りんぐすらいど

サイクルロードレース情報発信・コラム・戦術分析のブログ

スポンサーリンク

Movistar Team 2019年シーズンチームガイド

読み:モビスター・チーム

国籍:スペイン

略号:MOV

創設年:1980年

GMエウゼビオ・ウンスエ(スペイン)

使用機材:Canyon(ドイツ)

2018年UCIチームランキング:8位

(以下記事における年齢はすべて2019年12月31日時点のものとなります) 

 

 

 

2019年ロースター

f:id:SuzuTamaki:20181215174119p:plain

f:id:SuzuTamaki:20181215175136p:plain

話題を呼んだトリプルエース体制は(予想されていた通り)失敗に終わり、むしろソレルやカラパスといった若手の台頭が目立った2018年シーズンだった。

彼らは自身の成績だけでなくグランツールでのアシストとしての働きも目を瞠るものがあり、モビスターの将来を期待させてくれる存在であった。

いや、将来だけでなく、すでにして戦力である彼らの存在を考えると、モビスターはもはやトリプルエースではなくクインタブルエースと言ってもいい。それほどの布陣である。

とはいえ、ヨンが移籍したように、彼らもまた、チームのエースとして育ちきる前にチームを去る可能性もあるため、その辺りはきっちりとケアしておかなければならないだろう。

 

2019年のグランツールではトリプルエースという無茶な体制はとらない予定。

とりあえずジロにランダとバルベルデ、ツールにランダとキンタナ、そしてブエルタにキンタナとバルベルデが出場する、という予定らしい。

ジロにはカラパスの出場も予定されており、かなり強力。うまくいけば、全グランツールで表彰台にモビスターの選手が登る可能性も。

やはりモビスターが強くなくてはグランツールは面白くない。最強格チームの、大いなる復活を期待している!

 

退団選手のうち、ハイメ・ロソンに関しては、ティレーノ~アドリアティコ総合8位など、ソレルらと並ぶ将来有望なステージレーサーとして期待されていたが、6月のクリテリウム・ドゥ・ドーフィネ出場直後に生体パスポート分析違反により暫定的サスペンドが報道されて以降、情報なし。

www.cyclingnews.com

 

 

注目選手

アレハンドロ・バルベルデ(スペイン、39歳)

脚質:オールラウンダー

Embed from Getty Images

2018年の主な戦績

f:id:SuzuTamaki:20181215180419p:plain

プロ18年目にして最高の成績を叩き出した。

12回の挑戦、6回の表彰台を経て、ようやく掴み取った世界王者の座。

しかしそれだけではない。ワールドツアー7勝を含む年間14勝は、2004年の15勝以来の記録で、しかも勝ったレースの格は当時よりも断然高いものが多い。

この人は衰えというものを知らないのか。

 

また、ストラーデ・ビアンケ4位というのも驚きの結果であった。

確かにこのレースはアムステルゴールドレースと似て、フランドルとアルデンヌクラシックの中間のような存在ではあり、バルデやデュムランも高い成績を出せるレースではあるが、それでもあの未舗装路レースでよくも、という印象である。さらにはもっとフランドル寄りのドワースドール・フラーンデレンでも悪くなかったのだから本当に凄い。

2019年もストラーデ・ビアンケには出場予定。また3年ぶりにミラノ~サンレモにも出場予定。このレースでも十分勝てる可能性はあるので、期待しておきたい。

 

グランツールに関しては、これまた3年ぶり2回目のジロ出場を予定。カラパス、ランダと共に。

アシストとしては最強なランダとの協調がうまくいけば、総合優勝候補筆頭に躍り出る。もしこれを果たせば、当然ジロでは史上最年長での総合優勝となり、3大ツールにおいても、ブエルタのクリス・ホーナーに次ぐ記録となる。

さすがに無理?? いや、無理を可能にするのがこの男である。

 

 

ナイロ・キンタナ(コロンビア、29歳)

脚質:クライマー

Embed from Getty Images

2018年の主な戦績

f:id:SuzuTamaki:20181215181448p:plain

何をしてもうまくいかない、そんな状態が続いている。2017年はそれでも、ティレーノ~アドリアティコ総合優勝などはあったものの、2018年は総合優勝なし。勝利自体も2つだけと、2012年モビスター加入以来、最も実績の薄い年になったと言えるかもしれない。

もちろん、スイスやツールでのステージ優勝時のアタックのキレは、彼の復活を予感させるようなものだったし、ブエルタも第17ステージで崩れたものの、その後は逆にバルベルデを支える側に回ってからの調子の良さを見せていた。しかし、うまくいかない。噛み合わない感じがあった。

2019年も2018年と同様にツール集中型のスケジュール。また、ランダも出場予定ではあるものの、彼は先にジロを走ってからの参戦。一応、キンタナの単独エースと見ることもできるような体制である。

とはいえそれも、ツールまでの成績次第と考えることができる。現時点では1月のサンフアン、2月のコロンビアに出場予定とのことなので、まずはこのあたりの小さなレースでしっかりと結果を出したいところ。

