りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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ツアー・ダウンアンダー2017 第4ステージ

ノーウッドからキャンベルタウンまでの149.5km。

序盤に平均勾配13%の激坂チェッカーヒルが待ち構えているものの、全体としては平坦コースであり、スプリンター向けのステージ。

そして、今大会(クリテリウムも入れれば)4回登場したスプリントステージすべてで、この男が勝利したことになる。

 

すなわち、カレブ・ユアン

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昨年以上の仕上がりを見せる22歳のオージースプリンター。

今年こそ、グランツールでの大活躍が見られるのだろうか。

 

 

 

 

この日の逃げは3人。

バーレーンメリダオンドレイ・ツィンク(チェコ、26歳)。

クイックステップ・フロアーズのジャック・バウアー(ニュージーランド、31歳)。

そしてUniSAのキャメロン・マイヤー(オーストラリア、29歳)だ。

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この中で最初に存在感を示したのがツィンク。

第2ステージの序盤で今回と同じくマイヤーと共に逃げた彼だが、この日もしっかりとエスケープに参加。

だけでなく、ダウンアンダー随一の激坂である13%のチェッカーヒルを、懸命にペダルを回し登りながら、先頭で通過することに成功した。

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マウンテンバイクの選手であり、ロードは今年から参戦したばかりの26歳。

今後、もしかしたらアルデンヌクラシックなどでの活躍に期待を持てるかもしれない(ということは新城選手とタッグを組む可能性も多いかも?)。

 

 

そんなツィンクも、残り50km手前でペースアップしたマイヤーとバウアーに対し少しずつ遅れ始め、やがて切り離されてしまうことになる。

キャノンデールのウィリアム・クラークやアスタナのミカエル・ヴァルグレン、ロット・ソウダルのラルス・バクなどが追走を仕掛けるものの届かず、やがてマイヤーもペースを落とした末に、バウアーの一人旅が始まる。

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残り5kmまで独りで逃げ続けたジャック・バウアー。jsportsより。

 

バウアーと言えば思い浮かぶのが2014年のツール・ド・フランス。ゴールまで残り数百mというきわどいところまで逃げギリギリで勝利を逃したあの日、崩れ落ちるように泣いていたその姿が印象的だった。

30代に入り、チームも変えて心機一転を図った彼は、年初の国内選手権ITT部門で優勝。万全の状態でダウンアンダーに乗り込んできた。

 

昨年はツアー・オブ・ブリテンでもステージ優勝。

今年こそは、グランツールで勝利を掴む彼の姿を見てみたい。

 

 

 

 

さて、ゴールスプリントだ。

今回のユアンの勝利を象徴する画像はこれしかないだろう。

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前方をダニー・ファンポッペルに塞がれたユアンが、彼とニキアス・アルントとの間を巧みにすり抜け、そのまま加速。

出遅れた形となったサガンに追い付かれることなく、そのまま勝利を掴む圧巻のスプリント。

実況も思わず"Unstoppable!!"と叫んでしまうほどのユアンの快進撃。

その勝利の秘訣は以下の記事に詳しい(上記のライン取りについての詳しい解説も載っているため必見)。

使えるものは全て使うカレブ・ユアンの理詰めのスプリントとは? - サイバナ

 

 

なお、残り1kmを越えた直後にハンスグローエの選手(ミカエル・コラーか?)が勢いよく飛び出し、逃げ切りの可能性すら浮上した。

これを追うために全力でユアンを牽引したのがダリル・インピー。やはり頼れる男だ。

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フラム・ルージュを抜けた直後に飛び出したハンスグローエの選手。オリカ・スコットはこれにも冷静に対処した。jsportsより。

 

 

 

ツアー・ダウンアンダー 第4ステージ ゴール順位

1.カレブ・ユアン(オリカ・スコット)

2.ペーター・サガン(ボーラ・ハンスグローエ)

3.ダニー・ファンポッペル(チーム・スカイ)

4.ベン・スウィフト(UAEアブダビ)

5.ネイサン・ハース(ディメンションデータ)

6.バプティスト・プランカートル(チーム・カチューシャ)

7.ジェイ・マッカーシー(ボーラ・ハンスグローエ)

8.カルム・スコットソン(UniSA)

9.ヤッシャ・ズッターリン(モヴィスター・チーム)

10.エンリコ・バッタリン(ロット・ユンボ)

 

ついに、クリテリウムからのスプリントステージ全てでトップ10に入っている選手が、ユアンサガン以外ではプランカートルのみとなった。

もう28歳とスプリンターとしては決して若くはない選手だが、ベルギー選手権ロードレース部門で4位に入っていたり、HCレースでの勝利やポイント賞ジャージなどを獲得していたりと、昨年までのコンチネンタルチーム時代はしっかりと実績を積み重ねてきている。

基本的にはクリストフの発射台役としての活躍が主になるかもしれないが、今後も彼がエースを張る際のスプリントにはしっかりと期待していきたい。

 

 

 

新人賞ランキング

1.ルーベン・ゲレイロ(トレック・セガフレード)

2.エンリック・マース(クイックステップ・フロアーズ)

3.ホナタン・レストレポ(カチューシャ)

4.マイケル・シュトーラー(UniSA) +4秒

5.オドクリスティアン・エイキング(FDJ) +18秒

 

新人賞の対象は23歳以下なのか? では、メインティスやマッカーシー、ケルデルマンなどは対象にならないわけだ。

現状の新人賞首位は元アックス・オンのルーベン・ゲレイロ22歳。

だが、続くマース、そしてレストレポも同タイムのため、最終ステージにこれを突き抜けて前に出られる選手が現れることを期待している。

個人的には19歳のマイケル・シュトーラーがまさかの新人賞獲得、というのも十分ありうると思っている。

何しろ彼は、ゲレイロと共に、パラコームの登りスプリントでメイン集団の先頭付近を走ることができたのだ。

実質的に最終ステージとなるだろう明日のウィランガ・ヒルで、この辺りの新人賞ジャージを巡る熱い攻防が繰り広げられるのを楽しみに待っている。

 

 

 

ポイント賞ランキング

1.カレブ・ユアン(45)

2.ダニー・ファンポッペル(39)

3.ペーター・サガン(28)

4.ネイサン・ハース(28)

5.バプティスト・プランカートル(25)

6.ニッコロ・ボニファツィオ(24)

7.ニキアス・アルント(20)

8.エドワード・トゥーンス(19)

9.ジェイ・マッカーシー(17)

10.ベン・スウィフト(17)

 

ユアンが頭一つ飛び抜けており、これを超えるのは難しいと思う。

 

 

さあ、残るのは総合を巡る実質的な最終ステージである「ウィランガ・ヒル」。

山岳賞を巡って逃げに乗るメンバーがいるかどうか、総合争いでも各選手どういう動きをしてくるのか、そしてもちろん、今年のウィランガの勝者が誰になるのか――エステバン・チャベスというライバルがいる以上、今年もリッチーで安泰、というわけにはいかないだろう。

 

そして最終日のスプリントでは誰が勝つのか――今の段階では、もちろんこの人が一番人気となるだろう。

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指で「(クラシックを除けば)今年3勝目だぜ」とピースするユアン

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