだけで、たった1.2kmの急坂だけで、アラフィリップはセルヒオから18秒ものタイムを失ったのである。

 

現在、セルヒオ・エナオ46秒のタイム差で総合3位。

それはパリ~ニースにおいては決して短いタイム差ではないが、しかし、明日に控えている登坂距離15km、平均勾配7%の本格的山頂フィニッシュを前にして、アラフィリップは決して楽観視できない状況に追い込まれてしまった。

 

 

アラフィリップにはダニエル・マーティンという強力な登りアシストがついている。

一方でセルヒオ・エナオにはバスティアン・エナオミケル・ニエベという、これまた強力なクライマーたちがアシストとして残っている。

総合争いの結末はまだまだ不明確な状態である。

 

そして、今日は逃してしまったステージ優勝を、ポートは果たして得ることができるのか。コンタドールの調子は? 山岳賞の行方は――

パリ~ニース2017、クイーンステージとなる第7ステージは、まさに目が離せない展開となるであろう。

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第7ステージ、ラスト15kmのレイアウト。確実な登りの足が試されるステージだ。

 

 

そしてもちろん、本日勇気ある逃げを打ち、見事な勝利を獲得したサイモン・イェーツに最大限の賛辞を。

昨年ブエルタに続く大きな勝利。

明日以降の走りにも大注目である。

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今年はアダムと共にジロとブエルタにチャレンジをする予定。目指すはもちろん、表彰台の頂点である!

 

 


Paris-Nice 2017 Stage 6 Final Kilometers

ティレーノ第2ステージ&パリ~ニース第5ステージ

ティレーノ~アドリアティコ2017 パリ~ニース2017

 

 

ティレーノ~アドリアティコ第2ステージ

初日のチームタイムトライアルに続き、ティレーノ~アドリアティコ第2ステージはいきなりの登りゴール。最大勾配15%の激坂区間を含む厳しいフィニッシュで、総合が動く可能性すらあった。

 

このステージの終盤5kmで飛び出したのが、昨日のチームTTで原因不明のメカトラブル続出により大きくタイムを失ったチーム・スカイ。そのエース格の1人、ゲラント・トーマスであった。

ボブ・ユンゲルス、ヨナタンカストロヴィエホ、そしてダミアーノ・カルーゾらの追随もすぐさま振り切って、トーマスは残り4kmを独走。

最大で20秒近いタイム差をつけたまま、最後は後続集団と9秒のタイム差をもってゴールした。

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総合でのタイムを大きく失っていたことから、逃げを見逃された、と見ることも可能かもしれない。

しかしこの日、最も足が良かったのもまた事実で、今年ジロのエースを狙っているというトーマスにとっては、絶好調の滑り出しを見せることができた。

 

また、残り1kmを切るタイミングで飛び出したトム・デュムランの動きも、最終的には吸収されてしまったものの、いい走りであった。

ルイ・コスタも一度アタックを仕掛けていたりと、今シーズン調子のいい選手たちがしっかりと動いたレースであった。

 

 

恐れていた総合勢のタイムロストというのもなく、結果的には平穏無事に終わったステージと言える。

明日は平均勾配7%の登りスプリントフィニッシュ。

昨年はガヴィリアがユワンとサガンを下しての勝利を果たした印象的なステージで、今年のユワンのリベンジを期待していたのだが、ユワン、そしてその頼れる発射台であるクルーゲが、ともにこの第2ステージでリタイアとなってしまった。

本日も3位に入る好走を見せたサガンが、最大の優勝候補と言えるだろう。

プロコンチネンタルチームの中から唯一ガヴァッツィがベスト10入り。今シーズン序盤もベスト10に入るリザルトを複数回見せているベテランパンチャーである。

 

 

 

パリ~ニース第5ステージ

連続するラウンドアバウトによってトレインが崩壊。

相変わらず混沌としたスプリントを制したのは、巧みにデマールの背後にとりついていたアンドレ・グライペル

残り75mで飛び出したグライペルは、そこから一気に加速。

先頭を走っていたフルーネヴェーヘンを追い抜き、軽々と勝利を掴み取ってしまった。

グライペル今期3勝目。昨年よりも早いペースで勝利数を稼いできている。

(なお、勝利数最多はカレブ・ユワンの5勝、次いでキッテルとクリストフの4勝だ)

