りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

2018年シーズン 8月主要レース振り返り

8月はサイクルロードレースシーズンとしても大きく盛り上がる季節。ツール・ド・フランスが終わり、ブエルタ・ア・エスパーニャが始まる前ではあるものの、数多く大小のレースが展開され、若手も含めた多くの注目選手が活躍している。

また、現在開催中のブエルタ・ア・エスパーニャの前哨戦に位置付けられているレースもいくつかある。ここで活躍した選手がブエルタでも活躍する可能性は十分高く、本格化するブエルタ第2週に向けての予習としよう。

あとは先月に引き続きシクロクロス勢の好調・・・

未来に向けたレースと合わせ、必見の8月となった。

 

 

 

 

 

デンマーク・ルント(ツアー・オブ・デンマーク)(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:デンマーク

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1985年から開催されている、デンマーク最大のステージレース。デンマーク郵政公社が主催しており、同社の名を冠した「ポストノルド・デンマークルント」の名でも知られる。

近年のデンマーク選手の活躍を反映して同レースを注目度を高めており、例年ハイレベルな戦いが繰り広げられる。ここ4年ほど、デンマーク人の総合優勝者を輩出してきたが、今年はデンマーク人の頑張りを尻目に、なんと「シクロクロス勢」が意外なまでの強さを見せつけた。先月のツール・ド・ワロニーのクインテン・ヘルマンスに引き続き。

勝ち方もまた強い。そもそもファンアールトは今年、ストラーデ・ビアンケやロンド・ファン・フラーンデレンで強さを見せつけており、先月のツアー・オブ・オーストリアでもトップ選手に混じってのスプリントで存在感を示していた。そして今回。第2ステージで、逃げていたロビン・カーペンターとユリウス・ヨハンセンを追走から追い上げて一気に捉え、追い抜いて、共に追走していたアレクサンデル・カンプに影も踏ませない勢いでそのままゴールに飛び込んだ。

圧倒的と言わざるを得ない勝利。一人だけ、格の違うレースを見せられた感じだった。

 

その後のメルリエ2勝も圧巻。ミナーリとグアルニエーリとかコカールとか、ワールドツアーレースでも十分活躍できる強豪ライバルたちがしっかりいた中で、その強さを見せつけてくれた。

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メルリエ自体は来期、コンチネンタルチームに移籍することが決まっている。あくまでもシクロクロスに集中する形か。

一方のファンアールトは、チーム自体も含め様々な噂や憶測が飛び交ってはいるが、現状では契約が残っていることもあり、フェランダース・ウィレムスクレラン残留が濃厚? シクロクロスにおけるライバルのマチュー・ファンデルプールも、所属チームのプロコン昇格を目指しており、来年はロンド・ファン・フラーンデレンやE3・ハレルベーケへの参加に意欲的だとか。

来年はより一層、シクロクロス勢の激しいバトルが期待できるかも。先駆けてこの冬、例年以上にシクロクロスに注目するべきかもしれない!

 

 

 

クラシカ・サンセバスティアン(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:スペイン

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スペイン・バスク地方を舞台に、獲得標高4000m弱の激しいアップダウンコースでのバトルが繰り広げられた。ワンデーレースの中ではイル・ロンバルディアに匹敵する難易度を誇る「クライマーズクラシック」だ。

繰り返しのアップダウンの中で集団は確実に絞り込まれてはいくものの、勝負を左右するのはゴール前8kmの地点に位置するムルギル・トントーラ。2.8kmと短いが、最大勾配は18%超え。特に山頂までの1.8kmの平均勾配は11%を超えるという難易度の非常に高い激坂だ。例年、この地点でアルデンヌ・クラシックに強い名うてのパンチャー/クライマーたちが抜け出して、小集団スプリントや独走勝利を決める。

 

