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アムステルゴールドレース2018 プレビュー

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オランダ・リンブルフ州で開催される「アルデンヌ・クラシック」3連戦の1戦目。

激しいアップダウンとコーナーの数の多さが特徴で、「千のカーブ」と形容されることも。

全長1.2km、最大勾配12%の「カウベルフ」が終盤に登場することも特徴ではあったが、昨年はゴール直前にこの名物カウベルフを登らないレイアウトに変更された。

この後に続くフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュと比べると登りの激しさは抑えられており、クライマーよりはパンチャー向きのレースと言える。

1966年初開催。今年で53回目の開催となる。

 

今回はこの「アムステルゴールドレース」を徹底プレビュウしていく。

 

 

 

過去のレースを振り返る

過去3年間のTOP10を振り返ってみよう。

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2015年

カウベルフの頂上から1.8km先にゴールが設定された。

カウベルフの登りで最初に アタックしたのは、前哨戦プラバンツ・ペイユを制しているベン・ヘルマンス。

失速した彼に続いて攻撃を仕掛けたのが昨年覇者フィリップ・ジルベールであったが、これにマイケル・マシューズが喰らいついてラストの平坦を2人で挑んだ。

しかし結局、これは集団に吸収される。最後は18名でのスプリント勝負となり、アルカンシェルジャージを着るミハウ・クフャトコフスキが勝利を掴んだ。

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2016年

カウベルフの頂上からゴールまで2kmに。

残り8kmで飛び出したティム・ウェレンスが独走を開始するが、カウベルフの登りで失速。

ここで名パンチャー、エンリコ・ガスパロットが飛び出し、ミケル・ヴァルグレンが喰らいついた。

ヴァルグレンは若さゆえか前を牽きすぎてしまい、落ち着いていたベテランのガスパロットが、最高のタイミングで飛び出して4年ぶり2度目の勝利を果たした。

3週間前にレース中の事故で亡くなったチームメートに捧げる勝利。ガスパロットは両手を天に掲げた。

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2017年

フィニッシュ直前からカウベルフが取り除かれる。

これにより、いつもの「ラストだけ全力」という展開がなくなり、勝負が動いたのはラスト40km。

ティシュ・ベノートやセルヒオルイス・エナオなどの強力なメンバーが含まれた8名の逃げ。ここに、フィリップ・ジルベールも含まれていた。グレッグ・ファンアフェルマートやアレハンドロ・バルベルデは後方に取り残される。

さらにラスト30kmで今度はミハウ・クフャトコフスキがブリッジを仕掛けてジルベールたちに合流。ファンアフェルマートたちも追走集団を形成するも、結局追い付くことはなかった。

そしてラスト6km手前の「ベメレルベルフ」(全長800m、平均勾配4.7%)でクフャトコフスキとジルベールが抜け出す。

最後はジルベールが先行からの逃げ切り勝利を決めて、自身4度目となるアムステル勝利を手に入れた。

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レースの象徴とも言うべきカウベルフをあえて終盤から取り除くという改革を決断した昨年のアムステル。

結果として、残り30km~40kmから勝負が動き、ハラハラの追走劇が続くという、露インドやルーベに近い展開を生み出すことに成功した。

そもそもアムステルというのは、同じアルデンヌ・クラシックのフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュと同様に、「最後だけ盛り上がる」感の強いレースであったのは確か。

それをこうして変革したことにより、上記2つのレースとはまた違った個性を出すことに成功したと言えるのではないだろうか。

 

今年も昨年と同じレイアウトで開催されるという。

果たして今年は同じように盛り上がる展開を生み出すことができるのだろうか。

 

 

今年のコースのみどころ

アムステルゴールドレースは「北のクラシックとアルデンヌ・クラシックの合いの子」であると言われる。直後のフレッシュ・ワロンヌリエージュ~バストーニュ~リエージュなどの「本格的な」アルデンヌ・クラシックと比べると、スプリンターやパンチャー、あるいは北のクラシックで活躍したスペシャリストたちにもチャンスがあるコースレイアウトだからだ。

とは言え、やはり登りは厳しい。その登りの数は35を数える。ロンド・ファン・フラーンデレンの急坂が18個であったことを考えると、その2倍近い数がプロトンを待ち受けているという点で、やはりアムステルは「登り」のレースなのだ。

 

同じレイアウトだった昨年を参考にすると、注目すべきはラスト40kmを過ぎた地点に現れる「クルイスべルフ」。ここでジルベールを含む強力な8名の逃げが形成された。

さらにラスト30kmを過ぎたところにある「クーテンベルフ」は、最大勾配22%という、今大会最難関の急坂となる。

そして残り20kmを過ぎて、3度目の「カウベルフ」が出現する。

このカウベルフの頂上を過ぎてから3kmで最終周回のベルが鳴り、ラスト16kmの勝負に。

最後は「フールヘンメルベルフ」「ベメレルベルフ」という2つの登りをこなしてゴールに至る。

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アムステルゴールドレース、35の登り。

昨年、勝敗を決めたクルイスベルフでの動きを見るに、まずは集団から抜け出すためのクライマー並の登坂力は必要となるだろう。

そのうえで、ゴールまでの長い距離を逃げ切るだけの独走力も必要。

そういった要素を踏まえ、以下、優勝候補を考えていく。

 

