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りんぐすらいど

ロードレース関連の記事が中心。https://twitter.com/SuzuTamaki

アムステルゴールドレース2017 プレビュー

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いよいよ始まる「アルデンヌ・クラシック」3連戦。

その緒戦となるのがこの「アムステルゴールドレース」である。

舞台となるのはオランダ南部のリンブルフ州

オランダとはいえ、リエージュからは鉄道で30分程度の距離。

ベルギー同様の熱いクラシックレーサーたちによる激戦が繰り広げられている。

 

今回はこの、「アルデンヌ緒戦」アムステルを徹底プレビューしていこう。

 

目次

 

 

アムステルゴールドレースについて

激しい起伏が特長で、クラシックスペシャリストというよりはグランツールでも活躍するようなクライマーに近い選手たちが活躍しがちなアルデンヌ。

その中でも、第1戦となるこのアムステルは、「トラジション」のレース、と言われることもあるようだ*1。だから、1週間前までの「北のクラシック」で活躍していたメンバーたちにもまだまだ勝機が残る。フランドルで勝利を獲りこぼしてきた選手たちもなんとか勝ちを狙っていきたいところだ。

 

過去の優勝者は以下の通り。

 

 

問題は、今年のコースに変更がかけられていることだ。

 

かつては名物「カウベルク(登坂距離1.2km、平均勾配5.8%、最大勾配12%)」の頂上にゴールが据えられており、まさにアルデンヌといったレイアウトであったが、2013年からはカウベルク登坂完了後に1.8kmの平坦が続くというレイアウトになっている。

 

この変更には当時、賛否両論があったようだが、個人的には好ましく感じてもいた。

このレイアウトになって以来、カウベルクで飛び出した選手がそのまま逃げ切ったパターンが2回、誰も飛び出さずスプリント勝負に持ち込まれたのが1回である(2013年はラスト7kmからの独走勝利)。

どんな終わり方になるか、選手も視聴者も想像がつかず、駆け引きと飛び出すタイミングがモノをいう、見ごたえのある展開を生み出すレイアウトであったように思えるのだ。

 

しかし今年はそのレイアウトにさらなる変更がかかった。

www.cyclowired.jp

 

例年であれば4度通過するカウベルクを、今年は3度だけしか通過しないという。

となれば、例年カウベルクで攻撃を仕掛けていたパンチャー/クライマーたちは必然的に大人しくなり、場合によってはスプリンターたちが大挙して押し寄せるフィニッシュとなるかもしれない。

 

あるいは、ロングエスケープを得意とする選手たちによる逃げ切りが、より決まりやすくなった、とも言えるかもしれない。

 

 

そこで私が今回、個人的に最も期待している選手が以下の人物である。

 

ティム・ウェレンス。25歳のベルギー人。

リンブルフ州(といってもアムステルの開催地である「オランダの」ではなく、そのお隣の「ベルギーの」であるが)出身の選手だ。

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注目選手① ティム・ウェレンス 

元マウンテンバイク出身の選手であるティム・ウェレンスは、2012年に現チームでプロデビューを果たした。

彼が頭角を現したのはその2年後の2014年。エネコ・ツアーで区間1勝と総合優勝を成し遂げ、翌2015年にも同じくエネコ・ツアーを総合優勝した。

同年にはグランプリ・シクリスト・ドゥ・モンレアルでも優勝し、ロット・ソウダルの期待の若手としてその名を轟かせた。

 

そんな彼が「期待の新人」から「トップライダーの一員」となったのは、昨年、すなわち2016年シーズンである。

 

まずは3月のパリ~ニース最終ステージ。

ゲラント・トーマスとの秒差の勝負を仕掛けるアルベルト・コンタドールとリッチー・ポートと共に逃げ、ラストのスプリントでこれを制した。

さらにジロ・ディタリアでも(トム・デュムランに唆されて?)勇気ある飛び出しを仕掛けて逃げ集団にジャンプアップ。そこからもアタックを決めてそのまま逃げ切り勝利を果たした。

