りんぐすらいど

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アジアツアーランキング首位をひた走るチーム右京はこのまま突き抜けることができるか

チーム右京が好調だ。

現在行われている「ツアー・オブ・タイランド」(2.1)では、ジョン・アベラストゥリが第3ステージで優勝。

先日行われた「ツール・ド・台湾」(2.1)でも、ベンジャミン・プラデスが総合優勝を果たし、125ポイントものUCIポイントを稼いでいる。

国内レースとしても「ツール・ド・栃木」(2.2)で区間2勝。今期計4勝だ。

 

昨年は4勝するのに5月のツアー・オブ・ジャパンまで待たなければならなかったのに対し、今年は4月の頭で達成。

しかも、昨年の勝利数8のうち、海外レースでの勝利は3しかなかったのに対し、今年はすでにそれも2勝である。

 

現在、チーム右京は、アジアツアーのチームランキングで首位に立っている*1

昨年は5位に終わったが、今年はこれを上回ってきそうである。もしかしたら、このまま首位を走ることができるかもしれない。

 

将来的には日本のチームとしては初となるツール・ド・フランスへの出場を目指すと宣言し続けているチーム右京。

 

その歴史と今後の展望を概観していこう。

 

 

 

チーム右京の歴史

チーム右京は2012年、元F1ドライバー片山右京が立ち上げたチームである。

その目標は「2017年までのツール・ド・フランス出場」。

結成初年度は国内プロツアーでチーム総合4位、個人総合5位とまずまずの結果ではあったが、翌年の2013年シーズンには早くもチーム総合優勝と個人総合優勝及び2位を輩出するという、類稀なる結果を叩き出した。

 

この「2年目の大ブレイク」の立役者となったのが、2013年シーズンから新加入となったホセビセンテ・トリビオ土井雪広である。

 

トリビオは2012年まではスペインのプロコンチネンタルチームに属していた選手であり、ブエルタ・ア・エスパーニャでの区間優勝経験もある。

また土井は同じく2012年まで欧州を中心に活動しており、2011年には日本人として初めてブエルタへの出場を果たした。2012年には全日本ロードチャンピオンにもなっている。

 

そんな、本場の力を知り尽くした2人と、2008年Jプロツアー王者であり創設時からのチームキャプテンである狩野智也を合わせた3人が中心となって、チーム右京は「創設2年目のチーム&個人制覇」を成し遂げたのである。

また、この年はインドネシアのステージレースでも区間1勝と総合優勝をトリビオが果たしており、チームとしても初のUCIレース勝利となった。

トリビオは2014年シーズンの個人総合優勝も獲得しており、チームへの多大な貢献をしてくれたというわけである。

 

 

しかしこのトリビオが、2015年からは同じ日本国内のコンチネンタルチームである「マトリックスパワータグ」へと移籍することが決まった。時を同じくして狩野智也も、新創設される地元群馬の地元密着型チーム「群馬グリフィン」に移籍することに。

さらに土井もまた、2015年シーズンを最後にチームから去ることになった。

 

チーム創設期を支えたメンバーが次々と退団する中、新たなチーム右京の歴史を作るのが、今年ツール・ド・栃木の第1ステージを勝利したサルヴァドールグアルディオラ(2014年入団)、昨年ツアー・オブ・ジャパン及びツール・ド・熊野総合優勝と大活躍のオスカル・プジョル(2015年入団)、そしてチーム右京の誇る最強スプリンタージョン・アベラストゥリ・イサガ(2016年入団)といったスペイン人の精鋭たちである。

 

そして2015年シーズンに新加入した畑中勇介も、同シーズンの個人総合優勝に輝き、チーム右京の新たな時代を担う日本人として注目を集めた。

 

これらの新メンバーを率いて、チーム右京は、新たな挑戦を始めていく。

 

 

アジアツアーランキングトップを目指して

2013年から2015年にかけて、チーム右京は国内のプロツアーで結果を出し続けてきた。まさに国内最強のチームと言っても過言ではない。

 

  • 2013年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合優勝
  • 2014年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合2位
  • 2015年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合優勝

 

しかし、以下に示すように、世界に目を転じれば、彼らはまだまだひよっこの域を出ないものであった。

 

  • 2013年UCIアジアツアーチームランキング28位
  • 2014年UCIアジアツアーチームランキング23位
  • 2014年UCIアジアツアーチームランキング23位

 

そして、2014年・2015年シーズンにおいて、UCIレースにおける勝利は一度もなかったのである(当時チームに在籍していた窪木一茂が、2015年全日本チャンピオンになったくらいか)。

 

 

よって、チームは2016年シーズンから、より積極的にUCIレースでの勝ちを目指すようになる。トリビオや土井といった強力な選手の代わりに、一回り若い有力な選手を次々と獲得。より強化したチームと共に、5月初旬にはチームを2手に分けてアジアツアーのレースに派遣するという、新たな試みも実行に移した。

 

そして、ツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野という国内の重要な2レースにおいて、オスカル・プジョルがともに総合優勝を果たし、一気にUCIポイントを獲得。

2016年シーズンのアジアツアーチームランキングは5位と大躍進を果たした。

 「トップテンに入れればまずはよしとすべきかな*2」とシーズン冒頭で語っていた右京だが、その予想を大きく上回る結果を叩き出した、というわけである。

 

しかし、UCIレース8勝という大きな結果にも関わらず、そのうちの海外レースでの勝利数はいまだ3でしかない。

よって、2017年シーズンはさらなる「海外レースの勝利」を目標に掲げて、シーズンを開始することにした。

 

 

そこでチームが取った方針が以下の2つである。

 

  • 国内のJプロツアーへの不参加
  • 新たな戦力として、元チーム・スカイのネイサン・アールの獲得

 

そしてアジアツアーだけでなく、スペインを中心としたヨーロッパツアーへの参加もより積極的に行っていくと発表した*3

 

それらの結果として、本記事冒頭に挙げた成果を出しており、チーム右京の新戦略は現状のところ成功しているといって間違いないだろう。

 

 

「2017年までのツール・ド・フランス出場」は果たされるどころか、未だ、その前提となる「プロコンチネンタルチームへの昇格」すら実現していない。

それでも、年を重ねるごとにその成果を積み重ねていっているという事実が、彼らの可能性を感じさせてくれる。

 

「毎年そうだけれども、去年より今年のほうが強い、今年より来年のほうがさらに強い、というチームにしていかなければならない。だから、今年達成できなかったことが、次のスタート地点に立ったときの目標になります*4

 

その言葉通りの結果を出している彼らを、私は今後も応援していきたい。

 

 

今後の展望

今後のアジアツアーレースにどのようなものがあるかを確認しておこう。

 

  • ツール・ド・ロンボク(2.2) - 4月13日~16日 インドネシア
  • ツアー・オブ・ジャパン(2.1) - 5月21日~28日 日本
  • ツール・ド・熊野(2.2) - 6月1日~4日 日本
  • ツール・ド・コリア(2.1) - 6月11日~18日 韓国
  • ツアー・オブ・チンハイレイク(2.HC) - 7月16日~29日 中国
  • ツアー・オブ・シンタイ(2.2) - 8月25日~27日 中国
  • ツール・ド・北海道(2.2) - 9月8日~10日 日本
  • ツアー・オブ・チャイナⅠ(2.1) - 9月8日~15日 中国
  • ツアー・オブ・チャイナⅡ(2.1) - 9月17日~24日 中国
  • ツール・ド・モルヴカス(2.2) -  9月18日~22日 インドネシア

  • ツール・ド・バニュワンギ・イジェン(2.2) - 9月27日~30日 インドネシア
  • ツアー・オブ・アルマティ(1.1) - 10月7日 カザフスタン
  • ツアー・オブ・イラン(2.1) - 10月8日~13日 イラン
  • ツール・ド・セランゴール(2.2) - 10月17日~21日 マレーシア
  • ツアー・オブ・ハイナン(2.HC) - 10月21日~29日 中国
  • ジャパンカップ(1.HC) - 10月22日 日本
  • ツアー・オブ・イェンチョン(1.2) - 11月1日 中国
  • ツアー・オブ・タイフーレイク(2.1) - 11月4日~12日 中国

 

昨年にチーム右京が参戦したレースは上記赤の太字で記されているレースである。

しかし昨年参加したものの今年は開催予定のないレースが複数あったり、逆に今年新設のレースもいくつかあること、そして今年はJプロツアーに参加しないことなどから、赤の太字以外のレースも多く参加することになるはずだ。

今後、新たに参加したレースがあれば、細かく追っていきたい。

 

 

また、以下に、2017年シーズンの登録選手を一覧で示す。 

 