今年もまた、途中途中での飛び出しはあったものの、全て吸収されたうえでこのムルギル・トントーラにて決定的な動きが生まれた。最初に飛び出したのはチーム・ロットNLユンボのアントワン・トルホーク。昨年のジャパンカップ4位の若きパンチャーが、軽快な走りで集団とのタイム差を開いていく。ここに喰らいついたのがグルパマFDJのリュディ・モラール。今年のパリ~ニースのパンチャー向けステージで勝利を飾っている男だ。

この2人を追いかけて集団から抜け出したのが、モレマ、ファンアフェルマート、ヨン・イサギレ、そして集団でずっと息をひそめていた優勝候補のアラフィリップである。

2016年大会の覇者モレマがいつもの勢いの良いアタックで先頭2人を追い抜くと、これに唯一ついていけたのがアラフィリップだった。逆に、ここでアラフィリップを突き放すことができなかったことで、モレマの勝利の芽は消えてしまったと言っても過言ではない。

最後の直線では背後に貼り付き、フェイントをかましてアラフィリップに先に仕掛けさせることには成功したものの、やはり地力が違った。モレマも決して、スプリントの弱い選手ではないものの、純正スプリンターに近い脚質をもつアラフィリップに対し、一度もその前に出ることも叶わず、最後は踏み止めて敗北を悟った。

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今年は絶好調だ。

かつては、ツアー・オブ・カリフォルニア総合優勝などはあったものの、フレッシュ・ワロンヌなどでは2位続き。ツール・ド・フランスでも、惜しいところまで行くものの、不運もあり、なかなか勝利に届いていなかったシーズンが続いた。

しかし今年は、バスク1周での2勝を皮切りに、念願のフレッシュ・ワロンヌ勝利。しかも、王者バルベルデに対して真っ向勝負を挑んでの勝利だった。クリテリウム・ドゥ・ドーフィネでも1勝。その勢いで乗り込んだツール・ド・フランスでは難関山岳ステージで2勝。しかも、まさかの山岳賞ジャージをチームに持って帰った。

その男が、今回、更なる実績を積み上げた。彼史上、最高に成功したシーズンを過ごしている。

意外な勝利ではなかった。しかし、そのあまりにも高い期待に応える、見事な勝利であった。

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非常に面白いレースではあったものの、残念ながら大きな落車が発生してしまい、ブエルタを控えたミケル・ランダや、若手最高の走りを見せていたエガン・ベルナルが巻き込まれ、それぞれ即時病院送りのリタイアとなった。

ランダはブエルタを断念せざるを得ない怪我となった。そして、ベルナルは?

 

 

 

ツール・ド・ポローニュ(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:ポーランド

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歴史は古く、初開催は1928年。グランツールの1つ、ブエルタ・ア・エスパーニャよりも長い歴史をもつ(ブエルタは1935年初開催)。

かつては古都クラクフでフィナーレを迎えるのが通例だったが、昨年からクラクフをスタート地点に据える。同時に各ステージの距離を短くし、ツール・ド・フランスを走った選手やブエルタ・ア・エスパーニャを睨む選手たちが走りやすい環境を用意した。

 

最初の3日間のスプリントステージで、最強の力を見せつけたのはパスカル・アッカーマン。7月頭のドイツ国内選手権ロードを制し、先日のライドロンドン・サリークラシックも勝利した今最も勢いのある若手ジャーマンスプリンターだ。

第1ステージは、モルコフとサバティーニに牽引され最高の発射を実現したホッジを、その背中から飛び出して力でねじ伏せ、第2ステージは先行して逃げる選手たちを集団の中ほどから一気に抜け出てくる勢いのあるロングスプリントで薙ぎ払った。このときホッジもアッカーマンの背中に貼り付いていたものの、勢いの違いに圧倒され、手も足も出なかった。

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一方、クイックステップ・フロアーズはチーム力でボーラを上回る走りを見せつけていた。第1ステージでも、最後の実力でホッジがアッカーマンに敵わなかっただけで、リードアウトは完璧だった。

だから、第3ステージでは秘策を繰り出した。第1ステージと比べ、終盤でバラバラになるクイックステップのアシストたち。しかし、デンマークチャンピオンジャージのミケル・モルコフだけはただ一人、ホッジの前をキープ。そして、アッカーマンが右手から上がっていったのを見届けて、左手から一気にペースアップを仕掛けた!

