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サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

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2018シーズン 10月主要レース振り返り

シーズン最後のモニュメント「イル・ロンバルディア」に向け、イタリアのクライマー向けワンデーレースが盛んなシーズンである。

それ以外にも各地で、シーズン終盤ゆえかステージレースよりもワンデーレースが多く行われており、日本でも国内最高峰のジャパンカップサイクルロードレースが開催された。

 

来シーズンに向け、暴れ足りない連中が勢いを見せるこの10月のロードレースシーンをプレイバック!

 

 

 

スパルカッセン・ミュンスターラント・ジロ(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:ドイツ

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ノルトライン=ヴェストファーレン州(2017年ツールの開幕地となったデュッセルドルフを含む大きな都市を複数抱えたドイツ国内最大人口の州)・ミュンスターを舞台にした、実にドイツらしいスプリンター向けのワンデーレース。過去にはグライペル、キッテル、デゲンコルブといった歴代のジャーマントップスプリンターたちが勝利を収めている。

今年、最も期待を集めていたのは、今一番勢いに乗っている若手ジャーマンスプリンター、パスカル・アッカーマンであっただろう。その期待に応えるべく、ボーラ・ハンスグローエも全力の集団牽引を見せ、完全レース支配を実現していた。今大会、最強のチームは間違いなくボーラだった。

しかし、ボーラにはアッカーマンだけでなく、昨年優勝者のサム・ベネットもいた。2人の連携は十分ではなかったのだろうか・・・ゴール前、先頭にこの2人が「横並び」になってしまった。

その際に左手から勢いよく飛び出してきたワルシャイドが先頭に抜け出て、デゲンコルブらに前を譲ることなくゴールまで駆け抜けた。

ワルシャイドもまた、勢いのある若手ジャーマンスプリンターである。今年はツール・ド・ヨークシャー第3ステージでの勝利の他、ツアー・オブ・カリフォルニアの最終ステージでも、フェルナンド・ガビリアとのギリギリの勝負を演出してみせた。

総合寄りになりすぎた弊害か、最近勝利数を稼げていないサンウェブにとっては、来年も貴重な稼ぎ頭になってくれそうな存在だ。

 

 

ジロ・デッレミリア(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア

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イル・ロンバルディアへと向かうイタリア秋のクラシックレース群の1つ。

エミリア1周」の名の通り、エミリア=ロマーニャ州を舞台にし、州都ボローニャへとゴールする。

このレースは、ボローニャ近郊サンルーカに至る激坂が名物となっている。登坂距離2.1km、平均勾配10%超、そして最大勾配18%~20%である。この激坂を4回駆け上り、最終周回の頂上をゴールとする、クライマー/パンチャー向けのレースである。

昨年優勝しているバーレーンメリダは、ディフェンディングチャンピオンヴィスコンティや今年引退を決めているペリツォッティ、ポッツォヴィーヴォ、ニバリなど、そのままグランツールでも戦えるような豪華な面子を揃え、優勝候補に挙げられていた。今年絶好調のマチェイ・モホリッチは4度にわたるアタックを繰り出すなど積極的な動きを見せていたが、そこに続く有力な攻撃ができないまま、今年のバーレーンは沈んでしまった。

そんな中、サンルーカの2回目の登りから単独で抜け出したのがデマルキだった。これを捕まえようと動いたモホリッチは届かず、最終周回では追走グループに40秒以上ものタイム差をつけることに成功した。

追走集団で積極的な動きを見せたのは、ブエルタのステージ優勝や世界選手権ロード2位と覚醒中のマイケル・ウッズ。この秋のクラシックでも優勝候補に挙げられる彼が終盤でデマルキへの追撃に向かおうとするが、これをチームメートのディラン・トゥーンスがしっかりと抑え、身動きを取れなくする。

すると集団後方より、ウッズのチームメートのリゴベルト・ウランがアタック。トゥーンスもさすがにこの動きには反応できず、ウランは単独でデマルキ追撃に向かうことができた。

 

