りんぐすらいど

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ツアー・ダウンアンダー2017 第2ステージ

まるで、ウィランガヒルのステージを見ているかのようだった。

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10%近い勾配が続くパラコームの登りゴールを、勢いよくダンシングで駆け上がったリッチー・ポートは、そのまま独走状態で、後続に16秒以上のタイム差をつけてシーズン最初の勝利を遂げた。

 

2年前のパラコームゴールでは、その年の優勝者であるローハン・デニスが勝利し、そのまま総合優勝までジャージを守り切った。

そのときは総合2位とは7秒差。

しかし今回のリッチー・ポートは、このステージの結果、総合2位と20秒ものタイム差をつけた。

そして彼にとってはむしろ他の選手にタイム差をつけるチャンスとなるウィランガ・ヒルステージがまだ待ち構えている。

 

ついに、ポートは念願のダウンアンダー総合優勝を果たすことができるのか。

 

いや、まだ気軽なことは言えない。

この日はポートに敗れたものの、16秒差でステージ3位につけたエステバン・チャベスがいる。

昨年のウィランガ・ヒルで最も長くポートに喰らいついていたセルヒオルイス・エナオも、現在ポートとは29秒差まで開いたものの勝利を諦めてはいないだろう。

そして何より、ウィランガ・ヒルまでの間のスプリントステージで、現在24秒差で総合4位のジェイ・マッカーシーが、世界チャンピオンのサガンのアシストを受けてどこまでボーナスタイムを稼いでくるつもりか。

 

まだまだ何も結論めいたことをいうことはできない。

ただ、まずはリッチー、おめでとう。

今年、最も注目する選手の1人だ、君は。

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ツアー・ダウンアンダー2017の第2ステージは、スターリングの周回コースから北上してパラコームの登りフィニッシュに至る148.5kmのステージ。

スターリングはそれ自体が名物ゴールとなることも多い、登りの厳しいレイアウトであり、それを5周してから激坂フィニッシュに至るわけなので、ウィランガ・ヒル以上に厳しいステージなのではないかと噂もされていたようだ。総獲得標高は3000m以上らしい。

www.cyclowired.jp

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アデレード市街を見下ろす、標高約500mのスターリング山上コース。下りも勾配10%? 非常にアグレッシブなダウンヒルを繰り返し見ることができた。jsportsより。

 

スタート直後の逃げは、バーレーンメリダに所属する、今回ロード初出場となるマウンテンバイク選手オンドレイ・ツィンクと、UniSAに所属する29歳のベテラン選手キャメロン・マイヤー

しかし、序盤にスプリントポイントが用意された今ステージでは、最初の逃げは容易には容認されないだろうという予想通り、オリカ・スコットが牽引の中心を担うプロトンによってまもなく吸収。

直後に現れた第1スプリントポイント(23.7km地点)で、まず飛び出したのがペーター・サガン。しかし彼は、第1ステージに引き続き、チームメートのアシストに徹するようだ。彼の背後から飛び出す、ジェイ・マッカーシー。そしてマッカーシーの後ろからは、昨日ステージ2位、繰り下がりでスプリント賞ジャージを着るチーム・スカイのダニー・ファンポッペルの姿。カレブ・ユアンもいる!

そんな猛者どもを蹴散らして、この第1スプリントポイントを獲ったのは、今年、中東チームへと移籍した、元スカイエーススプリンターの1人である、ベン・スウィフト

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ダウンアンダー恒例、激しいスプリントポイント争い。昨年はオリカがチーム力を見せつけて獲得量産をしていたが、今年はライバルたちの勢いも凄まじいものがあるようだ。jsportsより。

 

昨年はスプリントにおいてなかなか目立った活躍ができなかった代わりに、パリ~ニースなどでエースを山岳で牽くなどスプリントだけでない強さも見せつけてくれたスウィフトだが、今年は新チームのエースとして新たな活躍を見せつけてほしいものだ。

 

マッカーシーは2着を獲り、3ポイントとボーナスタイム2秒を獲得。

今ステージ終了段階で合計8ポイント(1位とは7ポイント差の15位)と総合4位(1位とは24秒差)というまずまずの結果を残した。

 

 

このスプリント争いの直後、集団から飛び出したのはモヴィスター・チームのエースナンバーを着るヤッシャ・ズッターリン。色白のドイツ人だ。

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開幕前に書いた以下の記事では「なんでこの人がエースなの?ヘスス・エラーダの方が相応しいんじゃないの?」などという失礼極まりないコメントを書いていたが、早速このような形で活躍していただいており、誠に申し訳ないというほかない。

suzutamaki.hatenablog.com

下り坂では果敢に攻め、しっかりとタイム差を4分近くまで開いたり、ラウンドアバウトでは真ん中を突っ切って勢いよくジャンプする姿などに素顔の写真イメージからは少し予想していなかった自由さ・快活さを感じ、一気に魅せられてしまった。

