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ロンド・ファン・フラーンデレン2017 プレビュー

今年もいよいよやってきた。

「クラシックの王様」、ロンド・ファン・フラーンデレン(ツール・ド・フランドル)。

昨年は第100回記念大会となり、伝説の男カンチェラーラの鋭いアタックが光ったものの、彼を独走力で引き千切るという化け物じみたことをやったのが世界チャンピオン、ペーター・サガンであった。

世代交代の瞬間を目の前にした感動からつい涙してしまったほどの激戦を終え、今年は果たしてどのような展開が見られるのか。

 

今年の「王」を決める伝説の一戦に向け、見所と注目選手を紹介していく。

 

目次

 

 

 

今年のコースと見所

かつて伝説を作り上げた「カペルミュール」がコース上から消えて久しい。

2012年大会から続く現コースにもすでに慣れ親しみ、最終盤の3つの激坂区間では毎年のように手に汗握る展開が生まれている。

 

このコース変更は十分に成功だったのではないだろうか、と古い時代を知らないニワカ世代としては思ってしまう。

 

そんな中、今年は6年のときを経て「カペルミュール」が復活するという。

ただし、勝負を左右する終盤ではなく、ゴールまで残り96km地点で。

この「復活」が、どれだけの影響を及ぼし得るのかはわからない。

それでも、伝説の復活に否が応でも期待は高まるだろう。

 

 

だが今回はとりあえず、例年のレース展開に大きくかかわっている以下の3つの「クライマックス区間」についてのみ、簡単にレビューすることにしよう。

(コース詳細はHet Parcours | Ronde van Vlaanderen | Flanders Classicsを参照しました)

 

 

残り27km地点 クルイスベルグ Kruisberg

全長2500m、平均勾配5%、最大勾配9%

例年このクルイスベルグの直前辺りから、すなわち残り30km台前半くらいから、決定的な動きが巻き起こっている。2015年はまさにこの坂で飛び出したクリストフとテルプストラがそのまま優勝争いを演じている。決して見逃すことのできないポイントだ。

 

残り17km地点 オウデクワレモント Oude Kwaremont 

全長2200m、平均勾配4%、最大勾配11.6%

終盤最も厳しいエリアで、決定的なセレクションがかかる。本当に強い者だけが生き残れる石畳の激坂である。2012年以降、ここを先頭通過したグループから優勝者が生まれる可能性は、100%である。

 

残り14km地点 パテルベルグ Paterberg

全長360m、平均勾配12.9%、最大勾配20.3%

短いがゆえに強烈。例年オウデクワレモントで数名に絞られるが、ここでさらなるセレクションがかけられ、独走勝利の決めてとなることも。昨年はサガンがファンマルクを振り切り、カンチェラーラを突き放し、新たな時代の王となった。

今年もサガンがここで凄まじい走りを見せるのであれば――「ペテルベルグ」なんていう名前に改名してもいいのかもしれない、なんて。

 

 

注目選手たち

ペーター・サガン(スロバキア、27歳)

言わずと知れた前年の覇者。過去5年で4度ベスト5に入っており、最終盤のオウデクワレモントおよびパテルベルグで他を圧倒するアタックを仕掛けることが多い。昨年はあのカンチェラーラを凌ぐ独走力も発揮した。

ここ最近は、昨年引退したカンチェラーラに代わるかのような立場に置かれている。すなわち、プロトンで最も警戒され、他の選手は見逃したとしても、彼だけは絶対に飛び出しを許さない、とでもいうかのような立場である。彼自身も随分フラストレーションが溜まっているようで、先日のヘント~ウェヴェルヘムではそれで勝利を逃した。

しかし、そんな状況でもカンチェラーラは強さを見せつけて勝利をもぎ取っている。サガンもまた、本当に実力差が色濃く出るこのフランドルでは、しっかりと他を力でねじ伏せる走りを見せてくれることだろう。とくに最後のパテルベルグでの走りに注目だ。

 

 

トム・ボーネン(ベルギー、36歳)

伝説を作り上げたベルギーの英雄は、今年のパリ~ルーベを最後に現役を引退する。パリ~ルーベ4勝、ヘント~ウェヴェルヘムとロンドは3勝ずつ、E3に至っては5勝という、まさにベルギー最強の男であった。2012年のE3、ヘント、ロンド、ルーベの4連勝は他に類を見ない事績であった。

ここ数年は結果を出し切れずに終わることも多かったが、それでも昨年のパリ~ルーベは2位。今年に入ってからも、スプリントの勝利に加えてクラシックでもしっかりと終盤まで残る走りは見せられている。状態は着々とよくなっており、引退に向けた花道作りの準備は十分。あとは結果を出すだけである。

とはいえ、クイックステップの強みは、ボーネン以外の誰が優勝してもおかしくないだけの豪華なメンバーにある(それがときに裏目に出て結果を出せないこともしばしばどころか頻繁にあったけれども・・・) チームの勝利を掴むべく、ボーネンがチームメートのアシストに回る展開というのも十分にあるだろうし、それはそれで、彼の栄光のクライマックスとしては決して悪くないだろう。

 

 

フィリップ・ジルベール(ベルギー、34歳)

5年間過ごしたアメリカのチームを離れ、古巣に戻ってきた。目的は、ロンドを制すること。だからといって、自分の勝利にだけこだわるわけではない。ドワルスドール・フラーンデレンでは、自らのネームバリューを利用して、見事チームメートの勝利を最大限にアシストした。