ライバルたち不在の空間で、他チームのエーススプリンターすら圧倒するリードアウトを見せたモルコフ。その背中から、実力者ホッジが最高のスプリントを発揮する。

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昨年のツール・ド・ラヴニールでも勝利し、今年クイックステップ入りを果たした注目のネオプロの1人として、3月のノケーレ・コールスとカタルーニャ1周で立て続けに勝利した「ガビリア2世」。久々の大勝利は、2日に渡る悔しい敗北からの大逆転勝利となった。ボーナスタイムの蓄積で、総合リーダージャージも手に入れた。

しかし、ホッジの勝利は彼自身の力だけでなく、チームの力でもあった。とくにモルコフの、巧み過ぎるアシスト力。この辺りは、ツール・ド・フランスにおけるアリエルマクシミリアーノ・リチェセの技巧に通じるものがあった。

suzutamaki.hatenablog.com

モルコフは元々はカチューシャに所属していたクリストフ発射台の1人だった。しかし以前より彼がここまで巧みなアシスト力で注目されていたかというと、そこまででもなかったはずだ。

ここはやはり、クイックステップというチーム自体が、トレインやスプリントアシストに対して並々ならぬ情熱を注いでいることを証明しているのかもしれない。

 

本格的な山岳ステージに突入した第4ステージ以降、頭角を現してきたのは地元ポーランドのクフィアトコフスキ。最大17%の激坂フィニッシュとなる第4ステージ、小刻みなアップダウンが繰り返された後に緩やかな登りスプリントとなる第5ステージ、いずれもパンチャー向けのレイアウトとなったが、昨年総合優勝者にして急成長中のパンチャーであるディラン・トゥーンスを力で捻じ伏せて、クフィアトコフスキが連勝を飾った。 

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第6ステージはゴール前の登りで総合優勝候補だけに絞り込まれた小集団が形成されたが、最後の下りで抜け出したゲオルグ・プライドラーが勝利。 

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ジロの山岳ステージなどで実力の高さを示し続けてきたオールラウンダーのプライドラー。しかし、国内選手権個人TT以外でのプロ勝利では実はこれが初。今回の彼の勝利は、集団で蓋の役割を果たしたエース、ティボー・ピノのお陰とも言えるかもしれない。

そのピノのアシストに報いるがごとく、翌日の最終日フィニッシュの直前で、プライドラーはエースを引き上げる全力の走りを繰り出した。結果、最後に抜け出してステージ2位を獲得できたピノは、総合6位から3位にジャンプアップ。表彰台を獲得した。

ピノとプライドラーのコンビはジロでも力を発揮した。現時点でまだプライドラーの出場は決まってはいないが、是非とも出場を果たしてほしいところ。

 

そして、最終日第7ステージを制したのが、今年のジロで大活躍だったサイモン・イェーツ。ステージ開始時点で総合9位だった彼は、ラスト10kmで集団から抜け出し、最後の2kmに到達するまでバーチャルでの総合リーダーを保ち続けた。

最後は集団に差を詰められてしまったものの、見事逃げ切り勝利を果たし、総合順位も2位にまで登りつめた。ブエルタでのリベンジに向けて、その調子の良さを証明してみせた形だ。

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クフィアトコフスキの強さはもちろん、ピノ&プライドラーのFDJコンビ、イェーツ、そして総合4位ジョージ・ベネットや総合7位ブッフマン&8位フォルモロのボーラコンビなど、来るブエルタ・ア・エスパーニャに向けて、それぞれの選手の活躍への期待が高まる良い前哨戦となった。

