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Astana Pro Team 2018年シーズンチームガイド

読み:アスタナ・プロチーム

国籍:カザフスタン

略号:AST

創設年:2007年

使用機材:ARGON18(カナダ)

2017年UCIチームランキング:15位

(以下記事における年齢はすべて2018年における数え年表記となります) 

 

 

 

2018年ロースター

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アルの移籍によって総合争いの可能性を一気に減らしたと噂されるアスタナ。ただ元々アルも安定感のある選手ではなかったため、そこまで大きな影響はないのではないか、というのが個人的な感想。

元より深刻だった勝利数不足を、コルトニールスンやフライレ、ヴィレッラの加入で補えるかどうか。ルツェンコやゼイツなど、カザフスタン人の地味な活躍も楽しみなチームであり、今後も同じアジアの自転車選手として、若手も含めて結果を出していってほしい。

 

 

 

注目選手

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳)

脚質:オールラウンダー

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4年前にはツール・ド・ラブニールを制し、キンタナの再来と呼ばれた。アスタナ入りした2015年にはブエルタ・ア・ブルゴス2勝と新人賞、2016年にはツール・ド・スイス総合優勝と、着実に実績を積み重ねていく。2017年シーズンは冒頭から繰り返し怪我に悩まされるも、ブエルタ・ア・エスパーニャで完全復活し、区間2勝と総合8位。23歳という若さでのこの実績は、キンタナには及ばないものの、十分な成績であった。

それでも、チームの総合エースを担うにはまだ早すぎる、という見方もあるだろう。しかし、アルが突如としてチームを去ってしまった以上、フールサンと並んで総合エースの責任を背負わざるを得なくなった。ツールはそれでもさすがにフールサンがエースとして出場するだろうが、ジロとブエルタ、この2つのグランツールを、来年はエースとして走ることが求められる可能性はある。

とはいえ、さすがにまだ結果までは求めない。怪我や病気を避けることを最優先にして、エースという立場で1年のうち2つのグランツールを完走すること、それだけをまずは達成してほしい。結果を出すのは、もう2~3年後で十分だから。

なお、キンタナと違って、意外とTTが速いところもある。2016年のツール・ド・スイスでは、カンチェラーラよりも速いタイムを記録して、区間2位となった。

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ブエルタは2016年にも出場していたが、初日の落車から早期リタイアとなってしまい、今回がグランツール初出場といっても過言ではない程であった。それでいて区間2位。しかも、難易度の高い山岳コースで。まさに才能が爆発したブエルタであった。

 

 

ヤコブ・フールサン(デンマーク、33歳)

脚質:オールラウンダー

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かつてはツール総合7位などの実績を残しつつ、基本的にはエースのアシストとして長年やってきた。

今年はアルがジロに出て自分はツールをエースで走れるという予定だったが、まさかのアル負傷によるジロ不出場。GMから「大丈夫、ツールはあくまでもフールサンがエースだから」と言われ、ドーフィネでも区間1勝と総合優勝を成し遂げて安心したのも束の間、アルがイタリアチャンピオンジャージを着たことで再び不安が増大。

ツール本戦では最初の山場ラ・プランシュ・デル・フィーユで完全に置いていかれ、アルが優勝。自身も落車し、第13ステージの途中でバイクを降りる羽目に。

散々ではあったものの、来年はアルがいない。ロペスという新エースの存在はあるものの、彼はまだ若く、ツールをエースで参加するという可能性は低いと見ることもできる。チームとしても、しっかりと残ってくれたフールサンのためを思う気持ちもあるだろうし、来年こそはツールを唯一のエースとして走れるチャンスがありそうだ。

デンマークITTチャンピオンの経験もあり独走力も高い。また、2014年ツール・ド・フランスでは、石畳ステージにおけるエースのニバリの親衛隊として、予想以上の働きを見せてもいる。来年のツールのステージは、彼にとっては決して、苦手とは言えないコースレイアウトであるように思う。

リオ・オリンピック銀メダリストでもあり、似たレイアウトになりそうな2018年世界選手権(オーストリアインスブルック)にも期待がかかる。

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クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ総合優勝という、キャリア最大とも言うべき実績を残した2017年シーズン。エースの少ない2018年アスタナで、与えられた最大のチャンスを生かすことができるかどうか。

 

 

ダヴィデ・ヴィレッラ(イタリア、27歳)

脚質:パンチャー

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2016年ツアー・オブ・ジャパン覇者にして、2017年ブエルタ・ア・エスパーニャ山岳賞受賞者。ちなみにオマール・フライレの加入と合わせ、来年のアスタナは、ここ3年のブエルタ山岳賞受賞者を抱えることとなる。

実力派クライマー向けのジロ山岳賞、総合力が求められるツール山岳賞と比べ、ブエルタの山岳賞はどちらかというと、タイミングとチャンスをモノにできるアタッカー向き、という印象。実際、このヴィレッラも、ステージレースの中の厳しい山岳ステージで勝利を得るタイプというよりは、山岳系ワンデークラシックに強いタイプである。秋のイタリアワンデークラシックでは毎年好成績を収めている。