が、遅すぎた。すでにデマルキは、大差をつけてゴールに飛び込む瞬間であった。

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今年のブエルタ・ア・エスパーニャ第11ステージに続く、逃げ切り勝利。今年の世界選手権個人TT4位の独走力の高さが光った。

BMCは元々、こういう渋いルーラーの強さが魅力的なチームでもあった。来年はリッチー・ポートも去り、ファンアフェルマートを中心としたクラシック/ワンデー向きのチームになると思うが、このデマルキのようなアタッカーの存在はぴったりと言えよう。

 

そして、トゥーンスの働きこそが今大会のMVAと言えるだろう。自らも十分に勝てる脚質を持ちながら、来年はチームを去る身でありながら、しっかりと仲間の勝利に最大限の貢献をしてみせた。

ウッズとウランのチームEFのコンビネーションも素晴らしく、実にロードレースの魅力が詰まったレースであったと言える。

 

 

グラン・プレミオ・ブルーノ・ベゲッリ(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア

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毎年ジロ・デッレミリアと共に開催され、同じエミリア・ロマーニャ州を舞台とする。モンテヴェーリオを発着する。

前日のジロ・デッレミリアが、サンルーカの激坂を利用したクライマー/パンチャー向けのレースであるのに対し、こちらのGPブルーノ・ベゲッリは、登坂距離1.6km、平均勾配7%の「ザッポリーノの登り」を含む周回コースを10周する。登りは厳しすぎるほどではなく、最後の登りからゴールまでも距離があるため、登りで飛び出したクライマー/パンチャーと、これを乗り越えるだけの力のあるスプリンターとのせめぎ合いが特徴となっている。過去の優勝者もクライマーから登れるスプリンターまで幅広い。

今年は最後の登りでマッテオ・トレンティンがアタック。これをモレマのチームメートであるトム・スクウィンシュが抑え込む。スクウィンシュは一時、単独で抜け出す場面も作り、これを追いかけるクラウスヴァイクなどの足を削る役目を果たした。

その後集団は再び一つになり、その中にはトレンティン、コルブレッリといった強力なスプリンターの姿も。この中で勝負しても勝ち目はない――そう悟ったモレマは、ラスト2.5kmから思い切って抜け出した。

そしてこれが成功。見事、昨年のLLサンチェスに続く、クライマーによる単独逃げ切り勝利を果たした。

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今年のブエルタ・ア・エスパーニャでは常に積極的な動きを見せるも、ステージ2位の連続と、山岳賞2位という悔しい結果に。敢闘賞は得られたものの、それで満足するような男ではなかった。

その中で獲得したこの勝利。そして、この勝利の陰には、チームメートの助けがあったことは間違いない。

 

 

パリ~トゥール(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:フランス

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19世紀から続く伝統のクラシック。昨年まではほとんど起伏のない純粋なスプリンター向けレイアウトであったが、シーズン終盤ということで有力選手も疲労が溜まっていたり、逆になかなか活躍のできないままシーズンを終えるのをよしとしない選手/チームが積極的な動きを見せたりで、小集団の抜け出しによる決着のパターンも多い。追い風基調になりやすいことも相まって、平均時速が速くなりがちなのも特徴である。

今年はコースに大きな変更が加えられた。春のクラシックさながらの未舗装路区間だ。このレースで引退となるクラシック・スペシャリストのシルヴァン・シャヴァネルも積極的な逃げを試みて自らチャンスを掴みにかかったが、ハイ・ペースを維持するメイン集団にあえなく捕まえられてしまう。

終盤の登りでテルプストラ、ジルベールの黄金コンビやセップ・ファンマルケなどを含む強力な6名の逃げが形成されるが、その後の未舗装路区間ジルベールがパンクの憂き目に遭う。オリバー・ナーゼン率いるAG2Rがメイン集団を全力牽引しこの逃げを捕まえにかかるが、その直前にクラーウアナスンが単独で抜け出した。

 

これに喰らいついたのがテルプストラ。そして、昨年のU23ロード世界王者のコヌフワだった。

この3名の抜け出しが決定的に。やはり、春のクラシックさながらの展開である。

 

