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ジロ・ディタリア2017 第15ステージ

ラスト50kmがほぼ昨年の「イル・ロンバルディア」のレイアウトだという第15ステージ。

なんとしてでも逃げに乗りたい選手たちが果てしないアタック合戦を繰り返し、10名の逃げを確定させるまでに100km以上の道のりと、2時間以上の時間を必要とした。

 

この10名の中にはマリア・チクラミーノをほぼ確定させているフェルナンド・ガヴィリアや、第6ステージで勝利しているルヴァン・ディリエ(BMC)、また何度も逃げに乗っているガスプロムエフゲニー・シャルノフの姿などもあった。

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後半2つある「山」のうちの1つ目、2級ミラゴロ・サンサルヴァトーレの下りに差し掛かる頃、先頭集団はルディ・モラール(FDJ)、フィリップ・ダイグナン(スカイ)、ジャック・ヤンセファンレンスブルグ(ディメンションデータ)の3人に絞られていた。

そこに、追撃を仕掛けるのがキャノンデール・ドラパックのピエール・ローランと、アスタナのルイスレオン・サンチェス。直後の3級セルヴィーノの登りで2人は3人に追い付いた。 

 

2級山岳の下りで、アクシデントが起きた。急カーブで逃げ場を失ったナイロ・キンタナが落車。すぐに後続のチームメートの自転車を借りて発信するが、体のサイズと合わずに何度か自転車を乗り換える羽目に。

総合を争うライバルのこのアクシデントに対して、マリア・ローザを着るトム・デュムランがペースを落とすよう集団に呼びかける。前日に圧倒的な力で勝利を達成した彼に逆らう者はおらず、キンタナは集団に戻ることができた。

 

総合を争うライバルのトラブルには待つ、という、ときに美徳とされるこの「不文律」。

ここ最近は蔑ろにされることも多いとされるこの暗黙の了解を、「新王者」デュムランが実行したこの出来事が、今日のレースで最も印象に残る出来事であった。

 

とはいえ、だからデュムランが道徳的であるとか、そういうことが言いたいわけではない。

デュムランが一度こう動いたことが、今後彼が不測の事態によって遅れざるをえなくなったときに、彼を助けるチャンスを生むことになるかもしれない――その意味で、迅速に迷いなく今回の行動に移れたデュムランは、やはりクレバーだった。

 

 

 

――ちなみにジロ第15ステージが開かれたこの日、北欧ではツアー・オブ・ノルウェーの真っ只中であった。

全5日間にわたって行われた、同国最大規模のステージレースであったが、初日は地元ノルウェーのボアッソンハーゲンが優勝。その後の平坦ステージではフルーネヴェーヘンに勝利を奪われていたものの、最終日はルームポット・ネーデルランゼのピーター・ウェイニングが総合首位に立った状態で3秒差でサイモン・ゲランスとボアッソンハーゲンが並ぶ。最終日のスプリント勝負でどちらかが3位以内に入りより順位が上の選手が勝つ、というような状況だった。

レース途中でフルーネヴェーヘンが落車。最終スプリントはほぼ、ゲランスとボアッソンハーゲンの一騎打ち、という様相だった。そして残り12kmで、路面に残った水を避けようとしたのか、バランスを崩してボアッソンハーゲンが落車。すぐに自転車を交換しようとしたもののうまく合わず、直後に渡されたチームメートの自転車もダメ。もう1人やってきたチームメートの自転車に乗ってようやく再発進、というような状態だった。

 

そんな状態の中、ゲランスを含めたプロトンはボアッソンハーゲンを待ってペースを落とした。彼が地元の英雄だったから、ということはあるだろうが、それにしても、この動きは十分に感動的だった。最終的にスプリントはボアッソンハーゲンが優勝。ゲランスは2位につけ、総合順位もその順番で確定となった。

 

1日の間に、ここ最近では(少なくとも上位のレースでは)あまり見られなかったこの「不文律」を見られたことが少し驚きだった。

 

 

 

ジロのレースに戻ると、キンタナのトラブルによって再びタイム差が開いた逃げ集団だったが、結局はベルガモの市街地に入ったところで捕まえられてしまった。アスタナの総合上位に入っていたタネル・カンゲルトがここで中央分離帯の標識にぶつかり骨折リタイア。アスタナの不運は続く・・・。

 

残り5kmから始まる丸石の敷き詰められた石畳区間。非常にテクニカルなその道を、唯一逃げ残っていたピエール・ローランが疾走する。

正直、昨年からいいところのない彼の勝利はそろそろ見たいところだったが、さすがにまだ4km以上残っている状態でのこれはどうしようもない。

あえなく捕まっていくその瞬間、「社長」譲りの舌ベロベロを見せるローラン。

ぜひまた、3週目のドロミテでチャレンジしてほしい。今日もちゃっかり、3級山岳を先頭通過しているし、まだ諦めてはいないはずだ。

 

石畳区間を抜け、舗装路に入った先頭集団から、まずはマリア・ビアンカボブ・ユンゲルスがアタック。そこに、2年前ロンバルディアの覇者ヴィンツェンツォ・ニーバリドメニコ・ポッツォヴィーヴォが追い上げる。まだイタリア人勝者のいない今大会ジロ。ニーバリとポッツォヴィーヴォに寄せられる沿道からの期待は果てしなく大きいことだろう。

 

しかしニーバリもポッツォヴィーヴォも、その期待に応えることはできなかった。プロトンを引き離せないことを悟ったニーバリも集団に戻り、総合勢だけが居残った小集団はそのままフィニッシュへと向かう。

 

こういった、総合勢だけのスプリントでは、ティボー・ピノがめっぽう強い。・・・と信じていたのだが、ここでまたボブ・ユンゲルスが強烈な加速。

そのまま誰も止めることができず、先頭でゴールを決めた。

 

驚くべきことに、2位にはキンタナが入った。ピノは3位。まあ、3位に入っただけでも、良しとするべきか・・・。

昨日、デュムランから24秒を奪われたキンタナは、この日、なんとか6秒を取り返すことができた。

 

あとは3週目。ドロミテの凶悪な山岳ステージで、どれだけ力を見せつけることができるのか。

休息日明けの悲劇にとらわれぬよう、この日の過ごし方も重要になるだろう。