これを見て分かるように、やはり外国人選手の戦績がずば抜けている。

というより、畑中以外の日本人選手はまだまだレース経験の少ない選手も多く、さらに言えば今年チームに初加入したメンバーも複数名いるほどだ。

 

だからチーム右京というのは、「外国人選手を中心にUCIレースで勝利を重ね存在感を増しつつ、若手日本人選手の育成を行う」チームであるといえる。

チームの存在感アップと若手国内選手の育成の両方が重要である以上、この方針は妥当であると言えるだろう。

 

なお、同じような方針で成功しつつあるのがディメンション・データであると私は思う。

2015年ツール・ド・フランスに、アフリカ籍として初めてツール参戦を果たしたこのチーム(当時の名称はMTNクベカ)は、ヨーロッパで強化されたエリトリア人のダニエル・テクレハイマノによる一時期的な山岳賞獲得、および元BMCのイギリス人スティーブン・カミングスのステージ優勝によって一気に注目を集めた。

その翌年にはマーク・カヴェンディッシュとその相棒たちの加入によってさらに強化。アフリカチームとしての色が薄まったかと思えば、ランカウイで総合優勝を果たしたレイナルド・ヤンセファンレンスブルグや、今年のツアー・オブ・オマーンで新人賞を獲得したメルハウィ・クドゥスなど、「アフリカ人選手の育成」という課題もしっかりとこなしている様子が見られる。

 

個人的には、チーム右京というのは、まさにこのディメンション・データのような形で成功を収めてほしいと思っているのである。

日本人の若手育成「だけ」していても、限界があるのかもしれない。

まずは外国人選手を活用しつつ、日本国内だけでなくまずアジアから存在感を増していき、そこで走る日本人選手たちも必然的に刺激を受けて成長していく――そういう環境を作ることを、チーム右京には期待している。

 

そうしてやがて、ヨーロッパの大きなレースで活躍する日本人選手が少しずつ増えていく。

その先に、国を代表する新たな日本人選手が生まれるものだと、私は思っている。

 

 

右京監督も、東京オリンピックによる自転車界に対する好影響はもって5年である、と語っている。

だから、「2017年」目標の次は、「2025年」目標である。

その年までに、ヨーロッパでのレースである一定以上の存在感を発揮し、日本人選手たちがより活躍できる土壌を作ること。

それがチーム右京にとっての、今後の大きな目標の一つとなるだろう。

 

 

チーム右京という、日本人ロードレースファンにとっての新たな希望の活躍を、私は今後も見守っていきたい。

 

 

参考リンク

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

→ 2014年~2016年にかけて連載された、チーム右京密着レポート。非常に読み応えがある内容です。 

 

PI PEOPLE vol.7 ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア & 吉田隼人 | パールイズミ(Pearl Izumi)

→ チーム創設期を支えたトリビオが、現在のチームメートの吉田隼人と共に栗村修氏のインタビューを受けている記事です。トリビオの日本への愛が伝わる内容となっています。

 

世界を知る男、ネイサン・アールがTeam UKYOを遥かな頂へと導く - サイバナ

→ 今年チームに新加入した期待のオーストラリア人、ネイサン・アールに関するコラムです。

 

ブエルタ・アル・パイスバスコ2017 第2ステージ

初日のパンプローナ戦を終えたプロトンはそのまま南西に進路を進め、いよいよバスク州に突入。

バスク州南部のエルツィエゴ(スペイン名「エルシエゴ」)へとゴールする。

 

強い向かい風が吹く中、プロトンはペース抑え目で走り、先頭は2名の逃げによって最大4分近いタイム差がつけられた。

 

逃げているのはカハルラルのファブリシオフェラーリ(ウルグアイ、32歳)と、コフィディスのルイスアンヘル・マテ(スペイン、33歳)である。

 

途中2つのスプリントポイントはともにフェラーリが先頭通過。

一方で2級と3級の2つの山岳はともにマテが先頭通過した。合計9ポイント獲得。

 

山岳の3位以下争いでは、前日に逃げて山岳ポイントを獲得していたアントンとバゴが熾烈な争いを繰り広げる。

ともに3位はアントンが、4位はバゴが獲得し、アントンは合計3ポイント獲得したものの、昨日つけられたポイント差をひっくり返すことはできず、1ポイント足りずで山岳賞を逃した。

 

逃げ2人のうち、フェラーリは残り18km地点で捕まえられてしまった。

マテはその後も懸命に逃げ続けるが、残り16km地点であえなく吸収。

 

 

今日の勝負所は残り6km地点にあるノンカテゴリーの登りと、そこからゴールまで続く下り坂。

一気に集団のペースが上がり、縦長になるが、分裂することはなく大集団のままゴール直前に向かう。

ロット・ソウダルのショーン・ドゥビーがアタックするも届かず、先頭でゴール前に現れたミヒャエル・アルバジーニが、猛追かけるマクシミリーノ・リケーゼを振り切って先頭でゴールした。

今年37歳のベテランが、今期1勝目、プロ通算26勝目を挙げる。

オリカ・スコットはこれで今期16勝目。クイックステップ、BMCに次ぐ全チーム中3位の勝利数を稼いでいる。

 
Vuelta Ciclista al País Vasco 2017 | Etapa 2 Kilómetros finales

パリ~ルーベ2017 プレビュー

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「クラシックの女王」或いは「北の地獄」

いよいよ開幕(4月9日)。

「地獄」の名に相応しいこのレースで、栄冠を手にするのは果たして誰か。

  

目次

 

  

今年のコースと見所

2017年のパリ~ルーベのコースは、例年と大きく変わる部分は存在しない。

第26セクター「ブリアストル」および第25セクター「ソレム」が加わったものの、いずれも難易度は高くなく、大勢に影響を及ぼすことはないだろう。

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以下、見所となるパヴェ(石畳)区間を紹介する。

細かいデータはThe race - Compiègne > Roubaix - Paris-Roubaix 2017を参照している。

 

第22セクター(残り119.5km)「ケレネン」(★★★)

全長2.5km。別段、とりわけ厳しいパヴェ区間、というわけではない。きれいに耕された畑の間に走る真っ直ぐな一本道。石畳も比較的きれいで、乾いた日には砂埃が舞う程度。

しかし、昨年は雨上がりのコンディションで、少々水はけが悪かった。

結果、ここで大きな集団落車が発生し、サガンカンチェラーラという2大優勝候補が後方に取り残されることになった。

そのあとも2人は必死の追走を仕掛けるも結局は先頭に届かず。何もないと思われていたところで勝敗を分ける事態が到来するという、いかにもパリ~ルーベらしい展開を生み出した。

今年も、大きく勝負が動く場所ではないとは思うが、天候の状態によっては気を付けてみる必要があるかもしれない。

 

第19セクター(残り95.5km)「アランベール」(★★★★★)

全長2.4km。美しき森の中の「地獄」。

路面状況は最悪だが、全選手が警戒するゆえか、ゴールまでもまだ距離があるこの時点で決定的な動きが生じることは少ない。
むしろ、ここで「脱落しない」ことが非常に重要である。落車、パンク、道が狭いこともあり後方に取り残されてしまうと大きなタイムギャップが生まれ、たとえ先頭に戻ることができたとしても大きく力を使ってしまうことになる。たとえば2014年には、優勝候補でもあったアレクサンダー・クリストフがパンクし、戦線離脱する羽目になってしまった。
有力選手が遅れた場合、前方でも引き離したいチームの強力牽引などもあり、非常に見応えのある展開となるだろう。

この美しき地獄の森こそが、自分にとってはロードレースにおけるもっとも美しい風景だと思っている。この森の入り口が見えたとき、果てしない興奮が湧き上がってくる。

 

第12セクター(残り54km)「オシー・レ・オルシ」(★★★★)

全長2.7km。例年は3つ星だったようだが、昨年から4つ星に?