3名の中でコヌフワが先頭交代を徹底的に拒否。テルプストラを相手取って真っ向勝負するわけにはいかないし、後方からはエースのナーゼンが迫ってきているのである。彼に前を牽く理由はなかった。

この2人の牽制の隙を狙って攻撃を仕掛けたのがクラーウアナスンであった。そしてこの攻撃に対しても、テルプストラとコヌフワは互いを牽制するばかりであった。あとはもう、クラーウアナスンの独壇場。昨年はテルプストラとトレンティンにしてやられた彼が、1年越しのリベンジを果たした。

クラーウアナスンはこんな感じの勝利の多いタイプの選手だ。今年はツール・ド・スイスでも山岳クイーンステージで逃げ切り勝利。ほか、オマーンフィヨルドのパンチャー向けステージで勝ったりもしていて、ルーラーなのかパンチャーなのかよくわからない脚質である。似たようなタイプの選手として、ジャンニ・モズコンやイヴァン・ガルシアコルティナなど若手の選手がいて、最近は密かな潮流と言えるのかもしれない。

 

なお、コヌフワの動きに終始苛立ちを見せていたテルプストラだが、彼自身も2017年のヘント~ウェヴェルヘムではサガンに対して同じような走りを見せていた。

とくに今回は力の差があったのだから、もっと積極的に勝負を仕掛けても良かったのではないかと、ルーベ・フランドル王者に対しては思うのであった。

 

 

トレ・ヴァッレ・ヴァレジーネ(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア

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1919年から続く伝統的なイタリアの秋のクラシックの1つ。北イタリア・ロンバルディア州を舞台に、「3つの渓谷」のその名が示す通りの山岳レースとなっている。同じ地域を舞台とする今年最後のモニュメント「イル・ロンバルディア」へと至る前哨戦レースの1つでもある。

同じ前哨戦レースであるジロ・デッレミリアでも好調だったチームEFコンビのリゴベルト・ウランとマイケル・ウッズは今回も積極的な動きを見せた。その他、ピノやケニャック(ケノー)、ケルデルマン、フランクなど強力なクライマーたちを含んだ7名の小集団がヴァレーゼの街のゴールへと飛び込んでくる。

この中で、最もスプリント力の高いクライマーはピノのはずだった。そして彼は確かに強かった。しかし、それ以上にスクインシュの加速の方が上手であった。何しろ彼は、クライマーというよりはパンチャーといった方がよい選手だから・・・彼がこの局面に残っていた時点で、勝利の可能性は確かに最も高かったはずだ。

GPブルーノ・ベゲッリではチームメートのモレマの勝利を助けた彼が、今度は自ら栄光を掴み取った。

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ピノは昨年に続く悔しいスプリント敗北による2位。

しかし、ロンバルディアに向けて今年も調子を上げていることがよく伝わってくる。

 

チームEFも相変わらず調子が良いが、スプリントで勝負するならばウッズではなく、実績のあるウランの方が良かったかもしれないね・・・。

 

 

ツアー・オブ・ターキー(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:トルコ

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昨年からワールドツアークラスに組み込まれた、トルコ伝統のステージレース。歴史と近代とが混ざり合った独特のレースシーンを魅せてくれる。

全体的にはフラットで、スプリンター向きのコースが大半。クイーンステージもそこまで厳しくはなく、昨年もどちらかというとパンチャーのウリッシが総合優勝を飾っている。ツアー・ダウンアンダーアブダビ・ツアーに近いタイプのレースと言える。

 

昨年同時期のツアー・オブ・グアンジーで4勝を飾っていたフェルナンド・ガビリアに期待が集まっていたが、初日ステージで落車してリタイア。代わりに最強アシストのリケーゼが初日勝利を飾る。今年のツール・ド・フランスでは天才的なアシスト力を見せつけていたものの、ガビリアが途中リタイアした後にエースを任せられた途端に結果が出せなくなった。そのときの借りを返すかのような、鮮烈な勝利であった。

