りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2016 第2ステージ

 ペーター・サガン、3年ぶりのツール区間優勝。そして昨日のカヴェンディッシュに続き、自身初のマイヨ・ジョーヌを着用した! もちろんもはや恒例となったマイヨ・ヴェールも2日目にして獲得し、アルカンシェルジャージに加えてのこの偉業は過去にもそう多くはない様子。ロンド・ファン・フラーンデレン優勝と合わせ、今年のロードレース界における紛うことなき「キング」が、その強さをしっかりと見せつけた勝利となった。

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自身初のマイヨ・ジョーヌを着るサガン。jsportsより。

 

 4人の逃げ集団の内訳は、フォルテュネオ・ヴィタルコンセプトが1、ボーラ・アルゴン18が2。そのうちの1人は昨日も逃げて山岳賞ジャージを獲得したポール・ヴォス。しかし彼からポイントを奪い、最終的にこの日の山岳賞ジャージを獲得したのは、トレックセガフレードのジャスパー・ストゥイヴェン。

 昨年ブエルタグランツール初のステージ優勝を遂げたばかりの24歳。あのときは集団落車による骨折を抱えながらの勝利であり、翌日にはDNS(未出走)であった。

 今日のステージも残り8kmから単独で飛び出し、残り450mまで逃げ続けるなど、勝利への並外れた執念を見せつけた。山岳賞ジャージと敢闘賞ゼッケンを受け取る表彰台の上でも、悔しさを滲ませた表情を見せつけ、彼があくまでも勝利だけを狙っていたのだということがよくわかる。その「欲の強さ」は、今後の成長を大いに期待させてくれるものだ。

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山岳賞ジャージを身に着けながら敢闘賞ゼッケンを受け取るストゥイヴェン。jsportsより。

 

 そんなストゥイヴェンの夢を打ち砕いたのが、ゴール直前の2段階の登り。何しろ最大勾配14%を記録するポイントもあるくらいなのだ。単純な「登れるスプリンター」程度では厳しいくらいで、実際にゴール直前には、バルベルデ、アラフィリップ、ダン・マーティンなどの「ユイの壁」上位入賞者や、フルーム、キンタナなどの一流クライマーの姿が目立った。

 その面々の中に先頭で残れた時点で、サガンの勝利は揺るぎないものとなっていた。確かにアラフィリップもベストなタイミングで発射し、あわや勝利かと思える瞬間も見せたものの、若干の平坦基調であったラスト数百mほどで、一流スプリンターとも競い合える脚力を持つサガンのラストスパートが見事に決まり、そのまま文句のない勝利を飾った。

 サガンの強さを見せつけた勝利であった。しかしそんな彼を、クライマーたちが覇を競い合う最終局面にまで引き上げたのが、ロマン・クロイツィゲルの存在であった。もちろん彼も、コンタドールのアシストを第一優先としてこのツールには参戦しているはずで、サガンもそれはわかっているから、ティンコフ時代の彼はツールでは常に一人で戦い続けていた。

 しかし今日のステージではそのクロイツィゲルサガンを強力にサポートし、その勝利に大いに貢献した。それは、チェコ選手権でペーターが彼をアシストしたことへの返礼だったのかもしれない。

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ゴール直前の競り合い。アラフィリップを追い抜いたサガン。jsportsより。

 

 しかしその代償、というわけではないだろうが、コンタドールがまたしても遅れた。昨日の落車の影響が残っているのか。今日もまた落車をしており、そのせいなのか。すでに総合成績でフルームやキンタナから1分近く遅れている。

 さらにリッチー・ポートもゴール4km手前でのメカトラブルにより2分近くの遅れを喫した。もちろんこのあたりのタイム差は、山での勝負でしっかりと力を見せつけることができれば逆転できる数字ではある。が、これが彼らのモチベーションに大きな影響を与えなければいいが・・・。

 逆に言えば、そういったトラブルに見舞われないことこそがやはり「強さ」の一つなのだ。フルームはもちろん、昨年は第2ステージで大きく遅れたキンタナが今年はしっかりと喰らいついている。まだまだ21分の2ステージに過ぎないが、平坦ステージでも緊張感をもって1ステージ1ステージを安全にこなしていかなければ、その先の勝利は決して手に入れられない。

 

 すでに総合優勝に向けた苛烈な戦いは始まっている。果たして最後に表彰台の頂点に立つのは誰か。

 

www.jsports.co.jp

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