 

 

ミケル・ランダ(スペイン、30歳)

脚質:クライマー

Embed from Getty Images

2018年の主な戦績

f:id:SuzuTamaki:20181215182212p:plain

決して調子の悪いシーズンではなかったはずだった。バスクとツールではキンタナ以上の成績を出していた。

しかしツール第9ステージでの落車があったり、何よりも、クラシカ・サンセバスティアンでの大規模落車によって、その後のシーズンを棒に振るなど、実力を発揮しきれずに終わったシーズンだった。

それゆえに、2019年シーズンに関しては、実はキンタナ以上に期待をしている。今回はトリプルエースという不安の残る体制ではなく、まずはまっすぐジロを目指して走ることになる。相棒はバルベルデで、彼なら競合することはあまりないだろう。不運さえなければ、十分に総合優勝を狙えるはずだ。

問題は、個人TTの不安定さ。決して常に弱いというわけではなく、思いのほか強さを見せるときもある。しかし、悪いときは滅法悪いのだ。

2018年のツール・ド・スイスでも、最終日の個人TTで優勝者キュンから3分以上遅れ、総合7位から16位に一気に転落した。キンタナも総合2位から3位へと転落したものの、それ以上のインパクトであった。

2019年ジロは個人TTの総距離が長いので、その点が不安である。やっぱり、バルベルデの方が可能性があるかも?

 

 

その他注目選手

マルク・ソレル(スペイン、26歳)

脚質:オールラウンダー

Embed from Getty Images

2015年ラヴニール覇者にして、2018年パリ~ニース総合優勝者。そしてツール・ド・フランスではトリプルエースをきっちりとアシストしきった。順調な成長を見せており、すでにして他チームであればエースを任されてもおかしくないほどの逸材だ。

何より、個人TTの能力の高さが、キンタナやランダにはない魅力だ。ツール第20ステージ9位、パリ~ニース第4ステージ2位。安定しているというのも重要なポイントだ。

2019年出場レースは現時点ではまだ決まっていないが、ジロにカラパスが出る予定なので2019年ももしかしたらツールに出場することになるかも。アシストとしての活躍がメインになるとは思うが、その中で彼自身の総合成績をどこまで伸ばせるのかに注目していきたい。

 

リチャル・カラパス(エクアドル、26歳)

脚質:クライマー

Embed from Getty Images

ジロはエースとして出場し、総合4位。ブエルタではキンタナとバルベルデを支えつつ、自らも総合18位。またパリ~ニースではマルク・ソレルの総合優勝を支える決定的なアシストをしながら、自らも総合11位に入り込んだ。

2019年はランダ、バルベルデと共にジロ出場予定。ダブルエースに加えて前年総合4位に全面的にアシストを任せることができるモビスターが、2019年ジロ最強チーム候補なのは疑いようがないだろう。

地元エクアドルの英雄にもなったことだろう。しかし、間違っても調子に乗ってハイウェイを逆走したりしないように。

 

エドゥアルド・プラデス(スペイン、32歳)

脚質:パンチャー

Embed from Getty Images

現チームUKYO所属のベンジャミン・プラデスの弟。彼自身も2014年に1年だけ、マトリックス・パワータグに所属しており、南魚沼ステージで勝つなどの足跡を残している。

その後はカハルラルに移籍し、2018年はエウスカディ・ムリアスに所属。そして大ブレイクした。

ブエルタ・ア・エスパーニャではバルベルデサガンと並んで登りスプリントで争う姿を見せる。ツール・ド・ヨークシャー総合2位、ツアー・オブ・ノルウェー総合優勝など、正統派パンチャーとしての実績を挙げていく。

そしてツアー・オブ・ターキーでの総合優勝。そのスプリント力を活かし、ステージ上位を連発。ボーナスタイムと着順総計により、同タイムでアレクセイ・ルツェンコを破った。まるでアラフィリップやバルベルデのような勝ち方である。

2019年もグランツールというよりは、パンチャー向けステージレースやあるいはアルデンヌ・クラシックでの活躍を期待したい。2018年のモビスターが一部の選手に集中していたステージ優勝を稼ぐ役割を担ってもらいたい。

 

 

総評

f:id:SuzuTamaki:20181215184714p:plain

思い切りが良いくらいにグランツール/ステージレース集中型。スプリントを含むステージ優勝およびアルデンヌ・クラシックの実績もほとんどがバルベルデ頼りなので・・・そのあたり、新加入のプラデスあたりがうまくカバーしてくれるといいのだが。

まあ、このチームに関しては多少偏っても良い。とにかく、圧倒的に豪華な面子でまずは2019年のグランツールを席巻してしまおう! チーム・スカイの今後が不透明?それでロードレースが面白くなくなるかも、と思われるんだったら、このモビスターやアスタナが2019年のうちにスカイを倒してしまえば良いのである。

北のクラシックは・・・あれ、2018年最も良い成績を出しているのがこれもバルベルデだぞ・・・?

スポンサーリンク