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ほかにもチームメートのホッジなどが勝利するものの、やはり最強はこの男だった。

昨年のターキーでも4勝しているサム・ベネット

彼が今年も3勝を飾った。

最終日イスタンブルでの、ブルーモスク前の石畳坂では、あまりにも圧倒的なスプリント力によってツキイチについていた選手も引き千切られ、ほぼ独走勝利と言ってもよい勝ち方を見せつけた。もはや、敵なし。

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今年はジロでも3勝しており、確実に進化している様を見せつけている。

 

総合争いにおける最重要ステージとなったのが第4ステージ。昨年総合優勝者のディエゴ・ウリッシが今年も必勝パターンを狙って加速する。が、これを追い抜いたのが、こちらも今年絶好調のルツェンコ。独走が得意なルーラータイプだったはずの彼が、今年は山登りの強さを見せつけている。

しかし、それでも総合優勝争いは混沌としていた。ルツェンコ、ハース、ウリッシの上位3名が4秒以内に収まり、スプリント力のあるエドゥアルド・プラデスがルツェンコから6秒差でこれを追うという展開。

どうなるかわからないまま最終日を迎え、この日は上述した通りベネットの「独走勝利」で幕を閉じるが、これを追う集団の先頭を獲ったのがプラデスだった。

ボーナスタイム6秒を獲得したプラデスはルツェンコと同タイムの首位に並ぶ。あとは、これまでのステージの順位合計の差によって、タイム差なしでの逆転総合優勝を果たしたのである。まさに劇的な展開。バランスの取れたオールラウンダー的な脚質が、この結末を呼び込んだのである。

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プラデスはかつて1年間だけマトリックス・パワータグに所属したこともある選手で、当時は南魚沼ステージでも優勝している。

その後はカハルラルに移籍し、今年に入って現チームに。さらに来年は、モビスター・チームへの移籍が決まった。

かつて日本のチームでも走ったことのある外国人選手が、世界のトップチームで走る姿が見られるというのは、なかなか感慨深いものがある。

 

 

ミラノ~トリノ(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア

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最強はおそらく、ミゲルアンヘル・ロペスだった。しかし、前代未聞の出来事・・・ピノを全力で牽引していたアシストのゴデュが、仕事を終えてラインを変えたとき、後ろからちょうどアタックしようとしていたロペスと接触。ロペスは転倒し、バルベルデも足止めを食らった瞬間にピノがアタックしてそのまま逃げ切り勝利となった。

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もちろんゴデュはわざとではない。むしろ、アタックするときに後ろを見るというロペスの動きの方が問題という意見も多かった。

しかしロペスもそこからすぐにリカバリーし、バルベルデを突き放し、先頭のピノにあとわずかというところまで迫ったのは凄い。やはり最強はロペスだった。しかし天はピノに味方した。

ということで、晴れてワンデーレースにおける初勝利となったにも関わらず、ファンとしてもなんだかイマイチ実感に欠ける勝利となってしまった。しかし、その思いは次なる大きな勝利によって華麗に吹き飛ぶわけで・・・

 

なお、ゴデュの牽引力の凄まじさにも十分注目すべきレースであった。やはりラヴニール総合優勝は伊達ではない。今後の彼の成長にも大きな期待だ!

 

 

グラン・ピエモンテ(1.HC)

ヨーロッパツアー HCクラス 開催国:イタリア

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秋のクラシック3連戦の2日目。かつてはジロ・デル・ピエモンテと呼ばれた。

セミ・クラシックに位置付けられるが歴史は古く、今年で112年目を迎える。ただし何度か中断を挟んでおり、近年でも2013年・2014年は経済的な理由で中止に追い込まれ、昨年はイタリア選手権の一部となり秋の開催はなくなっていた。コースは毎年一定ではないが、2016年はスプリンター向きのコースレイアウトとなりニッツォーロが優勝。2017年は山岳レイアウトでアルが制している。

今年も平坦の多いスプリンター向きコースだったが、大雨のコンディションで展開が混沌とし、最後はそこまで大きくない集団の中、雨の日のスプリントに強いコルブレッリが今年4勝目を掴んだ。