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キッテルは不調。トレインがうまく機能しなかったというのもあるが、明日から始まる本格的な山岳ステージに向け、クイックステップとしてもキッテルのためにリソースのすべてを割くわけにはいかない、という状況なのかもしれない。

 

これでスプリンターが活躍しうるステージは終了。

勝利を得られずに終わったキッテルは不完全燃焼といったところか。

きっちりとベスト10に入ってくるコルブレッリとベネットはさすが。そしてコルトニールセン、コカールもきっちり今年の調子の良さを発揮している。

 

明日は山岳逃げステージ。

どんな選手が逃げに乗るかが、楽しみである。

パリ~ニース2017 第4ステージ ゴルカ・イサギーレに光が当たるとき

ティレーノ~アドリアティコ2017 パリ~ニース2017

ジュリアン・アラフィリップ、まさかの大勝利。

彼がこのタイミングで総合ジャージを着ることには何の違和感もないが、あれだけの走りを見せたアルベルト・コンタドールを20秒も上回って勝利したことが何よりも驚きである。

第2ステージのコルブレッリ、第3ステージのベネットに続く、意外な勝利。

天候同様に波乱に満ちたパリ~ニースである。

 

 

しかし、ここではあえて、アラフィリップの話ではなく、

その影で、コンタドールとほぼ同タイムというこれもまた驚きの結果を叩き出したゴルカ・イサギーレ、そしてトニー・ギャロパンの話をしたい。

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それまで暫定トップタイムを叩き出していたコンタドールを、中間計測では21秒上回り、そして最終結果ではわずか1秒のタイム差でクリアした。Jsportsより。

 

 

イサギーレ兄弟の明暗

ゴルカ・イサギーレは、弟のヨンと共に、バスク人チーム「エウスカルテル・エウスカディ」に所属し、ワールドツアーレースでの経験を積んでいった。

そしてチーム解散後の2014年シーズンからはモヴィスター・チームに在籍し、グランツールでのアシストなどを通じチームに貢献していった。

 

国内選手権の優勝、ツール・ジロでの区間優勝、そしてツール・ド・ポローニュでの総合優勝など、華々しい活躍を続ける弟と違って、ゴルカは常に日陰者の存在であり続けた。

そしてついに今年、ヨンは高額のオファーを受けてバーレーンメリダへと単身渡っていった。

かたや、チームの顔として、エースナンバーをつけることすら許されたヨン・イサギーレ。

兄弟の明暗ははっきりと分かれた、かのように思えた。

 

しかし、2017シーズンでまず快調な滑り出しを見せたのは、兄ゴルカの方であった。

 

ダウンアンダーでの走り、そしてパリ~ニース

まず、ゴルカが その実力を発揮したのは年初のツアー・ダウンアンダーであった。

第2ステージ、パラコームの登りゴール。

2年前の同ステージではローハン・デニスに勝利をもたらし、彼の総合優勝を決定付けた。

今年も総合を大きく左右することになるだろうと予想され、注目が集まっていたが、そのようなこのステージで、ゴルカはリッチー・ポートに次ぐ区間2位。

あのエステバン・チャベスすら退けての成績であった。

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しかし翌日に落車。その後もリタイアこそしなかったものの、もう一つのクイーンステージ、ウィランガヒルにて大きく遅れたことで、総合成績は28位に沈んでしまった。

 

 

終結果こそイマイチではあったものの、見事な走りを見せたゴルカ・イサギーレ。

彼が次に注目を集めることになったのがこの、パリ~ニースであった。

 

ダウンアンダーのとき同様、ゴルカはチームのエースではなかった。 

ヨンはバーレーンメリダのエースであるのとは対照的に。

 

しかし、そんなゴルカが、第1ステージの横風の洗礼を大きく受けたチームの中で、ただ1人先頭集団に残ることができていた。

結果、第1ステージのゴール順位は12位。先頭から19秒差。

ゴルカの次に、モヴィスター・チームで成績を残したのは24位のイマノル・エルヴィーティ。それ以外の選手はほとんどすべて100番台の順位でその日を終えたほどであった中で、ゴルカだけが総合に絡む結果を出せたのである。

 

