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ジロ・デ・イタリア2018 注目選手プレビュー

ジロ・ディタリアも開幕直前。

ここで、今回のジロで個人的に注目している選手たちをピックアップして紹介していきたいと思う。

正直、活躍に期待する選手は大量にいるのだが、その中で、実際に実績を出せそうな選手を、総合系で6名、スプリンターで3名、そして若手で1名の合計10名を選出。

簡単なプレビュウを実施した。

 

以下、少しでも参考になれば幸い。 

※年齢はすべて数え年表記です。

 

 

 

 

クリストファー・フルーム(イギリス、33歳)

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2013年、2015年~2017年の計4回ツール・ド・フランスを総合優勝し、昨年はブエルタ・ア・エスパーニャも総合優勝。史上3人目の、そしてブエルタが現在の秋開催になってからは唯一の、ツール~ブエルタのダブルツール達成者となった。

今年はツール5勝目、すなわち史上5人目の「5勝クラブ入り」がかかる年。てっきりツールに集中するのかと思いきや・・・なんと、ジロ・ディタリアへと乗り込んできた。

今回、総合優勝すれば、史上7人目の「3大グランツール制覇者」となる。また、ツール~ブエルタ~ジロと3連続グランツール制覇というのも、なかなか過去に例を見ないパターンとなるだろう。

そして、おそらくは狙ってくるジロ~ツールのダブルツール。1998年のマルコ・パンターニ以来、20年ぶり、史上8人目の達成者となる。過去、コンタドールも狙って果たせなかったこの偉業を、フルームならば成し遂げてしまうかもしれない、と期待させてくれる。

 

懸念点としては2つ。

1つ目は、ジロ・ディタリアとチーム・スカイとの相性があまり良くないこと。昨年もエースのゲラント・トーマスが1週目にしてリタイア。ランダも総合優勝争いから脱落してしまった。

長らくスカイを苦しめる「ジロの呪い」。フルームもまた、その餌食となってしまうのか。それとも彼ならばそれを跳ね除けられるのか。

 

懸念の2つ目は、昨年秋からサイクルロードレース界を騒がせ続けている「サルブタモール問題」。はっきりと結論の出ないままジロが開幕してしまい、これでフルームが結果を出した後に遡りでの結果剥奪などの措置が起きてしまえば、それこそが最もロードレース界にとっては不運なこととなる。

また、この問題の影響もあるのか、ここまでのレースでのフルームの走りは十分とは言えない。

ただ、4月に入ってからはゾンコランでの練習風景をツイートしたり、ツアー・オブ・ジ・アルプスで積極的な攻撃を仕掛けたりと、ジロに向けて順調に調子を上げている様子も見られる。

また、アルプスではケニー・エリッソンドがアシストとしての素質を開花させ、チームとしても良い状態でジロを迎えることができそうだ。

 

果たして、「現役最強のグランツールライダー」は、ジロでもその実力を見せつけてくれるのか。それとも、結果を出せぬまま潰れてしまうのか。

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ツアー・オブ・ジ・アルプスでは総合4位。これまでの彼の成績と比べるとイマイチだが、シーズン序盤の苦しい状況からは抜け出した感じを受ける。

 

 

 

トム・デュムラン(オランダ、28歳)

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かつてはファビアン・カンチェラーラトニー・マルティンに次ぐ、新世代のTTスペシャリストとして注目を集めていた。しかし、2015年のブエルタで突如覚醒。そのときは最終日前日の山岳ステージで崩れ、表彰台すら逃してしまったものの、一躍オランダ最強のグランツールライダーとして台頭することとなった。

しかしデュムランは焦ることをしなかった。2016年はジロ、ツールと連戦したが、いずれも総合は狙わず、地元オランダでのTT勝利、山岳でのステージ優勝、そしてリオ・オリンピックに向けた調整に徹した。

そして昨年、2017年。満を持して挑んだジロ・ディタリアで、あのナイロ・キンタナやヴィンツェンツォ・ニバリを凌ぐ登坂力を見せつけての、完全勝利。

ゆえに、現在、クリス・フルームに対する最も期待されたライバルとして注目されることに。「フルーム時代」を終わらせるならば彼であると――その直接対決が、まさかこんな形で実現しようとは。ツールではなく、ジロで。

 

形としては、デュムランこそが前回優勝者でありディフェンディング・チャンピオンである。あくまでもフルームは挑戦者であるわけだが、実質的には「最強」フルームとその最大のライバル候補との、初の本気の直接対決の開幕である。