 

今年の優勝候補たち

※過去優勝者を除く

 

1.ジュリアン・アラフィリップ

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コロンビア・オロ・イ・パおよびイツリア・バスクカントリーでの合計3勝から、例年以上に一流クライマーたちに匹敵する登坂力を備えつつあることがわかる。

問題は1週間以上もたせるステージレーサーとしての安定感が不足していることだが、アルデンヌ・クラシックに向けては十分期待のできる仕上がりだ。

本命は、過去2度の2位を経験しているフレッシュ・ワロンヌかもしれないが、今年の走りを見るに、実はアムステルこそが最も可能性のあるレースのようにも感じる。

チームも絶好調で、逃げて良しなユンゲルスやテルプストラ、発射台としても有能なリチェセ(リケーゼ)など隙が無い。

 

 

2.アレハンドロ・バルベルデ

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フレッシュ・ワロンヌを5回、リエージュ~バストーニュ~リエージュを4回制しているバルベルデだが、実はアムステルを勝ったことは一度もない。

2位は2回経験している。2013年はクロイツィゲルに逃げられ、集団内では先頭でゴールした。2015年は集団スプリントでクフャトコフスキに敗れた。

クライマー並の登坂力と爆発力、そして独走力にスプリント力と、アムステルを勝つために必要な要素をたっぷりと詰め込んだ、勝てない方が不思議な選手である。

今年はストラーデビアンケとドワースドール・フラーンデレンでも良い走りを見せており、「北のクラシックとアルデンヌ・クラシックの合いの子」たるアムステルを制する準備は万端といったところだ。

 

 

3.ティム・ウェレンス

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「ベルギーの」リンブルフ州出身。

昨年は「逃げ屋としての」彼に注目し、勝利を期待していたが、今年はアンダルシア総合優勝、パリ~ニース総合5位という「クライマーとしての」彼に期待する。

独走力も十分に高く、唯一難があるとすれば、スプリント力の欠如である。ラストはできれば上記アラフィリップやバルベルデを振り落とした小集団で争いたいところ。

となれば、中盤から終盤にかけての積極的な動きが重要となる。そしてそのためには、ティシュ・ベノートなど優勝候補たりうるチームメートたちの動きもまた、重要になる。

「前哨戦」ブラバンツ・ペイユで見事逃げ切り優勝。ベノートも集団内で好位置につけての3位。これは本当に期待ができるぞ!

 

 

4.ペテル・サガン

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激坂対応力と独走力、フランドルやルーベのような展開に近い――となれば、この人物を忘れてはならない。

実際、彼自身とチームも、昨年のアムステルを見てそのことに気づいたのかもしれない。今年、サガンは実は5年ぶりのアムステル出場を目指す。

なお、2012年には3位に入っており、決して相性が悪いレースではない。そりゃ、マシューズとかが得意なレースなんだし、相性が悪いわけがない。

問題は、ルーベを勝ったことで再び「警戒」されうるということ。

それでも、5本の指に入るような優勝候補とはみなされないだろうし、比較的自由に走る余地は十分にあるだろう。

ということで、残り40km~30kmでの彼の動きには注目だ。

 

 

5.トニー・ギャロパン

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ステージレーサーとは言い難いくらいの微妙な登坂力に関してはアラフィリップに近いところがある。また、今年のエトワール・ドゥ・ベセージュの総合優勝は独走力で勝ち取ったようなものだ。

2014年ツール・ド・フランスでも終盤からの逃げ切り勝利を経験している。そんなことを考えると、意外と今回のアムステルとは相性が良さそう。

優勝、とまではいかなくとも、表彰台くらいは狙えるのではないか。

 

 

番外編.バーレーンメリダ

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ニバリ、ヨン、ゴルカ、ガスパロット、コルブレッリ、ボーレ、ペリゾッティ・・・おそらく、今大会もっとも「ガチ」なメンバーを揃えてきたチームと言えそうだ。

7人中5人が優勝候補。誰が勝っても、どんな勝ち方をしても、おかしくはない。

その中でもやはり、今年はニバリの勢いに期待したいところ。

アムステル出場は3年ぶりで、過去のリザルトを見ても決して良いとは言い切れない。それでも、サンレモを制してしまった彼にとってみれば、不可能なことではまったくない。各種メディアの予想でもきっちり上位に来ている人物だ。

あとはまあ、優勝候補ばかりが並んでいるゆえのチームワークの難が気になるところ。意外と連携が取れていて信頼関係も厚そうなチームなので、そこは大丈夫だとは思うのだけれど・・・。