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2018年シーズン 1月主要レース振り返り

いよいよ開幕した2018年シーズン。

その最初の月となる1月に開催された各種レースのうち注目のレースをピックアップして簡単にレビューしていく。

※記事中の年齢表記はすべて、2018年段階での数え年表記となります。

 

 

 

ツアー・ダウンアンダー(2.WT)

↓詳細は下記の記事を参照のこと↓

suzutamaki.hatenablog.com

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昨年・一昨年との一番の違いは、「スプリンター戦国時代」といった様相を呈したこと

カレブ・ユワンの調子が悪かったというのもあるが、それでも4年ぶりの出場となったグライペルの2勝を皮切りに、昨年シーズン前半は悔しい思いをし続けたヴィヴィアーニのコンディションの高さ、昨年は勝てなかったサガンの強い勝ち方、勝てはしなかったがバウハウスやコンソーニなどの若手の台頭、そしてボーナスタイムを稼ぎ続け、ウィランガ・ヒルでも喰らいついた、ダリル・インピーの劇的な総合優勝。

Jsportsによるライブ中継が実現したことと合わせて、例年以上に見ごたえのある1週間となった。

 

新たな試みとして、1級ノートンサミットの導入。

ダウンアンダーにしては長い距離を登らせるこの山岳の効果は、今年こそスプリント争いという結果には終わったものの、来年以降再登場したときにはまた別の結末を演出しそうな可能性を多く含んだコースだと感じている。

来年もまた、新たな挑戦や新たな注目選手が多く生まれることを期待している。

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2年前のダウンアンダーではサイモン・ジェランの総合優勝をアシストし続けた男が、同じ走りを見せて今度は自ら栄冠を手に入れた。ユワンの勝利もしっかりとアシストしたうえで。 

 

 

ブエルタ・ア・サンフアン(2.1)

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昨年も2勝しているフェルナンド・ガヴィリアが、開幕ステージから早速勝利。今年もやはりガヴィリアの1強となるのか・・・と思いきや、そのガヴィリアが第2ステージで落車。そして直ちに病院に運ばれることとなった。

スプリントゴールが予想されていた第2、第6ステージも逃げ切りが決まるなど、全体的に混沌とした展開となった今年のサンフアン。そんな中、昨年2勝したリチェセ(リケーゼ)を抑えて、ジャコモ・ニッツォーロがおよそ2年ぶりとなる勝利を飾った。

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終盤、常にトレック・トレインの先頭を牽引し続け、最後までニッツォーロを守り続けたマレン(ミューレン)と抱き合う。

 

2016年ジロ最終ステージでは斜行降格の憂き目に遭い、無勝利ポイント賞の表彰台では無表情で賞を受け取る姿を披露した。翌年のジロでも不調から勝利なくしてリタイア。病気と怪我に苦しんだこの2年を清算するかのような勝利。オーストラリアのヴィヴィアーニと共に、「2位」続きの彼らイタリアンスプリンターが反撃の狼煙を上げつつある。

そして総合優勝を果たしたのは、アルゼンチンのコンチネンタルチーム所属のゴンサロ・ナハル。

体調不良で不出場となったニバリなど、ワールドツアーチームのトップクライマーたちはまだまだ本調子ではない様子を見せてとくに目立つことはなかった。(ラファル・マイカが第2ステージで好走を見せたのと、個人TTで3位と彼にしてはなかなかの走りだったことくらいか)

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総合優勝を果たしたゴンサロ・ナハルは、今回のサンフアンがプロ初勝利となる。現アルゼンチンロードチャンピオンであり、まだ今年で25歳と若いので、今後が楽しみな選手である。 

 

 

チャレンジ・ブエルタ・ア・マヨルカ(1.1×4)

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多くのトップチームが冬季合宿の舞台として選ぶマヨルカ島で、4つのワンデーレースを連日開催するという独特な開催形式をもつ、ヨーロッパツアー伝統の開幕レース(たち)。「チャレンジ・マヨルカ」とも呼ばれる。

今年は第1日目から順に「トロフェオ・ポレラス」「トロフェオ・セッラ・デ・トラムンターナ」「トロフェオ・リュセタ」「トロフェオ・パルマ」の4レースである。初日の最終日はスプリント、2日目と3日目は逃げ切りが見込まれる山岳レースで、スプリンターと山岳逃げスペシャリストが共に活躍の機会が与えられるという、例年通りのプロフィールとなった。

昨年はロット・スーダル祭りだったが、今年はトレック・セガフレード祭り。その中心となったのが、先のニッツォーロ同様、苦しい2年間を過ごしてきていたジョン・デゲンコルブだった。

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ボーラ・ハンスグローエのエリック・バシュカを振り切って、今大会2勝目を飾ったデゲンコルブ。第3ステージのスクインシュ、サンフアンのマレンとニッツォーロに続き、トレック・セガフレードが今シーズン早くも5勝目を記録した。

 

また、スクインシュも、昨年カリフォルニアでの悔しいリタイアを晴らすかのような勝利を見せた。新チームでの活躍に期待したい。

ウェレンスは昨年に続き今年も勝利。昨年はうまくいかなかったアルデンヌ・クラシックでの勝利を、今年こそ果たすことができるか。

また、このレースでシーズン入りを果たしたアレハンドロ・バルベルデも、第2ステージで3位、第3ステージで4位など悪くない走りを見せる。そして、2月のバレンシアナで・・・。