 

懸念としては、やはりチーム・スカイと比べると乏しいチーム力。それでも、昨年デュムランを支え続け引退を留まり続けてくれているローレンス・テンダム。若手の期待の星サム・オーメン。チームとしても、可能な限りの戦力は連れてきてくれている。

また、実績だけならスカイに全く敵わなくとも、実際に機能したときのサンウェブのチーム力は恐ろしいものであるということ、昨年一年間を通じて私たちはよく知っている。ジロの総合優勝、ツールのポイント賞&山岳賞、そして世界選手権チームタイムトライアル・・・データだけではわからない不思議な結束力こそが、サンウェブというチームの最大の武器である。

「最強」の一角キンタナを見事打ち倒したデュムランは、今年、もう1人の「最強」を倒し再びピンクジャージを手に入れることができるか。

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今年は正直ここまで調子の良いところは見せられていないデュムラン。今年のジロは是非、最高のコンディションでフルームと戦ってほしいところ。

 

 

 

ファビオ・アル(イタリア、28歳)

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現イタリアチャンピオン。昨年の第100回大会は地元サルデーニャでの開幕とあって本人としても出ないわけにはいかない、という意気込みだっただろうが、直前の怪我によりあえなく不参加。今年こそリベンジだ。

2014年ジロ総合3位。2015年ジロ総合2位。そして2015年はブエルタでの総合優勝も果たしている。

2016年はジロに出場せずツールに集中。しかし、結果は空回り。以来、イマイチ振るわないシーズンを過ごしてきた。

今年、3年ぶりのジロ出場。前2回の良い流れを引き継げるか。なんだかんだ言って、今大会においてフルームとデュムランを倒し得る存在はもう彼しかいないといった感じだ。期待している。

不安要素としてはチーム。これまで総合争いを経験したことが少ないチームだけに、どこまでアルをサポートしていけるか・・・彼がブエルタで総合優勝したときも、当時のアスタナ・チームの助けがあってのものだったので。

UAEの現時点での出場予定選手はアタプマ、コンティ、ラエンゲン、マルカート、モーリ、ポランチ、ウリッシ・・・個々の実力は十分に高くステージ優勝を狙って行くことは十分可能だろうけれど、エースをアシストする、というようなイメージはどうしても、湧かない、なぁ。

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今年はまだそこまで目立った成績は出してはいないが、ジロ前哨戦の「ツアー・オブ・ジ・アルプス」で総合6位。ちょっと上向きになりつつある。

 

 

 

ミゲルアンヘル・ロペス(コロンビア、24歳)

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元々実力は高く期待されていたが、昨年のブエルタで想像以上の大爆発。

今年はツアー・オブ・オマーン総合2位。アブダビ・ツアー総合3位。ツアー・オブ・ジ・アルプス総合3位と好調。ステージ優勝も2つ。ニバリ、アルの抜けた穴を十分に埋めることができる逸材だ。

少なくとも、マリア・ビアンカは最有力候補であると言えるだろう。

また、アスタナチーム自体が現在絶好調。昨年は4月まで勝利なしだったのに、今年はすでに13勝(4/25現在)。また、圧倒的に強いエースが稼ぐ、ではなく、一人一人がチームの力を借りながら勝利を掴んでいくというスタイルだ。

今回のメンバーもビルバオヒルト、カンゲルト、ルツェンコ、サンチェス、ヴィレッラ、ゼイツと、ステージ優勝でもエースのアシストでも十分に期待ができるメンバーだ。昨年は悔しい/悲しい思いをしていたジロで、今年のアスタナは結果を出すことができる、そう信じることのできるメンバーである。

 

 

ローハン・デニス(オーストラリア、28歳)

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本人はまだ早いと言いつつも、ティレーノ~アドリアティコ総合2位などを叩き出していた昨年、期待を受けて出場したジロで残念な早期リタイアとなった。

今年こそという思いはあるかもしれない。しかも今回、明らかに彼をエースに、と考えられた布陣でチームからの支援も十分に見込める。個人TTの安定感は随一で、今回もとりあえず初日最大の優勝候補である。

あとは、アルプスの厳しい山岳地帯を乗り越えることができるかどうか・・・ツール・ド・ロマンディ総合7位。悪くは、ないはずだ。

目指すは総合5位以内。

 

 

ティボー・ピノ(フランス、28歳)

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おめでとう、アルプス総合優勝!

