りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ジロ・ディタリア2016 第15ステージ

 ロンド・ファン・フラーンデレンのような伝統的なクラシックは「強い者が勝つ」というある意味シンプルなレースである。だが、21日間にもわたって戦われるグランツールに関しては、「崩れなかった者が勝つ」といった印象を持っている。昨年のジロもツールブエルタも、崩れなかった者が最終的な勝者となった。いかにステージ優勝をしようとも、いかに山岳でのパンチ力を見せようとも、最終的に「大崩れ」してしまうステージがあれば、その選手は表彰台の頂上に立つことができない――そのように感じてしまうのだ。だからこそ昨年のフルームは、風邪という不調をしっかりと隠し切り、耐え切って被害を最小限に抑えたことが勝ちを掴んだのである。

 

 今大会に関してはどうか。ニバリ、バルベルデ、ランダの3強が総合優勝候補として挙げられた。しかしランダは体調不良でリタイア。そしてバルベルデは――クイーンステージとなった第14ステージで「大崩れ」を経験し、総合優勝争いからは既に脱落した様子だ。

 ではニバリが1強か、と思ったところで、今日のレースである。

 昨日のステージでも、バルベルデこそ引き離したものの、その後は思ったよりも伸びず、結局クライスヴァイクとチャベスとの間に30秒近いタイム差をつけられてしまった。

 その、微妙な調子の悪さを、この山岳タイムトライアルでも引きずってしまっていた。むしろ調子のよかったバルベルデに対してもかなりビハインドを抱えたまま走り続け――タイミング悪く、メカトラブルの憂き目にも遭ってしまった。よりによって、一瞬、一秒のタイムロスすら許されないTTにおいてメカトラブルに見舞われてしまう、というどうしようもなさ。こういった運の悪ささえも持たないことが、グランツールの勝者には求められる。そういった意味で、この瞬間、ニバリの総合優勝の芽は潰えてしまった、ように私には思えた。

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チェーンが外れ、走りだそうとした瞬間、リアディレーラーが外れる。jsportsより。

 

 一方で、第14ステージまでは派手に目立つことはなかったものの所々で常に先頭についていけるポテンシャルの高さを見せていたエステバン・チャベス。第9ステージの長距離TTでは元々のタイムトライアルの不得手さもあってタイムを落としたものの、今回の山岳TTではむしろ悪くない結果を叩き出した。

 マリア・ローザを着るクライスヴァイクも、ステージ優勝のフォリフォロフから0秒以下のタイム差での2位、バルベルデからは23秒、チャベスには40秒、ニバリには2分10秒ものタイム差をつけてゴールした。

 クライスヴァイクこそ、今ジロではTTを含め常に好調。表彰台に立つことすら期待されていなかった中で着々と順位を上げ、そして何よりも大切なその順位の「維持」を成し遂げつつ、結果として前日のクイーンステージで総合リーダージャージを着ることに成功している。そして、さすがにそのジャージを脱ぐことになるのではないか、とも予想されていた今日この日も、すべての総合ライバルに差をつける結果を叩き出すことで、一週間後の表彰台の頂点すらも見えてきた。

 だが、まだまだジロには厳しいステージが待ち構えている。

 ここで、クライスヴァイクが「大崩れ」しないで済むことができるのか。

 もしも崩れてしまえば、次に可能性が出てくるのはチャベスであり、彼は山で崩れることなく進めてしまうような気もする。

 それともニバリが、ここからの復活を成し遂げることができるか―—だがやはり、その可能性は薄いように、感じてしまう。これまでのグランツールの結果から見るに。

 それでもサイクルロードレースは予想を常に裏切る結果をもたらしてきてくれている。私は最後まで、不安を抱えつつもほのかに期待をしながら最終週を待ち構えていきたい。

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驚きのタイムを記録しステージ2位につけたクライスヴァイク。jsportsより。

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