りんぐすらいど

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ディラン・トゥーンス、新生「激坂ハンター」?

ツール・ド・フランスの興奮冷めやらぬ中、アルデンヌ・クラシックの本場ベルギー・ワロン地方にて開催されている5日間のステージレース「ツール・ド・ワロニー」。

HCクラスに分類されているレースで、過去にはヴァンアヴェルマートやテルプストラなど、どちらかというと北のクラシックで活躍しがちなスプリンター系の選手が総合優勝を果たしている。

(上記2名以外にもボジッチ、ニッツォーロ、メールスマンなど)

 

しかし今年はクイーンステージとされた第3ステージにおいて、全長1km、平均勾配11%・・・おそらく、見た感じでは最大勾配も20%近くに達してそうな、そんな激坂「ウッファリーズ」頂上ゴールとなった。「ユイの壁」に匹敵する登りである。

今年のリエージュ~バストーニュ~リエージュでも通過した、ウッファリーズの激坂。上記の写真を見るだけでも、この異様な傾斜を推し量ることができるはずだ。

 

 

まさに、アルデンヌ色たっぷりのステージとなったこの日、見事を勝利を掴んだ人物が、ディラン・トゥーンスである。

今年のフレッシュ・ワロンヌ、「ユイの壁」にて、バルベルデ、マーティンに次いで3位となった男だ。

 

 

 

ディラン・トゥーンスの経歴

1992年3月1日。フランドル地方の南東部、ワロン地方との境目近くの町ディーストで生まれたトゥーンス。アラフィリップやイェーツ兄弟、ユンゲルスといった若きスターたちと同じ「92年世代」である。

 

18歳のときにジュニア版オンループ・ヘット・ニウスブラットで優勝した彼は、2014年にBMCの育成チームに加入。そしてBMC本体にもトレーニーとして参加することになるが、この年に彼はツール・ド・ラブニールで1勝。さらにツアー・オブ・ユタでも新人賞を獲得するなど才能の片鱗を見せつけていた。

 

2015年にBMCに正式加入した後、2016年には初のグランツールとしてブエルタに参戦。同世代のスターたちと比べ、決して早いとは言えないペースではあるものの、着実にキャリアを積み重ねつつあった。

 

 

そんな彼の名が世に轟くことになったのが、今年のフレッシュ・ワロンヌである。単独逃げを敢行していたボブ・ユンゲルスが登りの途中で捕まえられたあと、ネオプロのダヴィ・ゴデュやバルギルなどの若手が積極的に飛び出す混戦状態に。

そんな中、圧倒的な力を見せつけたのが、今年で4連覇&5勝を記録することになるアレハンドロ・バルベルデ。そして3年ぶり2度目の2位となったのがダニエル・マーティン。

 

ディラン・トゥーンスは、その2人に続く3位。表彰台に立つこととなった。

 

 

そして、このときの激坂対応力がただの偶然ではなかったことを、今回のツール・ド・ワロニー「ウッファリーズ」の勝利で見せつけたトゥーンス。 

彼は第1ステージでも3位となっており、第2ステージを終えた段階でリーダージャージを着用している。現在、総合2位のトッシュ・ヴァンデルサンドとのタイム差は32秒。残る2ステージも、細かなアップダウンはあああるおのお、総合タイムを大きく落とすようなステージでもないため、このままトゥーンスが総合優勝を果たす可能性も十分にある。(変な逃げ切りが決まらなければ・・・)

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そもそも今回の勝利がプロ入り後初の勝利であったトゥーンス。当然ステージレースでの総合優勝も初めてとなる。しかもHCクラス。

今後、BMCにおいて、存在感を発揮するパンチャーとなることは間違いない。とくに、ヴァンアーヴェルマートが対応できないアルデンヌ2戦、すなわちフレッシュ・ワロンヌとリエージュ~バストーニュ~リエージュでは、サミュエル・サンチェスと並んでエース格での出場も可能となるだろう。

リエージュは2016年には17位。まずはTOP10に入ることが目標だ。

 

もちろん、やがてはグランツールでの勝利も期待したい。

もう1人の「トゥーンス」であるエドワードと、どっちが先に達成するか・・・。

 

 

 

「激坂ハンター」という称号(?)がある。かつてはホアキン・ロドリゲスなんかがよくその名で呼ばれていたような気もする。近年ではアレクシー・ヴュイエルモが2015年ツールの2つの「ミュール」で好成績を出したことでそう呼ばれるようにもなったが、今年のフレッシュ・ワロンヌでは結果を出せなかった。

(代わってツールでは山岳でバルデをよく助け、自身も総合13位に入るなど、新たな才能を発揮しつつあるのは喜ばしいことだ)

 

このディラン・トゥーンスが、新たな世代の「激坂ハンター」となれるか。

同世代に強力なアラフィリップもいるので、来年の「ユイ」では、この両者の直接対決を見るのが楽しみである。

 

 

  

フランスの若き才能たち in ツール・ド・ワロニー

ちなみに今回のワロニー第3ステージでは、もう1人、若手の注目選手であったアレクシー・グジャールが終盤に単独逃げを見せていた。一時は1分近いタイム差をつけたグジャールであったが、やはり最後の「ウッファリーズ」で力尽きる。

衝撃のブエルタ勝利を果たした2015年以来、2年ぶりの勝利まであと一歩というところまで迫ったものの、その夢は実現することはなかった。

だが彼はトゥーンスよりさらに1つ下の24歳。注目を浴びたのが早すぎただけで、彼もまた必ず、数年以来に再度浮上してくるだろう。逃げはいつも積極的なので、応援し続けていきたい。

 

 

一方、今年でまだ22歳という驚異的な若さで、このワロニー第1ステージとダンケルク4日間レースとで、今年すでにHCクラス2勝を果たしているのがベンジャミン・トマ。

彼が所属する「フランス陸軍チーム」こと「エキップシクリズム・アルメ・ド・テール」も、コンチネンタルチームでありながら今年すでに驚異の17勝目。昨年3勝しかしていないチームとしては恐ろしいほどのブレイクぶりである。 

相変わらずフランスは若き才能が生まれ続けている。

彼もその1人として、これからもしっかりと注目していきたい。

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