5つ星「モンサン・ペヴェル」の直前とあって勝負が動きやすいポイント。直前の「オルシ」(★★★)とセットで注目したい。逃げグループは少なくともここまでには捕まるようだ。その際のペースアップが集団を分けることも。

昨年はここで、チーム・スカイの落車が続発。4名中3名が落車という事態に。

 

第11セクター(残り48.5km)「モンサン・ペヴェル」(★★★★★)

全長3km。およそこの辺りから、実力者による本格的なペースアップと、集団のセレクションがかかるだろう。昨年はここで最終グループの5人を含む7人が抜け出す形となった。また、後方ではカンチェラーラとニキ・テルプストラが落車。サガンはなんとかやり過ごすが、先頭復帰が絶望的になった。

カンチェラーラが勝利した2013年には、逆に彼が力を見せつけて、集団を一気に絞り込んだセクションでもあり、いずれにしても実力がはっきりと出る、重要な地点であることは間違いない。

 

第9セクター(残り39km)「ポンティボー」(★★★)

全長1.4km。ここも決して難易度の高い区間ではないものの、いよいよ残り距離が短くなってくるため、勝負どころになることもしばしば。

2013年はファンデンベルフやファンマルクといった優勝候補が飛び出し、カンチェラーラが遅れる(のちに追い付く)。

2014年はサガンが飛び出して先頭集団に追い付き、のちに独走に入った。

サガンは昨年も今年もフランドルで30km台でのアタックを仕掛けている。

今年のミラノ~サンレモでもポッジョの頂上からのアタックを仕掛けるなど、積極的な攻撃に出ることが多いため、もしかしたら今回のルーベもこの辺りで、攻撃を仕掛けてくるかもしれない。もちろんそれまで彼が無事であれば、の話だが。

 

第5セクター(残り19.5km)「カンファナン・ぺヴェル」(★★★★)

全長1.8km。昨年はここで、最後の5名が形成された。2014年は、カンチェラーラの執拗なペースアップにより、先行していたボーネングループが捕まえられた場面となった。

直後に最後の山場である「カルフール・ド・ラルブル」を控えているが、それ単体では勝負を決めきれないと判断したスペシャリストたちは、この区間から積極的に攻撃を仕掛けていくだろう。

 

第4セクター(残り17km)「カルフール・ド・ラルブル」(★★★★★)

全長2.1km。いよいよ最後の5つ星区間。もちろん、この時点で残っているメンバーは精鋭中の精鋭であるため、この区間で特別遅れるということはむしろ少ない。しかし、たとえば2013年はここで、先頭に2人送り込んでいたクイックステップの選手が次々とトラブル(観客との接触)に見舞われて脱落。最後まで何があるかわからないという点で、油断はできない。

とりあえずサガン、あまり道の脇を走り過ぎない方がいいぞ。

 

 

この後は難易度の高いパヴェ区間があるわけではないが、パリ~ルーベにおける決定的な動きは、しばしば何でもない舗装区間で引き起こされたりもする。2015年がいい例で、あらゆる選手がルーベ対策を講じ、慎重に事を進めた結果、最後のカルフール・ド・ラルブルを越えてもなお20名以上の大集団、ということすらありうる。

 

よって、最終的には機を見た飛び出しと、そのあとの独走力によって決まる場合もある。

 

これらの特徴を考えたうえで、今大会の優勝候補者たちを次に挙げることとする。

 

 

注目選手たち

トム・ボーネン(ベルギー、36歳)

いよいよ彼の自転車選手人生における最後のレースとなった。過去、ルーベ優勝は4回。これは過去最高記録タイであり、あと1勝で彼は唯一の記録保持者となる。更新は実に40年ぶりだ。

不可能な話ではない。何しろ昨年は最後まで粘り続け、2位につけたのだから。そのときは最後のスプリントで敗れたが、今年はすでにスプリント優勝が1回。ガヴィリアのスプリント勝利のアシストも務め上げている。状態は万全のように思える。

先日のフランドルでは、あくまでも裏方に回った。カペルミュールでのアタック、そしてその後の、ジルベールのための集団牽引。自身は「ボーネンベルグ」のメカトラブルによって勝機を逃してしまったが、それも、このルーベに向けた「不幸の前払い」だと思えば安いものかもしれない。

ジルベールの勝利は感動的だった。ベルギーの観客たちも、今度こそは、この「ベルギーの王」による勝利を待ち望んでいることだろう。

 

 

ペーター・サガン(スロバキア、27歳)

ロンドと比べ、パリ~ルーベとの相性は決していいとは言えないだろう。昨年は集団落車に巻き込まれて後方に取り残されてしまった。一昨年は勝負所の直前にパンク。2年前は一時独走態勢を作ったうえで4位に入るものの、テルプストラの独走を許してしまい表彰台を逃した。

だが今年は割と本気で狙っているのではないか、というのが大方の予想だ。今の時代、最も「モニュメント制覇」に近い男とされているサガンが、ロンドの次に制するとしたらこのパリ~ルーベであるはずだ。

今シーズンここまで、勝っていないわけではないが、大きなレースではことごとく悔しい結果に終わっている。サンレモは2位。ロンドはオウデクワレモントでの自分のミスによる落車。

しかし昨年もシーズン序盤、勝ちに恵まれない中で「落ち着いた」頃、ヘント、そしてロンドと勝利した経緯もある。

ここまでの敗北が糧となって、いよいよこのルーベでの勝利がもたらされる可能性は十分にある。 

 

 

セップ・ヴァンマルク(ベルギー、28歳)

無冠の帝王は、今年もまた、フランドルでの勝利を逃した。

カペルミュールでのクイックステップの猛攻に耐え、サガンとヴァンアーヴェルマートを後方に置き去りにできたところまではよかった。完璧であった。

しかしその後、自らが原因となる落車で勝機を失ってしまった。本当に、悔やんでも悔やみきれない結末だったであろう。

 

とはいえ、彼にとってはもしかしたら、ロンドよりもルーベの方が相性がいいかもしれない。ロンドは過去4年で3位が2回だが、ルーベは過去4年で2位が1回、4位が2回である。さらに、ルーベのあの悪夢のような行程を無事乗り越えたという意味では4回中4回ともであり、実は現役選手の中で最もルーベを「こなす力」がある選手かもしれないのだ。

だから、きっと今年も最後まで残ることができる。あとは、彼のライバルとなる選手がどれくらい、石畳の犠牲になるか・・・ 

 

 

ルーク・ロウ(イギリス、27歳)

チームのエースはおそらくイアン・スタナードとなるだろう。昨年も3位だ。

しかし、今年のクラシックシーズンに限って言えば、ロウの方が調子がいいように思う。E3は15位、オンループは6位、クールネ~ブリュッセル~クールネに関しては3位だ。フランドルではヴァンマルクの落車に巻き込まれてしまい120位となってしまったが、カペルミュールでのクイックステップの攻撃には耐え、モズコンと共に先頭集団に残ることができるなど健闘した。

そもそもスタナードが頑張った昨年も、途中落車したものの復帰し、スタナードを発射させたうえで自身も14位と悪くない結果であった。その前の年のルーベは8位だ。

スタナードと共に終盤に残った場合には彼を優先させるのかもしれないが・・・。

競技場でのスプリント合戦になった際も、スタナードよりもスプリント力があると言えそうな気もする。もう5年も前だが、ツアー・オブ・ブリテンでボーイ・ファンポッペルを破って勝利したこともある。

また、着実にクラシックでの実績を残しつつあるチームメートのジャンニ・モズコンにも上位入賞を期待しておきたい。

 

 

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、28歳)

少しずつ、その力を取り戻しているのがわかる。ミラノ~サンレモ7位、ヘント~ウェヴェルヘム5位、そしてロンドでも7位に入った。クリストフとの最後のスプリント勝負には負けてしまい、まだまだ本調子でないことが伺えるが、それでも、2回目のルーベ制覇は十分に見えてきたと言えそうだ。

2年前、石畳をパワーで突き進むあの豪快な走り、舗装路で飛び出した勇気、そして最後、圧巻のスプリント。

何よりもそのチャレンジし続ける姿勢に、つい応援したくなってしまう選手だ。

 

 

トニー・マルティン(ドイツ、31歳)

もちろんチームとしてはクリストフをエースで考えているはずだ。先日のロンドも後続集団の先頭を取り5位。彼にとって3つ目のモニュメントとなるルーベへの思いは並々ならぬはずだ。

だからこそ、そんなクリストフを支える重要なキーマンとして、このマルティンの走りは注目に値する。昨年ルーベ初挑戦にして、石畳を堂々と走り後続のサガンカンチェラーラを突き放した。そんな「機関車」が、今度はカチューシャを救う。クリストフにとってはまたとない存在となるだろう。

あるいは、そんなマルティンがもしも最後まで残ることができれば、クリストフを警戒する他チームを尻目に、決定的なアタックからの独走に持ち込むことができるかもしれない。ツール・ド・フランス2015の石畳ステージがまさにそういった展開であった。

どんなチームでも献身的な姿勢を見せ続ける彼に、モニュメント制覇という栄光をもたらすことができたらなんと嬉しいことだろう。

 

 

ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、25歳)

今年のクラシックシーズンを騒がした新鋭。ストラーデ・ビアンケ6位、ドワルスドール・フラーンデレンとE3で4位、デパンヌ初日のクラシックステージでは2位につけ、最終日のITTで優勝した。