なぜ、ゴルカがそこにいたのかはわからない。それはたまたまの偶然だったのだろう。

 

しかし、ゴルカはさらにこの第4ステージで結果を出した。

すなわち、中間計測は優勝者アラフィリップに次ぐ2位。

そして、登りでも見事な走りを見せ、区間2位のコンタドールに1秒程度の僅差で敗れるという結果。

結果、首位のアラフィリップからは47秒遅れの総合3位にまで登り詰めた。

 

この後、クイーンステージの第7ステージなどをタイムを落とさずにクリアする、というのは正直考えられない。

総合優勝はもちろん、現在の総合順位をキープすることも難しくはあるだろう。

 

それでも、このダウンアンダーとパリ~ニースで見せた走りは、モヴィスターにおける彼の存在感を大きく増すことになったであろう。

 

アマドールやモレーノ、エラーダ兄弟といった強力なアシスト陣の揃う中で、ゴルカもまた、グランツールでキンタナやバルベルデなどをサポートする重要な選手として信頼され続けることを願う。

そしてどこかのステージレースでの勝利も、いつか。

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2年前のツールでバルベルデ、キンタナを支え続けたゴルカ。この年の総合順位は33位と、それまでで最も良い成績を叩き出した。翌年は第17ステージで落車リタイア。

 

 

一方で、弟ヨンは今年、イマイチな滑り出しとなっている。

まず、総合成績を期待されたブエルタ・アンダルシアでは第3ステージのITTでなぜかリタイア。

 

そして、復帰戦となったこのパリ~ニースでは、第1ステージで横風により大きく遅れ、今回のITTでも区間9位と微妙な結果。

少なくとも、国内王者にも輝き、カンチェラーラを破ったことすらある彼にとっては、十分な結果とは言えないだろう。

 

今年はツール・ド・フランスでも総合エースを担うと噂されているヨン・イサギーレ。

そこに向けて、調子を取り戻していくことが求められる、そんなシーズンの序盤となってしまった。

 

 

トニー・ギャロパンという可能性

もう1人、驚きの結果を叩き出したのがトニー・ギャロパンである。

こちらもゴルカ同様、まず中間計測でコンタドールを上回るタイムを出し、そのマージンを登りでもしっかりと守った。

結果、コンタドールとは1秒を下回る僅差で区間3位。

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だが、今年のギャロパンにとって、この結果は決して意外ではない。

 

2月初頭に行われたフランスのステージレース、エトワール・ドゥ・ベセージュ。

この最終ステージの個人タイムトライアルでギャロパンは優勝。

このタイムトライアルが、ラスト2kmを激坂含んだ登りフィニッシュであり、今回のパリ~ニースITTと似たレイアウトであったのだ。

 

また昨年のツアー・オブ・ブリテンITTでは、トニー・マルティン、ローハン・デニス、トム・デュムラン、スティーブ・カミングスに次ぐ区間5位を記録。そのときのタイム差は25秒と大きかったものの、これだけのメンバーの中でのこの成績は十分に立派であった。

(なお、このときゴルカ・イサギーレもギャロパンと同タイムの6位であった)

 

このツアー・オブ・ブリテンITTも、ラスト2km地点に、勾配8%程度の登りを含むポイントがあり、こういった起伏に富んだITTでの成績を少しずつ伸ばしてきているのが今のトニー・ギャロパンである。

 

 

かつて、フランス人としてマイヨ・ジョーヌを着た経験を持ち、全フランス人の期待を一身に背負ったこともあるトニー・ギャロパン。

しかし、その期待が大きくなればなるほど、それに応えられるだけの結果を出せず、彼は大きなプレッシャーを感じていたことだろう。

 

しかし、ここ最近、そのプレッシャーが幾分弱まったことで、栄光を掴むチャンスは再び彼のもとに近づこうとしている。

現在、総合2位。

その成績を維持することは決して簡単ではないだろうが、それでも、あと少しの苦難を乗り越え、総合表彰台へと登ること――フランス人としての大きな栄誉を、ぜひ掴み取ってほしいものだ。

 

 

総合の行方

快走によりコンタドールやザッカリンが大きく順位を上げた。

一方でヨン・イサギーレやサイモン・イェーツは総合表彰台の可能性を奪われてしまったと見てよいかもしれない。

首位のアラフィリップとコンタドールとのタイム差は1分31秒。

安心できるタイム差ではないものの、守り切り、アラフィリップの総合優勝という可能性は十分にある展開だ。

 