まだまだ24歳と若く、大きな実績もないようだが、TTTで活躍するなど独走力もそれなりにあるようなので、今後も注目していきたい若手選手の1人となった。

 

 

そんなズッターリンが1位通過した第2スプリントポイント(65.9km地点)では、再びサガンの牽引でボーラの選手が2着を獲る。

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どうやら、スロヴァキアの24歳、ミカエル・コラーのようだ。サガンと同じくティンコフからの移籍組で同国籍ということで、プロトンの中でもよく二人で話しているシーンが映像に映し出される。 

しかしボーラはベネットでスプリントを狙ってみたり、こうやってマッカーシーや別の選手でスプリントポイントを獲ってみたりと、イマイチその狙いがはっきりと定まらない印象を覚える。マッカーシーでいくならずっとマッカーシーでいかないのか? ラストに備えて足を貯めているのか? それともいろんな選手に経験を積ませるというミッションがあるのか? そもそもサガンが出てこない理由がわからない。彼は総合を狙っていないのか?

 

ずっと単独で逃げていたズッターリンも、残り40kmあたりで吸収され、集団は最後の登りスプリントに向けての準備態勢へと移っていった。

 

 

そして残り3km。ラストの1級山岳パラコームに突入。まずはペーター・サガンが、ジェイ・マッカーシーのために牽引を行い、やがて千切れていく。千切れていく!?

なお、リーダージャージを切るカレブ・ユアンは、登りが始まると早速千切れていった。彼は昨年もスターリングの登りで早々にジャージ維持を諦めていった。この辺りはまあ、仕方ない。

 

登りでは最初、チーム・サンウェブのエース、ウィルコ・ケルデルマンが飛び出すが、これに対してのカウンターアタックリッチー・ポートが発射!

ヴィスターのゴルカ・イサギーレがこれに喰らいつこうとするも、やがてポートの勢いについていけず脱落。追い上げてきたエステバン・チャベスと合流し、ゴールではチャベスを差し切ってなんとかステージ2位を獲得した。

そしてポートはそのまま、ゴルカとチャベスには16秒差、そしてエナオマッカーシーのいるメイン集団からは19秒差をつけて単独ゴールを果たした。

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山では敵なし、少なくとも相手にフルームや、万全のキンタナがいない限りにおいては。

今年こそツール表彰台に登ってしまおう。それだけの力量が、あなたにはあるはずだ。

 

 

ツアー・ダウンアンダー 第2ステージ

スターリング~パラコーム 148.5km ゴール順位

1.リッチー・ポート(BMCレーシング)

2.ゴルカ・イサギーレ(モヴィスター) +16秒

3.エステバン・チャベス(オリカ・スコット) +16秒

4.ローハン・デニス(BMCレーシング) +19秒

5.ネイサン・ハース(ディメンションデータ) +19秒

6.ディエゴ・ウリッシ(UAEアブダビ) +19秒

7.ルーベン・ゲレイロ(トレックセガフレード) +19秒

8.マイケル・シュトーラー(UniSA) +19秒

9.マイケル・ウッズ(キャノンデール) +19秒

10.ルイスレオン・サンチェス(アスタナ) +19秒

 

ウリッシやウッズなどはさすが。昨年の登りゴールや山岳ステージで活躍しただけはある。また、このメンバーの中で元アクソンの22歳ゲレイロやまだ19歳(!)のシュトーラーがしっかりと残っているのは凄い!

なお、同タイムで以下20位まで続いており、その中にはマッカーシーエナオ、ポッツォヴィーヴォ、ケルデルマン、ヘーシンクなども含まれている。

 

 

総合順位

1.リッチー・ポート

2.ゴルカ・イサギーレ(+20秒)

3.エステバン・チャベス(+22秒)

4.ジェイ・マッカーシー(+24秒)

5.ネイサン・ハース(+27秒)

6.ディエゴ・ウリッシ(+29秒)

7.ネイサン・アール(+29秒)

8.ローハン・デニス(+29秒)

9.ルイスレオン・サンチェス(+29秒)

10.ラファエル・バルス(+29秒)

以下、今日のステージ20位までの選手がずらずらと同タイムで並ぶ。

 

この総合上位のメンバーの中から、スプリントステージでボーナスタイムを稼いでいける選手たちが、ポートへの挑戦権を得ることになるだろう。

その意味で、最も可能性がありうるのがマッカーシーであり、その鍵を握るのはやはりペーター・サガンだろう。

 

そのペーター・サガンは、3分52秒遅れの総合76位。

総合争いは完全に捨てた形となる。この後はマッカーシーのアシストに徹することになるだろう。

逃げに乗ることもありうるかも!?

 

スプリントや逃げも十分に勝敗を分けるポイントになりうるダウンアンダー。

明日からのステージも見逃せない。

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