先日のロンドでも後続集団に入り12位となっている。

まぐれとは決していない成績を収め続けている彼が、ここまでのクラシックとはまた一味違うルーベでどんな活躍をしてくれるのか、非常に楽しみである。

もちろんチームには昨年優勝者のヘイマンやケウケレールなど有力選手も他におり、そちらも見逃せない。

 

 

その他、オリヴァー・ナーセン、スコット・スウェイツ、イマノル・エルヴィーティなど、注目したい選手は数多く。

もしかしたら追加するかもしれません。

 

ブエルタ・アル・パイスバスコ2017 第1ステージ

フランドルでの激戦から一夜明け、興奮冷めやらぬ思いのまま迎えたバスク1周レース初日。

北の大地とは打って変わって落ち着いた様子でプロトンは進む。

 

逃げは3人。

カハルラルのリュイスギジェルモ・マース(スペイン、28歳)

コフィディスのヨアン・バゴ(フランス、30歳)

ディメンションデータのイゴール・アントン(スペイン、34歳)

 

アントンは地元バスク出身の選手であり、かつてはエウスカルテルに所属していた選手だ。

(今日のレースの舞台は彼の地元のバスク州ではなく、お隣のナバラ州ではあるが)

 

最初の2つの2級山岳を先頭通過したヨアン・バゴが山岳賞を獲得。

また、92km地点と121.2km地点の中間スプリントポイントを先頭通過したマースがスプリント賞(ポイント賞とは別枠らしい)を獲得している。

 

 

最大4分差をつけられたプロトンは、今日のステージの勝利を目指すチーム・サンウェブが牽引役を務める。少しずつタイム差を詰めていき、残り20kmを切ったところでとうとう逃げが捕まえられた。

 

今日という日を平穏に終えたい総合勢の意向を反映し、飛び出す選手もなく、ゆっくりと、まったりとパンプローナ盆地を進む。

集団は横一列になり、ステージ勝利を狙うサンウェブやロットNLユンボ、ボーラ・ハンスグローエ、あるいは有力選手を守りたいモヴィスターやアスタナ、トレック・セガフレードなどが前に出てきていた。

 

 

大きな動きは残り5km地点で始まった。

最初に飛び出したのはロット・ソウダルのティム・ウェレンス。

翌日のステージでこそ真価を発揮しそうな有力選手が、いきなりの飛び出しを見せた。

 

しかも、ウェレンスがキャッチアップされた直後に飛び出したのが、ジュリアン・アラフィリップ。

パリ~ニース第1ステージで見せたような勢いのついた飛び出しで、プロトンとの間隔が一気に開く。

これは行ってしまうのか!?

 

しかしこの直後、アラフィリップに悲劇が襲い掛かった。

勢いよく飛び出した彼のバイクのリアタイヤが、突如パンクしてしまったのだ。

 

こうなってしまってはどうしようもない。

為す術もなく集団に飲み込まれるアラフィリップ。

こんな場面は、以前もツール・ド・フランスで見たような気がする・・・。

 

ボーナスタイムもなく、厳しい山岳も連続するバスクで上位に入ろうとするならば、こういったステージでリードを保ったままゴールすることが重要である、と踏んだアラフィリップの判断は間違いではなかった。

それだけに、この、彼に襲い掛かる度重なる不運は何とも言えないものである。

一回、厄払いに行った方がいいのではないか。

 

 

その後は大きな動きが起きることなく、集団スプリントへと突入する。

この日の勝利を飾ったのは、大方の予想通り、過去2勝しているマイケル・マシューズであった。

2位にはボーラ・ハンスグローエのジェイ・マッカーシー。ここまで目立った活躍ができていなかった元ティンコフのスプリンターが、体調不良で未出走となったサム・ベネットに代わって果敢に挑戦した。

そして3位につけたのも同じオーストラリア人のサイモン・ゲランス。オーストラリア人がバスク初日の上位3着を独占した形となった。

 

 

いずれにしても、マシューズ、今期初勝利。

チームとしては3勝目となる。

 

集団の牽引役を全力でこなしてくれたチームに捧げる勝利となった。

 


Vuelta al Pais Vasco 2017 Stage 1 Last Kms Etapa Iruñea - Eguesibar-Sarriguren 153,3 Kms

ロンド・ファン・フラーンデレン2017

昨年に引き続き、伝説が生まれた瞬間であった。

ロンドで勝ちたいと言ってBMCを飛び出したジルベールが、しっかりと宣言通りの優勝。それだけでも凄いのだが、それ以上に凄かったのがその勝ち方であった。

残り55km地点の「2周目オウデクワレモント」で飛び出し、そのまま独走勝利である。

もちろん、それだけで勝てるほど甘くはなく、そのうえに様々な要素が加わったがゆえの、勝利であったのだ。

 

ただ一つだけ言えることがある。

それは、この勝利は、決してジルベールの力だけの勝利ではなく、その舞台を万全の形で準備した、クイックステップ・フロアーズのチーム力の賜物であったのだ。

 

その勝利のすべてのきっかけは、今年復活したカペルミュール

そして今年引退を決めているトム・ボーネンのアタックであった。

 

 

第1の展開:「カペルミュール

今年、6年ぶりに復活した「カペルミュール」は、ゴール前残り96km地点という微妙なところにあり、レースの展開を左右することはないだろう、と予測されていた*1

しかし、今日のレースの最初の展開はまさにここで形作られたのであった。

 

カペルミュールへの登りが始まると共に、まずはチーム・スカイが集団先頭に陣取り、牽引を開始した。

さらに中腹を越えてから、先頭を牽き始めたのがクイックステップ・フロアーズ。

そして集団が分裂する。

教会に向かう伝説の壁で――プロトンを牽引するのは、トム・ボーネンだ。 

 

 

先頭集団に残ったのは以下の13名。

 

すなわち、ペーター・サガンとグレッグ・ヴァンアーヴェルマートという2大優勝候補が後方に取り残された、ということである。

 

当然、クイックステップ・フロアーズとしては2人に追い付かれるわけにはいかない。

そこで、ジルベールも含んだクイックステップ3人が積極的に回り、サガンを含んだ追走集団とのタイム差を引き離しにかかる。

 

そしてタイム差は少しずつ広がっていき、やがてその差は1分近いものとなる。

勝敗を左右しないと思われていたカペルミュールが、まさかの展開を生んだのである。

 

 

その後、第2の動きが「2周目オウデクワレモント」で巻き起こる。

これが、勝負を決定付ける動きとなった。

 

 

第2の展開:「2周目オウデクワレモント」

サガンたちが含まれる追走集団とのタイム差を十分に開いたボーネンらのグループ。

ここで、集団の前を牽く役割を、トレンティンとボーネンが引き受けることとなった。

すなわち、ジルベールの温存である。

このタイミングで、今日のクイックステップジルベールで勝利するのか? と思われた。

 

そして、ゴールまで残り55km。

全部で3回通ることになる激坂「オウデクワレモント」の2周目を走る。

ここで先頭に飛び出したジルベールが、黙々と踏み込んでペースを上げる。

ジルベールのすぐ後ろにはファンマルクがいたが、その間にペースを上げたトム・ボーネンが割り込んだ。

このとき――ボーネンは、あえてペースを落としたのではないか。

 

みるみるうちに開いていく、ボーネンジルベールの差。

 

ジルベールは、ゴールまで55kmを残して、独走体勢に入った。

勝利への長い一人旅を開始するジルベール。その後方には、盟友を見送るボーネンの姿が。

 

 

もちろん、ロンドにおいて55kmの独走勝利など前代未聞である*2

ルーベにおいてはボーネンカンチェラーラの長距離独走勝利はあったものの、さすがに今回のジルベール、いかに調子がよくとも、これは無謀であったと誰もが思ったであろう。

むしろ、本気で勝ちを狙いに来ているはずのこのレースで、こんな一か八かの賭けに出るような動きをするなんて、と。

 

 

もしかしたらジルベールはこのとき、自分の勝利を第一には考えてはいなかったのではないか。

かつてドワルスドール・フラーンデレンで、自らを囮にチームメートを勝たせたときのように。

自身の大逃げによってチームメートがローテーションに回る義務から解放されることができれば、たとえ自分が勝てなくとも、チームの勝利には大きく貢献できる――そう考えていたのではないだろうか。

(何しろ、そのまま何もせずサガンらに追い付かれてしまえば、力を使い続けていたクイックステップ勢が逆に不利になっていたのだから)

 

追走集団も同じように考えたのかもしれない。

ファンマルクやロウの落車もあり、ペースが落ちたメイン集団に、サガンやヴァンアーヴェルマートが合流する。

だがサガンたちはここで慌ててジルベールを追うようなことはせず、マイペースに淡々と追い続けることを選んだ。

 

