12月26日、ベルギー・リンブルフ州ヒュースデン・ゾルダー近郊の森に設営された「ゾルダー・サーキット」を舞台に、激戦続くUCIワールドカップの第7戦が開催された。
3日前に開催された第6戦と比較してドライなコンディションで行われ、レース全体はハイ・ペースで推移。その中で多発したミスが総合優勝を巡る動きに大きな影響を及ぼすこととなった。
戦前の状況
UCIワールドカップ第6戦までの総合順位は以下の通り。
総合首位トーン・アールツと、同2位ワウト・ヴァンアールトとのポイント差は17ポイント。
UCIワールドカップはこの第7戦を含めあと3回。
最近のヴァンアールトはチーム・ユンボ・ヴィスマとの正式契約が決まったことも影響してかかつての調子を取り戻しており、マチュ―・ファンデルポールに次いでの2位を獲り続ける可能性は高い。
そこでトーン・アールツがしっかりと3位を獲り続けることができれば、1回のレースで開くポイント差は5ポイントに留めることができる。
つまり、残り3回のUCIワールドカップで「1位ファンデルポール、2位ヴァンアールト、3位アールツ」を続けることができれば、ギリギリの2ポイント差でトーン・アールツのUCIワールドカップ総合優勝が決まる。
・・・と、思われていたのだが。
昨日のUCI CX W杯第6戦ナミュール後の記者会見でマチューが同シリーズ第8戦ポンシャトーの欠場を発表(スペインで世界選用ミニキャンプのため)
— グライド (@R3Glide) December 24, 2018
それを横で聞いてショックを受けたW杯ポイントリーダーのアールツは「ここ数週間自分がしてた算段はこれでゴミ箱行きだね…」と発言https://t.co/GKzwq10Osl
マチュ―・ファンデルポールの第8戦欠場のお知らせ。
これでもし、この第8戦をヴァンアールトが獲るようなことになれば(そしてその可能性は非常に高い)、1位と2位のポイント差は10ポイントのため、 トーン・アールツ逃げ切り総合優勝の可能性が一気に萎んでしまう。
・・・こうなればもはや、トーン・アールツにとっては、一度はヴァンアールトを負かさなければならない。
そんな覚悟で臨んだはずの、この第7戦であった。
レース状況
スタートと共に先頭を取ったのはクィンティン・ヘルマンス(テレネット・フィデア)。その背中をヴァンアールトが追い、マチュ―・ファンデルポールは珍しく、先頭から8番手ほどの位置につけていた。
ワールドカップ総合首位を表す白いジャージを着るトーン・アールツは、6番手の位置。
ヘルマンスと共に先頭で抜け出したヴァンアールトだったが、1周目の途中でいきなりパンクに見舞われピットイン。アールツにとっては大きなチャンスとなった。
途中、マイケル・ファントーレンハウト(マーラックス・ビンゴール)が抜け出す場面があったものの、1周目のラストはアールツが先頭で通過。
ヴァンアールトはいまだ後続の集団に埋もれており、その差は14秒にまで開いていた。
しかし、ここからのヴァンアールトの追い上げが凄まじかった。
後続集団の先頭牽き倒し、2周目の終わりではそのタイム差は9秒にまで短縮。
3周目の途中には、先頭から零れ落ちたヘルマンスやヨリス・ニューウィンハイス(サンウェブ)らに追い付き、この集団の先頭にも立ってさらなるペースアップを仕掛けた。
そして、3周目終盤の激坂ポイントで、ついにファンデルポールが先頭に立つ。
これを全力で追走したアールツは、このポイントで失速。登り切れず、足をついてしまった。3番手を走っていたファントーレンハウトもこれに引っ掛かって運命を共にしてしまった。
(動画の22分50秒~辺り)
ここからファンデルポールのいつもの独走がスタート。
3周目終了時点で先頭ファンデルポールと2位・3位ファントーレンハウト&アールツのタイム差は8秒。
そして、アールツとヴァンアールトとのタイム差は7秒にまで縮まった。
そして4周目の同じ激坂区間で再び、アールツが失速。
ついに、ヴァンアールトに追い付かれてしまう。
(動画の29分50秒~辺り)
大きなチャンスを掴んでいたアールツだが、自らのミスにより、あとはもう、とにかくヴァンアールトに遅れないように、「その背後に入り込んでの3位」を死守せざるをえなくなった。
なお、ファンデルポールに対する単独追走となり、表彰台を掴むこちらも大きなチャンスとなったファントーレンハウトだったが、下りに差し掛かる直前の鋭角カーブで転倒(32分45秒辺り)。
このときはすぐ起き上がるが、その際に衝撃が強すぎたのか、バイクの面を引きずってしまったのが原因となったのか、5週目のフィニッシュ前にチェーンが外れ、自ら直そうとするも叶わず、仕方なくバイクを担いでピットまで走るという事態に陥った。
ピットまでもかなり遠く、これにより、ファントーレンハウトはあまりにも悔しい形での戦線離脱となってしまった。
6周目後半にはニューウィンハイスが先頭に立つ。
第6戦でアールツと激戦を繰り広げ、4位にまで登りつめた、22歳のオランダ人。
さらに、やはりこの6周目の激坂ポイントでも、再びアールツがミスをしでかし、ヴァンアールトとのタイム差が開いてしまった。
ここぞとばかりにヴァンアールトがペースを上げ、ニューウィンハイスを突き放す。
アールツはなんとしてでもニューウィンハイスに追い付き、3位を死守したいところ。
しかし、ニューウィンハイスの走りは粘り強かった。
7周目終了時点でニューウィンハイスとアールツのタイム差は12秒にまで開いてしまう。
結局、この位置関係は最後まで変ることがなかった。
UCIワールドカップ第7戦、「ヒュースデン・ゾルダー」。
勝者はいつも通りのマチュ―・ファンデルポール。
復調しつつある世界王者ワウト・ヴァンアールトが2位。
そして、2年前のU23世界王者であり、かつ現在、最も勢いのある男、ヨリス・ニューウィンハイスが3位獲得。
見事、エリートカテゴリ初の表彰台を獲得した。
アールツは最後、スウィークに先行される場面もあったものの、スプリントにおいてギリギリで先着。
ヴァンアールトとのポイント差を10ポイントに抑え、総合首位は守り抜くことができた。
しかし、ヴァンアールトとのポイント差はたったの7ポイント。
すでに、総合首位を守れるかどうかは、薄氷の上に立っているような状態である。
果たして、どうなるか。
全ては1ヶ月後、1/20にフランスで開催されるWC第8戦「ポンシャトー」で明らかになるだろう。
ファンデルポール不在ということもあり、この一戦は盛り上がること、間違いなしだ。