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ツアー・オブ・ユタ(2.HC)

アメリカツアー HCクラス 開催国:アメリ

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才能は突如として生まれる。2015年ブエルタのデュムランのように、あるいは今年のジロのサイモン・イェーツのように。いや、しかしこの2人は前兆は十分にあった。対して、このクスの存在は実に意外であった。

24歳のコロラド出身のこのアメリカ人青年は、昨年まではコンチネンタルチームのラリー・サイクリングに所属していた。ツアー・オブ・カリフォルニアでもワールドツアークラス顔負けの実績を叩き出すことも多いラリー・サイクリングだが、このクスも、タランスキーの勝利したマウント・バルディの山頂フィニッシュで、ワールドツアーの選手たちと肩を並べる走りを見せていた。

そして今回のこの圧倒的な勝利。この結果をもって、ブエルタにも選出されたと言えるだろう。

 

もう1人、個人的に期待しているハーゲンスバーマン・アクセオンのヤスペル・フィリップセン。ツアー・オブ・カリフォルニアでも、ガビリアに対して一歩も引かない攻撃的な走りを見せていたが、今回も、怒涛の連勝を見せようとするトラヴィス・マッケイブに対して、体ごとぶつかっていきながらの執念の勝利を掴んだ。

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カリフォルニアではその危険を顧みない無謀な走り方にガビリアから怒られる場面もあったが、この執念・飢えを残したまま、来期も活躍していってほしい選手だ。

ハーゲンスバーマン・アクセオンは数多くの有力選手を輩出している育成チームだが、このフィリップセンも間違いなくその1人となるはずだ。 

 

 

 

ブエルタ・ア・ブルゴス(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:スペイン

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バスクカンタブリアにも程近い、山岳豊かなスペイン北部ブルゴス県を舞台にして開催されるステージレース。ブエルタ・ア・エスパーニャの前哨戦としても名高く、過去にもキンタナ、コンタドール、ランダなどグランツール総合表彰台に登れる実力者たちが名を連ねている。

 

そんなレベルの高いレースで、まず注目したいのが、第2ステージのマッテオ・モスケッティの勝利。 

今年新設のコンチネンタルチーム「ポーラテック・コメタ」所属の22歳。ジュニア時代はトラック競技で活躍しており、2014年にはチームパーシュート種目でイタリアチャンピオンに輝いている。

昨年はU23ロード国内選手権でも優勝。実力をしっかり示したうえで、今年、このコメタにて2クラス・Nカップも含めて9勝。来年からはトレック入りが確定している。

チームにとっても、創設初年度でのこの成果は大きい。元々、コンタドールによる運営、イヴァン・バッソやヘスス・エルナンデスがマネージャーを務めるということで、鳴り物入りで誕生したトレックの育成チームである。来年以降も、モスケッティに続く才能の輩出に期待したい。

 

そしてもう1人、アンドローニ・ジョカットリの21歳新鋭、イヴァンラミーロ・ソーサの存在である。

第3ステージでは先行していたロペスを追い抜き、先頭を奪う。ロペスがその後、執念を見せて追い付いてきたことで勝利を逃したものの、その牽制もない横並びでの力の見せあいは、実に「ブエルタらしい」手に汗握るものであった。

 

とはいえやはりロペスが強かったか、と思っていたところ、最終日にて、再びソーサが終盤でアタック。ロペスも勿論ついていこうとするが、最後には力尽きてソーサの独走を許してしまった。

アンドローニ・ジョカットリは、今年大活躍中のエガン・ベルナルも所属していたプロコンチネンタルチーム。GMのジャンニ・サヴィオはベルナルに続きこのソーサという才能を発掘した、人材発掘のスペシャリストであると言える。

 

ソーサは今年すでに3つのステージレースを総合優勝しており、今回で4つ目となる。引き続きツール・ド・ラヴニールへの出場も決めており、そこでの活躍にも期待したいところ。