ジルベールの独走が続くことはない。

これを焦って追いかけることで自らの足を削る必要はない――過去、何度も、無闇な追走により勝機を逃してきたサガンは、ここは冷静に動くことに決めた。

当然、サガンが動かないのであれば、ヴァンアーヴェルマートにとっても同様であった。

 

 

事実、展開はサガンたちの考える通りに進行していたように思う。

ただ1つ、サガンを襲った意外なアクシデントさえ、なければ。

 

 

第3の展開:「3週目オウデクワレモント」

クイックステップにとっても、状況は有利なものばかりとは言えなかった。

残り38km、最後から4番目の激坂「タイエンベルグ」で、王者トム・ボーネンが2度のメカトラブルによって脱落した。

過去何度もこの王者による攻撃が繰り出されてきた別名「ボーネンベルグ」が、最後の年に主君に牙を剥いた形となった。

 

さらに、直後のサガンのペースアップにかろうじてついていったマッテオ・トレンティンが、やがてサガンの圧倒的な加速の前についていけなくなってしまったのだ。

 

このままサガンが追い付けば、ジルベールの勝利の芽はほぼなくなる。

それでもチームメートがいれば、チームによる勝利は確保できる――そう考えてのジルベールの攻撃が、裏目に出てしまうかと思われた。

 

 

しかしここで、ロンドの女神がベルギーチャンピオンに微笑んだ。

世界チャンピオンであり前年の覇者に牙を剥いて。

ほんの一箇所だけ出ていたフェンスの脇にタイヤを取られたサガン。不運ではあるが、彼が本当に強いときは、そういったアクシデントも回避できるはずなので――今日の彼は、勝てる運命になかったのかもしれない。

 

 

落車したもののすぐさま態勢を整えなおせたヴァンアーヴェルマートは、後方から追い付いてきたディラン・ファンバールレ、そして突如現れたもう1人の刺客ニキ・テルプストラと共に、再度のジルベール追走に向かった。

 

だが、このサガン落車の報を聞いたジルベールは、その走りにさらなる力を込め始めたように見えた。

その表情にも、どことなく決意のようなものが感じられた――「勝てる」。その思いが、確信に変わった瞬間だったのではないか。

 

最後の関門「パテルベルグ」の20%超えの激坂。

前輪が浮き、止まりそうになりながらも、彼は懸命にペダルを回し続けた。

すでに体力は限界に近付いていたはずだ。あとはもう、気力との戦いである。

 

 

後方ではテルプストラが、ジルを追う2人のライバルに対して牽制を仕掛け続けていた。いざという時には自分が勝利を掴めるように、睨みを効かせ続けた。

クイックステップ・フロアーズというチームは、最後の最後まで「最強のチーム」であり続けた。

 

 

そして、最後の直線に到達するジルベール

大歓声の中、彼は満面の笑みで、ゆっくりとゴールゲートに近づいていった。

 

そして、ゴールの直前、彼は自転車を降りて、

そして、自らの自転車を掲げ、ゴールラインを切った。

 

 

 

 

ジルベールという新たな伝説

プロ入り16年目。

イル・ロンバルディアを2回、アムステルゴールドレースを3回制し、「アルデンヌクラシック最強」の名を欲しいままにした。世界チャンピオンにすらなった。

それでも、ベルギー人として、彼はベルギー最高のレースであるこのロンド制覇を夢見ていた。

かつて挑戦したときは3位を2回経験した――その後、アメリカのチームに移ったあとは、挑戦すら、させてもらえなかった。

 

今年、自らの人生に大きな転機をもたらすべく、減俸を覚悟で、「クラシック最強チーム」へと身を移した。

そこでチームメートたちへの献身と、そして自らの夢の実現のための努力を重ねて、直前のデパンヌ3日間レースでは総合優勝。

万全の態勢で臨んだレースで勇気ある走りを見せつけたベルギーチャンピオンは、ついに栄冠を掴んだのだ。

 

 

彼だけが最強だったのではない。

優勝候補と呼ばれていた選手たちの多くが不幸に見舞われたのも確かであった。

 

それでも、その走りは、十分に「ロンドの勝者」に相応しいものであった。

フィリップ・ジルベール

ここにまた、ロンドの伝説の1つが生まれた。


Ronde van Vlaanderen / Tour of Flanders 2017 HD - Final Kilometers

デパンヌ~コクサイデ3日間2017

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ヘント~ウェヴェルヘムとロンド・ファン・フラーンデレンに挟まれる形で行われるフランドル地方のステージレース。

第1日はクラシック風味のコースで、今年は久しくロンドから姿を消していた「カペル・ミュール(ミュール・ド・ヘラールツベルヘン)」が残り16km地点で登場。

2日目・3日目午前はスプリンター向きのステージとなっており、昨年は1勝と2位につけていたマルセル・キッテルの勝利が期待されている。ドバイ・ツアーでは区間3勝と総合優勝と好調ぶりを発揮した彼が、パリ~ニースでは悪天候などもあり不調に終わってしまった。そのリベンジがなるか。

3日目の午後には14.2kmの個人TTが用意されており、3日間、計4ステージの身にステージレースが展開された。

 

 

 

第1ステージ デパンヌ~ゾッテヘム 206.2km

海沿いのデパンヌからフランドルの内陸に向かうクラシカルステージ。

カペルミュールを含む11の急坂が用意されている。

 

残り80kmを切った地点にある「テンボッシュ」およびカペルミュールの登りでフィリップ・ジルベール(クイックステップ・フロアーズ)を含む16名の小集団が出来上がる。

2015年覇者であり、昨年も総合2位につけたアレクサンダー・クリストフ(カチューシャ・アルペシン)は後方に取り残される。

 

そして残り16km地点。最後の「カペルミュール」でジルベールが飛び出す。

直近のドワルスドール・フラーンデレンとE3でも好走を見せたルーク・ダーブリッジ(オリカ・スコット)がすかさず飛び乗り、しばらくは後ろに付き続けるも、やがて本気で踏み出したジルベールによって突き放されてしまった。

そのまま残りの距離を独走し、勝利したジルベール

ダーブリッジは17秒遅れでゴールし、敗北したものの、状態が良いことを証明してみせた。

 

クリストフは58秒遅れの7位。

 


Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 1 - Final Kilometers

 

 

第2ステージ ゾッテヘム~コクサイデ 192.9km

前日のゴール地点ゾッテヘムから再び海沿いに向かって戻り、コクサイデの街に向かう。

途中、お馴染みのケンメルベルグなどの激坂地帯はあるものの、残り70km地点からはほぼほぼ平坦であり、例年集団スプリントが展開されるスプリンター向けのコースである。

 

しかし、今年は横風による大分断が発生。

総合2位のダーブリッジや4位のヤスペル・デブイスト(ロット・ソウダル)が後方に取り残されてしまう。

後続集団はロット・ソウダルが中心になって復帰を試みるも、それ以外のチームがほとんど協力をしないためにタイム差が開き続ける。

一方の先頭集団にはクリストフのほかマルセル・キッテル(クイックステップ・フロアーズ)、エドワード・トインズ(トレック・セガフレード)、パスカル・アッカーマン(ボーラ・ハンスグローエ)、アドリアン・プティ(ディレクトエネルジー)などのスプリンターたちがしっかりと入り込んでおり、こちらはこちらで激しいスプリントバトルが展開されることが予想された。

なお、クイックステップは合計で4名もの選手が入り込ませているほか、カチューシャにはバプティスト・プランカートル、トレックにはボーイ・ファンポッペルといったアシストも集団に含まれていた。

 

マキシリミアーノ・リケーゼとファビオ・サバティーニというアシスト2枚を引き連れたキッテルは有利なように思えた。だが、ゴール直前に、総合2位の地位が確約されたマティアス・ブランドル(トレック・セガフレード)が逆転を狙って飛び出したことで、ジルベールもこれに対応して飛び出さざるをえなかった。

これらも含め、コース全体の厳しさによってキッテルはいささか疲れすぎていたのかもしれない。

最後のスプリントの伸びもイマイチで、アレクサンドル・クリストフが最後差し切って、昨日の借りを返す勝利を果たした。

2位にはトインズがつける。キッテルは3位。

 

クリストフはこれで、キッテルと並ぶ今期5勝目を飾った。

 


Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 2 - Final Kilometers

 

 

第3ステージa デパンヌ~デパンヌ 118.5km

3日目の午前中はデパンヌを発着するショートステージ。

残り15km地点での集団落車に巻き込まれてしまったキッテルだったが、その後ギリギリで集団復帰。

クリストフとの一騎打ちを制し、前日のリベンジを果たす勝利を決めた。

 

