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りんぐすらいど

ロードレース関連の記事が中心。https://twitter.com/SuzuTamaki

ツール・ド・フランス2016 第3ステージ

 マーク・カヴェンディッシュ、28勝目。ツール区間勝利数ではベルナール・イノーに並ぶ歴代2位タイ。ここにまた、彼は伝説を作った。

 

 思えば苦難の連続であった。2009年のステージ6勝とこの年から始まるシャンゼリゼ4連勝。2011年には念願のマイヨ・ヴェールと共にアルカンシェルも獲得した。

 しかし2013年・2014年には新たに台頭してきた若きドイツ人スプリンター、マルセル・キッテルに完敗し、シャンゼリゼ勝利も奪われた。キッテル不在の昨年には、かつてのチームメートであり最大のライバルでもあったアンドレ・グライペルシャンゼリゼ含むステージ4勝を奪われた。

 そして今年はキッテル加入の代償に追い出されるかのように、エティックス・クイックステップを追われディメンションデータに移籍してきた。もはや「最強」とはカヴェンディッシュにとって過去の栄光でしかないのか――いや、そんなことはなかった。

 ディメンションデータには、エティックスから盟友マーク・レンショーを引き連れての移籍となった。また、かつてのチームメートであるベルンハルト・アイゼルとエドヴァルド・ボアッソンハーゲンとも合流し、「最強のカヴェンディッシュ体制」を実現した。「今年はあくまでもトラック優先」と言いながら最初は大人しくしていたツアー・オブ・カリフォルニアも、最終ステージで見事勝利をかっさらい、万全の状態でツールに臨んだのである。

 

 今日の勝利は必ずしも当然のものとは言い切れないものだった。やや登り基調のゴールはキッテルを後退させるには十分で、代わってグライペルが最有力候補としてプロトンの前方に上がってきた。実際に最終コーナーを曲がった時点で最もよい位置につけていたのがグライペルだった。そのままゴールに向かって突進し、誰もが彼の勝利を疑わなかった。

 しかしそこで大きく伸びてきたのがカヴェンディッシュであった。その走りは、全盛期のそれを彷彿とさせる。サガンも引き千切り、ごくわずかの差でグライペルを差し切ったその走りは、紛れもなくカヴェンディッシュの実力であった。

 第1ステージの勝利だけならば、それは奇跡と言えるかもしれない。だが、2回目はもはや必然である。カヴェンディッシュは復活した。かつて最強と呼ばれた男が、再び帰ってきてくれたのである。

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ほんのわずかの差で決まったカヴェンディッシュの勝利。ゴール後、すぐにはその結果が確定しなかったほどだ。jsportsより。

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グライペルの大きなガッツポーズの後、自身の勝利を確信し静かに小さなガッツポーズを見せたカヴェンディッシュ。jsportsより。

 

 今日のステージを盛り上げたのは勝者だけではない。220kmを超えるロングステージは、たった一人の逃げによって始まった。フォルテュネオ・ヴィタルコンセプトのアルミンド・フォンセカ。地元出身の選手の1人である。

 のちに、あまりにもゆったりとしたプロトンに嫌気がさしたのか、ディレクトエネルジーのトマ・ヴォクレールがブリッジを仕掛けてフォンセカに合流した。そのまま2人は残り10kmを切るまで逃げ続けた。とくに、フォンセカはヴォクレールに走りにしっかりと喰らいついて最後まで残り続けた。敢闘賞は獲得できなかったが、その走りは人々の記憶に刻み込まれたに違いない。

 

 そしてもう1人、トレックセガフレードの25歳スプリンター、エドワード・トインズ(トゥーンス)がかなりよい走りを見せている。昨日山岳賞を獲得したストゥイヴェンと並んで「カンチェラーラの後継者」と目されているベルギー人だ。パリ~ニースなどでも鋭い飛び出しで注目を集めていたが、今大会では第1ステージとこの第3ステージで共に5位。

 怪物ばかりがひしめき合うツールで5位を獲れるということは、紛れもない実力者の仲間入りを果たしている証拠である。他のグランツールであれば十分ステージ優勝も狙っていける力量。果たして今後、さらなる活躍を見せてくれるときがくるのであろうか。

 そして、ヴォクレールが彼のために走ったと告げたディレクトエネルジーのエース、ブライアン・コカール。第1ステージ7位に引き続いて今ステージでは3位。昨年も中間スプリントにゴールにと常に上位には入りながらもなかなか区間勝利を成し遂げられない24歳。しかし昨年シャンゼリゼでの驚異の伸びは印象的。今年こそは、と言いたいところだ。

 

 明日も240km弱のスプリントステージ。また最後にほんの少しだけ登るようではあるが今日ほどではないはず。今度こそキッテルが勝つのか。グライペルが雪辱を晴らすのか。はたまたカヴェンディッシュが勢いを見せつけるのか。そしてそれ以外のスプリンターたちが台頭するのか。

 今年のツールは序盤のスプリントステージから目が離せない展開が続いている。

 

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