りんぐすらいど

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ツール・ド・フランス2016 第4ステージ

 誰しもに勝利を期待されていて、だからこそこの3日間は辛く苦しい日々だったに違いない。ゴール後、昨日以上の僅差によりすぐには結果が出ず、座り込んでアナウンスを待つマルセル・キッテル。そしてその勝者の名前が呼ばれた瞬間——彼は叫び、そして抱き合い、最後にはサドルにうつ伏せになって涙を流した。

 これまで幾度となく勝利を重ねてきた男でも、かけがえのない1勝というものが存在する。ニーバリも、カヴェンディッシュも、そういう経験をしてきた。もちろんキッテルも、あまりにも辛かった昨年シーズンを経て、ドバイ・ツアーで勝利したときは同じ思いを抱いたはずだ。そしてこのツールでもまた、そういった勝利を経験したことで、彼はさらに、今まで以上に、強くなるだろう。

 おめでとう、キッテル。

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勝利が決まり、全身で喜びを表現するキッテル。jsportsより。

 

 そしてもちろん、この人物を忘れてはいけない。ブライアン・コカール。ディレクトエネルジーのエースにして、昨年のシャンゼリゼでは驚異的な伸びを見せての2位。そしてこのツールでも第1ステージ7位、第3ステージ3位と、常勝スプリンターたちにひけをとらない結果を叩き出している24歳のフランスの新鋭だ。

 ゴール前300m、キッテルが先頭に飛び出した段階では、まだ集団の中に埋もれていた。グライペルが沈み、サガンが追い付けないでいる残り150mで、左から飛び出してきたのがコカールだった。そのまま両肩を左右に大きく振って、その一踏みごとに確実に前進し、恐るべき加速力で一気にキッテルと並んで、そして最後、ほぼ同時にゴールラインを越えたのだ。

 両者とも、ガッツポーズはしない。

 それだけ、ギリギリの結果であった。

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昨日のレース以上の僅差となった。画像で見ても微妙なくらいだ。jsportsより。

 

 結果として勝利したのはキッテル。コカールは勝者でない以上、表彰台に立つこともできない。しかしそれでも、彼が一流スプリンターに肩を並べられる選手であることは間違いなく証明できたし、今後さらなる飛躍があるだろうことは明らかだ。

 トマ・ヴォクレールをはじめとしたチームメートの尽力にしっかりと応えられた走りでもあった。次こそはそれに、勝利という結果でもって返してあげよう。まだ、スプリントステージは残っているのだから。

 

 今大会最長ステージであったこのステージは、終始動きの少ない、退屈なレースであった。しかしそれはすなわち、大規模な落車のない、選手にとって平和な日であったことも事実だ。天気もずいぶん回復してきたようで、まずは一安心。だが明日は、いよいよ話題になっていた、序盤からいきなり出現する山岳コース。

 山岳カテゴリもそこまで高くはなく、ここで大きな差がつく、ということはないだろうが、それでも総合順位のシャッフルの可能性は十分ありうる。今のところ遅れているコンタドールやポートが挽回できるのか。あるいは今のところ肩を並べているフルームとキンタナとの間に差が生まれる事態になるのか。

 目が離せないステージとなるだろう。

 

www.jsports.co.jp

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