これでデパンヌでは3勝目。3日目午前ステージとしては昨年に続く2連勝となった。


Driedaagse De Panne-Koksijde 2017 HD - Stage 3a - Final Kilometers

 

 

第3ステージb デパンヌ~デパンヌ 14.2km(個人TT)

3日目の午後は単距離個人タイムトライアル。

カチューシャ・アルペシンに所属する23歳のドイツ人ニルス・ポリッツ、あるいはオリカ・スコットに所属するこれまた23歳のオーストラリア人アレクサンダー・エドモンドソンなどが良いタイムを叩き出すが、これらを更新したのが驚きのマルセル・キッテル

まあ、元TTチャンピオンであり、昨年ジロの初日単距離ITTも良いタイムを出していただけに、まったく意外というわけではないのだが・・・もしかしたら、午前中に引き続く、まさかの連勝、という可能性すら出てきた。

しかしさすがにこれに負けるわけにはいかない、と意地を見せたのが、元オーストラリアTTチャンピオンのルーク・ダーブリッジ。第1ステージでここ最近のクラシック好調ぶりを発揮した彼は、第2ステージで横風に敗れ総合争いから脱落。何かしらの勝利を持って帰らねば、の思いから、素晴らしい結果を叩き出した。

このダーブリッジの出したタイムに、元フランスTTチャンピオンのシルヴァン・シャヴァネルが迫るも、0秒7足りずに暫定2位。

総合上位を狙うマティアス・ブランドルアレクサンダー・クリストフも好タイムを記録するも、ダーブリッジに届くことはなく、最終走者のフィリップ・ジルベールゴールラインを越えた瞬間、ダーブリッジの優勝が決まった。

 

ここ数年、勝利に恵まれずにいた25歳のオーストラリア人が、今期初勝利を遂げた。

週末のフランドルでの走りにも期待したい。


Three Days of De Panne 2017 | Stage 3b (ITT)

 

 

総括

初日のクラシカルステージで大逃げを決めたフィリップ・ジルベールが、そのまま最終日まで堅実にジャージを守り、初のデパンヌ総合優勝を決めた。

昨年のベルギー選手権以来の勝利。ステージレースとしては2014年のツアー・オブ・北京以来の総合優勝となった。

 

最終日の個人タイムトライアルもステージ7位につける好走。総合2位・3位のブランドル、クリストフには敗れたものの、彼らとのタイム差をほとんど縮ませることもせず、危なげのない勝利となった。

石畳(とくにカペルミュールの!)への適性、そして独走力ともに十分な状態であることを証明し、フランドルに向けて、彼が本気で勝利を狙うことができる状態である、ということを全てのクラシックライダーたちに示してみせた。

 

そして、この「勝てるかもしれない」と思わせることが、クイックステップというチーム全体にとっての大きな武器となる。

ジルベールがいくのか、ボーネンがいくのか、はたまたテルプストラがいくのか・・・あらゆる選択肢が用意でき、他のチームの選手にとっては誰をマークしたらいいのかわからない状態にできること。これはサガンなどにはない強みである。

 

ジルベールの加入、そして好調により、例年以上に大きな可能性をもったクイックステップが、ボーネン引退への花道を作ることができるか。

非常に楽しみな週末となりそうだ。

 

ブエルタ・アル・パイスバスコ2017 プレビュー

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日本語では「バスク1周」の名でも知られる歴史あるワールドツアークラスのステージレース。英語では "Tour of the Basque Country" 

例年、北ヨーロッパがモニュメント・クラシックで湧く4月頭に、南ヨーロッパで最も自転車熱の高い地域と言っても過言ではないバスク地方で行われる。

 

今年の日程は4月3日(月)からの6日間。

 

過去の総合優勝者の顔ぶれを見ると、ブエルタ・ア・エスパーニャおよびツール・ド・フランスで活躍する名クライマーたちの名前がずらりと並ぶ。

 

 

昨年はわずか数秒の差で争われる中、最後の個人TTで逆転したコンタドールが総合優勝。2位以下にセルヒオ・エナオ、ナイロ・キンタナ、ティボー・ピノ、ホアキン・ロドリゲスと錚々たるメンバーが並ぶ激戦となった。

 

今年もツール・ド・フランスを狙う総合ライダーたちを中心に豪華なメンバーが揃っており、より熱い戦いが期待できるはずだ。

 

 

目次

 

 

 

コース詳細

第1ステージ イルーニャ~エゲシバル・サリグレン 153.3km 

2017年バスク1周はバスク州のお隣、ナバーラ州の州都イルーニャからスタートする。

イルーニャはバスク語での呼称で、スペイン語では「パンプローナ」。

かつてこの地に存在した「ナバーラ王国」の首都であり、「牛追い祭り」で有名なサン・フェルミン祭のほか、アーネスト・ヘミングウェイの「日はまた昇る」の舞台としても知られている。

そしてもちろん、自転車界としてはかの伝説の男ミゲル・インドゥラインの故郷としても非常に有名である。

(個人的には敬愛する歴史上の人物チェーザレ・ボルジアが司教を務めた地として思い入れがある)

 

パンプローナを出発したプロトンはそのまま北上し、まずは2級山岳Erro(登坂距離5.6km、平均4.81%、最大5.8%)を登り小さな周回コースを回る。その後、再びErroを登ったあとは、大きな周回コースを回ってゴール地点のサリグレンに向かう。

 

サリグレンはパンプローナ盆地の東部(だからスタート地点のすぐ東)に位置する、エゲシバルの中の1地区であり、スペインを代表する2つのエネルギー企業アクシオナ社とガメサ社が本拠を置いている。

このエゲシバルもバスク語の呼び名であり、スペイン語ではバリェ・デ・エグエスと呼ばれている。このようにこの地方にはスペイン語バスク語の両方で表記される例が多く、そのどちらもが公式の呼び名とされ、優劣が存在しないようになっている。

カタルーニャ地方と共に、我々日本人からは馴染み深い、しかし興味深い事例である。

 

そんなパンプローナの第1ステージは、山岳の難易度も高くなく最後は平坦(下り基調)のままゴールを迎えるため、集団スプリントが見込まれる。

今大会に参加するメンバーの中では、2015年の初日ステージで勝利したマイケル・マシューズ(チーム・サンウェブ)を筆頭に、2014年に区間勝利を得ているベン・スウィフト(UAEチーム・エミレーツ)、フアンホセ・ロバト(ロットNLユンボ)、サイモン・ゲランス(オリカ・スコット)、ジェイ・マッカーシー(ボーラ・ハンスグローエ)、ホセホアキンロハス(モヴィスタ―)などが上位に入ってきそうである。 

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第1ステージのレースレポートはこちら。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

第2ステージ イルーニャ~エルツィエゴ 173.4km

昨日の戦いの舞台となったパンプローナから出発したプロトンは、南西に進路を移し、いよいよバスク州に突入。スペイン名「エルシエゴ」で知られる地にフィニッシュする。

ここはかの有名な「リオハ・ワイン」の産地でもあり、奇抜なフォルムの「マルケル・デ・リスカル・ホテル」などでも知られる。

 

スタート直後の2級山岳Etxauriは全長6.8km、平均6.35%、最大7.1%というプロフィール。後半の3級山岳も平均6%の登坂距離5kmと低難易度のため、集団が分裂するような事態にはなりづらいだろう。

むしろゴール前のノンカテゴリーのアップダウンが曲者。そこからの下りフィニッシュということで、昨年下りステージの初日で勝利したルイスレオン・サンチェス(アスタナ)や、ギリギリの逃げ切り勝利を果たしたスティーブ・カミングス(ディメンション・データ)などの動向に要注意だ。

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 第2ステージのレースレポートはこちら。

suzutamaki.hatenablog.com

 

 

第3ステージ ガステイス~ドノスティア 160.5km

バスク1周の3日目は、バスク州の州都ビトリア=ガステイスからスタートする。スペイン語ビトリアバスク語名ガステイスだが、正式名称はその2つを繋げたビトリア=ガステイスとなる。

プロトンはそこから一気に北上し、ビスケー湾に面した地ドノスティア、すなわちスペイン語名「サン・セバスティアン」に到達する。

 

全部で6つものカテゴリー山岳を擁する中級山岳ステージ。今大会最初の1級山岳であるSanta Ageda(登坂距離8.3km、平均勾配6.73%)も控えており、ゴール10km手前にも3級山岳が。

しかしこの3級山岳もさほど難易度が高いわけではないので、総合勢がバラバラになるという事態は考えづらいだろう。やはり注目したいのはカミングスの動向であり、またこういったステージでの逃げが得意なティム・ウェレンス(ロット・ソウダル)の動きも気になるところだ。f:id:SuzuTamaki:20170329143701p:plain