総合優勝したツール・ド・ポローニュでも、決めてとなったのは第5ステージでの単独大逃げである。

そもそもベルギー国内選手権でもジルベールと共に逃げ、最後には敗れはしたもののヴァンアーヴェルマートなどを降しての2位である。ベルギー人ライダーとしても最高峰に位置する選手であることを証明した。

 

上記経歴を見てもわかるように、彼の勝利の際に常にそこにあるキーワードは「逃げ」。

そう、彼は、他の選手ではそう簡単には出ようと思わない絶妙なタイミングで飛び出し、そのまま逃げ切り勝利を決めてしまうパターンが多いのだ。

もちろん、うまくいかないことも多くある。

だが彼の強みは、それでも諦めずにまた挑戦する、その勇気と執念にあるのだ。

彼は逃げのスペシャリストである。

 

今年のティム・ウェレンスも非常に調子が良い。

年初のマヨルカ・チャレンジでいきなり2勝。そのあともルタ・デル・ソルで1勝だ。

もちろんいずれも得意の「逃げ」である。

 

そして特筆すべきは、初出場であったはずのストラーデ・ビアンケでの3位。

このレースもまた、アムステル同様、フランドルとアルデンヌの両方の特徴を兼ね揃えているかのようなレースだ。

そこでの好調ぶりは、彼のこのアムステルでの勝利の可能性を期待させてくれるものだ。

ストラーデ・ビアンケにおいて繰り返しアタックを試みたウェレンス。残念ながらこのときはその攻撃が実を結ぶことなく勝利は得られなかったが、それでもこのアルデンヌでの活躍を期待させてくれるだけの走りは見せてくれた。

 

 

ではそんなウェレンスの、昨年までのアルデンヌでの走りはどうだったのか。

結論だけ言えばこれもまた、積極的な「逃げ」を展開してくれていた。

だが、彼はいずれも失敗してしまった。

原因は「坂」である。

 

まず2015年のフレーシュ・ワロンヌを見てみよう。

同年から加えられた、ゴール前5.5km地点の新たな勝負所「コート・ド・シュラーヴ」。

ここで飛び出したウェレンスは、そのまま「ユイの壁」に単独で突入した。

 

しかし、本格的なクライマーたちが覇を競い合う激坂中の激坂を前にして、さしものウェレンスも歯が立たなかったようだ。一気に失速し、集団に飲み込まれてしまった。

 

そして昨年のアムステルゴールドレース

ラスト10km地点を過ぎた辺りで、ウェレンスがアタックを仕掛けた!

そして15秒近いリードをもって最後のカウベルグに突入したのだが・・・やはりここでも失速。アクセル全開で坂を上り始めたガスパロットに追い抜かれ、そのまま彼が勝利を決めてしまったのだ。結果は10位。

 

ウェレンスはアルデンヌでも彼らしい走りを見せてくれていた。しかしアルデンヌのアルデンヌたる所以である厳しい起伏を前にして、ステージレースでは圧倒的な力を誇るウェレンスのエスケープ力はまだまだ及ばない様子だったようだ。

 

しかし今年のアルデンヌはそのレイアウトが変わる。

カウベルクはゴール前19km地点に移動し、そこでは優勝候補たちの大きな動きが起こらない可能性があるのだ。

あるとしたらそれは、少数によるエスケープの動きである。

 

となれば、ウェレンスにとっては得意の領域である。

カウベルクの登りをこなした直後にアタックをするか、あるいは昨年同様ベメレルベルク(今年は残り5.6km地点にあるらしい)でアタックするか。

いずれにしても終盤の彼の動きには注目しておきたい。

 

 

だが、今回のコース変更でもう一人、勝率を高めそうな人物がいる。

 

それは、2015年覇者であり、同じく今年絶好調の男、ミハウ・クフャトコフスキである。

 

 

注目選手② ミハウ・クフャトコフスキ

先述した通り、ティム・ウェレンスは「フランドルとアルデンヌの合いの子」ストラーデ・ビアンケで3位だった。

では優勝した選手はだれか?