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コルブレッリはゴールまで残り350mという距離からロングスプリントを開始。さすがにタレるかと思ったが、後ろについていた選手が千切られたことで追随できるものがいなくなり、そのまま力で押し切った。

本当にこの男は、雨の中でのパワースプリントへの信頼感が厚い。

 

 

イル・ロンバルディア(1.WT)

ワールドツアークラス 開催国:イタリア

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「モニュメント」最終戦にして、秋のイタリア・クラシックのエピローグを飾る大レース。例年、スタート・ゴール地点を入れ替えて開催されていたが、今年は昨年同様のコモ~ベルガモのコースとなった。実際、このコースの方が、マドンナ・デル・ギザッロの鐘の音を放送中に聞けて、また強烈な「ソルマーノの壁」での勝負を堪能できるため、魅力的である。終盤近くには今年新しい登りを加えてはいるものの、昨年同様「チヴィリオ」が最後の勝負所となる点は変わらない。

今年のロンバルディアも「ソルマーノの壁」で動いた。最大勾配27%を誇る強烈なこの登りで勝負を仕掛けたのはチーム・ロットNLユンボ。最終発射台ロベルト・ヘーシンクによって放たれたプリモシュ・ログリッチェが単独で激坂を駆け上がるが、そこに昨年優勝者ニバリと昨年は彼についていきながらも下りで突き放されたピノとが反応する。

登りでログリッチェを追い抜いたニバリとピノの2人が先行し、そのあとの下りでログリッチェ、そして復帰直後のエガンアルリー・ベルナル(チーム・スカイ)が合流。この4人で最後の勝負所「チヴィリオ」に到達する。

チヴィリオでは昨年同様に下りで勝負したくはないピノが猛烈なプッシュを連発。ベルナルとログリッチェは早々に脱落し、ついにはニバリまでもがこの攻撃に耐え兼ね、ピノは20秒のリードをもってチヴィリオ山頂に辿り着く。

そこからは、まるで覚醒したかのような走りだった。苦手なはずの下りでニバリとのタイム差をむしろ開きにかかり、まるで2012年、初めて彼がツール・ド・フランスで勝ったときのような鮮烈な独走によって初のモニュメント制覇を果たした。フランス人としても、ローラン・ジャラベール以来21年ぶりとなるロンバルディア制覇。2014年にツール・ド・フランス総合3位に登りつめた後、思うように結果を出せないシーズンが続いた中で、今年はブエルタでの2勝とこのモニュメント制覇により、大成功といえる幕引きを図ることができた。

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ツアー・オブ・グアンシー(2.WT)

ワールドツアークラス 開催国:中国

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ターキー同様に昨年から新たにワールドツアーカレンダー入りを果たした中国のレース。ターキーが元々伝統的に開催されていたレースだったのに対し、こちらは昨年創設されたばかりの新興レース。しかし、経済発展著しい中国の国力を活かし、各チームの有力選手を集めた活気あるレースとなった。

ターキー同様にスプリンターが活躍するステージが多いのが特徴で、今シーズン台頭してきた各種若手のスプリンターがそれぞれ勝利を分けあう、今年を象徴する勝者ラインナップとなった。その中で2勝したヤコブセンは、ホッジと並んで来年のクイックステップにおける目玉スプリンターとなるか。具体的には、ヴィヴィアーニがツールに集中することで枠が空くであろう、ジロ・デ・イタリアにおけるエースの座はどちらの手に・・・!?