 

 

第4ステージ ドノスティア~ビルバオ

ドノスティアから海岸沿いに西に向かい、バスク最大の都市ビルバオへと向かう平坦基調のコース。しかしゴール14km手前に2級山岳Vivero。登坂距離は5.6kmだが平均勾配が8.19%となかなかの難易度。ここでセレクションがかけられた小集団によるスプリントで終わるか、それとも逃げ切りが決まるか。

 

独走力の高いアレクセイ・ルツェンコ(アスタナ)やカミングス、ルーベン・プラサ(オリカ)に期待。なお、2年前のビルバオフィニッシュではマイケル・マシューズが、昨年ブエルタの第12ステージで同地フィニッシュとなったときはイェンス・ケウケレールがスプリント勝利を果たしている。

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第5ステージ ビルバオ~エイバル 139.8km

ビルバオから東方に向かい、毎年の恒例山岳ステージの舞台となっているエイバルに向かう今大会クイーンステージ。最後の1級山岳ウサルツァは3.9kmと短めの登りながら平均勾配は驚異の10.77%! ラスト1kmの平均勾配は12.55%に達する。

昨年は当時アスタナに在籍していたディエゴ・ローザが、その前はランダ、ポエルスといった面々がステージ優勝を決めている。・・・今は全員チーム・スカイにいるあたりが恐ろしい。

今年はその3人がすべて出場しない代わりに、スカイからは総合優勝候補のセルヒオ・エナオはもちろん、ミケル・ニエベやミハウ・クフャトコフスキなどが優勝候補となるだろう。また、これも総合優勝を狙う可能性があるロットNLユンボのプリモシュ・ログリッチェ、ブランビッラ(クイックステップ)、アタプマ(UAE)、チャベス(オリカ)、あるいは激坂含みという点でそろそろAG2Rのアレクシー・ヴュイエルモの復活が見てみたい。

 

もちろん総合勢の激しい争いも展開するであろう。ボーナスタイムのないバスクにおいて、ここでの僅差の着順差が総合争いに大きな影響をもたらす可能性は十分にある。

 

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第6ステージ エイバル~エイバル 27.7km(個人TT)

スタート直後に6kmで標高559km地点まで一気に登る。平均勾配6%。

しかしそのあとは比較的フラットで、距離も27.7kmと長いため、ここ数年の中では最もTTスペシャリスト向きのステージか? となると、ここ2年連続でITTで逆転されてしまっているセルヒオ・エナオにとっては不利なステージと言えるか?

 

アルベルト・コンタドールにとっては5度目の総合優勝を飾る最大のチャンスとなるだろう。しかし、彼をパリ~ニースで破ったジュリアン・アラフィリップの存在も忘れてはいけない。しかも彼がコンタドールに勝つ秘訣となった平坦の距離が今回は長い。

また、アルガルヴェ1周でマルティンカストロヴィエホに次ぐ独走力を発揮したプリモシュ・ログリッチェにとっても総合優勝を狙う機会が訪れる。もちろん、そう、もちろん、バルベルデだってITTは苦手ではなく、むしろ得意である。

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注目選手たち

アルベルト・コンタドール(スペイン、34歳)

過去4度、バスクを制している。昨年も、最終日ITTでセルヒオ・エナオを破り逆転優勝。今回も総合優勝の最有力候補である。

気になる点があるとすれば、ここまで、パリ~ニースおよびカタルーニャコンタドールをサポートし続けてくれたパンタノが、今回はいないこと。モレマもおらず、ヘスス・エルナンデスだけが頼りか。あるいは、カルドソ、スペルディアあたり。

見たいね~、また「バキュン」を。

 

 

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、36歳)

アンダルシアだけに飽き足らず、カタルーニャまで総合優勝してしまった超人。

カタルーニャでは得意の「チョイ差し」だけでなく登坂でコンタドールとフルームを置いていく走りを見せ、最終日バルセロナでは逃げ切り勝利も決めてしまった。ブエルタ・ア・ムルシアでも独走していたし、いろんな勝ち方がありうるから怖い。

今回は最終日の個人TTをしっかりこなせるかが鍵。アンダルシアはコンタドールを破っていたけれど、今回は果たして。

カタルーニャを制覇。この快進撃はどこまで続くか。

 

 

セルヒオルイス・エナオ(コロンビア、29歳)

昨年、一昨年と、最終日前日終了時点で総合首位に立ちながら、最終日のITTで逆転されて総合優勝を逃している悲哀の人。今年はITTがさらにスペシャリスト向けになったことで勝ちの目が遠のいた感。切ない。

しかしパリ~ニースでは山で置いていかれたコンタドールに猛追してギリギリで総合首位を守り切った。この勢いでいけば、今年こそは・・・となるかもしれない。そのためにもウサルツァでしっかりとタイム差をつけておきたいところだ。 

自身初のワールドツアーレース総合優勝を飾ったパリ~ニース。今最も勢いのある選手の1人だ。

 

 

プリモシュ・ログリッチェ(スロベニア、27歳)

密かに今大会最大の優勝候補だと考えている。何しろ今年、アルガルヴェでマーティンとクフャトコフスキを破っての総合優勝を果たしている。その鍵となったのがITTであり、今大会はそのITTの平坦部分が長いのだ。

クライスヴァイク、ヘーシンクとグランツールの総合上位を狙いうるタレントはそれなりに揃っているものの、総合表彰台となると少し現実感が乏しい。そんな中、伸びしろという点で最も期待しうるのがこのログリッチェなのではないか。今回エースを彼に任せているのはその表れではないか。

今年はツールに初挑戦。今回はその前哨戦だ。

ティレーノ~アドリアティコでも総合4位。彼の成長は止まらない。

 

 

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、24歳)

今年のパリ~ニースで更なる覚醒。すわ総合優勝か、と思われたが、クイーンステージのクイヨール峠で失速。総合5位に終わった。

しかし、誰もが驚いたITTステージでコンタドールを圧倒しての優勝。今回のバスクは難関山頂ゴールが1つだけで、ITTの平坦部分の距離も長いため、今度こそ、という可能性は十分にありうる。今後の彼のキャリアを左右する重要なレースになるかも?

マイヨ・ジョーヌをクイヨール峠で失う羽目になったアラフィリップ。今回は雪辱を晴らす戦いとなるか?

 

 

サミュエル・サンチェス(スペイン、39歳)

2012年の覇者。昨年も総合6位で、ブエルタでもITTで落車するまでは総合トップ10に入っていた。しかもアルデンヌでも好調とか、バルベルデと並んで化け物っぷりを発揮しているスペインおじさん。

下りがめっちゃ速いという評判通りに昨年はダウンヒルで逃げ切り勝利を決めた。今年も第2ステージあたりで期待したいです。

39歳にしていまだに総合エースを任せられ、それなりに結果を出してしまう御仁。今回はロッシュもいるので、総合はそちらで狙うかも?

 

 

ヨン・イサギーレ(スペイン、28歳)

総合エースの座を求めてモヴィスターを飛び出した。しかしアンダルシアでは途中リタイア、パリ~ニースでは総合7位と今のところはあまり結果を出せず。ここか、ロマンディあたりで存在感を示したいところ。

ITTは得意なので期待はできる。ITTでコケるのも得意なので不安もある。昨年はダウンヒルで勢いを見せカンチェラーラにクレイジーと言われた。ダウンヒルが速いというか、怖いもの無しなメンタル?

