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パリ~ルーベ2017 プレビュー

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「クラシックの女王」或いは「北の地獄」

いよいよ開幕(4月9日)。

「地獄」の名に相応しいこのレースで、栄冠を手にするのは果たして誰か。

  

目次

 

  

今年のコースと見所

2017年のパリ~ルーベのコースは、例年と大きく変わる部分は存在しない。

第26セクター「ブリアストル」および第25セクター「ソレム」が加わったものの、いずれも難易度は高くなく、大勢に影響を及ぼすことはないだろう。

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以下、見所となるパヴェ(石畳)区間を紹介する。

細かいデータはThe race - Compiègne > Roubaix - Paris-Roubaix 2017を参照している。

 

第22セクター(残り119.5km)「ケレネン」(★★★)

全長2.5km。別段、とりわけ厳しいパヴェ区間、というわけではない。きれいに耕された畑の間に走る真っ直ぐな一本道。石畳も比較的きれいで、乾いた日には砂埃が舞う程度。

しかし、昨年は雨上がりのコンディションで、少々水はけが悪かった。

結果、ここで大きな集団落車が発生し、サガンカンチェラーラという2大優勝候補が後方に取り残されることになった。

そのあとも2人は必死の追走を仕掛けるも結局は先頭に届かず。何もないと思われていたところで勝敗を分ける事態が到来するという、いかにもパリ~ルーベらしい展開を生み出した。

今年も、大きく勝負が動く場所ではないとは思うが、天候の状態によっては気を付けてみる必要があるかもしれない。

 

第19セクター(残り95.5km)「アランベール」(★★★★★)

全長2.4km。美しき森の中の「地獄」。

路面状況は最悪だが、全選手が警戒するゆえか、ゴールまでもまだ距離があるこの時点で決定的な動きが生じることは少ない。
むしろ、ここで「脱落しない」ことが非常に重要である。落車、パンク、道が狭いこともあり後方に取り残されてしまうと大きなタイムギャップが生まれ、たとえ先頭に戻ることができたとしても大きく力を使ってしまうことになる。たとえば2014年には、優勝候補でもあったアレクサンダー・クリストフがパンクし、戦線離脱する羽目になってしまった。
有力選手が遅れた場合、前方でも引き離したいチームの強力牽引などもあり、非常に見応えのある展開となるだろう。

この美しき地獄の森こそが、自分にとってはロードレースにおけるもっとも美しい風景だと思っている。この森の入り口が見えたとき、果てしない興奮が湧き上がってくる。

 

第12セクター(残り54km)「オシー・レ・オルシ」(★★★★)

全長2.7km。例年は3つ星だったようだが、昨年から4つ星に?

5つ星「モンサン・ペヴェル」の直前とあって勝負が動きやすいポイント。直前の「オルシ」(★★★)とセットで注目したい。逃げグループは少なくともここまでには捕まるようだ。その際のペースアップが集団を分けることも。

昨年はここで、チーム・スカイの落車が続発。4名中3名が落車という事態に。

 

第11セクター(残り48.5km)「モンサン・ペヴェル」(★★★★★)

全長3km。およそこの辺りから、実力者による本格的なペースアップと、集団のセレクションがかかるだろう。昨年はここで最終グループの5人を含む7人が抜け出す形となった。また、後方ではカンチェラーラとニキ・テルプストラが落車。サガンはなんとかやり過ごすが、先頭復帰が絶望的になった。

カンチェラーラが勝利した2013年には、逆に彼が力を見せつけて、集団を一気に絞り込んだセクションでもあり、いずれにしても実力がはっきりと出る、重要な地点であることは間違いない。

 

第9セクター(残り39km)「ポンティボー」(★★★)

全長1.4km。ここも決して難易度の高い区間ではないものの、いよいよ残り距離が短くなってくるため、勝負どころになることもしばしば。

2013年はファンデンベルフやファンマルクといった優勝候補が飛び出し、カンチェラーラが遅れる(のちに追い付く)。

2014年はサガンが飛び出して先頭集団に追い付き、のちに独走に入った。

サガンは昨年も今年もフランドルで30km台でのアタックを仕掛けている。

今年のミラノ~サンレモでもポッジョの頂上からのアタックを仕掛けるなど、積極的な攻撃に出ることが多いため、もしかしたら今回のルーベもこの辺りで、攻撃を仕掛けてくるかもしれない。もちろんそれまで彼が無事であれば、の話だが。

