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ブエルタ・ア・エスパーニャ2018 コースプレビュー3週目

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切り立った山岳に囲まれた小国アンドラ。写真は3年前、今年と同様に「アンドラ山巡り」コースを採用したときのもの。

 

いよいよ今年のグランツールもあと1週間である。

シーズン最後のグランツール、最も白熱するグランツールは、ベテランの優勝候補の多くが早々に優勝争いから脱落する一方、サイモン・イェーツやミゲルアンヘル・ロペスなど若手が総合優勝を狙える位置で争う、実にブエルタらしい展開で推移している。

ブエルタ・ア・エスパーニャというのは、近年の成績を振り返ってみても、最終週で総合上位が大きく入れ替わるという例は少ない。今年も、現時点での総合上位5名の顔ぶれはほぼ変わらない形で終わるのだろうか。

 

いや、今年はそんなこともなさそうだ。

確かに今大会最も厳しいと思われるアストゥリアス3連戦は終わったものの、この第3週にもまだ何が起こるかわからない難関ステージが控えている。

最大勾配23.83%*1の第17ステージ。

1000m以上を登る1級山岳を最後に擁する「平坦」ステージの第19ステージ。

そして100km未満の超短距離ながら1級山岳3つと超級山岳を含んだ山岳塗れの第20ステージ。

 

今年のジロに匹敵する大逆転劇もまだまだ期待ができそうなこのブエルタ第3週のコースを、しっかりと確認していこう。

 

 

 

第16ステージ サンティリャーナ・デル・マル〜トレラベーガ 32km(個人TT)

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スタート地点のサンティリャーナ・デル・マルはカンタブリア県北方、壁画で知られるアルタミラ洞窟を有する自治体である。

ここから反時計回りにぐるっと一周し、スタート地点の南東に位置するトレラベーガに到達する。ここは、オスカル・フレイレの出身地でもある。

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ブエルタのTTらしく、その道程がフラットであるわけがない。とくに9km地点から21.5km地点にかけて登りが連続し、後半は平坦が続く。獲得標高は360mほどか。

比較的クライマーにとってもひたすら不利というわけではなさそうだが、それでもTTが得意なケルデルマンやバルベルデ、ウランなどにとっては挽回のチャンスとなりそうだ。

また、中間計測の段階でのタイムはクライマー系の選手がより良く見えるだろうが、後半でTTスペシャリスト系の選手が逆転するような構成となっているため注意。というか、中間計測どこ?

 

 

第17ステージ ゲチョ〜バルコン・デ・ビズカイア 157km(丘陵)

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バスクである。すなわち山岳である。

スタート地点のゲチョはホナタン・カストロビエホの出身地でもある。バスク州の事実上の首都ビルバオを通り過ぎ、終盤にはいよいよ1級バルコン・デ・ビズカイアの登りが待ち受ける。

 

全長7.1km、平均勾配9.1%、最大勾配は・・・23.83%

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破壊力だけで言えば第3週で最も厳しい登りであり、もしかしたら今大会の総合争いにおけるクライマックスは、早くもこのステージで演じられるのかもしれない。

 

登り始めから3.2kmは平均勾配6~7%ほど。そこから段々と道が狭くなり、曲がりくねっていく。

そして残り3.9kmの平均勾配は実に11%。残り2.5kmを切ったあたりで最大勾配の23.83%を迎え、今大会最強のクライマーたちによる頂上決戦の火蓋が切って落とされることだろう。 

 

 

第18ステージ エヘア・デ・ロス・カバジェロス〜リェイダ 186.1km(平坦)

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180kmに及ぶ、山岳ポイントなしのオールフラットステージ・・・ここは本当にブエルタなのか?

3年前もリェイダの街をゴールに迎えた。そのときはアンドラの厳しい山岳ステージを終えたあとの平坦ステージだったが、今年は逆に、アンドラを前にした最後の平坦ステージである。

3年前のこの街のフィニッシュでは、残り12kmでパンクして一度遅れたダニー・ファンポッペルが、ダリル・インピーやトッシュ・ファンデルサンドを退けて勝利を掴んだ。

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当時は22歳の若手ライダーとして、あまりにも大きな勝利を掴んだファンポッペル。しかし翌年にチーム・スカイに移籍した後は、グランツール出場も叶わず、雌伏の時を過ごしていた。

そして、母国チームへの復帰を叶えた今年、エースとして出場したジロでは勝てはしなかったものの、ヴィヴィアーニ、サム・ベネットに対して決して遅れを取らない走りを見せて、TOP5に5回も入る成績を残した。

そして、3年ぶりのブエルタ。ここまでは2位と3位が一回ずつ。厳しい登りスプリントのステージでも上位に入り、この日もわずかではあるが緩やかな登りがゴール前に控えている。可能性は十分あるぞ! 