それがこの、クフャトコフスキである。

しかも彼はこのとき、「独走勝利」を成し遂げたのである。

残り15km地点からの独走勝利を成し遂げたクフャトコフスキ。昨年のE3以来、およそ1年ぶりとなる勝利だった。

 

 

さらにクフャトコフスキは今年、ミラノ~サンレモも制している。

このときもまた、ポッジョの山頂で飛び出したサガンについていき、そのうえでスプリントを制するという得意パターンであった。

なお、クフャトコフスキは2015年のアムステル勝利の際も、カウベルクでのアタック合戦ではなく、スプリント勝負に持ち込まれたうえでの勝利であった。マイケル・マシューズやアレハンドロ・バルベルデを降しての勝利である。

今年の新レイアウトが、スプリント争いになる可能性があることを考えると、あらゆるパターンでの勝利が考えられるクフャトコフスキは最大の優勝候補となりそうだ。

2015年のアムステルを制したクフャトコフスキ。昨年は3周目カウベルクで足を使い果たしリタイアしてしまったが、今年はリベンジを果たすことができるか。

 

 

その他注目選手

それ以外の注目選手としては、クフャトコフスキ同様に逃げもスプリントも狙えそうで今年絶好調なアレハンドロ・バルベルデ、あるいはパリ~ルーベを制したばかりのグレッグ・ヴァンアーヴェルマートも、フレーシュやLBLよりも彼に向いてそうなこのアムステルで勝利を狙ってくるだろう(ストラーデでは2位だった)。

 

そして、例年以上にスプリンター向きとなる今年のコースで勝利が期待されるのがマイケル・マシューズ。いつかアムステルを制するだろうと期待されているが、今年は最大のチャンスである。

また、スプリンターと言えばディレクトエネルジーのブライアン・コカールも油断できない。あるいはこのチームの場合、今年大ブレイク中のリリアン・カルメジャーヌもおり、展開次第では彼が勝負を狙ってくる可能性も十分にありうるかもしれない。

 

そしてチームとして期待したいのがバーレーンメリダ

エースナンバーはもちろん昨年覇者エンリコ・ガスパロットが着ているが、どちらかというと激坂向きの彼にとって、今回のコースレイアウトは決して有利とは言えないだろう。

むしろソンニ・コルブレッリがエースとなりそうだ。昨日のブラバンツ・ペイユでの勝利で、その可能性が一気に高まった。2014年アムステル10位の新城幸也も、最終発射台として活躍してくれそうだ。

アルデンヌ前哨戦とも言うべきこのレースで見事勝利したコルブレッリ。パリ~ニースでの勝利が記憶に新しいが、今年の「北のクラシック」でも上場の成果を挙げている。なお、ウェレンスはこのレースでは4位。勝てはしなかったがよい仕上がりを見せている。

 

 

他にも、ここ最近は勝てていないが意外とスプリント力もあるリゴベルト・ウランや、ここまで好調に過ごしてきているルイ・コスタ(UAEはスウィフトやウリッシも優勝候補だ)。

もちろん、ロンドを制した「アルデンヌの王」フィリップ・ジルベールも、自身4回目となるアムステル制覇を目指してくるに違いない(今年は喧嘩しないように・・・)。

大穴?としてカチューシャのバプティスト・プランカートルにも注目しておきたい。

 

 

 

なんだかんだで、今回のコース変更も、アムステルの新たな魅力を生み出しそうで期待は高まる。

何しろロンドも、あんなところにあるカペルミュールから勝負が動いたのだ!

残り19kmの勝負所というのも、いいスパイスになるのかもしれない。

むしろ他のアルデンヌ2戦との差別化がより進むといったところである。

 

昨年もアルデンヌ3連戦の中で実は一番楽しめたこのアムステル。

大きな期待をもって観戦したく思う。

 

当日は自分もこちら↓↓に参加しながら観戦します。よろしければ是非。

【サイバナラジオ】4/16(日) 22:00から放送開始します!【アムステルゴールドレース】 - サイバナ

同サイトではアムステル2017の詳細なコースプレビューも行っているため、ぜひ参考にしてください。