りんぐすらいど

ロードレース関連の記事が中心。https://twitter.com/SuzuTamaki

アジアツアーランキング首位をひた走るチーム右京はこのまま突き抜けることができるか

チーム右京が好調だ。

現在行われている「ツアー・オブ・タイランド」(2.1)では、ジョン・アベラストゥリが第3ステージで優勝。

先日行われた「ツール・ド・台湾」(2.1)でも、ベンジャミン・プラデスが総合優勝を果たし、125ポイントものUCIポイントを稼いでいる。

国内レースとしても「ツール・ド・栃木」(2.2)で区間2勝。今期計4勝だ。

 

昨年は4勝するのに5月のツアー・オブ・ジャパンまで待たなければならなかったのに対し、今年は4月の頭で達成。

しかも、昨年の勝利数8のうち、海外レースでの勝利は3しかなかったのに対し、今年はすでにそれも2勝である。

 

現在、チーム右京は、アジアツアーのチームランキングで首位に立っている*1

昨年は5位に終わったが、今年はこれを上回ってきそうである。もしかしたら、このまま首位を走ることができるかもしれない。

 

将来的には日本のチームとしては初となるツール・ド・フランスへの出場を目指すと宣言し続けているチーム右京。

 

その歴史と今後の展望を概観していこう。

 

 

 

チーム右京の歴史

チーム右京は2012年、元F1ドライバー片山右京が立ち上げたチームである。

その目標は「2017年までのツール・ド・フランス出場」。

結成初年度は国内プロツアーでチーム総合4位、個人総合5位とまずまずの結果ではあったが、翌年の2013年シーズンには早くもチーム総合優勝と個人総合優勝及び2位を輩出するという、類稀なる結果を叩き出した。

 

この「2年目の大ブレイク」の立役者となったのが、2013年シーズンから新加入となったホセビセンテ・トリビオ土井雪広である。

 

トリビオは2012年まではスペインのプロコンチネンタルチームに属していた選手であり、ブエルタ・ア・エスパーニャでの区間優勝経験もある。

また土井は同じく2012年まで欧州を中心に活動しており、2011年には日本人として初めてブエルタへの出場を果たした。2012年には全日本ロードチャンピオンにもなっている。

 

そんな、本場の力を知り尽くした2人と、2008年Jプロツアー王者であり創設時からのチームキャプテンである狩野智也を合わせた3人が中心となって、チーム右京は「創設2年目のチーム&個人制覇」を成し遂げたのである。

また、この年はインドネシアのステージレースでも区間1勝と総合優勝をトリビオが果たしており、チームとしても初のUCIレース勝利となった。

トリビオは2014年シーズンの個人総合優勝も獲得しており、チームへの多大な貢献をしてくれたというわけである。

 

 

しかしこのトリビオが、2015年からは同じ日本国内のコンチネンタルチームである「マトリックスパワータグ」へと移籍することが決まった。時を同じくして狩野智也も、新創設される地元群馬の地元密着型チーム「群馬グリフィン」に移籍することに。

さらに土井もまた、2015年シーズンを最後にチームから去ることになった。

 

チーム創設期を支えたメンバーが次々と退団する中、新たなチーム右京の歴史を作るのが、今年ツール・ド・栃木の第1ステージを勝利したサルヴァドールグアルディオラ(2014年入団)、昨年ツアー・オブ・ジャパン及びツール・ド・熊野総合優勝と大活躍のオスカル・プジョル(2015年入団)、そしてチーム右京の誇る最強スプリンタージョン・アベラストゥリ・イサガ(2016年入団)といったスペイン人の精鋭たちである。

 

そして2015年シーズンに新加入した畑中勇介も、同シーズンの個人総合優勝に輝き、チーム右京の新たな時代を担う日本人として注目を集めた。

 

これらの新メンバーを率いて、チーム右京は、新たな挑戦を始めていく。

 

 

アジアツアーランキングトップを目指して

2013年から2015年にかけて、チーム右京は国内のプロツアーで結果を出し続けてきた。まさに国内最強のチームと言っても過言ではない。

 