 

 

カデルエヴァンス・グレートオーシャンロードレース(1.WT)

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今年で4回目の開催となる、昨年からワールドツアークラスのレースとなったワンデーレース。ダウンアンダーは南オーストラリア州アデレードを舞台としているが、この通称「カデルレース」はアデレードの南東、ビクトリア州ジーロングを舞台とする。2010年世界選手権のコースを利用してもいて、ジャパンカップと似たような経緯を持つと言えるだろう。

 

このレースを初めてライブで見たのは昨年、Jsportsオンデマンドでの英語実況によるものだった。もしかしたらライブでもなかったかもしれない。昨年は集団スプリントでの決着となり、そんなに面白いレースという印象はなかった。

しかし今年はDAZNで日本語実況・解説が加わり、更にラスト10km地点にある最大勾配20%のチャランブラ・クレセントでのアタックが劇的な展開を呼び出し、最後の最後までハラハラが止まらない、非常に見ごたえのあるレースとなった。

この、基本はスプリントになりつつも、終盤の登りでのアタックにより展開に変化がもたらされるという構成は、ミラノ~サンレモやアムステルゴールドレースに近いところがあるかもしれない。誰が勝つかわからない、という点で、実によく作られたコース設計なのかもしれない。

来年も楽しみにしたい。

 

なお、今年の見所としては、マッカーシーの勝利を導いたダニエル・オスの巧みな走り、そして最後の最後で追走集団から飛び出してきて2位に喰い込んだエリア・ヴィヴィアーニの圧倒的な強さである。

さらに、それ以外の選手たちの見事な走りっぷり、絡み合う戦略に関しては、「サイバナ」の以下の記事を参照するとよい。

クラシックを彷彿とさせる、カデルレースで見えた集団駆け引きの妙とは? - サイバナ

 

オスだけでなく、ケニャック(ケノー)、カペッキ、デフェナインスなど、アシストたちの見事な走りの妙について丁寧に解説されている。

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国内選手権のときから好調っぷりを見せていたマッカーシーサガンたちのアシストとしての活躍が中心となる彼ではあるが、今年は彼自身の勝利ももっと狙っていけるかもしれない。

 

 

グランプリ・シクリスト・ラ・マルセイユ(1.1)

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チャレンジ・マヨルカと並んでヨーロッパの自転車ロードレースシーズンの開幕を告げるフランスのワンデーレース。ティボー・ピノやトニー・ギャロパンなども上位に入ることが多い、アップダウンの激しいアルデンヌ風味のレースである。

今回の優勝者は昨年のトレヴァッリ・ヴァッレジーネで優勝したアレクサンドル・ジェニエ。ブエルタでもペイラギュード山頂ゴールなど2勝している山岳逃げ職人であり、昨年のヴァッレジーネに引き続き、クライマー同士のスプリントでの強さを見せつけた。こういう、総合では活躍できないけれど山岳ステージで地味に勝利を重ねていくタイプの選手は大好物である。そしてそういう選手の多いAG2Rは大好きである。

 

ただ、個人的に注目したのは2位のエイキング。彼は、昨年も、ディラン・トゥーンスが勝利するようなパンチャー向きレースで上位に喰い込むことが多かった。彼もまた、近い将来大成するに違いない・・・と考えていたのだが、今年はまさかのプロコンチネンタルチーム移籍。

とはいえ、ワールドツアークラスのレースで埋もれてしまうよりは、ワンティという、プロコンチネンタルチームでもトップクラスに位置するチームのエース候補として走る方が、本人のためになるような気はしている。

ワンティであればアルデンヌ・クラシックにも出場する機会は多そうだし、今年の活躍は変わらず期待している! がんばれエイキング!

 

 

 

 

今月の注目選手

1/15~1/21の日程で開催された、中央アフリカガボンのステージレース、ラ・トロピカル・アミッサ・ボンゴ(2.1)。

ワールドツアーチームは出場していないものの、毎年ディレクトエネルジーの参加などがある。

ツアー・ダウンアンダー南アフリカ人のダリル・インピーが総合優勝を、同じ南アフリカ人のニコラス・ドラミニが山岳賞を決めたその日に、このアミッサ・ボンゴでも、ルワンダ人のジョセフ・アレルヤが総合優勝を決めた。

ルワンダ人としては初となる、UCI・1クラスレースの総合優勝であった。

ルワンダ人はもちろん、この快挙にエリトリアなど、他のアフリカの自転車関係者からも祝辞が集められた。

 

ジョセフ・アレルヤは1月1日生まれでまだ22歳の若手。ディメンションデータの下部育成チームである「ディメンションデータ forクベカ」に昨年加入。

昨年はツール・ド・ルワンダで総合優勝したほか、U23版ジロでも1勝しており、着実に力をつけている。今回のアミッサ・ボンゴ総合優勝はその流れにのって注目を集めており、さらには1/31から開催されている「ツール・ド・レスポワール」というアフリカで開催されているU23レースでも注目選手として出場。

この大会で結果を残せればツール・ド・ラヴニールへの出場権も手に入れることができる。ラヴニールでさらなる結果を出し、近い将来ワールドツアークラスで活躍する彼の姿をぜひ、見てみたいものだ。