 

第5セクター(残り19.5km)「カンファナン・ぺヴェル」(★★★★)

全長1.8km。昨年はここで、最後の5名が形成された。2014年は、カンチェラーラの執拗なペースアップにより、先行していたボーネングループが捕まえられた場面となった。

直後に最後の山場である「カルフール・ド・ラルブル」を控えているが、それ単体では勝負を決めきれないと判断したスペシャリストたちは、この区間から積極的に攻撃を仕掛けていくだろう。

 

第4セクター(残り17km)「カルフール・ド・ラルブル」(★★★★★)

全長2.1km。いよいよ最後の5つ星区間。もちろん、この時点で残っているメンバーは精鋭中の精鋭であるため、この区間で特別遅れるということはむしろ少ない。しかし、たとえば2013年はここで、先頭に2人送り込んでいたクイックステップの選手が次々とトラブル(観客との接触)に見舞われて脱落。最後まで何があるかわからないという点で、油断はできない。

とりあえずサガン、あまり道の脇を走り過ぎない方がいいぞ。

 

 

この後は難易度の高いパヴェ区間があるわけではないが、パリ~ルーベにおける決定的な動きは、しばしば何でもない舗装区間で引き起こされたりもする。2015年がいい例で、あらゆる選手がルーベ対策を講じ、慎重に事を進めた結果、最後のカルフール・ド・ラルブルを越えてもなお20名以上の大集団、ということすらありうる。

 

よって、最終的には機を見た飛び出しと、そのあとの独走力によって決まる場合もある。

 

これらの特徴を考えたうえで、今大会の優勝候補者たちを次に挙げることとする。

 

 

注目選手たち

トム・ボーネン(ベルギー、36歳)

いよいよ彼の自転車選手人生における最後のレースとなった。過去、ルーベ優勝は4回。これは過去最高記録タイであり、あと1勝で彼は唯一の記録保持者となる。更新は実に40年ぶりだ。

不可能な話ではない。何しろ昨年は最後まで粘り続け、2位につけたのだから。そのときは最後のスプリントで敗れたが、今年はすでにスプリント優勝が1回。ガヴィリアのスプリント勝利のアシストも務め上げている。状態は万全のように思える。

先日のフランドルでは、あくまでも裏方に回った。カペルミュールでのアタック、そしてその後の、ジルベールのための集団牽引。自身は「ボーネンベルグ」のメカトラブルによって勝機を逃してしまったが、それも、このルーベに向けた「不幸の前払い」だと思えば安いものかもしれない。

ジルベールの勝利は感動的だった。ベルギーの観客たちも、今度こそは、この「ベルギーの王」による勝利を待ち望んでいることだろう。

 

 

ペーター・サガン(スロバキア、27歳)

ロンドと比べ、パリ~ルーベとの相性は決していいとは言えないだろう。昨年は集団落車に巻き込まれて後方に取り残されてしまった。一昨年は勝負所の直前にパンク。2年前は一時独走態勢を作ったうえで4位に入るものの、テルプストラの独走を許してしまい表彰台を逃した。

だが今年は割と本気で狙っているのではないか、というのが大方の予想だ。今の時代、最も「モニュメント制覇」に近い男とされているサガンが、ロンドの次に制するとしたらこのパリ~ルーベであるはずだ。

今シーズンここまで、勝っていないわけではないが、大きなレースではことごとく悔しい結果に終わっている。サンレモは2位。ロンドはオウデクワレモントでの自分のミスによる落車。

しかし昨年もシーズン序盤、勝ちに恵まれない中で「落ち着いた」頃、ヘント、そしてロンドと勝利した経緯もある。

ここまでの敗北が糧となって、いよいよこのルーベでの勝利がもたらされる可能性は十分にある。 

 

 

セップ・ヴァンマルク(ベルギー、28歳)

無冠の帝王は、今年もまた、フランドルでの勝利を逃した。

カペルミュールでのクイックステップの猛攻に耐え、サガンとヴァンアーヴェルマートを後方に置き去りにできたところまではよかった。完璧であった。

しかしその後、自らが原因となる落車で勝機を失ってしまった。本当に、悔やんでも悔やみきれない結末だったであろう。

 

