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ジロ・デ・イタリア2018 コースプレビュー 第1週

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エルサレム旧市街の空撮。この写真の右側に位置する「アルルーブ・マミーラ・アベニュー」の辺りが第1ステージのスタート/ゴール地点となる。

 

いよいよ開幕が目前に迫った第101回ジロ・デ・イタリア

今回はその第1週のコース概要を確認していく。

 

なお、開催期間は5/4(金)~5/27(日)の24日間。

エルサレムからローマへ。砂漠、活火山、残雪のアルプスまで。

全長3,546.2km、獲得標高差44,000m。

歴史と自然を巡る3週間の旅路である。

※各ステージのカテゴライズは主観によるものです。

suzutamaki.hatenablog.com

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第1ステージ イェルサレム 9.7km(個人TT)

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2016年以来、2年ぶりとなる個人TTによる開幕。

オランダでの開催となった2年前は、地元の英雄トム・デュムランが、台頭し始める前のプリモシュ・ログリッチェに0.02秒差で勝利してマリア・ローザを手に入れた。

このログリッチェ、後に第9ステージの個人TTで勝利し、その名を一気に轟かすことに。

 

2018年の開幕個人TTステージは、2年前とほぼ同じ9.8kmの短距離個人TT

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テクニカルなカーブが選手たちを苦しめ、最後の400mは緩やかに登っている。

デュムラン、ローハン・デニス、トニー・マルティンといった最強クラスのTTスペシャリストたちが集まっている今回のジロ。

ただしマルティンはこのくらいの距離では安定した力を出せず、逆にデニスはほぼ無敵の様相。

それ以外の優勝候補としては昨年のジロでデュムランを打ち破ったヨス・ファンエムデンや、今年のTTで調子の良いダビ・デラクルス&ワウト・プールス辺りか。もちろん、初日からフルームvsデュムランで火花が散る様も見てみたい。

 

スタート&ゴール地点のすぐ近くには、世界遺産にも登録されているエルサレム旧市街とそれを囲む壁が広がっている。その中にはユダヤ教徒の「嘆きの壁」、キリスト教徒の「聖墳墓教会」、そしてイスラム教徒の「岩のドーム」など、各宗教の聖地が点在し、それらの映像はレース中にも多く紹介されることだろう。

 

今もなお、宗教と民族と歴史による不安定を抱えるエルサレム

何のトラブルもなく、無事に運営されることを切に願う。

 

 

 

第2ステージ ハイファ~テルアビブ 167km(平坦)

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イスラエル北部の街ハイファから地中海沿いに南下し、イスラエル第2の都市テルアビブにゴールするピュア平坦ステージ。

残り91km地点にある4級山岳は、全長2.65mと短いものの、後半の平均勾配は7.1%、最大勾配は13%とそれなりにきつい。おそらくはプロコンチネンタルチームが中心となって形成される逃げ集団の中から、初日の山岳賞ジャージを巡る争いも白熱しそうだ。

ここはやはり、地元イスラエル・サイクリングアカデミーの、イスラエル人選手に頑張ってもらいたいところ。

 

そして、フィニッシュはほぼ間違いなく集団スプリントで決するはずだ(昨年のようなアクシデントが起こる可能性ももちろんあるけれども・・・)。

ラストはやや下り基調となっており、ハイスピードでの展開が予想される。

 

 

 

第3ステージ ベエルシェバ~エイラート 229km(平坦)

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イスラエル南部のネゲヴ砂漠を縦断する、長く、熱い、過酷な一日。

ゴール地点は同国最南端、紅海に面するリゾート地エイラートである。

 

この日もまた、スプリンターたちによる激戦が繰り広げられることだろう。遮るものののない砂漠の中だけに、横風分断には注意が必要だ。

今期絶好調のエリア・ヴィヴィアーニと、横風大好きなクイックステップ・フロアーズのコンビが、前日からの開幕2連勝という可能性も十分ありうるだろう。

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砂漠といっても真っ平というわけでもなく、この地域特有のすり鉢型地形が豊富な起伏を作ってもいる。上記写真はその一つマクテシュ・ラモン(ラモン・クレーター)であり、今ステージの前半でもこの辺りを通るようだ。中継映像に映ってくれるか、少し不安な位置ではあるけれども・・・。