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クイーンステージの第4ステージを制し、そのまま総合優勝ももぎ取ったのはスカイの誇る天才児であり、かつスカイの誇れない?問題児たるモズコン。今年は意外にもHCクラス以上のレースでは初勝利。謹慎期間とかも(また)あったからね・・・。来年はさらなる活躍を期待したいところだが、色々落ち着かないと来年以降の居場所がなくなりそうなので気を付けてほしいマジで。

才能は間違いないだけに本当いろいろ惜しいよなぁ。

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ジャパンカップサイクルロードレース(1.HC)

アジアツアー HCクラス 開催国:日本

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宇都宮森林公園を舞台に、昨年と打って変わって快晴のもとで行われた今年のジャパンカップサイクルロードレース

序盤から今年現役引退のオスカル・プジョル(スペイン、チーム右京)、今年のツアー・オブ・ジャパン総合優勝者のマルコス・ガルシア(スペイン、キナンサイクリングチーム)、そして才能豊かな若手クーン・ボウマン(オランダ、チーム・ロットNLユンボ)の3名が抜け出し、周回を重ねる。最初の山岳賞をガルシアが、そして2回目以降の山岳賞をボウマンが獲得した。

メイン集団は宇都宮ブリッツェンが終始コントロール。その後ろで、前日のクリテリウム優勝者のジョン・デゲンコルブ率いるトレック・セガフレードが不気味に控えていた。

展開が大きく動いたのは11周回目(残り4周回)の古賀志林道の登り。チーム・ロットNLユンボのエース、ロベルト・ヘーシンク(オランダ)が一気にペースアップを図り、集団は一気に壊滅。先頭集団は16名に絞り込まれ、その中にロットNLは3名(ボウマン、ヘーシンク、トルホーク)を入り込ませる圧倒的優位な状態に立った。

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ずっと逃げていたボウマンはさすがに千切られるが、それでも昨年4位のトルホークとヘーシンクの組み合わせは強烈。

12周回目のトルホークのアタックをきっかけに形成された6名の集団の中にもこの2名は入り込んでおり、このままならばロットNLの勝利は固いと感じられた。

しかし、終盤にヘーシンクがパンクに見舞われて脱落。そして、スプリント力に勝る2016年大会3位のパワーが想定以上に「登れる」ことが、ロットNLにとっては大きな誤算となった。

最終周回の古賀志の登りでアタックしたパワーにトルホークがなんとか喰らいつくが、そのままゴールに至ってはスプリントで負けてしまうことは必至だった。下りと平坦区間を終え、最後のゴールまでの緩やかな登りで幾度となくトルホークは攻撃を繰り出すが、その全てをパワーは抑え込む。

ついにゴール前ストレートに到達した2名だったが、力の差は歴然だった。余裕をもって先行し、前を決して譲らなかったパワーに対し、トルホークも最後まで諦めることなくペダルを踏み続けた。

パワーはガッツポーズなし。それだけ、力を使いきる厳しいレースだったのだろう。

トルホークは昨年4位に続く今年も悔しい2位。しかしその才能の高さをしっかりと見せつけられる結果となった。

 

 

ツアー・オブ・ハイナン(2.HC)

アジアツアー HCクラス 開催国:中国

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中国南部、「中国のハワイ」とも称される熱帯の海南(ハイナン)省を舞台にして行われるステージレース。2006年に創設され、今年で13回目を迎える。

過去にフランシスコ・ベントソやサッシャ・モドロが総合優勝を果たしているように、スプリンター向きのコースが多く、彼らがチャンスを掴むことも多い。ただし今年は第8ステージが山頂フィニッシュとなっており、ここで優勝したマズナーダが総合優勝を果たした。

昨年のツアー・オブ・ターキーのクイーンステージでも区間4位に入り総合でも3位表彰台に登った若きイタリアの才能の1人。今年はジロ・デ・イタリアにも出場し、山岳ステージで連日の逃げに果敢に乗って総合でも26位。これは、アンドローニのメンバーの中での最高順位であった。

来年もまだ26歳。数年以内に更なる成績を出す可能性が十分にある、今注目の選手の1人である。

 

あとはもちろん、第6ステージ優勝、マズナーダが勝利した第8ステージで5秒遅れの2位、そして総合でも2秒遅れの2位を記録したジノ・マーダーにも注目。彼は今年のツール・ド・ラヴニールの最終ステージでも優勝し総合3位に入った男である。

来年はディメンションデータで走ることも決まっている。久々のスイス人総合系ライダーの可能性もあり、期待が高まるところである。

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