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2018年シーズンを振り返る③ UCIワールドランキング個人10位~1位全レビュー

前回の20位~11位に続き、UCIワールドランキングの10位~1位を紹介していく。

suzutamaki.hatenablog.com

 

UCIワールドランキング」と「UCIワールドツアーランキング」の違いや、UCIポイントの考え方など細かなルールも上記リンク先を確認のこと。

 

昨年の1位はパリ~ルーベを制したグレッグ・ヴァンアーヴェルマートが獲得。

果たして今年の1位は・・・?

 

 

第10位(昨年9位)

マイケル・マシューズ(オーストラリア、28歳)

チーム・サンウェブ所属、スプリンター

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今年前半はあまり目立たない印象だったが、なんでもメカニックから用意されたサドルの調整にミスがあったとか?そんな噂が耳に入っている。

いずれにせよ後半は一気に調子を取り戻し、ケベックモンレアルを制覇。カナダ2連戦のダブル制覇は同じオーストラリア人の大先輩、サイモン・ゲランスが2014年に達成して以来であり、大会史上2人目である。オージーパンチャー強い。

また、アムステル風味のコースやロンド風味のコースが用意されたビンクバンクツアーでも好成績を収め、来期はスプリントだけでもなく、そういったクラシックでの成果も期待したい。

もちろん、ヨークシャー世界選手権も彼の得意とするレイアウトとなりそうだ。

 

 

第9位(昨年32位)

ロマン・バルデ(フランス、28歳)

AG2Rラモンディアル所属、クライマー

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ストラーデ・ビアンケでまさかの2位。そして、リエージュ~バストーニュ~リエージュでも3位。世界選手権ロードでの結果も踏まえ、とにかくワンデーレースに対する強さを一気に伸ばした今年のバルデ。おかげでUCIポイントも大量に獲得し、一気にランクアップ。来年もクラシカ・サンセバスティアンイル・ロンバルディアなどに期待したくなる。

とはいえ、やはり彼にはツールで活躍してほしいという思いも強い。来年はクライマー向け・・・すなわち彼向けといえるコースが用意されている(まあ、これは毎年言われているようなものだけど)。

今年は頼れるチームメートたちに次々と不幸が襲いかかりどうしようもなくなったが、年々、バルデを支える総合系チームとしてのまとまりも強くなりつつあるので、やはり期待は持ち続けていきたい。

 

 

第8位(昨年5位)

トム・デュムラン(オランダ、28歳)

チーム・サンウェブ所属、オールラウンダー

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今年、「2位」続き。

ただし、ジロ・デ・イタリアツール・ド・フランス、そして世界選手権個人タイムトライアルと、他に達成できるものなどいないであろう高いレベルでの「2位」続きである。

手応えは感じたに違いない。

来年のジロは個人TTも多く、彼にとっても有利と言えるだろうが、しかしもう、ツールに焦点を絞るべき時だ。

 

これまで多くのライバルたちがフルームに挑んできた。キンタナ、バルデ、アル・・・いずれも、輝ける才能を見せつけながらも、やがてどこかで失速し、フルームに到達することができないまま今も苦しんでいる。

しかしこの男だけは、そういった不安が少ない。2015年にブエルタでの挫折を味わい、翌年はマイペースに経験を重ね、2017年にはきっちりとジロを制覇。そして今年、いきなりのツール参戦ではなくまずはじっくりジロから様子を窺い、そしてこの成績を叩き出した。

焦ることなく着実に成果を出していった彼は、これまでの挑戦者のようにフルームに到達する前に燃え尽きるというようなことがない。

来年は、フルームが一時代を築いた「2010年代」最後の年である。フルームもまたその年に「5勝クラブ」入りを確実なものにしたいところだろう。

が、その年にこの男が新たな時代をこじ開けるというのもまた、悪くない展開だ。

楽しみな年になりそうだ。

 

 

第7位(昨年1位)