そして彼自身もまた、つい昨日の「デパンヌ3日間」初日ステージで圧巻の独走勝利を決めた。ロンドに向けた準備は万端。アルデンヌ最強の男が、フランドルの地に名を刻む瞬間は訪れるか。

 

 

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、31歳)

リオオリンピック金メダリストは今年、最高のコンディションでクラシックシーズンを過ごしている。オンループ・ヘットニウスブラッドの連覇から始まり、E3ハレルベーク、ヘント~ウェヴェルヘムと、ワールドツアークラスのクラシックを次々と制覇。その勢いはかつてのトム・ボーネンを彷彿とさせるほどだ。

となれば、彼が次に目指すのはもちろんロンドの制覇である。昨年は残念ながら途中リタイアとなってしまったものの、ロンドが現在のコースレイアウトとなった2012年以降、4位、7位、2位、3位と常に上位に入り続けている。

「僕はもう自分をロンドの優勝候補でないなどと言うつもりはない。僕の中は自信で満ち溢れているよ」と彼は語る。

www.cyclingnews.com

もはや、かつての「シルバーコレクター」の姿はそこにはない。今最も勝利の女神に愛されている男が、伝説の地での真剣勝負に臨む。

 

 

セップ・ヴァンマルク(ベルギー、28歳)

ロンド3位が2回。パリ~ルーベでも2位が1回、ヘント~ウェヴェルヘムでは2位が2回。クラシックでは常に上位に入りながらも、いまだにワールドツアークラス以上での勝利がない無冠の帝王。

今年は心機一転。5年間在籍したオランダのチームを離れ、恩師ヴォータース率いるキャノンデールに帰還。右腕のヴァンアスブロックも連れてきた。BMCから引き抜かれたタイラー・フィニーも加わり、勝つための布陣は十分に備わっている。

あとは欲を出すだけ。遠慮はいらない。全力で突っ走れ! 

 

 

その他、注目選手たち

 

ジョン・デゲンコルブ(トレック・セガフレード)

かつてミラノ~サンレモとパリ~ルーベを一度に制した男は、昨シーズン冒頭に交通事故に遭い、かつての調子を未だ十分には取り戻せずにいる。

それでも、先日のヘント~ウェヴェルヘムでは5位につけ、少しずつ復調しつつあることを証明した。 

 

ルーク・ダーブリッジ(オリカ・スコット)

ドワルスドール・フラーンデレンおよびE3で最終盤まで残り4位。それだけでも驚きなのに昨日のデパンヌ第1ステージでは独走するジルベールをただ1人本気で追走し、追い付かなかったものの2位につけた。

チームにはヘント~ウェベルヘムで2位につけたケウケレールや、ご存じ昨年パリ~ルーベ覇者ヘイマンもおり、チーム全体として結構クラシックに強い印象。

すごくどうでもいいが、チームメートで今回も一緒に出場するミチェル・ドッカーがとてもマリオ顔なので、並ぶとこっちもすごくルイージに見えてくる。

 

オリヴァー・ナーセン(AG2R・ラモンディアル)

チームの方針転回の反映として引き抜かれた石畳巧者のフランドル人の1人。大ベテランのヴァンデンベルフがイマイチな結果しか出せていないのに対し、こっちは出場するクラシックほぼすべてでトップ10に入っている。これでまだ26歳なのだから将来有望どころの話ではない。

とはいえ「クラシックの王様」は決して甘くはない。この大舞台でトップ10に入れるならば、来年の更なる飛躍も期待できるだろう。

 

イマノル・エルヴィーティ(モヴィスター・チーム)

昨年ロンドで7位。翌週のルーベでも9位に入り、日本の視聴者を驚かせた。北のクラシックにはほとんどやる気のないはずのモヴィスターで唯一と言っていいほどの石畳好きな変態。今年も入り込んできたら本当にすごい。期待を込めて。

 

エドワード・トゥーンス(トレック・セガフレード)

クラシックでの活躍を期待していたもののイマイチな結果が続いていたが、昨日のデパンヌでようやく1桁台のフィニッシュを。チームのエースナンバーを着けるストゥイヴェンももちろん上位入賞候補者。こう見るとトレックも相当強い。フェリーネもいるしね。

 

ルーク・ロウ(チーム・スカイ)

エースナンバーはスタナードが着けており、昨年のルーベも活躍していたが、去年のロンドおよび今年の2月末のクラシックではロウの方が調子が良かった。ほか、上位入賞というよりはアシストとしての活躍に期待したいのがモズコン。

 

スコット・スウェイツ(ディメンション・データ)

昨年までのボーラでクラシックエースを務めていた。今年、サガンの加入に合わせて移籍。結局こっちのチームでもエースはボアッソンハーゲンに獲られるのだが、先日のストラーデ・ビアンケではボアッソンハーゲンよりも上位の10位に。立派である。

今回もベスト10に入れるかというと著しく微妙ではあるが、今後の成長を期待して。もう27歳なのでそんなに悠長なことも言ってられないけれど。

 

ギョーム・ヴァンケイスブルク(ワンティ・グループゴベール)

ル・サミンでクイックステップ、ロット・ソウダル勢を押しのけて優勝。その後のクラシックでは悪くはないが良くもない成績でやはり難しいか、と思っていたところ昨日のデパンヌ第1ステージではクリストフたちと同じ集団でゴール(11位)。今回も期待したいところ。