  • 2013年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合優勝
  • 2014年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合2位
  • 2015年Jプロツアー個人総合優勝&チーム総合優勝

 

しかし、以下に示すように、世界に目を転じれば、彼らはまだまだひよっこの域を出ないものであった。

 

  • 2013年UCIアジアツアーチームランキング28位
  • 2014年UCIアジアツアーチームランキング23位
  • 2014年UCIアジアツアーチームランキング23位

 

そして、2014年・2015年シーズンにおいて、UCIレースにおける勝利は一度もなかったのである(当時チームに在籍していた窪木一茂が、2015年全日本チャンピオンになったくらいか)。

 

 

よって、チームは2016年シーズンから、より積極的にUCIレースでの勝ちを目指すようになる。トリビオや土井といった強力な選手の代わりに、一回り若い有力な選手を次々と獲得。より強化したチームと共に、5月初旬にはチームを2手に分けてアジアツアーのレースに派遣するという、新たな試みも実行に移した。

 

そして、ツアー・オブ・ジャパンとツール・ド・熊野という国内の重要な2レースにおいて、オスカル・プジョルがともに総合優勝を果たし、一気にUCIポイントを獲得。

2016年シーズンのアジアツアーチームランキングは5位と大躍進を果たした。

 「トップテンに入れればまずはよしとすべきかな*2」とシーズン冒頭で語っていた右京だが、その予想を大きく上回る結果を叩き出した、というわけである。

 

しかし、UCIレース8勝という大きな結果にも関わらず、そのうちの海外レースでの勝利数はいまだ3でしかない。

よって、2017年シーズンはさらなる「海外レースの勝利」を目標に掲げて、シーズンを開始することにした。

 

 

そこでチームが取った方針が以下の2つである。

 

  • 国内のJプロツアーへの不参加
  • 新たな戦力として、元チーム・スカイのネイサン・アールの獲得

 

そしてアジアツアーだけでなく、スペインを中心としたヨーロッパツアーへの参加もより積極的に行っていくと発表した*3

 

それらの結果として、本記事冒頭に挙げた成果を出しており、チーム右京の新戦略は現状のところ成功しているといって間違いないだろう。

 

 

「2017年までのツール・ド・フランス出場」は果たされるどころか、未だ、その前提となる「プロコンチネンタルチームへの昇格」すら実現していない。

それでも、年を重ねるごとにその成果を積み重ねていっているという事実が、彼らの可能性を感じさせてくれる。

 

「毎年そうだけれども、去年より今年のほうが強い、今年より来年のほうがさらに強い、というチームにしていかなければならない。だから、今年達成できなかったことが、次のスタート地点に立ったときの目標になります*4

 

その言葉通りの結果を出している彼らを、私は今後も応援していきたい。

 

 

今後の展望

今後のアジアツアーレースにどのようなものがあるかを確認しておこう。

 

  • ツール・ド・ロンボク(2.2) - 4月13日~16日 インドネシア
  • ツアー・オブ・ジャパン(2.1) - 5月21日~28日 日本
  • ツール・ド・熊野(2.2) - 6月1日~4日 日本
  • ツール・ド・コリア(2.1) - 6月11日~18日 韓国
  • ツアー・オブ・チンハイレイク(2.HC) - 7月16日~29日 中国
  • ツアー・オブ・シンタイ(2.2) - 8月25日~27日 中国
  • ツール・ド・北海道(2.2) - 9月8日~10日 日本
  • ツアー・オブ・チャイナⅠ(2.1) - 9月8日~15日 中国
  • ツアー・オブ・チャイナⅡ(2.1) - 9月17日~24日 中国
  • ツール・ド・モルヴカス(2.2) -  9月18日~22日 インドネシア

  • ツール・ド・バニュワンギ・イジェン(2.2) - 9月27日~30日 インドネシア
  • ツアー・オブ・アルマティ(1.1) - 10月7日 カザフスタン
  • ツアー・オブ・イラン(2.1) - 10月8日~13日 イラン
  • ツール・ド・セランゴール(2.2) - 10月17日~21日 マレーシア
  • ツアー・オブ・ハイナン(2.HC) - 10月21日~29日 中国
  • ジャパンカップ(1.HC) - 10月22日 日本
  • ツアー・オブ・イェンチョン(1.2) - 11月1日 中国
  • ツアー・オブ・タイフーレイク(2.1) - 11月4日~12日 中国

