読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

りんぐすらいど

ロードレース関連の記事が中心。https://twitter.com/SuzuTamaki

ジロ・ディタリア2016 第3ステージ

 強すぎる。

 圧倒的すぎる。

 もはや発射された瞬間に、誰もがその勝利を確信した。

 ゴールまでまだ距離がある段階で、チームメートたちが次々と両手を挙げる。

 そしてその男も両手を挙げる。

 俺が勝者だ、と。

 俺が最強だ、と。

 そしてそれを否定する者はいない。

 彼は間違いなく、現役最強のスプリンターである。

f:id:SuzuTamaki:20160510023955p:plain

赤いジャージで両手を挙げながらゴールするキッテル。jsportsより。

 そしてこの日、「最強のスプリンター」であることを示す赤いジャージを着ていた彼は、明後日からはイタリアで、「ジロ・ディタリア最強」を示すピンクジャージを着ることとなる。

 

 この日もまた、平穏な1日が過ぎ去るものだと思われていた。既にリーダージャージを手放すことを覚悟していたジャイアント・アルペシンは集団を牽くこともせず、この日もスタートと同時に決まった4人の逃げに対し、最大で8分、その後も少しずつ、少しずつ、距離と共にタイムを縮めていった。

 風は昨日よりも(辻氏によると「倍」)強く吹き、集団に(とりわけキッテルとそのアシストたちに)ダメージを与えたいエティックス以外のスプリンターチームが積極的にペースを上げることで、横風による大規模な分断などが起きることもあった。思ったよりも逃げがしぶとく、とくにディメンションデータのヨハン・ファンジルが残り2kmを切る地点まで逃げ続けるという想定外の展開もあったものの、それでも最後はセオリー通りの集団スプリントへともつれ込んだ。

f:id:SuzuTamaki:20160510024711p:plain

残り11kmから単独で逃げ始めたヨハン・ファンジル。南アフリカ籍の選手である。jsportsより。

 

 その中でも、中継開始直後に起こった落車により、アージェードゥーゼルのエース格ジャン=クリストフ・ペローがいきなりリタイアとなってしまったのは、この日最大の「想定外」であった。

f:id:SuzuTamaki:20160510024950p:plain

落車し、顔面から血を流しているペロー。jsportsより。

 他にもゴール直前にFDJのメンバーが複数名落車に巻き込まれてしまったことも、もしかしたら最後のゴールでFDJトレインが昨日のようにうまく機能することができなかった原因だったのかもしれない。

 昨日は唯一、エティックス・クイックステップにチームで対抗することのできたFDJ。しかし今日はその形は見る影もなく、若きフランス人エース、アルノー・デマールも、単独で勝負に挑みステージ8位に沈んでしまっている。

 ゴール前がわずかに登っているとか、カーブの多いテクニカルなゴール前だとかで、昨日は7位だったカレブ・ユワンが、この日は活躍するかもしれない…なんて風に言われてもいたが、結局彼は12位と、今のところいいところを見せられていない現状である。

 勝利したのは最強のキッテル。その後ろにヴィヴィアーニ、ニッツォーロ、グライペルと実力者が続いたのはさすがといったところだが、それでもキッテルが頭一つ、二つ飛び抜けている形であった。グライペルが体調などが万全であればもう少し、ギリギリの戦いを演じられていたのかもしれない。

 

 オランダで人生最後のジロを満喫していたロットNLユンボのマーティン・チャリンギは、この日も逃げに乗り、同じく連日の逃げを演じているジャコモ・ベルラートを振り切って、この日の4級山岳を先頭で通過する。

f:id:SuzuTamaki:20160510030218p:plain

4級山岳山頂を先頭通過するチャリンギ(奥)。jsportsより。

 地元オランダでのこの勇気ある活躍によって、彼は明後日からのイタリアで、青い山岳賞ジャージを着ながら走る権利を与えられたのである。

 しかしこの山岳賞ジャージの持ち主も、明後日は大きく変わるに違いない。何しろジロのイタリア上陸後最初のステージは、いきなり3級山岳が2つ待ち構える、中級山岳ステージとなるのだから。

 ゴール10km手前にも、カテゴリはないものの、最大勾配18%の区間を2つもつそれなりの「丘」が待ち構えている。おそらくはキッテルの連勝はここでストップするはずだ。

 代わりに最後のゴールラインを先頭で通過するのは誰か。

 もしかしたら今度こそ、今ミラノ~サンレモ覇者であるアルノー・デマールが勝利を手にするのかもしれない。

 いずれにしてもいよいよ、「最も厳しいグランツール」が、本格的に始まろうとしている。

www.jsports.co.jp