グレッグ・ヴァンアーヴェルマート(ベルギー、33歳)

BMCレーシングチーム所属、パンチャー

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昨年はパリ~ルーベを制した彼も、今年のクラシックは悔しい結果に終わったと言わざるを得ない。とはいえ、大きな成績というのは毎年出せるものではない。

むしろ気にしたいのは来年の新チーム体勢。CCCはどこまで、このヴァンアーヴェルマートを助けられる体制を用意することができるのか。

また、今年の彼の走りを象徴するのは2016年に続くマイヨ・ジョーヌの獲得とその維持であった。アルプス山脈に入ってからも積極的な逃げを見せ、1日はしっかりと保持することができたのは僥倖。

来年はステージレーサーが乏しくなる可能性もある新チームで、ビンクバンクツアーやツール・ド・ポローニュのようなクラシックスペシャリスト/パンチャー向けの小さなステージレースでの総合上位なんかも、十分に狙っていけるんじゃないだろうか。

 

 

第6位(昨年62位)

ゲラント・トーマス(イギリス、32歳)

チーム・スカイ所属、オールラウンダー

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やはりツールを総合優勝するとそれだけでポイントは跳ね上がる。しかも今年はドーフィネ総合優勝もついてきているから、一気にこの順位に。

来年はジロで勝負か? デュムランもさすがにツール1本に絞るだろうし、TTが長めというのはトーマスにとって大きなアドバンテージとなりそうだ。障害になるのは昨年まさに彼が犠牲になった「ジロの呪い」と、そして元チームメートのミケル・ランダの存在か。

だが、いずれにせよ、良い意味で彼には大きな期待をかけてはいない。今年、彼は全力を尽くし、見事なるツール総合優勝を手に入れた。

ここから先に関してはボーナスタイムのようなものだろう。気負わず、自由に振る舞い、そして彼を表現する走りを見せてほしい。

 

 

第5位(昨年29位)

ジュリアン・アラフィリップ(フランス、26歳)

クイックステップ・フロアーズ所属、オールラウンダー

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文句なしの評価というべきか。

今年大ブレイクしたアラフィリップが、堂々の世界ランキング5位。今年最も活躍した5人のうちの1人というわけで、この評価に疑問を挟めるものはいないだろう。

あと彼が成し遂げることを期待されているのはモニュメントの制覇か。ミラノ~サンレモは昨年3位と惜しいところまではいった。ルーベやロンドは難しいだろうから、今年4位のリエージュ~バストーニュ~リエージュあたりに期待したいところ。

もちろん、更なる上を目指すこともできるだろう。すなわち、世界選手権。2年後はまた(今年以上に)厳しい山岳コースとなり、オリンピックも同様のため、世界の頂点を獲るのであれば、来年のヨークシャーが最大のチャンスである。

 

 

第4位(昨年3位)

ペテル・サガンスロバキア、28歳)

ボーラ・ハンスグローエ所属、スプリンター

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ランキング1位の一昨年、3位の昨年から少しずつ順位を下げているが気にすることはない。何しろ今年は、念願のパリ~ルーベを制したのだから! その時の彼の表情は、いつもどこか余裕のある彼にしては珍しく、感情が溢れ出ているような印象を覚えた。

これでロンドに続きモニュメント2つ目。次に適性のあるモニュメントはミラノ~サンレモではあるが、ピュアスプリントで挑むにはやや厳しく、昨年のような奇襲も、今年のニバリもあったことだし、さすがにマークが厳しくなって難しいのではないかと予想する。

それよりは、2年ぶり4度目の世界選手権制覇という可能性の方が高そうだ。もちろん、4回の世界選手権制覇というのは、エディ・メルクスですら成し遂げていない前人未到の偉業である。

常にこちらの想像を超える結果を出し続けてくれるサガン。来年はどんなふうに、僕たちを楽しませてくれるのだろうか。

 

 

第3位(昨年16位)

エリア・ヴィヴィアーニ(イタリア、29歳)