総合の行方を決めるのは第7ステージ「コル・デ・ラ・クイヨール(クイヨール峠)」。

登坂距離15km、平均勾配7%。

確実な登りの足がなければずるずると引き離されかねない厳しい登りだ。

それでもアラフィリップは昨年のツアー・オブ・カリフォルニアで、全長12km、平均勾配8%の「ジブラルタル・ロード」で勝利を飾っている。

十分に対応することは可能なはずだ。

 

また、最終ステージはエズ峠からのダウンヒルバトル。

現在総合2位のトニー・ギャロパンは、昨年のこのダウンヒルで、ゲラント・トーマス、セルヒオ・エナオと共に猛スピードで下り切り、逃げ切りを果たそうとしていた集団とコンタドールたちを捕まえている。

その走りが見せられれば、ギャロパンの総合表彰台も十分狙えるだろう。

 

だがやはり、クイヨール峠でアラフィリップ、ギャロパン、ゴルカ・イサギーレなどが遅れてしまった場合――最も総合優勝に近い位置にいるのが、チーム・スカイのエース、セルヒオルイス・エナオである。

登坂力においては、コンタドールにも引けを取らない力を持つはずだ。

もしもクイヨール峠の登りでアラフィリップが隙を見せるようなことがあれば――エナオは、そのチャンスを逃さずに鋭い攻撃に出るしかない。

 

セルヒオ・エナオも、強豪の集うスカイにおいて、アシストとしての確かな実績を持ちながらも、自らの勝利自体はまだ大きなものがない。

このパリ~ニースはそんな彼にとって、その名を世界に轟かす千載一遇のチャンスである。

守りに徹し、中途半端な結果で終わるようなことだけは、ないように願っている。

 

もちろん、コンタドールの逆転総合優勝、あるいはザッカリンの活躍にも期待したいところ。

 

波乱に満ち、多くの選手が苦境に立たされているこのパリ~ニースであるが、その総合優勝争いの行方も、まだまだ面白さを失ってはいない。

 

 

ティレーノ~アドリアティコについて

同日に開催されていたティレーノ~アドリアティコ第1ステージ、チームタイムトライアル

総合優勝はローハン・デニス擁する、元TTT世界王者BMCレーシング。

昨年に続く第1ステージの勝利である。

そして2位は昨年王者のクイックステップ・フロアーズ。トニー・マルティンが抜けた穴を補い切ることはできなかったか。悔しい2位である。

 

そして3位には、FDJが入ってきた。

BMC,クイックステップと並んでTTTに強いオリカ・スコットを差し置いての3位である。

これには驚いた視聴者も多かった様子。

 

 

しかし、私はこれを特段驚くべき結果であったとは思っていない。むしろ、優勝すらしてほしかったと。

実際、エースのティボー・ピノも、昨年はフランスITT王者となっており、各ステージレースのITTでも好成績を叩き出していた。

さらに今年は、同じく昨年各レースのITTで勝利には届かないものの上位に来ることの多かった元ジャイアント・アルペシンのトヴィアス・ルドヴィクソンが仲間入りを果たしている。

チーム全体としてもTT改善に取り組んでいるようで、今回、ピノが総合表彰台を目指すにあたって、大きなアドバンテージを手に入れる一助となったのは間違いない。

 

素晴らしいぞ、FDJ! この調子で今後のステージレースでもTTT好成績を出してピノを助けてくれ!

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また、最大の優勝候補であるナイロ・キンタナ擁するモヴィスター・チームも、このTTTで4位と悪くない結果に。

カストロヴィエホやベンナーティを中心に、グランツール仕様の総合力・独走力の高いメンバーを揃えている結果であり、これもまた、今後のシーズン通しての成績が楽しみである。

 

一方、最強のメンバーを揃えてきたはずのチーム・スカイが、途中、ジャンニ・モズコンを襲ったトラブルなどの影響で大きくタイムを落としてしまった。

果たしてこのビハインドを取り返すことはできるのか。

 

ティレーノ~アドリアティコも、見逃すことのできない展開が待ち構えていることだろう。