 

 

 

ビンクバンク・ツアー(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:オランダ、ベルギー

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旧エネコ・ツアー。ツアー・オブ・ベネルスクの名前もあり、年によってはルクセンブルクを使用することもある。

春のクラシックの本拠地であるオランダ、ベルギーを通るだけあって、第6ステージはアムステルゴールドレースと同じ地域を走る丘陵ステージ、第7ステージは伝説のカペルミュールを使用した「ミニ・ロンド」ステージと、実に豪華なステージ群。

そんな中、「ミニ・アムステル」では、アルデンヌマイスターのティム・ウェレンスが積極的な動きを見せ、近年めきめきと力を伸ばしつつあるオーストリア人若手パンチャーのミュールベルガーが勝利を掴んだ中で、マチェイ・モホリッチは絞り込まれたメイン集団にしっかりと残っていた。

また、続く「ミニ・ロンド」では、モホリッチを30秒差で追うマシューズが最後のミュールを駆け上る。将来的には本当にロンドを制してもおかしくはないマシューズの勝利の後方で、モホリッチはなんとか喰らいつき、5秒差にまで迫られながらも総合首位の座を守った。

モホリッチは確かに強い選手だ。しかし、春のクラシックで良い成績を出すタイプの選手では決してない。そんな彼が、ハードなクラシック風コースにおいて、我慢の走りで順位を守り切れたことは、彼の新たな強さの可能性を見せてくれたと言ってよい。

あきさねゆう氏の言葉を借りれば「体力のスペシャリスト」である。

直後のドイツ・ツアーでも総合優勝。昨年から続き、今最も勢いのある選手の1人だ。

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最終ステージ終了後にさすがに倒れ込んだモホリッチ。 

 

 

 

アークティックレース・オブ・ノルウェー(2.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ノルウェー

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先月のツール・ド・ワロニー、今月頭のデンマーク・ルントに引き続き、シクロクロス勢の大活躍。というより、コレンダン・サーカスの大活躍である。

ファンデルポールはファンアールトのライバル的存在。世界選手権以外の主要な大レースに軒並み勝利している無冠の帝王である。この北極圏レースでは、厳しい登りでは遅れるものの、パンチャー向けのスプリントではワールドツアーすら凌駕する圧倒的な走りを見せつけた。

また、チームメートのトゥパリックは、2年前のシクロクロスU23世界選手権で「勘違いガッツポーズ」をしてしまった苦い経験を持っている選手。今回はそのリベンジとなる勝利を果たせたわけだが、ギリギリの逃亡劇からの渾身の勝利は見応えバッチリ。登り下りのメリハリの効いた効果的なコースレイアウトも良い味を出しており、風景と合わせ、このレース、実はレベルが高い。

そんな、コンチネンタル&プロコンチネンタルチームの勢いを躱して、ワールドツアーチームとしての意地を見せて勝利したのがチェルネトスキー。

実は過去に総合優勝しているレースはツール・デ・フィヨルドだったりで、北欧のレースとの相性が良いのか。さすがロシア人。

 

 

 

ツール・ポワトゥ=シャラント(2.1)

ヨーロッパツアー 1クラス 開催国:スペイン

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その名の通り、フランス西部、ポワトゥー=シャラント地域圏*1で行われる5日間のステージレース。過去にはシルヴァン・シャヴァネルトマ・ヴォクレールほか、トニー・マルティンやルーク・ダーブリッジなど、TTに強い選手が名前を連ねている。平坦中心のコースが連続する中にあってそれなりの距離の個人TTが設定されているため、いくら平坦のスプリントで勝利しても総合優勝には届かなかったりするのだ。同レースで7勝しているナセル・ブアニも総合優勝経験はない。

しかし、今年はそんな30年の歴史を誇る当レースでも特異な年となった。上記表を見てもらえればわかる。以下のツイートが全てを物語っていると言っても過言ではない。

 