フールサンと並んでアスタナのアルデンヌ・クラシック班のエース候補としての活躍が期待される。

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ある意味で、キャノンデールのチーム存続の危機を救った立役者の1人だったのかもしれない。危機に陥ったチームが当然活躍し始めるというのは昨年のIAMでもあったが、今年のブエルタキャノンデールは本当に強かった。

 

 

 

 

その他注目選手

マウヌス・コルトニールスン(デンマーク、25歳)

脚質:スプリンター

スプリンター不足=勝利数不足にあえぐアスタナにとって、救世主足りうるのがこのコルトニールスンである。とはいえ、2017年シーズンは2勝しかできておらず、満足いくシーズンとは言えなかった。昨年2勝したブエルタでも、今年はTOP10に入れたのが最終日マドリードのみ・・・。ただ、山岳逃げなども積極的だったため、モビスターのホセホアキンロハスのような、前待ちなどにも使える万能アシストとしての才能もあるかもしれない。

まだまだツールでトップスプリンターたちと張り合うには力不足。まずはジロ、ブエルタあたりで勝利数を稼いでもらいたいところ。

 

ヤン・ヒルト(チェコ、27歳)

脚質:クライマー

今年のジロで、ピノやニバリやデュムランといった総合最上位の選手たちと互角に渡り合うだけの走りを見せつけた、プロコンチネンタルチームからの刺客。その強さは、かつてのツールのレオポルド・ケーニッヒを彷彿とさせる。しかも同じチェコ人だ。

アスタナにおける彼の最大の役割は、ロペスやフールサンといった絶対エースの信頼できるアシスト役だ。とくにロペスがジロ・ブエルタダブルヘッダーの可能性があることを考えると、ツールにおけるフールサンの最大の右腕となりうる。もちろん、フールサンは安定感に不安があるので、いざというときのエース候補にもなるだろう。

せっかくワールドツアーに昇格できたのだから、そこで終わってほしくない。ここからの活躍が非常に楽しみな選手だ。

 

タネル・カンゲルト(エストニア、31歳)

脚質:オールラウンダー

エース不在の昨年のジロで、途中までは総合7位と良い位置につけていたが、コース中にあったポールに激突したことで大怪我を負い、復帰できないままシーズンを終えてしまった。

来年は復帰最優先で、パフォーマンスは十分に発揮できないかもしれないが、エース級の選手不足に悩まされるアスタナにとっては、ヒルトと並んで重要なアシスト役としての活躍が期待されることだろう。もちろん短いステージレースでのエースとしても、勝利数を稼いでくれる貴重な存在だ。

契約が2018年まで、ということもあるので、早期復帰が望まれる。

  

リカルド・ミナーリ(イタリア、23歳)

脚質:スプリンター

アスタナの期待の若手枠はこの、新進気鋭のイタリアンスプリンター、ミナーリ。今年がプロデビュー初年度となったが、その最初のレースとなったドバイ・ツアーでいきなりキッテル、ヴィヴィアーニに続く3位。カヴェンディッシュすら退けた。

ほかにもツール・ド・ポローニュではサガン、ユワン、ファンポッペルに続く4位、ツアー・オブ・ターキーでも3位を獲るなど、トップスプリンターたちに負けない走りを見せ続けている。

結局勝利は1度もなかったので、来年の目標はまずは勝利。できればワールドツアーで。ジロ・ディタリアでの活躍にも注目したい。

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2018年ツール 出場メンバー案

1.ヤコブ・フールサン(エース)

2.ダリオ・カタルド(TTT要員&平坦山岳アシスト)

3.オマール・フライレ(山岳アシスト兼アタッカー)

4.ドミトリー・グルズデフ(TTT要員&平坦アシスト)

5.ヤン・ヒルト(山岳アシスト)

6.タネル・カンゲルト(山岳アシスト)

7.アンドレイ・ゼイツ(平坦アシスト)

8.アレクセイ・ルツェンコ(山岳アシスト兼アタッカー)

 

フールサンを総合エースに仕立、ヒルトとカンゲルトが脇を固める、というのが基本パターン。ただし、正直なところ総合表彰台を狙えるかというと微妙なので、ガチガチの山岳アシスト守備体制というよりは、アタッカーたちによる勝利の獲得を目指すパターンも十分考えられる。そんなとき、フライレやカンゲルトやルツェンコがチャンスハンターになるだろう。ヴィレッラを同じような役回りで入れる可能性もあるか。

ツールで戦えるほどのスプリンターはアスタナには不在なので、完全に捨てるパターンとして上記を考えた。多少色気を出すのであれば、山岳前待ち作戦でも使えそうなコルトニールスンを出場させるか。

 

 

総評

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とにかく課題は勝利数。コルトニールスンを始めとする新加入選手たちはその点での結果が強く求められることだろう。

そしてこの1年でどれだけ、ミゲルアンヘル・ロペスが成長できるのか。各グランツールでの出場選手から、アスタナのチームとしての思惑を読み取っていくのも面白いかもしれない。

 

 

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