 

 

 

第4ステージ カターニア~カルタジローネ 191km(中級山岳)

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イスラエルでの3日間を終え、休息日を1日挟んだプロトンは、いよいよイタリアに足を踏み入れることに。

とはいえ半島への上陸ではなく、まずはシチリア島で3日間を過ごす。

 

その初日はシチリアの南東カターニアからスタート。

海岸沿いではなく、内陸部へと向かうルートのため、上記画像の通り非常にアップダウンが激しい。

ジロ・デ・イタリアは本国に入った瞬間に厳しくなるのが特徴だが、今年もまさにその典型といったところか。

 

当然、こんなコースレイアウトであれば逃げ切りを狙うスペシャリストたちが黙ってはいない。

アクチュアルスタート直後に登り、その後はスピードの出やすい下りが連続するということで非常に激しいアタック合戦が繰り広げられそうだ。序盤の平均速度やばそう。

今大会最初の逃げ切り勝利の栄誉を手に入れるのは果たして誰か。

 

そしてラストは最大勾配13%区間を含む激坂フィニッシュ。総合勢でも多少の動きが起こる可能性はありそうだ。

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カルタジローネは陶器の生産地としても非常に有名で、サンタ・マリア・デル・モンテ教会に至る上記の階段も特産の陶器で飾られている。 

 

 

 

第5ステージ アグリジェント~サンタ・ニンファ 152km(中級山岳)

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前日に引き続きアップダウンの豊富なステージ。

前日ほど小刻みではないが、その分1つ1つの山の難易度は前日以上だ。

このステージもラストは少々登っている。

序盤の逃げが吸収されたとしても、ラスト数キロからの飛び出しによる逃げ切り勝利が起こりそうなレイアウトだ。

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アグリジェントはサイクルロードレース界においては少し不名誉な評判を持つ街でもある。

2008年のジロ第2ステージでゴールとなったこの街に最初に飛び込んできた選手はリカルド・リッコ。また、1994年にこの街で開催された世界選手権で優勝したのはリュク・ルブランである。

 

もちろん、今年この街をスタートする全ての選手たちがクリーンであることを信じてはいる。

私たちができることはただ、彼らを信じることだけである。 

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アグリジェントの世界遺産「神殿の谷」。谷という名称だが実際には尾根に存在している。ここもスタート地点の街にある世界遺産なので、映像に映ってくれるかはわからない。

 

 

 

第6ステージ カルカニッセッタ~エトナ 163km(山岳)

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凶悪なる活火山が2年連続の登場となる。

昨年は第4ステージで登場。早めの攻撃を仕掛けたヤン・ポランツが勝利と共に山岳賞ジャージを獲得。

メイン集団からはザッカリンが抜け出してステージ2位となった。

 

さて、今回も同じエトナの山を登るわけだが、実は登坂ルートが昨年と異なる。

昨年は火山南部から登り、標高差1892mの「リフージョ・サピエンツァ」に至る道程であり、過去4度の登坂はすべてこのリフージョ・サピエンツァの近くにフィニッシュ地点が置かれている。

今年のエトナ登坂は、ラガルナの街からスタートし、全長14.1kmで平均勾配は6.5%。これは昨年の登坂よりも4kmほど短く、平均勾配は同じくらいである。

ただし、ラスト5km地点に14%の激坂区間があり、そこからフラム・ルージュ手前までの区間に関しては、昨年の最難関区間よりも厳しい平均8%エリアとなっている。このラスト5kmでの攻防が、今年の大きな目玉となるだろう。

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4kmほど、そこそこの厳しさがだらだらと続くという意味で、クリス・フルームには最適なコースレイアウト。

