りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2018年シーズン 9月主要レース振り返り(9/8時点)

ブエルタ・ア・エスパーニャ絶賛開催中ではあるものの、今月も注目のレースが非常に多数。

ということで、現時点(9/8)で終了している3つのワンデーレース(HCクラス以上)のレビューを先行して公開。

とにかく、アッカーマンの絶好調ぶりが凄まじい! 昨年はディラン・トゥーンスの躍進が目覚ましかったが、アッカーマンは彼以上の躍進ぶりである。何しろプロ初勝利から続く今年の8勝のうち、5勝がワールドツアークラスなのだから・・・。

 

ケベックでのマシューズの勝利も見てて嬉しくなる勝利。現時点ではまだ終わっていないモンレアルでも、彼の勝利を期待したいところだ。 

 

 

 

ブリュッセル・サイクリング・クラシック(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ベルギー

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100年以上の歴史をもつベルギーの伝統的ワンデーレース。セミ・クラシックとも呼ばれる。昔はパリ~ブリュッセルと呼ばれていた。

13に及ぶ登りが用意されてはいるものの、いずれも短く、また最後の登りがゴールまで25km残した地点にあるため、スプリンターたちによる集団スプリントでの決着が多い。過去にもボーネングライペル、フルーネヴェーヘン、デマールなど、ブエルタへの出場を断念したピュアスプリンターたちがその名を連ねている。

元ベルギーチャンピオンのオリバー・ナーゼン(AG2R)を含む6名の逃げが生まれ、のちにレミ・カヴァニャ(クイックステップ・フロアーズ)らも合流し、先頭は最終的に8名に。ラスト25kmの最後の登りでカヴァニャが抜け出そうとする姿も見せたものの、ゴールまで10kmを残した時点ですべての逃げは吸収されてしまった。

 

ディフェンディングチャンピオンのアルノー・デマールを擁するグルパマFDJと、今期絶好調のアッカーマンを擁するボーラ・ハンスグローエとが互いに競り合う形で最終スプリントに。

ラスト250mで早駆けを仕掛けたロレンツォ・マンザン(ヴィタルコンセプト)の後ろにアッカーマンがつくと、その背後でクラッシュが発生。デマールはこれによって足止めを受け、逆にアッカーマンは万全の態勢で抜け出した。

スタイフェンが喰らいつこうともがくが、影も踏ませぬままアッカーマンが突き抜けた。圧倒的な勝利だった。彼にとっては初となる、ベルギーでの勝利だった。

Embed from Getty Images

 

 

グランプリ・ド・フルミー(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:フランス

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前日のブリュッセル・サイクリング・クラシックに続き、ベルギー国境沿いにある北フランスを舞台にしたワンデーレース。こちらは今年で90周年を迎える、やはり伝統的なセミ・クラシックレースである。

過去にはナセル・ブアニやマルセル・キッテルなどが勝者に名を連ねている。

グルパマFDJのダヴィ・ゴデュやニッポ・ヴィーニファンティーニのマルコ・カノーラなど、集団スプリントに持ち込みたくないアタッカーたちが次々と攻撃を仕掛けるも、クイックステップ・フロアーズやボーラ・ハンスグローエが支配する集団がその全てを飲み込んでいく。

最後のストレートを先頭で入ってきたのはグルパマFDJ。その番手を巡ってラポートとアッカーマンが争うが、ポジションの死守に成功したアッカーマンが定石どおりにデマールの背後から抜き去って勝利。前日はデマールがアクシデントで足止めをされた中での勝利だったが、今回はこのフランス最強のスプリンターに真っ向から挑んだ結果の勝利ということで、アッカーマンの底知れなさを改めて思い知らされた。

 

これにて、ベルギー・北フランスでの連戦を共にこの24歳のドイツ人が制することに。この両日を制した選手は過去に1名だけ。スプリンターの代名詞たるロビー・マキュアン会長である。その名に並ぶ、偉大なる成績だ。

Embed from Getty Images

 

アッカーマンはプロ2年目だが、プロ勝利は今年から。その今年でいきなりの8勝。しかも、その中にワールドツアークラスでの勝利が5つ。他の追随を許さない急成長ぶりである。

 

【参考】アッカーマンの今年の勝利レース一覧

  • ツール・ド・ロマンディ(2.WT) 第5ステージ
  • クリテリウム・ドゥ・ドーフィネ(2.WT) 第2ステージ
  • ドイツ国内選手権ロードレース
  • ライドロンドン・サリークラシック(1.WT)
  • ツール・ド・ポローニュ(2.WT) 第1ステージ
  • ツール・ド・ポローニュ(2.WT) 第2ステージ
  • ブリュッセル・サイクリング・クラシック(1.HC)
  • グランプリ・ド・フルミー(1.HC) 

 

 

グランプリ・シクリスト・ド・ケベック(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:カナダ

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2010年より開催されている、カナダのフランス語圏ケベック州にて開催される周回型ワンデーレース。獲得標高は3000m弱。2日後に開催されるグランプリ・シクリスト・ド・モンレアルよりはアップダウンが抑え目ではあるが、過去の優勝者を見るとフィリップ・ジルベールやサイモン・ジェラン、ペテル・サガンなどのパンチャー系の選手が名を連ねている。昨年はサガンが2年連続の勝利となり、ファンアフェルマートが2年連続の2位を喫していた。

今年はサガンブエルタ・ア・エスパーニャに出場中のため、ファンアフェルマートにとっては絶好のチャンスとなった。

 

カナダ人3名を含む5名の逃げが決まるが、残り2周で集団から抜け出したピーター・ケノー(ボーラ・ハンスグローエ)が独走を開始。ラスト1kmのゲートを5秒以上の差をつけて超えたが、残り400mで捕まえられてしまった。

混沌とした集団スプリントで、ラスト200mから先頭に出たマシューズが、これに追いすがろうとするファンアフェルマートを突き放して勝利を掴んだ。2015年には2位、昨年は3位と、優勝候補でありながら勝ちきれずにいた彼にとっては歓喜の勝利。一方、ファンアフェルマートは3年連続4回目の2位に沈んだ。

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マシューズは今年、あまりにも辛いシーズンを過ごしていた。8月に入るまでの勝利はツール・ド・ロマンディでの個人TT(プロローグ)のみ。

8月半ばのビンクバンクツアー「ミニ・ロンド」ステージでの勝利から少しずつ調子を取り戻し、今回の勝利。このまま10歳年上の先輩サイモン・ジェランに続く、ケベックモンレアル制覇を期待したいところだが、果たして。

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