 

 

第19ステージ リェイダ〜アンドラ.ナトゥルランディア 154.4km(平坦)

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平坦(笑)。標高2000m超えの1級山岳の山頂フィニッシュを擁する平坦ステージである。平坦、とは。

 

終着地点となるコル・ドゥ・ラ・ラバッサは3年前の第11ステージ、昨年の第3ステージなど、アンドラを舞台にしたコースでは必ずと言っていいほど登場する。

しかし、いずれもフィニッシュ地点にはされていない。今回はこの登りで、総合優勝を巡る本格的な闘いが繰り広げられることになる。

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全長17.5km。平均勾配6.3%。

その前半は平均勾配が2桁に達するものの、後半はゆるやか。

あらゆる意味で第17ステージとは対極に位置するこの山で、総合首位のチームはその位置をキープするための走りに徹し、逆転を狙う選手たちは登りの前半から全力の攻撃を仕掛けることになるだろう。

出入りの激しい劇的な展開が巻き起こるか、それとも意外なまでに落ち着いた展開となるか。予想はつかない。

 

 

第20ステージ アンドラエスカルデス・エルゴルダニ〜コル・デ・ラ・ガリナ.サンチュアリオ・デ・カノリチ 97.3km(山岳)

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3年ぶりのアンダルシアスタートとなった今年、これもまた3年ぶりとなる「アンドラ山塗れステージ」。

ただし、3年前と違うところがいくつかある。まずは、第2週の冒頭で登場した3年前と違い、今年は総合優勝争いの最後の舞台となること。そして、総獲得標高3000m超えの厳しさでありながら、ステージの全長が97.3kmしかないということ。

 

最後の超級山岳に至るまでの間にプロトンが通過する1級山岳は3つ。

まずは1つ目、ベイクサリス峠。残り77.6kmに頂上。

登坂距離9.7km、平均勾配6.8%、そして最大勾配は13%。

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2つ目の1級山岳はオルディーノ峠。残り55kmに頂上。

登坂距離11.2km、平均勾配6.5%、最大勾配8.5%。

 

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そして3つ目の1級山岳はもう一度ベイクサリス峠

ただし、1回目の登りとは別のルートを使用。残り32.6kmに頂上。

登坂距離6.5km、平均勾配8.3%、最大勾配13%。

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これらの厳しい登りを経て足を削られたプロトンの中から、総合優勝争いの最後の戦いが繰り広げられる。

また、おそらくこの日も大規模な逃げ集団が形成されており、その中でのステージ優勝争いもより激しさを増すことだろう。

 

そして、そんなプロトン、逃げ集団が到達する最終決戦の舞台、超級山岳ラ・ガリナ峠

公式サイトに載ってる下記の断面図では4kmほどだが、実際には7.7kmの登坂。

その全体の平均勾配は7.8%ほどだが、下記4kmは非常に厳しい。

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さらに厳しい勾配というだけでなく、無数のスイッチバックが選手たちを待ち受ける。ブエルタらしい、ノーガードでの打ち合いが最後まで見られることとなるだろう。

 

どこで誰が仕掛けるかわからない。最初から最後まで目が離せない展開になるであろう、それが今年のブエルタの最終決戦舞台である。

 

 

第21ステージ アルコルコンマドリード 100.9km(平坦)

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伝統的な首都マドリードの周回コース。1周5.9kmを15周回する。

最終日がスプリンター向けのステージとなった2005年以降、全て集団スプリントでの決着となっている。今年もほぼ間違いなく集団スプリントで決まるだろうが、ピュアスプリントという意味で最右翼は第2週終了時点で既に2勝しているエリア・ヴィヴィアーニ。

こんな山だらけのブエルタに勇気をもって乗り込んできたピュアスプリンターのヴィヴィアーニが、しっかりと有終の美を飾れるか。

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*1:なお、ブエルタのことなので実際にはこれよりもさらに厳しくなるだろうことが予想される。