 

 

レオポルド・ケーニッヒ(チェコ、29歳)

総合エースを担うべく、スカイから出戻り。今回のバスクメンバーの中では珍しいジロ狙い。

昨年はブエルタでもいい走りを見せていたが、今年はマヨルカ・チャレンジで落車して以降、音沙汰なしで久々の出走となる。今のところスプリントばかりで目立っている新生ドイツチームが、総合でも活躍できるところを見せつけてほしい。

 

 

エステバンチャベス(コロンビア、27歳)

エースナンバーを着けるのはジロ組のアダム・イェーツだが、ツール狙いの選手が多く出場する今回のバスクでどれだけ存在感を示せるか楽しみである。年初のダウンアンダーは、悪くはなかったが良いとも言い切れない走り。今回は久々の出走だ。

また、新加入のロマン・クロイツィゲルとの連携にも注目したい。チャベスと同様にツール組となる彼が、オリカのエースアシストとしての活躍をどれだけ見せられるか。今年のチャベスの躍進は彼にかかっていると言っても過言ではないはずだ。

(4月2日追記:チャベスは膝の怪我の回復を優先し、今回の出場はパスしたとのこと。それでもイェーツとクロイツィゲルという十分な選手が残っているため、いずれにしてもオリカ・スコットの走りにも注目していきたい)

 

 

ほか、ロマン・バルデ、ヤコブ・フールサン、ダニエル・ナヴァーロ、ワレン・バルギルなどのクライマーたちが参戦。

逃げ名手のアタッカーとしてもティム・ウェレンスやディエゴ・ウリッシ、ヤン・バークランツなどが揃っており、見所は十分なはずだ。

もちろん、日本人としては新城幸也の活躍も見逃せない。

 

 

スタートリスト

トレック・セガフレード(TFS)

パリ~ニース、カタルーニャと活躍したアシストのパンタノが不在。

もちろん、エルナンデスやスペルディアなどのベテランはいるが・・・コンタドールがどこまで力を発揮できるかは未知数である。

 

AG2R・ラモンディアル(ALM)

今期ここまで調子がよくないバルデ。オマーン総合6位(昨年2位)、カタルーニャ総合10位(昨年6位)。ただカタルーニャでは積極的な攻撃も見れたので、今回も、たとえ結果に繋がらなくとも、良い動きを見せてほしいところ。

引き続きヴュイエルモにも注目していきたい。まあ、勝てるステージは、あまりなさそうだが・・・。

 

アスタナ・プロチーム(AST)

昨年初日ステージで勝利したルイスレオン・サンチェス。下りレイアウトが得意なので、今年も第2ステージあたりで期待したい。今期まだ勝利のないアスタナに、希望の1勝を捧げられるか。

総合ではむしろフールサンに期待したいところ。今年はツールをエースとして出場する予定のはず。だがここまでいいところがなく・・・。

 

バーレーンメリダ(TBM)

登りもTTもそこそこ強いヨンは、総合上位に入るポテンシャルは十分ある。しかし表彰台に乗るかというと・・・まだまだ難しい印象。

むしろ個人的には、ジロに向けてヴィスコンティがどれだけの「アシスト力」を発揮してくれるかが楽しみである。新城も含め。

ところで、新城が「ヨーロッパのレースに集中するため」ツアー・オブ・ジャパンに出場せず、と聞いたのだけれど、これってもしかして、新城のジロ出場の布石だったりする??

カタルーニャで積極的な逃げを見せていたニバリ弟にも期待。

 

BMCレーシングチーム(BMC)

2012年の覇者であり、昨年も総合6位のサミュエル・サンチェスは表彰台候補になりうる存在。もういい年なのに昨年も(終盤でリタイアしたものの)ブエルタでもいい走りをしていた。

また、ツールでのポート表彰台の鍵となりうるニコラ・ロッシュのこれまた「アシスト力」の具合が気になるところだ。

 

ボーラ・ハンスグローエ(BOH)

果たしてジェイ・マッカーシーはスプリントで勝てるのか? 厳しいのか?

2017シーズンのここまでの成績だけを見るとサム・ベネットの方が好調のようではある。しかし登りスプリントの多いバスクでは、マッカーシーも力を発揮できそうなのだが・・・。

山岳逃げで強そうなメンバーも思い当たらず、下手すると空気になりそうなチーム。

 

カハルラル・セグロスエレヘアー(CJR)

カタルーニャに引き続き、セルヒオ・パルディリャがエースナンバーをつける。昨年のブルゴス1周で区間1勝と総合3位。今大会では存在感を示せるか。

 

キャノンデールドラパック・プロサイクリング(CDT)

ワールドツアークラスのレースで区間優勝を経験したことのある、結構いいメンバーが揃ってはいる、のだけれど、なんだかあんまり活躍する気がしないのはなぜだろう。sクインシュとか、スラフテルとか、どうですか。今期まだ1勝。そろそろアクセルを踏んでいきたいところ。

総合ではウランよりもタランスキーに注目したい。ヴァンガーデレンがそろそろ本気で厳しくなりつつあるので、アメリカの希望は君が担ってくれないものか。

 

コフィディス・ソリュシオンクレディ(COF)

コフィディスはブアニだけのチームではない!・・・というところをしっかりと見せつけてほしい。ナバーロは昨年のツールで積極的な山岳逃げを展開し、区間上位に入ることもしばしば。今期もカタルーニャ総合14位。マテも昨年ブエルタでの積極的な姿勢が目立った。

どうでもいいけど選手名鑑のナバーロの写真、結構目がイってるように見える。ブアニのきれいすぎる目と合わせてあのページはなかなか込みあがるものがある。

 

FDJ(FDJ)

密かに期待しているのがオドクリスティアン・エイキング。顔も名前も格好いい。昨年ツアー・オブ・ノルウェー新人賞。今大会で何ができるというわけではないかもしれないが、逃げに乗ったりしたら多分ツイッターでうるさく叫びます。

 

ロット・ソウダル(LTS)

シーズン序盤は勝ちまくったウェレンス。最近大人しくない?と思ったけれどストラーデ・ビアンケで3位だから十分凄いか。でもやっぱり山での逃げが見たい。今大会はチャンス多いはず。気づいたら山で逃げて地味に目立つバルスさんにも注目。

ところでこのチーム、スプリントで戦うとしたら誰だ? モンフォールか? 最近不遇な気がするので頑張ってほしい。

 

ヴィスター・チーム(MOV)

絶好調のバルベルデ。今回も獲ってしまいそうなステージがいくつか・・・TTも得意だし、総合優勝も十分狙える。ただ、カタルーニャで活躍したマルク・ソレルは今回参加なし。代わってモレーノ、フェルナンデスといった強力なアシストもいるため、戦力はむしろ増したか?

ちなみにサザーランドは昨日、バスクのお隣リオハでのレースで優勝している。今大会も第2ステージは近くにゴールするので・・・少し期待できるか?

 

オリカ・スコット(ORS)

当初参加が予定されていたチャベスが膝の治療に専念すべく欠場に。しかしイェーツ、クロイツィゲルと十分に活躍が期待できる選手がいるため、問題は少ないだろう。クロイツィゲルはツールでチャベスをアシストする予定。「アシスト力」の確認をしておきたい。

また、スプリントはゲランス&アルバジーニのコンビに、山岳逃げはプラサなど、様々なパターンでの活躍が期待できそうだ。

 

クイックステップ・フロアーズ(QST)

今大会でも新人賞の最有力候補であるアラフィリップ。パリ~ニースで見せたITTの力を今大会でも発揮できるか?

ブランビッラの山岳逃げにも期待。

 

ディメンション・データ(DDD)

やはりカミングスの逃げには期待したい。その他、フライレやパウエルスなど・・・山岳逃げには打ってつけの選手ばかりだ。

クドゥスも今シーズンなかなか調子のいい若手。アラフィリップとイェーツが鎬を削るであろう新人賞争いに割って入ることができるか?

 

チーム・カチューシャ・アルペシン(KAT)

昨年ブエルタでも活躍したマミキン&レストレポコンビに期待大。すぐに大きな結果が出ることまでは求めないが、まずは積極的な逃げの姿勢に出てほしい。

 

チーム・ロットNLユンボ(TLJ)

個人的に大注目のログリッチェが、総合優勝を成し遂げることができるか!? せめて、表彰台には上がってほしいところだ。

そしてスプリントではフアンホセ・ロバトに勝ち目があると思っている。登りスプリント巧者である。

 

チーム・スカイ(SKY) 

ここ2年、悔しい結果に終わり続けているエナオが今年こその総合優勝を飾れるか。セバスティアン、ニエベ、キリエンカといったアシストたちは十分に強力だ。

そして場合によってはクフャトコフスキが総合を狙う可能性も。ITTにも強いため、むしろそちらの方がいい?

 

チーム・サンウェブ(SUN)

バルギルは今年は総合をあまり狙っていないとのこと。実際どうかわからないが・・・ステージ勝利に焦点を合わせた方が、案外うまくいくのかもしれない。

いずれにしてもこのチーム最大の注目はマシューズのスプリント勝利である。過去2回の勝利経験。

そしてもう1人、今後の成長に期待したいのがクリス・ハミルトン。昨年のU23国内選手権王者。今年は国内選手権もダウンアンダーもイマイチだったが、とりあえず経験を積み重ね、強い選手となってほしいものだ。

 

UAEチーム・エミレーツ(UAE)

いない有力選手はルイ・コスタくらいか?とも思えるくらい強力なメンバーを揃えてきており、逃げに、スプリントにと期待が高まる。

その中で、個人的にはアタプマの飛躍に期待したい。山岳逃げはもちろんだが、総合上位だって狙えるのではないか? 昨年のジロは総合9位だしね。

スウィフトには是非とも勝ってほしい。個人的に好きな選手なので。