クイックステップ・フロアーズ所属、スプリンター

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やっぱりこの男は今年、この位置にまで登りつめていた。今年「最強」の男であるのは間違いない。

しかし、ピュアスプリンターにとっては圧倒的に不利な現行のUCIランキング制度においてこの位置を獲得しているのは凄い。実際、飛び抜けて大きな獲得ポイントがあるわけではなく、数で勝負しているのだ。ジロとブエルタのステージ優勝とポイント賞だけで、800ポイント分を稼いでいる。逆に言えば、その成績でそれだけにしかならないのだが・・・。

来年はガビリアの移籍も決まり、ついにツールに挑戦か。今年の勢いは凄かったが、まだまだ、ガビリアやフルーネヴェーヘン、サガンと真っ向勝負で勝って手に入れた成績ではない。

彼が「最強」であることを真に示すには、ツールで勝たねばなるまい。

 

 

 

 

第2位(昨年48位)

サイモン・イェーツ(イギリス、26歳)

ミッチェルトン・スコット所属、クライマー

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あれ? 1位じゃなかったの?

と思った人は、まだ「ワールドランキング」と「ワールドツアーランキング」の違いを正確には理解していないのかもしれない。

ツイッターなどで騒がれた「サイモン・イェーツ1位!」は、ワールドツアーランキングの話である。こちらのワールドランキングはHCクラス以下のレースや世界選手権の成績も反映されている。

それでも、やはりこの男がこの位置にまで登りつめたのは本当に凄い。何よりも、ジロで悔しい思いをしたリベンジを、同じ年で返してしまうなんて。ジロでの大覚醒よりも、その事実の方が想像を超えていた。

来年はまずはジロでの本当のリベンジを達成するつもりだろうか。おそらくは、デュムランと並ぶ打倒フルームの最有力候補の1人と思われているだろうが、焦る必要はまったくない。まずはじっくりとジロを料理し、その勢いで様子窺いにツールに出るか、もしくはブエルタでダブルツール達成を狙うか。

もちろん、かつての偉大な総合系ライダーがそうであったように(それこそチームメートのチャベスがそうであったように)突然の不調からの急落もありうる。ある意味、来年こそが、彼の、そしてミッチェルトン・スコットというチームの底力を測るうえで、非常に重要なシーズンとなるのかもしれない。

 

 

第1位(昨年7位)

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、38歳)

モビスター・チーム所属、オールラウンダー

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と、いうわけで、今年の世界ランキング1位は世界チャンピオン、バルベルデの手に。

これで正真正銘、彼は今年の「世界最強」となったわけだ。ワールドツアーランキング1位のサイモン・イェーツを1000ポイントも引き離しての1位なのだから圧倒的である。

これでいて、ワールドツアーランキングではバルベルデは3位なのである。ここに、サイモンやトーマスやフルームや昨年までのバルデのようなグランツール(およびその調整のためのステージレース)に重点を置くタイプの選手たちとバルベルデとの大きな違いを感じとることができる。

すなわち、バルベルデはとにかくたくさんのレースに出る。グランツールだけでなく、ステージレースも、ワンデーレースも、クラシックも、とにかくシーズン全体を通してありとあらゆるレースに出場し、そしてその頂点を狙う。

結果としてグランツールの表彰台にはなかなか登れない。しかし、誰もが彼の強さを理解し、応援し、彼が最強であることに疑問を挟むことがない。

彼はある意味で、実に私たちファンを喜ばせてくれる、楽しませてくれる走りをする男、ということができるのだ。

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そんな彼はもう38歳。

とっくに引退のことを考えても良さそうな年なのに、来年もまた、世界ランキング1位を目指せるような走りをしてくれるだろうと、不思議な安心感をもって期待することができる。

 

アレハンドロ・バルベルデ、彼が実に偉大なるレーサーであったことを示した2019年であった。

また来年も、楽しみにしているよ。

 

 

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