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ジロ・デ・イタリア2018 コースプレビュー 第3週

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急勾配・未舗装路・2000mを超える標高に低気温。あらゆる障害が優勝候補たちを蝕む。第19ステージ、「チマ・コッピ」フィネストーレ峠が今大会最大の山場となる。

 

 

いよいよ、 第101回ジロ・デ・イタリアも最終週を迎える。

ここまで来たら、文句なしの力と力のぶつかり合いである。終盤の第18~20ステージはアルプスの山頂フィニッシュ3連戦。ただの登りの厳しさだけでなく、雪の残る低温の地、未舗装路など、選手たちを苦しめる要素に満ち溢れている。

まさに、最も厳しいグランツールと呼ばれる所以である。

 

これらの困難を乗り越え、最終日ローマのフォロ・ロマーノにて、栄光のマリア・ローザを着用できるのは果たして誰か。

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第16ステージ トレント~ロヴェレート 34.2km(個人TT)

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今大会の鍵を握る中距離個人TT

フルームもデュムランも、普段のレースではライバルに圧倒的な差をつけるチャンスとなるこの個人TTだが、今回はその最大のライバルが同じくらいにTTが強いため、その差をつけることができない。だからこそ、絶対に失敗のできない一日である。

なお、個人TTといえば、とくにこの日のように真っ平なレイアウトの場合は、街中で行われることが多い。その方が観客たちも選手のことをよく見られるからだ。

だが、この日は珍しく、トレントの山間部、レーノ川に沿ったラガリーナ谷にて繰り広げられる。

スタートとゴールとが、そのまま30km離れているという事態が何を意味するのか。

たとえば、スカイが得意としている「チームカーに乗って実際に走っているチームメートの姿を見ながら戦略を組み立てる」という手法が、もしかしたら難しくなるかもしれない。

 

晴れたらものすごく美しい風景をゆっくりと見ることのできそうなステージでもある。

ロヴェレート城、トレント・ロヴェレート現代美術館などの、各種建造物の空撮も楽しみだ。

 

 

 

第17ステージ リーヴァ・デル・ガルダ~イゼーオ 155km(中級山岳)

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アルプスの美しい風景の1つは、山間部に点在する大き目な湖たちである。

このステージは、まさにそんな湖の1つである「ガルダ湖」から「イゼーオ湖」に至る、美しきステージとなる。

 

総合優勝を狙うエースを抱えるチームにとっては、この日は、美しい風景の中でのゆったりとしたサイクリングに興じたいところだろう。

何しろ翌日からは、激動のアルプス山頂フィニッシュ3連戦・・・いかにスプリンターたちにとって残り数少ないチャンスとはいえ、この日は最初の登りで形成された逃げ集団がそのまま大きなタイム差をつけて逃げ切ってしまいそうな気がする。

 

 

 

 

第18ステージ アッピアテグラッソ~プラート・ネヴォソ 196km(山岳)

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ミラノ近郊の街アッピアテグラッソを出発してポー平原を南西に進み、イタリア-フランス国境にほど近いスキーリゾート、プラート・ネヴォソに至る。

アルプス3連戦初日にして、まずは軽い足試しといったステージだ。

 

プラート・ネヴォソの登りは登坂距離13.9km、平均勾配6.9%、最大勾配10%。

決して楽ではないが、ジロの厳しい山岳たちのことを思えば、そこまででもない、といった印象。

急激に厳しくなる区間があるわけでもなく、全体的に6~8%に勾配がだらだらと続いていく。

過去にはジロで2回、直近では2008年にツール・ド・フランスで使われており、そのときはサイモン・ゲランスが勝利している。生粋のクライマーでも勝利を狙える山、というわけだ。

よって、この日はまだ、総合争いにおける大きな動きは起きない可能性が高い。

マリア・ローザを擁するチームが、エースをしっかりと護りきるトレインが作れてさえいれば。

 

 

 

第19ステージ ヴェナーリア・レアーレ~バルドネッキア 184km(山岳)

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トリノ郊外、美しきサヴォイア王家の宮殿群のある街ヴェナーリア・レアーレを出発したプロトンは、イタリア最西端の町、バルドネッキアへ。

人の手が作り出した最高の美と、アルプスの山々が奏でる自然の美とを共に楽しめる至高のステージであり・・・同時に、今大会最難関(クイーン)ステージである。

 

目玉となるのは当然、残り92kmから登り始めるフィネストーレ峠。

登坂距離18.5kmの間、延々と9%以上の勾配が続くというその登りの厳しさもさることながら、その道程の後半が全て、石の浮いた未舗装路であるというのがまた恐ろしい。

