りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツール・ド・ロマンディ2016

  スイス、ロマンディ地方で6日間にわたって行われるワールドツアーのステージレース。起伏に富んでタイムトライアルも含み、近年の優勝者がそのままツールの総合優勝者となっていることも多いため、ツールの勝敗を占うレースとして重要度が高い。今年もフルーム、キンタナを筆頭に、ロメン・バルデ、バウク・モレマ、マティアス・フランク、ピエール・ローランといった昨年ツール総合上位陣が揃い踏み。ジロ開催が近いためバルベルデやニバリなどは出ないが、トム・ドゥムランやマルセル・キッテルなどは参戦している。

ツールを狙うオールラウンダーがスイスに集結 ツール・ド・ロマンディ本日開幕 | cyclowired

 

 ツール2強のキンタナとフルームは、それぞれの好調ぶりを発揮した。キンタナは第2ステージでアタックを仕掛け、前年覇者のザッカリンがついてきてゴールも先着されるものの、進路妨害の判定でステージ優勝はキンタナの手に渡った。

別府がエスケープ 降格処分のザッカリンに代わってキンタナがステージ優勝 | cyclowired

 ここで獲得した総合1位の座を、続く山岳タイムトライアルでも頂上ゴールステージでも失うことがなかったため、キンタナの総合優勝が確定した。年初のツール・ド・サンルイス、3月のカタルーニャ1周と上げてきている調子の良さが、十分に反映された形だ。

 一方のフルームは、第2ステージでバイクトラブルの憂き目に遭い総合争いに加われなくなったものの、クイーンステージである第4ステージで、残り30kmから逃げに参加。最後はティジェイ・ヴァンガーデレンを引き離してステージ優勝を決めた。

逃げたフルームがロマンディクイーンステージ制覇 キンタナは総合優勝に王手 | cyclowired

 相変わらず力強いシッティングで、カタルーニャ1周の段階では不安に思えたフルームの調子も、ここに来てしっかりと整いつつあることを感じた(続く最終ステージでも逃げに乗るなど、総合上位が絶望的になってもなお、積極的な動きを見せ続けた)。

 とはいえ、結果としてこの第4ステージで得られたキンタナとのタイム差はたったの4秒。第3ステージのタイムトライアルでもキンタナと同タイムという結果は、絶好調とは言いづらいものでもあった。総合優勝が狙えない以上、今後に備えてセーブしていた部分も大きいのだろうが、昨年のツールが、大きな一撃を加えて得た貯金を切り崩しながら戦った、というものであったことを考えると、このままツールに突入して大丈夫なのだろうか、という一抹の不安を感じてしまう。

 

 一方で注目に値するのがティボー・ピノ。第3ステージのタイムトライアルでデュムランを超えるタイムを叩き出してステージ優勝。総合2位まで浮上した。

ロマンディ個人TTでピノが1.54秒差の勝利 キンタナの首位は揺るがず | cyclowired

 かつてはタイムトライアルが苦手と言われ、実際2014年のツールでは最後のタイムトライアルで総合順位を1つ下げている。しかし今年に入ってFDJチーム全体がタイムトライアル能力の改善が進んでいるようで、ピノ自身も今回だけでなく様々なレースでその好調ぶりを発揮している。

 第4ステージでも積極果敢な攻撃を絶えず繰り出し、ツール総合表彰台に向けて気合いの入り方を感じさせてくれる姿勢だった。ただ、どうしても、フルームやキンタナのような「攻撃力」がない。アタックを仕掛けてもすぐに後ろに貼り付かれてしまうので、むしろキンタナをアシストしていたかのような場面も多かった。結局この「攻撃力」がなければ、ライバルたちを大きく引き離し、総合優勝を目指していくことはできない。崩れさえしなければ総合上位は狙えるので、第4も第5もしっかり遅れずにゴールできたこと自体は評価できるが、そこからさらに1段上がるためには、タイムトライアルの改善だけじゃない部分のパワーアップも必要になるだろう。

 過去、エヴァンスやフルーム、ジャンクリストフペローなど、ツール総合上位陣を輩出しているクリテリウム・アンテルナシオナルでも総合優勝。今年のツールでも再び総合表彰台に登ることも期待できる。

 

 マルセル・キッテルも第2ステージで圧巻の走りを見せてくれた。今年はドバイ・ツアーでこそ完璧な走りを見せてくれたものの、その後のパリ〜ニースでパッとしない走りに。4月のスヘルデプライスでようやく復活を見せた彼の、このロマンディでの再度の勝利は、ジロでの活躍を期待するファンたちを安心させてくれるものであった。

降雪でコース短縮 100名のスプリントでキッテルが今季8勝目 | cyclowired

 残念ながら最終日は参加せずにリタイア。その分、今週末から開かれるジロ・ディタリアで、大暴れを見せてくれるはずだ。昨年・一昨年の無念を晴らすべく。 

 

 冷たい雨雪に襲われ続けた6日間でもあった。思えば今年は雪禍に見舞われることが多い。パリ~ニース、ティレーノ~アドリアティコのレースキャンセルに始まり、先日のリエージュ~バストーニュ~リエージュ、そして来るジロも何やら不穏な写真が出回っている・・・。どうか選手たちにおいては、怪我や病気に遭われぬよう、全力を出せる環境が整うことを切に願っている。

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