とはいえ、彼にとってはもしかしたら、ロンドよりもルーベの方が相性がいいかもしれない。ロンドは過去4年で3位が2回だが、ルーベは過去4年で2位が1回、4位が2回である。さらに、ルーベのあの悪夢のような行程を無事乗り越えたという意味では4回中4回ともであり、実は現役選手の中で最もルーベを「こなす力」がある選手かもしれないのだ。

だから、きっと今年も最後まで残ることができる。あとは、彼のライバルとなる選手がどれくらい、石畳の犠牲になるか・・・ 

 

 

ルーク・ロウ(イギリス、27歳)

チームのエースはおそらくイアン・スタナードとなるだろう。昨年も3位だ。

しかし、今年のクラシックシーズンに限って言えば、ロウの方が調子がいいように思う。E3は15位、オンループは6位、クールネ~ブリュッセル~クールネに関しては3位だ。フランドルではヴァンマルクの落車に巻き込まれてしまい120位となってしまったが、カペルミュールでのクイックステップの攻撃には耐え、モズコンと共に先頭集団に残ることができるなど健闘した。

そもそもスタナードが頑張った昨年も、途中落車したものの復帰し、スタナードを発射させたうえで自身も14位と悪くない結果であった。その前の年のルーベは8位だ。

スタナードと共に終盤に残った場合には彼を優先させるのかもしれないが・・・。

競技場でのスプリント合戦になった際も、スタナードよりもスプリント力があると言えそうな気もする。もう5年も前だが、ツアー・オブ・ブリテンでボーイ・ファンポッペルを破って勝利したこともある。

また、着実にクラシックでの実績を残しつつあるチームメートのジャンニ・モズコンにも上位入賞を期待しておきたい。

 

 

ジョン・デゲンコルブ(ドイツ、28歳)

少しずつ、その力を取り戻しているのがわかる。ミラノ~サンレモ7位、ヘント~ウェヴェルヘム5位、そしてロンドでも7位に入った。クリストフとの最後のスプリント勝負には負けてしまい、まだまだ本調子でないことが伺えるが、それでも、2回目のルーベ制覇は十分に見えてきたと言えそうだ。

2年前、石畳をパワーで突き進むあの豪快な走り、舗装路で飛び出した勇気、そして最後、圧巻のスプリント。

何よりもそのチャレンジし続ける姿勢に、つい応援したくなってしまう選手だ。

 

 

トニー・マルティン(ドイツ、31歳)

もちろんチームとしてはクリストフをエースで考えているはずだ。先日のロンドも後続集団の先頭を取り5位。彼にとって3つ目のモニュメントとなるルーベへの思いは並々ならぬはずだ。

だからこそ、そんなクリストフを支える重要なキーマンとして、このマルティンの走りは注目に値する。昨年ルーベ初挑戦にして、石畳を堂々と走り後続のサガンカンチェラーラを突き放した。そんな「機関車」が、今度はカチューシャを救う。クリストフにとってはまたとない存在となるだろう。

あるいは、そんなマルティンがもしも最後まで残ることができれば、クリストフを警戒する他チームを尻目に、決定的なアタックからの独走に持ち込むことができるかもしれない。ツール・ド・フランス2015の石畳ステージがまさにそういった展開であった。

どんなチームでも献身的な姿勢を見せ続ける彼に、モニュメント制覇という栄光をもたらすことができたらなんと嬉しいことだろう。

 

 

ルーク・ダーブリッジ(オーストラリア、25歳)

今年のクラシックシーズンを騒がした新鋭。ストラーデ・ビアンケ6位、ドワルスドール・フラーンデレンとE3で4位、デパンヌ初日のクラシックステージでは2位につけ、最終日のITTで優勝した。

先日のロンドでも後続集団に入り12位となっている。

まぐれとは決していない成績を収め続けている彼が、ここまでのクラシックとはまた一味違うルーベでどんな活躍をしてくれるのか、非常に楽しみである。

もちろんチームには昨年優勝者のヘイマンやケウケレールなど有力選手も他におり、そちらも見逃せない。

 

 

その他、オリヴァー・ナーセン、スコット・スウェイツ、イマノル・エルヴィーティなど、注目したい選手は数多く。

もしかしたら追加するかもしれません。