彼がまず順当にマリア・ローザを着用するのか、それともデュムランがこれを抑え込むのか。

 

 

 

第7ステージ ピッツォ~プラーイア・ア・マーレ 159km(平坦)

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2016年ジロ第4ステージも、同じプライア・ア・マーレがゴール地点となっていた。

そのときはラスト9kmから飛び出したディエゴ・ウリッシが逃げ切り勝利を果たしたほか、アップダウンの激しいコースレイアウトを前にマリア・ローザを着ていたマルセル・キッテルが遅れを喫し、トム・デュムランがピンクジャージを奪還した。

今年のコースレイアウトは2年前と違って完全にスプリンター向き。ゴール前には少し登る区間があるものの、よほどピュアなスプリンターでない限り十分にこなすことができるだろう。

今大会3度目となる集団スプリントが展開されるだろう。ヴィヴィアーニとクイックステップ・フロアーズの独壇場か、それとも対抗馬が現れているのか。

 

 

 

第8ステージ プライア・ア・マーレ~モンテヴェルジネ・ディ・メルコリアーノ 208km(山岳)

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エトナに続く今大会2度目の本格山頂ゴールは、カンパニア州の名峰モンテヴェルジネ(聖母の山)。著名な赤ワイン、ピアーノ・ディ・モンテヴェルジネの由来である。

 

前回登場は2011年。実は、イタリア統一150年を記念したこの2011年大会では、エトナ、ゾンコラン、フィネストーレと、今年も登場する難関山岳たちが同じように登場していた年であった。

そしてこのモンテヴェルジネもその中の一つとして、2011年にも登場していたわけだ。

当時はバート・デクレルクが優勝。2位にスカルポーニ、3位にクロイツィゲル、5位にニバリ、そして9位にコンタドールと、現在もその名を知られている名選手たちが実力を発揮していた。

 

17kmと長い登りではあるが、平均勾配は5%ほどでそこまで厳しくはない。

だらだらと一定の勾配が続き、アタックも仕掛けづらい。

『ジロ・ディ・イタリア 峠と歴史』でも「力量検査の山」と銘打たれており、ここで総合争いに関わる決定的な動きが起こる可能性は少ないだろう。

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そんな山だからこそ、少し総合優勝争い大本命からは外れる選手たちのアタックが決まりやすくなる。

サイモン・イェーツやフォルモロ、ウッズなど、最強ではないが実力のあるクライマーたちの積極的な走りにも注目したい。

 

なお、コースの道中には世界遺産「チレントおよびヴァッロ・ディ・ディアーノ国立公園」も。

パドゥーラ修道院などが有名とのことで、映像に映るのを楽しみにしていよう。

 

 

 

第9ステージ ペスコ・サンニータ~グランサッソ・ディタリア(カンポ・インペラトーレ) 224km(山岳)

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第101回ジロ第1週のフィナーレを飾るのは、「イタリアの背骨」アペニン山脈の最高峰グラン・サッソ。

その中でも最も有名なカンポ・インペラトーレ(皇帝の野原)に至る224kmのロングステージである。

 

ゴール地点、グランサッソの標高は2135m。大抵のジロであればチマ・コッピ(最高標高地点)に選ばれてもおかしくない標高ではあるが、今年は第19ステージにフィネストーレ峠があるため、ここはまだチマ・コッピではない。

山岳自体の登坂距離は長いが、勝負所は平均勾配8%のラスト4.5km。

最大勾配13%はゴール前1.5km地点に存在する。

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この実質4.5kmという長さを考えると、決定的なタイム差がこのステージでつく、というのは考えづらいだろう。

だが、このステージの勝者が、そのまま第1週を終えた時点でのマリア・ローザ着用者となっている、ということは十分ありそうな話である。

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グラン・サッソは「大きな石」を意味する。1999年にはパンターニが優勝している。第二次世界大戦中の「グラン・サッソ襲撃」でも有名で、そのときの舞台もカンポ・インペラトーレである。

 

 

 

第2週につづく。