 

昨年にチーム右京が参戦したレースは上記赤の太字で記されているレースである。

しかし昨年参加したものの今年は開催予定のないレースが複数あったり、逆に今年新設のレースもいくつかあること、そして今年はJプロツアーに参加しないことなどから、赤の太字以外のレースも多く参加することになるはずだ。

今後、新たに参加したレースがあれば、細かく追っていきたい。

 

 

また、以下に、2017年シーズンの登録選手を一覧で示す。 

 

これを見て分かるように、やはり外国人選手の戦績がずば抜けている。

というより、畑中以外の日本人選手はまだまだレース経験の少ない選手も多く、さらに言えば今年チームに初加入したメンバーも複数名いるほどだ。

 

だからチーム右京というのは、「外国人選手を中心にUCIレースで勝利を重ね存在感を増しつつ、若手日本人選手の育成を行う」チームであるといえる。

チームの存在感アップと若手国内選手の育成の両方が重要である以上、この方針は妥当であると言えるだろう。

 

なお、同じような方針で成功しつつあるのがディメンション・データであると私は思う。

2015年ツール・ド・フランスに、アフリカ籍として初めてツール参戦を果たしたこのチーム(当時の名称はMTNクベカ)は、ヨーロッパで強化されたエリトリア人のダニエル・テクレハイマノによる一時期的な山岳賞獲得、および元BMCのイギリス人スティーブン・カミングスのステージ優勝によって一気に注目を集めた。

その翌年にはマーク・カヴェンディッシュとその相棒たちの加入によってさらに強化。アフリカチームとしての色が薄まったかと思えば、ランカウイで総合優勝を果たしたレイナルド・ヤンセファンレンスブルグや、今年のツアー・オブ・オマーンで新人賞を獲得したメルハウィ・クドゥスなど、「アフリカ人選手の育成」という課題もしっかりとこなしている様子が見られる。

 

個人的には、チーム右京というのは、まさにこのディメンション・データのような形で成功を収めてほしいと思っているのである。

日本人の若手育成「だけ」していても、限界があるのかもしれない。

まずは外国人選手を活用しつつ、日本国内だけでなくまずアジアから存在感を増していき、そこで走る日本人選手たちも必然的に刺激を受けて成長していく――そういう環境を作ることを、チーム右京には期待している。

 

そうしてやがて、ヨーロッパの大きなレースで活躍する日本人選手が少しずつ増えていく。

その先に、国を代表する新たな日本人選手が生まれるものだと、私は思っている。

 

 

右京監督も、東京オリンピックによる自転車界に対する好影響はもって5年である、と語っている。

だから、「2017年」目標の次は、「2025年」目標である。

その年までに、ヨーロッパでのレースである一定以上の存在感を発揮し、日本人選手たちがより活躍できる土壌を作ること。

それがチーム右京にとっての、今後の大きな目標の一つとなるだろう。

 

 

チーム右京という、日本人ロードレースファンにとっての新たな希望の活躍を、私は今後も見守っていきたい。

 

 

参考リンク

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~|集英社のスポーツ総合雑誌 スポルティーバ 公式サイト web Sportiva

→ 2014年~2016年にかけて連載された、チーム右京密着レポート。非常に読み応えがある内容です。 

 

PI PEOPLE vol.7 ホセ・ビセンテ・トリビオ・アルコレア & 吉田隼人 | パールイズミ(Pearl Izumi)

→ チーム創設期を支えたトリビオが、現在のチームメートの吉田隼人と共に栗村修氏のインタビューを受けている記事です。トリビオの日本への愛が伝わる内容となっています。

 

世界を知る男、ネイサン・アールがTeam UKYOを遥かな頂へと導く - サイバナ

→ 今年チームに新加入した期待のオーストラリア人、ネイサン・アールに関するコラムです。