確かに、事前のスタートリストを眺めていても、デマールの勝利は当然だった。勝ったとしても「はいはいデマール」で終わって納得はすれど面白みは感じられないと思っていた。

だが、全勝するとは。しかも個人TTで、6度の国内TT王者に輝いたシルヴァン・シャヴァネルを破って、それも、23kmという、決してスプリンター優位とは言えない距離で。

ここまでやられてしまったら脱帽である。

すごいわデマール先輩。

 

デマール以外にも、第1ステージでそのデマールに喰らいつき2位になったマッテオ・モスケッティ(22歳イタリア人、トレック・セガフレード研修生)にも注目。トレック公式からの最初のニュースでは第2ステージでも2位という情報が来て「おお!」となったが、これは誤報だったようだ。

第3ステージでも6位と十分に健闘しているモスケッティ。今後に期待だ。

 

 

 

ツール・ド・ラヴニール(2.Ncup)

ネイションズカップ 開催国:フランス

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※実際には各国代表での参加となったが、上記表は現在所属しているチーム名を記載した。

過去、ナイロ・キンタナやエステバン・チャベス、そしてエガンアルリー・ベルナルなどの有力選手を輩出してきた「若手の登竜門」ラヴニール。

今年は直前のブルゴスで総合優勝したイヴァンラミーロ・ソーサが最大の優勝候補であったはず。チームメートにはベイビー・ジロでも活躍したオソリオもおり、盤石のはずだった。

しかし、最終結果は総合6位。チームTTで大きくタイムを落としたのが痛かった。

だがそれ以上に、総合優勝のポガカールが強かったのは事実だ。ソーサが優勝した第7ステージの山頂フィニッシュでも、ポガカールはきっちりとついてきていた。さらには第9ステージではメイン集団から単独で抜け出し、ライバルたちに1分以上を突き放してのゴールとなった。

総合リーダージャージを着てのこの走りは、ツールにおけるゲラント・トーマスを彷彿とさせる強さだった。

 

なお、今回活躍した選手たちの来期の所属チームは以下の通り。

マックス・カンター ⇒ チーム・サンウェブ

アラン・リウ ⇒ チーム・フォルテュネオ=サムシック

ダミアン・トゥーズ ⇒ コフィディス・ソリュシオンクレディ

マテュー・ギブソン ⇒ JLTコンドールに残留

アレッサンドロ・コヴィ ⇒ UAEチーム・エミレーツ(正式加入)

イヴァンラミーロ・ソーサ ⇒ トレック・セガフレード

ジーノ・マーダー ⇒ トラックに集中?所属チーム不明

フェルナンド・バルセロ ⇒ エウスカディ・ムリアスに残留

 

昨年はラヴニールで勝利した選手のほとんどがチーム・スカイかクイックステップ・フロアーズに移籍した。その意味で今年のメンバーはプロコンチネンタルチームへの移籍も多く昨年ほど派手ではなさそう・・・だが、昨年もこの後のシーズンに移籍が決まることも多かったので、まだまだ続報待ちだ。

とくに2勝したマーダーが、ロードのチームにはどこにも所属していないのが気になる。来年はどうするつもりか・・・

残留を予定しているギブソンやバルセロ、またラリー・サイクリング所属で今年のドバイ・ツアーに引き続き、第7ステージでソーサに対してギリギリの2位(というか勘違いガッツポーズの所為で勝利を逃した)マクナルティも、来年は契約を残したまま移籍する可能性はあるだろう。

 

今年は昨年のラヴニール組が大活躍した。来年もこのメンバーに期待していきたいところ。

 

*1:2016年以降はアキテーヌ地域圏・リムーザン地域圏と統合され、ヌーヴェル=アキテーヌ地域圏へと再編された。それを受けて当レースの正式名称も今年から、ツール・ポワトゥ=シャラント・エン・ヌーヴェル=アキテーヌとなった。