とはいえ、昨年のツールのごとく、ここまで存在感がほとんどない今シーズン・・・いや、それでいい。彼は期待されればされるほどうまくいかないタイプなので、これくらい影を潜めてさらっと表彰台を取ってしまうくらいが丁度いい。

ライヒェンバッハ、モラビート、プライドラーなど、チームとしても割と本気でピノを支える気でいる模様。

これはもしかして、もしかすると・・・いや、期待はしない。期待はしないぞー。

 

 

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、29歳)

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今年すでに6勝。ワールドツアーチームのスプリンターの中では最多の勝利数を記録している。ピュアスプリントでは最強と言えるのが今シーズン。

ヴィヴィアーニの強さは彼自身の強さもさることながら、チームの強さも要因である。何しろ、昨年全グランツールでスプリント4勝以上をそれぞれ別の選手で成し遂げているチームである。昨年のエースが移籍してもなお、新たなエースを据えて結果を出し続けるだけの実力がこのチームにはある。

今回のジロに臨むクイックステップのメンバーも、昨年はキッテルの、そして今年はヴィヴィアーニの勝利のほとんどに関わってきた最強発射台サバティーニや、自身もまた強力なスプリンターでもあるスティバール、そして昨年までクリストフの発射台として活躍してきたミケル・モルコフなど、完全にヴィヴィアーニのための体制を作り上げてきている。

果たして今年のクイックステップグランツールで何勝するのか。その幸先の良いスタートを、このジロで切ることができるか。

 

 

サム・ベネット(アイルランド、28歳)

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ボーラ叩き上げのスプリンターで、サガン加入の昨年は存在感が減るかと思いきや、しっかりとそれに張り合うだけの成果を出し、年間10勝と絶好調。

しかしジロでは勝てず。2位、3位と悪くはなかったが、今一歩届かなかった。その分、ライバルの少ない今年は大チャンスである。

なお、2歳年上のドイツ人スプリンター、リュディガー・ゼーリッヒが今年もアシストとして参戦。ときにベネット以上の成績を出すライバルでもあり、実質的なダブルエース体制で勝利を狙う。

ゼーリッヒは先日のツール・ド・ロマンディ最終ステージで勝利したアッカーマンの発射台としても活躍。ただ、それ以外ではベネットもゼーリッヒも、今年そこまでまだ結果を出せていないのが不安点。

 

 

ヤクブ・マレチュコ(イタリア、24歳)

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イタリア期待の若手スプリンターの1人。所属チームはウィリエール・トリエスティーナ・セッライタリア。プロコンチネンタルチームである。

それでも、昨年のジロ・ディタリアではステージ2位が2回。アジアのレースでの相性がよく、中国中心に昨年は14勝している。今年もここまで、1クラス~2クラスばかりとはいえ8勝と、ヴィヴィアーニを超える勝利数を記録している。

逃げ切りはともかく、グランツールのガチのスプリントでプロコンチネンタルチームが勝つというのはなかなかない偉業であり、しかし今年、ヴィヴィアーニ以外の超強力スプリンターが少ないジロであれば、そういった事態も十分に考えられることだろう。チームもエースナンバーをマレチュコに託し、本気で勝利を狙う態勢で挑んでくる。

 

 

リチャルド・カラパス(エクアドル、25歳)

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パリ~ニースのクイーンステージで総合優勝者マルク・ソレルを支え、遅れかけた彼を引き上げるという重要な役割を果たす。カラパスがいなければ、ソレルは勝ててなかったかもしれない。彼自身も総合11位。

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そして、その後、イタリアで開催された1クラスのステージレース、セッティマーナ・コッピ・エ・バルタリで総合3位、スペインで開催された1クラスのステージレース、ブエルタアストゥリアスで総合優勝。後者は山頂フィニッシュのクイーンステージでも勝利するなど、力を見せつけた。

今回のモビスターは正直、エース不在。その中で、序盤で成績を出せば、彼がエースとしてベタンクールやフェルナンデスといった強力な選手を従える状況を作っていくことは十分に可能だ。目指すは、ロペスとの新人賞ジャージ争い。同じパリ~ニースで活躍したグロースシャルトナ―もライバルとなるかもしれない。珍しい南米エクアドル出身の選手。モビスターの次代を担う選手となれるか。

 

 

 

以上、独断と偏見で10名の選手を選出。

これらの選手が実際に活躍することを願う。