加えて頂上の標高が2178mで文句なしのチマ・コッピ(最高標高地点)。

道の脇には当たり前のように雪が残り、場合によっては雪の壁ができている事態となるだろう。

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延々と続く一定の急勾配。

ハンドルを取られそうになる未舗装路。

そして、一気に標高を駆け上がったことによる気圧差・気温差で選手たちはダメージを負い続け、視聴者側が想像する以上に苦しい状況に選手たちは陥ることになるだろう。

まさに「ジロ」らしい難関峠である。

 

 

だが、このステージにおけるフィネストーレ峠は、あくまでも通過点に過ぎない。

ここが一番厳しい登りであるのは間違いないだろうが、ここで足を削られ続けた選手たちは、このステージの最後に、もう1つの凶悪な登りを経験することとなる。

 

バルドネッキアのモンテ・ジェッフェラウ。

登坂距離は7.25kmとそこまででもないが、登り口に最大14%の急勾配、そしてその後も9%~10%の厳しい勾配が続いていく。

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これまでどんなに好調な走りを見せてきた選手であっても、この日だけで一気に総合タイムを失ってしまう危険性があるステージだ。

とくに、フィネストーレ峠で遅れてしまった場合は、挽回の目途をほぼ失うことになりかねない。

 

今大会のクイーンステージにして、最も「何が起こるかわからない」ステージである。

 

 

 

第20ステージ スーザ~チェルヴィニア 214km(山岳)

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3週間にわたる長く厳しいレースのクライマックスは、北西イタリアのアルプス山中で開催される。

激動のフィネストーレ決戦と比較するとやや穏やかに感じてしまかもしれないが、この日も十分過ぎるほどに厳しい。

残り85kmから始まる1級山岳3連続登坂。その最終章は、チェルヴィーノ、ドイツ語名マッターホルンでも知られる、スイス-イタリア国境の名峰である。

そんな厳しい山岳区間を含んだ最終ステージが、214kmという長距離であることもまた、ジロのジロらしいところである。ここをクイーンステージと見る向きもあるだろう。

 

この日は比較的、集団も大規模な逃げを容認することになりそうだ。

マリア・ローザを擁するチームはひたすら、エースの無事を守り続ける走りを。

そして、それを奪い取らんとする挑戦者たちは、逃げ集団に数名の仲間を載せて、そして残り85kmからの「ジェットコースター」に全てを賭けるはずだ。

 

正真正銘の最終決戦が、始まる。

 

 

 

第21ステージ ローマ 115km(平坦)

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エルサレムから始まった3週間の旅路は、ここ「永遠の都」ローマにて終わりを迎える。

蛇行するティベリス河畔の7つの丘を巡る11.5kmの周回コースを10周。

最後は集団スプリントにて、第101回ジロ・ディタリアの最後の勝者と、そして総合優勝者が決定する。 

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スタート/ゴール地点は古代ローマの中心地「フォロ・ロマーノ」の前。

そこから『ローマの休日』で有名なコロンナ宮殿(美術館)の前を通り、トリトーネの泉があるバルベルリーニ広場、メディチ邸、そして北上してポポロ広場のオベリスクの周りを(まるでシャンゼリゼ凱旋門のように!)ぐるっと回って進路を南にとる。

直線が続いてスタート地点の近くにあるヴェネツィア広場とフォロ・ロマーノを再び横目にしつつ、「真実の口」「カラカラ浴場」などを経て一行はついにコロッセウムの横を通過する。

 

古代ローマの遺産、近世ローマの貴族たちの遺したもの、そして現代ローマ市民の憩いの場、その全て、歴史と生活の全てを巡る、情緒たっぷりの11.5kmである。

 

最終日スプリントステージは2年ぶり。

2年前はポイント賞ジャージを着るジャコモ・ニッツォーロがその年のジロの初勝利を遂げた・・・と思いきや、斜行判定を受けて降格し、代わってステージ2着だったニキアス・アルントが、キャリア最大の勝利を挙げることとなる。

ポイント賞ジャージの表彰でステージに立つニッツォーロの憮然とした表情が忘れられない。

 

今回も勿論、イタリア人のヴィヴィアーニが永遠の都での勝利を狙ってくるだろう。

しかし負けられないのは、同じイタリア人スプリンターであるサッシャ・モドロやズバラーリ、勿論ニッツォーロも。

バルディアーニのアンドレア・グアルディーニも今年好調で、昨年ジロで2位を2度経験しているウィリエール・トリエスティーナヤコブ・マレツコなんかも、十分期待はできるだろう。

 

ゴール地点の目の前に建つ「ヴィットーリオ・エマヌエーレ2世記念堂」の上部に飾られた2体の「勝利の女神」ウィクトリア像。

彼女たちが微笑むその視線の先にいるのは、果たして誰か。

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次回は注目選手をプレビュー予定。